ただのサッカー好きが、思ったことをただ書くだけ。 (06年終了)

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2007-12-30 Sun 04:14
フロンターレ×アントラーズ
準決勝のもう1試合 ガンバ×サンフレッチェ
http://himajin0112.blog101.fc2.com/blog-entry-260.html

<フロンターレ:3-5-2>
FW:ジュニーニョ-鄭
MF:マギヌン、村上-中村-河村-森
DF:伊藤-寺田-箕輪
GK:川島

<アントラーズ:4-4-2>
FW:田代-マルキーニョス
MF:本山-青木-小笠原-野沢
DF:新井場-大岩-岩政-内田
GK:曽ヶ端

どちらが主導権を握ってもおかしくなかった試合だったと思う。それは両チームの攻守のベースにある考え方に類似点があったから。攻撃面の連動性と守備面での1つ1つの忠実なチェック。そして、立ち上がりの時間帯はどちらも自分たちのやり方をやろうとしてた。

アントラーズの攻撃は前線の変則4トップに1枚下の小笠原、オーバーラップしてきたSBが絡む形。前に人数を入れ、さらにポジションを回しながら近い関係を作り、局面を打開していくやり方を狙いとしている。トップの場所、サイドへの出入りの激しさの中で相手の守備にギャップを作り出すアプローチ。

対するフロンターレの攻撃は縦のポジションチェンジが活発。フロンターレの試合は今シーズンいくつか見たけど、縦のポジションチェンジっていう面でのフロンターレらしさが見られたのは久々だった気がする。トップ下的なトップ下の大橋を入れたときにはそれはそれでよさも出るけど、やっぱりトップ下のマギヌンがフロンターレらしさを生み出す要因になってる気がする。来シーズンはどうするのか見もの。

とにかく、この試合のフロンターレは縦のポジションチェンジが活発だった。ジュニーニョと鄭の2トップは全くトップの位置にこだわらずにどんどんと中盤に下りてくる。これに対して入れ替わりでマギヌンが出て行くのが1つのパターンだけど、中村とかWBの2枚を中心にしたダイナミックな縦の入れ替えも見られた。

アントラーズとフロンターレではのポジションチェンジとは性格が違うけど、前線に動きをもたらしながらアプローチをするっていう点では類似しているといっていい。しかも、その動きが局所に留まらずダイナミックなのが特徴的。前線が詰まったガンバの試合を見た後だけに余計に目に付いた。

対する守備面にも類似点がある。どちらも切り替えで厳しく当たり、後ろの組織を作るところが守備のスタート。そうやって組織を作っておいてから、相手のボールに対してのアプローチを開始する。特にブロック内に入ってくるボールに対しては1つ1つ忠実に厳しいチェックをするのが共通点。そうやって相手の攻撃をスムーズには行わせない狙いを持ってる。

同時にブロックのバランスが大きく崩れないっていうメリットがある。1つ1つの入りどころに対してしっかりとチェックをしていくから、簡単には深い場所まで持ち込まれない。もちろん、最後のブロック作りの速さとか堅さはあるものの、あくまでも守備の勝負どころは1つ前に置いてる印象。両チームとも中盤のチェックで奪い、そこから一気にカウンターで攻めきる意図が見られた。

こんな感じで攻守のベースにある考え方が似てる両チームだから、どちらが主導権を握ってもよかったってのは上にも書いたとおり。ただ、結果として主導権を握ることになったのはフロンターレであって、そこにはある程度の必然性があったように感じた。

ここまでの両チームの比較であえて挙げていないことが1つある。それが守備の最も根本にある部分。フロンターレは3-5-2システムの中で相手の人の存在を念頭に置いた守備をするのに対して、アントラーズは4-4-2でゾーン寄りの守備。この180°異なる両チームの守備の考え方が試合の流れの決定の最初の一因になってたと思う。

ここまでをまとめると、攻撃は流動的で守備はどちらも1つ1つのチェックをベースにしてる。これに両チームの根本的な守備のやり方を併せて考えてみるとフロンターレの優位性が見られる。

流動的な相手の動きに対してフロンターレは基本的に受け渡しをしない。見るべき選手がついてしっかりと見る。対して、ゾーン寄りのアントラーズは受け渡しをする。フロンターレの2トップが中盤に降りてきたときにはCBはある程度まではついて行くけど、最終的には中盤の選手に任せることになる。

このやり方のどちらが両チームの守備のベースとなる1つ1つのチェックをしやすいかって問題。フロンターレは見るべきところがはっきりとしてるから、そのまま入ったところにチェックに行ける。むしろ、入りどころを狙うことも可能になる。アントラーズは受け渡しをするから微妙にズレが生じる。個々のチェックの意識はあっても、フロンターレと比べると1つ寄せが遅くなる。これは中途半端な位置に入られるとマークがあいまいになってしまうだけに仕方がない部分。

特に1つ下に下りてくるジュニーニョと鄭は最後まで捕まえきれてなかったと思う。後で書くけど、後半は1つ下がった位置からの2トップの個の仕掛けにかなり冷や冷やさせられた。それに前半には村上の飛び出しで決定的なシーンも作られた。 アントラーズの守備陣はフロンターレの上下の動きに対して、かなり手を焼いてた気がする。

この部分において微妙に差が生まれた。要するにどちらが守備のスイッチを入れやすく、はっきりした守備ができるかってこと。その中で立ち上がりに狙い通りに中盤でのインターセプトが多くなったのはフロンターレだったと思う。そして、このフロンターレの中盤での引っ掛けが両チームの主導権争いにさらに大きな影響を及ぼした。

フロンターレの攻撃は縦への意図が強い。奪ったらまずトップに当てる。ここまで書いてきたとおり、ジュニーニョも鄭もボールを引き出しに下がってくるシーンが多いのは、切り替えの場面でも同じ。1つボールを受けることによって前線の起点になることが多い。

そして基本的なフロンターレの狙いは前の3人でできるならやっちゃってってイメージ。マギヌン、ジュニーニョ、鄭の3人でフィニッシュまで行こうとするのがファーストチョイスだと思う。ただし、3人で攻めきれるほどアントラーズの守備も甘くない。だから、前に当てた時点では最低限前線に起点を作ることが求められる。

そうやって前線に起点を作っておいて、後ろから選手が飛び出してくるのがフロンターレの守備後の切り替え。このときにフロンターレの後ろの飛び出しに引っ張られて、アントラーズの中盤が下がってくる。ボールが自分の背後にあるのに頑なに前に残ってても仕方ないわけだから、これは正しい選択。ただ、結果として守備のブロックがかなり低い位置まで押し下げられる状況が生まれると思う。

そういう低い位置で奪ったアントラーズの選択肢はトップへの1発のパスだった。特に前半は前線に蹴りだすだけのシーンが多くなった印象。2トップがはがれて前で流動性をどうこうなんて状況は作り出せなかった。同時に1発のパスに対する跳ね返しの力は圧倒的に強いフロンターレの最終ライン。結果として1発のパスは攻撃のチャンスにつながらず、アントラーズは守備ブロックを一気に押し上げることができなくなったと思う。そうやって徐々にフロンターレが陣地を増やしていった。

フロンターレの陣地増やしにはもう1つのアプローチがあった。それも前の3枚にまず当てたところがスタート。これによってアントラーズの意識は真ん中に凝縮される。だから、必然的にサイドに対するケアが甘くなっていったと思う。そういう流れの中でフロンターレの両WBがかなり攻撃的な姿勢を見せ始めた。特に右サイドの森の個の仕掛けはかなり効果的だったと思う。押し込まれたアントラーズの両SBはなかなか攻撃に出て行けなくなった印象。システム的にサイドが不利なフロンターレがサイドの主導権を握るっていう面白い展開が生まれた。

ちなみにフロンターレは守備時にもブロックを作った時点でサイドの攻防に対するアプローチはしてた。フロンターレの守備の形といえば、これまで何度か取り上げてきた5-2-3がすぐに思い浮かぶ。前線の3はマギヌンが1つ押し出されることでフィルターを作るわけだけど、この試合に関してはマギヌンの守備面での仕事はいつもよりも多かったと思う。

1つはアントラーズの最終ラインがボールを持ってるときにボランチ(小笠原とやりあうシーンが見られた)への対応。もう1つは相手のSB、特に内田の攻撃参加の蓋になることだった。守備時に左サイドに入ったマギヌンは内田に対してけん制をする。それでも内田が攻撃に出てくれば、しっかりとついて後ろの守備を助けるシーンが目立った印象。

さらに、このサイドの攻防についてはアントラーズの守備のジレンマもあったと思う。フロンターレの陣地を増やすアプローチによってアントラーズは多くの選手が自陣に押し下げられた。逆にフロンターレは最終ラインがハーフェイライン付近までボールを持ち上がれる状況が生まれた。

要するにフロンターレは中盤以前が敵陣に押し出されてる状況。その中で攻撃のアプローチにはいくつかの選択肢があった。大きく分けると外を使うか中を使うかってことなわけだけど。1つは両サイドをワイドに使った展開。最終ラインでのパス回しに1つ前のWGを参加させながら、横幅一杯を使ったアプローチが見られた。もう1つは中盤に降りてくるトップを利用して真ん中の最短寄りを進むやり方だった。

アントラーズとしてはかなりやりにくい。相手のWBのケアに行くと横の間延びが起こって真ん中が空いてしまう。真ん中の場所ではジュニーニョ、鄭が下がって受ける。アントラーズは最後までそこを完全に捕まえ切れなかったのは上にも書いたとおり。さらに、1つ降りた中盤の位置からの仕掛けも脅威だった。

だからと言って、真ん中を固めると今度は両サイドが空いてくる。中盤が中に絞ればフロンターレのSB×アントラーズのSBの関係になり、3-5-2×4-4-2のシステム上のサイドの枚数は関係なくなる。むしろ、アントラーズのSBのケアが行き届かない場所でボールを受けて仕掛けてくるフロンターレのWBの方が主導権を握ることになる。

で、結局アントラーズは真ん中を固めることに重点を置くことにした。幸いなことに前半のフロンターレの真ん中の攻撃にはあまり怖さがなかった。マギヌンが目立たなかったし、中村も自重気味。2トップの2人に注意しとけば、大きな問題は起きないような状況だったと思う。

サイドに関してはある程度捨てた側面がある。相手WBの攻撃参加も許した。その代わり、そこから上がってくるクロスは跳ね返すことでピンチを逃れてたと思う。フロンターレと同じく最後の跳ね返し力のあるアントラーズならではかもしれない。それにフロンターレはサイドで主導権を握っても、2トップが中盤に降りちゃってて中の枚数が足りてないってシーンが多かった。

ちなみにフロンターレはカウンターだけのチームではない。ここまで書いてきたことからだと、中盤で引っ掛けてトップに当ててそこからアプローチっていうイメージが強すぎるけど。上に書いた後ろでの左右の展開を含めた遅攻のよさも持ってる。

その中でこの試合ではサイドを変えるうまさが目立ってたと思う。そもそもフロンターレの攻撃はしっかりと組み立ててるときでも前線の動きが活発。トップの中盤降りを利用した出入りの激しさ、さらに後ろからの飛び出しが見られる。

基本はそういう飛び出し、トップの引き出しを利用しながら縦へ縦への意識が強いやり方。これは速攻時に限らないし、サイドでの森の縦への仕掛けも同じイメージだと思う。ただ、流れの中で前線の動きが停滞してしまう状況も生まれる。それはタイミングの問題であって、ある程度仕方ない部分。そうなったときに思い切ってサイドを変えるやり方が目立った。そうやって再び作り直す意図があるんだと思う。そうやって常に動きの中で組み立てていくのが印象的だった部分。

この試合のいい時間のフロンターレはセパハン的だった。セパハンが後半に勝負に出てくる3-5-2の形を思い出させた。相手の攻撃は要所要所でしっかりと押さえ、自分たちの攻撃は飛び出しをベースにし、実質的3バックで攻撃に特化した両WBを利用して幅を利用するっていう。

前半はこんな感じで完全なフロンターレペースで試合が進んだって言ってもいい。ただ、同時にzアントラーズも慌ててはいなかったはず。ブロックを押し下げられて、ボールも持たれたけど、ほとんど危ないシーンは作られなかった。村上のウラへの抜け出しは決定的だったけど、あれはアントラーズが完全に腹を決める前。最後で跳ね返すと決めてからはことごとく跳ね返していった。

これに対して、後半の最初に出てきたのはフロンターレだった。明らかに中村がプレーする場所が1つ高い場所になった印象。前半は低い位置で組み立てながらバランスを取ってた中村が後半は相手ゴール近くでプレーする時間が長くなった。

アントラーズも後半はやり方を変えてきた印象。前半はボールを奪ったらほとんどトップに放り込んでたけど、後半は奪った後にしっかりとつなぐ意識が強くなった。相手の切り替えでの守備を潜り抜けながら、うまくパスをつないで行った。これは中村が攻撃の意識を強くしたフロンターレの中盤の守備がややルーズになった側面もあると思う。

そのパス回しで時間を作れたことで、後ろからの飛び出しが活性化した印象。一気に後ろから押し上げていくシーンが目立った。結果、FWがはがれてた前半とは打って変わって前線に人数をかけられる状況が生まれた印象。その中でアントラーズ本来の前線の関係性も回復して行った。

次の守備を考えても切り替えでつなぐアントラーズのやり方は効果的だったと思う。上にも書いたとおり、前半はトップへの放り込みで押し上げの時間を作れなかった。対して後半はつなぐ意識を持ったことで守備ブロックの押し上げにも貢献した。それに、攻撃で前線に人数をかえられたことによって、前線での前に向けての守備も復活した印象。相手の最終ラインが前半ほど高い位置を取れなくなったのが1つの指標となってた気がする。

ちなみにアントラーズは1発で距離を稼がなければならない状況(相手の切り替えの守備がいいとか)でも工夫をしてきた。前半は田代の高さを頼って相手の最終ラインとの高さ勝負に出たけど、それは効果的でなかった。だから、後半はマルキーニョス(本山、野沢含めて)の引き出しの動きで勝負した印象。ボールを奪ったところから斜めに逆サイドのスペースに放り込むシーンが多くなったと思う。相手のWBウラを狙い、スピードとか動きで勝負する意識が強くなってたと思う。

後半はフロンターレの中村の攻撃参加をきっかけに試合が動いき、それに伴ってアントラーズも前半のように守備に重点を置かずに攻めてきたってのがここまで書いた流れ。アントラーズがこうやって前に出ていたことはフロンターレの攻撃をも活性化させることになったと思う。

前半のアントラーズは自陣で守備をし(させられ)、サイドを捨てて真ん中を押さえてきたってのは上にも書いたとおり。この真ん中押さえには自陣に人数をかけたブロックをつくり、スペースを消すってのが1つの条件だった。狙いかどうかは分からないけど、前半のアントラーズは攻撃に人数をかけずに後ろのブロックを崩さなかった。結果、フロンターレの2トップはあまり目立たない存在だった。

後半はアントラーズが攻撃に出てきたことで、後ろのブロックは前半ほどきつくはなくなった。さらに中村が攻撃に参加してきたことで、フロンターレは真ん中にも厚みを加えることに成功したと思う。ジュニーニョと鄭のタッチ数も増えてたと思う。

そして、1つ下で受けた2人は個の力でゴールまで運んで行った。2人へのボールの入りどころを浮かせていたアントラーズは、前を向いた2人の攻撃力に常に晒されることになったと思う。だからと言って、そこに人数を凝縮させると今度はサイドが空いた。このサイド空きは前半とは性格が違う。サイドの選手がよりゴールに近い位置でボールを受けるシーンが多くなっただけに、前半のようにルーズにしておくわけには行かなかったと思う。そういう危険な展開の中でもアントラーズの守備陣は守りきった。

対するフロンターレの守備陣も最後の最後で守りきるシーンが多くなった。アントラーズが本来の流動性を復活させたこと、さらに味方が攻撃的に行ったことで前半の立ち上がりほど完璧に押さえられなくなってたと思う。特に弱点である3バック脇のスペースを突かれると、もろさを見せてた気がする。

結果として後半は攻め合いの展開になった。逆に言えば守り合いの展開になった。切り替えも速くて、両チームのボールの行き来がめまぐるしい展開になった印象。その中での本山のゴールだった。本山のシュート自体は素晴らしかったけど、あそこにボールが来たのは交通事故的。素晴らしい試合展開の中でのあっけない決勝点になった。

この得点後、アントラーズは野沢→ダニーロの交代で試合を落ち着けにかかる。シーズン当初、不用意なキープで攻撃の流れを分断してた印象が強かったダニーロ。でも、この場面ではキープ力が存分に生かされる。アントラーズとしては下手に攻め合い、守り合いの展開にする必要はないわけで。アントラーズの側が攻撃に1つ落ち着きをもたらすことで、試合全体の流れを停滞させに入ったと思う。最近しばしば見られるバルサのロナウジーニョ、五輪代表の家長と同じ役割。

でも、このダニーロが予想以上に守備をした。本山、小笠原の守備意識に負けるとも劣らない(はいいすぎか?)守備意識の高さを見せて、自陣深くまで戻ってくるシーンが目立った。本来ならば歓迎すべき事態なんだろうけど、アントラーズとしては狙い通りではなかったはず。前線のダニーロに当てて時間を作るはずが、前線にダニーロはいなかった。結果として跳ね返しても跳ね返しても相手に拾われる展開が生まれてしまった印象。

それでもシステムを4-3-3に変更し、それまで以上に後ろから飛び出して人数をかけてきたフロンターレの攻撃(しかも個の力が抜群)を跳ね返し続けたのはさすがというべきか。
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2007-12-29 Sat 23:55
ガンバ×サンフレッチェ
<ガンバ:4-4-2>
FW:バレー-播戸
MF:遠藤-二川-橋本、明神
DF:安田-山口-シジクレイ-加地
GK:藤ヶ谷

<サンフレッチェ:3-5-2>
FW:佐藤-平繁
MF:柏木-森崎浩、服部-森崎和-駒野
DF:盛田-ストヤノフ-槙野
GK:下田

前半24秒で生まれた先制点。あれはおそらく狙い通りだったんじゃないかって気がする。ガンバの最終ラインが高い位置を保つことは分かってること。さらにサンフレッチェのトップにはウラを狙うのには最適な佐藤。サンフレッチェは試合開始後最初の攻撃に賭けてた気がする。おそらくあの1回をミスったらガンバもしっかりと対応してきたはず。そこをキッチリと決めたのは素晴らしかったと思う。

この得点でサンフレッチェがリードを奪い、残りの時間は完全に攻めるガンバ×守るサンフレッチェの構図が生まれた。サンフレッチェは終始自陣に11人を戻して完全に守備を固め、ガンバは後ろから次々と選手を送り込むことで攻撃の人数を増やしていった。後で書くけど、この構図によってガンバにとってはかなり窮屈な展開を余儀なくされたと思う。ボールを支配してもゴールへの可能性を全く感じさせなかった。

これにはサンフレッチェの守備のやり方も関係してたと思う。サンフレッチェは最後の最後のところを守る意識を徹底した。相手の持ち味である中盤には厳しい対応をせず、その中盤からの最後のアプローチを分断することに重点を置いたと思う。ある意味ではレッズ的な守備ではあるけど、前線の守備意識がレッズより高いからさらに堅いブロックが形成されたと思う。

レッズのラストブロックとの違いは上にも書いたように前線の守備意識。それは同時に相手の中盤を完全にフリーにするわけではないことを意味する。つまり、ただ最後の場所だけを固めるだけではない。というか、ガンバ相手に中盤をフリーにするのはあまりにも危険すぎるわけで。そういう意味で中盤の対応関係もある程度はしっかりとしてきた印象。

この試合のガンバは中盤をダイヤモンドにしてたっぽい。守備を見ても、明神を底に置いて、その前の3枚を並べる形が見られた。攻撃でも遠藤、二川、橋本が積極的に攻撃に出て行き、明神は下でバランスを取るような形だったと思う。

基本の3枚の並びは二川を頭にして1つ下に遠藤と橋本。対するサンフレッチェの中盤は森崎和を底に1つ前に柏木と森崎浩。その中で二川×森崎和、柏木×橋本、森崎浩×遠藤の合致が生まれた。とりあえずはこれを基本としたサンフレッチェの中盤の守備だった。

ただ、ガンバの中盤がそれほど単純ではないのは知っての通り。中盤でポジションを変えながら、ボールを保持していくのがガンバのやり方。こういう中盤でのガンバの対してサンフレッチェは中盤の場所では受け渡しをあまりしなかった。中盤ではってのは相手がトップの場所に出てくる場合もあるから。ただ、基本的には対応関係そのままに相手についていくやり方が見られた。例えば二川と遠藤が上下を入れ替えれば、サンフレッチェはそのまま森崎兄弟が受け渡さずについて行く。サイドに流れた相手に対して対応することで引っ張り出されるとか。

ただ、完全にマンマークかと言えばそうでもなかったと思う。底に入る森崎和が1つ前だったりに引っ張り出されると、DF前にはスペースができてしまう。そういうときには柏木(遠藤につく森崎浩は極力放したくない)が1つ降りてきてスペースを埋めるやり方が見られた。そのときにはFWの1枚が橋本の対応に入ることが多かった。FWに関しては明神の攻撃参加にもある程度まではついてきて対応してたと思う。これが11人全員が自陣に入るブロックにつながった。

もう1つの形としては中盤がSBの対応に引っ張り出される場合。5バック気味のブロックを作るサンフレッチェのWBは低い位置のガンバのSBの対応がうまくできなかった。深い位置まで入ってくれば単純な対応関係を作るわけだけど。だから、サンフレッチェは相手のSBを浮かせ気味だったのは確か。それでもある程度の場所まで入ってこられるとさすがに放っておけない。そういうときに中盤が対応に回る場面が見られた。

特に自分の見るべき選手と相手SBがサイドで関係を築こうとしたときにはしっかりと対応に入ったと思う。WBとのマークの受け渡しをしながら、サイドで数的不利を作らないようにしてた。逆にSBの攻撃参加が単発のときには、相手がボールを持っていたとしてもある程度はそのまま自由にやらせるシーンが目立った気がする。

ここまで見て分かるように、サンフレッチェの中盤の対応は一応のものが多いように思う。相手SBを浮かせてしまう対応を見てもそれがよく分かる。それに相手の技術のある中盤に対して想定されてるのが1×1の形だって時点で、そこが勝負どころではない。さらに、その対応にしても絶対に仕事をさせないっていうような厳しいものではない。あくまでも、さすがにフリーにするのはまずいだろってイメージでの対応が目立った気がする。最低限、相手の中盤のミドルシュートだとかフリーでの効果的な動きは許さなかった。

その代わり、上に書いたような守備の勝負どころではしっかりとした対応が見られた。中盤からの最後のアプローチに対しては厳しく対応。トップにしろ、トップの位置に出てきた中盤にしろ、入りどころに対してかなり厳しい対応をしていった。入った瞬間を狙って奪う、前を向かせないっていう対応が見られたと思う。中盤とは違ってしっかりと人を捕まえる対応をしてたのも特徴的だったと思う。

この場所の守備については個々の意識の高さももちろんだけど、何よりもレッズ的な人数をベースとしたやり方だった気がする。ゴール前の場所に人数をかけることで、超密集地帯を作り出す。ガンバの選手の技術をもってしても、あれだけの狭い場所で仕事をするのは難しいし、そもそも相手の網に引っ掛けられてパスが通らないってことのが多かった。

だからガンバは最後のアプローチが効果的にできなかった。組み立ての段階では浮いている左右のSBを利用しながらの横のアプローチ、ガンバらしく詰まったら1度戻すっていう縦のアプローチによって相手のブロックにギャップを作ろうとする意図が見られた(ただ、これも時間にすると短かった)。でも、サンフレッチェとしては勝手にボールを回してくれってイメージだった気がする。元々中盤はある程度捨ててたし、いくら回されても最後はやらせないっていうやり方だったのはここまでに書いたとおりだった。

こういう流れの中でガンバに閉塞感が漂ってきた。ボールは保持できて前線でいくらでも時間が作れるから、後ろからの攻撃参加が活発になる。普通に考えれば攻撃に厚みがあるってことなんだけど、自陣に全員が引いてるサンフレッチェの守備陣に対してガンバが人を増やしてもスペースがどんどんなくなっていくだけだった。個々の動けるスペースがどんどんと減っていって、完全に前線が詰まるっていう状況が生まれてしまった印象。

さらにガンバらしい縦のアプローチができなくなった。上にも書いたように縦のアプローチは前線に入れて、詰まったら後ろに戻すってやり方。それが多くの人数が前に入ったことで、ボールの後ろが薄くなってしまった。だから、後ろに戻す選択肢がなくなってしまった。結果として相手のブロックを上下に揺さぶることができず、ゴール前に張り付かせたまま攻める形が増えたと思う。

この縦のアプローチの減少が横のアプローチの減少も生み出す。ガンバの基本の形は詰まったら1度戻して、サイドを変えて攻め直すってやり方。後ろに戻す選択肢がなかったから、サイドを変えての攻め直しもありえなかった。常にラストの1/3のところでボールを保持してたガンバとしては、そういう場所で一気にサイドを変えるって選択肢もあまりない。相手との距離が近すぎて、大きなサイドチェンジはほぼ不可能だった気がする。結果として攻撃がかなり狭いエリアに限定されてしまっていたと思う。

ガンバはこういう停滞状況の中で極端に言えば下図みたいな形が見られた。両SBが攻撃に参加し、後ろはCB+明神。前線では遠藤、二川がFWに吸収され4トップ気味になってる。そして、全体として動きがなくて待ってるだけの状況。

(○:サンフレッチェ、●ガンバ)

○●○●○●○●○
●  ○●○ ○  ●  
           
    ○●○
    ●  ●

この状況のときにサンフレッチェが相手のくさびを1つ前で引っ掛けたらどうなるか?まず、前線で待っている4枚は切り替え後最初の守備には参加できない。正確には相手の勢いを殺すような正面からのアプローチが不可能。だから、サンフレッチェは苦もなくトップに最初のパスを出すことができた。

そうやってトップの収まった瞬間サンフレッチェのWBが一気に飛び出していく。図では完全な横並び5バックになってるけど、実際には左右のWBが上下差をつけてた。だから、片方が出て行くのはそれほど難しくはなかったと思う(とはいえ、上下の運動量は素晴らしかった)。

WBが飛び出していくのは相手のSBウラのスペース。結果として一気に縦に進攻することができた。そのときに中の枚数は最低でもFWが2枚。ボールを持つWBと加えると相手とは3×3の状況が出来上がる。この形がまさに2点目のシーンだった。

ガンバがカウンターを食らうことが多かったのはこういう状況があったから。前線に人数が多く、1人1人の守備意識もそれほど悪くないことを考えると最初の守備があまりにも効かなすぎた。それは上の図のようにボールを奪われた時点で、すでにファーストDFとして機能しない場所にいる選手の数が多すぎたから。

上で想定したのは中盤で奪った場合だけど、最終ラインがくさびを奪ったときでもあまり変わらない。ガンバのファーストDFとなるべき選手と、サンフレッチェの守備後の最初のボール保持者はほぼ横並び。加えてサンフレッチェの守備は相手の前でカットする=前への勢いがあるっていう時点で、ガンバのファーストDFは無力化された。

ガンバはあまりにも簡単にボールを運ぶことができたからか、組み立てで相手のブロックを崩すアプローチがおろそかになった。中盤で組み立てる意識が減退して、みんながゴールへの意識が強くなった。

でも、そのゴールに向かう中では待つ選手ばかりになった。動きがほとんどなかったのが大きな問題だった気がする。前線で待つ選手があまりにも多かった。組み立てで相手のブロックにギャップを作れなかったのに、最後のアプローチでも相手に大きな混乱を与えられなかった。

そうやって前線が動かずに停滞してる状況でもボールは高い位置で保持できるから、後ろから次々と選手が入ってくる。そのときに前線が詰まってるから、そういう選手も待つ選手の一団に吸収される。結果、人だけが多くて動きがない状況が生まれた。

相手と味方を合わせてゴール前の人数が恐ろしく多くなって、自分たちで勝手にスペースを消してしまったってのは上にも書いたとおりだったと思う。動きのなさが前線の蓋を作り、前線の蓋が動くスペースを消してしまうっていう悪循環が生まれていた印象。

そうやってスペースがなく動きも状況だからガンバのボール回しはとにかく足元足元を狙った形になった。サンフレッチェとしてはかなり守りやすい状況だったと思う。ブロックは崩されず、さらに狙った場所に思い通りにパスが入ってくる。ただ、待ってればいいような状況が生まれてたと思う。

ガンバの意図がゴールに向かっているのは最後のアプローチを見ても明らかだった。上にも書いたように左右のWGはやや浮き気味だったのに、そこを使う意図があまり感じられない。最短距離の真ん中を攻めていこうとする意図が強すぎた気がする。何が何でもくさびを入れようとして、ことごとくつぶされてしまうシーンが多く見られた。前からのボールに対してはサンフレッチェの守備陣は全く問題なく安定した守備を見せてたから、相手にみすみすボールを渡す状況だったって言っていい。

ただ、2-1になったあたりからガンバの組み立てが明らかに変わった。それまでの真ん中真ん中のアプローチから左右のサイドを効果的に利用するやり方が多く見られるようになったと思う。浮き気味だったSBを最後のアプローチに利用するようになった。左右からのクロスから可能性のあるチャンスが多く生まれた印象。

前線が詰まった状況も横からのボールに対してはメリットになりうる。単純に中のターゲットが多いってことになるわけだから。サンフレッチェの守備としても正面からのボールよりはギャップが生まれえる。中の人数が多い相手に対して、大外を空けてしまうシーンが見られた。

本当はこのアプローチを続ければガンバは可能性があったと思う。でも、後半はまたしても真ん中にこだわるやり方になってしまった。後半の立ち上がりの時間に相手の中盤の対応が弱まったこともあって前半よりは可能性が感じられる形が生まれた。結果としてサイドを経由せずに最短距離を進む意図が強くなってしまったのかもしれない。

それ以上にそもそもSBの攻撃参加も停滞してしまったのが痛かった印象。原因は定かではないけど、上に書いたカウンター時の相手のWBの攻撃参加を気にした側面があった気がする。相手のWBの攻撃参加によって一気に距離を稼がれるシーンが多かった。それだけ2失点目をはじめとした相手のカウンターに脅威を感じてたってことだったんだと思う。結果として攻撃でサイドを使う指示はバレーに対してサイドに流れろっていうものになった。

で、ガンバの攻撃の変更は攻撃陣の交代によって行われた。最初の交代は橋本→寺田だったけど、この意図自体はよかった気がする。前線に渋滞が起こってる状況を整理するのには分かりやすかった。

この整理自体は橋本→寺田が単純に変わったというよりも、それに伴うシステム変更の方に意味があった。それまではダイヤモンドだったのは上にも書いたとおりだったけど、この交代でOMFに寺田と二川、DMFに遠藤と明神って形になった。狙いとしては遠藤を1つ下に降ろすことによって、中盤の組み立てを重視しようっていう意図があった気がする。

実際に前半の立ち上がりの時間はいい内容の攻撃が見られた。まだ、どちらが主導権を握るのかがはっきりとしない中でその後の時間のようにガンバの選手が前線にむやみやたらに飛び出していく状況は見られなかったと思う。遠藤、二川、橋本が交互に下がってボールを受け、浮いている左右のSBを利用して幅を持たせた攻撃も見られた。

このときにサンフレッチェの守備はそれほど最後を固める形にはなってない。上に書いたように中盤である程度つく選手を決めてたから、下がって受けるガンバの中盤の選手に対してズルズルとブロックから引っ張り出されるシーンが見られた。だから、DFと中盤の間にギャップができてガンバとしてはトップにボールを当てること自体はできた。それでもサンフレッチェはそういう縦パスへの意識を強く持ってただけに効果的かって言われると微妙だけど、その厳しい対応に対しては少なくともガンバはいくつかのファールを得ることができた。

得点シーンもガンバの前線の枚数が少なく、同時にサンフレッチェの最後のブロックの人数が少ない形。誤解を恐れずに言うなら、ガンバの攻撃はコンパクトすぎた。コンパクトなガンバの攻撃の組織が相手のコンパクトな組織を作り出した気がする。もっと、いい意味での(?)間延びが必要だったのかもしれない。

繰り返しになるけど、多くの時間はガンバの後ろの選手がズルズルと前線に入ってきた。それにつくサンフレッチェの中盤もズルズルと下がっていく。ガンバの選手がどんどんと上がっていったことで、サンフレッチェの守備ブロックの人数が増えた側面があった。そうなってしまってからは、播戸もバレーも完全に消えてしまったと思う。さらに、チームとしての上下左右の揺さぶりができなくなったのは上にも書いた通り。

これを考えると遠藤を1つ下げるのはいいアプローチだった気がする。あまりにも前線での受け手が多い状況から、やっと1つ下に出し手が加えられた。そうやって本来の中盤の場所での組み立てをしっかりとやろうっていう意図が見えた。ダイヤモンドからボックスに変わったことで相手の合致にも微妙なギャップができることが予想されたし。

