ただのサッカー好きが、思ったことをただ書くだけ。 (06年終了)

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2008-07-02 Wed 19:34
ドイツ×スペイン
<ドイツ:4-2-3-1>
FW:クローゼ
MF:ポドルスキー-バラック-シュバインシュタイガー、ヒツルスベルガー-フリンクス
DF:ラーム-メッツェルダー-メルテザッカー-フリードリヒ
GK:レーマン

<スペイン:4-1-4-1>
FW:トーレス
MF:イニエスタ-シャビ-セスク-シルバ、セナ
DF:カプテビジャ-プジョール-マルチェナ-セルヒオ・ラモス
GK:カシージャス

スペインはロシア戦で素晴らしい内容を見せつけた4‐1‐4‐1でスタート。魅惑のクワトロ・フゴーネスのポイントはなんと言っても1人1人の技術。個々のキープ力がとんでもないから簡単には奪われない。だから、後ろからの上がりも促進される。ロシア戦では両SBがどちらも高い位置に入ってくるシーンが多くなった。結果として中盤が中に押し込まれ、選手間の距離の近さが生まれ、チームとしてのキープ力も上がる。要するにパス回しのスムーズさへとつながる。

そんなボールを持った仕事に加えて、この4人が違いを見せつけるのはボールを受ける動き。敵のブロック内にギャップを見つけ出し、そこに入り込む能力が高い4人。相手だってそう簡単には自由にさせないはずなのに、面白いように自由にボールを受けることができる。局面局面を見ると、そんな4人が好き勝手に自分が見つけたギャップに入り込んで行くように見えるスペインの中盤。でも、全体として見ると選手間の距離が一定に保たれてるから素晴らしい。変なバランスの崩れ方がなくて、ボールが入った時に、それぞれがパスでも個の仕掛けでもどちらも選べるような状況になっている。

そんな4人を中心に中盤を圧倒的に制圧するスペイン。ギャップギャップをつなぐパス回しの中では、上に書いたように受け手が浮いた状態であることが多い。結果として前に向かって次のプレーができる。ボールを出した選手は次のギャップを見つけて入り込む。選手の距離感のバランスがいいアーセナルってとこか。人もボールも動くサッカー。とにかく、結果として前へ前へっていうゴールに向かったパス回しが可能になる。もっと言えば、相手の守備の急所急所を入り込むパス回し。中盤で圧倒的にパスを回しているのに、中盤の場所の滞在時間が短いみたいなイメージ。スピード感ありありのパス回しで一気に相手ゴールまで迫っていく。

相手としては狙いどころが定まらない。少ないタッチで次々に局面を変えられてしまえばどこで当たるべきかが分からない。だから、相手のボール保持者がキープしたところで、ここぞとばかりに守備をしたい。でも、最初の前提条件が現れる。4人とも技術が半端じゃない。奪いに行っても奪えない。むしろ、その選手に当たりに行った選手のウラ側にギャップができてしまう。ギャップ探しが上手なスペインの中盤の選手に入り込まれる。結局、次の局面へとボールを動かされてしまう。ロシアは完全お手上げ状態だった。

さて、そんなスペインの4‐1‐4‐1に対して今回のドイツはどう出てきたか。それは単純な話だった。相手の中盤を自由にさせないようにしようっていう作戦。そのためにスペインのパス回しが始まる前に芽を摘み取ってしまえ作戦。考えてみれば、誰にでも思いつくやり方。ただし、それができるかどうかは別問題。その点において今回のドイツの守備は成功したと思う。スペインの中盤のパス回しはなりを潜めた。スペインはクワトロ・フゴーネスを有効活用できず。その意味での成功。

ドイツの守備のベースは組織を作ってからの守備。立ち上がりこそ、前線から追いかけるシーンが目立ってたけど、時間とともに4‐4‐2ブロックを作るやり方へと移行していた。受けるというと語弊があるかもしれないけど、まあ受ける形って言っても間違いではないような守備。ちなみに、形が4‐4‐2ってのはバラックを1つ押し出したから。そして、トップの2を自陣寄りに引きつけ、最終ラインの4を高い位置に設定することで超コンパクトブロックを作り出したと思う。

そんなブロックを作った上での守備。まず、出し手に対するもの。真ん中は2トップが対応。セナを見る。降りてくるシャビ等を見る。スペインの両SBへはそのままドイツのSMF。真ん中もサイドも縦パスを入れさせないような守備をしてきたと思う。降りて行って受ける選手に関しては、入りどころにしっかりと対応をして前を向かせないようにしてた。だから、スペインの中盤の選手は助けに行ったとしても結局は後ろに戻すしかなくなった。出し手が浮かずにいつまでたっても攻撃のスタートが切れなくなったスペイン。低い位置での保持時間が延び、その中のミスから決定的なチャンスにもつなげられてしまった。

受け手の方への対応はスペースをつぶすことが念頭。4‐4の超コンパクトブロックを作って、スペインの中盤の選手が大好きな間を作らないこと。だからこそ、降りて行くスペインの中盤の選手はある程度まで行けば、FWに受け渡してたんだと思う。どこまででもついて行くと、背後にギャップを作ってしまう。受け渡しがスムーズだったのもブロックがコンパクトだったおかげ。そもそも、ある程度まではついて行ってもギャップができなかったのも、ブロックがコンパクトだったおかげ。上下の幅が限定されたことによって、スペインの選手の縦の動きはダイナミックなものにはつながらなかった。

繰り返す。ドイツの受け手への守備はスペースを潰して相手が入り込むギャップをなくす。それでも動く相手選手は放っておかずにしっかりとマークをする。ある程度まではついて行き、守備のバランスが崩れそうになってきたら、受け渡す。これがドイツの受け手に対する守備。スペースと人の二段構えでボールを入れさせない。逆に出し手に対する守備は上に書いたとおり。出し手は簡単には前を向かせない。自由にボールを扱わせない。最低でも縦のコースは切る。失点シーンはこの出し手への原則に綻びが生まれたシーンだった。

さて、困ったのはスペイン。蘇るのはイタリア戦での悪夢。相手が開き直って完全にベタ引きになったイタリアを相手にしたスペインはボールを前線に送り込めない大問題が発生した。最低限の役割として縦を切りつつ守備のバランスを絶対に崩さないイタリアに対して全く縦パスを入れられなかった。縦パスが入らないので前線の選手が降りてくる。2トップはFW的に振舞って中盤に顔を出してこない。中盤がスカスカ。どん底スペイン。

今回はシステムが4‐1‐4‐1になって中盤が厚くなったことで、そこまでの中盤スカスカ状態にはならなかった。でも、根本的な問題は変わらなかったと思う。スペースを潰すことを目標にした相手の守備に対して仕掛けることができないスペインの弱点は実は残されたままだったと思う。縦パスが入らないので、ある程度自由にされたDFラインでの保持時間が延びる。縦パスが入らないので前線の選手が降りてくる。ただし、上にも書いたようにドイツがしっかりと対応してたから、後ろに戻すことしかできない。だんだんと下の飽和状態の雰囲気が見られていったスペインだった。

魅力的なクワトロ・フゴーネスだってボールが供給されなければ何もできない。ボールをもらう動きをしようにも、相手が中盤のスペースを潰してる。窮屈すぎて動けない。窮屈じゃないのはどこかって言えば、低い位置に降りて行くこと。高い位置でクワトロ・フゴーネスが機能しない、つまり高い位置でボールを保持できなくなったスペイン。当然のようにSBの攻撃参加も停滞。SBが低い位置でのパス回しに参加する時間が長くなった印象。

というわけで、上にも書いたようにスペインの中盤を機能させないっていう意味ではドイツの守備は完璧だったと言ってもいい。シュバインシュタイガーの守備の担当エリアがかなり広かったのがちょっと謎ではあったけど、全体としての守備のバランスが完璧。4‐4‐2のコンパクト3ラインの形成によって、スペインの中盤を自由にさせなかった。ドイツの試合は初めて見たけど、いつもああいう守備のやり方を採ってるのか。少なくとも今回の試合ではスペインの中盤を潰すっていう意味ではお手本の守備になってたように思う。やっぱりパス回しをスタートさせないことがポイント。スペインは攻撃のスピードアップを図ることができなかった。

さて、困ったスペインはどうしたのか。立ち上がりの10~15分ぐらいまでは、自分たちのパス回しをしようと粘ってたように思う。前線の選手が降りてきてリズムを作ろうと試みたり、トーレスをサイドに張りつかせたり。なんとかして相手の守備ブロックにギャップを作ってやろうっていう考え方が見られた。そして、ギャップができるのを待つかのような低い位置でのパス回しの時間がかなり伸びた。でも、実際にはそういう攻撃からチャンスは作れず。縦パスを狙っては引っ掛けられるの繰り返し。仕方がないので、時間とともに中盤至上主義を改め始めた印象。この辺の柔軟性が今回のスペインの強さかもしれない。バルサだったら、それでもパスをつなごうとしてただろうなっていう。

じゃあ、どう変化させたのかっていう話。その変化はとっても分かりやすいものだった。ひとことで言っちゃえば、トーレス、トーレス。中盤なんてどうでもいいから、とにかくトーレスを狙えっていう考え方。低い位置でのパス回しの時間が減り、その代わりに1発の縦パスの数が増えて行ったスペイン。クワトロ・フゴーネスを使った中盤の超パス回しと比べると、恐ろしいほどに単純な攻撃の繰り返しによってペースを自分たちに引き寄せて行くから面白い。

ただし、この考え方はとっても合理的。なぜならば上にも書いたように、ドイツの最終ラインはかなり高い位置を採ってきてたわけだから。そして、スペインの1トップに入ったのはトーレス。そういえばドイツのCBはウラへの対応はどうなんだろうか。W杯前の日本戦で高原にめちゃめちゃにやられてたのは過去の話か。どちらにしても、最初からウラ狙い1発があまり多くなかったのが不思議なぐらいの条件が揃ってた。

そんなわけで単純トーレス狙いの組み立てが多くなったスペイン。中盤の選手たちが組み立てで目立たなくなて行く流れ。トーレスに入った時にそのフォローに行くみたいな仕事が増えて行った。ただ、それでもよかったんだと思う。トーレスにウラを徹底的に狙わせて、相手にウラの意識を持たせるっていう狙いもあったはず。相手のコンパクトブロックが間延びして、中盤が使えるようになれば、俺たちの出番だぜっていう。残念ながら最後まで中盤を圧倒する流れにはならなかったけど。

そんなトーレス狙いの攻撃でスペインが流れを引き寄せたってのは上にも書いたとおり。でも、それは実は嘘。本当は流れを引き寄せたのはカウンターが効果的に決まるようになったから。攻撃の主体はカウンター、相手が守備ブロックを作ってしまったらトーレス狙いっていうのが本当のところだったと思う。どちらにしても中盤重視の4‐1‐4‐1の攻撃は消えてしまったってことになるわけだけど。それでもカウンターは今大会のスペインの1つの特徴って言えるかもしれない。

逆に言えばそれまでの時間帯のスペインはカウンターが効果的に機能してなかった。それは何よりも守備が機能してなかったから。立ち上がりのスペインは守備の様子が明らかにおかしかった。そして、そのスペインの守備の問題を突くようにドイツがいい攻撃を仕掛けてきた。カウンターが機能したスペインってのは要するに守備が機能したスペイン。結果としてドイツの攻撃が機能しなくなる。だから、スペインに流れが行ったように見えたわけ。

じゃあ、まず立ち上がりのスペインの守備の問題から。今回のスペインの守備は4‐1‐4‐1。今までのスペインの守備陣は4‐4‐2。最終ラインを低い位置に設定して中盤の4をその低い位置の最終ラインに引きつける。開き直りバイタルつぶしのベタ引き4‐4‐2。相手の出し手は浮かせておくけど、ゴール前には入らせないぞっていうやり方。4‐1‐4‐1システムに変更したことによって、これがどういう方向に出るかってのがポイント。そして、それが悪い方向に出たのが立ち上がりの流れ。

まず、中盤の役割が明確ではなくなったと思う。ロシア戦でも4‐1‐4‐1に途中で変更が行われたわけだけど、中盤の気持ちは低い位置にあった。セットの時点では4‐4よりも4‐1‐4の中盤の方が高い位置に置かれたし、ロシアの方の攻撃が真ん中に偏ったことで中盤でうまく引っ掛けるシーンも多かった。でも、入り込まれれば中盤はすぐに下に向かっての守備を開始。DFがMFのラインについて行くんじゃなくて、MFがDFラインに合わせて下がるってのがベースの形だった印象。考え方は4‐4守備ブロックと同じだったとも言える。ただし、リードしてた流れってのも大きな意味を持ってたと思うけど。

それに対して今回は中盤が前に行こうか後ろに行こうか迷ってたイメージ。それが一番明らかだったのが相手のフリンクスに対する対応。ドイツの攻撃の組み立ての中で大きな役割を担うのがフリンクス。立ち上がりは、そのフリンクスが浮いていて、うまくボールの散らしを行っていた。スペインとしては確かに好ましくないことではあるけど、これまでの守備の原則を考えれば、別に致命的なことでもない。出し手は浮かせても最後はやらせないってのが、これまでのスペインだったから。

でも、今回のスペインはなぜかフリンクスにプレッシャーをかけようとしてた。しかも、それがイレギュラーな状況。フリンクスを自由にさせたくないなら、トーレスをぶつけるのが合理的だと思う。でも、今回の試合でフリンクスの相手になったのはセスク。さらに、今回のスペインの守備のベースはやっぱり低い位置にあっただろうってのが、さらに悪かった点。1度セットした後で、セスクが引っ張り出されるみたいなシーンが多くなる。遅れているので当然のように効果的な守備につながらない。せめてトーレスが前線で限定させてくれてれば、もっと素早く当たれたんだろうけど。

そんなシーンが多発したのが今回のスペインの中盤。降りて行くシュバインシュタイガーとかポドルスキーに対して選手が引っ張り出される。明らかにスペインらしくない。ロシア戦のスペインは降りて行く選手を完全に放っておいたはず。そうすることで絶対にバイタルは空けないぞっていう守備をしてた。それと比べると引っ張り出されるズルズルと引っ張り出されることが多くなったスペインの選手たち。しかも、上に書いたようにブロックの作り方は低い位置に置かれてるからたちが悪い。前線から行くならもっと高めにブロックを置かないとっていう。中盤だけが高め、最終ラインは低めみたいな前後の分断が生まれてたと思う。

この時点でかなりオランダ戦のイタリアみたいな流れになっていく。チームとしては受けることがベースになってる。でも、出し手も放っておけないなっていう気分。だったらFWが守備に参加すればいいのに、トーレス=トニは守備に無関心。中盤が出し手の対応に引っ張り出される。とはいえ、距離が長いから本当に出し手を押さえられるかって言われれば甚だ疑問。というわけで、背後にギャップだけを残してきてしまう結果に陥る。もともと低い位置に置かれてるDFラインとの間には広大なスペースができあがった。

そして、面白いことにドイツの攻撃はオランダのそれとそっくり。イタリア×オランダの完成。4‐2‐3‐1のオランダ=ドイツ。トップには絶対的なFW、ファン・ニステルローイ=クローゼ。中盤の3枚は間に入り込んで、縦パスを受ける役割。ただし、攻撃は左寄りに作られる。なぜならば、攻撃得意のファン・ブロンクホルスト=ラームが左にいるから。左で崩して右のカイト=シュバインシュタイガーがFWに入ってくる。ハイライトを見ても、ポドルスキー→シュバインシュタイガーだらけのドイツ。さて、そんな前線にボールを送り込むのがボランチの仕事。ここは微妙に違ってた。オランダはエンゲラールが組み立てから飛び出しを担当。それに対してドイツはフリンクスが組み立て、ヒツルスベルガーが飛び出しみたいな攻撃の役割分担ができてたと思う。

相手がイタリア状態だった立ち上がりはドイツの攻撃が機能しまくり。イタリア相手にオランダの攻撃が機能したのと理由は全く一緒。ドイツは低い位置でボールを回しつつ、シュバインシュタイガーとかポドルスキーが降りたりしながら、相手の中盤を引っ張り出す。そうやってDFとMFの間に隙間を作ったところで2列目の3枚に縦パスを入れる。ここの受け手の中心がバラック。左右(左が多いけど)に流れ、セナのマークを振り切って、ボールを受ける。その瞬間に左ならラーム&ポドルスキーが関係性を築けるポジションに入る。サイドでの基本的なトライアングル形成が多いドイツだった。ちなみに、そうやってバラックが流れたときにトップ下の場所に入るのが飛び出し担当のヒツルスベルガーだったと思う。

そんなオランダ攻撃が機能しまくりのドイツ。面白いように縦パスがおさまり、すぐにトライアングル形成を行ってショートパスを交換しながらフィルターのなくなった相手のDFに仕掛けて行く。スペインのDFがDFだけになるシーンは今回の試合で初めて見た気がする。とにかく、ドイツらしくない(って言ったら失礼か)美しいパス回しの連続で攻めきるシーンを増やしていったと思う。立ち上がりは深い位置まで簡単に入り込むドイツがペースを握ったのも当然の話。そして、ドイツが深い位置まで入り込めばスペインの攻撃は深いところからスタート。ドイツが難攻不落の4‐4‐2ブロックを作る時間は十分にあった。

スペインはこんな危険な状況を放っておけない。なんとしても修正を図らなければならない。さて、そのためにどう出るかがポイント。まず考えられるのはいつものスペインに戻ること。低い位置に相手には勝手にボールを回させ、降りて行く中盤の選手も放っておく。中盤をDFラインに近づけて、完全に受ける形に入る。オランダに似たやり方を採ってくるドイツに対しては中盤の3に2列目の場所でボールを収めさせないことが重要。そのために、スペインがいつものベタ引きブロックを使うのは間違ったことではなかったと思う。