ただ、このガンバの橋本→寺田の交代の際に同時にサンフレッチェが平繁→高萩の交代。個の交代でサンフレッチェのシステムが3-4-2-1になる。DMFに森崎×2、OMFに高萩+柏木の形。相手の変更を読んでのものかは分からないけど、くしくもサンフレッチェの中盤もボックス型になった。結果、再びシステム合致が生まれることになった。しかも高萩の運動量が素晴らしかったことで、ガンバとしては寺田の投入では閉塞感を打開できなかった。

これに対して安田→家長を交代。3バックの形になって前線を増やしたことで、再び悪い時間の前線の渋滞状況が生まれた。さらに、せっかく1つ下に下げた遠藤が相手のカウンターの対処に負われることになって攻撃の役割を担えなくなってしまった気がする。相手の後ろが薄くなったことでサンフレッチェは両サイドを中心に前半以上に効果的にカウンターを仕掛けることができた。

とりあえずガンバの最後は個頼みになってしまった。基本的に個の突破自体は悪くはないアプローチだったと思う。いくらパスを回しても崩れない相手ブロックに対して、1人で数人を相手にすることでなんとかギャップを作ろうって形。ただ、個の突破に周囲の助けがなかったのが痛かった。チームとして個頼みの意識が強くなりすぎた気がする。そういう状況で敵味方入り乱れた密集地帯を個で打開するのはさすがに酷だった気がする。

こう見てみるとガンバの中盤のところのアプローチにちょっと疑問を感じる。まず、なぜダイヤモンドを採用したのかってこと。ナビスコ杯以来見てないから分からないけど、本来のボックスの4-4-2の方がバランスがよかった気がする。実際のところダイヤモンドだったのかどうかは定かではないけど、明らかに本来のやり方とは違っていた。

それはチームとしての戦い方もストロングポイントである中盤を軽視した形。これはシステムがどうだったかっていう以前の問題。中盤がみんなFWに吸収される時間が長かった。動きも少なかったし、距離感もまずかった気がする。

実際には中盤を軽視したつもりはないけど、中盤がなくなってしまったってのが本音なんだろうけど。そういう意味ではサンフレッチェの誘い込みがうまかったって言えるかも。結局、ガンバはサンフレッチェの土俵(最後のブロック)で戦うことになってしまった。

こういう点を見てもサンフレッチェが降格した理由がイマイチつかめなかった。今回の守備を見ると圧倒的な失点の多さ(リーグワースト)も説明できない。何しろ相手はリーグ最多得点チームだったわけだから。

そう考えると今回の試合みたいに守るなら守るっていう意思統一ができてないときが問題だったのかもしれないと思う。この試合の立ち上がりを見ると追いかける意識が強い前線と受けようとする後ろの間にギャップができてた。結局はみんなが押し下げられたことで、強制的にコンパクトなブロックができたけど、こういう前後のギャップが問題だったのかもしれないと思った。あくまでも想像の域を出ないけど。

ちなみにサンフレッチェは攻撃の内容も悪くはなかったと思う。ボール奪取→トップに当てる→WBに走らせる→真ん中の押し上げ、っていう上に書いたような形のカウンターはもちろん、遅攻の内容もよかったと思う。遅攻の流れでは、WBを利用して左右の幅を効果的に使ながら広いところ広いところに展開する。ボールなしの動きも柏木を中心に流動性を持たせながら(後ろからの押し上げも)ギャップギャップにうまく入り込んだし、動きの中の展開にはスピード感もあった。何よりもしっかりとつなぐ意識が強かったように思う。これはガンバの守備の内容もそれなりによかっただけに、余計目立った部分。

そのガンバの守備はスペースをケアしながら人を見るようなやり方になってた気がする。サンフレッチェの先制点にも表れてる通り、ガンバの最終ラインはかなり高い位置に配置。それに伴って、中盤のラインが敵陣内に入るようなサンフレッチェとは対照的なやり方も見られた。そうやってコンパクトなブロックを形成しながら、スペースをつぶす。最終ラインはSBを真ん中に入れてラインの意識を高く保ち、その関係性のままに左右に動かすやり方が見られた。

ただ、その中で局年局年は人を見る。柏木と明神(このためにダイヤモンドに見えたのか?)のマッチアップが目立ったし、CBもくさびに対してはしっかりとマークについて対応する。出し手に対しては中盤の場所に入ってきたボールに対してはしっかりとチェックをしていくやり方が見られた。

サンフレッチェはこういうガンバの守備の隙間に入り込んでうまく攻撃の組み立てをしてたと思う。とは言っても、ほとんどの時間は守ってたから必然的にあまり多くはなかったけど。

この試合の感想はサンフレッチェに悪い点は見つからなかったってのが一番。監督の采配の問題かもしれないとも思ってたわけだけど、橋本→寺田と同時の平繁→高萩っていう抜群のキレも見せつけられたわけで、この試合では問題を感じさせない。決勝で問題の一端を見ることができるか。
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2007-12-28 Fri 17:14
マンU×エバートン
<マンU:4‐4‐2>
FW:テベス-ルーニー
MF:ギグス-アンデルソン-キャリック-Cロナウド
DF:エブラ-ビディッチ-ブラウン-シンプソン
GK:クシュチャク

<エバートン:4-4-2>
FW:ヤクブ-ジョンソン
MF:ピエナール-ケーヒル-Pネビル、カーズリー
DF:レスコット-ジャギエルカ-ヨボ-ヒバート
GK:ハワード

まずは基本的なエバートンの守備のメカニズムから。ベースとなるのは中盤ダイヤモンドの4-4-2だったけど、実際にはマンUの攻撃をつぶすために意図的なバランス崩しをしてきたと思う。

(○:マンU、●:エバートン)  

○ ○●○●○ 
        
● ○●○
○       ○
    ●    ●
   ○ ○
●  ● ● ●

エバートンの2トップの配置。ヤクブが相手CBに対してプレッシャーをかけ、ジョンソンが右サイド寄りに配置される形。これによってマンUのCBのエブラへの選択肢をつぶした。

中盤はダイヤモンドというよりは平行四辺形的な形だったと思う。右肩下がりと言ってもいい。その中盤の役割について見てみる。

まず、平行四辺形の上辺の2人はトップの2枚と協力して相手の攻撃をつぶす役割。トップ下のケーヒルがマンUのボランチへのコースをつぶす。結果としてエバートンの守備が機能してる時間はアンデルソンもキャリックもほぼボールを触れてなかった。

左サイドのピエナールは相手の右SBシンプソンに対するケア。ジョンソンの役割によってエブラへの選択肢がなくなり、ケーヒルによってボランチへの選択肢がなくなったマンUには攻撃のスタートとしてシンプソンを使わざるを得なかった。

それに対して、ピエナールはジョンソンとは違って入る前段階を切るというよりも、入った後にアプローチを仕掛ける役割。シンプソンにボールが入った段階でシンプソン→Cロナウドの縦のコースを切りながら、うまく寄せていったと思う。

こういう形のエバートンの2トップ+上辺のMFの守備によってマンUの出し手はしっかりとケアされたと言える。ボランチとエブラにはボール自体が入らず、シンプソンは入った段階で対応されてしまう。結果としてエバートンの守備が機能している時間帯のマンUの攻撃はロングボール一辺倒。本来の右SBの場所でも攻撃のスタートとして機能することが多いブラウンからのフィードが目立ったと思う。

攻撃の出し手をしっかりと押さえたエバートンは受け手への対応もしっかりとやってきた。その中心が平行四辺形の下辺に入った2枚。

上の図を見ても浮いているのが分かる底のカーズリーは誰を見るってことははっきりしてなかった。その中でトップ下のゾーンに入ってくる相手を見る役割を担ってた印象。守備がしっかりと機能してる時間はCロナウド、ギグスの両サイドとボランチの2枚が積極的に入ってくることはあまり多くなかったから、多くの場合で下がって受ける2トップを見る役割を担ってた。

ただ、厄介なことにマンUの2トップはかなり下がって受けに来るシーンも目立った。前線にいい形でボールが供給されなかったからだと思う。そういうときにはカーズリーもそのままついて行って引っ張り出されるシーンが目立ったと思う。そうなるとDFライン前にはギャップが生まれることになる。そこに対しては右サイドのネビルが絞って対応するシーンが目立った印象。

そうは言っても、ネビルの基本的な役割はカーズリーのカバーではなかったのも事実。おそらくエブラの攻撃参加に対する対応が1番だった気がする。おそらくエブラの攻撃参加が怖かったからこそ、ネビルを1枚上の中盤に使ったんじゃないかって気がする。ただ、実際には守備が機能してる時間にはエブラの攻撃参加もそれほど積極的じゃなかったから、サイドに流れるテベスとかルーニーの守備に回ることが多かった。

この左右のバランスを崩した守備が立ち上がりはかなり機能した。出し手も受け手もつぶされたマンUは上に書いたようにロングボール主体の攻撃が目立ってた印象。そういう状況では前線でのタメが期待できないから、攻撃に厚みも加わらずに前線の数枚でなんとかするシーンが目立った。そもそも、リバプール戦のときにも書いたとおり2トップの性質上ロングボールの攻撃はいいとは言えない。サイドに流れて受けても、そこで孤立してしまうシーンが多くなったと思う。

こういうマンUの閉塞感が打破され始めたのが前半の20分過ぎの時間から。それまでおとなしかった前線の動きが一気に活性化されて、前の4人がグルグルとポジションを変えるやり方が見られ始めた。そして、サイドにうまく入り込むことで攻撃に深みを与え、相手を押し下げるやり方を取ってきたように思う。

そのときにエバートンとしては意図的な左右のバランス崩しを逆に突かれる形になってしまった。もう1度上の図に戻ってみる。

上の図では右サイドは人数が足りてるのが分かる。SBが余ってるからルーニーとかテベスがサイドに流れてきても単純にSBが見ればよかった。エブラの攻撃参加にしても、ジョンソンがそのままついて戻ってくることで対応してたように思う。

対する右サイドは人が足りない。1つのパターンとしてはCロナウドにボールが入ったシーンから。Cロナウドにボールが入った時点でエバートンは右SBが対応するわけだけど、当然のことながら1枚前のピエナールも後ろへのイメージが強くなる。結果としてフィルターがなくなったシンプソンの攻撃参加が生まれ、さらにルーニーなんかが流れて絡んでくるとマンUの数的優位が生まれることになった。

もちろん、エバートンとしてはこの数的不利をほっとくわけには行かない。だから、トップ下のケーヒルがサイドに流れて守備をしたり、底のカーズリーが引っ張り出されたりってシーンが多くなる。結果としてそれまで機能してた守備組織のバランスが崩れることになったと思う。

だから、マンUとしてはこの右サイドを利用して攻撃に深みを与える最初のアプローチをすることが多くなった。そのまま右サイドから崩しきるってシーンもあったけど、相手の守備組織のバランスを崩しておいて、もう1度作り直すことが多かった気がする。

その時点ではアンデルソンとかキャリックっていうCMFに対するケアが甘くなってるし、右に1度作ったことで左のエブラが空くことも多くなった。そうやって本来やりたい状況を作り出した上で、左右の幅を使い、前線の流動性を使った攻撃のアプローチが見られるようになった。

これに対してエバートンも今までの守備のやり方を継続しようとはしなかった。相手の前線の流動性を発端としてバランスが崩れてしまった守備組織にこだわらなかったのはよかったと思う。1点は奪われたものの(すぐに追いついたし)、その後は再びマンUの攻撃に思い通りに攻撃をさせなかった印象。もしも、形によって相手を押さえるやり方に固執していればマンUの思う壺だったはず。

具体的にその守備は運動量と献身性をベースにしたものになったと思う。一番最初の時間に見られたような前線からの追いかけが復活した(立ち上がりはハイペースで入り、段々とペースを落としながら自分たちの守備のやり方に移行していった)。

ある意味ではここまで書いてきた守備は省エネ的。自分の入るべきポジションに入って、最低限の仕事をしていれば相手の攻撃が勝手に停滞してしまうっていうイメージだった。本当はこの省エネ的な守備で行ければエバートンとしては最高だったけど、そこまでマンUも甘くはなかったってとこか。

変更後のエバートンの守備はトップから相手のボールを追い掛け回した。それまでサイドに開いて相手の外へのコースを切ってたジョンソンが真ん中に戻ってきたのが分かりやすかった。そうやって相手の出し手に対する守備の意識をかなり高めた印象。

トップからの激しい守備によって出し手の選択肢が制限されれば、マンUの受け手がどれだけ流動的にやってきても関係ない。前が動いていても、出てくる場所が分かれば狙いどころが定められるし、相手のパスの精度も弱まってる。要所要所でボールに対してしっかりとアプローチをすることで、マンUの攻撃は再びスムーズさを失った。

ただ、この守備も前半までで終了。トップの場所から追い掛け回すやり方ではさすがに最後まで持たないと判断したかもしれない。後半はそれまでの積極性から一転、引きこもって最後で跳ね返すやり方になった。もちろん、マンUが攻撃に出てきた側面もあったから圧倒的にボールを保持される結果になったと思う。

後半のエバートンの守備組織は4‐4‐1‐1みたいな形。ジョンソンが1枚下がって、一応相手のボランチのケアみたいな役割を担ったけど、あまり意味がなかった。そして、後ろの4-4は真ん中に凝縮して、最後はやらせないっていう考えを徹底した印象。

結果としてマンUはかなり好きなように組み立てができた。相手が真ん中を固めたことでサイドが空いてきたから、Cロナウドが前を向いてドリブルで仕掛けるシーンも多くなった。さらに、前の蓋がなくなった両SBが積極的に攻撃参加を繰り返す。真ん中ではルーニー、テベスが相手のブロックの外に降りてくることでタッチ数を増やした。前線は変則4トップ的にポジションをグルグルと変更し、そこにキャリック、アンデルソンも出てきて厚みを加える。左右、真ん中からのバリエーション豊かな組み立てが可能になった印象。

ただ、それは組み立てまで。いい形での最後のアプローチができても最後の最後はエバートンの守備陣に跳ね返されてしまった。圧倒的にボールを支配し、ゴール1歩手前まで行くのにゴールが奪えないっていうもどかしい時間が過ぎていった。

この状況に対してファーガソンは超攻撃的な交代を決断。キャリックに変えてサハを投入して総攻撃に入った。形としては4バック-アンデルソン-5トップ(ギグスはやや低めでバランスを取ってた)のイメージ。守備時には前線の選手が交互に戻って対応してた。

さらに相手がヤクブに変えてグラベセンを投入した時点でさらに攻撃的なアプローチ。それまでは後ろはSBの1枚+CB+アンデルソンを残してたけど、相手が完全な1トップになった時点で両SBが攻撃に参加。後ろのケアはアンデルソン+CBに任せられることになった。その後、さすがに危ないと思ったのかアンデルソンに変えてフレッチャーを投入したけど。

この超攻撃的な姿勢が功を奏して終了間際にPKを獲得。結果として勝ち点3を手に入れた。後半はエバートンがほとんど出てくる姿勢を見せてなかったからこそのやり方だっただろうけど、勇気が要ったんじゃないかと思う。エバートンとしては後半は守りに入ったからこそ逆に相手の攻撃力を増やしてしまったっていう状況だったかもしれない。

次にマンUの守備×エバートンの攻撃っていう側面で見てみたい。リバプール戦では前線から役割をはっきりとすることでいい内容の守備が見られたマンUだけど、個人的にはまだ半信半疑だった。そういう意味で今回の試合でのマンUの守備は1つの注目点になってた。

結果から言えば、リバプール戦ほどいい内容の守備ではなかった。というか、ある意味ではマンUらしい後ろの4-2だけで守る状況だった。前線の守備への意識は高いものの、それはあくまでも自分の前にボールがあるとき。基本的に後ろを助けることは少なかった気がする。

例外はギグス。後で書くように左サイドに人数が足りなくなるシーンが多かったから、それを見て守備ブロックに参加する場面が多くなったように思う。あとのテベス、ルーニー、Cロナウドが前線に残って次の攻撃に備えるっていうイメージ。

(○:マンU、●:エバートン)  

    ○
○  ○  ○   
 ●  
●○ ○  ●
○ ○●○ ○

ちょっと分かりにくいけど、こういう形でマンUの左サイドに密集地帯が築かれるシーンが多かった。これはエバートンの守備のやり方と関係する。

上に書いたようにエバートンの守備は左右のバランスが崩れてる。だから、奪った瞬間には左右のバランスが崩れた状態で攻撃に出ることになる。そのときにエバートンの攻撃はまずトップに当てようとする意図が強い。そして、そのトップは右寄り(マンUの左)の配置。結果として右寄りに起点を作ることになるんだけど、トップ下のケーヒルがそれを助けに右に流れることが多くなる。それが上の状況。

エブラとジョンソンは対応関係ができてたから、マンUの守備時もジョンソン×エブラの関係が生まれることが多い。普通にCBが対応することもあったけど。そして、相手のケーヒルの流れに対してマンUのアンデルソンとキャリックが左寄りに対応。CMF2枚の横幅の守備の負担が大きくなるのはマンUの守備の特徴でもある。

とりあえず上の状況を見れば分かるとおり、マンUの右サイドは薄い。密集地帯を抜け出されるとピンチにつながる。そして、失点シーンがまさにその通りだった。このシーンは数少ない相手の右SBが攻撃に出てきたシーン。それ以外のところではCロナウドがついて戻ってたけど、このシーンは対応しなかった。CMFは左に寄せられて対応に行けない。結果としてブラウンが引っ張り出された。だから、得点者と競ったのがエブラ(その前でケアしたのがキャリック)って状況が生まれてしまっていた。

マンUのDFラインが晒されるメカニズムは大体このパターン。DF前のフィルターが2枚しかいないから、そこがずらされる(サイドに引っ張り出される、前に引っ張り出される)とDFだけで守らなければならない。それでも最終ラインの跳ね返し力でなんとかするのがマンUの守備の力ってとこか。

ちなみに例外となるギグスについて取り上げてみる。上の図は守備時に受け手をケアする前の4人でエバートンが攻めてるシーン。守備からの流れでは3トップ的に見えることも多かった。多くの場合ではエバートンは前の4人だけで攻めようとする意図が強かったけど、遅攻に入ればさすがに後ろも出てくる。

そのときに一番出てきやすいのはネビル。ダイヤモンドと考えれば攻撃の役割も求められるわけだから。 そして、そのネビルはマンUの左サイドに対応する。上に状況を見てみると、マンUの対応関係はすでに一杯一杯。だから、ネビルの攻撃参加にはギグスが対応する場合が多くなったっていう状況だった。

失点はCロナウドが守備に入らないことで生まれたけど、得点もCロナウドが戻らないことで生まれた。守備後に縦のルーニーに入れ、そこからCロナウドは展開。Cロナウドが距離を稼ぎゴール前にはテベスとルーニー。1度目ではシュートまで行けなかったわけだけど、これに対して後ろから次々に出てきたこと、急いで戻ってきたエバートンの守備陣が見るべきところをはっきりできなかったことで、最終的にシュートを打ったCロナウドには寄せ切れなかった。

この守備のやり方は諸刃の剣だっていえる。後ろの4-2で守り前の4を残すことで相手の攻撃の人数を減らす役割もある。今回の試合でも相手の後ろの4+1はコンスタントに攻撃に出て来ていない。前の人材が揃ってるだけに相手もしっかりと人数を揃えておく必要があるから。だから、結果として後ろの4-2だけで対応できる人数しか相手は攻めてこないってことになる。そう考えれば前線の4枚は間接的に守備に貢献してるとも言える。切り替えを含めて、自分の前に対する守備は献身的に行うわけだし。

こういう状況の中で、危うそうに見えても実際には失点が少ないっていう結果が生まれてる。リバプールみたいなチームには全体の守備をはっきりする必要があっても、基本は4-2-4でやれてしまうのかもしれない。実際に、ファン・デル・サール、ファーディナンド、ハーグリーヴスっていう守備の核なしで1失点に守りきったのはさすがだったと思う。実質的には前半だけだったけど。
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2007-12-27 Thu 18:15
チェルシー×アストン・ビラ
<チェルシー:4-3-3>
FW:カルー-シェフチェンコ-Jコール
MF:ランパード-ピサロ、エッシェン
DF:Aコール-カルバーリョ-アレックス-フェレイラ
GK:チェフ

レッドカードが3枚、スコアが4-4っていう結果だけを見てしまうと大荒れのように見えるこの試合。ただ、試合内容はそれほど荒れた展開ではなかったように思う。むしろ、試合の結果が決まったと思うたび(アストン・ビラ2-0、チェルシー3-2、チェルシー4-3)にそれが覆される面白い試合展開だった。

その中で前半は完全にアストン・ビラのペース。攻守に渡ってアストン・ビラがやりたいことをやりたいようにやり、チェルシーにはやりたいことをやりたいようにはさせなかった。そうなれば当然の結果としてアストン・ビラが圧倒的に試合の主導権を握る展開が生まれた。

アストン・ビラの一番の狙いは積極的な守備によって高い位置でボールを奪い、一気にショートカウンターで攻めきるっていう流れ。そういう意味でアストン・ビラは基本的には守備のチームだって言うことができる。攻撃では多くの場合で一気に縦に突っ切るやり方が多い。奪ってからの縦への意識が高い、典型的な堅守速攻型のチームだと思う。

だから、アストン・ビラのやり方を貫くためには守備の堅さが絶対に必要になる。しかも、守備のからの攻撃っていう流れを考えればより高い位置でボールを奪うことが目指される。そして、それを実現させるためには個々の守備意識の高さが絶対的に必要になると思う。アストン・ビラの選手は最前線からボールに対する素早く、厳しいチェックを誰もサボらずに忠実にこなしてた。

こういうアストン・ビラの前線からの守備の狙いは以前に見たアーセナル戦でも見られた。ただ、アーセナル戦ではアーセナルの攻撃のよさに対して、アストン・ビラの守備のよさが消されてしまったのは前にも書いたとおり。アーセナルは流動性を織り交ぜた近い関係で、少ないタッチで次々のパスを回していく。このパス回しがアストン・ビラの寄せの速さを上回った。結果としてアストン・ビラは効果的にボールにアプローチをすることができず、守備の狙いどころを定められなかったと思う。

ただ、後半のアーセナルの動きが停滞された状況ではアストン・ビラの守備が機能し始めたってのも前に書いた通り。動きが減り、前の人数を減らしたアーセナルは選択肢が少なくなった。結果として1人1人の保持時間が伸び、アストン・ビラにとっては守備の狙いどころが定めやすくなったと思う。この時点でアストン・ビラ本来の守備が見られた気がする。

この試合の相手のチェルシーはアーセナルほど組織でパスを回していくタイプではない。少なくともこの試合のチームは個の色が強く出ていた。結果としてアーセナルのように1タッチ2タッチでパスを回していくチームにはなり得ない。そして、それはアストン・ビラの守備が機能する下地を与えてたと思う。

アストン・ビラはアウェーにも関わらず立ち上がりから積極的に出てきた。格上(と思われる)のチェルシーに対して自陣で受けるっていう姿勢を見せなかった。敵陣深くから相手のボールを追い掛け回し、相手のビルドアップ時のミスを誘ったと思う。立ち上がりはチェルシーがペースに飲み込まれ、完全にアストン・ビラの狙い通りの展開が生まれたと思う。

要するに上にも書いたように高い位置で奪ってからのショートカウンター。立ち上がりの時間にアストン・ビラのCKがかなり多かったのが象徴的。ビルドアップ中に奪われて、バランスが崩れたブロックで受けざるを得なかったチェルシーはギリギリで逃げるシーンが多くなってたと思う。

そういう流れの中でのアストン・ビラの先制点。この場面はチェルシーがボールを奪った後すぐに、抜群の切り替えでアストン・ビラが奪い返したシーン。アストン・ビラは高い位置での守備を機能させるための切り替えの速さも素晴らしかった。このシーンでチェルシーの最終ラインはボールを奪った時点でマークを1度離してしまった。その後すぐに奪われたことで、掴みなおす時間がなかったと思う。アストン・ビラのアグボンラホールがボールを奪い返した場所が敵のペナルティーエリア前だったのがこの試合のアストン・ビラのよさを象徴してたと思う。ちなみに、2点目も敵陣内で相手ボールを奪ってからの流れだった。

この時間はこういうシーンに象徴されるようにチェルシーが自陣から抜け出すのにかなり苦労してた。敵陣に入るボールは苦し紛れのロングボールばかりだったように思う。だから、立ち上がりの多くの時間はチェルシー陣内で試合が進められてたような印象。アストン・ビラが奪う→一気に相手ゴールへ向かう→相手に奪われば切り替えで奪い返す、またはCKを得て跳ね返しを奪い合ええう、っていう展開の中でアストン・ビラが相手ゴールに迫るシーンがかなり多くなった。

ただ、先制点の前後の時間にはさすがにチェルシーもアストン・ビラのハイプレッシャーに慣れ始めた。とはいっても、思い通りのことはできなかったけど。それでも、意図のあるロングボールを放り込んだり、サイドを利用したりっていう中で徐々に自陣から抜け出す場面も目立っていったと思う。

それでも決定的なチャンスにつながらなかったのは、やっぱりアストン・ビラの守備のよさがあったからだと思う。前線で相手ボール保持者にプレッシャーをかけていくやり方は維持し、そこを抜け出されたときのブロックもしっかりと形成できてた。

前線でのプレッシャーが出し手へのケアだとすれば、後ろは受け手へのケア。後ろではチェルシーの受け手をしっかりと捕まえる対応をすることで、パスの入りどころを狙えてた印象。入る前に奪うシーンが多くなったし、入れられたとしても全く前を向かせずに後ろの戻させることに成功した。

チェルシーにとっては前半はこの作り直しがかなり痛かった気がする。1つ縦パスが入ることで相手のブロックを1枚押し下げられたのは確か。結果として組み立て役のエッシェンが浮く場面も作り出せた(基本的には相手のバリーがしっかりと対応してたけど)。そこからのボールの展開も多くなった。

ただ、アストン・ビラは1つ入られるとすぐに全体が戻ってブロックを形成する。前へ前への意識が高い中で前後のギャップが気になるところだけど、入られたときに自陣に密集地帯を作るのも速かった。Aコールの上がりに対してアグボンラホールが最後までついて対応するみたいに、前線の選手の後ろの対する守備意識の高さも目立ってたように思う。

そして、前半のチェルシーは組織を作った相手に対しての攻め手がなかった。というか、チェルシー自身の攻撃が1度スピードダウンしてしまうと、そこから再びリズムを変えることができなかった。前線の動きが少なく、個々が遠く、足元足元を狙う単調なパス回しをするうちに相手に奪われるシーンが多くなったと思う。

逆に言えば、スピードを緩めずに一気に攻めきたときにはそれなりに可能性を感じさせるやり方ができたと思う。ボールに対する動きが多く、それに伴って近さも生まれるから少ないタッチでパスを回せるシーンにつながる。ただ、実際には前半はほとんどこういうシーンがなかったわけだけど。

そういう意味ではチェルシーはスイッチの入れる(入れ直し)がうまくないのかもしれない。前に少し見たダービー戦でも同じような傾向が見られた。得点シーンは一気のスピードアップからの流れが見られたけど、それ以外は引ききった相手に対して単調なパス回しが多かった。相手がシステム的な合致を利用して見るところをはっきりしたことで、1つ縦に入っても下げてしまうっていう今回の試合と似たような状況も多かったと思う。

ちなみにチェルシーがリズムを落とさずに攻めきるシーンでは前線の流動性がキーになった。しっかりと受け手を見てるアストン・ビラの守備陣もポジションを動かされると、その受け渡しなんかの中でギャップが生まれる。そういう場所をつなぎながらの攻撃では可能性を感じさせた。

アーセナルもグルグルとポジションを変える中でアストン・ビラの守備の狙いどころを定めさせず、捕まえられなかった。この動きの多さはやっぱりアストン・ビラを崩しきるヒントになると思う。

チェルシーも後半は流動性(特にシェフチェンコ)を利用してゴールに迫るシーンを増やしたわけだけど、前半は単発に終わることが多かった気がする。例えばシェフチェンコが流れても、シェフチェンコが流れるだけ、もしくは縦のピサロとの入れ替え、横のカルーとの入れ替えなんかと2人の関係性が多くなった。結果として相手守備陣に大きな混乱をもたらす結果にはならなかった気がする。

対するアストン・ビラの攻撃は狙い通りに展開ができたんじゃないかと思う。立ち上がりのショートカウンターでゴールに迫るシーンが多くなったのはもちろんだけど、チェルシーがアストン・ビラ陣地に入ってくることが多くなってもアストン・ビラはチャンスを作り続けた。

そもそもアストン・ビラの攻撃はとにかく縦への意識が高い。高い位置で奪って一気にゴールに迫るのは当たり前として、自陣の深い位置で奪ったとしても一気に縦を狙う。基本的にゴールへのアプローチ以外で横だったり後ろだったりっていう選択肢はないといってもいい。ことごとく前線に蹴り出すボールが多くなる。

この前線への蹴り出しによってアストン・ビラは押し上げの時間を作れる。1度自陣に戻されても、再び前線でのいい守備の回復に持っていける。それに相手の波状攻撃を食らわないっていう意味もあると思う。前線へのボールが案外トップにつながるのもアストン・ビラの特徴だと思う。

こういう状況だからチェルシーは切り替え後の最初の守備が機能しない。ボールを奪った相手が少しでも保持してくれれば、そこに対しての守備が機能したはず。でも、アストン・ビラの前線への蹴り出しはチェルシーのその守備を許さなかった。だから、アストン・ビラとは対照的にチェルシーは切り替え後の守備で効果的に前線でボールを奪うっていうシーンは作れなかったように思う。

そもそも、この試合のチェルシーはどこに守備の勝負どころを置くかがはっきりしてなかったのも事実。立ち上がりを見ると、中盤のボールに対しての忠実なチェックとそれに対する周囲の囲い込みが見られた。ただ、アストン・ビラの攻撃はチェルシーの中盤での守備も許さなかったと思う。

その要因は単純な話。アストン・ビラの縦へ速い攻撃は中盤を簡単に通り過ぎてしまう。中盤で時間を使わないから、チェルシーの守備陣の1つ目のチェックとそれに対する連動が行われる前に、すでにボールは中盤にはない。

ちなみに、中盤にはないといっても全てトップに当てたっていうわけでもない。だから、正確にはチェルシーが狙った場所にはないって言った方がいいかもしれない。この点については縦場狩りではないアストン・ビラの攻撃の組み立てのよさが見えた点であるとも言えると思う。

これはアーセナル戦のときにも見られた点だった。1度トップに当てることで相手の真ん中への意識を強め、さらに深みを与えることで陣地を増やし、それから左右への効果的な展開を利用するってやり方。アストン・ビラはこういうやり方をはじめとして、場所を作るうまさと、その場所への展開力が目立つと思う。

今回の試合でも1つの形は真ん中に相手を集めて→サイドに展開→クロスからのフィニッシュ、っていうパターンが多くなった。上にも書いたとおり、ボールに対する意識が高いチェルシーの守備陣には、その集中を抜け出すとスペースがあるっていう状況が見られた。だからこそ、効果的な攻撃だったって言える。

特に効果的だったのがアグボンラホールへの展開。相手の中盤をボールに寄せたことで、アグボンラホールの周囲に場所を作り出すことができた。そして、そういう場所でボールを受けたアグボンラホールは積極的な仕掛けを見せる。人が足りてないチェルシーはその仕掛けに対してズルズル下がるだけで、勝負に行けないシーンが多かった。こういうアストン・ビラのやり方は立ち上がりは左サイドのヤングでも見られたけど、途中からはほとんどが右のアグボンラホールに預けることが多くなったと思う。

この一連の流れがチェルシーの守備の勝負どころが定まらなかった要因。中盤で奪いに行こうとするところを通り過ぎられ、抜け出されたところに1×1を作り出される。そういう場所での相手の仕掛けに対して勝負にいけず、結果全体がズルズルと下げられる。そうやって時間を作ってる間にアストン・ビラは後ろの選手も飛び出してくるから、ランパード(途中からバラック)だったりカルーだったりがかなり低い位置まで下げられるシーンが多くなった。

ここまでが前半の流れ。最初に書いたとおりやりたいことをやったアストン・ビラとやりたいことをやらせてもらえなかったチェルシーっていう構図が明確だと思う。だから、前半終了間際のPKは試合の流れを完全に変えた。ここまでの流れでチェルシーの巻き返しは難しいと思った。このシーンにしても前半のそれまでの流れを象徴してたと思う。1度ペースを落としたところで前線が詰まって動きがなくなってた。その中で偶々とれたPKだって言ってもいい。それでも、このPKは大きかった。PKで1点を返し、さらに相手が1人少なくなったチェルシーはかなり楽になった。

後半は1人少なくなったアストン・ビラは引きこもった。11人でもあれだけのハイペースを維持するのは難しいはずなのに、後半は1人少なくなったことで前線の守備を捨てたと言っていい。その代わりに自陣深くに4-4を形成するやり方に変更してきた。