でも、今回のスペインはそういうやり方を採らなかった。むしろ逆。前から行きたがってる中盤にDFラインがついて行くような守備へと修正を行っていったと思う。今まで個々の気分で行っていた相手の出し手へのプレッシャーをチームとして機能させるようになった。例えばフリンクスへの対応。それまではフリンクスに入った後の対応だったのを、最初からしっかりとセスクをぶつけるようにしたと思う。つまり、そもそもボールを入れさせないってもの。結果としてドイツはフリンクス経由の攻撃ができなくなった。最終ラインから直接前線に入れる形が増えたと思う。

そして、出し手に対応する中盤に後ろを引きつける。前が引っ張られたことで後ろのギャップができないようにするためには、DFが前線についてくればいい。それを実践。ドイツの受け手がDFラインと中盤の間で浮くっていうシーンが明らかに減っていった印象。縦パスを入れたとしても、スペインの守備陣がその入りどころにしっかりと対応できる場面が増えて行った。入れては潰されるの逆スペインパターンがドイツに見られるようになっていったとも言える。とにかく、美しい中盤でのパス回しは全く機能しなくなったと思う。

ただ、スペインが守備のやり方を変えたといっても、前線から追いかけ回すようになったってのとは違ったのも事実。トーレスは相変わらず守備をしてなかったし、出し手を見るようになったとは言っても、相手のSBは基本的に浮いていた。中盤の設定位置もハーフェイラインぐらい。だから、出し手への対応と言っても本当はフリンクスへの対応だったと思う。だから、実質的には受け手への対応を修正したってのが本当のところ。今までのように中盤をDFに近づけることで受け手を潰すんじゃなくて、DFを中盤に近づけることで受け手をつぶしにかかった。

とにかく、そんな修正によって相手の攻撃を途中で分断することに成功したスペイン。これがスペインのカウンターの布石になる。立ち上がりのように攻めきられる流れじゃカウンターなって言ってられないわけだけど、守備の修正によって途中で引っ掛けられるシーンが増えれば、その切り替えからカウンターを繰り出すことが可能になる。というわけで、どちらにしてもトーレスのスピードを最大限に活用した今回のスペインの攻撃のやり方だったように思う。シルバ、イニエスタの両サイドもカウンターの流れの中で目立っていたと思う。

得点もそんなトーレスのスピード。ただし、このシーンはカウンターの流れではなかった。というか、普通に相手が難攻不落の4‐4‐2ブロックを作って構えていたシーン。スペインは低い位置でボールを保持して、なんとかギャップを見つけようとしてた。そして、上でもちょっと触れたようにここでドイツの守備に綻びが生まれる。それまで前を向いてプレーできてなかったセナがMFとFWの間で完全に浮いた。ついに前を向いてボールを持てたセナはDFとMFと狭い狭い場所にうまく入り込んだシャビへ。そのシャビからウラに抜けるトーレスへ。FWとMFの間→MFとDFの間→DFとGKの間。間間間をシンプルに縦へとつないだ結果のゴールだった。

先制点を奪ったスペインは後半に入ってやり方を変更。いつものやり方へと戻してきたと思う。DFを中盤に近づけていた前半のやり方から、中盤をDFへと近づけるいつものやり方へ。前半の途中から消えてしまったフリンクスが自由にボールを扱った後半だったと思う。ただ、そうやって出し手が浮いたとしても攻撃がスムーズに行くとは限らない。引いたときのスペインの守備の安定性をなめるなよっていう。結局、前半のようなスムーズなパス回しが復活することはなかったと思う。

それでも、強引な縦パスをスペインの守備ブロックの中に通してくるドイツ。4‐4‐2への変更で前のターゲットを増やし、バラックを1つ下げることでバラックとマッチアップするセナを引っ張り出して、無理やりにトップに縦パスを通していくシーンが目立ったと思う。それでチャンスを作る。力づくというかなんというか。それでも、なんとなく前半の美しいパス回しよりはこっちの方がドイツっぽいなって感じた後半のドイツの攻撃だった。

でも、スペインがこれにしっかりと対応してくる。セスクに代えてXアロンソ。4‐1‐4‐1から4‐4‐1‐1へと変更して、強引な縦パスを押さえにかかる。4‐1‐4‐1ブロックに最後に残された1ボランチの場所をなくし、本気の4‐4ベタ引き守備へと移行した。結果としてドイツが入り込む余地はなくなったと思う。スペインがベタ引きだからボールは持てる。でも、縦パスが入らない。どんどんと前線に人数が溜まって行く悪い流れ。だったら蹴ればよかったのに、なぜか蹴らないドイツ。高さでは圧倒的に勝ってたはずなのに。前半の美しい攻撃が念頭にあり、なんとしてもそれを作ろうとしてたのか。

守るスペインと攻めるドイツ。流れは明らかにスペイン。ドイツは巷で言うところのボールを持たされてる状態に陥った。実は主導権を握ってたのはスペイン。カウンターからチャンスを量産したのもスペイン。このスペインのカウンターの質の高さが目立ってたと思う。まず、奪った後のボールを中盤で1つキープできる。タメられる。そこに一気に後ろが飛び出してくる。そんな飛び出しを利用してトライアングルを作り、ショートショートで敵陣へ進攻。戻りながらの守備をせざるを得ない相手は全くパスを分断できない。そういうパス回しでスペインが片方のサイドに意識を集中させておいて、中または逆サイドでフィニッシュって形からのチャンスが多くなったと思う。前半からそうだったけど、カウンターの流れの中でもスペインはスペインらしいショートパスを忘れなかった。

これで優勝はスペイン。決勝Tに入ってからの3試合を見たけど、スペインのいろいろな姿を見ることができたと思う。イタリア戦ではその脆さが見られた。引いたイタリア相手に攻め手が全く見つからない形。それがロシア戦では一転。特に後半からの4‐1‐4‐1の質の高さは尋常じゃなかった。ロシア戦の記事参照。そして、今回のドイツ戦。イタリア戦の流れに陥りそうだったところで柔軟性を見せつけた。カウンター主体のやり方へ。

そう考えるとイタリア戦がやっぱり一番苦しかったんだろうなって思う。攻撃がうまくいかないスペイン。だったら、引いておびき寄せてカウンターを仕掛けるってやり方が考えられる。でも、イタリアは意地でも出てこない。攻撃に人数をかけてこない。何としてもスペインが攻めなければならない流れ。あの試合は特殊。イタリアは負けない戦い方だったけど勝てる戦い方でもなかったから。その辺がイタリアらしかったわけだけど。

とにかく、攻撃ではいろんな面を見せてくれたスペイン。でも、守備は首尾一貫してたと思う(シャレではなく)。今回のドイツ戦ではちょっとした変更が見られたけど、基本は相手の受け手を見るやり方。4‐4バイタルつぶしの超消極的な守備。だからこそ、組み立てが大変だった部分もある。攻撃のスタートが深い位置になってしまったから。でも、この4‐4バイタルつぶしの守備の安定がスペインをここまで押し上げた要因になったのも事実だと思う。実は今回のスペインは守備のチームだった。

ドイツの方も守備の良さが目立ったと思う。上にも書いたようにスペインの中盤をつぶす上でのお手本のような守備。そのたった1つ(セナがあそこで浮いたシーンは他になかった)の綻びをついたスペインが素晴らしかったってこと。大体、あれだってトーレスの能力が尋常じゃなかっただけで、綻びが綻びにならない可能性だって十分にあるわけで。というわけで、やっぱり守備は大事だなっていう。ドイツの攻撃は上でも触れたようにオランダと似てた。でも、守備の質が全く違った。それが勝ちあがれたかどうかの違いか。まあ、ドイツもスコアだけを見てみると守備が堅い雰囲気はないけど。

そうやって守備を考えてみると前線から追いかけ回す守備が機能したチームはなかったなって思う。実際に見た試合からだけど。期待されたスイスは前線からの守備をチェコのロングボール攻勢にいなされてしまった。オランダ、イタリア、ルーマニア、フランスの死のグループの面々は引いて受けるチームたち。ロシアもオランダ戦は引いて受け手を見る形、スペイン戦の前線からの守備は機能しなかった。スペインとドイツもここまで書いてきたように受ける形。ただ、スペインはゴール近くにブロックを作り、ドイツは高めにブロックを作ったって違いはあるけど。CLのマンUとチェルシーも受ける守備をしてたし、前線からの守備が得意なリバプールもシーズン途中に引く形へ。そういうトレンドか。
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2008-06-28 Sat 21:37
ロシア×スペイン
<ロシア:4-4-2>
FW:アルシャビン-パブリュチェンコ
MF:ジリヤノフ-セムショフ-サエンコ、セマク
DF:ジルコフ-Vベレズツキー-イグナシェビッチ-アニュコフ
GK:アキンフェエフ

<スペイン:4-4-2>
FW:ビジャ-トーレス
MF:シルバ-シャビ-セナ-イニエスタ
DF:カプデビジャ-マルチェナ-プジョール-セルヒオ・ラモス
GK:カシージャス

前回と同じようにロシアの4‐4‐2は便宜上のシステム。じゃあ、実際のところはどうなってたのかって話だけど、そのバランスの崩れ方も前回と同じだった。左に入ったジリヤノフはセマクと横並びになってボランチの一角的に振舞う。前線はアルシャビンが1つ下がって、セムショフとトップ下が2枚みたいな関係を作る。結果として4‐2‐3‐1の2列目の3が右に寄ったような守備ブロックが完成。中盤真ん中は2‐2で固める一方で、左サイドはスカスカって形。

オランダ戦ではこんな守備ブロックがうまく機能した。ロシアのスカスカ左サイドは相手の右SBブラールズの場所。セムショフよりは守備意識が低いトップ下のアルシャビンが対応してたのは、相手のデ・ヨング。逆にエンゲラールにはセムショフが、ファン・ブロンクホルストにはサエンコがしっかりと対応してた。結果としてオランダの右サイドはゲームの流れから排除されることになり、オランダは左サイドから攻めるしかなくなった。そうやって出し手を限定しておきつつ、最終的には相手が縦パスを入れてきたところをつぶすってのがロシアのやり方だったし、それが機能しまくったのも事実だった。

ただし、これが機能するためには前提条件がある。しかも、これがかなり重要な前提条件。それは何かって言うと、スカスカ左サイドに対応する相手の右サイドの選手が攻撃が苦手であるってこと。何しろ、そのサイドでは相手をかなり自由にさせてしまうから。特に完全にフリーになる、相手の右SBの攻撃力は気にしなければならない。その点、オランダは格好の相手だった。右SBのブラールズもボランチのデ・ヨングも守備の人だったから。というか、だからこそわざと左サイドを空けてきたものだとばっかり思っていたわけで。まさか、今回も同じような左右のバランス崩しブロックを作ってくるとは夢にも思わなかった。

確かにスペインの右側の選手が組み立てであまり絡めなかったのは事実。でも、右が絡めないことの意味するところがオランダとは全く違う。オランダは右から攻めたかったけど、無理だった。スペインは別に右から攻めなければならない理由はない。シャビが組み立てで目立たなかったのは、セナが自由になってるもんだから、自分の助けはいらないねってことで前に出ていったからってだけの話。エンゲラールが消えたのとはわけが違う。それに、オランダみたいに縦パスを入れるために低い位置で左右の幅を使って相手のブロックを横に広げる必要もない。そんなことをしなくても、もともと空いている右サイドから入り込めばいいだけの話。ファン・ブロンクホルストが消えたのともわけが違う。

そして、そのスペインの右寄りの選手が誰なんだって話。それは残念ながらブラールズとデ・ヨングじゃなく、セルヒオ・ラモスとセナ。イタリア戦ではカッサーノに完全に押さえつけられて鬱憤が溜まっていたであろうセルヒオ・ラモス。そんな状況でも前回は頑張ってたから、そのご褒美ってわけではないけど、今回は全く誰もいないスペースへと攻撃に出て行くことができた。セナだってシャビと比べたら守備的ってことになるんだろうけど、攻撃における組み立ての能力も高いわけで。スペインは右から強制的に攻めさせられる流れになっても特に困ることはなかった。

じゃあ、なんでロシアは左サイドを空けてきたのかって話になってくる。勝手に想像するならば、相手をおびき寄せる作戦かって話。前回のオランダ戦の先制点のシーンがそれ。相手が右から出てきているところで、その右サイドからカウンターを食らわせるっていう。前回はパブリュチェンコもアルシャビンも左サイドに流れてボールを引き出していたし。今回も同じことをやろうとしたんじゃないかなっていう気がする。でも、結果的には失敗だったとしか言えない流れに陥ったけど。その理由は、また後で。

ブラールズ&デ・ヨングとセルヒオ・ラモス&セナの違い。これが完璧に押さえたオランダ戦との違い1つめ。1つめというからには2つめがある。その2つめの違いは守備の勝負どころがあいまいだったこと。前回の試合では、後半に入って変化が見られたものの、守備の勝負どころは、相手の受け手だった。最終ラインを下げ過ぎずに中盤とコンパクトな関係でバイタルエリアをつぶす。同時に相手の人を捕まえて入りどころに対して0距離で対応できる状況を作る。そんな0距離守備で足止めしておいて囲い込む。このやり方でオランダの前線の選手にボールを入れさせなかった。出し手、つまりブラールズ&デ・ヨングはある程度放っておくぐらいのつもりだったと思う。

それに対して今回の相手はセルヒオ・ラモスとセナ。これは放っておけないだろうって話になってくる。確かに立ち上がりは放っておいたわけだけど、結果としてあまりにも簡単にスペインが攻撃の組み立てをしてきた。ここで意思が揺らぐ。セルヒオ・ラモスとセナにも当たらなければいけないんじゃないかっていう話になってくる。よって、2人に対して引っ張り出される選手が生まれてきたと思う。オランダ戦には見られなかった意思の揺らぎ。これによって受け手を見る目標がはっきりとしなくなった。

加えてスペインの攻撃の組み立て方との相性の問題もあったように思う。前回のイタリア戦でも見られたように、スペインは深い位置から攻撃の組み立てを行ってくる。DFラインがDFラインだけでボールを持ちあがるんじゃなくて、そこに中盤が助けに来ることが多い。そして、これに対しても、ロシアの選手が引っ張りだされることが多くなった。なぜならば、人を目標とするロシアの守備だから、相手が下がっていったら、ある程度まではついて行くことになる。中盤の選手が受動的に前へ前へと出てきてしまう状況が生まれた。

こういう状況はある意味では仕方なかったとも言える。オランダは出し手が後ろの6人で、受け手が前の4人ってことがはっきりしてた。だから、受け手を目標にしたら、そこから動かされることは多くはならない。しかも、ロシア戦のオランダは特に出し手と受け手の関係が固着化したたし。スナイデルとかファン・デル・ファールトがあまり低い位置に降りて行かなかったってのは、そのときにも書いたとおり。それに対して、スペインは中盤の選手が受け手にも出し手にもなる。見るべき相手を定めると、上下に動かされるのは想定できたことだったように思う。

そんなわけで中盤が前線に引っ張り出されることが多くなったロシア。でも、それにDFラインがついて行けない。理由は簡単。スペインの2トップはビジャ&トーレス。あまりラインを上げすぎると、ウラを狙われてしまう。そもそも、どこが目標かって言われればやっぱり受け手が目標のロシア。中盤の選手が相手に引っ張り出されるときも、相手の出し手に対して十分にプレッシャーがかかってないのが事実。なんとなく引っ張り出されてるというか。そんな状況で下手にウラにスペースを与えたら、トーレスとビジャが好き放題に暴れまわる。よって、ロシアは前回のように高いラインを保つことができなかった印象。要所要所で単純にウラに入れてくるボールも効いてたと思う。GLのスペイン戦のトラウマもあったのかもしれない。

よって、ロシアの守備ブロックは間延び状態。相手の出し手に対してなんとなく出て行ってしまう中盤とウラが怖くてついて行けないDFライン。前回のオランダ戦の完全バイタルつぶしはどこへやら。DFラインと中盤の間に広大なスペースができあがる。スペインは縦パスを通し放題。そうやってスペインが前線に起点を作ってきたところに対しても、ロシアがすぐに囲い込みに行けない。振り向かれてシュートを打たれたり、起点を起点として機能させてしまうシーンが多くなったと思う。

そんなわけでスペインはイタリア戦とは全く違った内容を見せてくれたと思う。何よりも敵陣に入るのが恐ろしくスムーズになった印象。そして、そのどちらもロシアの守備の問題点をついたものだった。最も楽なのはガラガラの右サイドを利用するやり方。ビジャとかトーレスが流れて引き出したり、単純にシルバが受けたり。そもそも、セルヒオ・ラモスにボールを渡して、ドリブルで持ちあがらせればあっさり敵陣。イタリア戦ではあんなに苦労したのが嘘ように簡単に敵陣内に入り込んだ。

もう1つはもうちょっとスペインらしい。相手のDFと中盤の間にできたギャップに入り込んだ選手がボールを受けるってもの。ここでイニエスタが目立ちまくった。相手のDFと中盤の間のスペースを横切る動きを繰り返して相手のマークを外し、間間に顔を出しまくり。そうやってうまく中盤で起点になったと思う。同時にイタリア戦ではSMFらしいSMFとして振舞ってたシルバも真ん中に流れてくる動きを増やす。シルバって選手は今大会で初めて見たから、そんな動きもできたんだなって話。これが後の4‐1‐4‐1の布石になったわけだけど。

要するに間があればスペインらしさが発揮されるってことが判明。前回のイタリア戦では間がなかった。スペインの出し手がいくらボールを自由に扱っていてもイタリアの選手は知らん顔。4‐1‐4‐1のバランス維持と最低限の縦パスをいれさせないことを徹底していた。当然のように縦パスを入れるギャップができあがらない。縦パスが入らないから、前線の選手が後ろに向かってくる。でも、相手のブロックは引っ張り出されない。スペインは中盤に受け手がいなくなる。ますます縦パスが入れられない。完全な悪循環に陥ってた。スペースをつぶしてくる、確固たるベタ引きに弱いスペイン。スペインはスペインの守備のやり方に一番弱かったりするかも。そのスペインの守備については後々。

それが今や縦パスを入れ放題のスペイン。ビジャもスペースのある中盤の場所での引き出しの動きを繰り返してた。前回は完全に消えてしまったイニエスタも、相手ブロックの中にギャップがある今回の試合では水を得た魚。そうやって受け手を浮かせていった。受け手が浮けば出し手は優秀。前線に簡単に起点を作れたと思う。しかも、そういう前線の起点に対して間延び状態のロシアの守備がすぐには効いてこない。前線で時間を作れたことでスペインは後ろからの攻撃参加も活発になった。

そんなこんなでロシアの守備ブロックの弱点を突いて攻撃を繰り返したスペイン。でも、試合開始当初の流れは、攻めるロシアと守るスペインっていう情勢だった。ただし、これはスペインが攻めさせていたっていう意味が強かったかなっていうように思う。スペインはおびき寄せておびき寄せてカウンターっていうつもりだったかもしれない。攻めてロシアにカウンターを食らうよりは、攻めさせておいてロシアにカウンターを食らわせた方が安全っていうイメージか。それが途中で相手のカウンターは怖くないぞっていうことに気づいたのかもしれない。その理由は後で書くけど。

とにかく、立ち上がりのスペインは受身の形となった。ただ、守備ブロックの作り方に関して言えば前回のイタリア戦よりは積極的なものだったかなっていう気がする。前回は守備ブロックを作った時点で2トップがハーフェイラインぐらいの位置。その後ろの4‐4はかなり深い位置に設定されてた。それに対して今回の試合では2トップが縦っぽい関係になりつつ、深い位置の相手のボール保持者にプレッシャーを与えて行ってたと思う。そして、その後ろの中盤は1‐3みたいな形にして、3をハーフェイライン上ぐらいにおいていた。

ロシアの最終ラインは相手のトップがいるからスムーズに持ちあがれない。オランダ戦では最終ラインがかなり高い位置まで出ていけてたのと比べると、かなり大きな違いがあったと思う。よって、最終ラインからいきなり前線へっていうボールは入れにくくなった印象。これに関しては相手の中盤の3のフィルターの存在感も大きかったように思う。結果としてロシアは攻撃でも前後に間延び。後ろからの追い抜きがポイントになるロシアの攻撃を考えると痛すぎた。前線との関係性を作るにはかなり長い距離を走らなければならない。いくら走ってもいい関係性が作れない。そんなロシアだった気がする。

ただし、ブロックが1つ前に置かれたからといってスペインの守備の意識自体が大きく変化したかって言われれば、そんなことはなかった。やっぱりベースは後ろで受ける形。だから、前線からの追いかけ回しなんてものは全く見られなかったと思う。ロシアの最終ラインが中盤の助けを借りつつ、SBを使ってスペインのFWを外しつつ、押し上げて行けば、スペインの守備ブロックはそれにつれて下がっていく。最終的にはイタリア戦で見られたような4‐4‐2の守備ブロックで受ける形になって行った。そして、そんなスペインの4‐4‐2守備ブロック形成に困ったのがロシア。どう困ったかって言うとイタリア戦のときのスペインと同じ悩み。どうやって相手のブロックに入り込めばいいのか分からなくなってしまった。

まずはサイド攻撃。ここまで書いてきたとおり、スペインは最初の時点では高めの守備ブロックを採ってきた。そして、FWがロシアの最終ラインにプレッシャーをかけてきた。そんな相手のプレッシャーから逃げるためにロシアのSBは組み立てに参加しなければならなくなったと思う。オランダ戦のように2バックでパスを回すのは無理だったから。よって、ロシアは最初の時点でサイドに枚数をかけておくことが不可能になった。右は1つ前のサエンコに入った時点で、左は中盤で保持してから、SBが1つ遅れて絡んでいくっていう形になったと思う。だから、ボールがサイドに出た瞬間に数的優位を作るような攻撃は不可能になった。

しかも、スペインの方はロシアのサイド攻撃に対してしっかりとした対応をしてきた印象。これはロシアがスターダードにSMF&SBの関係性を作れるロシアの右サイドの局面でよく見られた。そもそもフラットな4‐4を並べている時点で左右の幅をしっかりとケアできてるスペイン。しかも、その4‐4が待ち構えてるってのがポイント。ロシアのSBの上がりが遅れると、サイドでは単純に1×2でスペインの数的優位ができあがる。ただし、当然のようにサイドに数的優位を作ろうと試みるロシア。そのときにはスペインは中盤をスライドさせて対応。ロシアの右サイドの攻撃ならば、シルバ&カプテビジャ&セナがサイドを固めることで、数的不利の状況を作らなかった。

だから、本当はロシアは右で作っておいて左みたいな展開をすればよかったはず。接近→展開→連続ってやつか。でも、逆サイドは慢性的に人数が足りてないのが左右のバランスを崩しているロシア。スペインの中盤がスライドしているところで逆サイドに送ったとしても、そこは1×1の普通の形。スペインにとっては大きな問題につながることはなかったと思う。そして、この部分についてはロシアの攻撃のやり方にも問題があった気がしてならない。

オランダ戦のロシアは右サイドではアニュコフ&サエンコ&セムショフの関係を固定的に作り、左サイドはジルコフを軸として出入りを激しくするっていうやり方を採ってきた。でも、今回はその左サイドの出入りがないない。アルシャビンもパブリュチェンコもなぜか狭い真ん中に居座る時間がかなり長くなってた印象。結果として左サイドはジルコフ1人に任された。なぜなのか。今回も守備のバランス崩しを行ってきたっていうこと以上に、この部分は謎だった。確かにたまに流れるシーンはプジョールなりセナなりにきっちりと対応されてしまっていたのも事実ではあるけど。

相手のサイドの守備のやり方と自分たちのサイド軽視のやり方によって、サイド攻撃の選択肢が消えてしまったロシア。仕方がないので真ん中から攻めざるを得なくなる。でも、どうやってって話。確かにオランダ戦では低い位置でのポゼッションから真ん中に縦パスを送り込むっていうやり方も選択肢の1つとしてはあった。その入りどころでファールをもらってFKの数も増やした。でも、それはやっぱりオランダの守備との相性の問題があったように思う。

そもそもロシアはどうやって真ん中に起点を作ろうとしていたのか。それは引っ張り出して隙間を空けるっていうやり方だった。低い位置でボールを保持している時に、前線の選手が低い位置に降りてくる。人を見るオランダの選手はそれによって、引っ張り出される。結果として空いた相手のDFと中盤の間のスペースに縦パスを送り込む。つまり、人ベースのオランダの守備、もっといえば守備における個が強いオランダと相性のいい縦パスの送り方だったと思う。

それに対して今回のスペインは4‐4でバイタルを潰してきた。だから、ロシアの中盤の選手が降りて行っても知らん顔。FWに受け渡すのがせいぜいだった。そう簡単には縦パスの入りどころが見つからなかった。たまに縦パスを入れると、セナに潰されてしまうし。イタリア戦での苦戦が嘘のような今回のスペインの攻撃。オランダ戦のよさが嘘のような今回のロシアの攻撃。根本的な部分は共通していたといってもいいと思う。

そして、この4‐4がロシアにとってはさらに厄介な意味を持つ。4‐4コンパクトブロックでスペースを完全に押さえたスペイン。後ろからの飛び出し、というかランニングが攻撃のポイントとなるロシアの攻撃。問題はロシアの選手がどこへ走ればいいんだってこと。前線にボールが入れば、それをスイッチとして追い抜くランニングなんかもできる。でも、今回は前線にボールが入らなかった。じゃあ、ボールを引き出すランニングをすればいい。でも、飛びだすスペースは相手に潰されている。これによってロシアのよさは消えてしまった。

それでもまだ、ロシアにはカウンターがあるじゃないか。ここで再び間延びの登場。思い出さなければならないのは、今回のロシアは守備において前後の分断が起こっていたってこと。この守備における間延びがカウンターの流れにも影響を及ぼす。奪って、飛び出すってなったときに前後の関係が作れない。大体において、守備の勝負どころが定まらなかった今回のロシアはカウンターのスイッチが入りにくかった。前回のように守備の勝負どころが定まってればチームとしてのスイッチが入りやすい。奪った勢いのまま前線にも出て行ける。でも、守備がうまくいかない今回のロシアには守備の勢いのまま攻撃っていうやり方は難しかったように思う。

それにカウンターの流れでもFWの引き出しの動きが少なかったように思う。前回の試合では前線で動きまくり、引き出しまくり、目立ちまくったパブリュチェンコはどこへ行ったのか。アルシャビンはどこへ行ったのか。せっかく相手のSBが前線に出てきているのに、そのウラのスペースを有効活用できていなかったようなイメージ。今回はなぜかFWが真ん中にこだわっていたロシアだった。

そんなロシアの様子を見てスペインが攻勢に出てきたんじゃないかと思う。上に書いたように、ロシアのカウンターに怖さを感じなかったってこと。だったら、自分たちが攻めてやろうっていう。あとは立ち上がりだけはリスクを冒さずに守備をベースにした戦い方をしてたっていう可能性もなくはないけど。どちらにしても、いつの間にかスペインが攻勢に出る状況が生まれてた。ロシアの守備ブロックの間にうまく入り込みながら、相手ゴールに迫っていった。でも、何かが足りないスペイン。崩しきるシーンまではつなげられなかった。

その何かってのは何か。たぶん、相手の最後の最後の守備ブロックに決定的な混乱をもたらすっていうことだったと思う。確かにこの時点で中盤は使えるようになってた。だけど、役割分担気味。セナは配給役、シャビは低い位置を助けつつ機を見て上がっていく、イニエスタは間に入って受ける、シルバはサイドを基本としてプレー。そして、この中盤の選手がFWを抜かさない。FWはトーレスとビジャ。もっと言えばビジャは中盤的に振舞って、トーレスが生粋のFWみたいな。こんな感じの役割分担の中で、スペースには入り込めたとしても、人ベースのロシアの守備に最後は阻まれるっていう状況に陥ったと思う。

それでも結構攻めてたのは確か。そのままの流れでもロシアの守備ブロックに綻びを作り出すことは可能だったかもしれない。でも、皮肉にもビジャが負傷したことで、一気に流れがスペインに傾く。正確に言えばビジャの負傷交代によって行われたシステム変更によって試合の流れが決定づけられた。それぐらいに4‐1‐4‐1のインパクトはすさまじかったと思う。

この4‐1‐4‐1は2列目に配置されたイニエスタ&シャビ&セスク&シルバのすさまじい流動性。どの選手もボールを失わない。相手のプレッシャーの中でもタメを作れる。かと思えば、1タッチ2タッチであっさりと局面を変えたり、チャンスにつなげたりすることもできる。2点目のセスクのアシストがまさにそれ。ただ、そんなボール扱いよりも、それ以前のボールの受け方がそれぞれすさまじくうまい。間を見つけるのがすさまじくうまい。イニエスタとシルバは4‐4‐2の時間からそういう動きを繰り返してたし、シャビとセスクだってクラブでのプレーを見ればそんなのは分かり切ったこと。

そして、局面局面を見るとそれぞれが自分でギャップを見つけて好きなようにその場所に出てきまくってるように見える。それぐらい、どの選手も神出鬼没に動き回ってボールを受けてた。でも、全体としてみるとバランスが全く崩れてないから恐ろしい。それぞれが利己的に好き勝手にギャップに顔を出してきてるかのようなのに、それがチームとして最適な飛び出しになってる。バランスが全く崩れない。それぞれが動き回ってる中でも選手間の距離が一定程度に常に維持されてるイメージ。近すぎず遠すぎず。ダイレクトでも回せるし、自分でも仕掛けられるし、みたいな。

そして、この距離感の形成におけるSBの役割は大きい。おそらく中盤の選手がボールを失わないっていう自信があるからだと思うけど、セルヒオ・ラモスもカプテビジャも超積極的に攻撃に飛び出してくる。今回は立ち上がりから積極的だなって思ってたけど、4‐1‐4‐1になってからは、それに輪をかけて。そして、SBが上がってくることでサイドはSBに任せられる。中盤の4は中に押し込まれる。結果として、さらに近い関係性が生まれたと思う。

そして、そんな中を基本としつつ、そこから外に逃げて行く動きが効果的に決まった。先制点をアシストしたイニエスタの動きがそれ。外→中の流れは相手としても警戒する。ゴールに近づいてくるわけだから。逆に中→外の動きは見失ってしまうシーンが多いと思う。この得点シーンでも外に流れたイニエスタへの対応が遅れ、さらにその外側をカプテビジャに回られ、完全にロシアの守備陣の意識がサイドに振られた。結果として真ん中にできたギャップにシャビが入ってきたシーンだったと思う。

こんな感じのスペインの攻撃に対してロシアが致命的な混乱に陥った。何しろ相手の中盤の誰を見ていいのか分からない。この時点である程度、相手を見るっていうやり方は崩壊したといってもいい。何しろ超流動的にやってくるスペインの中盤だから。そして、何よりも得点シーンのシャビみたいにラストブロックに直接仕掛けられる動きが一番嫌だった。4‐4‐2のスペインに足りなかった中盤がFWになる動き。トーレスも外目にポジショニングをすることで中盤の飛び出しを促進してたと思う。何よりも嫌なのが、中盤の誰が飛び出してくるのかが全く分からないっていうこと。シャビもセスクもイニエスタもシルバも誰でもFWになり得たと思う。

そして、スペインの攻撃は次々にロシアの守備ブロックの急所急所を突いてきたと思う。間間をつなぐパス回し。これを言い換えると、ロシアブロックの中でのパス回しって言える。しかも、スペインの選手はことごとく前向きでボールを扱ってくる。引き出すためにギャップに飛び出し、その前のギャップへ別の選手が飛び出し、再び最初にパスを出した選手が追い抜いてギャップへ…みたいな。前へ前へのパス回し。ゴールに向かうパス回し。スペインの攻撃の圧力はすごかったと思う。

この時点でロシアの方は守備の勝負どころが定まらない。相手の超流動に対して誰を捕まえればいいのか分からない。相手がギャップギャップに入ってくるから対応が遅れる。遅れて対応すると背後に新しいギャップを残してきてしまう。さらに上に書いたように、前向きでプレーするスペインの選手たち。後ろ向きで受けてくれたりすれば、ちょっと遅れても対応できるんだろうけど、その望みの打ち砕かれてしまった。

だからこそ、後半のロシアは前線からの守備へと切り替えたんだと思う。要するに受け手を捕まえる守備に限界を感じたってこと。そもそも受け手に対しても完璧に対応できてたのは言えない今回のロシア。それでも個々の対応で何とかなっていた部分は大きかった。それは上に書いたように、スペインが役割分担的だったから。だから、トーレスに対してベレスツキーみたいにつくべき相手を定めればなんとかなった。ボールを奪えなくても最低限仕事をさせないことは可能だった。でも、今や見るべき相手の数が多すぎる。しかも、その選手たちが自由に動き回る。しかも、ギャップを見つけるのが抜群にうまい。こちらを止めるのは無理だっていう判断。

というわけで、後半は前線からの守備を行ったロシア。でも、相手の出し手にはこれまた安定感抜群のセナ。それを助けに来るセスクなりシャビなり。前線からのプレッシャーをいなされて、狙いどおりに出し手を押さえ切れないシーンが多くなった。そして、そうなると背後のスペースが致命的になる。先制点のシーンもセナをつぶしきれずに間に入ったシャビに出されたシーンが最初だったし。ただ、ロシアとしてはああするしかなかった苦渋の選択だった気がする。

でも、ロシアにとってピンチはチャンスである可能性だって十分にあった。前半にロシアがなぜに苦戦してたか。攻撃においては相手の4‐4に入れないのがその原因の1つだったってのは上にも書いたとおり。でも、今のスペインは4‐1‐4‐1。4‐4から4‐1‐4へ。しかも、中盤の4は前に対して守備をする意識を見せた。1の脇のスペースになんとか入り込めばチャンスは生まれるはず。

でも、後半のロシアはそんな部分を生かしきれない。低い位置でのボール回しが停滞して、相手の中盤の4を外せなかった。そうなると4‐4よりも4‐1‐4を崩す方がより難しくなるって話。どちらにしても前半と同じように縦パスを入れられなかった。しかも、間に入り込んだり、SBが上がっていったりした時に、スペインの中盤の4は後ろに向かっての守備をきっちりとやってた。4‐4の守備ブロックを見ても分かるけど、スペインの中盤は前よりも後ろとの関係性を重視してるように思った。

そんなことをしている間にスペインは逃げ切り体制。シャビ→Xアロンソの交代で4‐1‐4‐1を4‐2‐3‐1へと変更。これで1の両脇に入り込むっていうロシアの最後の希望も断ち切られることとなった。しかも、スペインの守備ブロックは4‐2‐3‐1というよりも、4‐4‐1‐1みたいな形。再びスペインのおびき寄せ作戦が開始。そして、今度はおびき寄せ作戦成功。2点目と3点目はロシアが深い位置まで入り込んだ後の流れからだった。ちなみに、今回のスペインの決定力はGLのオランダ並みに高かったように思う。

イタリア戦の終りにスペインの本領発揮を期待するって書いたら、発揮し過ぎるほどに発揮してきた。4‐1‐4‐1ってなんなんだって話。クワトロ・フゴーネスってなんなんだって話。なんで今まで使わなかったんだって話。弱点があるとすれば1ボランチの場所なんだけど、攻守に渡って質の高いプレーを見せてくれてるから、実質的に弱点なし。中盤の4枚の守備の意識も高いし。前回のイタリア戦では中盤の高めが皆無になったスペインだったのに、今回はそれが一気に4枚へと増えた。そして、個人の能力はもとより、その4人の連動性が半端じゃない。ビジャが無理っぽいのでドイツ戦ではスタメンからこの形か。

対するロシア。最大の謎は上にも書いたように、FWが真ん中にこだわってたこと。どちらもボールに触ることさえ満足にできなかった。パブリュチェンコは高さで相手のCBと勝負させようとしたって可能性もないとは言えない。でも、アルシャビンまでそれにつき合わなくても。やっぱりアルシャビンの怖さはボールを持ってこそ発揮されるように思うので。オランダ戦のようにもっと自由度を高めてタッチ数を増やしてもよかったんじゃないかと思う。
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2008-06-25 Wed 21:01
スペイン×イタリア
<スペイン:4-4-2>
FW:ビジャ-トーレス
MF:シルバ-シャビ-セナ-イニエスタ
DF:カプデビジャ-プジョール-マルチェナ-セルヒオ・ラモス
GK:カシージャス