こうやって前線への守備を捨てざるを得なくなったのはアストン・ビラにとって致命的だった。チェルシーの3点目につながったのはアレックスの攻撃参加。これは1トップになったことで後ろが余ったからだけど、前半から多かったのも事実だった。こういう最終ラインからの攻撃参加よりもむしろ、最終ラインがフリーでボールを持ち上がれた効果の方が大きかった。

最終ラインがかなり高い位置までボールを持ち上がれることになったことによって、前線が押し出される効果が生まれた。結果として前線の人数が増え、強制的に近い関係が生まれた。そして、エッシェンを含めた出し手がフリーになったことでいい形のボールが供給されることとなった。

こうやっていい形で前線にボールが供給されたことで前線の形も変わった。4-3-3的な形だった前半から4-4-2的な形になった。

<前半>                 <後半>
       シェバ             シェバ  ピサ
カル  ラン   ピサ  Jコ    カル   バラ    Jコ
      エッシェ              エッシェ

前半は前線にボールが入らない状況でピサロが中盤でプレーしてた。逆に基本はピサロのプレーエリアは中盤であって、後半は全体が押し出された結果ピサロがトップに出たっていう見方もできるわけだけど。ただ、守備時(特に前半)にはランパード(バラック)を1つ下げてダブルボランチ気味。基本は4-4-2とも見れた気がする。

前半はピサロは中盤に降りたFW的な役割。1つ下でくさびを受けたり、ロングボールに競ったり、2列目から飛び出したり。グジョンセン的なイメージだったかも。ピサロが適任かどうかはともかくとして、ランパードとかバラックを生かす上では面白い組み合わせだった。中盤で相手に背を向けてプレーし、そこからFWの位置に飛び出すっていうセカンドストライカー的な役割で2人との差別化をはかったと思う。

それに対して後半は完全に2トップの一角的な役割になった印象。前半のように中盤に降りてくるシーンはほとんど見られなかった。だから、2トップの軸的な役割になったって言える。結果としてシェフチェンコがセカンドストライカー的に働けることになったと思う。

前半もシェフチェンコが流れるシーンはあったけど、やっぱり1枚のCFっていう意識が強かったように感じる。だから、思い切って動き回るシーンは作り出せなかった。それが後半は2トップ的な形になったことで、前線をピサロに任せて思い切って動けるようになった。

そして、ポジションを変えることがアストン・ビラの守備を崩す1つのヒントであることは上にも書いたとおり。後半はシェフチェンコが中盤の位置でかなりフリーになった。同点ゴールもそういうシーンからだったし。しかも、中盤で1度ボールを触って展開し、そこから一気に前線に出てくっていうやり方でチームに動きを作り出した。シェフチェンコとしても前を向けて動くシーンが多くなった印象。

このシェフチェンコの動きをはじめとしてチーム全体に動きが生まれた。シェフチェンコとバラックの上下の入れ替え、さらに最終ラインがスタートとなれたことによってエッシェンの攻撃参加も増えた。前線でボールを回せる状況でのSBの攻撃も活性化して、前線の動きと厚みが増した。

こういうチェルシーの攻撃陣をアストン・ビラの攻撃陣は捕まえ切れなかった。前でのチェイスが弱まって、コースを限定できなかったのも痛かった。結果として出し手にも受け手にも効果的に対応できなくなった。結果、完全にチェルシーが主導権を握る展開が生まれた。

だから、3点目が生まれたときには完全に試合が決まったと思った。アストン・ビラには反撃の手立てが残っていなかったし、それまでの後半の流れの中で可能性は感じさせなかった。にも関わらず、FKからのワンチャンスを生かして同点。GKとDFの間にボールを入れる教科書どおりの展開だった。

その後、フェレイラの退場から4-4の流れまで動きの多い試合になった。ただ、どちらにとっても勝ち点2を落としたイメージが強かったんじゃないかって気がする。アストン・ビラの方からしてみれば前半の退場が痛かった。チェルシーの方からすれば2度の同点ゴールは必要ない失点だった。

主力に怪我人続出のチェルシーのサッカーは悪い状態は脱したように見えた。前半は個々の距離の遠さとか動きの少なさによって個の分断が目立ったものの、ドログバ任せの状態よりはよっぽどマシ。流れを止めずに一気に攻めきった前半の攻撃、後半の流れの中には近い関係でのいい流れが見られた。しかも、その流れの中ではシェフチェンコだったりバラックだったりが目立ってたのが象徴的だった気がする。
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2007-12-25 Tue 18:12
リバプール×マンU
<リバプール:4-4-2>
FW:トーレス-カイト
MF:キューウェル-マスケラーノ-ジェラード-ベナユン
DF:リーセ-キャラガー-ヒーピア-アルベロア
GK:レイナ

<マンU:4-4-2>
FW:ルーニー-テベス
MF:ギグス-アンデルソン-ハーグリーヴス-Cロナウド
DF:エブラ-ビディッチ-ファーディナンド-ブラウン
GK:ファン・デル・サール

素晴らしくスピード感のある試合になった。両チームの個々の選手の切り替えが抜群に速く、それによって攻守の行き来が抜群に速くなった。さらに、前線からの守備の活発さが両チームに見られ、結果としてボールが落ち着くっていう時間がほとんどなかったと思う。

特に試合の立ち上がりは局面局面の激しさが目立った。ボールへの寄せが速いから、技術力が高いはずの両チームの選手がチンプンカンプンな場所にボールを出してしまうってシーンがかなり目立ったと思う。それだけプレッシャーがすさまじかったことを意味してる。

その中でゴールに迫るチャンスを増やし、徐々にペースを握っていったのがリバプール。ホームだったこともあっただろうけど、そうやってリバプールがチャンスを作っていったのには、両チームのやり方の違いによる要因が大きかったように感じた。

両チームの守備の違いについては後で詳しく書くけど、基本的に最前線からの激しいプレッシャーが見られたのは両チームとも共通だった。だから、攻撃側は最終ラインのボール保持者でさえもゆったりとボールを持つ時間がほとんどなかったように思う。こういう状況に対してどういう攻撃のアプローチを取るかっていうところに違いがあった印象。

リバプールはロングボールを蹴りこむことに決めた。攻撃の起点になるボランチだったりSBだったりって場所をマンUがしっかりと押さえてきたこともあったから(これも後述)、下手に組み立てようとはせずにとにかくトップへのロングボールを繰り返した。このロングボール自体はマンUの守備陣の跳ね返しにあって、直接的なチャンスにはつながらなかったけど、少なくともマンUの中盤の守備を飛び越すことには成功したと思う。

対するマンUは中盤で作ることに未練を残してたイメージだった。マンUの守備とは違ってリバプールはマンUの攻撃の起点を先に押さえておくようなやり方を取ってこなかった(これも後述)っていう違いも影響したかもしれないけど、リバプールのように最初からロングボールを放り込むやり方を取ってはこなかった。最終的には中盤での組み立てが手詰まりになってロングボールを蹴り込むシーンが多くなったわけだけど。

このロングボールに関してはリバプール以上に可能性を感じさせなかった。マンUの2トップはテベスとルーニーであって、どう考えても競り合いに向く2人ではない。なんとか競り合えたとしても、そのこぼれ球に対する守備のよさはマンUよりもリバプールの方が上回ってた。これに関して両チームの守備の違いが生む要因であるけど。

ただ、マンUとしてもロングボールを蹴りこめたときの方が次を考えればよかったと言える。それがたとえチャンスにつながらなかったとしても。問題が大きかったのは中盤で組み立てる中で相手に引っ掛けられるシーンが多くなったこと。ボールに対する相手の厳しいプレッシャーでパスの精度が下がり、さらにリバプールの守備陣は次のところを狙うのもうまかった。そうやって中盤で奪われて、間髪いれずにFWに出されるとマンUのピンチにつながる場面が多くなった気がする。

こんな感じでリバプールが徐々にペースを握った立ち上がり。でも、実際にはそれほどの差はなかったと思う。ゴールに近づいたシーンがどちらかと言えばリバプールの方が多いかなっていう程度だった。

そこまで拮抗した展開になったのはこれまで書いてきたとおり、両チームの守備のよさがあったから。リバプールの守備のよさはいいとしても、マンUまでが相手に引きずられて(?)いい守備ができてたと思う。それが試合の内容を素晴らしいものにしたのはここまでも書いてきたとおり。ここまでもちょこちょこ書いてきたけど、以下では両チームの守備についてまとめてみる。

まずはマンUの守備から。この試合ではマンUの守備のイメージを完全に覆された。これまでのイメージにあるマンUの守備は4-2-4のブロックを形成したもの。トップの4枚は切り替えでこそ機能するけど、実質的な守備は自陣深めに置かれた4-2に任せられることが多かったように思う。その中でCMFの負担が増え、守備の中で引っ張り出されることが多くなる。結果としてDFの4がはがされてしまうシーンが目立つってのはこれまでにも書いてきたとおり。

それが今回の試合では前線の4枚にもしっかりと守備の役割を与えられていた。ルーニー&テベスの守備意識の高さが組織に還元され、普段あまり守備をしないギグス&Cロナウドにも最低限の守備の役割が与えられてたと思う。結果としてチーム全体の守備における一体感が生まれてた。

そして、この守備の役割の与え方は単純なシステム的合致の利用だったように思う。スタンダードな4-4-2同士の対戦になった中で、個々の守備のマークすべき相手をある程度はっきりとさせてたような印象を受けた。具体的に見てみる。

2トップのルーニーとテベスは縦の関係。ルーニーが相手最終ラインに対して積極的にアプローチを仕掛け、1枚下のテベスが相手のCMF(マスケラーノが主)をケアした。これで相手の最終ラインのボール保持者はルーニーの追いかけに対して1つ上に逃げるっていう選択肢がなくなった。

次にサイドへの逃げ場所を切る。ここに対してはマンUのSMF×リバプールのSBの対応関係をはっきりとすることでケアしてきたように思う。リーセに起点を作るろうとすることが多かったリバプールだけど、そこはほぼWGの高さに位置したCロナウドが近い場所で常にプレッシャーをかけてた。だから、そもそも簡単にSBにいれることができなかったし、入ったとしても激しいプレッシャーに対して後ろに戻さざるを得ない状況が生まれてたように思う。

これがリバプールのロングボールが多くなった要因だったように思う。マンUの守備がしっかりとリバプールは攻撃の起点をつぶされて、しっかりと組み立てるっていう選択肢をあっさり捨てた。むしろ下手に奪われる前にトップに放り込む方が安全だったかもしれない。

このときにリバプールとしてはもっとジェラードを使ってもよかった気がする。最終ラインにボールがあるときにはジェラードがズルズルと上がっていってしまって、中盤の入れどころがマスケラーノに限定されてた。だから、テベスが守りやすい状況も生まれてた気がする。とはいっても、ジェラードが下がって受けようとするときにはマンUはアンデルソンがしっかりと対応してたわけだけど。でも、もう少し起点を作る手伝いにジェラードが入っていってもよかったように思った。

マンUは最終ラインも人につく意図をはっきりとさせてた。相手の2トップに対しては2枚のCBが密着マークで自由にさせなかったし、SBは相手SMFをしっかりとケアした。ブラウンがイエローカードをもらったシーンは、中に流れたキューウェルについて行ったシーンだった。Cロナウドがリーセにプレッシャーをかけて行ってるときには、助けに来たキューウェルにブラウンがしっかりとついて対応するっていうシーンも多くなったと思う。

このマンUの中にあって、守備のフリーマンになったのがハーグリーヴス。ここまで書いてきた関係を見てみると、ハーグリーヴスだけは見るべき相手がいないことが分かると思う。これはルーニーが相手CB2枚に対応し他が1×1になったから。アンデルソン×ジェラードは完全にってわけでえはなかったけど、アンデルソンの役割の1つになってたはず。

このフリーマンのハーグリーヴスの守備の役割は基本的には2つだった。1つは最終ラインを助けること。最終ラインは真ん中が2×2になってるから、どうしても助けを必要とする。ハーグリーヴスが前後の関係で相手FWに対応するってシーンが目立ったと思う。

もう1つはCロナウドのウラの対応。リバプールはCロナウドのウラのところに起点を作ることが多かった。そこに対してハーグリーヴスが助けに行くシーンが目立ってた気がする。この試合ではCロナウドの守備意識もそれなりに高かったけど、普段はハーグリーヴスがCロナウド専属の守備の関係みたいになって右サイドに引っ張り出されることが多い。レアル時代のジダンとマケレレの関係に近いかも。

こうやって人につく意識が高いマンUに対して、リバプールはまずは本来の4-4を作ることをベースにした守備のやり方が見られた。切り替えでの激しさで相手の攻撃を遅らせ(もちろん奪えれば奪う)、その間に自陣の4-4の組織を形成した。2トップはマンUの2トップと同じような関係の縦並びを作ってたから、全体としては4-4-1-1みたいな形。

リバプールがこういう形の守備ブロックを作ったから、マンUとしては攻撃の起点自体は作ることができた。CMFのところは1枚下がったカイトが対応してたけど、SBは基本的にボールを受ける時点ではそれほどのプレッシャーを受けてなかったと思う。このことがマンUに組み立ての意識を持たせた要因だった気がする。起点自体は作れたから、完全に組み立てを捨ててロングボールを蹴り込むようなリバプール的な考え方は生まれなかったと思う。

ただし、ボールが入ってから長時間フリーになることはなかった。ボールが入ったSBには2トップが流れて対応したり、単純にSMFが出てきて対応したりってやり方を取ってきた。そして、マンUとしてはこの起点を担うことが多かったブラウンが微妙に試合に乗り切れてなかったのも痛かったと思う。結果としてあまり攻撃の起点としては機能できてなかった。

ここまでのSBに対する対応を見ても分かるとおり、リバプールの守備はトップの献身的な追いかけをスタートとしながらも、守備の勝負どころは中盤のところと置いていた。マンUが中盤にボールを入れてきた時点で一気に距離を詰め、全く余裕を持たせない対応が見られたと思う。

このボールに対する最低1枚の素早いチェックはマンUとの共通点。ただ、その後の連動性についてはマンUよりもリバプールが上だったように感じた。1つ目のチェックに対してはすぐに周囲が連動して囲い込みに入る。さらに、もう1つ遠い場所の味方が連動して次のコースを狙うような対応ができてた。

特にマンUがサイドにボールを入れたときにはこの関係がはっきりと見られたと思う。SMFとSBにCMFを絡めてサイドに孤立させ、その外堀を周囲の選手が狙う。こういうやり方を見ても分かるとおり、リバプールの守備はボールサイドに人数を寄せるわけで、前半のマンUはそこから抜け出すことで1つの形を作り出してた。

まず最初に起点を作ることが多かったのはCロナウドとブラウンの右サイド。これによって相手の守備ブロックは左サイド(マンUの右サイド)に寄ることになった。これに対してマンUはアンデルソンまたは降りてきたトップを経由させて逆サイドに展開することが多かったと思う(ロングボール1発にしては相手が遠すぎた)。その展開で逆サイドのエブラの積極的な攻撃参加がかなり目立つ結果になった印象。

ちなみにリバプールの守備はサイドだけで連携が見られたっていうわけではない。サイドでの守備のがはっきりしたってだけで、真ん中の守備の方が効果的だったと思う。真ん中の守備の意識の方が高いのは当たり前だし、1つのチェックに対して前後左右からの囲い込みが可能になる。基本的にマンUは真ん中に起点を作るのは難しかった。

こんな感じでリバプールの方が守備の連携っていう面では上だったと思う。マンUは対応関係をはっきりさせる守備だったから、基本は1×1に任せられることが多かったと思う。この個を基本とした守備の中で、時間とともに1×1を基本とする守備のほころびが生まれ始めたように思う。

リバプールの攻撃は平行移動で進められることが多いから(前にも書いたけど、次の守備を考えてか?)、横のバランスとしては大きな問題は生まれなかった。ただ、縦方向に対しての間延びのような状況が生まれた印象。スタミナ的な問題というよりも、1×1をはっきとさせたことが要因になったけど。

(○:リバプール ●:マンU ---ハーフェイライン)

○ ○●○ ○  
●  ●○  ●
--○----- 
  ●  ●
○      ○
● ○ ○ ●
   ● ●

この状況だと、案外マンUの自陣が過疎化してるのが分かる。最終ラインは相手のロングボールに対してやや深めの位置を取ってたし(跳ね返し力はあっても、ウラに抜け出されるとちょっと危ないから)。さらにジェラードにアンデルソンが引っ張り出され、ハーグリーヴスが右に引っ張り出されたりすると普段と同じくDFがはがされる状況が生まれる可能性がある。

このスペースに対して、立ち上がりの時間は前線の激しいプレッシャーによって縦パスを入れさせなかったから問題が生じることはなかった。そもそもリバプールは中盤をすっ飛ばすロングボール主体の攻撃だったわけだし。

ただ、前半の20分ぐらいになってくると徐々にリバプールが地上から攻めるようになってきた。マンUのプレッシャーが弱まり気味だったし、リバプールも1×1基本のマンUの守備には段々と慣れてきた。それに伴って、自陣のスペースのところが気になり始めたと思う。マンUとしてはギャップに入り込まれてゴールに迫られるシーンが増え始めた。

これに対してマンUは25分前後から守備のやり方を変更した。敵陣の守備を弱めて、自陣に基本を置く形になったと思う。自陣に多くを入れることによって過疎化をなくして相手にギャップを作らせないやり方を取ってきた印象。結果としてリバプールは段々と余裕を持ってボールを持てる場所が多くなってきた。ただ、マンUの守備のやり方も全体を下げただけで基本は変えなかったから、圧倒的にリバプールペースになったというわけではなかった。それでもリバプールのポゼッション率が徐々に上がっていった。

その流れの中で前半はマンUが得点を奪って折り返し。これによってリバプールは後半になって出てこざるを得ない状況が生まれた。結果として、後半は終始リバプールペースで試合が進んだように思う。

マンUの守備は後半も基本的な考え方は前半の途中からのやり方と同じもの。立ち上がりこそ前線からガツガツと出て行ったけど、すぐに低めの位置(立ち上がりと比べて)に守備の基本を置いてきた。だから、前半とは大きくは変化が生まれないはずだった。

でも、後半は上に書いたようにリバプールが攻勢に出た。ジェラードがゴール前まで入ってくるシーンが多くなったし、マスケラーノもかなり攻撃の方に力を入れ始めた。これがただ前線の人数が増えたっていう以上の効果を生んだように思う。

マスケラーノだったりジェラードだったりが攻撃に出てくると、守備のフリーマンであるハーグリーヴスはそういう飛び出しに対する対応に手を焼き始めた。さすがに時間がまだ多く残ってたから、テベスとかルーニーに最終ラインの位置まで戻ってこいとは言えないわけで。

これによってハーグリーヴスの役割の1つであった右サイドのケアが疎かになった。Cロナウドは普段から比べれば守備の意識が高くなった程度で、ハーグリーヴスの助けがなければやっぱり弱点になりえた。結果としてリバプールの左サイドの攻撃がかなり活性化することになったと思う。キューウェルとリーセで深い位置まで入り込み、そこからクロスがいくつもあがった。マンUとしては精度不足だったのに助けられたと思う。

これに対してすかさずキューウェルとバベルを交代させるのはさすがベニテス。クロスの精度が低かったキューウェルをあきらめ、バベルを入れることで攻撃力を上げて一気に畳み掛けに入った。左のバベルが中に切れ込んで、決定的なシュートを打ったシーンでもその効果が見られたように思う。

さらにこのバベルの投入に対してマンUも変更を加える。Cロナウドを頭としてルーニーを右サイドに。Cロナウドよりはルーニーの守備の方が期待できる。ルーニーを右サイドに入れることによって、なんとか相手の左サイドを押さえようとした印象。この辺の攻防は面白かった。

ただ、今度はルーニーがそれまで行っていた相手最終ラインへの対応ができなくなった。結果としてリバプールのCBのボール保持に余裕が生まれて、ハーフェイラン付近まで押し上げられることが多くなった。そうなれば当然、リバプールの中盤以前が押し出されることになる。前線に選択肢が増えて、左サイドに限らず左右真ん中とリバプールのやりたいような組み立てができるようになったと思う。トップの選手が効果的に楔を受けるシーンも多くなった。

注目すべきはこのマンUの守備は狙い通りだったのか?ってこと。明らかに相手に主導権を握られたし、ゴール前まで迫られるシーンも増えた。でも、決定的なチャンスまでは行かせてない。中盤とDFを並べたべた引きブロックで最後の最後のところをことごとく跳ね返していった。

逆にマンUはカウンターから決定的なチャンスをいくつか作り出せた。Cロナウドをトップに置いたことで前線にスピードの選択肢を残せた。さらに右サイドのルーニーの運動量。守備で深い位置まで戻っても、カウンターではトップの位置まで出てくるような上下動を繰りかえした。スペースがあればCロナウドは持ち味を発揮できるわけで、そういう意味でもカウンターは効果的な攻撃だったように思う。

そう考えるとCロナウドをトップにおいて相手CBを自由にしたのは狙い通りだったとも考えられる。リバプールのCBを押し上げさせ、前線を押し出させ、そうやってリバプールの選手をおびき寄せたとも考えられる形だった印象。

マンUの守備の流れはここまで書いたような形。立ち上がりは最前線からプレスをかけ、時間とともに意図的にしろ不本意にしろ段々とブロックの位置が下がって行った。最後の時間はゴール前で跳ね返す形が多くなったと思う。そして、このきっかけになったのは1×1を基本としたことによる前後の間延びだったってのは上にも書いた通り。

こういう前後の間延びっていう意味ではリバプールには心配がなかった。そもそもコンパクトな4-4を念頭においてるわけだから、運動量の問題以外の要因によって間延びの状況が生まれることはあり得ない。コンパクトなブロックを基本にすることで、人と人の近さを作り出しスタートとなる激しいチェックに対して、すぐに複数枚の関係、連動を作り出す。ボールへのアプローチを厳しくしながらも、4-4を基本とすることで周囲のスペースにも気配りすることができた。相手のパスを引っ掛ける意味でも、選手間の距離が近い網は効果的に機能した。

ただ、弱点がないわけではない。ゾーンを基本とする守り方では相手のポジションチェンジに対する対応が難しくなる。立ち上がりすぐに中に入ってきたCロナウドを浮かせてしまったシーンがあったのが典型。その点についてはその後はマスケラーノを中心としてしっかりとケアしてたわけだけど。ただ、実際にはそういう横のポジションチェンジよりも縦のポジションチェンジに対しては守備の構造上、微妙にギャップを作ってしまうことが多かったと思う。

だから、アンデルソンとかハーグリーヴスの攻撃参加は効果的だった。得点につながるCKを奪ったのはハーグリーヴスの攻撃参加から。このシーンではハーグリーヴスが完全に空いていた。さらにこのシーンでは相手のサイドに入り込むっていうヒントが隠されてた。そして、それがエブラの攻撃参加の効用にもつながった。

サイドに関してはリバプールは複数で対応する意図が強い。ギグスにしろCロナウドにしろリバプールはSMFとSBが挟みこむ意図が見られた。逆に言えば、SMFが人を集めてるときにさらに外側からSBが上がっていくとフリーになるシーンが多くなった印象。ブラウンは試合に乗り切れてなかったのは上にも書いたとおりだけど、それでもフリーで上がって行くことは多かった。

右に起点を作って左のエブラへの流れも基本的には同じ考え方。ボールサイドに人をかける中でリバプールは逆サイドのケアが甘くなる。1つ前のギグスには一応ついていても、後ろから飛び出してくるエブラまではしっかりとケアしきれてなかった。

こういう弱点というかギャップのところにも両チームの守備のやり方の違いが見られたのは興味深かった。ただ、そういう守備のやり方の大枠は違っていても根本にある個々の守備意識の高さは同じだったように思う。ボールへの忠実な素早いチェックによって技術力の高い両チームの攻撃陣がほとんど仕事ができなかった。

マンUについては今シーズンの守備の堅さはこういうやり方に起因してるのか気になるところ。今シーズンはこれで2試合目だけど、前の試合ではそこまでのよさは感じなかった。ただ、結果としてリーグ最小失点っていう結果が出てるのも確かであり、今後注目したいと思う。

ちなみにこの超ハイプレッシャーの流れの中で一番落ち着きを見せたのがアンデルソンだった。中盤の経由点として左右の散らしでリズムを作った。相手が近い場所にいればワンタッチで軽く否し、相手が遠ければ1度キープすることでチームに落ちつきをもたらせた。機を見て相手ゴールに向かっていくシーンも多くなったように思う。

マンUとしてはこのアンデルソンの加入は大きかった。スコールズがいないと別チームになってしまった昨シーズンに比べて、明らかに厚みが増した。アンデルソンはしっかりとフィットしてると思う。同時にコンビを組むハーグリーヴスも守備を基本としながらも機を見た攻撃参加が魅力的だったと思う。
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2007-12-22 Sat 22:28
アストン・ビラ×アーセナル
<アーセナル:4-4-2>
FW:アデバヨール-フレブ
MF:ロシツキー-フラミニ-ディアラ-エブエ
DF:クリシー-ギャラス-コロ・トゥレ-サーニャ
GK:アルムニア

ちょっと古い試合だけど、やっとアーセナルの試合を見る機会に恵まれた。どれぐらい久々かと言うと、バルサとのCL決勝以来。ほとんど別チームになったと思われるアーセナルの試合を見るのは初めてだったって言っていい。

その中でこの試合では前後半の内容が全く異なってた。素晴らしい内容を見せて相手ゴールに迫るシーンを増やした前半と、ほとんどチャンスを作れずに逆に押し込まれた後半。本来やりたいサッカーは前半の内容だろうし、それが基本的な形と捉えて見て行きたい。

前半は恐ろしいほどパスが回った。そして、そのパスのほとんどが1タッチ2タッチだった。多くの選手が少ないタッチでシンプルにはたきながら、はたいた後には次のスペースに入り込んでいく。この繰り返しの中で常にパスコースを創出しながら相手ゴールに迫って行ったようなイメージだった。

パスが回ると言えば、ここ最近取り上げることが多いミランを思い浮かべることができる。ミランもアーセナルも組織としてパスを回しながら攻撃のアプローチをする点は同じ。アーセナルのやり方を考える上で分かりやすくなるので、ミランを比較対象として置いてみたい。(くしくもCL決勝Tの組み合わせでミラン×アーセナルの対戦が決まったから、今後に向けても意味のあることになれば。)

まず、ゴールへ向かう意図のところに違いがある。ミランのパス回しはあくまでもゴールへの道を空けるため。左右に振りながら相手の守備にギャップを作り出す狙いが強い。対するアーセナルはゴールに向かうためのパス回し。相手の守備にギャップを作るなんていう遠回りなことをせずに、ギャップができていない相手ブロックをパス回しの中で無理やり(無理やり≠無謀。しっかりと組織として崩せる計算はあった。)崩していくイメージが強かった。だから、同じようにチームとしてボールを回すサッカーをしててもゴール前のシーンは圧倒的にアーセナルの方が多くなると思う。

これと関連してゴールに向かうアプローチにも違いがあると思う。アーセナルは直接的にゴールに向かうためのパス回しをしてるわけだから、ゴール前だからといって特別なことはしない。相手の守備がちょっと厳しくなるってだけで、基本的には最後のところも少ないタッチのパス回しで崩す意図が強くなった。対するミランは最後のところは特別なことをやってくる。カカを中心に最後の崩しでは個が強くなる。もしかしたらミランにとっては望ましくないのかもしれないけど、現状ではそういう状況。パス回しはそういう個を空けるために行われているって言ってもいい。

こういう点を見て気づくのはアーセナルには特別な選手が存在しないってこと。特にゴール近くでは基本のポジションは全く関係ない。前線の人数を増やしている中で、誰もがチャンスメイカーになるし、誰もがゲッターになりうる。この辺はミランとも、アンリ時代のアーセナルとも違うところ。相手としては「こいつを押さえておけば」っていう目標がない。1人を押さえても次々に入ってくる他の選手が、同じように機能する。これはかなり厄介だと思う。

というわけでミランと比較してきたアーセナルの攻撃について以下では具体的に見て行きたいと思う。上にも書いたとおり、内容がよかった前半のやり方を中心として。

アーセナルの攻撃の基本にあるのはボールの近くに人数を増やすってこと。味方との近さとランニングを組み合わせながら少ないタッチでボールを回す下地を作る。そういう中で常に局面局面での数的優位を作り出すような形を取ってると思う。

近づくランニングで特徴的なのは守備から攻撃の切り替えのところ。アーセナルは1つ縦に当てることで攻撃を開始するんだけど、そのために2トップが近づくランニングを多くしてたと思う。極端な話、他の選手が敵陣に向かって走り、2トップだけが自陣に向かって走るイメージ。1つ当てることで後ろの選手の飛び出しが促進されるから、下がってきたFWと上がって行く後ろとの間で、縦方向にかなりコンパクトな状況が作り出せる。切り替えからの流れでもFWがはがれずに人数をかけられるのはこのためだったと思う。

こういう縦の凝縮の意図は別にカウンターのときにだけ見られるものでもない。最終ラインがある程度自由にボールを保持して、そこから攻撃を作るときにも見られる形だったと思う。前線の選手が降りてきて1つボールを受けようとする意図の動きが多くなった。そして、そこを経由することで相手ブロックへの仕掛けのスタートが切られてた気がする。

しっかりと組み立てをしてるときのことを考えると、前線の選手がズルズルと降りてきてしまうのは本来はあまり好ましいことではない。前線にボールが入らなくて、受けるために前線が下がって来てしまい、結果前線が薄くなるっていう状況もありえると思う。でも、アーセナルのやり方の場合はそういう悪い状況にはつながらなかったと思う。

それは前線の選手が降りてきたときに、変わって別の選手が上がっていくっていうやり方ができてたから。例えばロシツキーが降りてきたところで入れ替わりにクリシーが上がっていくみたいな。降りてきた選手に縦パスを1つ入れることでこういう後ろからの攻撃参加が促進される面もあると思う。さらに、降りてきた選手にボールを預けた選手がそのままパス&ゴーで前線に出て行くってシーンも多かった。もらった選手が最初の出し手に単純にはたく(要するにワン・ツー)ことでくさびのパスから前への勢いをもたらすことができてたように感じた。

こんな感じだから極端なことを言えば、縦パスが1つ入れば前線に1人増えるような攻撃が作られてたような気がする。前線が降りてきてボールを受けても、後ろの選手が変わりに出て行くことで、縦の動きを作り出せてた。結果として相手のブロックのバランス崩し(相手のブロックを押し下げる)ことにも効果があったように思う。

組織の形としてはこういう縦の凝縮に加えて、横の凝縮も見られたように思う。横の凝縮ってのは要するにサイドにボールが入ったときに、多くの選手がボールと同サイドに寄るっていうような形。その中で強制的に近い関係性を作り出すことが多かったと思う。

アーセナルのサイドの使い方は意図的にバランスを崩した形だったと思う。右のエブエはサイド一杯に張り付くことが多く、ロシツキーはポジションに柔軟性を持たせながら組み立ての経由点とゴール前の厚みに貢献するような動きをしてた。だから必然的に、サイドを崩すとなると右サイドからの崩しが多くなった。

この右サイドはサーニャが積極的にオーバーラップをすることで常に複数の関係が築けてた。さらに、上に書いたボールサイドに人数をかけるやり方の中でフレブだったりアデバヨールだったりが流れてくる中で数的優位を作り出すことが多かったと思う。そういう数的優位を利用しながら深い位置まで進攻することが多かった。こうやってサイドに人数をかけることで、相手もそのサイドに入ってくることが多い。1、2点目のシーンがそうだったように右サイドに相手を引っ張り出して、真ん中を薄くするやり方が多くなったと思う。引かされてゴール近くに人数が多いはずのアストン・ビラ守備陣が真ん中を薄くしてしまうシーンが多くなった。

そして、この右サイド崩しの中で重要な役割を担ったのがディアラ。基本的にディアラは攻撃の組み立ての最初の散らしを担う役割。ボランチの位置でタッチ数を増やしながらバランスよく前線にボールを供給し、機を見て自身がドリブルで上がっていくっていう役割を担ってたように思う。

後ろからの飛び出しが多いアーセナルの中にあってディアラはあまり前線に出てこなかった。味方が完全に押し込んだときには出てくるけど、基本はボランチの場所でのプレーが多くなったと思う。他の選手が縦に当てて自分も出て行くっていう動きを繰り返す中で、ディアラは出したら出しっぱなしっていう姿勢が見られた気がする。

ただ、これが悪いっていうわけではなかった。残ってるのがディアラの役割だったからだと思う。その意図としては守備に人数を残すっていう要因もあっただろうけど、それ以上に攻撃時の逃げ場っていう役割が多くなった気がする。常に味方からボールを受けられる位置にいて、前線が詰まったときに1度戻されるようなシーンが多くなった。そうやってもう1度組み立てなおすっていう意図があったんだと思う。

そして、このディアラの役割が目立ったのが右サイドとの関係だった。右サイドに厚みを持たせたアーセナルだったけど、相手としてもそう簡単に崩させてくれなかった。まして、味方も敵も多い状況で常に抜け出すってのは難しかったと思う。そのときに1度ディアラに戻すシーンが多くなった印象。

戻されたディアラには2つの選択肢がある。1つは逆サイドの広い場所に逃げるってこと。これは逆サイドで見られた形(あまり多くなかったけど)。左で作って、詰まるとディアラ(フラミニ)経由で右サイドに展開ってやり方。もう1つの選択肢はもう1度右サイドに出すっていう選択肢だったと思う。そして、そういう形を使うシーンが多くなった。

1度戻されたディアラはすぐに展開せずにボールを保持する。いい時間は1人の選手の保持時間が極端に短かったアーセナルにあって、ディアラの保持時間の長さは目立った。で、右サイド寄りでプレーしてたディアラに対しては相手の左サイドの選手が対応しに来る。相手にとってはやっと守備のアプローチができる場所が見つかったってとこか。ただ、ディアラはその対応に対してボールを失わない。そして、十分に引きつけたところで再び右サイドにはたくと、そこに対する相手の守備は薄くなってる状況が生まれてたと思う。

全体の組織として近さを生み出そうとする試みはこんな感じ。でも、組織作りだけのただ近いだけの関係ではあまり意味がないのも確かだと思う。むしろ、狭い場所に限定した攻撃は相手の守備に格好の餌食となる。だから、ただ近い状況を作り出すだけでは意味がなかった。

そもそも近さを何に生かすかといえば、それはパス回しのため。近い場所の方がパスが成功しやすいのは当たり前のこと。それにボールの近くの人数が多ければそれだけパスコースも多くなる。アーセナルはその近さの工夫によって局面を打開していったと思う。

工夫というか当たり前のことではあるんだけど、そこに動きを加えるってこと。基本的なトライアングルを作り、その頂点をグルグルと回しながら打開していくシーンが多くなったと思う。そこにはパスを出した後の動きが欠かせない。1人でも止まってしまえば、トライアングルは崩れてしまう。動いたとしてもチンプンカンプンな方向に行ってしまえば、それはそれで意味がない。そういうところのバランス感覚がしっかりと備わってるから、シンプルなパス&ゴーが目立ったし、パスコースを維持したままに進攻していくことができた。

そうやって局面を複数で打開している間に、別の場所では後ろから次々に選手が入ってくる。後ろからの厚みが加わり、中ではパス&ゴーを中心にグルグルとポジションが変化していく中で、ラストの1/3のところは本当にポジションは関係ない状況が生まれてたと思う。誰もが出し手にも受け手にもなり、組み立てのリズムのままにラストの場所も崩しに行ったってのは上にも書いたとおり。

こういう状況の中でアストン・ビラは守備の勝負どころを作ることができなかった。後半を見れば分かったけど、アストン・ビラの守備の内容は悪くなかった。むしろ、よかった。でも、問題はボールに対して当たることで守備のスイッチを入れるようなやり方だったこと。そういうスイッチが入る前に次々にボールを回してしまうアーセナルに対しては相性が悪かったとしかいいようがない。結果、相手の守備にアプローチができずにズルズルと押し下げられてしまった。

そうやって押し下げられた状況で最後で跳ね返せたかって言えば、それも違う。前後の出入り、左右の出入りが激しいアーセナルに対して誰が誰を見ればいいのか分からなかった。さらに人数が入ってくるアーセナルに対して、見切れない状況が生まれたと思う。特にトップに当てて入ってくる中盤の選手に対しては、中盤がDFに吸収されてるアストン・ビラの守備陣が対応するのはかなり難しかったと思う。

こういう状況の中でアーセナルが前半は完全に試合を支配した。完全に引ききった相手の守備を、複数の関係で造作もなく抜け出し、決定的なシーンもいくつも作った。でも、後半はそういうアーセナルが完全に消えてしまったと思う。

そして、この予兆は前半から微妙に見られた。それはアーセナルの守備の問題。前半のアストン・ビラの先制点もそのアーセナルの守備に問題から生まれてる部分が大きかったと思う。

アーセナルの守備は中盤とDFがはがれてしまうことが多かったように思う。あまりラインを高くしたくない最終ラインに対して中盤は自分の前のボールに対してズルズルと引っ張り出されてしまう。しかも、その中盤の守備にあまり意図を感じなかった。ただ、組織から引っ張り出されてるだけで相手にとってはほとんど何のプレッシャーも与えてなかったんじゃないかと思う。この前後の間にギャップが生まれた。

基本的に高い位置からの守備の意図はアーセナルにはあまりなかった。切り替えの流れはともかく、ベースとなってたのは自陣の4-4で受ける形。だったら、受ける形を作ればいいのに、最終ラインの4と中盤の4の間には意識の違いがあった。結果として間にスペースが生まれた。

そして、相手の攻撃のやり方を考えるとこのギャップは弱点になりえた。アストン・ビラの攻撃はまずトップへのボールを狙う。このときに中盤とDFの間が空いていたアーセナルは、そのボールをほとんど防ぐことができなかった。さらに、アストン・ビラのトップが落としたボールの多くが味方につながった。これは中盤がこぼれ球に反応できるほど近くにいなかったから。そして、こぼれ球を拾った相手選手の前にはアーセナルの最終ラインが晒されてる状況だったと思う。

得点シーンはカウンターの流れだったけど、こういうシーン。トップに入ったボールに対してDFラインだけでの対応。結果として後ろから出てきた得点者を誰1人としてケアできなかったと思う。

ただ、前半のこの方法でのアストン・ビラのチャンスはこの得点までで終わった。失点をしたアーセナルが本気で攻撃に出てきたことによって、アストン・ビラは守備の時間が長くなってしまったから。

ちなみにアストン・ビラはロングボールだけで攻めるチームでもなかった。アーセナルの守備のまずさと、カリューの高さとアグボナラホーの左右の流れによる引き出しによって前線に入れるボールが多くなったのは確かだし、そこからチャンスがあれば一気にゴールに向かうシーンが多くなった。でも、基本はそういう1発のパスで陣地を作っておいて後はじっくりと組み立てるようなやり方が多くなったように思う。

そして、その組み立ての質はいいものだった。両SBを高い位置に入り込ませ左右の幅を大きく使いながらの攻撃が見られたと思う。相手のブロックの前を横切るようなパスを左右に振る中でアーセナルの守備にギャップを作ろうと試みてた。でも、そういう攻撃の時間は前半はあまりなかったのは上にも書いたとおり。

対して後半はアーセナルがペースを落としてきた。リードしたことによる意図的なペースダウンか、前半から運動量を多くしたことによる意図しないペースダウンかは分からないけど、明らかに前半とは内容が変わった。攻撃は前線の数人の個人技に任せることが多くなり、前半に見られたようなパス回しも攻撃の厚みも見られなくなってしまった。

この時点でアストン・ビラの守備が機能し始めた印象。選択肢が少なく、個々の距離が遠くなったアーセナルの守備陣に対しては、アストン・ビラがしっかりと距離を詰める対応ができた。前半からやろうとしてた守備がやっとできてたと思う。1人1人の忠実なチェックとそれに対する連動が見られて、高い位置でのカットも多くなった。

そうなれば当然アストン・ビラの攻撃の時間が長くなる。最終的にはアストン・ビラのポゼッション率が上回ったことを見てもそれが分かる。そして、アストン・ビラの攻撃の時間が長くなればアーセナルの守備のギャップを突かれる可能性も多くなる。

後半も相変わらずアストン・ビラの2トップにはよくボールが入った。そうやって押し込んでから左右を使うアストン・ビラの攻撃のやり方も健在。バーに当たったシーンを含めて、アーセナルは最後の最後のギリギリのところで止めてる印象が強くなってた。

これが落ち着いたのはロシツキー→ジウベルト・シウバの交代。その前のフレブ→ウォルコットの交代で2トップの一角に入ったロシツキーが下がって、ボランチのシウバを入れたことでシステムの変更を図った。具体的には4-4の間にできたギャップにシウバを置く4-1-4-1っぽい形になったと思う。

これによってようやくアストン・ビラのトップにボールが供給されなくなった。シウバがそれまで弱点になってたスペースをケアして、入る前と落とした後のところでしっかりと相手のボールを跳ね返した。

結果としてアストン・ビラは攻撃の形を作れなくなったと思う。最初にトップに当てることがスイッチになるアストン・ビラにとって、トップに入らないってことは攻撃のスタートが切れないことを意味した。この後の時間はほとんどゴールに迫るシーンを作り出せなかった印象。

アーセナルのサッカーを久々に見た印象としては縦への意識が高いってことを感じた。ベストは真ん中を一気に縦に攻めきる形だし、組み立てたとしても左右に振るような形はほとんどない。サイドを使って、今度はそこから縦を進攻していく。

そういう中でアーセナルの攻撃のファーストチョイスはカウンターだと思った。そこでアーセナルらしさが出るのは、カウンターが前線の能力に任されるものではなくて、人数をかけたものだってこと。人数をかけたカウンターってのはある意味最強なわけで。チームとしては、それを仕掛けるための工夫がいくつか見られた。

1つは上にも書いたように攻撃の最初にトップに縦パスを入れること。これによって後ろが飛び出していく時間を作る。奪ったらまず縦ってとこにも縦への意識が強く出てたと思う。

さらに、スペースを埋めるドリブルの多さも目立った。パス回しの意識が高すぎると奪った後に横にパスをつなぐことが多くなる。でも、この試合のアーセナルは自分の前にスペースがあればドリブルで持ち上がるシーンが多く見られた。

ただ、ここで一気にスピードを上げるドリブルをしないのが特徴的だったと思う。これも後ろが押し上げる時間を作るため。もちろん相手ゴールに向かうコースが確保されてるなら、わざわざゆっくりとドリブルをする必要はないわけだけど、この試合のアーセナルは深い位置でボールを奪うシーンが多かったからそういうシーンはあまり作れなかった。だったら、ボール保持者と後ろの選手が一緒に前線に上がった方が効果的だってことだなんだと思う。

こういう点を見てみるとアーセナルの攻撃にはかなりの運動量が必要とされてることが分かる。カウンターに限らず、本当の意味で人もボールも動くサッカーをしてるアーセナルの個々の選手にはランニングの量も質も求められてる。これが後半のペースダウンを生んだかもしれない。
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2007-12-20 Thu 00:14
フランクフルト×シャルケ
両チームともしっかりと試合を見るのは初めてだった。同時にブンデスリーガの試合をしっかりと見るのも初めて。この試合で印象をはっきりと固定してしまうのは危険かもしれないけど、この試合ではいかにもドイツドイツした展開が見られた気がする。攻撃では下手な小細工をせずにゴールにとにかく向かうイメージ。守備では局面の勝負に持ち込んで、文字通り相手をつぶす。こういう攻守のやり方を反映して、両チームとも中盤のところで引っかかることが多くなった。結果として行き来の激しい試合展開が生まれてたような気がする。

フランクフルトの守備の形は4-1-4-1。自陣にこの組織を作ることをスタートとして、4-1-4-1システムが生み出す守備における関係性をうまく利用できてた。要するに自陣がキチキチになってる状態を作り出して、相手の侵入を許さなかったと思う。

さらにフランクフルトの守備の特徴としては人への意識が強いこと。はっきりとしたマンマークというわけではないけど、自分のゾーンに入ってきた相手の選手に対してはしっかりと距離を詰めて対応してた。それぞれがしっかりと相手選手に密着することでボールを入れさせない、入ったとしても仕事をさせないような守備をしてた印象。

こういう状況になれば、ボールを持った相手選手がスムーズに自分のプレーをするのは難しい。どうしても1つ勢いを止められてしまいことになった。ここにおいて、フランクフルトは人の近さを利用することになったと思う。相手を1つ遅らせたところで、すぐに周囲が連動して相手を孤立させる。特にサイドの局面では数的優位を作って効果的にボールを奪うシーンが多くなったと思う。

ちなみに真ん中はそもそもボール自体を入れさせなかった。これは4-1-4-1の中盤の4のフィルターがしっかりと機能してたことを意味する。特に真ん中→真ん中の縦パスを防ぐ役割を担う2枚によってシャルケはうまく縦パスを入れることができなかった気がする。そこを飛び越すような質のボールをいくつか入れるシーンはあったものの、浮き球のパスでは届くのに時間がかかるだけに相手がしっかりと対応できるような時間も作り出してしまった気がする。

この点においてはシャルケの攻撃のまずさがあったのも事実だった。あまり攻撃のアプローチの工夫が見られなくて、フランクフルトの守備陣を混乱させるようなシーンを作り出せなかったと思う。さらに、自ら相手の守備網に引っかかりに行ってしまっているような印象も強く受けた。その問題点についていくつか挙げてみる。

まずは強引さが目立つっていうこと。しっかりと組織を作った状態の相手に対しても、単純に最短距離でゴールに向かっていこうとする姿勢が強かったように思う。ただ、一番の最短距離である真ん中→真ん中のコースは相手の守備によって切られてた。だから、次はサイドを使ってそのまま縦に入っていこうとする。そのサイドでは相手の効果的な囲い込みが待ってたってのも上に書いたとおり。こんな感じで強引に相手ゴールに向かう中で、中盤のところで奪われるシーンがかなり多くなった。

例えば4-1-4-1を崩す上ではもっと横幅を使ったアプローチをしてもよかったかもしれない。中盤の4のフィルターの間隔を広げることで本来使いたい真ん中のコースを作り出すとか。
あとは人につく意識が強かった相手に対してポジションチェンジによるアプローチを仕掛けるとか。そうすれば相手の組織のバランスは崩れることになったはず(後で書くけど、後半のいい時間はそういうアプローチも見られた)。でも、基本は4-4-2(4-5-1)をそのまま平行移動した攻撃に終始してた気がする。

この平行移動の弊害ってこともあるかもしれないけど、前線で効果的にボールが引き出せてなかったのも気になった。最短距離を行こうとする意識を見てもチームとしては早く前線に入って行きたいはずなのに、当の前線の場所を見るとそういう意図は見られなかった。動きが少なくて相手のマークを外せてないし、平行移動のせいか後ろからの飛び出しがほとんどない。だから、前線がはがれて孤立した状態が生まれてた気がする。そういう選択肢が少ない場所にボールを供給しようとしても、効果的ではないのは当たり前だったと思う。

こうやって選択肢が少ないことがフランクフルトの守備の内容をよくした要因だったように思う。そもそも前線の人数が少ないわけだから、ボールが入ったところに思い切って複数枚をかけられる状況が生まれた。ボールに複数が集中するってことは、必然的に周囲のスペースへの対応が甘くなることを意味するわけで、そのスペースに相手選手がいれば、そういう思い切った対応ができない。それがシャルケの前線は人数が薄いことで逃げ道がなくなり、結果フランフルトの守備の集中を生み出してたように思う。

だから、フランクフルトの守備はシャルケの攻撃に助けられていい内容を見せてた部分も大きかったと思う。それは上にもちょっと書いた後半の内容を見ても分かる部分。

後半のシャルケはアサモアを投入して形を4-4-2から4-2-3-1に変更。4-1-4-1の中盤の1の場所に3枚を配置することで、効果的にそのエリアを使おうとする意図があったように思う。前半はアルティントップもクラニーも下がってきて受ける動きが少なくて(横はそれなりにあったけど)、トップ下が空いてしまっていた。結果として前線の2枚がはがれた状況が作り出され、相手の弱点である中盤の1に対してもプレッシャーをかけられなかった。これを考えれば4-2-3-1への変更は効果的だった用に思う。

実際に後半の立ち上がりのフランクフルトは相手のこの形に対する対応に戸惑ってたように思う。この時間は中盤の1に入り込まれるのを嫌がって、中盤の5枚がフラットっぽくなる形になってしまっていた。これによって中盤の4のフィルターが機能しなくなり、相手にペナルティーエリア近くの場所までボールを供給されるシーンが多くなったと思う。さらに、このフィルターがなくなったことで相手の後ろからの飛び出しも活発になった。

この時間については局面局面を見た場合のシャルケの攻撃の改善も見られたと思う。中盤が暑くなったことでボールに反応する人数が増え、さらにランニングも増えてた。結果としていいリズムでパスが回るっていう場面が増えた印象。これによってフランクフルトの守備陣は守備の狙いどころを定められなくなった。前半とは全く逆の状況で囲い込みに行ったら、ギャップに入り込まれる危険性がかなり高まってたと思う。結果として相手の個の分断をすることができなかった印象。

ただ、逆に相手の後ろからの飛び出しが増えたことによってフランクフルトのカウンターのチャンスは増してた。そして、その通りに得点。これでシャルケの攻撃は再び停滞を始めたと思う。怖さが生まれた後ろの選手の攻撃参加に陰りが見られた。結果として前線に人数をかけられなくなった。だから、前線の距離感のよさが消えてしまったし、何よりもフランクフルトの中盤の4のフィルターが再び機能した。

そしてなぜか後半の立ち上がりにあれだけ活発だった前線の動きも停滞。相手がしっかりと組織を作っても前線で流動的に動き回ることで相手の守備のバランスを崩したり、効果的に前線にボールを入れたりってことができるはずだった。それがパタッと止まって、前半と同じような流れが生まれた気がする。

こういう部分を見てみると、シャルケの選手はボールから遠い場所の動きの意識が薄いのかなと感じさせられた。ボールから近い場所の動きに比べて、ボールから遠い場所の動きの質、量が明らかに劣ってた気がする。だから、そもそも前線にボールが供給されないことには動きは生まれないし、動きがなければ前線にボールが供給されないっていう悪循環が見られた。

ここまで見てきた感じだとフランクフルトは受ける守備の意識が強いように感じられる。自陣にボールが入ってきたところで密着マークして遅らせ、周囲の連動性で奪ったり、そもそも自陣にボールを入れさせなかったり。でも、いつでも受身の守備をしているというわけでもなかった。流れの中では前に向かった積極的な守備が見られたと思う。

こういう積極的な守備のやり方は1度組織を作ったときにも見られたけど、特に効果的に機能してたのは攻撃からの切り替えの流れの中。トップのアマナティディスが相手の最終ラインにプレッシャーをかけて行き、次を2列目が狙う。2列目に4枚が配置されてることでこの次の連動がかなりやりやすかったように感じた。これも4-1-4-1のよさ。

とにかくこういう高い位置での激しいプレッシャーと、それに対する連動性のよさはかなり感じさせられた。2つ目以降の狙いどころが合理的で効果的なインターセプトがかなり目立ってた気がする。

次の攻撃を考えるならば、こういうかなり質の高い高い位置での守備を主体とするのも1つの方法ではあると思った。それによって短距離カウンターが仕掛けやすくなるし、相手のビルドアップ途中で奪うのは得点の直結しやすい。

ただ、やっぱりこれだと運動量の問題があるんだと思う。常に前線から追いかけ回す守備をするには、休みどころを作らなければならない。でも、フランクフルトの内容をみる限りではそういう休みどころが生まれる余地はないように感じた。

特に奪ったら一気に攻めきることを念頭に置く攻撃を考えると、攻撃における運動量の消耗も大きいと思う。フランクフルトの攻撃はかなり単純。奪ったらトップのアマナティディスに預けて、2列目が一気に飛び出していくって形がほとんどだった。

ここで重要になるのはもちろんアマナティディス。起点とならなければならないことを考えると、1トップだから相手に対応されないように前線で動き回る必要がある。この試合では左右のサイドに流れてのプレーも見られた。さらに、1度起点になって後ろに落としたら自分は相手ゴールに向かってランニング。起点になるだけではなくて、流れの中で相手のウラをしたたかに狙う動きなど攻撃における負担はかなり大きかったと思う。

さらに守備で負担はかけられないってことなんだと思う。今の守備のやり方だとしても、1度自陣近くまで戻ってこなければならない。そこで守備の起点になることはもちろんだけど、次の攻撃を考えたときになるべく後ろとの関係を築かなければならないから。これに加えてチームとして積極的な守備をする際の最前線での追い掛け回しまでは求められないってことなんだと思った。

もちろんアマナティディスに限らず後ろの選手に関しても少なからず同じようなことがいえる。だから、受ける形を基本としながら、チャンスがあるときとか切り替えの流れの中でタイミングを見計らっての積極的な守備ってことになると思う。

フランクフルトの守備面は受ける形にしろ積極的な形にしろ守備のスイッチと、それに対する連動性の質が高かったように思う。受ける形ならばボールの入りどころに対する1つめの当たりをスイッチとして、2枚目3枚目が囲い込みに入る。積極的な守備はトップのアマナティディスの意図のあるチェイスをスイッチとして次のコースに入ってくる2枚目3枚目の連動。こういう守備のよさによって、相手の攻撃を最後のところまで行かせないシーンが多くなった。

ただ、そういう場所を抜けられて最後のシーンまで行かれると脆さを見せる。2失点目のように簡単にマークを離してしまったりウラに入られたりってシーンを作り出してしまう。セットプレーなんかを見ても最後の最後で跳ね返す力は弱い気がする。ほとんどのセットプレーがマークを外したり、マークをしてても圧倒的に上に行かれたりって形になってた。実際にそこから失点もしてるわけで。フランクフルトの守備は、いかに自分たちの強さである中盤の場所で相手を食い止められるかが勝負になるかもしれないと思った。

対するシェルケの守備は全般的にいい内容だったとは言いがたかった。フランクフルトと比べると守備の狙いどころの統一がはっきりとしてなかった印象を受けた。もしくは、狙いどころははっきりしてるけど、そこに向けたアプローチがあいまいだったというか。

とりあえずシャルケの守備はボールに対する意識がかなり強かったと思う。攻撃からの切り替えの中でもかなり厳しくあたりに行くシーンがいくつか見られて、敵陣深くの守備でカードをもらうシーンまであった(これは試合が荒れ気味だったことも関係するだろうけど)。

こういうボールに対して守備をするのはフランクフルトも同じだったけど、そこには決定的な違いがあったと思う。それはフランクフルトのよさでもあるスイッチと連動性の部分。そして、この決定的な違いが守備全体の安定感に差を生み出してたような印象を受けた。

フランクフルトのボールへのアプローチはボールの“入りどころ”を目標とする。入りどころを狙って相手に収まらせないことを念頭に置いて、それが無理でも距離をしっかりと詰めてるから最低限仕事をさせないやり方ができる。そして、そこに対して周囲が連動して囲い込むのは上にも書いた通り。

こういう部分についてシャルケの守備はボールが“入ってしまってから”の対応が多い。ボール保持者がボールを持っていい体制になってから、ヤバイと思って寄せに行くようなイメージ。だからこそ、ファールが多くなったんだと思う。

ボールが入ってからの守備に関してはフランクフルトの方でも見られないわけではない。それは積極的な守備の中でのスタートとなるところ。ここでは入りどころというものがそもそも存在しないわけだから。だとしても、次の入りどころを意識した守備をすることで、実質的に入りどころに狙いを定めてるって言えると思う。

これに対してシャルケの守備は入ってしまってからのボールについても次を考えずに勝負に行く。これは場所に関係する部分もあると思う。フランクフルトの入ってしまってからのボールに対する守備は最前線。後ろにはフィールドプレイヤー9人が控えてるわけだから、制限できれば十分な仕事を果たしたことになる。でも、シャルケの場合は必ずしも最前線だけではない。制限すればなんて悠長なことを言ってる場合じゃない場所で、こういう形になるシーンが多くなる。結果として勝負に行かざるを得ないシーンが増えるんだと思う。

ただ、もちろん個々の意識に関する要因もあると思う。前線から全ての場所で奪いに行く質の守備をする。要するに次につなげる守備をしない。これによって後ろの選手は出所を狙えない。結果としてボールが入った後の対応が多くなってしまうんだと思う。フランクフルトのトップのアマナティディスにボールが入りまくったのが象徴的。はっきりいって、フランクフルトはここだけ押さえておけば何もできなかった気がする。だったら、最初から人を見てればいいっていう話ではあるけど、後ろからの飛び出しが攻撃の基本になってるフランクフルトに対しては難しかったと思う。

こういう部分を見てみるとシャルケの守備は連動性が図りにくいやり方を取ってるのが分かると思う。高い位置からのプレッシャーで相手が焦ってミスをして奪えることはある。でも、シャルケの狙い通りに場所で奪えてるとは限らない。問題は連動性が図りにくいやり方なのに選手の配置は連動性を図ろうとするようなやり方であること。

シャルケの守備はボールサイドにとにかく人が多くなる。個々のボールへの意識が高いから、当然といえば当然だけど、しっかりとした守備ができていない以上かなり危険だった。ボールへ人が密集する中で当然その選手たちが出てきた場所にはギャップが生まれることになった。

さらに悪いことにフランフルトの選手がシンプルなプレーを心がけてたこと。ボールが入った後に対応に来るシャルケの選手が十分に寄せきる前に、次の展開をしてしまった。そこでしっかりと距離を詰めてボールを孤立させれば問題なかったかもしれないけど、この状況ではシャルケの守備陣は背後にできたギャップだけが浮き彫りになってしまっていたと思う。

特に多かったのが、ボランチが引っ張り出されてDF前が完全に空いてしまうシーン。これについてはシステム的な要因もあった印象。シャルケのシステムはボックスの4-4-2。つまり4-2-2-2の形だった。守備時には前線の2-2が敵陣で相手の最終ラインにプレッシャーをかけ、自陣を後ろの4-2が対応するような組織作りが目立ったと思う。

このときに前線の2-2を抜け出されれば単純に残りは後ろの4-2。そのときに後ろの4-2がしっかりと機能してればあまり問題にはならない。フランクフルトは攻撃に特別人数をかけてきたわけではなかったし。でも、ボールへの意識が強いシャルケのブロックはボールサイドに寄せられる。特にボランチが2枚とも引っ張り出されると致命的だった。これによって真ん中にギャップができ、フランクフルトはそこを突いてのミドルシュートが多くなったと思う。

フランクフルトはこういうシャルケの守備のギャップをビルドアップのときにもうまく利用してたと思う。そもそもフランクフルトの攻撃は1度アマナティディスに当てるってのは上にも書いたとおり。でも、アマナティディスはボールと同サイドにいることが多い(次の攻撃で起点になるために、近い場所にいる)から、それはボールサイドに人をかける相手の守備の真っ只中だった。実際、このやり方にこだわってた立ち上がりは途中で引っ掛けられるシーンが多くなったと思う。

これに対して前半の途中から奪ったところから1度逆サイドに展開するシーンが見られ始めた。相手の密集地帯から広いところに1度展開するってこと。そして、この展開によって一気に縦にボールを運べるシーンが多くなったと思う。単純に相手の2-2-2が1つのサイドに寄ってるわけだから、サイドを変えると前には全く障害がない状態ができあがってたと思う。

この試合では高原も稲本も出場せず。ただ、試合を見る限りでは高原は厳しい立場にいるってのがわかる気がした。少なくとも今回のシステムでは。
第一希望であるトップの場所に入っているアマナティディスはここまで書いてきてるように、攻守の多くの仕事をこなすかなりいい選手だと思う。高原とどちらが能力が上かっていう単純比較はできないけど、チームへの貢献度を見る限りではアマナティディスを外す理由は見当たらない。
監督が使おうとしてる左サイドはこの試合ではマハダビキアがスタメン。マハダビキアは攻撃に1つのアクセントとなっていた。あまり攻撃に人数をかけないフランクフルトだけど、アマナティディスに収まる→マハダビキアの飛び出しってのは1つの形になってたように思う。
高原の立場的には現実的考えると2トップ採用のときの起用が一番確実なのかもしれないと思った。
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2007-12-17 Mon 00:28
CWC決勝:ミラン×ボカ
3位決定戦はこちら
http://himajin0112.blog101.fc2.com/blog-entry-233.html

<ミラン:4-3-2-1>
FW:インザーギ
MF:セードルフ-カカ、アンブロジーニ-ピルロ-ガットゥーゾ
DF:マルディーニ-カラーゼ-ネスタ-ボネーラ
GK:ジーダ

<ボカ:4-4-2>
FW:パレルモ-パラシオ
MF:バネガ、カルドーソ-バダグリア-ゴンザレス
DF:モレル-マイダナ-パレッタ-イバラ
GK:カランタ

立ち上がりボカは超ハイペースで入った。立ち上がりから前線に人数をかけて、奪われたらその高い場所での超ハイプレッシャーの守備。このボカの積極的なやり方が試合の流れを決定した。予想された守り合いの試合ではなくて、攻め合いの試合展開になった。結果として4-2っていうスコアが生まれたと思う。

こういう流れの中で立ち上がりの時間は積極的に仕掛けて行ったボカが流れを握った。おそらくハイペースの試合ならボカに有利、スローペースというか落ち着いた試合ならミランに有利だったと思う。そういう意味で立ち上がりは自らハイペースを演出したボカの流れにミランが飲み込まれてしまったと思う。ボカはスピーディーな展開で一気にゴール前まで迫るシーンが目立った。

これに対してミランはすぐに自分たちのペースに引き入れたのはさすがだった。ボールを奪った後にボカのペースに付き合わなかった。しっかりと広いところに展開して、ゆっくりと押し上げていく本来のミランらしいやり方を取ってきた。

と簡単に書いたわけだけど、そう容易なことでもなかったと思う。ボカは高い位置からボールに対して厳しく当たってきたから、そういう状況の中で落ち着いてつなぐには相当に技術が要求される。今さら言うまでもないけど、超スピーディーな立ち上がりの時間にはそれを改めて感じさせられた。

ハイペースで進めたいボカと落ち着いて進めたいミラン。ここにもスタイルの違いが見て取れるけど、それ以外にもそういうやり方の違いがいくつか見られた。

1つはボールを奪った後の対応。

ミランは上に書いたようにまずはしっかりとつなげることを念頭に置いてる。相手の高い位置のプレッシャーを抜け出すために広い位置に展開して、そこからゆっくりと組み立てを開始するシーンが目立った。ボカとしては最初の守備を抜け出されたら、もう1度追いかけなおすようなことはせずに、しっかりと戻ってブロックを形成したから、そういう意味ではミランの狙い通りの組み立てがしやすい状況だったと思う。

こういうミランの抜け出しを横の展開とするなら、ボカはボールを奪った後に一気に縦を狙うシーンが多くなった。ボールを奪った瞬間に前線に残した2枚が引き出しの動きを開始して、そこに1発のパスを狙うシーンが増えたと思う。この引き出しが目立ったのは特にパラシオだった(パラシオは前線での運動量の多さ、収まりのよさが目立ついい選手だと思う)。リベルタドーレス杯のときと同じイメージで、自陣で奪ってパラシオの動き出しに対してすぐ縦っていう攻撃が多くなったと思う。もちろん相手が後ろに人数を残してたり、前の準備が整ってないときには無駄に放り込むことはなかったけど。

こういう縦と横の違いは何もボールを奪った後すぐだけではなかった。しっかりと組み立てをしているときにもこの違いは現れてたように思う。

ミランは今までも何度も書いてきてるように横のアプローチによってビルドアップをしていく。SB利用で横の幅に人を確保し、真ん中のピルロを経由しながら左右の展開を繰り返して深みを与えいていく。そうやって相手のブロックを押し下げていく。そして、こういう横のアプローチの中で相手の意識がサイドに向いて真ん中が空いたところでセードルフでありカカでありっていう真ん中の場所にボールを供給する。

まとめると、ミランは横のアプローチによって徐々に相手のブロックを押し込んでいくイメージ。その中でジワジワと自分たちの陣地を増やしていくやり方を取っている。FWは最終兵器であり、そのために中盤でFWを空けるようなアプローチをしていく。

対するボカはまず縦に1つ入れる。それは必ずしも真ん中とは限らないわけだけど。真ん中で張っているパレルモにくさびを入れたり、左右に流れるパラシオにボールを入れたり。とりあえずトップに入れるっていう縦の質のボールを最初に入れる。もちろん、念頭に置いているってことであって、何でもかんでもトップに入れるわけではないけど。

こうやってトップに1つ入れることで相手のブロックを押し下げる効果があると思う。そして、トップが受けたボールを落とすことで中盤を利用する。この時点では相手が後ろへの意識を強く持ってるだけに中盤のところがフリーになることが多い。そういう比較的フリーな状況の中で中で左右を使ったり、ドリブルで仕掛けたりっていうやり方を取っていく。

こっちもまとめると、ボカは縦のアプローチによって一気に相手のブロックを押し込むイメージ。一気に陣地を稼いでから、比較的フリーになった中盤を利用して攻撃の流れをつかんで行く。FWは攻撃の起点であり、このFWへの最初のボールによって中盤が空いてくるようなアプローチ。

この両者の違いがはっきりと出たのがGKからのボール。ミランのジーダはDFラインにボールを預けることが多かったのに対してボカのカランタはパントキックで一気に距離を稼ぐことが多くなったと思う。

攻撃面のアプローチに対して、守備でも両チームのやり方に違いが見られた。言い方は悪いかもしれないけど、頭を使うミランと体力勝負のボカっていう守備の構図になってたように思う。ボカは個の意識をベースとした守備をし、ミランは組織をベースとした守備のやり方を取ってきた。