<イタリア:4-3-1-2>
FW:カッサーノ-トニ
MF:ペロッタ、アンブロジーニ-デ・ロッシ-アクイラーニ
DF:グロッソ-キエッリーニ-パヌッチ-ザンブロッタ
GK:ブッフォン

何の因果か、これで4試合目のイタリアの試合。正直に言うと、イタリアのサッカーはそれほど見るべきものもないんだけど。とりあえず、初戦のオランダ戦は守備的なメンバーで戦うものの、消極的な姿勢が災いして、結果として守備も攻撃もできなくなったイタリア。何のためにガットゥーゾとアンブロジーニを高い位置に置いたんだよっていう試合内容だった。詳しくは、これまで何度も書いてきたとおりなので省略。

2戦目のルーマニア戦は一挙に攻撃的なメンバーに転換。攻撃ではサイドを起点にチャンス量産。ただし、守備がかなり危険な状況に陥った。初戦に併用したアンブロジーニとガットゥーゾをどちらも外したこの試合。結果として守備のスタートが切れなくなった。中盤の場所では、みんながなんとなくボールサイドに寄る。そんな中盤の守備を、ルーマニアの局面でのパス回しと、そこからの展開力によって、あっさりと外されてしまったイタリア。DFとMFの関係性も酷いもので、何度も何度もDFが晒されまくった試合だった。PKを含めて守備で耐えきったのは、ブッフォンのおかげ。

そんな1戦目と2戦目を経て、やっとこさ3戦目で攻守のバランスが取れたメンバーを起用。中盤はピルロ&デ・ロッシ&ガットゥーゾ。そして、ここで同時に守備のやり方を思い出したイタリア。4‐3で確固たるラストブロックを作り、相手の攻撃を跳ね返し続けた。1つ前のルーマニア戦では大変なことになってた、DFとMFの関係性が嘘みたいに改善。一体感を持ってバイタルエリアを潰すブロックを作り出せてた印象。

そんな守備をベースに攻撃はトニ任せ。トニに入れとくから、周囲のペロッタ&カッサーノと3人で何とかしてねっていうやり方。ただし、トニが絶不調の今大会。収まらないのなんのって。だから、全体としてよかったかって言われると微妙。それでも、そんなトニがもらったPKをきっちりと生かし、完全に守備だけに専念できる体制を作り出した。守備をベースとするイタリアらしい戦い方を思い出した試合になったと思う。

というわけで、やっと光が見えてきたような気がしたイタリアのGL最終戦。でも、残念ながらスペイン戦ではバランスが回復した、光が見えたメンバーで戦えないことが決定した。ピルロとガットゥーゾが出場停止。攻撃の中心ピルロと守備の中心ガットゥーゾが使えない。せっかく方向性が見えてきたのに、その方向性があやふやになってしまう可能性も少なからず存在する。結局、実際にどうなったのかってのは後のお楽しみ。

さて、ピルロとガットゥーゾが出場停止のイタリアは代わりにアクイラーニとアンブロジーニを起用。ミラン優位からローマ優位の形へ。アクイラーニとデ・ロッシ、ペロッタっていうローマの中盤ができあがった。ただし、残念ながらトッティがいないこのチーム。ローマからトッティを引いたら、かなり痛い。仕方がないので、トッティの後継者になりそこなったカッサーノにトッティの役割を担ってもらうか。ないな。でも、後で書くようにカッサーノが中心にいたのは確かだったと思う。トッティ的な意味ではなかったけど。

さて、そんなイタリアの戦い方はどうだったか。そんなイタリアの戦い方は完全に守備に重点を置いたものだった。メンバー変更の不安はどこへやら、メンバーが代わっても、方向性はブレなかったってことか。やっぱりイタリアと言えば守備だろってことをフランス戦で完全に思い出したんじゃないかって気がする。守ると決めたイタリアは本当に守るぞって話。試合の見所はイタリアの守備ブロックをスペインがどのように崩すかっていう一点に絞られたといってもいい。

そんなイタリアの守備意識は本当に高まってた。それをよく表してたのがトニの守備意識。今までの試合では完全に守備を免除されてたトニ。初戦のオランダ戦なんかは、そのせいで圧倒的にオランダに主導権を握られたと思ってるわけだけど。とにかく、トニは全く守備に関心がなさそうだったし、ブロックにすら参加しないことも多かったと思う。そんな過去3戦のトニに比べると、守備に関しては優等生と言ってもよかった。あくまでも過去3戦と比べるとだけど。

まず、立ち上がりの時間は深い位置の相手の最終ラインに対して積極的にプレッシャーをかけに行く姿勢が見られたと思う。結果としてスペインの最終ラインは低い位置に釘づけにされた。スペインとしては最終ラインがスムーズにボールを持ちあがることができないから、中盤が助けに行くしかなくなる。4‐4が自陣に入った状態で攻撃の組み立てを開始しなければならない状況に陥ったスペイン。相手ゴールまでは、まだまだ距離が遠かった。

そうやってトニが相手の最終ラインに対してプレッシャーをかけているときに相方のカッサーノは何をしてたか。これがなかなか特徴的だったように思う。このときカッサーノは左サイドのケアをしてた。要するにスペインの右SBのセルヒオ・ラモスを見ていた。守備ブロックの左右のバランスを崩すのはブームなのか。とにかく、カッサーノに押さえられたセルヒオ・ラモスは使えないスペイン。結果として、攻撃の組み立ては左寄りで行われることになったと思う。

そんなスペインの立ち上がりの典型的な攻撃。プジョール→カプデビジャ→シャビ→シルバ→オーバーラップのカプデビジャ。相手のトニが最終ラインにプレッシャーをかけてくるとは言っても、ボールを奪おうっていうほど厳しい質のものではなかった。それに後ろもトニの守備についてきてなかった。よって、中盤が助けに来るならば、スペインは何の問題もなく攻撃へと移ることができたと思う。上に書いたように、ただ、相手ゴールまで遠いってだけ。それでもめげずに空いている左サイドを起点にして、なんとか深い位置まで入り込もうっていう意図が見られた立ち上がりの時間帯だった。イニエスタが左に出てくるシーンも見られたし。

ただし、ここで問題なのは本当に左サイドが空いてたのかってこと。カッサーノがセルヒオ・ラモスをしっかりと見ている時点で、相手は右からは作ってこないと踏んだイタリアの中盤。後で書くように、この時点ではイタリアから見て完全に右寄りのポジショニングはしてなかったけど、気持は右サイドにあったって言える。だから、スペインがそのサイドに起点を作ったら、すぐにブロックを寄せる準備はできてた。ただし、その割には相手にそのサイドを侵攻されるシーンが目立ったのも事実。ただし、イタリアにとっては想定の範囲内だったと思う。

今回のイタリアの守備の勝負どころはあくまでもラストの4‐3ベタ引きブロックだった気がする。フランス戦で自信を深めた、まさにその形。だから、中盤の場所で行うのは、一応の守備。一応、ゴールまでの最短距離は切っておこうっていう守備。だから、相手がサイドに起点を作ったときに、そのままサイドを侵攻していくようなやり方を採るならば、イタリアにとっては大成功。ボールサイドにダイヤモンドを寄せることによって、とにかくサイドから中へと入られる部分だけを切れればいいっていう中盤の守備の考え方だったと思う。

要するにイタリアの守備に原則は、下手にボールを奪いに行こうとするなってことだったと思う。中盤の守備での目標は、相手の攻撃を遠回り遠回りをさせること。最短距離だけを抑えつつ、ゆっくりと攻めさせて、自分たちは(わざと)ズルズルとブロックを引いて、勝負の4‐3ブロックを作るっていう考え方。極端なことを言えば、その勝負の4‐3ブロック以外の場所では守備の勝負に行くことは許されなかった。

これには2つの意味があった気がする。1つは積極的な要因。要するにラストの4‐3ブロックに絶対的な自信があったってこと。別に苦手な場所で勝負する必要はない、相手をこちらの土俵に引き入れようっていう考え方。フランス戦を念頭に置いた要因。もう1つは消極的な要因。こちらはルーマニア戦から。下手に中盤で勝負に行って、ギャップを残すのは危険だってこと。そんな危険を冒すぐらいなら、中盤で守備の勝負に出る必要なんかないよってもの。どちらにしても、結果として生まれたのは、超消極的な守備のやり方だった印象。

こんなイタリアの守備のベースは時間とともに守備のやり方が変化しても変わらなかった。その変化ってのがどういうものかっていえば、より受ける意識が強くなったってことだったと思う。前半の10分過ぎになって、トニが相手の深い位置の最終ラインへのプレッシャーをやめた。ただし、今回の試合ではあくまでも守備の優等生のトニ。プレッシャーをやめた後には、しっかりと後ろと一体化して守備ブロックの一員になってた。今までの3戦ではトニと中盤の間に相手のボランチが入り込むってことが多々あったから、それから比べればかなりの改善。

18――9―――    ―――9―――
――20―22――   18―13―20―22
―13―10―――   ―――10―――

そして、立ち上がりは左の図みたいな形だったイタリアの守備ブロックが、受ける意図を強くしてからは、右の図みたいな形へ変化した印象。そういう意味では左右のバランスが回復したかのように見える守備ブロック。確かに見た目的には4‐1‐4‐1の守備ブロックが作られたかのように見えたけど、その内実はやっぱり左右のバランスが崩れてた。カッサーノはあくまでもFWだったし、守備でも特別な役割を与えられてた。

カッサーノの守備での役割はあくまでも、セルヒオ・ラモスを押さえるっていうもの。セルヒオ・ラモスが上がってくれば、それについてしっかりと低い位置まで戻ってくる。でも、セルヒオ・ラモスが上がってこなければ、いくら自分の背後に入られたとしても、下がってきて守備はしない。早い話が、マンツーマンでセルヒオ・ラモスについていたって言える。そして、この2人の関係性がなかなか面白かった。後で書くように、カッサーノは攻撃でも左サイドでのプレー時間が長かった。セルヒオ・ラモスとしては上がりたいところだけど、スペースを残してくるのは危険っていう。この2人の心理的な戦いはすさまじかったんじゃないかと思う。

とにかく、セルヒオ・ラモス×カッサーノの関係性を踏まえた上で、イタリアから見て左サイドに入られたらどうするのか。その場合は原則に立ち戻って、アンブロジーニが対応することになってた印象。あくまでもイタリアの守備は4‐3‐1‐2であり、その左サイドに入ってたのはアンブロジーニ。ただ単に相手が自分たちの左からは攻めてこないだろうっていう予測の下アンブロジーニは中寄りで守備をしてただけの話。ただ、その予測にはカッサーノがセルヒオ・ラモスを押さえてるっていう根拠があったけど。

だから、スペインがイタリアの左サイドに起点を作ったりすると、イタリアの守備の本性が現れた。ビジャが左サイドに流れたときに対応したのはアンブロジーニ。カッサーノはやっぱりセルヒオ・ラモスが上がってこない限りは戻ってきて守備はしない。ラストブロックはやっぱり4‐3で作られる。セルヒオ・ラモスが上がってくれば(ほとんど上がってこなかったけど)、4‐3+1って形になってたはず。そんなイタリアのやり方に対して、スペインが工夫を見てたわけだけど、それは後々の話。

そして、その工夫を見せる前のスペインはかなり辛い状況に陥ったと思う。それは何かっていうと、敵陣内にボールを運べないっていう状況。立ち上がりの時点では左サイド起点の攻撃で難なく敵陣深くまで入り込んでいたスペイン。あとは相手の4‐3ベタ引きブロックをいかに攻略するかがポイントになるかとも思われた。もちろん、そのイタリアの4‐3ベタ引きブロックを攻略するのはそう簡単ではないんだけど。

でも、相手が4‐1‐4‐1に見えるブロックを作ってからは、そんなラストブロック崩しに重点を置けなくなった。その前にどうやって相手を4‐3ブロックに押し込むかってところが大変な作業になった。問題はなぜかっていうこと。これはちょっと難しいけど、ポイントは立ち上がりの敵陣入りはことごとく左サイドから行われてたってことになると思う。その要因の1つは、ここまで書いてきたように右サイドが押さえられてたから仕方なく。ただ、それだけでは不十分。なぜならば、スペインの左もイタリアがしっかりと押さえてれば、深い位置まで入り込むのは難しいわけだから。逆にいえば、立ち上がりのイタリアはスペインの左サイドを押さえ切れてなかったって言える。

立ち上がりのイタリアは区切るとすれば、やっぱり4‐4‐2だった。トニが高い位置から行き、イレギュラーな形とは言っても、相方のカッサーノはトニと同じ高さにいた。そして、中盤の4はあくまでもFWよりも後ろに配置されてた。だから、カッサーノがセルヒオ・ラモスを見ているとは言っても、後ろの中盤は完全に右寄りに配置するわけにはいかなかった。スペインは自分たちの右サイドに来るだろうなとは思いつつも、完全にそちらのサイドに寄るわけにはいかなかたってこと。完全に右に寄ったとしたら、カッサーノのウラにスペースができてしまうわけだから。

というわけで、スペインが左サイドに作った場合は、イタリアはそこに入ってから本格的に守備をすることになった。気持ちはそのサイドにあったとしても、完全にボールサイドに寄せるのは、あくまでもスペインが左に起点を作ってから。よって、対応が1つ遅れることとなる。スペインはその間隙を縫って、深い位置まで入り込んだ印象。ただし、イタリアとしてもこれは失敗ではない。上で触れたように、イタリアは別に中盤で奪うつもりは全くないから、相手が中に入ってこなければ十分に成功だったって言える。

でも、イタリアが受ける意図を強くしたことで、スペインの左サイド狙いは停滞することとなった。その理由は簡単。見た目上とは言っても、カッサーノが中盤に入ったことによって、上の図で示したとおりに、イタリアの中盤のダイヤモンドは完全に右寄りに移動することができた。見た目は4‐1‐4‐1になったことからも分かるとおり、右サイドにも選手が常駐することになった。スペインが立ち上がりに左サイドを侵攻したのは、相手の対応が1つ遅れたから。そういう状況がなくなったこととなる。

さて、困ったスペイン。というか、見てるこっちが困った。スペインが全然縦パスを入れられなくなってしまったことで、試合に動きがなくなってしまったから。というか、なんでこんなにスペインは前線にボールが入れるのが下手なのかっていう話。今大会では初めて見たわけだけど、今回の試合を見る限りでは、はっきり言って3連勝で抜けてきた意味が分からなかったりする。次で本領を発揮してくれるのか。とにかく、今回のスペインは組み立てが恐ろしく下手だった。スペイン=中盤はどうしたのか。

じゃあ、なんでそんなに縦パスが入らなかったのかって問題。これに関しては、受け手がいなかったってことに尽きると思う。まず、そもそもが4‐4‐2の形であるスペインには専属的なトップ下が存在しない。だから、誰かしらがその場所で受け手にならなければいけない。じゃあ、誰が入るのかってのが今回のスペインの大問題だったと思う。

まず、CMFの2枚はずっと低い位置にいる。セナもシャビも相手のブロックの外側でタッチ数を増やし、出し手となろうとする。受け手がいないのに。FWの2枚はトップ下の場所には降りてこない。サイドに流れるか、1発ボールを引き出すウラへの飛び出しか。横か前か。後ろっていう選択肢はなかった。さらに左のシルバはSMF的に振舞う。さらにさらに、頼みの綱のイニエスタが今回の試合ではほとんど目立てなかったってのが一番痛かったように思う。ちなみに、SBはセルヒオ・ラモスが押さえられ、カプデビジャも高い位置では受けるのが難しくなった。しかも、そんなこんなで前線がボールが入らない状況でどんどんと後ろに人数が飽和していったと思う。

というわけで、極端なことを言えば前線でボールを受けてくれる人が全くいなかったスペイン。仕方がないので出し手が無理やりにボールを送り込んでやるしかないかって話。一応、セナもシャビも出し手としては超一流。ただし、受け手の助けがない状況で出し手が無理やりに前線に入れるのも難しい状況だった。これに関しては、イタリアの守備のやり方も関係してくる部分。

ここにおいてイタリアの守備の原則がスペインの攻撃陣に重くのしかかったと思う。イタリアの守備はラストの4‐3が勝負どころ。その4‐3以外では守備の勝負をせずに、相手の攻撃の最短距離だけを切る。この原則により何が生まれるか。まず、スペインの選手が低い位置でボールを持ってるときに、イタリアの守備ブロックにギャップが生まれない。奪う意図がないんだから、4‐1‐4‐1のバランスを維持したまま待ってるだけ。でも、縦パスはケアしてる。例えばセナとかシャビはボールを持つことは認められるけど、縦に入れようとすると、アンブロジーニなりペロッタなりにコースを切られてしまう。

そして、そんな相手の守備ブロックをずらせなかったのが今回のスペイン。これもイタリアの守備のうまさによる部分が大きかった印象。カッサーノ×セルヒオ・ラモスの関係性は未だ有効だってことを思い出さなければならない。この関係によって、スペインは組み立ての最初のところで左右の幅を使うことができなくなってしまった。結果として相手の4‐1‐4‐1は本当に微動だにしない。バランスは崩さず、それぞれが最短距離を切る仕事だけをしっかりとやってくる。これでは受け手の協力なしで、縦に入れるのは相当難しい。

よって、前半の長い時間をスペインは無駄なパス回しで終わらせてしまった。横パス横パスの繰り返しで、しかもその横パスが無意図。相手のブロックを横に間延びさせて縦パスを入れやすくするだとか、相手に狙いどころを定めさせずに徐々に押し上げて行くだとかっていうアプローチには全くつながらなかった。縦パスが入らないから仕方なしの横パスっていうイメージ。スペインがボールを圧倒的に保持してるのに、そのほとんどがスペイン陣内っていうおかしな状況が生まれてたと思う。