ミランの守備についてもこれまで何度も書いてきたとおり。この試合も4-4-1-1ではなく、4-3-2-1の形を使うことによって前線から限定していく守備を試みてた。そうやって前線からの限定によって段々と相手を追い込むようなやり方だったと思う。ボールには特別激しく行かずに、全体の微妙なポジショニングのバランスによって、相手を意図した方向に追い込むやり方が見られた印象。

でも、ボカはそれにまんまと引っかかるほど甘くはなかった。というか、追い込まれた状況をうまく抜け出すシーンが多くなったように思う。これはここ数戦のミランの相手(セルティック、レッズ)とは違う部分だった。ミランとしては追い込んで守備の勝負に出たところを抜け出されるとギャップができてしまっているだけに、望ましい状況だったとはいえない。

そのボカの攻撃前の試合ではあまり見られなかったものだった。今回の試合を見てみると、前回のエトワール・サヘル戦はコンディションが悪かったんだろうってことを感じさせられた。ミランの守備網を抜け出す内容は個と組織のバランスがいいものだったと思う。

基本的にボカの選手はチャンスがあれば個の力を発揮してくる。例えば前にスペースがあれば迷わずドリブルで持ち上がっていくし、50/50の1×1のようなシーンでは必ずドリブルで仕掛けていくシーンが多くなった。さすがに個の技術力が高いだけに、ミランの選手も仕掛けられたりスピードを上げた状態で勝負をされたりすると、手を焼くシーンが目についた。

でも、だからと言ってそういう個の技術にばかり頼っていたらミランの守備に簡単に引っかかったはず。個で行くところは行き、味方と連動するところは連動するっていうメリハリがよかった。そして、こういう連動した攻撃の内容がよかったことがミランの守備を思惑通り機能させなかった要因だったと思う。常に複数の選択肢を用意しながらのアプローチで、相手に個を分断されたり、完全に限定されたりしないように注意してた。

そして、この複数の関係性のよさは特に近い場所で築かれることが多かった。この辺はボカらしさなのかもしれない。常に小さなトライアングルを作りながら、ショートパスで抜け出しを図るシーンが多くなった。その中で基本的なパス&ゴーもかなり多くなったと思う。結果として少ないタッチでリズムよくパスが回るシーンが多くなった印象。これはサヘル戦とは明らかに変化した部分だった。

本当は大きな展開をもう少し増やしてもよかったんじゃないかって思うわけだけど。サイドを変えるボールもあったけど、それは多くの場合で引いた相手のブロックの前を通り過ぎるような質だった。相手がボールサイドに人数をかけたときに大きな展開を入れればもっと簡単に深い場所まで入り込めた気がする。そういう意味ではクロスで一番遠いサイドを狙う意図が見られたのはよかった点だった。

こういう形でミランは本来の守備のやり方が狙い通りには機能しなかったっていえる。最後の堅さがあるだけに、こういう守備が機能しなかったからといって一気に致命的なシーンにはつながらなかったけど、前半は深い場所まで持ち込まれるシーンが多くなったのも事実だった。

これに対してミランは後半の守備にやや変更を加えた。ある意味ではちょっとボカっぽくなったイメージ。自陣に入ってきたボールに対して一気に距離を詰める対応が目立ったと思う。切って、切って、追い込むっていうよりも、入ってきたボールに対してはなんでもかんでも厳しく対応していくイメージ。多くの場合、これを担当したのはやっぱりガットゥーゾとアンブロジーニ。微妙に距離が空いていれば逃げどころもあったボカも、ゼロ距離にしてしまったらほとんど選択肢がなくなってしまった。結果として後半のボカはほとんど攻撃の形を作れてない。

こういうミランの守備のやり方に対して、ボカは上に書いたように個の意識をベースにした体力勝負のやり方っていえた気がする。これは立ち上がりの超ハイペースの流れを引きずったものだった。

立ち上がりの時間は上に書いたようにかなり攻撃の切り替えのかなり高い位置から相手のボールに対して超ハイプレッシャーで入った。この時間はこの守備のやり方がピッチ全体で統一されてたように思う。

要するにまずはボールに対して厳しく当たるところから守備がスタートする。南米的に本当に一気に距離を詰める守備をしてたから、ミランの選手としてももたつくシーンが目立ってた。そして、ボカはそういうもたつきを見逃さない。最初の守備に対してすぐに2つめ3つめが連動して一気に囲い込んだ。そうやってミランの個を完全に分断して、ボールを奪うシーンが多くなったと思う。

ただ、ボカとしてもこの超ハイプレッシャーは90分は続かないと判断したと思う。確かに全てのボールに対して、常に全力のアプローチをし、しかもボールに行った選手も全力の連動を要求されるこの守備は効果的であるけど、続けるのは難しい。自分たちがボールを保持できる時間が長い試合ならできたかもしれないけど。

そういうこともあってボカは前半の10~15分あたりを境に立ち上がりから1つギアを落としにかかった。ただ、ここで悪いことにミランがこの当たりの時間からボカの守備のプレッシャーに慣れ始めた時間と重なった。ボカはギアを落としたといっても、一応のボールへのアプローチをしっかりやってたけど、立ち上がりの厳しいやり方に慣れたミランにはほとんど効果がなかったような気がする。こういうボカ自身のペースダウンとミランの慣れが加わったことでボカの守備はかなり危険な状況に晒されることになったと思う。

ボカの守備は自陣に4-3を形成したところからスタートする。この時間にはもう切り替えから超厳しく行こうっていう意図はなくなってたから、この4-3で受けることが多くなった。そして、相手が一定の場所に入ってきたところ(多くの場合で自陣に入ってきたところ)で、最低1枚がボールにアプローチに行くようなやり方だった。

問題はここにあった。この最低1枚のアプローチがすばらしく中途半端だったと思う。立ち上がりのように厳しく行かないから守備のスイッチとしては適切じゃないし、だからと言って次の守備につなげるような質でもなかった。とりあえず近づくイメージが強くて、ほとん実質的な効果はなかったんじゃないかって気がする。

ただ、これについてはミランの攻撃のやり方の影響もあった。さすがに組み立てのところのうまさが光って、それによってボカの守備の実効性を失わせたイメージが強かった。そこで利用されるのが上にも書いた横のアプローチだったと思う。

まず横のアプローチによって相手の守備陣は横の間延びを起こす。これはつまり選手間の距離が遠くなることを意味するわけで、結果としてボカはすぐに複数の関係を築くのが難しくなったと思う。

さらにパス回しのリズムってのもある。ミランは横幅を使いながらボールを1箇所には留めずに次々とパスを回していく。しかも、相手が出ていたところで次に出すっていうようなしたたかさもあると思う。この辺のパス回しのうまさは最後の逃げ切りの時間を見ても分かる部分だったと思う。1度キープしたらいくらでもつなげるチームとしてのキープ力の高さを見せてくれたと思う。

このパス回しによってボカは狙いどころが定められなくなった。厳しく行けば簡単に次にはたかれてしまう。これが近い場所でのパス回しなら相手は段々と距離を詰めて追い込んでいけばいい。でもミランのパス回しは横を一杯に使ったものであって、簡単に逃げられてしまった。これを追い込むには前(後)左右から同時にプレッシャーをかけることが必要なわけで、それは実質的には不可能。だから、ミランはいくらでもパスを回せるし、ボカはアプローチに行ったところで逃げられるっていう状況が繰り返された。

こういう状況の中でボカの守備陣(特に中盤)はただ引っ張り出されるだけってことが多くなった。一応ボールに行く意識はあるけど、そこで効果的な守備ができないからただ背後にスペースを空けてくるだけになってしまった。しかも、ミランのボールが横に動くのに合わせてボカの守備陣も次々に引っ張り出された。

この結果起こることは目に見えてる。一番空けてはいけないカカとセードルフの場所が完全に空いてしまうこと。そして、中途半端な守備に行く出し手へのアプローチではその2人に入るボールのコースを切れてないこと。セルティック戦を見るとまだまだ不満が残ったセードルフの動きもレッズ戦の前半から比べれば多くなってたし、カカも真ん中にこだわらないプレーが目立ってたことも相まって、この試合では前半からカカとかセードルフに簡単にボールが入るシーンがかなり多くなった。そして、2人とも前を向いてボールを扱えるシーンがかなり多くなった。どちらも1ボランチに入ったバダグリアがなんとかスピードを殺してるっていう状況だったように思う。

それでも、この場所に1つボールが入ったことによってミランの攻撃にスイッチが入るシーンが多くなった。横のパス回しの中では前線の人数はあまりかけてないわけだけど、縦にしっかりと入った瞬間に後ろの選手が一気に出てくる。そうやって相手ゴールに向かって一気に押し寄せるタイミングが図りやすくなったと思う。こういう形で相手を押し込むことによって、相手が跳ね返したボールを拾って波状攻撃につながる場面も目立った。

そういう意味で個人的には前半はカカとセードルフの場所にかなり危険を感じてた。終わってみれば、流れの中での3失点は全てカウンターっぽい流れだったけど、しっかりと組織を作ったときにも取られてもおかしくないシーンが多かった。それでも前半終了時に守備はいいってボカの監督は言ってたらしいんだけど。カカがあれだけ生き生きとプレーしてるのは最近はあまり見られなかったから、この意見には賛同できない。

そういう意味ではボカはもっと守備のやり方をはっきりすべきだったかもしれない。立ち上がりのようにハイペースでやるのか、引いてバイタルを消すのか。どちらもボカの守備のオプションにはある形だったと思う。

前者は立ち上がりにできてたんだから、できないわけはない。問題は上にも書いたような90分続けられるかっていう実現可能性だけ。それにしたって、自分たちがボールを持てる展開を作れば不可能ではなかったと思う。ミランまでの完璧なポゼッションは無理でも、ボカの選手の技術力を持ってすればある程度自分たちの流れを維持するやり方はできたんじゃないかと思う。ただ、常に前に向かって行くようなスタイルとの合致の問題があるけど。

そういう意味では後者の引いてバイタルを消す方法の方が可能性としてはあったかもしれない。これはリベルタドーレス杯のときに見られた形。真ん中に凝縮した4バックとその前の3ボランチの超コンパクトな4-3を低い位置に形成することによって、最後のところをやらせないっていう方法。レッズ戦を見ても分かるとおり、ミランはこの形に弱い。最後を固められるとそこを崩す方法がない。

ただ、問題はリベルタドーレス杯のときとは違ってリケルメがいないこと。ポンテがいなかったレッズと同じイメージ。攻撃に出るときに1つの経由点がどうしても作れなかった。バネガもいい選手だけど、リケルメのように絶対的なキープで時間を作るタイプじゃない。U-20のプレーを思い出しても、もう少し動きながらプレーするタイプかなって気がする。とにかく、こういう攻撃面のことを考えると、常に先行される展開は痛かった。もしもリードする展開になれば、4-3の安定したブロック作りもありえたかもしれない。

この点を見てもミランは常に先行したことでかなり楽になったことが分かる。特に後半早々の2点目はチームにいい流れをもたらした。この得点はFKから中で待つ選手の動きに差をつけるやり方。まず前の選手がゴール方向に走って相手を引っ張り、空いたスペースにボールを蹴りこむ。おととしのCLリバプール戦のマルディーニのゴールが同じような場所から同じような形で決まったと思う。

とにかくこの2点目によってミランは願ってもない展開になった。ミランがカカを一番効果的に使えるのはカウンターの流れだから。個人的には前にスペースがある状態でのスペースを埋めるドリブルが一番魅力的だと思ってる。1点目もそういうシーンだったし。

そのカカは守備時に左サイドに出てボールを待つシーンが多くなった。相手の右SBイバラがかなり積極的に攻撃に参加していたから(この攻撃参加は効果的だった)、そのウラを突く意図があったはず。そして、まさにその狙いがどんぴしゃにはまったのが3点目のシーンだった。左サイドで受けたカカの前にスペースがあり、好き放題にできたシーンだった。

そして、この後の4点目も効率的に前線の3人だけで奪った得点。そういう意味ではこの4得点は立場の違いが現れたものだったっていえる。追いかけなければならないボカの後ろの薄さをうまくミランが突いたってことだった。

この得点の後のミランは本当にしたたかだった。カフーとインザーギの交代は本気でタイトルを狙いに来てるのがはっきりと分かった。

<交代後:4-4-2>
FW:カカ-セードルフ
MF:アンブロジーニ-ピルロ-エメルソン-カフー
DF:マルディーニ-カラーゼ-ネスタ-ボネーラ
GK:ジーダ

このカフーの後すぐにカラーゼが退場。こうなったところでカフーを出したことが不幸中の幸いだった。選手交代をせずに最終ラインを整理することができた。マルディーニを真ん中に入れてボネーラを左、右にカフーを下げた形。それに伴ってセードルフをカフーの位置に下げたけど、そこもすぐにブロッキを入れて完全に固めた。

ちなみに個人的にはカラーゼの退場は残念だった。守備固めの形ではあったけど、カカとセードルフを置いた2トップに置いた形はちょっと興味があった。ローマとは違って2列以降にトップまで飛び出していくようなタイプがいるわけではないから、どういう形になるかが興味深かった。たぶん、この試合では中盤を6枚にすることで圧倒的にボールを支配して、相手に攻撃すらさせないことを目指したんだと思うけど。どちらにしても退場で完全に守備の形になってしまって、そういうやり方が見られなかったのは残念だった。

ちなみにミランの失点は2つともCKからの流れ。特に1点目は相手の速いリスタートに完全にやられたシーン。ここはミランの2つの弱点が共存してたと思う。
1つは今までも何度も書いてるようなサイドからの脆さ。この試合では流れの中でもサイドからのボールに対して相手(特に一番と置くの)を離してしまうシーンが見られた。
2つめは集中力が切れる場面がちょくちょく見られること。このシーンみたいに早いスタートに対する脆さは、昨シーズンのローマ戦でも見られた。

ミランはさすがに今シーズンはここにあわせてきたっていうだけある。というか、もう少しリーグも頑張ればとも思うわけだけど。この大会前のセルティック戦と比べるとちょっと動きが重かった気がしなくもないけど、去年のバルサと比べたら明らかに本気度の違いが見られた。

しかも、この決勝はボカが攻めてきたことで久々にミランが存分にプレーできたんじゃないかと思う。ボカも決勝に照準を合わせて、自分たちの色を見せた内容を展開した。相手の色を消すんじゃなくて、自分たちの色を出す方を重視してくれたおかげで面白い試合内容になったと思う。同時に両チームの違いが明確に表れた興味深い試合だった。

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2007-12-16 Sun 20:23
CWC3位決定戦:レッズ×エトワール・サヘル
<レッズ:3-5-2>
FW:永井-ワシントン
MF:山田、相馬-長谷部-鈴木-細貝
DF:ネネ-阿部-坪井
GK:都築

<エトワール・サヘル:4-4-2>
FW:シェルミティ-ベンディファラー
MF:ナフハ-トラウイ-ナリー-メリティ
DF:メリアフ-ファルヒ-ゲザル-フレジ
GK:マトルティ

サヘルはここまでの2戦とはまた違ったやり方で試合に入った。これまでは中盤のラインをハーフェイライン付近に置いた。1戦目はしっかりとラインを作るっていうポジショニングによって、2戦目は組織から飛び出して積極的にボールにアプローチしていく方法で。どちらにしても、相手の攻撃のスタートのところをつぶす意識が強かったと思う。

対して今回の試合ではレッズの攻撃のスタートは比較的フリーな状態になった。要するにそれだけサヘルの守備ブロックが引いたってことだったと思う。今までは中盤のラインがあったような位置に今回はFWが配置されてた。必然的に中盤は自陣の深めの位置に配置されることになったと思う。

この思惑は正直なところよく分からなかったけど、勝手に解釈するならレッズをおびき寄せるやり方だったんじゃないかと思う。レッズのラストブロックの守備が堅いことはサヘルも研究してただろうし、そう考えると組織を作った相手に攻めるのは効果的ではない。一番の狙いは組織が崩れた状態の相手に仕掛けることだった気がする。

この状況はレッズにもいえた。だから、サヘルの戦術はいかに主導権を握らないかを念頭に置いたやり方ではなかったかと思う。どちらも、主導権を握らないやり方、つまり相手にボールを持たれるやり方の方が本来のスタイルに合っている。サヘルはブロックを低い位置に配置することで、あえてレッズを引っ張り出したのかもしれない。

この状況は立ち上がりが全てを表してる。レッズはCKが3本続いた。要するにそれだけ押し込んでたってこと。その3本目のボールを奪ったサヘルは前線に1発。組織が作りきれてないレッズに仕掛けるロングボールだった。坪井のミスは絡んだものの、サヘルの狙いがそのまま出たような気がする。ちなみに2点目もレッズが3枚で守ってるシーンからだった(後半はサヘルはやり方を変えてたけど)。

サヘルがこういう形を取るにあたっては、レッズの攻撃力も計算に入ってたと思う。ボカだったりパチューカにああいう深い位置までボールを持ち込まれたら、最後で防ぎきれなかったはず。なぜならサヘルは1つ入られたときの守備があまりうまくないから。自陣で微妙に相手をルーズにしてしまうことが多くなるってのはこれまでにも書いてきたとおり(特にパチューカ戦)。

だから、サヘルが低い位置で守るってのはそれなりに覚悟があったんじゃないかって気がする。それをやってきたってことは、レッズ相手ならなんとか守れるっていう計算がったからだと思う。確かにレッズは引かれたとき相手を崩すのが苦手だし(Jの最後の3戦はそういう相手を崩しきれなかった)。

でも、サヘルとしては誤算2つあったと思う。

1つ目はレッズも攻撃に出てこなかったこと。というか、レッズは攻撃に出てこれなかったイメージが強い。明らかにレッズは立ち上がり堅さが見られた気がする。その中で攻撃に出る途中にミスでボールを失うことが多くなった。当然そういう状況だからレッズは後ろからの押し上げが停滞した。

逆に言えばレッズは守備の人数は揃ってることが多くなった。1点目のシーンはあくまでもCKの流れであって、流れの中のシーンではあまり後ろが薄くなるっていう形にはならなかったと思う。サヘルの方から見ればこれは思惑通りではない形。奪っても効果的にカウンターっていうシーンを作れなかった。

それにレッズの守備の積極性も見られなかった。こちらに関してはサヘルとは違って意図とは違ったものだった気がする。立ち上がりの堅さを感じたのもこの守備面から。明らかに前の2戦とは違って低い位置に多くの人数が入っていた。Jリーグの終盤の形に戻ったようなやり方だったと思う。

だから、サヘルとしては攻撃におけるプレッシャーがあまりなかった。少なくともボールを前に運ぶことは容易にできたと思う。他の時間はトップに単純に当てることが多かったサヘルだけど、この前半の時間帯にはしっかりとつないで組み立てることが多くなった印象。

守備で引きこもってても相手は出てこないし、自分たちは楽に攻撃を組み立てられるしってことでサヘルは攻撃に人数をかけるようなやり方を取ってきたのがこの時間だったように思う。ただし、守備時には相変わらず今までよりも低い位置にブロックを作るっていうやり方だけは貫いてたけど。

この低い位置でのブロックはレッズの前線の選択肢が少ない時間には機能したと言っていい。中盤はこれまでよりも低い位置に置いたけど、DFラインまでは下げなかった。結果としてバイタルエリアをつぶすコンパクトなブロックを作り出した。

そのときに自分の前の4-2の間に対しては1枚が必ずチェックをかける。この場所に関してはFWが戻ってきての守備も効果的だったように思う。どちらにしても基本的には4-2の間では1枚が対応するだけだったけど、堅さがあって動きが少なく、そもそも前線の人数が足りてないレッズにとっては致命的だった。後ろに戻したりサイドに流したりっていうシーンが増えた印象。

そういう流れの中で何とか真ん中に通したとしても、その後の展開につながらなかった。DFと中盤をコンパクトにしてる相手にとっては、そういう場所の守備はお手の物。近さを利用してすぐに複数枚で囲い込むシーンが目立った。それにこの時間はレッズがワシントンにこだわりすぎてたのも問題だったと思う。ワシントンにはしっかりとマークがついてたから、簡単に対応されてしまった。

真ん中を崩せないとなると最終的なアプローチはサイドに任せることになる。でも、左の相馬は完全に封じられてしまっていた(後述)。左サイドではボールをもらう時点ではフリーでも、そこから縦にはなかなか行かせてもらえなかった。結果として細貝からのアーリーが跳ね返されるシーンが多くなったと思う。

それでも時間とともに堅さが取れていって、ミスが減り、ポゼッションは確保することができた。無理にワシントンを狙うようなやり方はやめて、まずチームとしてキープすることを念頭に置くやり方が目立った。そういう状況の中で前線に人数をかけることも多くなったと思う。最後の最後は崩せないにしても、段々と相手のゴールに迫っているのは明らかだった。

これである意味ではサヘルの狙い通りに展開になったって言える。レッズがポゼッションを確保するようになってからは、明らかにサヘルの攻撃は縦1発が目立っていた。でも、ここで誤算の2つめが現れた。要するに相手をおびき出した後の攻撃が全く可能性を感じさせなかったってこと。

これは狙い以上に低い位置のDFと中盤のブロックが押し下げられたことに問題があったと思う。結果として奪った後の切り替えで前線との距離があまりにも開いてしまった。これは要するにレッズが予想以上に押し込んだことを意味する。だから、レッズの攻撃の質が高まったのがサヘルにとっては誤算だったっていえる。

この誤算について触れる前に、この試合のサヘルのもう1つの特徴的なやり方について見てみたい。

それは右サイドの⑳メリティの役割のところだった。この試合でのメリティの役割はかなり特殊なものだったと思う。メリティは右SB(DF)~右WG(FW)までの右サイドの全ての役割を担ってたと思う。それは運動量が要求されるのは当たり前なわけで、最初の交代がこの選手だったのは象徴的だった。

とりあえず、この選手は相馬のよさを殺ぐ役割を担ってたのは間違いない。それは攻撃時から見て取れた。

そもそもサヘルは3バック脇に入る意識はかなり強かったって言える。立ち上がりからシェルミティーは左サイドでプレーして坪井を引っ張り出すシーンが目立った。加えて、右サイドにはキーになるメリティがWG的に超高いポジションを取って入ってきたと思う。だから、攻撃時は3トップと言ってもいい形になった。そして、この2トップが相馬を押し下げる意味で重要だったと思う。

まず、レッズの3バックは坪井×シェルミティー、ネネ×ベンディファラーとついて阿部が余る形を取ってた。その中でシェルミティーが左サイドに流れて坪井が引っ張り出されたのは上にも書いたとおり。結果として↓のような状況が出来上がる。

    阿 ネ・・・・・・・
坪     べ・・・・・・・ 
シェ      

で、この・・・・のところのスペースを狙って攻撃時にはWGとなったメリティが入ってくる。そうなれば、当然のように相馬は下がってメリティに対応せざるを得ない状況に陥ってしまった。だから、立ち上がりは4バックのような形になることが多かったし、左サイドからの攻撃はほとんど見られなかった。ちなみに立ち上がりにここまでの2戦のような中盤の守備が機能しなかったのも、相馬が4バックの一角になって中盤の枚数が減ったっていう要因が大きかった気がする。

これに対しての対応かは分からないけど、レッズはポジションを変えてきた。山田を右に出し、長谷部をトップ下、そして細貝をボランチの位置に下げた。このボランチの細貝の存在が相馬に積極性を取り戻させた気がする。それまではメリティの対応を気にして飛び出して行けなかった相馬が、積極的に攻撃に出て行けるようになった。そして、今度はメリティを相馬が押し込む状況が生まれた。

こうなったら今度はメリティが守備に回ることとなる。守備に回ったメリティは完全に相馬にマンマークについた。DFと中盤の守備の関係なんていうのは関係なしに、徹底的に相馬を見る形を取ってきた。

だから、相馬は前半はほとんど仕事をしていない。アシストシーンを見れば明らかなように、このシーンはメリティのミス。マンマークについてた選手が外れたわけだから、相馬はフリーになることができた。ただ、他のシーンではなかなかそういう場面は作れなかったと思う。要するに前半の両チームの得点はマンマークの守備側のミスによって生まれたってこと。

でも、相馬はメリティを引き付けてただけでも十分な仕事を果たしたと思う。なぜなら相手の守備の枚数を減らしたわけだから。メリティが普通の守備の役割から離脱したし、深い位置まで入ればメリティ1枚にするわけにも行かないからSBも引き付けることになった。

これで単純に残ったのは6枚。この6枚のつき方を考える。ワシントンには2枚をつけるとする。永井+トップ下+右WBの山田を1枚ずつ見れば計5枚。1つ下でボールの散らし役になった鈴木にも1枚は当ててたから、これで6枚。さらにここにメリティが押し込まれたことで守備の負担が軽減された細貝が上がってきたら、もうサヘルの守備陣はテンヤワンヤだった。

そもそも低い場所での守備がうまくないだけにサヘルの守備のバランスが崩れてしまうのはある意味では当たり前だったって言える。途中の時間はシェルミティが中盤に入ったりしてなんとか対応しようとしたけど、そうなると今度は後ろから坪井が出てくるシーンにつながってしまって効果的ではなかった。

数的なものは確かに単純計算ではあるけど、明らかにレッズの選手が浮いてくるシーンが目立ち始めた。そして、それがポジションチェンジによって生まれたのはここまで書いてきたとおり。こういう形の中でサヘルは思惑通りに試合を運べなくなったと思う。低い位置のDFと中盤のブロックで余裕を持って受けるんじゃなくて、なんとか跳ね返すイメージが強くなった。その中で前線との距離が遠くなるのは当たり前の部分だったかもしれない。

ちなみにレッズはポジションチェンジの後に守備のやり方もこれまでの2戦のような中盤でのよさが見られ始めた。今度はレッズが相手を押し込んだことによってサヘルの前線が足りない状況を作り出せたと思う。だから、それまでのようにサヘルの前線が3トップを組むような時間はあまり見られなくなった印象。結果として中盤の前への意識を高めることができたし、長谷部がトップ下に入ったのもよかったと思う。これ以降は鈴木とか細貝が高めの位置で相手のボールに当たりに行けるシーンが増えた。結果としてサヘルは狙い通りではないトップへのロングボールが増えることになった。

サヘルとしてはレッズの修正がやや遅れたのがよかったと思う。1失点はしたものの、それ以外はラストのところで跳ね返し続けた。まあ、レッズがラストを崩しきれない欠点も表れたとは思うけど。相手のバランスが完全に崩れてたのに決定的なシーンにつなげることができなかった。この点については攻撃での動きのなさが要因なのは今までも何度か書いてきてる通り。

とにかくサヘルはこの前半の状況を見て、後半は本来のやり方に戻してきた。つまり、フィルターを作って相手をブロック内に入れさせないようなもの。後半はFWと中盤の場所が明らかに高い位置になってたと思う。

ただ、このフィルターを作る形では相馬に対するマンマークはできなかった。中盤の1枚が相手につくことで減ってしまったら、1人1人が見るべき横幅が広がって隙間が多くなるから。それでは簡単に縦パスを通されてしまう。途中でメリティが下がったこともあって、後半は相馬が生きてくることが多くなった。2点目のFKも相馬のえぐりが相手のハンドを誘ったわけだし。

でも、相手のフィルターも強力だった。レッズは前半のように簡単にはボールを前線に運ぶことができなくなったと思う。1つ効果的だったのは1つ下の細貝が相手のDFと中盤の間に入り込むプレーだった。

とはいっても、やっぱり途中で引っ掛けられることが多くなったと思う。前半ほど敵ゴールに迫るシーンは作れなかった。それとともに守備をする時間も長くなった印象。でも、後半には中盤の守備がうまく機能してたし、そこから1つ入られてもそこはレッズの持ち場。相手は選手交代によってシェルミティーを本来の場所でプレーさせるように変更し、前線に入ってくる人数を増やしたけど、レッズは最後の人数かけブロックで跳ね返し続けた。

ちなみに交代出場の選手は左サイドを担当。上にも書いたようにシェルミティーが真ん中に押し出されて、ベンディファラーといい関係を築くシーンが多くなった。それにあわせて、レッズは坪井が完全につくって形じゃなくなった。結果として真ん中を起点に流れるシェルミティーが浮いてくるシーンが目立ってたと思う。そういう中でスピードを生かしながらシェルミティーがよさを見せた。

それに交代選手が左サイドに入ったことで、レッズは山田が守備に入るシーンが多くなったと思う。守備面ではしっかりと対応してたけど、前半の相馬が押し込まれたのと同じように山田は前線に出て行けなくなった。こういうこともレッズが前線に厚みを加えられなくなった要員の1つになったと思う。

こういう時間帯を過ぎると両チームとも全体が間延びして攻め合いの展開に。後ろの押し上げも期待できなかったから、両チームが個ベースの可能性の薄い攻撃をし合って時間が過ぎていった。で、結局2-2のまま試合終了しPKでレッズが3位。予想に反して点の取り合いになったけど、どちらもしっかりと組織ができてるときには失点しなかった。
サヘルはこの3試合でいろいろな守備の戦術を見せてくれた。フランス人監督らしい部分もあったけど、それに対応する柔軟性も素晴らしいものがあったと思う。

勝ったからよかったけど、レッズは攻守のセットプレーに悩まされた。
攻撃では1点にはつながったものの、ポンテの不在は大きかった気がする。今大会を通じて(レッズ)貴重なセットプレーでうまくチャンスにつなげられなかった。守備では半ばパワープレーっぽくベンディファラーに放り込んできた形のほとんどが危険なシーンにつながってる。こういうところの対応に冷や冷やさせられる後半だった。レッズはあまりセットプレーの練習をしないらしいけど、そういう部分も影響してるんじゃないかって気がした。

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2007-12-15 Sat 17:15
ミラン×セルティック
<ミラン:4-3-2-1>
FW:インザーギ
MF:セードルフ-カカ、アンブロジーニ-ピルロ-ガットゥーゾ
DF:ファバッリ-シミッチ-ボネーラ-カフー
GK:カラッツ

<セルティック:4-4-2>
FW:マクドナルド-Sブラウン
MF:ヤロシク-ドナーティ-ヤロシク、ハートリー
DF:オデイ-マクマナス-プレスリー-Gコールドウェル

uefaのサイトではセルティックの形は4-5-1で中盤を厚くした形と予想されてたけど、試合を見る限りではSブラウンを1つ押し出した4-4-2の形だったと思う。さらに中盤はハートリーを底に置いて、前に3枚を並べるダイヤモンド的な形を念頭に置いていた。ミランに主導権を握られて結局は深い位置に4-4が並ぶような状況になる時間が長かったけど、基本的な狙いは前への守備の意識が高いものだったように思う。

セルティックは守備の開始時にはまず自陣にしっかりと組織を作る。その上で2トップは1枚がボールに対して、もう1枚がピルロを見るっていう役割分担が行われてた。どちらがどちらの役割をするかはボールに場所によって変わる。

そして、中盤の前に入った3枚はボールを回しながら徐々に押し上げてくる相手最終ラインがある一定の場所に入ったところでブロックから飛び出してプレッシャーをかけて行った。特にミランの攻撃の組み立てで重要な役割を果たすSBに対してはしっかりと対応する意図が見られた。そうやってサイドにうまく起点を作らせずに、真ん中に戻したボールをFWとトップ下のドナーティが狙うやり方が見られたように思う。

この前線での起点つぶしはある程度は機能した。ピルロとSBっていう相手の攻撃のスタートとなる場所をつぶしたことで立ち上がりのミランはスムーズな攻撃の組み立てができてなかったと思う。

こういう守備のときに1つの懸念材料があるとすれば、それは1ボランチのハートリーの場所だった。単純な対応関係ではハートリー1枚でカカとセードルフの2枚を相手にしなければならない。ハートリー自身は自分のエリアに入ってきた選手のケアをしっかりとこなしてたけど、それでも数的に余ってしまう選手が出てくる可能性が十分にあった。

それでも前線で出し手に対してのプレッシャーが効いてるうちは大きな問題にはならなかった。中盤の前線がしっかりとフィルターとして機能することで、1ボランチのエリアにボール自体を入れさせなければいい。そういう意味では立ち上がりの時間はそれができてたって言える。

でも、時間とともにセルティックの方の怖さが先に出てきてしまったように思う。ちょうど前半の10分過ぎぐらいからその兆しが見られ始めた。カカとかセードルフの場所に対する怖さの方のケアに心が奪われてしまうことになった。特にドナーティは1つ下に入ってハートリーと2枚でボランチを組むようなシーンが増えてきた。それに両サイドが引っ張られたことでDF前に中盤の4枚がフラットに並ぶような形が目立ち始めたと思う。

この両サイドが引っ張られたのは真ん中に引っ張られたっていうセルティック自身の要因に加えて、ミランの攻撃の要因もあったように思う。それはアンブロジーニとガットゥーゾの存在だった。

ミランは上に書いたようなセルティックの守備によって、いつものようにSBを効果的に利用できない状況だった。それでも1度サイドを経由した組み立てを行うために1つ前のSMFの役割が大きくなったと思う。2人ともイメージよりも高い場所でのプレーが目立ってた。

その高い場所ってのはセルティックのSMFのウラの場所。真ん中を固める意識が強いセルティックの最終ラインだから、SBもサイドのサイドへのケアの役割はあまり求められてない。最終ラインから引っ張り出されて対応するなんてことはもっと見られなかった。