ちなみに、イタリアの方も徹底していた。スペインの前線の選手がボールを引き出そうと中盤の背後に入ってきたら(ここまで書いてきたとおり稀だったけど)、迷わずにブロックを押し下げた。つまり、出し手は放っておいた。オランダ戦と比べるとえらい違い。オランダ戦では中盤の背後に入るオランダの受け手と、中盤の前にいるオランダの出し手の間で完全にどうしていいか分からなくなってたから。対する、今回は潔かった。やっぱり4‐3のラストブロックが勝負どころだったんだと思う。そういう守備の勝負どころの意思統一が図れただけでも、かなりの進歩だった印象。

そんなこんなで動きのない状態で続いた前半。それが前半の30分を境に徐々に変化していく。ここで登場するのが上に書いたスペインの工夫。具体的にはイニエスタとシルバのサイドを入れ替えた。相手の中盤が寄ってる左サイドよりも、セルヒオ・ラモスにしか興味がないカッサーノがいる右サイドの方が攻めやすい。ただし、このサイドは同時にセルヒオ・ラモスの助けが期待できない。イニエスタに入っても、孤立してつぶされるシーンが多かった。だったら、個人で勝負できるシルバを置いた方がいいっていう考え方。

そして、この考え方が見事にはまる。イタリアの中盤の守備は最短距離を切るっていうのはここまで書いてきたとおり。だから、セナなりシャビなりから右サイドへ展開する斜めのボールは押さえられてない。シルバは右サイドで待ってただけだけど、そこに出し手からボールが供給されることが多くなった。そして、ボールを受けたシルバは仕掛けに入る。焦ってアンブロジーニが戻ってくるシーンが多くなったと思う。

イタリアとしては、危険が明らかに増えた。というわけで、全体のブロックを押し下げる。4‐1‐4‐1のバランスのいいブロックで相手の攻撃を停滞させる時間は終わり。4‐3でラストを固める本来の守備の勝負へと移行した。その後のスペインは深い位置に入り込むシーンが増えていったと思う。相手を押し込んだことで左右の幅を利用する展開も目立つようになっていった。

ただし、それでも相手のゴールまではまだまだ遠い。4‐3で守りに入ったイタリアのブロックをどう崩すのかって部分。で、結局のところそのイタリアのラストブロックを崩すことは最後までできなくなったと思う。スペインの攻撃はまるでミランだった。引いた相手に対してFWが消えてしまう。しかも、さらに悪いことにトップ下のセードルフとカカがいないミラン。だから、中盤での圧倒的な保持にもつながらない。相手のブロックを崩し切る前にミドルシュートで攻撃が終わるっていう形の繰り返しだったように思う。

スペインとしては敵陣に入れず、敵陣に入ってもラストを崩せずっていう散々な前半の流れだったと思う。そして、そんな流れを変えるヒントも見いだせてなかった印象。でも、後半になるとそんな流れに変化が生まれた。それはイタリアが守備のやり方を変えてきてくれたから。前半の4‐1‐4‐1が厄介な存在だったのに、後半のイタリアはペロッタを1つ上げた4‐3‐3へと変更。イタリアはトップの3も特別厳しく守備をしてくるわけじゃないから、その後ろの入るのは楽。そして、トップのウラに入ることはイタリアの4‐3に仕掛けられることを意味する。前半に相手の4‐3に仕掛けるのにあれだけ苦労したのが嘘のよう。

それにイタリアは後半になって攻撃の時間を延ばしてきた。前半よりも攻撃の回数が増え、攻撃に関わる人数も増えた。そして、今回のイタリア、というか今大会のイタリアは攻撃後の切り替えのまずさがある。奪われたあとに、なんだこれ?っていうエアポケットが空いてしまうシーンを頻繁に見かける。何が言いたいかっていうと、後半はスペインのカウンターの流れが増えたと思う。前半は無為に横横につないでいたスペインが縦縦で相手ゴールに向かうシーンを増やした印象。

ちなみに、後半のスペインが縦への意識が強まった要因にセスクの投入があった。セスクの前への飛び出しによって、全然足りてなかった前線の枚数が増えることになったと思う。後ろの出し手はセナで十分だと思うから、相手はセスクの方がいいかなっていう気がする。ちなみに、セスク投入後は守備でもセナを底においたダイヤっぽい形になってた。結果としてより前でボールを奪うチャンスが増えたと思う。

対するイタリアの交代はどうだったか。ペロッタ→カモラネージの交代は正解だったように思う。GLの戦いが嘘のようにカモラネージは運動量が増してた。本来の姿に近かったように思う。攻撃でも守備でもいろいろな場所に顔を出す献身的な動きが光ってた。このカモラネージの交代で、完全に3枚になりかけてた中盤の場所に再び厚みが取り戻された印象。

問題はカッサーノとディ・ナターレの交代。まず、この交代でセルヒオ・ラモスへのマークがあいまいになった。意図的にあいまいにしたのかもしれないけど。要するに普通のバランスで守備をしようとしたってこと。確かに4‐3‐3というか、4‐3‐2‐1というか、とにかく見た目のイレギュラーさはなくなってた。でも、結果的にセルヒオ・ラモスの攻撃参加が前半よりも圧倒的に多くなったわけだけど。

それ以上の問題は攻撃。今回のイタリアの攻撃はそのほとんどがカッサーノを経由して行われていた。この傾向はフランス戦の途中から見られたわけだけど。チームとして不調のトニをあきらめた可能性が高い。トニさん、あんた攻撃で特別な存在じゃなくなったんだから、守備に参加しなよってのが今回のトニの守備の頑張り。か、どうかは知らないけど。

とにかく、カッサーノが攻撃の中心になったイタリア。よって、トニが中心にいたころのような1発ロングボールの回数が明らかに減ったと思う。ピルロ不在の影響もあるかもしれないけど、やっぱりトニを見なくなったからってのが本当のところだと思う。ルーマニア戦でトニに1発ボールを供給しまくってたデ・ロッシは今回もいたわけだから。ちなみに、回数が減ったとはいえ1発のパスが皆無だったわけではない。でも、そのターゲットもトニだけじゃなくてカッサーノってことが多かった。どんだけの手のひら返しだっていう。

で、その中心となるカッサーノが今回いたのが左サイド。攻守の両面において左サイドでプレーしてたカッサーノ。チームの中心が左サイドにいるわけだから、イタリアの攻撃は必然的に左サイドに寄ることとなった。結果としてグロッソの役割が変化する。今までのグロッソは前に空いたスペースを駆け上がる役割。でも、今回は組み立てをする役割。内田から加地へみたいな。ビルドアップのパス回しに参加し、カッサーノに縦パスを入れる。で、そのカッサーノと関係性を築くように前線に出て行く。とにかく、前へ前への今までのグロッソとはちょっと異質。

ついでに、中盤の左寄りに位置するアンブロジーニの攻撃面での役割も大きくなった。フランス戦でのガットゥーゾもそうだったけど、2人だと攻撃では消えてしまうけど、1人なら目立つっていう面白い状況。アンブロジーニは、グロッソと入れ替わりで低い位置に降りて行ってボールを受け、グロッソ&カッサーノの関係性を作ったところでボールを供給するみたいな役割を担ったり、自身がそのサイドの関係性に参加したりと、大忙し。

結局、左サイドはカッサーノ&アンブロジーニ&グロッソの関係性がいい形で作られることとなった。本当はトニが絡んでくるシーンもあったけど、ここには相手のプジョールがしっかりと対応していて、有機的な関係性の形成にはならなかったと思う。トニはやっぱりクロスを中で待つっていう方が似合ってたし、効果的だった。そもそもトニをゴールのゴールへの役割を重視するために、組み立てでの役割を免除したんだと思うし。

というわけで、今回のイタリアの攻撃で目立ったのが左からのクロスにペロッタとトニが中で待つってもの。幅を使う右サイドへの展開もあったけど、右はザンブロッタが1枚。どうしても深い位置には入り込めないから、アーリークロスを入れるっていうパターンが増えた印象。とにかく、カッサーノ中心の攻撃で少ない人数でもそれなりに形を作り出したのが今回のイタリアだったと思う。

そのカッサーノを交代させた後のイタリアの攻撃には怖さがなくなってしまった。後半に入ってから、明らかにカッサーノは目立たなくなってたから、それを考えての交代だったと思うけど。そういう意味では妥当だった。とにかく、カッサーノがいなくなったことで、攻撃の中心は再びトニへ。でも、知ってのとおりに収まりが悪いトニ。さらに、真ん中寄りになった攻撃。前半のようにサイドで起点を作っておけば奪われたとしても相手のカウンターはそれほど怖くない。でも、真ん中寄りの後半は奪われると危険。スペインのカウンターが増えた要因はここら辺にもあったと思う。

ただ、スペインのカウンターが増えたとは言っても、怖さがあまりなかったように思う。それはスペインの守備のやり方が本質的にカウンターに向いていないから。スペインの守備は4‐4‐2。なんとなく4‐4‐2の3ライン形成と言うと、最終ラインを高めに置いてコンパクトなブロックを作るっていうイメージがある。攻撃的なスペインだし。でも、今回の試合のスペインを見る限りでは真逆。最終ラインを低めの位置において、そこに中盤の4を引きつける。だから、コンパクトと言えばコンパクト。

結果としてイタリアの出し手は浮きまくり。しかも、イタリアの前線の選手が下がって受けに行った場合も深追いはしない。基準は最終ラインだから、中盤の選手が深追いをするとはがれてしまう。実際にはがれかけてるシーンもいくつか見られたし。とにかく、出し手をフリーにしてるんだから、目標は受け手。ただし、この受け手に対する対応がどうなのかってのは正直なところ分からない。今回のイタリア相手には堅く守れてた。でも、イタリアの受け手の選択肢が少ないことも事実。

相手が選択肢を増やしてきたらどうなるか。たぶん、バイタルを潰して4‐4で跳ね返すような守備のやり方を取るのかなって気がする。間に入ってきたところは前後で挟み込み、前に対しては2ラインを置くことでゴールへの隙間を空けないっていう形の守備か。とりあえず、イタリアに負けず劣らず消極的な守備のやり方を採ってきたってことだけは確か。

よって、相手のボールを奪う場所は必然的に自陣の深い位置になる。組み立てがうまく行ってない前半は、これが苦しさを生んだ。ボールを奪った場所から相手ゴールまでが遠いのなんのって。後半はカウンターの流れだけど、これまた相手ゴールまでが遠い。縦縦に行く間に味方がついてこれない形。カウンターは単発で、FWはがれで行われることとなった。

ただし、スペインにしてみればこれでいいのかもしれないとも思う。低い位置に守備ブロックを置くってことは、相手をそれだけおびき寄せるってこと。深い位置でスペインが奪った瞬間に相手の背後にはスペースが有り余ってる。そして、スペインの2トップはトーレスとビジャ。なるほどなっていう。今回は相手がイタリアだったから、おびき寄せてるはずなのに、相手の後ろにはしっかりと人数が残ってた。攻撃に人数をかけてくるチームならば、トーレス&ビジャの2トップが生きてくる可能性が高いかもしれない。

とりあえず、今回の内容ではスペインの強さが全く見えてこなかった。守備には確かに穴がないとはいえ、消極的なやり方で見るべきものもなかったし、攻撃には全くスムーズさを感じなかった。まさか、こんなサッカーでGLを勝ち上がってきたわけでもないだろうし、本当に謎。1発勝負の決勝T用の戦い方が今回のものだったのか、イタリアが恐ろしく守備的に戦ってきたことで、そのペースに巻き込まれてしまったのか。次の試合での本領発揮を期待したい。
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2008-06-24 Tue 00:15
オランダ×ロシア
<オランダ:4-2-3-1>
FW:ファン・ニステルローイ
MF:スナイデル-ファン・デル・ファールト-カイト、エンゲラール-デ・ヨング
DF:ファン・ブロンクホルスト-マタイセン-オーイエル-ブラールズ
GK:ファン・デル・サール

<ロシア:4-4-2>
FW:アルシャビン-パブリュチェンコ
MF:ジリヤノフ-セムショフ-サエンコ、セマク
DF:ジルコフ-コロディン-イグナシェビッチ-アニュコフ
GK:アキンフェエフ

GLでは完璧に見えたオランダの攻撃をおさらい。攻撃時のオランダは2‐4‐3‐1みたいな形を採ってくる。役割としては後ろから2列目の4が出し手、前から2列目の3が受け手。4枚横並びの出し手の方は幅を使いながらゆったりとポゼッションを行い、相手のブロックを横に動かして隙間を空けながら、縦パスを入れるタイミングを図る。受け手の3は2列目で自由に動きながら、相手の間に入り込む。このとき両サイドが中寄りに入ってくるのが、新生オランダの攻撃のポイント。

そんな出し手と受け手のタイミングがあったところで縦パスが供給される。そこで攻めきれるなら一気にスピードアップ。受け手が中寄りになっているから、SBが上がっていって幅を確保するようにする。イタリア戦ではスナイデル&ファン・ブロンクホルストの関係性がいくつも作られてたと思う。前に入った時にエンゲラールも攻撃に飛び出していくシーンが目立つけど、効果的に機能したシーンは見たことがない。

ただし、いつでも縦パス→即ゴールへっていう形が作れるわけじゃない。このときのオランダの潔さが1つのポイントになる。縦パスを入れてもゴールに向かえないと判断すると、あっさりとバックパスをする。そういう様子見の縦パスが多いと思う。そして、その様子見の縦パスが相手ブロックを低い位置に釘づけにさせる。出し手の4が押し上げられる。横横縦後横横みたいなオランダの組み立てによって、相手ブロックはズルズルと引かされてしまうことが多かった。

ここで忘れてはいけないのは、そんなオランダのポゼッションサッカーが機能したGLでは、相手が引いて受ける形の守備をしてきたってこと。ルーマニア戦は見てないけど。とにかく、イタリア戦とフランス戦ではオランダの出し手の4を浮かせることができてた。そして、この4が浮いた時点でオランダの勝ち。相手の中盤の選手は自分の前のオランダの出し手を見るのか、後ろで動いてる受け手を見るのかはっきりしなくなってしまった。結果としてオランダの出し手はかなり高い位置まで自由に入り込むことができる流れに。結果として受け手との距離が縮まり、縦パスを入れやすい状況につながったと思う。

ただし、同じように引いて受ける形を採ってきたイタリアとフランスの守備は微妙に異なってたのも事実。それがFWの役割。イタリアのトニは全く守備をしなかった。だから、4-1-4-1の前線の4-1の間に相手の出し手が入り込んでしまった。結果として中盤の4が前にも後ろにも気を使わなければならないこととなった。それに対してフランスの守備時の2トップ(アンリとリベリ)はしっかりと守備ブロックに参加したと思う。そして、2人が任されたのはオランダのボランチへの対応だった。

基本は引いて受ける形のフランスだから、相手のボランチに対しても2トップが厳しく守備をするシーンは見られなかったのは確か。事実、オランダの出し手の4の間でのパス交換には普通にボランチが参加してた。ただし、フランスの2トップはそんなボランチからの縦パスを切る役割を担ってた。ボールは入れさせるし、横パスとかバックパスをするのは自由に出させるけど、縦パスだけは入れさせないぞっていう。そして、見事にオランダの2枚のボランチは縦パスを前線に供給することができなくなったと思う。

結果としてフランス戦でのオランダはスムーズに前線にボールを供給できなくなったと思う。結果としてスナイデルとかファン・デル・ファールトがボランチの位置に降りてくる流れに。本当はその2人を前線の起点にしたかったのに、それができなくなってしまった。仕方がないので右サイドにカイトの場所に起点を作ることが多くなったと思う。完璧に組み立てられたイタリア戦ではあまり目立たなかったカイトに。

こんなことからオランダは出し手に来られると案外もろいんじゃないかっていう疑念が沸いたりしたわけ。実際にイタリア戦もフランス戦も相手が前から来たことで、オランダは前半のようなポゼッションサッカーを行うことができなかった。その代わりにカウンターで追加点を重ねたわけだけど。問題はこれが狙いどおりだったのか、そうじゃなかったのかってこと。要するに、ポゼッションができたのにしなかったのか、それともポゼッションができなかったのかってこと。答えは永遠に闇の中。

そもそもオランダは前線から来られるとやばいんじゃないかっていう疑念に対してはもっと分かりやすい予兆があったことはあった。全てはイタリア戦とフランス戦の後半の流れに表れてた。どちらのチームも後がなくなった後半は前半とは打って変わって前線から積極的なプレッシャーをかけてきた。それに対してオランダは前半とは全く違った戦い方を採る。ポゼッションは放棄して前線にとにかく送り込む作戦。これはおびき寄せてウラを取るっていう作戦から来たものだろうって思ってた。もちろん、そんな理由も大きなウェイトを占めていたと思う。でも、実はプレッシャーに弱くて蹴ってしまう側面もあったんじゃないかと思う。結局、真実は闇の中。

ただ、加えて言えば、フランス戦では立ち上がりに厳しく来たフランスがその守備のペースを落とすまでオランダは自分たちの形を作ることができなかった。フランスはその守備を続けてればよかったのにってのは、その試合の記事でも書いたとおり。オランダとしてはフランスが守備のペースを落としてくれて助かったって感じかだったかもしれない。その後すぐに自分たちのポゼッションサッカーに入り、すぐに先制点を奪ったオランダだった。先制点は1発ボールからのつながりのCKから。ただ、この1発ボールがSBのファン・ブロンクホルスト→右SMFカイトを狙うものだったのは象徴的。出し手はボランチではなく、受け手は左サイドではなかった。フランス相手にやりたいことを微妙にやらせてもらえなかったことを表してたかもしれない。

1つめの弱点はこれぐらいにしておいて、次に2つめの弱点について見て行きたい。フランス戦のときの記事でちょっと詳しく書いた守備の問題について。オランダの守備はよくも悪くも個人任せ。前線からの守備はせず、相手がボールを自陣に入れてきたところで守備を開始。その守備の開始が個人任せ。ある程度、見るべき相手をある程度定めておいて、入りどころを狙うっていう考え方がベースにあったように思う。

イタリア戦ではこれが成功。なぜならばイタリアの攻撃は選択肢が少なかったし、イタリアの受け手はあまり動かずにボールを受けようとしていたから。結果として、オランダの守備陣は文字どおりに入りどころを狙って守備をすることができてた。対するフランス戦ではあっさりと自陣に入られるシーンが多くなる。それはフランスのマルダ、リベリ当たりが積極的に動いてボールを引き出してたから。もともと対応すべきだったオランダの選手の責任下を離れた相手が浮いてしまっていた。それでも、そうやって前線にボールを入れたフランスが結局は個々の分断攻撃をしてきたから、オランダはあっさりと守ることができたと思う。要するにイタリア戦もフランス戦も個×個の勝負を作ることができた。

オランダの守備相手にはいかに組織×個の局面を作るかがポイントになると。オランダの守備はあくまでも入りどころ、入ったところに対する守備。入る前で引っ掛けるような守備はあまり行われない。相手より先に触るとすれば、それも個々の出足の速さ。それでも入りどころに対して、忠実に個々が守備をすることで、相手の攻撃の流れを分断する。繰り返しになるけど、フランス戦とイタリア戦ではそんなやり方が機能した。

でも、そんな入りどころの守備が効く前に次に展開したらどうなるのか。相手が寄せきる前に次へと展開する。そして、それを繰り返す。寄せられる前に次、寄せられる前に次。そんな局面を素早く変えるパス回しを繰り返すことで個ベースのオランダの守備には混乱が生まれるんじゃないかって気がした。そこから、フランス戦のときの記事でも書いたようなルーマニアへの期待が生まれたわけ。

ルーマニアの狭い場所でのトライアングル形成と、そういう場所から広い場所への展開力のよさはイタリア戦でかなり目立ってた。そうやって組織としての攻撃ができれば、個人任せのオランダの守備の上を行くんじゃないかっていう期待。ただし、ルーマニアが攻撃の流れになればっていう条件付きだった。何しろルーマニアも引いて受ける守備をするチーム。オランダが圧倒的に主導権を握る展開だって十分に想定される。オランダの守備に問題があっても、オランダが守備をしなければ何の問題もないわけで。本当はどうなったのかは知らない。

さて、ここまでが壮大なる前ふり。イタリアはオランダの攻守の弱点のどちらにもアプローチできなかった。フランスは攻守の弱点の両方を微妙に突こうとしてた。ルーマニアは守備の弱点を突く下地はあった(実際にどうなかったかは分からない)。さて、それに対して今回のロシアはどういうやり方を採ってきたのか。それがここからのテーマになってくる。

まず、守備に関してはロシアも最初のベースにあったのはイタリアとかフランスと大まかに言えば同じやり方。つまり、前線からは行かずに自陣にブロックを作って受ける形。ただし、ヒディンクはヒディンク。フランスとかイタリアと同じ失敗を犯すことはなかったと思う。はっきり言って、その2チームと同じだったのは、自陣にブロックを作るっていう一番大まかな部分だけ。それ以外では全く違った質の守備を行ってきた印象。

まず、ロシアの前半の守備ブロックのバランスが恐ろしく悪かった。最初には4‐1‐3‐2って形で書いたけど、それは予想システムに便宜上当てはめただけ。本当は数字では当てはめられないような形になってたのが本当のところ。無理やりに言うならば、2列目の3が右側に寄った4‐2‐3‐1みたいな形。言葉では言い表わすのが難しいので、下の図に表してみる。

―――19―――
――10―20―9―
――17―11――
18―8―4―22―

パブリュチェンコは基本的には守備が免除。便宜上、その相方として入っているアルシャビンがトップ下の場所でセムショフと並ぶ形。右サイドにはそのままサエンコが入った。これが右寄りの2列目。で、バランスから言えば本来は左サイドに入るべきジリヤノフがセマクと並んでボランチに入るような形を採ってきたと思う。恐ろしくバランスの悪い守備ブロック。でも、ヒディンクはこれを意図して作ってるから憎らしかったりする。

まず、キーとなる相手の出し手への対応。上にも書いたようにロシアは前線から積極的に出し手をつぶしに行くような守備のやり方を採ってこなかった。ただ、ボランチのところに対してはフランス的な最低限の対応だけはしてきた印象。フランスの2トップが担った役割をロシアは2枚のトップ下に任せたと思う。アルシャビンとセムショフがボランチからの縦パスを入れさせないっていう最低限の仕事をしていた。ついでに、相手が飛び出してきた場合はしっかりと捕まえるっていう役割も与えられてたと思う。

ただし、そんなフランスのやり方をそのまま当てはめるようなヒディンクではなかった。フランスが抑えられなかった、相手のSBの場所にもしっかりと対応してきたと思う。攻撃面を考えると、率先して押さえておきたいオランダの左SBのファン・ブロンクホルストに対しては、2列目の右に入ったサエンコが対応。高めの位置でボール自体を入れさせないような対応をしてきた印象。だから、今回の試合ではオランダの低い位置のパス回しに全く幅が出なかった。ファン・ブロンクホルストは消えた存在になっていたと思う。

じゃあ、右サイドはどうしたのかっていう話。でも、それはひとまず棚上げにしといて、次に受け手に対する対応を見てみたい。今回のロシアの守備のポイントは出し手につく人と受け手につく人をしっかりと分けたってこと。結果として、イタリアみたいに中盤が出し手に行くのか受け手に行くのかってことを気にすることがなくなった。出し手に関しては、ここまで書いてきたように変則的な2列目の3枚が対応。それに対して受け手は後ろの4‐2が対応する形になったと思う。

今回のロシアは最終ラインを高い位置に設定してきた。そうやって中盤とDFの関係性を近づけることによって、相手の受け手の3枚が使いたいスペースを完全に潰した。さらに、その受け手に対してはマンマーク気味に対応。入ったところに0距離で当たれるような体制を作り出した。そして、そういう0距離の最初の守備で相手を足止めしておいて、1つ前のラインと協力して囲い込みに入る。このときには出し手に対する守備をしてる選手も戻りながら参加してたと思う。コンパクトブロック形成によってもたらされた選手間の距離の近さも存分に活用してた印象。

というわけで、前線からは行かないといってもロシアの守備はオランダの出し手にも受け手にも完璧に対応することができてたと思う。ただし、ここで棚上げしていた問題に戻って考えなければならない。スカスカの左サイドはどうしたんだってこと。ここの問題を解決しなければ、出し手に対しても受け手に対しても完璧に対応したなんてことは言えないのは当たり前の話なわけだから。

で、実際にロシアがどうしたかって言うと、実は何もしなかった。これが今回のロシアの守備の最大のポイントだったと思う。要するにブラールズは浮かせておいても大丈夫だっていう判断。もっと言えば、ブラールズから攻めさせてやろうっていう判断。そういう意味ではわざとロシアは左サイドを空けていたんじゃないかとさえ思う。なぜかって言うと、相手のボランチの対応にしたって、基本はトップのアルシャビンがつくデ・ヨングの方が、本来的にトップ下に入ってたセムショフがつくエンゲラール寄りも明らかに浮くシーンが目立ったから。

これで完全にオランダの攻撃は右サイド寄りに限定されることとなった。出し手はブラールズとデ・ヨング。受け手はカイト。ファン・ブロンクホルストとエンゲラールが出し手となってスナイデルが受け手となる左サイドと比べると怖さは半減。左サイドのスナイデル中心に作って、右からカイトが斜めにゴール前に入ってくるっていう方がよっぽどレギュラーな形。ブラールズとデ・ヨングは攻撃に出て行くファン・ブロンクホルストとエンゲラールとのバランスを考えて残るってのがレギュラーな形。それに対して、今回のオランダの攻撃はイレギュラーな形を取らざるを得なくなったって言える。ロシアのしたたかなやり方によって。

右のカイト&デ・ヨング&ブラールズの3枚。この3枚で相手のリベリ&マルダ&エブラの攻撃をシャットアウトしたのがフランス戦。そういう意味ではやっぱり攻撃よりは守備でいいところを見せる右サイド。それが今回のロシア戦では攻められるなら攻めてみろよっていう形に晒されてるんだから、皮肉としかいいようがなかった気がする。

ついでに言えば、ロシアとしては後ろの守りやすさも考えてわざと左サイドを空けておいたんじゃないかって気がする。オランダの攻撃が厄介なのは、低い位置の出し手の4枚が左右の幅を最大限に使ってくること。そういう横のアプローチによって、ブロックが左右に動かされ、結果として横に間延びさせられる。そうやって縦パスの隙間をあけられる。狙いどころが定まらずにズルズルと引かされる。それに相手の4枚を完全に機能させてしまうと、そのうちのどこから縦パスが出てくるか分からないってのもかなりやりにくいこと。

対して、今回のロシアの守り方は相手の左を消滅させた。エンゲラールもファン・ブロンクホルストも組み立てでほとんど顔を見せてない。そうやって相手の左サイドを完全に押さえる代償として払ったのが、相手の右サイドを完全に空けてしまうってことだったと思う。ただし、これによってオランダの攻撃は完全に右寄りに限定されることとなった。

結果として、オランダは幅を使った組み立ては不可能。低い位置で持ちすぎると狙われる。だから、オランダは攻め急ぎ見たいな流れになった。縦縦へとさっさと入れてしまう流れ。イタリア戦とフランス戦では全く見られなかった形。さらに、オランダの出し手候補は2枚しかいない。アルシャビンがしっかりとブロックに参加してれば、ブラールズしかいない。前線から守備をしなくても、相手の出し手を限定することに成功したと思う。なんというヒディンク。

加えて、受け手の方も限定された。極端なことを言えばカイトしかいなかったと思う。ファン・ニステルローイっていう選択肢がなかったではないけど、そこはチームとして完全に押さえてる。入りどころで守備をして、すぐに複数で囲い込むアプローチができる体制が整ってた。だったら、当面は1×1で勝負できるカイトを使うっていうことが多くなるのは当たり前だった。

でも、この受け手の方に関してはロシアが考えていた流れかどうかは微妙。普通にスナイデルとかファン・デル・ファールトが右サイドに顔を出してくれば済むだけの話だった。大体において新生オランダのよさは2列目が自由に動いてボールを引き出すことだったはず。そんな動きが最初はほとんど見られなかったと思う。リスクを負わないことを優先して、スナイデルが逆サイドまで出てくるのを自重したのは分からないではない。ただ、ファン・デル・ファールトまで消える必要は全くなかった。前回は積極的に右サイドに流れて起点になってたファン・デル・ファールトだったのに。

というわけで、攻撃の核となるべきスナイデルとファン・デル・ファールトが前半の長い時間で消えていたと思う。フランス戦でも攻撃が右寄りになってたし、2人とも高い位置ではあまり目立てなかったのも事実。でも、その要因は2人が出し手の方を助けに来ることが多かったからだった。むしろ、今回の方が助けが必要な流れだったと思うけど、そちらにも顔を出さず。フランス戦の後遺症かもしれない。あの試合はスナイデルとかファン・デル・ファールトが助けに来すぎて前線に人数が足りなくなってたから。それを考えて、前で受け手として振舞うことに重点を置いた可能性もある。ただ、消えちゃったら意味がない。

というわけで、右寄りから前線に入れたボールをことごとく潰されていったオランダ。もちろん、延々とそんな無駄な攻撃を繰り返していたわけではなかった。ブラールズがなめんなよってことで攻撃参加を繰り返すような形を増やした印象。でも、なぜかその時にカイトが中寄りに入っているシーンが多くなってた。ブラールズのコースを空けたのか。でも、これだと結局はサイドの1×1は変わらないわけで。深い位置に入るシーンは増えたけど、ゴールにつながる匂いはしなかった。

じゃあってことでやっとスナイデルが動きを始めたと思う。右寄りの攻撃に絡むために、右サイドに顔を出すシーンが増えていった。ただ、これはあくまでもカイトとの左右の入れ替えだったように思う。カイトとスナイデルが同サイドに顔を出したりしたら面白かったのに、今回のオランダはどうしても大きくポジションを崩したくなかったらしい。その辺はロシアのカウンターに対する尊敬の意味もあったんじゃないかって気がする。あまり流動的にやりすぎると守備への切り替えで危ないぞっていう。そう考えると立ち上がりから、ファン・デル・ファールトとスナイデルが消えた理由も説明できる。

それでもスナイデルが目立ち始めた後のオランダの攻撃はなんとかリズムを取り戻したように見えた。それはスナイデルが右に出てきたことよりも、上下の動きを活発化させたことに意味があったと思う。スナイデルが下がっていくと、ロシアが見きれてない出し手が1枚増えることになる。降りていったスナイデルを捕まえようとすると、背後にスペースを残してくることになるし、行かなければ自由な組み立てを許すことに。

そんなジレンマの中でロシアの守備陣は前半の長い時間のように、完全に押さえきるのは難しい流れになっていった。ただ、スナイデルが降りて行くと、前線が足りないっていうオランダの問題は解決できず。エンゲラールが代わりに出て行く動きを増やしてはいたけど、今回も機能はしなかった。ロシアのゴールはまだまだ遠い。オランダの攻撃の形が見えそうでやっぱり見えない。そんな流れの中で前半が終了。

さて、後半に行く前にロシアの攻撃についても見ておきたい。ロシアは攻撃のポイントは守備と同じように左右のバランスが崩れていること。立ち上がりは単純に右サイドからの攻撃が目立ってたと思う。何が単純かっていうと、右はSMFとSBが普通にいるってこと。サエンコとアニュコフの関係にセムショフが右に流れて絡みながら、右サイドの深い位置にまで侵攻していった。

そして、この右サイドのやり方がロシアのサイドの考え方を表している。まず、サイドでは複数の関係性を作りましょうってこと。個の力でサイドを崩し切るっていうシーンはほとんど見られなかった。後ろからの回りこみ、中からの流れを利用しながら、常に数的優位を意識したサイドの崩しが見られたと思う。そして、そんなサイドは深い位置までえぐりましょうってのがもう1つだったと思う。深い位置からのクロスでどんだけ決定的なチャンスを作ったかっていう話。CKがかなり多くなった要因もこれ。

そして、最初は右寄りに偏ってたロシアの攻撃も、時間が経つにつれて左右のバランスが回復していった。右は固定的な面子を利用しているのに対して、左サイドは出入りの激しいやり方を採ってきたと思う。左にはSMFが存在してなかったから。基本はジルコフの積極的な攻撃参加。だから、リスクを冒さない最初の時間は右寄りでの組み立てが増えたんだと思う。さらにアルシャビン、パブリチェンコが流れて絡むっていう形を作ってきたと思う。先制点のシーンは左サイドをボランチのセマクが飛び出していったシーン。サイド重視の攻撃の中で、左右のやり方が異なってたのは面白かった。

そんなロシアの攻撃のもう1つのポイントは何といってものカウンター。引いて相手の攻撃を受け、縦パスを引っ掛けた勢いのままに一気に縦に飛び出していくっていう形がかなり多くなったと思う。そして、このカウンターにかける人数がかなり多いのがロシア。選手が後ろから次々と飛び出していく。ボールを抜いく飛び出しがかなり多くなった印象。

昨シーズンのエスパルスがそんな攻撃をしてたなって気がする。低い位置のバイタルつぶしの守備で奪ってから、抜いて抜いての人数をかけたカウンター。あとはローマもそんなイメージかもしれない。ただ、両チームとは異なった点があるのも事実。昨シーズンのエルパルスにもローマにもトップの場所に収める選手がいたってこと。奪って→当てて→後ろから押し上げっていうプロセスが踏まれた。そういう意味ではロシアとはちょっと違うかなって気がする。ロシアは誰かに収めてっていうよりも、前に向かってボールを運んでいる選手をさらに抜いて行くみたいな形だったから。どんだけ走るのかっていう話。

このボールを抜かすっていう動きはカウンターの流れに関わらず、ロシアの攻撃における重要な決め事であるように思った。近づくランニングではなく、遠ざかるランニングでもなく、通り過ぎるランニング。前線にボールがあると、それを抜いて行く選手が多い。だから、高い位置でボールを持ってると、必然的に最前線に出てくる人数がかなり多くなることになる。抜かして抜かしてだから。延長後半の立ち上がりの波状攻撃は、これが延長後半かよっていうレベルに後ろからの飛び出しが豊富だったように思う。

さて、そんなロシアだけど前半は低い位置でのボールの保持時間も延びていたように思う。そして、ここにおいてオランダの守備の弱点が見え隠れしていた。オランダの守備も引いて受ける形。立ち上がりはともかく、基本的には前線からの守備には興味がない。だから、出し手はフリー。必然的に受け手を押さえる必要がある。でも、その受け手への対応が個人任せのオランダ。フランス戦とイタリア戦では大きな問題につながらなかったけど、今回はちょっと危ないシーンが見え隠れしてた。

そもそも、個人任せのオランダの守備ってのはどういうことか。それはある程度、見るべき相手を定めておいて、その選手へボールが入るところ、入ったところを、見るべき選手がしっかりと見るって形。イタリアは前線の受け手が少なく、さらにその動きが少なかったから、そんなオランダの守備が完璧に機能。フランスは受け手は動きながらいい形でボールを引き出したけど、その後の関係性が作れずに、結局はオランダの守備陣と個×個の戦いになってしまってジ・エンド。

オランダの守備相手にはいかに組織×個の局面を作るかがポイントになると。オランダの守備はあくまでも入りどころ、入ったところに対する守備。入る前で引っ掛けるような守備はあまり行われない。相手より先に触るとすれば、それも個々の出足の速さ。それでも入りどころに対して、忠実に個々が守備をすることで、相手の攻撃の流れを分断する。だから、相手が寄せきる前に次々と局面を変えられるようなルーマニアには期待してたわけ。実際にどうなったのかは知らないけど、チャンスはあまり作れなかった模様。