だから、ガットゥーゾだったりアンブロジーニだったりがサイドでボールを受けようとする(受ける)ならば、それに対応するのはセルティックのSMFの役割ってことになった。つまり2人がサイドの高い位置に入り込んでくると、セルティックのSMFは後ろに対する守備の意識を強くしなければならなくなった。結果として前線での前に対する意識が削られて、フラットな4のラインに入る時間が長くなったと思う。

チームとしてもセルティックが思惑通りの守備をしている時間にはサイドの使い方をいつもとは違う形にした。左右に動かして横幅を使うことで相手のブロックにギャップを作るってのがいつものやり方。今回は相手の中盤を押し下げるために、サイドから1つ前の同サイドに入れるボールが多くなったと思う。

とはいってもセルティックの守備だけを考えれば4-1-3-2が4-4-2になった問題は大きくはなかったと思う。攻撃を考えれば多くの人数が低い位置に入るから可能性は薄くなるけど、守備の安定感という意味では逆に増したっていう見方もできる。最近は書くことが多いけど、ミランは圧倒的にボールを持ちながらも、最後のアプローチができない。だから、その最後を固める方がミランとしては崩すのに手間取ると思う。

ここまでの流れは、ある意味ではレッズ戦と同じ(レッズ戦のが後だけど)。相手の守備の前への意識を削り陣地を増やして、後はどうやって崩そうかっていうところまで持っていった。
ちなみに、セルティックも完全に引きこもったわけではなかった。あくまでもベースにあったのは4-1-3-2で、ブロックに1つ入られた時点でみんなが戻って最後を固める形に変更した。前半は跳ね返すたびにしっかりと4-1-3-2に戻してたけど、後半は完全に引きこもりになる時間が圧倒的に増えた。この辺もレッズと同じイメージ。

とりあえず当面の注目はミランがどういうアプローチをしてくるかってことだった。相手の中盤を押し込んでSBもいつものように利用できるようになったわけだから、ミランがボールを保持する条件は揃ったっていえる。両サイドに起点を作りながら最後は真ん中を攻めるっていうミラン本来のやり方も時間とともに増えていった。

その中でこの試合で存在感を見せたのがセードルフだった。セードルフは中途半端な位置を動き回りながらタッチ数を増やす本来のプレーが見られた。この試合の後にあったレッズ戦から比べると格段に運動量が多かったと思う。

この試合でセードルフが好んで流れてきたのが4-4-2の4-2の間のところだった。スタートになる4-4の間ではなくて、そこから1つ下の4-2の間でボールを受けるシーンが増えた気がする。どちらかというと、そういう場所を基本としてたといってもいいかもしれない。セルティックの4-4-2の、4-4の間にいるカカと2と同じ位置にいるピルロとの間でのプレーで攻撃のリズムを作った。

この4-2の間にいるときにはピルロと似たようなボールの出し手としての役割が多くなったように思う。4-4の間よりも余裕を持ってボールを持てたから、その分見える場所が多くなった(いつも見える場所が多いんだけど)。相手にギャップがあれば思い切って縦にズバッといれるし、左右への展開も多くなったと思う。ピルロよりも1枚高い場所でピルロよりも自由にボールを扱えたから、よりゴールに近い場所により効果的なパスを送れた印象。

さらにそういう場所で受けてからボールを持って相手のブロックに仕掛けることも多くなった印象。ボールを受けたときにスペースがあることを利用してドリブルで仕掛けて行ったり、1つ前の選手との関係(ワン・ツーとか)で入り込んでいったり。ここでポイントだったのは1つ下から入ったことで前を向いた仕掛けが可能だったってことだった。サイドから斜めに切れ込むような形も目立ってたと思う。

こういう形で動き回ったことで、相手に簡単には捕まらないっていうメリットもあった。レッズ戦の前半みたいに真ん中で待っている形になってしまうと、相手としても対応しやすい。それが今回の試合では常に動き回りながらギャップギャップを渡り歩くセードルフらしい動きが見られたと思う。結果として本来の4-4の間でもうまくボールを触れて、受け手として、経由点としての役割も十分に担ってた印象。

このセードルフの動きの多さによって前線の蓋がなくなったような気がする。今回の試合では後で書くようにカカも真ん中にこだわらないプレーを見せた(前半にいくつか、後半にはたくさん)。結果としてトップ下の場所にうまくスペースを作ることができたし、相手の守備のバランスを崩すことにも成功したと思う。

セードルフにしろカカにしろ真ん中から動いたからといって完全にフリーにしていい選手ではない。だから、セルティックの守備陣はある程度引っ張り出されることになるわけだけど、そのときに最終ラインの真ん中堅めは崩したくなかった。だから、対応するのは中盤の選手ってことになった。

そうやって中盤の選手が引っ張り出されることでセルティックはDFと中盤のバランスが崩れてしまうことが多くなったと思う。人は多くいるのにDFだけが晒されてしまうような。そういう場所に対してミランの選手が次々に押し上げてきた。そうやって入ってくる選手に対応するセルティックの中盤はもはや本来の位置にはいないことが多かったわけだから。そういう中でセルティックは最後の最後で跳ね返すシーンが多くなった。

それに特徴的だったのがインザーギに対するくさびのパスが面白いように通ったこと。インザーギはウラ狙いのイメージが強いけど、この試合ではゴールに背中を向けてのプレーが案外目立った。これはいい形だったんじゃないかと思う。

トップが消えてしまう状況ではカカとかセードルフが縦パスを受けて相手のブロック内に起点を作るような役割も担わなければならない。そういうプレーもきっちりとこなすわけだけど、やっぱり魅力的なのは前を向いてのプレー。トップの落としを受ける形になれば、そういうシーンがもっと増えると思う。

それに縦パスを受ける役割があるからこそ、真ん中から動きにくくなってしまうっていう面もあるはず。相手のDFへの直接的な恐怖って言う意味でもFWがくさびを受けた方がプレッシャーを与えられると思う。インザーギはウラ抜けのイメージが強いだけに、DFとの駆け引きの中で1つ下がると相手の虚をつくことができるように思う。

この試合のミランは全体としてレッズ戦と比べると動きの多さとか積極性が見られた。セードルフの動きのよさとかガットゥーゾ、アンブロジーニの攻撃参加はここまで書いたとおり。さらにピルロも明らかにこっちの試合の方がコンディションがよさそうだった。相手もしっかりとケアしてたのにも関わらず、本来の展開力を存分に発揮。かなり目立った存在だったと思う。

そういう中でも前半はやっぱり最後のシーンを作るところまでは行かなかった。結局はボールを保持しても仕掛けられない状況が生まれてたと思う。その1つの要因が真ん中を崩していこうとする攻撃のやり方。セルティックの低い位置のブロックは圧倒的に真ん中を固める中で、そこを無理やりに崩していくのはどのチームでも難しかったんじゃないかと思う。

今回の試合に限って言えば、スタートのところのSB利用のイメージも薄かった気がする。たぶんそれは横のズラしをしなくても簡単に真ん中からボールを入れることができたから。それはここまで書いてきたようなセードルフの動きのよさとかもあって。もちろん外に展開することもあったけど、いつもと同じようにそれはあくまでも経由点の1つだった。最終的に真ん中を使うためのサイド利用っていうイメージが強かったと思う。

それが後半になって一転した。最後のアプローチにサイドを使うようになった。それまではスタートの1/3もしくは2/3の位置でのサイド利用だったのに対して、後半はラストの1/3のところで徹底してサイドにボールを入れた印象。途中からは完全に右サイドに照準を合わせてたけど、後半の立ち上がりは左右のサイドを効果的に活用してた。

このサイド利用にはセルティックの守備のやり方が関係してたと思う。セルティックは1つブロックに仕掛けられると、最後の真ん中のところを完全に固める守備をする。それに伴って、上にもちょっと書いた通り、最終ラインの4枚は真ん中に凝縮して守るやり方を取っていた。だから、必然的にサイドの深い場所にはスペースが空くことになった。

それでも前半はそこがあまり目立たなかったのは、ミランがその場所を使う意識がなかったから。チームのやり方とかボールの動きとしてもそうだし、配置的にもSMFのガットゥーゾもアンブロジーニも最終的には真ん中の厚みを加える場所に入っていった。SBの攻撃参加はあったとしてもそこはSMFの対応でなんとかなった。

それでも前半の途中からカカがそのスペースに気づき始めた。真ん中ではボールがもらえなかったってのもあっただろうけど、サイドに流れるプレーが徐々に増え始めたと思う。でも、この時点では周囲との関係でサイドを狙うところまでは発展しなかった。カカ1枚の流れなら、ハートリーを中心として中盤の選手がそのままついていくことで対応ができてたと思う。

そのサイドのギャップに対して後半のミランはチームとして使う意図を見せてきた。SBを高い位置に上げ相手の両サイドのスペースに入り込ませた。同時に中盤の選手をサイドに流す意図が見られたと思う。前半からサイド流れが見られてたカカはもちろん、前半は4-2の間の場所を中心としてたセードルフも、後半はサイドに流れることが多くなった。

一方のサイドならなんとか対応できたかもしれないセルティックだけど、両サイドのスペースを見るのは不可能だった。だからと言って、SBを開かせたら完全にミランの思惑通りになってしまうわけで。セルティックは効果的な対処法を見つけられないままに時間が過ぎていってしまった気がする。結果、ミランが好き放題にやり始めた。

ミランのやり方は普段の組み立てを相手のペナルティーエリア近くでやるような質のもの。両サイドをワイドに使いながらボールを回す中で、後ろからの攻撃参加も加速した。当然のようにピルロもかなり高い位置に入ってきてボールを扱うシーンが多くなった。

そういう位置でピルロが経由点になりながら、相手の最後に固めたブロックをあざ笑うかのように、その前をミランのボールが何度も行き来した。深い位置での左右の幅を目一杯使ったミランのアプローチに対してセルティックはボールの取り所を定められなかったと思う。

でも、このサイドのケアを下手にしようとしなかったのはある意味では成功だった気がする。真ん中を空けなかったことで最後の最後でなんとか跳ね返す状況は保てたと思う。でもミランは前半に比べれば明らかにセルティックのゴールに近づいていった。

ミランとしては途中でセルティックはサイドのケアをする気がないってことを悟ったかもしれない。だから、左右を使う必要はなくなった。セルティックの守備陣の薄いところを突くために左右の展開を織り交ぜたけど、片方のサイドからでも複数枚をかければ突破は難しくなかった。セルティックはサイドの守備に厚みを加える意図が薄かったわけだから。

その中で選ばれたのが右サイドだった。後半はカカが右サイド寄りのプレーを増やしてたし、何よりもカフーの攻撃が参加が超活発。一番深いところまでえぐるシーンが何度も見られた。そして、この2人の関係からの得点。カフーがギリギリまで深い位置に行ったことで、セルティックの選手はそれまで抑えてた真ん中のところを完全に離してしまったシーンだった。

後半はこういう流れの中でほとんど攻撃のチャンスをつかめなったセルティックだけど、前半はそれなりに相手ゴールに迫るシーンもあった。そして、そのほとんどが守備からの切り替えの流れだったと思う。

上にも書いたようにこの試合のミランはガットゥーゾとアンブロジーニの攻撃面での役割が目立った。逆に2人が攻撃の意図を強く持ったことによって、奪われた後のケアがおろそかになるシーンが目立ったのも確かだったと思う。1度高い位置での切り替えで遅らせれば問題ないけど、そこを抜け出されると一気に縦に持っていかれるシーンが多くなった。セルティックの選手も奪った後の落ち着きがあって、最初の守備は抜け出せてたから、案外そういうシーンが増えた気がする。

その割りにカウンターの流れで迫力がなかったのはセルティックの後ろからの押し上げが遅かったから。というよりも、後ろが押し上げる意図自体がなかったと思う。だから、基本は個に任せた攻撃を繰り出すしかなかった。

ちなみにセルティックの攻撃で可能性を感じさせたのは、このカウンターの流れだけだったって言っていい。ミランが組織を作ったら、ほとんど何もできなかった。むしろボールを保持してしまうと、ミランの守備の内容がよかっただけに、途中で引っ掛けられて一気に持ち込まれる危険性の方が強かった気がする。

そのミランの守備。この試合でも4-4-1-1ではなくて4-3-2-1の形で組織を作ることによって、前線から戦術的に追い込むやり方が見られた。

ボールに対して特別プレッシャーに行くわけじゃないけど、コースを切りながら徐々に近づいていく。その中で相手の選択肢を段々と削っていくシーンが多くなった。段々と限定しながら全体の守備組織を押し上げていって、相手をどんどんと自陣深くまで押し戻していった。その中でもちろん次のところはしっかりと狙ってるから、高い位置で効果的に奪えるシーンがかなり多くなった。

そういう意味では守備における前への意識が強まってたとも言える。最終ラインが高い位置を保ちながら前線を前に押し出してた(それが結果的にセルティックの一番のチャンスにもつながってる)。

その中で目立ってたのがガットゥーゾとアンブロジーニの役割。相手のSBに対してFWの位置にまで出てアプローチを仕掛けるシーンが目立った。このときにちょっと気になったのがアンブロジーニのサイド。ガットゥーゾのサイドはガットゥーゾが引っ張り出されたときに、1つ下のカフー適切なポジションを取って連動きてるシーンが目立ったけど、アンブロジーニのサイドはそういう連動性がイマイチだった。結果としてアンブロジーニが引っ張り出されたっていう結果だけがギャップとして残ったと思う。セルティックが組織を作ったミランブロックに入れたのは、その1つのギャップの場所だけだったような気がする。

セルティックは敗れたものの、もう1試合の結果でGL突破が決定。今期もホームで奪った勝ち点9だけでの突破になった。個人的には初戦を見て興味を持ったシャフタールが決勝TどころかUEFAカップ回りも逃したのが残念だった。

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2007-12-14 Fri 00:56
レッズ×ミラン
<レッズ:3-5-2>
FW:永井-ワシントン
MF:長谷部、相馬-阿部-鈴木-細貝
DF:ネネ-トゥーリオ-坪井
GK:都築

<ミラン:4-3-2-1>
FW:ジラルディーノ
MF:セードルフ-カカ、アンブロジーニ-ピルロ-ガットゥーゾ
DF:ヤンクロフスキ-カラーゼ-ネスタ-オッド
GK:ジーダ

レッズはミランだからっていう特別なやり方をしてこなかった。事前には5-3-1-1でキーになる相手選手に対するマークをはっきりすることで相手の攻撃を停滞させる方法を提案したわけだけど、そんな意図は全く見られなかった。あくまでも素晴らしかったセパハン戦の内容をそのまま体現しようっていう意識が強く見られた立ち上がりの時間帯だった。

結果的にはミランの攻撃のアプローチによって5-3(5-2)の人数をかけたブロックで最後を固めるような時間も長くなったけど、これにしたってシーズン最後のレッズとは全く違ってたように思う。あくまでも5-3(5-2)は相手の攻撃によって仕方なく作られたブロックであって、本来やりたいのはブロックのバランスを取ったやり方だっていう意識が見られたと思う。だから、5-3のブロックをそのまま維持せずに守備でボールを跳ね返したり、相手がボールを下げたりしたら、しっかりと押し上げを図ってバランスの回復に努めたと思う。5-3(5-2)の状態から抜け出せなくなる悪循環はほとんど見られなかった印象。

とはいっても実際に試合の主導権を握ったのはやっぱりミラン。結局はある意味では予想通りに展開になった。圧倒的な保持力はあるけど最後の崩しがうまくないミランと、相手に圧倒的に保持されても最後のブロックが恐ろしく堅いレッズ。どちらもシュート数が少なくなるのはある意味では必然だったように思う。

立ち上がりは最初に書いたようにレッズはセパハン戦と同じような意図を持ったままに試合に入った。攻守に渡って積極的な姿勢が見られて、この時間はレッズのペースと言ってもいいような内容だった気がする。

攻撃では予想以上に前に人数をかけたやり方が見て取れたと思う。これは守備において深い位置まで押し込まれなかったのが大きかったわけだけど。中盤の選手(特に両サイドWB)が攻撃の切り替えですぐに前線と絡めるような場所で守備をしてたのがよかった点だったと思う。そのサイドに起点を作りながらうまく相手のブロックに仕掛けるシーンが目立った。

そのサイドの起点についてはこの試合では右の細貝が大きな役割を担ってた。これに関しては前回の試合でいいプレーを見せた相馬を生かすために1度右サイドを経由させる意図があったように思う。

今までも何度か書いたことがあるし、今回の試合でもそうだったけどミランはボールサイドに人を偏らせるような守備が見られる。特に今回は4-4-1-1ではなくて、はっきりとした4-3-2-1の形を取ってきたから、より高い位置でボールを奪おうとする姿勢が見られたと思う。上での限定に対して、中盤で奪う意図が強くなった印象。だから、レッズの中盤に入ったボールに対しては人数をかけて孤立させようとする。特にサイドではSBも絡ませながら数的優位を作って奪おうとする姿勢が見て取れた。

これを考えたときに右サイドに細貝に1つ起点を作る意味が見えてくると思う。右の細貝を1度使うことで相手をそのサイドに集めることができる。そのときにミランは4-3なら4-3の関係性を保ったままに全体を動かすやり方を取るから、結果として逆サイドにスペースが生まれることになった。そして、右サイドから左の相馬へのサイドチェンジが多くなったと思う。そして、その相馬のサイドを利用して攻撃に深みを加えるシーンが目立った。

このときに相手もサイドで奪いに来てる訳だから、細貝が保持時間を長くしたり強引に仕掛けたりしたら止められてしまう可能性が高かったと思う。だから、細貝はここではボランチとかの助けもかりながらあくまでも起点の役割を担うことが多かった。で、起点としての役割をこなしてしっかりとボールを展開してから自身が前線に上がることが多かったと思う。

この大きな展開に関しては右→左の質だけに限らずいい形につながることが多かった。ただ、だんだんと前線に人数をかけられなくなって出し所がなくなったから時間とともに減少していってしまったけど。

立ち上がりのいい時間に関してはワシントンと永井の縦の関係も興味深かった。これまでは前線で待つワシントンと中盤に降りてくることが多い永井の縦関係ってのが多く見られたと思うけど、今回の試合の立ち上がりは逆の関係になってることが多かったと思う。中盤の中途半端な位置に下がって1度ボールを当てられるワシントンとその前で狙う永井の関係。意図はイマイチ分からなかったけど(ワシントンへのマークがかなり厳しかったから降りてきた?)、面白い関係が築けてた。この関係に長谷部がうまく動き回って絡むシーンも見られたと思う。

こういう感じで立ち上がりに曲がりなりにも攻撃の形を作れたのは、何度も書くように守備のバランスがよかったから。そもそも攻撃に人数をかけられてる時間は攻撃後の切り替えのよさでかなり相手を苦しめることができてた印象。前回の試合でも見られたように鈴木が守備のスタートとしてかなり高い位置でボールに激しいプレッシャーをかけて行った。そこに周囲が連動してきたから、その後のところで奪えることが多かったし、ミランの攻撃を1度横に逃がせてたと思う。結果ミランの攻撃の1つのパターンである縦へのスピードは完全に封じることができてた。

こういう切り替えのよさでは前線からガツガツと守備に行ったけど、基本は1度組織を作ってからはじめることが多かったと思う。前回と同じように3-4-3のブロックが作れて中盤の前への意識が強くなってた。だから、最後のところまで押し込まれることが少なくてバランスが崩れないままに効果的にボールを奪えるシーンが多かった。

この組織作りの中での1つの注目点だった相手の個への対応だけど、特別な対応関係はとってこなかった。そのときに一番対応しやすい場所にいる選手が対応するようなイメージ。その中で相手を自由にさせない守備が見られたと思う。

だから、逆に言えば相手が基本ポジションをあまり崩さないような場所では必然的に対応関係が築かれることも多かった。例えばピルロへの対応。ボールが入る前段階では永井が見て、そのコースを簡単には使わせないような対応をして、ボールが入った後は鈴木がアプローチに行くことが多かったと思う。ガットゥーゾの上がりに対しては長谷部がしっかりとついて戻る場面も多かった。それに、相手のSB×WBの対応関係も必然的に生まれてたと思う。

この中で相手SBへの対応にはある意味ではレッズらしくない(前回のセパハン戦を見ると、らしくないこともない)守備における積極性が見られた。相手最終ラインでボールを持つSBに対して、レッズのWBがFW的な場所まで上がって対応するシーンが目立ってた気がする。引きこもりではないってのがここを見ても分かったと思う。ちなみに、そのときに逆サイドのWBが1つ下がったポジションを取ることでうまくバランスを保持してた。

こんな感じで中盤の守備の前への意識の高さが目立った。前のボールに対して積極的にアプローチができたことで相手のスタートのところを自由にさせない守備が出きてた印象。結果としてミランはスムーズな組み立てがなかなかできてなかったように思う。

こういう中盤の前への意識はセパハン戦でも見られた部分である程度計算できたのも事実だった。事前の記事にも書いたように今回の懸念はその前への意識と後ろとのギャップのところ。その間に入り込んでくるセードルフだったりカカだったりに対する対応をどうするのかってことだったと思う。

この2人に対する対応も特別に誰かを当てるっていうやり方は取ってなかった。上にも書いたように一番対応しやすい選手が対応するっていうようなイメージが強かったように思う。だから、ミランの後ろの選手がその2人にボールを出そうとする時点ではある程度は浮いてる存在になることが多い。前回のセパハン戦と同じようにレッズのDFと中盤の間はキチキチに狭めてたわけではなかったから、入れようと思えば入れられたし2人が仕事をするスペースもあった。ように相手にとっては見えたんだと思う。

でも、基本的に2人とも実際には決定的な仕事はできなかった(あくまでもレッズのバランスが取れてる時間は)。前のプレッシャーによる限定も働いて、ボールが入った瞬間にレッズの選手が距離を詰める対応が目立った。結果として2人が仕事をするスペースを完全に消してしまったし、そもそも前を向かせなかったと思う。

本当はレッズの狙いとしてはそこで1つ遅らせたところに周囲を連動させてすぐに囲い込むこと。DFの1枚が相手の背中に当たって前を向かせず、中盤と一緒に挟み込もうとするシーンが多くなった。このときの挟み込みには阿部が参加することが多かったから、前の鈴木と後ろの阿部の役割分担がある程度できてたかもしれない。

ただ、ここではセードルフとカカが上手だった。挟み込まれる前にシンプルに次の展開をすることが多くなったと思う。とはいっても後ろに下げることが多くなったから、レッズとしては最低限の守備はできてたって言ってよかったと思う。

ただ、このカカとかセードルフへの縦パス→仕掛けずに簡単に戻すってのもミランにとってはレッズへのアプローチの一環だったと思う。ミランも自分たちのやり方を繰り返す中でレッズの守備ブロックのバランスを崩そうとする姿勢は見て取れた。

まずカカとかセードルフへの縦パスは縦への揺さぶり。1度当てて戻すっていうやり方を繰り返す中でレッズのブロックの縦の関係性のバランスを崩そうと意図してたと思う。2人に入った時点でDFから選手が引っ張り出されて最終ラインのバランスが崩れるし、中盤の選手の前への意識も軽減させようとした。

ただ、こういう縦へのアプローチは普段のミランよりも多かった気がする。それはいつもは相手がDFと中盤の間のスペースを完全につぶしてくることが多いからだと思う。もしくはカカとかセードルフにしっかりとマークをつけてくるとか。だから2人とも下がってタッチしたり、サイドに流れてボールを受けたりってことが多くなる。そういう相手の守備をかいくぐって、セードルフなんかがギャップに入って受けることもあるけど。

だからここでも何度も書いてきたようにミランの攻撃のアプローチは横への質が多くなる。SBを上げてサイド一杯を使わせることでうまく横を広く使いながら攻撃に厚みを加えてくやり方。今回の試合でも立ち上がりにレッズがピルロを完全に空けてしまったときに、左右の展開を繰り返しながら深い位置まで入ってくる場面が見られたと思う。

こういう基本的には横と縦へのアプローチによって段々とレッズの守備のバランスが崩れていくはずだった。少なくとも個人的にはミランが主導権を握るまでにちょっと時間がかかりすぎてたように感じた。レッズの守備のよさがあったのは確かだけど、もっとスムーズにミランが陣地を増やしていく状況をイメージしてた。

これを象徴するかのようにミランの圧倒的なチームとしてのボールキープもなりを潜めた。その要因は前半の嘘みたいなミスの多さだったように思う。パス回しの中で明らかなミスが目立って、途中で切れてしまうことが多くなった。結果として流れがぶつ切りになってうまくペースを握れなかったように思う。

この状況が痛かったのは前線に厚みを加えられない状況に陥ったから。本来はチームとしてボールを保持しながらジワジワと敵陣に入り込んでいくのがミランのやり方。そのときに横とか縦のアプローチを利用するのはここまで書いたとおり。それが、今回の試合はボール保持が途切れてしまうことが多くて前線に人数をかけられない状況が生まれてたように思う。

だから、レッズとしてはブロックのバランスを崩される脅威があまりなかった。カカとかセードルフに怖さがあるのは当然だけど、逆に言えばそこだけを抑えて置けばよかった。中盤の選手が前のボールへの意識を強く持ったとしても、後ろは十分に人が足りてる状況だったから。結果としてレッズの3-4-3が予想以上に長い時間維持できてたと思う。

でも、ミランもこの状況で停滞してはいなかった。時間とともにミスの数が減少して行き、前半の30分前後の時間にはいつのまにか敵陣の半分ぐらいまでの場所を自分たちの陣地として確保してた印象。しっかりとチームとしてのキープが機能したことでガットゥーゾだったりアンブロジーニだったりが前線に入ってくる回数も多くなった。この辺についてはもしかしたら立ち上がりはリスクを犯さないために自重してた面があったかもしれない。そもそも後ろの人数を見ても全体を通してリスクを犯さないような戦いをしたかもしれない。

とにかく前線に人数を入れることで相手を押し込むシーンが多くなった。次々とDF前のところに入られてきたら、レッズの中盤の選手としてもそういう選手を見なければいけなくなる。結果として前へのプレッシャーが弱まり、さらに深い位置まで押し込まれる要因ができあがった。ミランとしては前線に厚みを加える→相手を押し込む→さらに後ろから出てこれる→…っていういい循環が生まれてた印象。

ただ、前半はそこまで圧倒的にミランが流れをつかむ展開にはならなかった気がする。オッドが完全に試合の流れに乗り切れてなかったし、何よりも前線の選手が効果的にボールに絡めなかった。ジラルディーノはいつものこととしても、セードルフとかカカの効果的なボールタッチがほとんどなかったような気がする。あえて言えばカウンターの流れのカカ→セードルフぐらいだった。

対して後半は2人が有機的に攻撃に絡むシーンが目立ち始めた。特にセードルフは明らかに運動量が上がったように思う。前半のセードルフはいつものプレーに比べるとかなり不満だった。いつもなら低い位置に降りてきての組み立てから、トップ下の位置でうまくギャップに入って1つ収めるプレー、さらにトップの位置まで飛び出してくるプレーがもっとあるはず。それが今回の試合の前半はほとんどが基本ポジションで待っていることが多くなった。結果としてレッズとしても対応しやすい状況が生まれてたし、これだとカカとスペースをつぶしあって効果的ではなかった気がする。

対して後半のセードルフは動きが活性化した。むしろ時間とともに運動量が増えてきたんじゃないかと思うぐらいだった。

まず後半の立ち上がりは右サイドに流れてボールを受けるシーンが多くなったように思う。ミスが多かったり上がりのタイミングが悪かったりと、あまりにも試合の流れに乗り切れてない(ミスが多い&上がりのタイミングが)オッドをフォローする(もしくは見切りをつけた)ためか。そのセードルフからのクロスが増えたことで前半よりもゴールに近いところにボールを入れられるシーンが増えた。

セードルフがサイドに出たことでレッズの1つのキーになってた相馬が押し込まれることになった。結果として攻撃の選択肢が削られることとなった。同時に守備面ではもともと守備では低めの位置に入ることが多かった右の細貝も含めて5バックに近づいてしまったような気がする。

さらにセードルフの動きによって真ん中の攻撃も活性化した。前半はセードルフとカカが真ん中にいることである意味では蓋になってしまう状況だったっていえる。それが、セードルフの動きによって後ろが出てくるような余地が生まれることとなった。だから、前半よりもゴールに向かった飛び出しが多くなったと思う。

レッズとしてはそれに合わせる中でかなり低い位置に人数が入れられてしまった。まずは長谷部が戻ったことで純粋な5-3に。さらに後半は永井までもが相手の後ろの飛び出しに対して、引きずりおろされる時間が長くなったと思う。結果として5-4--1のブロックができあがり、ワシントンが完全に前線に孤立してしまうことになった。前半から守備から攻撃への切り替えが微妙に遅かったのが気になってたけど、それも含めて守備からの切り替えがスムーズに行かなくなってしまったと思う。

このセードルフが動いたサイドってのは1つのポイントになったと思う。セードルフ自身はサイドに出たことで真ん中よりも前を向いてボールを持てる場面が多くなった。それに横の動きを加えたことで相手に捕まりにくい状況も生まれたと思う。ウラに抜け出した決定的なシーンも(ここは真ん中→真ん中の流れだったけど)捕まりにくさが要因になってた気がする。逆に前半には捕まりやすかったわけだから、後半は本来の動きに近づいたって考えればよさそう。

得点シーンもカカがサイドに出たシーンだった。サイドに流れることのメリットは相手が複数の対応をしにくいこと。それはレッズのシステム上仕方のないことだった。得点シーンでもカカは坪井を振り切ってクロスを上げたシーンだった。

ちなみにこのシーンはミランの早いリスタートも1×1ができた要因ではあったけど。レッズは攻撃後の流れだったこともあって、後ろに人数が足りてなかった。DFがインザーギの動きに引きずられたときに、1つ後ろにいたセードルフが完全にフリー。中盤が戻りきれずにDFだけの守備になったのが痛かった。

なんにしてもやっぱり3バックの相手を崩すためにサイドをもっと利用してもよかった気がする。事前の記事にも書いたとおり、ミランがサイドを中心に攻めるってことはあまり考えられなかったわけだけど。それでもカカとかセードルフがサイドに流れるシーンは特に前半はいつもよりも少なかった気がする。それだけ真ん中のところに居心地に入り込む余地があったってことなのか?それとも運動量の問題なのか?どちらにしても真ん中ではレッズがしっかりと抑えていたのだけは確かだった。1×1を作れば能力的に上回ってるんだから、サイドに流れてからの仕掛けってのもバリエーションとしてはありえた気がする。

得点を奪った後のミランは強かった。これまでも書いてきたとおり、チームとしてのキープ力があるからレッズはボール自体を持たせてもらえない。ミランとしてはボールを自分たちが保持してる間は全く怖さはないわけだから。

それに守備の安定感もさすがだった。これは前半から言えたことだけど、最後の時間は守りに入るときの4-4-1-1にして最後を固めるしたたかさ。レッズは4-4-1-1の守備に対してある程度までボールを運べたし、それに伴って後ろからの飛び出しも活性化したけど、最後のところはやらせてもらえなかった。やっぱり真ん中からの単純な攻撃は跳ね返されてしまう印象。ミランの弱点になるサイドからのクロスをもっと多用したかったところ。

そのミランの守備は試合全体を通して要所要所を押さえる意図が強かったように思う。完全な4-3-2-1の形を取ってきたこともあって、前線からの能動的な守備が見られる時間もあったけど、基本は相手が来たところを奪うイメージが強かった。とはいっても、守備が必要だったのは前半の一部の時間だったわけだけど。

要所要所ってのはレッズの攻撃の核になるようなところ。まずワシントンは絶対的に押さえることがはっきりしてた。入りどころを狙って1タッチ目から自由にさせない意図が見られた。逆に言えばボールがしっかりと入ってしまえば、ミランの守備陣といえども複数での対応を余儀なくされてたから、あらためてワシントンのすごさを認識。それからサイドに対する対応も気を使ってたように思う。相馬に対してはガットゥーゾとオッドが複数で対応するシーンが目立った。

こういうレッズの攻撃の重要ポイントはもちろんだけど、ミランの守備は自陣に入ってきたボールに対してしっかりとチェックに行くっていう基本的なやり方をベースにしてたと思う。だから、レッズと似たような部分もあった。

ただ、レッズと違ったのはその1つ1つのチェックのところで常に奪うことを念頭に置くこと。これはレッズの守備が悪いってことじゃなくて、現状ではどうしようもない個の力差。例えばレッズはカカとかセードルフに対して1×1なら最低限仕事をさせないことで精一杯。対して攻撃では相手の守備に対して1×1で破るのはかなり難しかった。

それでも可能性を感じさせてくれる試合内容だった。結果を見ても分かるとおり、個での勝負では負けてもチームとしては大きな差が生まれなかった。もちろん主導権を圧倒的に握ったのはミランだってことは認めるけど。

レッズは事前の記事に書いたような×ミラン用の戦術ではなくて自分たちのやり方で勝負した。そして、それはかなりの部分で通用した。見方によってはまだまだ世界との差は大きいと感じる人もいるんだろうけど、ここまでミランの試合もレッズの試合もバラバラに見てきた自分としては、予想以上にレッズはやれたという印象が強い。

でも、勝てる可能性までは感じさせなかったのも事実だったわけだけど。その辺はそう簡単には埋まらない力差を感じた。何しろミランはガットゥーゾにしろアンブロジーニが目立ってない。自分たちの与えられた仕事はこなしつつも(ガットゥーゾは相馬への対応、アンブロジーニはワシントンの対応とか)他のところまで出て行かなければならないシーンは少なかった。いい意味で2人の守備の貢献度が低かった。

今回の試合も最少得点差での決着。決勝も3位決定戦も大差がつくゲームにはならないと思う。どちらもこれまでと同じような展開になるだろうと思う。ボカは守備がうまいけど攻撃が下手。対するミランは今回の試合を見ても分かるとおり最後を崩す力がない。3位決定戦も同じ。守備の大会になるだろうという想定は基本的には外れてなかった。

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2007-12-13 Thu 10:02
レッズがミランと好勝負を演ずるために
逆説的だけど、セパハン戦のいいイメージは捨てた方がいいかもしれない。要するにリーグ終盤の悪い内容のサッカーをコンディションのいいメンバーでやればいいんじゃないかってこと。

前回のメンバーと同じだとして、守備のベースになるのは5-3のべた引き守備。ここで中盤が3になるのがポイント。守備だけを考えればポンテじゃなくて長谷部が入ることで中盤の3の守備が計算できる。

サイドに関してはミランはSBを上げてくるだろうけど最終的には真ん中を崩そうとするだろうから、ある程度はルーズでいい。重要になってくる真ん中は長谷部-鈴木-阿部で完全に固める。究極的にセードルフとカカにほぼマンマークで2枚を当ててもいいかもしれない。 残りの1枚がアンブロジーニとかガットゥーゾの飛び出しをケアする。んで、キーになるピルロは1枚降りの永井を当てる。

この守備のやり方によってミラン特有のFWが消える状況が生まれるはず。人数をかけたブロックで最後を固めればジラルディーノはボールを触れない。 ボールを触れないジラルディーノは怖くない。 インザーギが出てきたとしても、べた引き5バックにウラのスペースなんてありえない。 結果、仕事ができない。 ケアすべきはミドルシュートのみ。

ちなみにセパハン戦のいい内容の守備ではミラン相手では危険な気がする。 前に書いたように、前への意識が強いMFと人につく意識が強いDFの間にスペースができてしまっていた。結果的にはセパハンはそこをうまく使えなかったし、レッズの中盤の守備の質が良かったからピンチにはつながらなかったわけだけど。

ミラン相手じゃ中盤のチェックを簡単にいなされる可能性が十分にある。そして、セパハンとは違ってDFと中盤の間のスペースはカカとかセードルフが存分に利用してくるはず。 結果としてDFだけが晒されるピンチにつながりそうな予感。

ただ、最初の提案に致命的な問題があるのも事実。守備だけを考えるならばうまく行く可能性はあるけど、攻撃は全く期待できない。システム的には5-3-1-1で前線にはワシントンしか残らない状況も十分に考えられる。ポンテがいないことを考えても攻撃のチャンスは無の可能性まで出てくる。

そういう意味では現実味は薄いかもしれない。でも、対ミラン戦術を取るならば1トップにして中盤を厚くするぐらいの対応策は必要になってくるかもしれない。逆にミラン関係なく自分たちのサッカーをやるっていうならそれはそれで興味深い。少なくともセパハン戦のサッカーができるなら力を試してみる価値はあると思う。

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2007-12-12 Wed 23:51
エトワール・サヘル×ボカ
<ボカ:4-4-2>
FW:パレルモ-パラシオ
MF:バネガ-カルドーソ-バダグリア、バルガス
DF:モレル-マイダナ-パレッタ-イバラ
GK:カランタ

両チームの守備の内容のよさが光った。組織の作り方に違いはあるものの、どちらも個々の基本的な守備の仕事を組織に還元することで相手の攻撃を分断させるような守備ができてたように思う。今大会は守備のチームが集まったってことをこれまでも何度か書いてきたけど、今回の試合ではそれを再認識させられた。

両チームの守備の根本にあるのは相手のボールに対する忠実なチェック。後で書くようにその忠実なチェックをどこから始めるかの違いはあったものの、自分たちの守備の開始地点に入ってきたときには1つ1つのチェックを両チームの全選手がサボらずに繰り返した。

そして、特筆すべきはこのチェックに対する2つめ以降の連動性だったように思う。これも両チームに共通して言えたことだったわけだけど。最初のチェックに対して、周囲の選手がすぐに適切なポジションに入る。この連動した周囲のポジショニングが素晴らしかったと思う。

この最初のチェックと周囲のポジショニングによってだんだんと相手のコースを限定していく。そうやって徐々に狭いところ狭いところに追い込むやり方が見られたと思う。そして、相手の選択肢がほとんどなくなったところで複数の関係で囲い込み完全に選択肢をゼロに。そうやって効果的に奪うシーンが両チームともかなり多くなった印象。

組織作りについてはサヘルの方は前回のパチューカ戦と同じような考え方だったと思う。今回は基本的には試合中の微妙な変化を加えずに、一貫して4-2-3-1の組織での守備が見られた。トップを1枚にすることによって、そのあたりをはっきりさせてきてた印象。

その4-2-3-1のうち、トップのシェルミティだけを敵陣のチェイスに残し、残りは自陣に入っての守備。注目の中盤のブロックは2列目の3枚をハーフェイライン付近に並べることが基本となってた。そして、ボールを奪われた後にはまずこの4-2-3-1を作ることを意識した素早い切り替えが目立った印象。前半は攻撃に効果的に人数をかける時間もあったけど、そういうときに奪われた後にも守備の組織作りの速さは目立った。

この4-2-3-1の組織を作ったとしてもその組織で完全に受身にやるようなことはなかった。前回は組織を1度作ったら敵陣のボールにはあまり守備をせずに、あくまでも自分たちの組織のバランスを保つことが重視されてたように思う。フィルターのフィルターとしての役割を崩さないために2列目の4もしくは3は横並びでバランスを取る時間が長かった。そして、その最初のフィルターの存在が相手の攻撃を停滞させた要因になってたと思う。

ただ、同時に相手にポゼッションを握られたのも事実だった。確かに危ない場所に入られることは少なかったけど、守備を捨てた敵陣では自由にボールを持たれていた。そして、相手はサヘルのフィルターを怖がってなかなか縦パスを入れてこない。守備だけを考えれば成功だろうけど、ボールを奪うには相手の出方が重要になるってことでかなり完全に受身の体制だったって言っていい。だから、攻撃へのつながりの守備という意味ではあまり効果的なやり方とは言えなかった。

それに対してパチューカ戦の後半ではサヘルは前への意識を強くしだした。敵陣のボールに対しても前半に比べて明らかにプレッシャーに行くことが多くなったと思う。そして、今回のボカ戦では前半からそういう守備における積極性が垣間見られた印象。

チームのレベルとしてはボカ>パチューカだろうから、これは面白いアプローチだったような気がする。もしかしたらポジショニングだけで相手の攻撃を防ぐっていうやり方はボカには通用しないっていう考えもあったかもしれないけど。とにかく、今回の試合では前への守備の意識がかなり目立った。

そのスタートとなるのがトップのシェルミティ。上に書いたように敵陣で積極的にボールを追いかける姿勢が見て取れた。この最初のチェイス自体が前回よりも前への意識を感じさせた。前回はシェルミティ自身がフィルターの一部に入ったり、もしくは守備を免除されてたりってことで積極的なボールのアプローチが見られなかったから。

この最初のチェイスである程度相手の攻撃の最初のコースが限定された。とは言っても1枚だけだから、最前線で奪うまでにはなかなかつながらなかったけど。だから、本格的な守備は実質的に2列目から始まることになった。

トップのシェルミティのチェイスによって相手の最終ラインからのパスは限定された。だから、2列目の選手は1つ前に入ったときにすぐに近づく対応ができてたと思う。これが絶対的に前回の試合とは変わった部分だった印象。

     ○
AAAAAAAAAAA
 ○  ○  ○
BBBBBBBBBBBB
   ○  ○

前回の試合でのサヘルの守備の狙いはAのゾーンからBのゾーンに入り込む縦パスを狙うこと。狙うというよりは、2列目のフィルターによってBのゾーンには入れさせないっていう狙いが強かったわけだけど。その中ではAのゾーンの相手のボール保持者はほとんどの場合で自由にしていた。

それが今回はAのゾーンの相手ボール保持者に対して2列目の選手が組織から飛び出してきての対応が目立った。シェルミティがパスコースを限定させ、Aのゾーンにパスが出た瞬間に2列目の選手がチェックに行くシーンが多くなったと思う。そういう意味で今回は2列目の選手のフィルターの役割は薄かったように感じた。

そして、そのチェックに対する2つめ以降の対応は上にも書いたとおり。1つ目のチェックに対してすぐに周囲がポジションを動かすことで相手の選択肢を制限して、だんだんと追い込んでいった。そして、最終的には相手の個を分断させて複数で囲い込んで奪うことができたと思う。

この前線からの限定は後ろの守備にもいい影響を及ぼした。前回は2列目のフィルターによって相手のBのゾーンに侵入させないことはできたけど、Bのゾーンに入られると案外相手がルーズになってしまう場面が目立ってた。それは基本的には2列目がいるだけの守備のイメージが強かったから。フィルターとしてはいい内容の守備ではあったけど、後ろとの関係では今考えるとイマイチだったような気がする。前で意図的な限定ができないから、後ろが狙いどころを定められなかったと思う。

対して、今回は前線から戦術的な追い込みによる守備。結果として自陣Bゾーンに入ってくる縦パスに対しても前回よりも明らかにいい内容の守備が見られた。しっかりと相手のマークについて、自陣で簡単には自由にさせない守備ができてた印象。

こういう形でサヘルの前半の守備は前線からかなり効果的なやり方ができたと思う。中盤では5枚×4枚の数的優位をうまく活用しながら相手のやりたいように使わせなかった。

ただ、後半になって前線からのいい内容の守備が鳴りを潜めてしまったように思う。要因としては攻撃的に2トップにしたことによって中盤の数的優位が作れなったことが1つ。基本が1×1だとやっぱり相手の方に分がある。それから前半から積極的に守備をしたことによる運動量の低下もあったかもしれない。ボールに対して距離を空ける対応が多くなってた。同時に後半になってボカの攻撃の内容がよくなったのも痛かった。結果として深い位置に多くの人数が下げられて、最後にシーンまでつなげられることが多くなった印象。

とりあえず、サヘルの守備についてはこんな感じだけどベースとなる部分はボカも同じだったのは上にも書いたとおり。ただ、組織作りの部分での違いが見られた。

サヘルの守備は高めの位置からのチェックが見られたとは言っても、最初に目指されたのは安定した4-2-3-1の組織作り。あくまでも、その組織を作ってから守備が始まるイメージだった。敵陣のボールに対するアプローチも組織を1度作った後、その組織から飛び出してきて対応するっていう考え方だったように思う。だから、誰が誰を見るかってことがある程度ははっきりしてた。

対してボカは攻撃からの切り替えの流れのまま守備に突入することが多い。切り替えの最初の守備で厳しく相手のボールにプレッシャーをかけ、それをスタートとして周囲がポジションを動かして連動を図る。こうやって攻撃の流れの中でかなり高い位置から守備を開始するから、高い位置で奪ってそのまま相手ゴールに向かえるような可能性を持った場面もいくつか見られた。

そういう最初の守備で奪えなかったとしても、基本的な守備組織はサヘルよりも高い位置に置かれてたと思う。4-1-3-2気味の配置にも高い位置からの守備の意図が見て取れた。

この4-1-3-2の守備組織はちょっと意外だった。リベルタドーレス杯を見たときには立場的な部分もあったんだろうけど、4-3-1-2で完全に守備を固める意図が見られたのから比べると大きな変更点だったような気がする。

この4-1-3-2の配置の配置だとやっぱりボランチの1のところがギャップになってくる。しかも、それを増長する要因もあった。前線の3-2はここまで見てきたように前に向けての守備の意識が高い。対して後ろは人につく意識が高い守備だったと思う。SBは相手SMFに相手の1トップはCBがっていう形でしっかりと人を見るやり方が見られた。だから、ボールが入ったときには完全に体を密着した対応ができてた印象。でも、この人を見る意識が高い守備は相手のポジショニングによってラインが下げられてしまう危険性がある。これによって前線とDFの間の距離ができてしまって、それを埋めるのは1枚のボランチだけっていう状況が生まれてた。

そういう意味では全体を見ると前後が間延びしたブロックができあがってた気がする。相手がサイドをえぐったときにDFだけになってしまっているシーンも見られた。

ただ、こういう全体のバランスの悪さを局面の守備で乗り切ってたような印象を受けた。追い込んで複数の関係を作るのはサヘルと同じように抜群にうまかったから、相手をスペースに入れるなんてことはほとんどなかったと思う。そういう意味では見た目のバランスが悪くても、守備はなんら影響がないのかもしれない。リベルタドーレス杯決勝の2戦目の後半にも同じような状況になってたけど、結局スペースは使わせなかった。この辺はミラン戦(戦うことになれば)では注目点になる。何しろ空けてしまっている場所はカカとセードルフのエリアだから。

とりあえず、今回の試合を見る限りでは個人的なボカの守備のイメージは崩された。前に見た試合では中央に凝縮された4-3のブロックを低い位置に置いて最後のところはやらせない守備が見られたけど、今回はこういうスペースをつぶすやり方よりも、ボールとか人への意識を強く持った守備のやり方が見られたと思う。

それを考えさせれたのが10人になった後の戦い方。残りの時間はさすがに前線からの守備を捨てて自陣に全員を引かせた守備に変更された。でも、上に書いたような4-3を真ん中に凝縮させて受けるような守備はしなかった。自陣に入ってきた人とかボールをしっかりとケアする方に重点が置かれてたと思う。それは中盤の3枚の配置を見ても分かる部分だった。3枚はDFと一体感を持ってスペースをつぶすというよりも、より中盤としての独立した守備の役割を担ってた印象。

とりあえず今回の試合も予想通りに守りあいの試合展開になった。それはここまで書いてきたように両チームの守備、特に中盤以前の守備のやり方が素晴らしかったことが要因の1つ。何度も書くけど、前線からの追いかけとそれに対する連動性を生かした戦術的な守備の内容はスバラしかった。でも、両チームの攻撃の内容がイマイチだったのも確かだったと思う。

まずサヘルの攻撃についてはある程度予想通りだった。前回の試合もそうだったけど、守備を重視する中であまり攻撃に人数をかけようとしない。

そういう意味では前半のある時間の攻撃の内容はいいものだったように思う。高い位置でのカットからの攻撃の中で後ろからの飛び出しが活発化した。特に1トップを生かした2列目からの飛び出しの豊富さが目立ったと思う。SBも積極的に攻撃に出てきて、チャンスを作り出してた印象。このSBの攻撃参加は90分通して相手の守備のバランスを崩すのに一番可能性を感じるやり方だった。

後半になって前線を2トップにしてからは本格的に攻撃に力を入れてくるかと思ったけど、その通りにはならなかった。上に書いたように守備が機能しなくなって押し込まれたから、思惑通りに前線に人数をかけられなかったと思う。3トップにした後も基本は同じで、人と人の距離が遠すぎて個の力でなんとかしなきゃならないシーンが多かった。

対してボカの攻撃の内容もよくはなかった。初戦ってことでどこまで本来の力を発揮してたのかは微妙だけど、今回の試合だけを見るとリケルメがいたらっていう仮定をしてしまいたくなるような内容だった。

ボカの攻撃で一番チャンスにつながったのはロングボールで距離を稼いでからの展開。相手が中盤を抑えてきてることを考えれば、ロングボールっていう選択自体は悪くなかったと思う。実際に前回のパチューカを見てしまうとなおさら。

でも、そのロングボールに反応するのは常に2トップだけ(せいぜい、+カルドーソ)だった。基本的に2トップと中盤の距離が離されてしまっていた気がする。守備でも前後に距離が開いてしまっているって書いたけど、攻撃でも前後のライン間の距離が気になった部分。守備ではそれでも大きな問題にはなってなかったけど、攻撃に関しては明らかに前線が薄いっていう問題が起こってた気がする。

だから、このロングボールはギャンブル的な側面が大きかった気がする。とりあえずロングボールによって相手のブロックを押し下げることはできた。でも、前線が薄いから自分たちのボールにするのは難しい。こぼれ球が自分たちに来ればブロックを下げた相手に対してスムーズな攻撃ができたけど、それが相手に行ってしまえば攻撃はそこで終わってしまった。

そもそも、中盤が相手に抑えられてしまったのにもボカの攻撃の問題が見られた気がする。確かにサヘルの守備の内容もよかったけど、あまりにもその思惑通りに守備をさせてしまっていた印象。

その原因となったのが攻撃における個の分断だった。ボール保持者に対するフォローが本当に少なすぎた気がする。近い位置に選手がいなかったし、引き出す動きも少なかった。結果として相手の守備以前に自分たちで攻撃の選択肢を狭めてしまっていた。
前線にボールを入れる方法がロングボールしかなくて、両SMFが降りてくるシーンが多くなったと思う。これが前線との距離を広げる要因の1つにもなった印象。

前半は特にこの状況が酷かった気がする。ボール保持者が出し所がなくて無為にボールを保持してしまうシーンが目立った。そうやってちょっとでも無駄な時間をすごせば相手がしっかりと距離を詰めてきたから、結局はそこで奪われたり強引なパスを次で奪われたりっていうシーンが多くなった印象。前半は堅さもあったのか、個の力も見られなかった。

一応、後半になるとある程度の改善は見られた。でも、これは相手の守備が衰えたことと、システム的に相手の中盤が空いてきたことが大きいわけだけど、同時に雰囲気に慣れたのか、個々のミスが減ったのも大きかったとは思うけど。

その中で攻撃の可能性は見せてくれた。後ろからの選手の飛び出しが活性化して、前線の選手の距離感が改善された。同時に個々のランニングも見られ始めていいリズムでのパス回しもいくつか見られたと思う。トップに1つ当ててからの展開も見られ始めた。結局は退場によって前線に頼るやり方に戻ってしまったわけだけど。

こういう片鱗を見せてはくれたけど、やっぱり不満点が多かった。どうしても個に頼る面が大きくなってしまっていたし、チームとしての攻撃にリズムの変化があまりつけられてなかった気がする。どうしても最後はトップの力任せになってしまうのも気になった点。うまく中盤との連動性が築けてなかった。今回は初戦だったってことで次に向けての修正を期待したい。とりあえず前にボールを運ぶのをもう少しスムーズにしないと辛い。

このチームにあって攻撃面で大きな役割を果たしたのがパラシオだった。この選手はリベルタドーレス杯で見たときにもいい選手だと思ったけど、今回の試合でも前線での動きの豊富さが見られた。前線で左右に動き回りながらうまくボールを引き出すシーンが目立った気がする。実質的にはチームとしてはこのパラシオの動きにしか選択肢を見出せなかったわけだから、今回果たした役割はかなり重要だった印象。

とりあえず今回のボカを見る限りでは決勝はどちらが来ても、また守りあいになる予感がしてくる。ボカの守備戦術はいいけど、攻撃がイマイチなだけに。

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2007-12-11 Tue 00:33
レッズ×セパハン
<レッズ:3-5-2>
FW:ワシントン-永井
MF:長谷部、相馬-阿部-鈴木-細貝
DF:ネネ-トゥーリオ-坪井
GK:都築

セパハンにはなんとかコンディションを上げていってもらいたいところ。次のレッズ戦を想定したときに、レッズも調子がいいとはいえないわけだから、低調な内容になってしまう可能性がある。少なくともこの試合のセパハンと横浜FC戦のレッズが戦ったら、相当に面白くない試合になる気がする。
                                   (セパハン×ワイタケレの記事より)


これは訂正しなければならない試合展開だった。レッズは完全に切り替えてきた。身体的なコンディションが上がったのはもちろん、ああいう状況で優勝を逃したのにも関わらず、その影響を一切感じさせなかった。ここにはレッズの強さを感じさせられた。よってレッズの調子が悪いっていう状況ではなかった。

対するセパハンのコンディションは上がってこなかった。メンバーを見ても主力が軒並み出られなかった。内容については後で詳しく書くけど、ACLの試合と比べるとレッズのコンディションが上がった云々では片付けられないほどに力差が生まれてしまっていた。コンディション調節も試合の一環だと言われればそれまでだけど、やっぱり残念な部分だった。

レッズが攻守に渡ってここ最近では一番の内容を見せ、対するセパハンは今まで見た中では一番悪い内容だった。これによってある意味ではACLとは真逆の展開になった。レッズの2点目はべた引きに引いた相手ブロックに対して後ろから次から次への飛び出し。1つ下でべた引きの相手が寄せきれないところからのウラへのスルーパス。ACLでレッズが散々やられた攻撃のやり方だったように思う。

レッズはここ最近では一番の内容だったけど、だからと言って何かを大きく変えてきたわけではなかった。コンディションの1つ1つのプレーとか動きの精度が上がったことが大きい。チームとしての大枠を変えなくても、そういう細かいところの積み重ねで劇的な変化が生まれてた印象。

守備面では、横浜FC戦、しかも失点後の浮き足立ってめちゃめちゃになった時間とやろうとするやり方自体の違いはほとんど見られなかったと思う。にもかかわらず、中盤のところで嘘のように効果的な守備が機能した。横浜FC戦では簡単にギャップに入られていいようにパスをつながれたのいに。

その守備のやり方は普段のレッズよりも前への意識が高いもの。最後に5+2を作ってなんとか跳ね返すシーンが目立つレッズだけど、今回の試合では3ラインがそれぞれの役割をしっかりとこなしてた。トップはフィルターとして、中盤は縦パス狙い、最終ラインは相手のトップへのマークっていうのがはっきりした。結果的に簡単に中盤とDFが悪い意味で一体になってしまうシーンはほとんど見られなかったと思う。

このやり方は上にも書いたように横浜FC戦の浮き足立った時間と同じもの。そのときには失点をしたことによって、守備における前への意識が高まったことでこういう状況が起こってた。3ラインの役割も今回と似たようなものだったと思う。今回は能動的に、横浜FC戦は受動的にっていう違いはあるものの、基本的な守備の狙いは同じようなものだった印象。

でもそのやり方が横浜FC戦では機能せずに今回は機能した。そこには最初に書いたような1つ1つの細かい改善が積み重ねられてたように感じた。以下は横浜FC戦との比較で行きます。

【横浜FC×レッズ】
http://himajin0112.blog101.fc2.com/blog-entry-197.html

横浜FC戦と今回のレッズに共通してたのは上に書いたように3ラインがはっきりしている形。いつものようにトップ下を押し出しての3-4-3を基本として自陣で受ける体制を作り出した。このときに5-2-3ではなくて3-4-3をしっかりと設定するのがポイント。結果として中盤での個々の担当エリアが狭まった。そうなればケアするべき相手がある程度限定されて、対応の距離を縮めることができる。WBのところでは常に相手のボールの入りどころにしっかりと距離を詰めて対応してたのが象徴的だった。

ただ、この形自体は何度も書くように横浜FC戦でも見られたもの。これを機能させるために一番目立った改善点はボールに対するアプローチのスピードだった。

横浜FC戦では寄せに行く意思はあるのに、中途半端に距離を空けてしまって相手に仕事をさせるシーンが多くなったと思う。それがこの試合ではボールの入りどころ、入った瞬間に一気に距離を詰めるやり方が目立った。結果として中盤で相手が前を向けない場面が多くなったと思う。そう場所でのインターセプト、1つ遅らせながら味方と協力した囲い込みが多く見られた。

これはやっぱり何度も書くようなコンディションの改善っていう要因が一番大きかったんじゃないかと思う。全体としての出足が明らかに速くなってた。

特に変わったのが鈴木だった。この試合では本来のピッチ全体をカバーする運動量を取り戻してたと思う。中盤に入ってきたボールに対して必ずアプローチをすることで守備のスタートとしての役割をしっかりと担うことができてたし、効果的なカットもかなり多くなった。やっぱり疲れの蓄積が相当大きかったことを感じた。そうやってボールに対して次から次へとチャレンジに行く鈴木とバランスを取る阿部の関係性もいいものだったと思う。

大体はこの中盤の守備のよさによって相手の攻撃をつぶすことには成功した。ただ、その後ろの最終ラインの守備の改善も見られたと思う。ここはコンディションの改善というよりも戦術的な修正っていう面が大きかったわけだけど。

横浜FC戦では相手のアツ-カズ-カタタウにどうつくべきかがはっきりしてなかった。ある意味で1トップとも2トップとも3トップとも見られる形に対して誰がどこまで見るべきかがイマイチつかめてなかったような気がする。本来のレッズのようにしっかりと相手を見た結果引っ張り出されて中がフリーになったかと思えば、つくべきところでつかずに簡単に前線に起点を作られてしまったり。これでは1つ前との関係が作りにくかった。

今回のセパハンの前線の並び方は横浜FCの前線の並び方と似たものだったと思う。左サイドは中盤的選手、トップに軸がいる、右サイドはFW的選手の並び方。今回はこの形を変則的な2トップの形と想定してレッズらしいマンマークを確定させた。

そうなれば当然引っ張り出されるシーンは多くなる。特に相手の右サイドのリダについたネネが引っ張り出されるシーンが多かったし、トップの選手(ベロ?)に対する対応で坪井とかトゥーリオが1つ前に出されるシーンも目立ってた。
でも、今回はこの形を確定させたのが大きな改善。前回みたいに誰がどこまでついてくかがはっきりしない状況では前後の連携がうまく行かなかったけど、今回は鈴木であったり阿部であったりがしっかりと最終ラインのカバーに入って引っ張り出された場所を埋めることができてたと思う。これが本来のレッズのやり方ではあるけど、横浜FC戦から比べると大きな改善だった。

ここまではレッズの改善によって守備のバランスが保たれた部分について書いたけど、実際にはセパハンの攻撃のまずさによる要因も大きかった。レッズの守備のバランスを崩す意味では横浜FCの方が数段上の質のサッカーを展開してたと思う。

この試合でセパハンは本来武器になるはずの後ろからの飛び出しのよさをほとんど見せてくれなかった。後半の立ち上がりに奪ってから一気に多くの人数が飛び出すカウンターで決定的なチャンスを作り出したけど、あれ1回だけだったように思う。

立ち上がりの時点ではリスクを負わないために攻撃の人数をかけたくないんだと思った。守備の人数を残した上で最低限の攻撃をしたいんじゃないかと。でも、結局上に書いたような状況なわけだから、やらなかったんじゃなくてできなかった部分が大きい。

この後ろからの飛び出しの少なさによってレッズの守備ブロックのバランスがほとんど崩されなかった。ACL2戦目の後半を思い出せば分かるけど、次から次へと飛び出してくる相手に対して完全にレッズの選手が押し込まれてしまった。それでも後ろから飛び出してくる相手をフリーにしてしまった。
この時間はセパハンが絶対に得点が必要な時間だったから参考にはならないかもしれないけど、1、2戦を通してセパハンの後ろからの飛び出しに対してレッズがゴール前の5-2にならざるを得ない状況は少なからずあったと思う。

それに後ろからの飛び出しがないってことは、前線に厚みが加えられないってことを意味してる。加えてトップの位置に入った選手は真ん中に張り付いてるだけで引き出しの動きをあまりしてなかった。これによってセパハンの仕掛けるパスの選択肢はかなり減ることになったと思う。後半はカリミがトップに入ってボールが入るシーンが目立ったことを考えると、前半から使えなかったのはかなり痛かったと思う。

さらに前へ前へっていう推進力も生まれなかった。後ろからの飛び出しが多ければチームとしての前への推進力が生まれて、ノンストップで一気に深いところまで入り込める。ここで重要なのは前への意識の中ではスペースへのボールが多く引き出されるってこと。
対して、後ろからの飛び出しが少なかった今回の試合では1度止まってしまってからのアプローチ。どうしても足元へ入れるボールが多くなった。それでもカリミが入ってからはスペースに抜け出そうとする動きを繰り返したけど。

守備のバランスが崩れないってことをこういうことを総合的に考えるとレッズとしてはかなり戦いやすかった。
ボール保持者の選択肢が少ないことでボールに対して思い切ったアプローチをかけられたと思う。さらに、そのアプローチを抜け出されても少ない受け手にはしっかりとケア。4-1-4-1システムに流動性を加えながらトライアングルを形成してギャップギャップをついてきた横浜FCと比べると狙いどころがかなりはっきりしたと思う。しかも、足元につなぐ質のボールが多かったことで入る前のところで奪えるシーンがかなり多くなった印象。

ちなみにこのセパハンの後ろからの飛び出しによってレッズは本当の意味で助けられた部分もあったと思う。それはDFと中盤の間のギャップのところ。
ここまで書いてきたようにレッズは3-4-3のブロックで中盤の守備の内容がよくなってた。ただ同時に、中盤が前への意識を強く持ったから、後ろの3よりも前の3との関係性が強くなってたと思う(もちろん上に書いたように最終ラインにボランチがケアするシーンもあったけど)。でも、相手のトップの選手は終始真ん中の深い位置に張ってたからDFラインが中盤に近づくことはできなかった。結果としてDFと中盤の間にややスペースが生まれてた。

セパハンはこの後ろからの飛び出しが少なかったことで、このスペースを有効利用できなかった。なぜなら前の選手が戻ってきて使うって選択肢はないから。レッズのマンマークはしっかりとついてくるから、せっかく下がってきてもフリーで受けることはできなかったと思う。
ミラン戦を考えるとセードルフ-カカのゾーンだけにちょっと怖いけど、今回の試合は問題にはならなかった。

この相手の後ろからの飛び出しに関してはレッズの選手がしっかりとケアしてたのも確か。守備時のフィルターの3のうちの永井と長谷部が出ようとする相手にしっかりとついて中盤に降りて対応してたと思う。永井は相手の左SB、長谷部はボランチへの対応が多くなった。

とは言ってもやっぱりセパハン自身の問題に帰するべき部分が大きかった気がする。その1つが守備からの流れ。今まで見てきた中ではセパハンは中盤で奪ってからのショートカウンターで一気に相手ゴールに迫るのが得意。中盤で奪った瞬間にチーム全体のスイッチが切り替わることで飛び出しが豊富になってたと思う。もちろん遅攻時でも前線の厚みに魅力があったのも確かだけど。

とにかく、この試合のセパハンは中盤で効果的にボールを奪うってシーンがほとんど見られなかった。その要因はワイタケレ戦から懸念してた中盤のプレスの機能不全。セパハンの守備は中盤での忠実なチェックとそれに対する周囲の連動性によって成り立つ部分が大きかったはず。それがそもそもの中盤のチェックが機能してないんだから、その後の連動性なんて期待できるはずもなかった。結果、守備のスイッチが入らずにズルズルと最後のところまで持ち込まれるシーンが目立ったように思う。

そもそもセパハンの守備は組織自体のバランスの悪さが見られた気がする。今回の試合ではトップの選手はほとんど守備に参加せずに前に残ったままだった。結果として4-2-3のブロックで受ける形に。だから、本来は奪うところとして機能したい中盤が守備のスタートとして機能しなければならなくなってしまった。狙いどころを定めて効果的に中盤でアプローチするとと比べると、あいまいにただ寄るだけっていう質の守備が増えても仕方なかったかもしれない。今回の試合に関してはトップの選手が攻守に渡って停滞感を生む一因になってた気がする。

さらに気になったのがレッズが再三チャンスを作った相馬のサイド。細貝のサイドでは相手のチェックもそれなりに機能してレッズの攻撃が詰まってしまうシーンが見られたけど、相馬のサイドは縦にいくらでも突破してください状態だった。

これは攻撃的なリダのサイドだってことが大きかったと思う。リダがほとんど守備をしなかったから、相馬は自由に上がっていくことができた。本当はリダが攻撃の怖さを与えることで相馬を釘付けにするのが狙いだったはず。でも、上にも書いたように今回の試合ではリダの相手はネネだった。この攻撃まで考えての対応関係だったとしたらその工夫は素晴らしかったと思う。

こういう中盤のチェックの悪さはワイタケレ戦から見られただけに、セパハンのチームとしての問題が大きかったのは確か。レッズの選手が簡単に敵陣にボールを入れたり、自分で運んだりってことができた。でも、この点においてはレッズの攻撃のうまさも影響してたんじゃないかって気がした。

レッズのこの試合の攻撃のアプローチはらしくないぐらいに素晴らしい内容だった。立ち上がりはこちらこそ本当にリスクを負わないやり方で前線の2または3人だけに任せるやり方が目立ったけど、中盤での守備の内容のよさが徐々に攻撃にもいい影響を与えていったと思う。