じゃあ、ロシアはってこと。ロシアはカウンター的な速攻が無理ならば、落ち着いて組み立てるっていうやり方を採ったと思う。そして、低い位置での保持時間が延びる結果になった。相手が前線では全く守備をしてこないんだから当たり前。そして、そういう低い位置でのパス回しの間に多くの選手が前線に入って行って、前の厚みを増してたと思う。

出し手は浮いたロシア、さらに受け手の枚数も増やすことができた。そして、前線の選手が降りてきて受けようとする動きを繰り返してたのが効果的だったと思う。そこで受けられるかどうかってことよりも、そうやって降りてくる動きをしたこと自体が効果的だった。なぜならば、オランダは見るべき相手をある程度定めてる。だから、ロシアの選手が降りて行くと、それにつられて引っ張り出されることとなる。結果としてDFと中盤の間にスペースが生まれることが多くなってた印象。

当然のようにそのスペースに縦パスを狙うロシア。そして、その場所でFKをもらうシーンが多発した。これをオランダの守備の方から見ると分かりやすい。DFと中盤の間にはスペースがあったオランダの守備ブロック。さらに、ロシアは前線に人数が多いから、そこに起点を作られるとあっさりと次の場所に展開される可能性がある。ここでパス回しが始まると個ベースのオランダの守備には狙いどころが定められなくなるってのたポイント。

ロシアの前線の選手にボールが入ってしまったら、相手は前を向いて個の突破もできるし、少ないタッチで周囲を使うこともできる。それは許せない。何としても入りどころを潰さなければならない。でも、あくまでも守備は個がベースになるオランダ。前線では制限が効いてない。そういえば今回のオランダは4‐4‐1‐1っぽい形の守備ブロックを作ってた。余計に制限が効かない。だから、入りどころを潰すといっても根拠がない。結果としてギリギリの対応になる。そして、ファールが増える。そんな流れだった印象。

ちなみに、後半から延長にかけてアルシャビンが目立ちまくった要因もここにあったと思う。オランダは組織としての守備が機能してない。相手のキーであるアルシャビンを止めるのにも、個人の力が要求される。疲れていない時間帯は入りどころに対してしっかりと距離を詰めて対応することができた(それでも結構やられてた)。でも、疲れてしまうと入りどころに行けない。しかも、厄介なことにアルシャビンは動きまくりだったし。結果としてアルシャビンが前を向いてプレーできるシーンが増えることになった。そして、今回の試合で前を向いたアルシャビンを止められる選手はいなかった。

さて、話は戻って後半の流れに。後半の開始時にオランダはカイト→ファン・ペルシーの交代。たぶん、スペースのある右サイドで仕掛けたいだけ仕掛けてしまえっていう交代だったんじゃないかと思う。でも、残念ながら時すでに遅し。後半のロシアは変なバランスの4‐2‐3‐1ブロックで受ける形をやめた。たぶん、ダイヤモンドの4‐4‐2になってたんじゃないかっていう気がする。

変わったのは形だけじゃない。前線から積極的に守備をするようになったと思う。それはおそらく前半の後半の流れでオランダが攻撃のヒントを見出してきたから。それはスナイデルを動かすことで攻撃をスムーズに組み立てるってこと。受ける形だと動きを始めた相手にブロックをめちゃくちゃにされる可能性がある。だったら、その1つ前を押さえなければならない。というわけで、前線からの守備を行うことにした。最前線を1トップを2トップに変えたあたりが本気度を表してる。

そして、この前線からの守備が思ったよりも機能してた印象。2トップが追いかけたところに、中盤以降がしっかりとついてくる。中盤の場所で複数枚の関係で相手を囲い込むシーンも見られて、後半はオランダが自陣から抜け出せない時間が長くなったと思う。そう考えると、やっぱりオランダは前線から来られると脆いのかって話。せっかく前半にヒントが見え隠れした攻撃も、いい形で前線にボールが供給できなければ無意味だったと思う。

そもそも攻撃では後ろからの飛び出しをベースとするロシア。よって、攻撃にかける人数は多い。それに高い位置からの守備意識が合わさるとどうなるかっていう話。攻め上がったままの位置で積極的な守備をするアーセナル的なやり方が可能になった。そして、そんな完全ロシアペースの中でロシアに先制点。このシーンも高い位置で相手のボールを引っ掛けたシーンから。上でも何度か取り上げたとおり、切り替えの瞬間に一気にセマクが左サイドを飛び出していった。実はこれが今回のロシアのベストの流れだったんじゃないかと思う。高い位置で奪って、その瞬間に後ろの選手が上がって行く。それを使って一気に縦を侵攻、重要視するサイドを深くえぐって、ノンストップでゴールまでってシーンだった。

オランダはエンゲラール→アフェライ。これでファン・デル・ファールトを低い位置に置いたことで、ロシアの前線からの守備への耐性をつけた。先制点を奪ったロシアも前線からの守備の勢いを弱めたから、この交代の後の数分のオランダの攻撃は今回の試合で初めて攻撃の形を作れてた印象。ロシアがダイヤにしたことで、それでもサイドに対応しようとしてたことで、中盤の密度が下がってた。そんな中盤の場所でスナイデルが受け、ファン・ペルシーが受け。そうやってうまく相手ゴールに向かう攻撃が可能になってた印象。

もちろん、ロシアもそんな打たれっぱなしの状況では放置しない。結局、ロシアはベタ引きの守備ブロックで完全に守りに入った。4‐3でラストを完全に固めて、その1つ前を2枚で見るみたいな形。まあ、完全に守りに入ったとは言ってもカウンターの芽はしっかりと残しておいたけど。要するに攻撃への切り替えでは相変わらず多くの人数が前線に飛び出していくシーンが目立ったってこと。でも、やっぱり得点前の流れから比べると個人が強く出たカウンターが多くなったのは確かだった。

そして、この4‐3ブロックをオランダはどうしても崩せなかったと思う。その理由は攻撃が真ん中へ真ん中へと入っていってしまったから。尋常じゃないレベルに真ん中に偏ってた。どのぐらいかっていうと、ロシアのDFラインの4が余裕でペナルティエリアの幅内に収まるレベル。当然、オランダの攻撃も余裕でその幅の中に収まった。後ろから上がってきた選手もことごとく真ん中へと引きつけられてく流れだったと思う。ファン・ブロンクホルストがFWの場所に入ってきたときは、もうダメだなって思ったりもした。

新生オランダの一番のポイントは両サイドワイドの攻撃を排除したこと。その究極の形が今回の後半の悪い流れのオランダ。全員が真ん中に入って、全く幅を使えない。たまにサイドに起点を作ってもことごとく中に入ってきてしまう。ロシアは超密集4‐3ブロックで待ってるだけでよかった。オランダの選手もそんな超密集地帯の中で待ってる選手が多くなった。しかも、あまりにも人が入りすぎて味方が味方のスペースを消してるレベル。

そんなオランダの前線をやや引いた位置から操ろうとしてたスナイデルがキレた。のかどうかは分からないけど、完全に真ん中に入った前線の選手をシカとするプレーを増やす。そんなとこで待っててもパスを出せねーよっていう。よって、半ばヤケクソ気味のスナイデルのミドルシュートが馬鹿みたいに多くなる流れ。ただし、ヤケクソとは書いたものの、その全てがいわゆる“いいシュート”になるあたりはさすがスナイデルってとこか。

そして、そんなスナイデルの頑張りが報われて後半終了間際に同点に追いついたオランダ。今回のオランダの頼みの綱だったセットプレーからの得点。セットプレー以外ではオランダは全くチャンスを作れてない。あとはスナイデルのミドルもあったけど。逆にロシアはセットプレー以外は完全に押さえてたって言える。ただし、セットプレーであまりにも決定的なチャンスを作らせすぎだったのも事実。オランダの選手の背がもう少し高ければゴールっていうシーンがかなり多かった。

そんなこんなで延長戦へ突入。延長戦について一言で表すことができる。走り勝ったロシアが試合にも勝ったってこと。同点に追いついた後のオランダは落ち着きを取り戻して、サイドの幅を使うことを思い出した。でも、結果として選手間の距離が離れることになったと思う。そして、その距離を埋めるだけの動きができる選手はオランダには残されてなかった。完全に足が止まってた。対するロシアは2点目のシーンを見てもわかるとおり、まだまだ元気。走ることはやっぱり重要ですね、オシムさん。それが今回の試合のまとめ。
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2008-06-20 Fri 18:48
フランス×イタリア
<イタリア:4-3-3>
FW:トニ、ペロッタ-カッサーノ
MF:ピルロ-デ・ロッシ-ガットゥーゾ
DF:グロッソ-キエッリーニ-パヌッチ-ザンブロッタ
GK:ブッフォン

<フランス:4-2-3-1>
FW:アンリ
MF:リベリ-ベンゼマ-ゴブ、マケレレ-トゥララン
DF:エブラ-アビダル-ギャラス-クレルク
GK:クペ

知っての通り、W杯決勝と同じ組み合わせだった今回の試合。ただし、今回は立場が大きく違う両チーム。前回は青いイタリアと白いフランス、今回は青いフランスと白いイタリア。前回は世界一を賭けて戦った両チーム、今回はGL突破を賭けて戦う両チーム。どちらが切羽詰まってるかって言われれば明らかに今回なわけで、そういう意味では面白い試合展開になる可能性は十分にあった。

ただし、試合が面白くなるためには両チームが復活してくれなければならない。今大会では苦しみまくりの両チーム。その要因の1つが世代交代の失敗にあるってのは、色々なところで言われてるとおり。特にフランスは。この世代交代の失敗ってのは、ベテランがいつまでも居座るみたいな意味で言われてると思う。逆に言えば若い選手が主力に入り込めないっていう。でも、それとはちょっと違うニュアンスからも捉えられる。ベテランが抜けたからこその失敗。フランスはジダンが抜け、イタリアはトッティが抜けた。そして、その穴を埋めきれてない。結果として攻撃のやり方を忘れてしまった両チームだったように思う。

フランスは前回のオランダ戦でリベリを王様にしようという試みを見せた。ジダンの代わりとしてリベリを置く。リベリ中心サッカーを展開しようっていう考え方。リベリにはジダンほどの絶対性はないけど、ジダンにはない運動量がある。前回の試合でも、それを生かしていろいろなところに顔を出しながらボールを引き出してたと思う。そして、リベリ経由の攻撃がチャンスにつながったのも事実だった。

ただ、リベリ経由の攻撃からしかチャンスを作れなかったのも、また事実。チームとしての連動性が感じられない、攻撃の連続性が感じられない、そんなフランス。個別の動きでは工夫が見られたのは事実なんだけど、それがチームに還元されてない。結局はリベリになんとかしてもらうしかない。王様リベリの絶対王政。リベリ以外からはチャンスが作れない、誰もリベリを助けに行かない。そんなイメージ。

対して、メンバーを見る限りでは4‐4‐2が予想された今回のフランス。リベリを絶対的なトップ下の位置から、左サイドへと格下げ。要するにリベリを王位から引きづり下ろしたらしい今回のフランス。妥当絶対王政、要するに、フランス革命は成功するのか。フランス革命が成功するならば、人権宣言による自由平等が達成されるはず。要するに、チーム全体の運動量が増し、いろいろな選手が“自由”に動き回って、ボールに対する選択肢が格段に増えるはず。同時に特異点がなくなって、王様リベリを経由しなくても、どこからでも攻められる(“平等”)フランスになるだろうと思う。

ただし、フランス革命が成功するとは限らない。というか、失敗する可能性が高いと思ってた。何しろここ数年のフランスの問題は打倒絶対王政から脱却できなかったこと。W杯ではジダンを王様に置くことで、再び絶対王政を作り上げて、勝ち上がっていったフランス。それを急に自由平等だと言われてもってのがW杯後のフランスだったと思う。

そして、今大会でも1戦目はおそらく自由平等で戦ってたと思うフランス。見ていないから分からないけど、ともかく低調な内容だったらしい。で、それに対してやっぱり絶対王政に戻したのが前回。チームとしての攻撃の連動性には疑問があったとしても、王様リベリが王様の役割をしっかりと果たしてた。そして、王様リベリを左サイドに追いやった後半はチャンスが作れなくなったのが本当のところだった。

というわけで、フランス革命は失敗に終わるだろうと予想された試合前。でも、試合が始まってみると何のことはなかった。フランス革命なんて行われず、ただ、王位の継承が行われただけだったっていう話。そして、リベリから王位を継承したのがベンゼマ。上に書いたような、4‐2‐3‐1システムのトップ下にベンゼマが入っていたと思う。リベリの三日天下の終了。

とはいえ、先代のリベリは未だ顕在。結果として院政が敷かれる。王様ベンゼマを補助する役割として、先代リベリが存在するってこと。ベンゼマが動いてボールを引き出したときに、ベンゼマの近くにリベリが位置してフォローするってのが1つのパターンになってたと思う。あとはベンゼマが抜けたスペースにリベリが入ってくるみたいな。とにかく、先代リベリは王様ベンゼマを意識しながらプレーしてたと思う。

結果として、リベリは中寄りでベンゼマと関係性を作ることが多くなっていた。リベリ自身としても、自分が王様になるよりも、王様をフォローする今回の役割の方が合っていたんじゃないかと思う。それは先々代のジダンに教えてもらったこと。今回の短い出場機会の中でもベンゼマとの関係性をうまく築きあげるシーンが目立ってた。これによって王様ベンゼマの孤立もなくなり、ベンゼマは少なくとも前回のリベリよりは周囲の助けがある中でのプレーができた。院政を敷いたことで王様の孤立感がなくなった今回の立ち上がり。

ただし、そのリベリが早々と負傷退場。皮肉なことだけど、王位継承を行っていたことで、今回のフランスにとってのリベリ退場は思ったよりも痛手とはならなかったと思う。いや、痛手には変わりないんだけど、前回の試合でリベリが退場するよりは、まだ状況はマシだったかなって印象。前回の試合でリベリがいなくなってたらフランスには何も残らなかったといっても言い過ぎではない状況だったから。

それに対して、今回の王様はあくまでもベンゼマ。先代がいなくなったとしても、王様がしっかりしてれば十分に立て直しが図れる。そして、実際に立て直しが図られた。事実、リベリ退場後も攻撃面において大きな問題が起きるっていうことはなかった。というか、むしろ、リベリがいた時間帯よりも攻撃がスムーズに進んだとさえ言える。まあ、これに関しては様子見の時間が終わったことで、フランスの攻撃にかける人数が増えたっていう面も多分にあったと思うから、リベリがいない方がフランスはよかったとは必ずしも言えないわけだけど。

そもそも、立ち上がりの時間帯は王様ベンゼマは先代リベリを気にしながらプレーしてたように思う。リベリがベンゼマを見ながらプレーしてたのは事実だけど、逆にベンゼマもリベリを見ながらプレーしてた。リベリと関係性を作ることを重要視するような動きが目立ったと思う。結果として関係性が生まれてたんだから、成功と言えば成功。

そんな流れの中でリベリの負傷退場。先代の補佐が期待できなくなった王様ベンゼマが孤立してしまう可能性も十分にあった。でも、ここまで書いてきたようにそうはならなかった。その理由はベンゼマ一派がチーム内に存在してたから。先代の影響力が強かった時間には目立たなかったベンゼマ一派が、リベリの退場によって一気に目立った存在になった。ベンゼマ自身も彼らに助けを求めた。結果として王様を抱え込んだ、ベンゼマ一派の力は強くなる。チームとして、そのベンゼマ一派を中心とする攻撃のやり方へと傾いていったと思う。

じゃあ、肝心なベンゼマ一派ってのは誰のことか。それは右サイドの面々だった。ゴブ&トゥララン&クレルク。早い話がリヨンのチームメイトたち。ベンゼマを含めたチームリヨンの4枚が攻撃の中心として動くようになったのが、リベリ退場後のフランスのやり方となった。チームとしてもその右サイドを使うようになったってのは上にも書いた通り。例えばリベリに変わって左サイドに入ったナスリは低い位置に降りてきてのボールタッチを増やした。そうやって1度左に起点を作りつつも、最終的には右へ展開っていうやり方が目立って行った気がする。

そして、このリヨンのチームメイトを中心とした攻撃がうまく機能した印象。前回のオランダ戦を見ても、フランスの攻撃には連動性が少なかったってのは上に書いたとおり。ボールに対する動きが足りずに、結果として攻撃の選択肢を増やせない状況。その連動性の問題が右サイドでは嘘みたいに解消されてた。フランスとしては解決できなかった問題をリヨンに解決してもらおうっていう考え方。それだったら、最初からリヨンの選手を中心にチームを作ればよかったのにって思う。

とにかく、右サイドは本当に活性化した。ゴブとベンゼマがいい関係性を作る。中と外を入れ替わってみたり、サイドで2人の関係性を作ったり。そこに後ろからクレルクがオーバーラップを繰り返す。さらに、機を見てトゥラランが前線の隙間に飛び出してくる。前回の試合の前半は攻撃参加をあまり見せなかったトゥラランだけど、今回は積極的に飛び出していくシーンが目立った。もともと右サイドのゴブ&クレルクにベンゼマとトゥラランが絡む。右サイドではボールに対して常に複数の選択肢を用意できるような体制が作られた印象。

おそらくドメネクも、このリヨンの選手を中心にした攻撃を容認。というか、手ごたえを感じてたんじゃないかと思う。だからこそ、アビダル退場後のブームソン投入時に後退させたのはナスリってことになった。緊急投入のナスリはかわいそうにやっと体が温まったぐらいになって、ベンチに下がらざるを得なくなってしまったわけだけど。とにかく、それだけ右サイドの関係性には重点を置いていたってことが表れてた交代だったように思う。

でも、1人少なくなった影響は大きかった。ナスリを下げたことで左サイドが空いてしまったわけで、そこに誰かを入れなければならない。そして、その役割を任せられたのがベンゼマだった。これでベンゼマの絶対王政は終了。その後もベンゼマが攻撃の中心になってたのは確かだけど、それは左サイド限定のものだった。もちろん、その左サイドからの展開が増えたわけだけど。

とにかく、ベンゼマの自由度は完全に限定されたものになった。それまでは色々なところに顔を出してボールを収めまくってたベンゼマ。受けた後は自分で仕掛けることもできるし、周囲を使うのもうまい。低めで受けてからの展開力も見せつけたと思う。前回のリベリと同様、王様の役割は十分に発揮してたような印象。だからこそ、ベンゼマを左サイドに釘づけにしたことで、攻撃の幅を狭めてしまったような気がする。

そう考えると左サイドにアンリを入れればよかったんじゃないかっていう気がしてならない。たぶん、守備の安定を考えてベンゼマを中盤に降ろしたんだろうけど(ベンゼマは守備も頑張ってた)、せめて後半になったら、それぐらいのリスクを負うべきだったと思う。イタリアは完全に守る気になってたわけだし。ベンゼマをトップに残すことで、ベンゼマの自由度は残す。同時に、左サイドにアンリってのはアンリ自身もしっくりくるはず。自由に動くベンゼマはトップを不在にすることが多くなるはずだから、そうやってできたスペースに左サイドからアンリが入っていく。すごくスムーズに回るはずなんだけど。

なんでこんなことを言うかっていうと、ベンゼマが左サイドに釘づけになってしまった影響はかなり大きかったから。その一番の理由はは右サイドのベンゼマ一派と左サイドのベンゼマ自身が分断されてしまったってこと。右に起点が作られたのは、王様ベンゼマが右に流れることが多かったから。その右サイドではリヨンのメンバーで関係性を作り上げたってのは上に書いたとおり。でも、王様ベンゼマが左サイドに入ったことによって、起点は左に作られることが多くなった。この時点でリヨン中心のいい関係性は使えない。ベンゼマ自身も孤立気味。後半はベンゼマの個の仕掛けが明らかに多くなったように思う。

ここまでフランスの攻撃について書いてきたわけだけど、ここで一気に立ち上がりの流れにまで話を戻してみる。この立ち上がりの入り方は両チームの考え方を象徴しているようで面白かったから。イタリアは守備に重点。どっしりとブロックを形成して受けて立つってイメージ。奪ったボールはさっさと前線に蹴ってしまうことが多かった。対するフランスは攻撃から入った。守備も前線から積極的に行った。両チームの考え方が正反対で、それがぴったりと合致してた立ち上がりの流れだった。とりあえず、その辺の流れについて詳しく見てみたいと思う。

イタリアの基本システムは上に書いたように4‐3‐3。4‐3‐2‐1のクリスマスツリーとも見える形だったけど、攻守の役割を見る限りでは中盤前目の2はFW的な考え方が強かったと思う。要するに1トップ2シャドーの4‐3‐3だったってこと。そんなイタリアの立ち上がりの考え方は、4‐3で守って攻撃は前線の3に任せるっていう至極単純なものだった気がする。

イタリアの守備ブロックは4‐3‐2‐1で作られる。トップのトニはこれまで通りに、あまり守備をしない。2列目の2枚は相手のボランチとSBを押さえる役割を任せられてたと思う。低めのボール保持で相手が真ん中でボールを保持している時には、2人とも中で相手ボランチを見る。どちらかのサイドに展開された時には、2列目の1枚がサイドに流れて対応し、もう1枚は真ん中に残るって形。そこから逆サイドに展開されたら、中盤のサイドの選手が引っ張り出されて見に行く。前の3‐3は互い違いなイメージだったかもしれない。

そんな感じで2列目の2枚はそれなりに守備に貢献するんだけど、それは自分の前に対するものだけだった。あくまでも前線の3枚の役割は攻撃、だから守備をそんなに頑張らなくてもいいよってもの。同じ形のミランが似たような考え方でやってたなって気がする。確かに、立ち上がりは前線からの守備をそれなりに厳しくやったことで、相手の選択肢が制限され、中盤でのボール奪取も目立ってた。でも、守備のペースを落としていく中で、中盤で相手の攻撃を止めるっていうシーンは少なくなったように思う。

それは当たり前。イタリアの前線の守備のペースが落ちるってことは、フランスの方はあまり苦労せずに前線にボールを運べるってことになる。そんな流れの中で、イタリアとしては3‐3の間に入り込まれたりすると、かなり厄介。中盤の3は前に行けない。なぜならば、3が引っ張り出されるとバイタルを空けてしまう結果になるから。だからと言って、完全にフリーにしておくのもどうかっていうジレンマ。初戦のオランダ戦と同じような状況に陥ったといってもいい。

ただし、オランダ戦とは全く違ったことがあった。それはイタリアの方の守備の考え方がはっきりしてたってこと。オランダ戦は中盤の高めにアンブロジーニ&ガットゥーゾを配置する一方でブロックは引くっていう形だったから、どうしたらいいもんだかチームとしての意思統一が図られてなかったと思う。それに対して、今回はしっかりと意思の統一が図られてた。3‐3の間に入られたらもういいと。中盤は捨てて、ラストで跳ね返そうと。

要するにかなりイタリア的な守備ブロックが形成されたと思う。最終ラインの4は真ん中に凝縮させ、中盤の3との関係とともに真ん中を固める。このとき最終ラインはある程度の位置を確保しつつ、4‐3の隙間を完全になくす。だから、ラインコントロールをミスると危ないシーンにつながる。何しろ3‐3の間の相手を完全にフリーにしてるわけだから。その間ではフランスの選手はかなり自由にボールを扱うことができてた。敵陣内であるにも関わらず。前半にアンリが抜け出したシーンは、3‐3の間でフランスの選手がフリーになり、同時にイタリアの選手がラインコントロールを失敗したシーンだった。

それでも4‐3の関係性を重視したってのは前回のルーマニア戦と比べるとかなりの改善。前回は中盤の選手が中途半端にボールに集まり、そこで奪えず、DFラインと中盤の関係が遠くなり、ミドルシュートを打たれまくりっていう展開だったから。4‐3といったら4‐3っていうことをはっきりとさせた今回の試合では、SBの選手ばかりで成り立っている不安定な最終ラインを晒すシーンはほとんど見られなかったと思う。4‐3の間に入ってきた相手(入るのすらもかなり困難だったけど)を挟み込むのも、超素早かった。

とはいえ、結局は重心が後ろに向いてるイタリアのやり方だったから、見た目のペースはフランスに傾いた。イタリアの中盤は3枚しかいないわけで、ついでにその3枚が中盤での守備よりも後ろとの関係を重視してる。だから、まだまだ不満な点が多いフランスの攻撃でも、十分に深い位置まで入り込むことができた。でも、最後の最後のイタリアの4‐3を崩し切ることはできない。個の分断が目立つ今大会のフランスでは守りに入ったイタリアを崩すのは絶望的だったとも言っていい。よって、深い位置に入っては最後の最後で跳ね返されるっていう展開が続くこととなった。

そして、深い位置で奪ったイタリアの目標はトップのトニ。いよいよ前線の2‐1の出番ってわけ。4‐3の守備ブロックで跳ね返し、トニに収めて、すぐ近くにいる2枚がそれをフォローする。それがイタリアの考え方だった。でも、残念ながらトニに全然収まらないイタリア。後で書くようにフランスの守備の質が高かったってのが1つ。もう1つはトニ自身の不調。今回も決定的なチャンスを外しまくったし、起点としての仕事もできてなかった。

だから、知らない間に(たぶん得点の前後?)、イタリアの前線の起点はカッサーのになってたし。カッサーノが前線で左右に動きながらボールを引き出して、それをトニへっていうパターンが目立つようになった。起点としてもゲッターとしても働けてないトニから起点としての役割を免除。あんたはゴール前で待ってればいいからって考え方。でも、結局は今回の試合でも得点を奪うことはできなかったトニだった。

さて、そんなイタリアに対してフランスは立ち上がりから攻撃的な入り。特に上でもちょっと触れたように守備の質の高さが目立ったように思う。前線から積極的に守備をして、相手が前線に蹴らざるを得ない状況を作り出したって言える。そういう前線の選手たちの守備意識の高さがかなり目立った、今回のフランスだったように思う。切り替えの守備の質の高さはもちろん、守備ブロックをセットした時の中盤の個々の守備の質の高さも目立ってた。しかも、前へ前へっていう守備をしてから、後ろとの関係を重視するイタリアの中盤と比べると面白かった。

とにかく、フランスの中盤の選手の出足が抜群に速かった。本当に1つ1つの場所を勝負どころと定めてるような、忠実かつ厳しいチェックが繰り返されたと思う。そして、そんな最初の守備に対する周囲の連動性の高さも目立ってた。11人×11人の戦いの中で、イタリアが地上から攻めてくるときには、ほとんどを中盤以前で引っ掛けてたんじゃないかと思うぐらい。結局は、この中盤の守備意識がリベリの負傷退場を生み、失点&退場の遠因にもなってる。敵陣内でナスリが相手をつぶしたことでイタリアが得たFKからピルロの1発→トニ抜け出しが生まれたわけで。ただし、もちろんこれは結果論。フランスの守備の質が高かったことには変わりない。

そして、そんな中盤の守備のよさは今大会のフランスの攻撃のやり方とも相性がよかったと思う。今大会というか、前回のオランダ戦を見た印象だけど、フランスの攻撃は縦に急ぐ印象が強い。前線でボールを受けた選手が、その場所で保持しようとせず(チームとして)、前へ前へと突進していってしまうシーンが目立った。オランダ相手には中盤で回した方が効果的だったと思うのに。そんな前への意識がフランスの中盤をなくし、フランスらしいパス回しをなくし、圧倒的に主導権を握る流れをなくしている気がする。今回だってイタリアの中盤はスカスカだったのに、フランスが圧倒的にポゼッションする流れにはならなかった。

ただ、中盤の高めでの守備が機能したことで、そんな縦への意識がいい方向に出る可能性はあった。フランスっぽくないけど、高めで奪ってショートカウンターみたいな流れ。実際にそういうシーンも見られた。ただし、相手はイタリア。攻撃を前線の2‐1に任せているイタリアは下手に後ろの選手を前線に上げてはいなかった。だから、フランスが高い位置で奪ってそのまま相手ゴールに向かったとしても、イタリアの選手は十分に足りてるって場面が目立ったと思う。

さて、そんな感じで高めの位置での守備の質の高さが目立ってたフランスだけど、さすがに最前線からの追いかけ回しは辛いだろうってことになった。オランダ戦と同じように立ち上がりは最前線から追いかけ回して、途中で引いてブロックを作るっていうやり方へと変更したと思う。よって、蹴りまくってたイタリアの選手にもやや余裕ができ始める。イタリアの方としてもいつまでも蹴ってたらだめだろうってことで、攻撃の組み立てを考えるぐらいの時間帯になってた。

そんなイタリアはいつものように両SBを高めに上げるアプローチ。そうやって幅を維持しつつ、中盤を中に押し込んで、真ん中の人数を増やそうっていうもの。そんな流れの中で徐々に地上からの攻撃も増やしていった印象。そこで面白かったのが、ガットゥーゾが案外目立ったってこと。他の選手に相手の目が行く中で、スルスルとギャップに出てきてボールに触れるシーンが多かった。初戦では攻撃で目立てなかったガットゥーゾだったはずなのに。

この辺のチームとしてのバランスの回復が見られたと思う。完全守備メンバーと初戦、完全攻撃メンバーの2戦目と比べると、今回がメンバーのバランスが一番よかった。結果として攻守のバランスも回復した。でも、残念ながら次の試合でピルロとガットゥーゾは不在。せっかくいい感じのバランスが見え始めたのに、同じメンバーを使えない苦しみ。なんだかうまく行かない今大会のイタリア。

話は戻って、イタリアが地上から攻めるようになったとは言っても、フランスの前線の守備の勢いが弱まったって言っても、フランスの中盤の守備の質は高いままだった。よって、イタリアの地上からの攻撃はなかなかうまく行かない。というか、スタートの縦パスを引っ掛けられる場面も目立ってたぐらい。そんな中で空からの一発でイタリアがPKを奪取。フランスの方としてみれば、立ち上がりにも1回あったけど、なぜかテュラム不在(たぶんケガだろうけど)の最終ラインの危うさが露呈したシーンだった。

このイタリアの得点で全てが変わった。得点を奪ったイタリアはここぞとばかりに畳みかけに行く。1‐2に配置されていた前線の形を3の横並びみたいな形にして、より高い位置からプレッシャーに行く意識を見えた。もちろん形だけじゃなくて、その3人の守備意識も高まった。今大会初めてじゃないかっていうぐらいのトニの追いかけ回しも見られたし。そうやって前線での守備が機能するならば、中盤の3枚も前に対して守備ができる。立ち上がりの数プレー以来消えていた中盤での激しい守備が戻ったイタリア。入ってきた相手のボールに対して、素早く距離を詰め、素早く囲い込むなんていうシーンが増えたと思う。

当然のように、ここぞとばかりに攻撃にも人数をかけてきたと思う。ちょっと前の時間から高い位置に上げているSBをさらに高めに入れ、さらに後ろの中盤の選手も積極的に前線に飛び出させる。そうやって幅を使いつつ、真ん中に人数をかけつつ、中盤がスカスカ状態に陥っている敵陣内でパス交換を繰り返すイタリア。回して回してピルロからトニっていうパターンが多くなった。

相手のショックに乗じて追加的を取りに行こうっていう露骨なペースアップには、イタリアらしいしたたかさが感じられた。さらに、その後のイタリアの対応がさらにイタリアらしさを見せつけた印象。得点後の数分はペースを上げて、前へ前へと出てきたイタリア。でも、その勝負どころで追加点を奪えない。相手は10人、勢いは自分たちにある。普通に考えれば行け行けで攻めまくる流れ。でも、イタリアはそれをしなかった。相手が立ち直ったことが分かると、さっと引いて守りに入ったと思う。前からの守備はやめたし、攻撃は再び前線の3枚が中心に戻った。

後半になるとそれが顕著になる。意味が分からないほどに消極的なイタリア。これが1‐0(ウノ-ゼロ)の精神かっていう感じ。後ろの4-3は完全に引きこもってラストで跳ね返すことに集中してたし、攻撃では全く攻撃に出ない。自分たちがボールを持っていればそのままボールを持ち続けようとする。相手が前から激しく来れないことを知っていて。それでも焦れて相手が取りにくれば、完全にスペースが空いてる中盤に縦パスを入れてやればいい。そんなイメージのイタリアの後半の流れだった。

ちなみに、相手が1人少なくなった後のイタリアの守備ブロックは4-3-1-2っぽい4-3-3へと変更された。これは相手の4-1-3-1と関係してるのかなって思う。1人少なくても攻撃に出なければならないフランスはマケレレを底に置いてトゥラランは前線に出て行ってた。だから、相手のボランチ対策は1枚でいい。その代わり2トップにすることで、相手の低い位置のボールにプレッシャーを与える意図があったと思う。

さて、退場後のフランスはどうしたか。システムは上で触れたとおりの4-1-3-1。攻撃については上に書いたとおり。王様ベンゼマとベンゼマ一派のリヨン勢が分断されたことで、結局は個の力が重視された攻撃のやり方になった。後半になると、アンリとベンゼマを近づけるみたいなアプローチをしてたけど。イタリアが引いて守ったことで10人でも、個が強い攻撃でも、結構深い位置まで入り込めたけど、それは完全に攻めさせられてる流れだった気がする。

守備では相変わらず中盤の選手の意識の高さ自体は残ってた。ベタベタに引いてしまうんじゃなくて、あくまでも高い位置からプレッシャーをかけて行くっていう考え方が見られたと思う。ただし、ケアすべきスペースが広いからさすがにきつかったのも事実。中盤で守備をする意識自体はあっても、それを外され外されっていう場面が多くなってしまった印象。1人少ないんだから仕方がない。よって、4-4ブロックで守る時間も長くなってしまった印象。

今回のフランスはついてなかった。運がなかった。立ち上がりに流れを掴んでいたのはフランスだっただけになおさら。いや、イタリアの方としても自分たちの思惑通りに進んでいたのかもしれないけど。それでもフランスはリベリが負傷退場、PKを与えたアビダルが退場、さらに2失点目はアンリの足に当たってコースが変わる。踏んだり蹴ったりってのはこのことを言うんだろうなっていう。2点目を奪われたあとのフランスは明らかに意気消沈。もちろん10人で頑張り続けてたわけだから、スタミナ切れも大きかったと思う。でも、やっぱり勢いは半減したと思う。

結果としてしたたかに戦ったイタリアがGLを突破。本当は歴史は繰り返すみたいなオチをちょっと期待してた。フランスは中心選手がいなくなり、1人少なくなった。あまりにも早すぎたけど、要するにジダンの退場と同じなわけだ。ついでにPKで先制点が決まったりする。あのときはジダンがループPKみたいなのを決めんたんだっけか。まあ、そう考えると歴史が繰り返すしたといえなくはない。でも、最終的にはルーマニアが勝って、1勝2分の無敗のイタリアが2大会連続で敗退みたいなシナリオまで考えてたわけだけど。さすがにそれはなかった。

ただし、イタリアは辛いだろうなって思う。1発勝負ならイタリアは強いって言われてるんだけど、今大会のイタリアにはそんな勝負強さも感じられない。大体においてチームが未だ迷走状態。守備はとりあえず4-3の確固たるブロックを作るイタリアイタリアした堅守で行けばいいってことに決まった。じゃあ、攻撃はってのが見えてこないイタリア。トニが大爆発しない限り、辛いだろうなって思う。でも、今までのチャンスの数を見る限り、トニが大爆発したらとんでもないことになる可能性もなくはない。

最後にベンゼマについて。完全にベンゼマのイメージが変わった。実は初めて見たんだけど、もっとFW的な選手、典型的なポストプレイヤーだと思ってたから、中盤でのプレーもそつなくこなすのはかなり意外。そつなくっていうか、普通に高レベルでこなしてたけど。アーセナルに移籍したらすごくフィットしそうだなって気がする。プレーだけじゃなくて、年齢的にも、それにフランス人だし。実現しなくもないかな。にしても、なぜに2戦目ではベンゼマはベンチに使われなかったのか?それが気になって気になって仕方がない。
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