そのレッズのアプローチの中で一番効果的だったのが左右のサイドの使い方。この試合では左右を一杯に利用した展開が見られたと思う。ボランチの鈴木とか阿部をスタートとして、まずはとにかくサイドに展開。そのサイドで詰まったら1度真ん中に戻して、そのまま逆サイドへ。中→外→中→(逆)外の繰り返しの中で徐々に深みを与えていった。

この中と左右への展開の繰り返しの中で相手のブロックに横の間延びを起こすことに成功したと思う。相手のブロックを左右に動かすことで1つ1つのエリアの密度を薄めた。さらに、積極的にボールを動かしたことで相手のボールへのアプローチがどうしても遅れてしまう状況を作り出せた印象。右に1度作ってからの左への展開で相馬がフリーで受けるシーンが目立ってたと思う。こういう状況がピッチ全体で起こったから、ボールを持った瞬間はフリーっていう選手が増えた。結果として個の仕掛けが増える結果が生まれたと思う。

そして、この左右の間延びが一番表れたのがクロスに対する真ん中の状況。完全に相手の選手の距離が横に伸びてしまっていて、ワシントンなんかは多くの場面でその間に入り込んでフリーの状況だった。
それにサイドを使って真ん中を空けるっていうセオリー通りの効果も生まれてたと思う。中→外→中→外の展開を繰り返す中で相手の真ん中が薄くなって、簡単にワシントンに収まるシーンが多くなってた。

真ん中への収めに関しては永井の動きが特徴的だったのも興味深かった点。この試合の永井は中盤っぽい中途半端な位置でのプレーが多かったと思う。その中で長谷部との縦のポジションチェンジも目立った。

こういう中途半端な位置での永井のプレーは横浜FC戦でも見られた。ポンテとの入れ替えが多かったのも同じ。でも、そのときには役割も中途半端になってしまって消えてしまうことが多かったように思う。

対して今回の試合では中途半端な位置に降りてきて受けるシーンが多くなったと思う。そこで受けてから自分で仕掛けるシーンも目立った。前線での前後の動きの繰り返しによって相手に捕まらずにプレーできてた。サイドに流れてのプレーは普段から結構見るけど、今回の真ん中の上下動は新鮮だったし選択肢の1つとしては面白い。

今回の試合では永井のプレーのよさが目立った。
攻撃では中途半端な位置でプレーしてたことで捕まりきらずにゴール前に入ってこれるシーンが多くなったし、大外からの切れ込みの動きでゴールという結果も生んだ。
守備面では上に書いたように相手の飛び出しのケア。さらにトップの位置では微妙のポジショニングを変えながら相手のコースを効果的に切ってたと思う。この隠れた動きがかなり効果的だった。

全体としても動きの多さが目立った。
近い場所ではボールに対する引き出しの動きが格段に増えた印象。ボール保持者の背後を回り込む動きも多くて、パスコースを作ると同時にボール保持者への守備を軽減させる役割も担った。
さらに長い距離のランニングも多くなったと思う。相手が1枚残しだったこともあってトゥーリオ(地坪井とかネネも)のらしい攻撃参加が多く見られた。それにボランチも1枚がバランスをとりながらもう1枚が積極的に飛び出すシーンが目立った。こういう後ろからの飛び出しが結果として攻撃に厚みがつながった。

攻撃面ではいろいろな選択肢が増えたのもよかった点だと思う。
出し手は上にも書いたように基本的に鈴木とか阿部。後半は最終ラインからのボールも多くなった。
何よりも効果的だったのが受け手(攻撃の経由点)の増加。両WBの利用で左右の幅を使い、永井の中盤降りで真ん中を使えた。もちろん基本はトップ下に入った長谷部のタッチ数も多くなったわけだけど、今回はこのトップ下の選手に一辺倒ではなくなったのが改善点。ここ最近はどうしてもポンテに1度当てるイメージが強くなりすぎてた気がする。

そういう意味でポンテの不在が攻撃の新たな面を見せてくれたともいえる。でも、セットプレーを見るとポンテの不在を痛感させられた。やっぱり精度が微妙に悪くて、チャンスにつながるシーンがほとんど見られなかったと思う。それに今後の試合では今回みたいに攻撃に厚みを加えるのが難しくなるだろうから、そうなったときにも個で打開できるポンテの重要性を認識させられる可能性がある。

何にしても、今回に試合では素人目に見ても分かるほどにレッズのコンディションがよくなってた。同時に驚くほどに攻守に渡る試合内容に改善が見られた。特に攻→守への切り替えの速さなんかは抜群だったと思う。

こういう点を考えるとレッズはここに向けて合わせてきたのかもしれないと思う。要するに愛媛FC→横浜FCの週はわざと最悪のコンディションを作り出したんじゃないかってこと。それでも勝てるはずが、そんなに甘くはなかったってとこか。

本当のところは分からないけど、少なくとも今回のクラブワールドカップではここ最近に最高の状態で臨めてる確かだと思う。

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2007-12-09 Sun 18:52
エトワール・サヘル×パチューカ
エトワール・サヘルの守備は一貫して組織を作って受ける意図が強くなった。そして、この意識をベースとしながら、その組織の作り方を微妙に変更しながら戦ってたように思う。そして、その微妙な変更が試合の内容に大きな影響を及ぼしてたように思う。

後ろは4バックで前との距離を近づける形。で、その前の形を変化させながら戦ってた。以下にいくつかのパターンを挙げてみる。(------:ハーフェイライン)

<パターン1>
     ○
-○-○-○-
    ○ ○

<パターン2>
---○-○---
 ○ ○ ○ ○

<パターン3>
   ○ ○
-○-○-○-○-

<パターン4>
    ○
-○-○-○-○-
    ○

基本となる形はこの4つ。2と3は形としては同じだけど、組織の設定の位置の違いで大きな違いがあったように思う。

立ち上がりは1の形が見られた。基本ポジションが左のガルビがトップ下の位置に入ってくることが多かった。そして、そのガルビがいなくなった左のスペースにはトップの1枚が下がって対応(多くの場合でシェルミティ)。

このブロックは前線のフィルターの役割が大きかったと思う。流れの中で1トップ気味に残った選手がそのフィルターに入ってくる時間も長かったと思う。そうなると4-2-4みたいなブロックが形成されることになった。ハーフェイライン付近の3または4がしっかりと並んだことでパチューカは縦パスを入れられなくなってしまった。

サヘルの前線のフィルターは低い位置のボールに対してチェックに行く意思はほとんど見せなかったけど、逆にそれがパチューカにとってはやりにくかったんじゃないかと思う。その前線のフィルターから飛び出してボールに来る選手がいないってことで、そのフィルターが常にフィルターとして機能してたような気がする。フィルターのバランスが崩れなかったことで、完全にパチューカのブロックへ仕掛けるパスを防いだと思う。結果、パチューカはノープレッシャーの最終ラインでのパス回しが増えた。

サヘルの方から見ると、このブロックは素晴らしく安定してたと思う。ブロックのバランスだけで、相手の攻撃のスタートすらさせなかった。そのうちに勝手に相手がミスをして自分たちのボールになることが多かったように思う。
そうやって奪った後の攻撃もガルビを真ん中に配置したことで、1つそのガルビを経由してからの展開ができるようになってた。

それが途中で2の形に変更したことで攻守にわたってバランスが崩れてしまった。1の安定性をなんで捨てたかが謎。途中でガルビがトップ下の位置から基本の左サイドに入ってのプレーが多くなって普通のフラットな4-4-2の守備になった。

普通のフラットな4-4-2のブロックの形そのものには問題はない。そのブロックでいい守備をしてるチームはいくらでもあるわけだから。でも、サヘルの守備を見る限りでは4-2-4→4-4-2の変更は明らかに改悪だった気がする。

そのサヘルの守備の問題点は1つ入られたときに対応。そもそも4-2-4のときからブロックに入られたときの脆さを露呈してた。そこで気になったのは自陣に入ってきた相手のボールに対しての寄せの甘さ。普通自陣で受ける形を取ってるなら入りどころに厳しく行くはずなのに、そういう意図がほとんど見られなかった。最終ラインのところではしっかりとマークをしてたけど、相手の中盤のボールは浮くことが多かったと思う。その中でファールで止めるシーンも目立った。
要するにサヘルはブロックに入られたときの守備があまりうまくなかったって言える。入られた後は前線がすぐに戻ってきて最後のブロックの人数勝負でなんとかするシーンが多かったと思う。

1の形は前線に選手を並べることで縦パスを入れさせない形。要するにブロックへの仕掛け自体を封じたっていえる。そして、それがうまく行ってた。前線のフィルターを抜けられるとパチューカのリズムのいいパス回しが見られたけど、そういう場面を極力作らせなかった。そうやって相手の攻撃を防いでたと思う。

それが2の形になって前線のフィルターがなくなったことで、パチューカのパスが自陣に入るシーンが多くなってきた。その中でブロックへ仕掛けられるシーンも多くなったと思う。結果、ブロックに仕掛けられたときの脆さが見られるようになった。パチューカの崩しの質も高かったけど、自陣でのボールに対するアプローチが甘くて簡単に深い位置に入られることが多くなった印象。

それにサヘルのサイドの選手が1つずつ下がったのもパチューカの攻撃を促進させた要因だった気がする。
パチューカは組み立て時にサイドに1度起点を作ることが多いんだけど、立ち上がりはほとんどそういうシーンを作り出せなかった。それは受ける選手が相手のフィルターのウラ側に行ってしまっていたから。
サヘルが2の形にしたことでそういう選手にパスが出しやすくなった思う。そうやってサイドにうまく起点を作ることでパチューカが深い位置に入り込むシーンが目立ち始めた。

サヘルがこの形で戦ってた時間帯は完全にパチューカのペース。サヘルは4-4のブロックが深い位置に押し込まれるシーンが目立って、それまでのバランスのいい守備を維持できなくなってた気がする。

そういう流れの中でサヘルは全体を1つずつ押し上げることで打開をはかったと思う。それが3つめのパターン。それまではチーム全体が自陣に入るような形だったのを、ハーフェイライン上に中盤の4のブロックが来るように超高い位置まで持ってきた。

これによってまず、中盤の4が立ち上がりの最前線の3または4と同じフィルターの役割を担うことができた。だから、再び相手を自陣に侵入させないっていうやり方ができたと思う。それに4-2-4の形では中盤の2のところにギャップが生まれてたから、4-4でそのスペースを埋めるっていうような意図もあった気がする(そのスペースを嫌って2の形を採用したのかも)。

同時に自分たちの攻撃を考えてもいい内容をもたらした。相手に主導権を握られた2の形はもちろん、1の形も自分たちの攻撃のことはあまり考えたなかったと思う。トップが横並びになってフィルターを作ることは守備を考えれば引っ掛けられる可能性が高いけど、その後の攻撃で前線に当てるべき味方がいない。トップもそのフィルターに吸収されてるわけだから。3のフィルターだったとしても前が薄いから効果的なカウンターにはつながらなかった。

対して、4-4-2のブロックを作って中盤の4をフィルターとして置くと、奪った後に前線に2トップが残ってることになる。だから、奪った後の攻撃までを考えることができた。2トップはそれぞれ相手の3バック脇のスペースを狙って引き出すような工夫も見られたと思う。こういう展開の中で前半の残りの時間は徐々にサヘルがペースを取り戻して行った。

この3の形はかなりリスキーだったのも確か。中盤の4をハーフェイライン付近に置いて後ろもそれに合わせて高い位置を取る。さらにトップは特別前線から追いかけようとしない。一歩間違えれば一気にウラを抜けられてもおかしくない形だった。

それがなかったのはパチューカの攻撃の特徴を象徴してる。パチューカの攻撃の特徴は徹底して確実性を求めるやり方だったと思う。少しでも強引なやり方はその選択肢になかったように思う。

その1つがロングボールの少なさ。少ないというか、1つもなかったと言ってもいい。通ればチャンスだけど、通らない確率が高いなんて方法は好まなかった。相手のコンパクトなブロックを崩すためには、様子見のパスを1つ2つ蹴りこんでもよかったんじゃないかと思う。相手の守備に対して地上からの攻撃ができなかったことを考えても、もっとシンプルなやり方をとってもよかったと思う。

ちなみに、地上から攻められなかったのもパチューカの確実性重視のやり方が出た。相手のフィルターのよさは確かにあったかもしれないけど、それでもあまりに仕掛けなさ過ぎた。途中で引っ掛けられる可能性が少しでもあったら、縦にボールを入れようとしなかった。全然仕掛けられずに横パス横パスが多くなった印象。

サヘルの高い位置の4-4-2はこのパチューカの特徴を考えてのものだったかもしれない。2つめの4-4-2の形で様子を見たけど、もっと上げても大丈夫そうだみたいな。次のボカ戦で同じ形が使えるかと言えば、微妙。

パチューカの確実性を求める考え方はアジア杯の悪い内容のときの日本代表を見てるようだった。パス回しのためのパス回し、ボールを失わないためのパス回しが多くなって、ゴールに向かう意識があまり見られなかったように思う。

日本的っていう意味では相手のブロックに1度入った後の崩しも似てた。流動性をベースにしたギャップに入るうまさとランニングによって近い関係を生み出す。そうやって少ないタッチでリズムよくパスが回るシーンが多かった。ただ、トップもそのパス回しに参加したときにゴールに向かう選手が少なくなってしまったと思う。

前半は結局膠着状態になった。守るサヘルと仕掛けないパチューカの関係でどちらも決定的なチャンスにもつながらなかった印象。思惑通りっていう意味ではサヘルペースだったって言えるかもしれない。

後半になってサヘルは守備の積極性を見せだした。前半は受けるイメージが強かったサヘルだったけど、後半は前へのイメージが強くなってたと思う。
その中でトップの守備への意識が高くなってた印象。ある意味では前半はいるだけだったのが、トップの位置で守備の役割をこなしてた。シェルミティがボールを追いかけ、ベンディファラーがボランチを見る役割。これは前半の最後ぐらいから見られた形で、2トップが縦になることが多くなった。だから4-4-2が4-4-1-1みたいな形に変化することも多くなった。

このトップの関係に対して、後ろがボランチを見るベンディファラーを吸収するような形で前に押し出された。そのときには前後の関係がはがれないようにつなぎの1枚を残して、4つめの4-1-4-1の形が見られたと思う。

中盤に4を置くのは一緒だったけど前半のフィルターというよりは前への積極的なイメージが強かった。立ち上がりから左サイドのガルビが前へ前へ追いかけていくシーンが目立った。そうやって前線での追いかけが生まれたことで、効果的に前線で引っ掛けられることが多くなったように思う。前半は相手との関係で引っ掛けることが多かったわけだけど、後半は引っ掛け“させる”ことが多かったように思う。

その中で効果的なカウンターがうまく決まった。4-1-4-1的なよさを出して、奪ってから一気の飛び出しですぐに前線に人数をかけることができてた。その中でゴールに迫るシーンも多くなったし、相手を押し込むことに成功した。

このサヘルの積極性に対してパチューカは守備のバランスが崩されてしまった印象。パチューカの守備は立ち上がりから一貫してボールへの意識が強かった。トップの位置から積極的に相手ボールに対して追いかける意識が強かったと思う。

その中で特に効果的に守備ができたのが中盤の場所。中盤のボールの入りどころに対するチェックが素晴らしかった。一気に距離を詰めて、相手に仕事をさせないシーンが目立ってた印象。

前半は相手が攻撃に人数をかけなかったこともあって、この最初のチェックに次が連動してくるのも速かった。ボールに対してすぐに複数枚の関係性を作って囲い込む場面が多くなった印象。そうやって中盤で効果的な守備ができてたから、深い位置まで押し込まれるシーンは少なかったし、組織のバランスも崩れなかった。

対して後半は相手のやり方の変化によって前半のようには守備ができなかったと思う。ビルドアップの途中で引っ掛けられることが多くなってバランスを取る前に仕掛けられた。それに相手を深く押し込めなかったから、相手が攻撃にかけられる人数も多くなった。そもそも上に書いたようにサヘルの攻撃の飛び出し自体も活発化してたわけだけど。

結果としてパチューカは守備のバランスが崩れるシーンが多くなった。後ろから飛び出してくる相手に対して5バック気味になる時間が長くなったと思う。これはつまり、中盤が薄くなることを意味してるわけで、前半に中盤での守備によさで相手の攻撃を受け止めたパチューカにとっては致命的だったと思う。

その展開の中でサヘルの得点シーン。3バック脇に最初に1つ起点を作ることで相手のブロックを押し下げたところから。結果として1つ下が空くことになって、シュートを打った選手はフリーで打てたと思う。

この得点後はサヘルはとにかく守るだけ。2みたいな4-4-1-1のブロックを形成して最後を跳ね返す意図が強くなった。正確には4-4-1-1のブロックは後半の途中ぐらいから見られたわけだけど。時間とともに組織をしっかりと作れなくなってブロック内に入り込まれ、結果4-4-1-1になる時間が長かった。そこから元々の組織に戻すのも難しかったと思う。

パチューカとしてはサヘルの組織作りのスピードが遅れたのをつきたかった。サヘルの選手はボールを奪われても歩いている選手が後半の途中から目だってたから。
でも、パチューカはカウンターがうまく機能しなかった。後ろからの押し上げが全く期待できずに、前線に入れてもその関係だけで攻める必要があった。だから、横パスで遅攻にするか、無理やり少人数で行くかのどっちかだったと思う。攻→守の切り替えの割りに、守→攻の切り替えの質が低かったように思う。

結局、バランスのいい組織ができあがった後のサヘルの守備にアプローチしなければならないシーンが多かった。確実性を求めるやり方と相まって、セットプレー以外ではほとんどゴールに迎えなかった印象。

この試合で勝ち上がったサヘルもこの試合を見る限りでは明らかに守備のチームだった。ここまでで出場の前チームの試合を見れたことになるけど、パチューカが一番攻撃的だったかもしれない。前にも書いたけど、残りの試合もこの試合みたいに膠着した展開になると思う。

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2007-12-07 Fri 23:04
セパハン×ワイタケレ
3分で2点入ったときにはどうなることかと思った。得点っていう結果だけではなくて、この時間のワイタケレは内容面も絶望的だった。正直なところ、どれだけ点差が開くかが焦点になると思ってた。

特に守備が酷すぎた。とりあえず、はっきりしてたのは自陣にしっかりと引いて受ける意識。相手が格上ってことは想定されてただろうから、この自陣に引く守備のやり方自体はもともとの狙い通りだったはず。そういう意味では予想外の形ではなかったはずなのに、その自陣での守備ブロックのバランスが悪すぎた印象。

もともとメンバー発表の時点ではワイタケレは3-5-2の形が想定されてて、守備時は両WBが戻った5-3-2みたいな形を敷いてた。そのときにトップの2枚はハーフェイライン付近に配置され、残りの5-3のブロックが自陣ペナルティーエリア前ぐらいのスペースを埋めてた。そのときに5-3は完全にべた引きになるわけではなくて、ある程度の場所に配置してたような印象を受けた。

こういう状況の守備ブロックだから、実質的には5-3--2みたいな状況ができあがってたと思う。ハーフェイライン付近のトップと中盤の3との間に広大なスペースができあがってた。結果としてセパハンの中盤のところが完全にフリーになってたと思う。そういう場所でセパハンの選手がボールを持っても、アプローチをかけようとする意図が見られなかった。

こうやって出し手に対してのアプローチをかけないやり方もありえなくはないけど、そのアプローチをかけないエリアがあまりにも広すぎてた印象。セパハンにとってはかなり高い位置でもフリーでボールを扱うことができたし、たとえ相手がチェックに来てもあいまいなものだったから全くプレッシャーを感じなかったんじゃないかと思う。

さらに、ワイタケレは出し手だけではなくて受け手へのケアもできてなかったのが致命的だった。出し手であるボール保持者をかなり自由にしてたから、必然的に受け手に対しては徹底した対応をしなければならない。にもかかわらず、この試合の立ち上がりのワイタケレは受け手も見ることができてなかった印象。加えて、上に書いたようにある程度の位置に置いたラインのウラのケアもできてなかった。出し手は見れず、受け手は見れず、場所も見れてないっていう最悪の状況だったと思う。

この中でセパハンは思惑通りのやり方ができてたような気がする。そもそもワイタケレが受け手のマークにつききれてなかったのはセパハンの前線の流動性によるところが大きい。前線の3トップがポジションを常に変えながら動き回ることで、ワイタケレの守備陣が文字通りに大混乱を起こしてしまっていたと思う。結果、最後の場面で選手を空くシーンが多くなった。

その最後のシーンに行く前段階の組み立てでもセパハンのやり方が効果的に決まった。スタートとなるのは引いた相手に対してフリーになる最終ラインでのパス回し。そうやって相手の守備ブロックを横にズラしてギャップを作るのは引いた相手に対する1つのセオリー。そのセオリーが嘘みたいに効果的に決まってた。最終ラインでサイド一杯を左右に動かしてからの、WGに対するロングボールが簡単に収まったと思う。

こういう一発のロングボールをはじめとして、セパハンはボールを運ぶのに何の苦労もしてなかった。高い位置まではほとんどプレッシャーなくボールを運べるし、相手のマークがルーズだから一発のパスもことごとく通る。ロングボールの精度が要求されたのは確かだけど、ノープレッシャーの状況ではさすがにいいボールが供給されてた印象。

こんな状況だから、3点目4点目が決まるのは時間の問題のように思えた。それだけに2失点目以降のワイタケレの修正能力はかなり素晴らしかったと思う。

具体的にはまず根本的な形を変えてきたと思う。守備のブロックが5-3--2から4-4-2に変更されてたように思った。
これは2つの味方ができる点。1つは相手の3トップに合わせて3バック(5バックも基本は3バック)→4バックに単純に変更したってこと。もう1つはもともとの形が4-4-2なのに、序盤はバランスが崩れて5-3-2になってしまったってこと。
初めて見たチームだからはっきりしたことは言えないけど、個人的には後者のイメージの方が強かった。

<立ち上がり>

   ● ● ●
○ ○ ● ○ ○

<修正後>

 ● ● ●
    ●
○ ○ ○ ○

立ち上がりはあまりにも高すぎる守備の意識が悪い方に出てしまっていたような印象を受けた。守備=後ろに人数をかける、っていうような形がバランスの崩れを生み出してたと思う。結果、それが本来の形(修正後)とのギャップを生み出してしまったんじゃない後思う。結果、形的なバランスの悪さだけではなくt、守備においてどこで何をすべきかっていう迷いにもつながったような気がする。それが立ち上がりの意味不明な守備を生み出したかもしれない。何度も書くように、あくまでも想像だけど。

とにかく、全体の形を4-4-2に変更してからは守備の内容が抜群に好転した。トップと中盤の間の距離が縮まって全体としてのバランスがよくなったっていう選手配置の部分に加えて、このバランスの改善が守備のやり方をはっきりさせることにもつながったと思う。

まず、中盤の前に配置された3がボール保持者へのアプローチをするようになった。もともとその3のラインがあった場所は完全にスカスカだったわけだから、そこに選手がいるだけでも立ち上がりから比べればかなりの好材料だったのに、個々の守備意識も高くなってたと思う。これによってセパハンの選手がフリーでボールを扱えるエリアが一気に狭まった印象。

加えて、受け手へのケアもはっきりした。立ち上がりと違ってセパハンの浮いてる選手が見られなくなった。セパハンの前線の選手がボールを受けようとするなら、中盤にまで降りてこなければならないシーンが増えたと思う。

さらに、ボールが入った後のチェックもはっきりとした。立ち上がりの相手にとってはほぼプレッシャーにならないようなあいまいな寄せではなくて、しっかりと距離を詰めることができてた印象。その寄せは相手のボールを奪うっていう積極的な意図は見られなかったけど、最低限の守備としては十分だった。
その最初の寄せで1つ遅らせ、それに対して2つめ3つめがコースを制限していくシーンも目立ち始めたと思う。ここにおいても奪うような質の積極的な連動性は見られなかったけど、セパハンはコースを作れずに後ろに下げるシーンがかなり多くなった。ワイタケレとしてはこれでも十分だったはず。

こうやってワイタケレの守備がバランスを取り始めたところで、セパハンは全く攻め手がなくなってしまった。最終ラインではボールを回せたけど、そこから次へのアプローチができなくなってしまった印象。様子見の縦パスを入れる→コースがない→最終ラインに帰ってくるっていう繰り返しになった。そして、最終的にはトップへのロングボールを放り込むってやり方に終始したと思う。

このロングボールもワイタケレの守備の改善とともに立ち上がりほどは機能しなくなった。危なっかしい面は多々あったものの、ワイタケレの守備陣もウラへのケアをしっかりと行うようになったと思う。結局、セパハンはロングボールがつながらずに攻撃が終わってしまうことが多くなった印象。ポゼッション率を高めても効果的なアプローチができない時間が過ぎていった。前半はこの繰り返しで終了した。

そして、後半。大きな変化はなかったものの微妙な変化が全体としての目に見える変化を生み出してたような印象。

そのきっかけになったのはワイタケレの守備の積極性だったと思う。
前半のワイタケレはバランスが改善したといっても、守備の位置はあくまでも自陣に置かれてた。自陣にしっかりと人数をかけて、そこに入ってきた相手をつぶすってのが念頭に置かれてたと思う。
これに対して後半は守備のブロックを1つずつ前に押し出した。ブロックを作ったときに中盤の前の3も敵陣内に入る形が時間が長くなったと思う。その中でボールに対してのアプローチの意識も前半よりは強くなってた。

これでセパハンはやりやすくなった。相手の守備の意識が少しでも前に向けば、それなりにギャップも生まれてくる。そうやって敵陣にできた場所を使いながら後半は地上からの攻撃が多くなっていった。

この地上からの攻撃で起点を作ったのはサイドだった。そもそも全体としてセパハンはサイドを利用する意識が強かった。低い位置でのパス回しでうまく両サイド一杯を使って相手のブロックをズラしたのは上にも書いた通りだし、前半の単純なロングボールもサイドを狙った質のものが多くなったと思う。とにかく、後半はサイドに起点を作りながらうまく深みを与えて行った。

ワイタケレの守備ブロックはボールサイドに寄ることが多い。でも、そこで奪いに来る質の守備をしないのは上にも書いたとおり。だから、うまくボールを広いサイドに展開できればチャンスにつながる。相手をボールに寄せておいて、相手の1ボランチの場所にアプローチしたり、そこを経由してさらに大外に展開したりっていう中で効果的に相手ゴールへ向かうことができてた印象。特に左に1度作って、最終的には右サイドで崩しきるシーンが目立った。結果、こういう形からは得点は奪えなかったけど可能性を感じさせてくれるものだったと思う。

で、後半の得点はトップへのボールの落としからのフリーのミドルシュート。
この場所でフリーな選手ができる可能性は前半から見受けられた。単純なロングボールに対してワイタケレの最終ラインだけがはがされるシーンが目立ってたように思う。でも、セパハンが前半は徹底してウラへのボールをけりこんだからそのDFと中盤の間のギャップは大きな問題にはならなかった。
それを後半の立ち上がりのプレーでDF前で勝負するボールを入れたことで得点につながったと思う。相手が前への意識を増していたこともあって、そのギャップがさらに利用しやすくなってたと思う。DFライン前が1ボランチってのもこのスペースができる要因になったかもしれない。

この立ち上がりの得点で試合の流れがセパハンに再び傾く可能性もあった。でも、逆に後半の長い時間で主導権を握ったのはワイタケレだったと思う。この点を見てもセパハンはコンディションが悪いんじゃないかと感じさせられた。そもそも完全に試合を支配してた時間にはあまり目立たなかったけど、この試合のセパハンの内容は必ずしもよいとは言えなかったと思う。

まずセパハンの守備があまりうまく回ってないような印象を受けた。

セパハンの守備は自陣で受ける意図が強くなった。このやり方はレッズとの試合での前半の形と同じで、基本の形であると考えていいと思う。ただ、その内容はレッズとの試合とは違っていたと思う。

そもそもトップのところでうまく守備のスタートが切れてなかったような気がする。3トップ気味に配置された前線の3がただいるだけのイメージが強くなって、効果的に中盤での守備へつなげることができてなかった。結果、セパハンの中盤でのいい守備がなりを潜めてしまった。

こういう前線との関係の問題に加えて中盤の選手自身の個々の守備意識の問題もあったような気がする。ボールに対する寄せがイメージよりも遅くて、微妙に距離を空けた対応が多くなったし、結果として中盤で複数で奪うシーンも少なかった。

それに相手のトップにあまりにも簡単にボールを入れさせてしまっていたのも気になった点。それぞれがうまく連動できずに相手の最初の選択肢のコースを切れてなかった気がする。それにトップに入った後も対応が単発になるシーンが多くて、案外ボールをもたれてしまった。相手のトトの個人技が光ってたと思う。

こういう守備の中で相手の数少ないチャンスでほとんどある程度の深い位置まで持ち込まれてたのが象徴的。最後のところでは相手の人数が足りないことにも助けられて、危ないシーンにはつながってないけど、セパハンらしい中盤での忠実な守備は見られなかったのが残念だった。

攻撃の内容もよかったとは言えない。前線の3人は常に動き回りながらいい関係性を築いてたけど、それがそこだけで完結してた気がする。後ろからの押し上げがあまり目立たずに、前線にうまく厚みを加えることができなかった。逆に前の3人が一気に前線に出て行って、組み立てにあまり参加しないのも問題だったような気がする。だから、うまく前線にボールを運べなくてロングボール一発の攻撃が多くなってしまったんだと思う。ワイタケレの守備の質が改善したとは言ってもレッズ相手にかなり高い位置でボールを持てたことを考えると不満。

この攻守両面の問題が一番表れてたのがカウンターの少なさ。セパハンの一番の特徴であるカウンターがほとんど見られなかったのは残念だった。これは相手が守備的に来たからとかいう問題ではなかったように思う。
守備で中盤で効果的に奪えないから相手ゴールまでの距離が遠くなってしまったことで一気にカウンターに持っていくことができなかった。さらに守備から攻撃の切り替えの遅さも目立ったように思う。奪った後に一気に飛び出していくことができずに、結果1度スローダウンすることが多くなった。その間に相手に組織を作られてしまって、結局あまり得意でない遅攻での攻撃をせざるを得なくなってしまったと思う。切り替えっていう意味では攻→守の質もイメージよりも遅かった気がする。

セパハンにはなんとかコンディションを上げていってもらいたいところ。次のレッズ戦を想定したときに、レッズも調子がいいとはいえないわけだから、低調な内容になってしまう可能性がある。少なくともこの試合のセパハンと横浜FC戦のレッズが戦ったら、相当に面白くない試合になる気がする。

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2007-12-06 Thu 06:20
ミラン×ユーベ
<ミラン:4-2-3-1>
FW:ジラルディーノ
MF:セードルフ-カカ、アンブロジーニ-ピルロ-ガットゥーゾ
DF:セルジーニョ-カラーゼ-ネスタ-オッド
GK:ジーダ

<ユーベ:4-4-2>
FW:トレゼゲ-イアキンタ
MF:ネドベド-ザネッティ-ノチェリーノ-サリハミジッチ
DF:モリナーロ-キエッリーニ-レグロッターリエ-ゼビナ
GK:ブッフォン

この試合のミランはいい意味でも悪い意味でも全くミラン的じゃないサッカーを見せてくれた。特に攻撃面はイメージをガラリと変えた内容だったと思う。

これはユーベと守備との関係性が大きい。ミランのユーベの守備に対するアプローチだとも見えるし、ユーベがミランに本来のやり方をさせなかったとも見える。というわけで、まずはユーベの守備のやり方から見てみる。

ユーベの守備は自陣に4-4-2を作る形。トップがハーフェイライン前後にいて、その後ろの中盤とDFの4-4が続くような形だった。そして、最終ラインの4はかなり高い位置に設定されてた。要するにトップからDFまでを自陣に超コンパクトにまとめる形。中盤の4もフラットなラインを形成してたから、理路整然としたきれいな3ラインがコンパクトに一体感を持った形を作り出してたと思う。

そういう組織を作ったうえで、守備の意図は完全に受ける形。トップも特別にアプローチせずに相手の最終ラインには自由にやらせてた(ピルロを見る役割は担ってたけど)。そうやっておいて、守備を始めるのは自陣にボールが入ってきたところって決めてたと思う。一応、相手の攻撃のスタートになるところにもアプローチをかける場面も見られたけど、基本は受け手へのケア。自陣に入ったボールへの厳しい対応もそうだし、そもそもその前の時点でスペースを与えずにボールの入れどころをなくすって考え方だったと思う。

で、ユーベの守備の狙いは相手をおびき出すことにあったんじゃないかと思う。最終ラインのボールに対しては本当にプレッシャーに行かないから、ミランの最終ラインの選手はボールを持ったまま高い位置まで上がっていくことができた。結果、途中で下手に経由点を作らなくても最終ラインがそのまま攻撃のスタートの役割を担うことができたと思う。

そうなったときにミランの中盤以前の選手はみんな受け手となろうとする。最終ラインがスタートとして機能するのに、下手に低い位置に人数を置いておく必要がないから。今回の試合では遅攻時にピルロが攻撃のスタートとなるシーンがほとんどなかったと思う。

要するに最終ラインが出てきたことで前が押し出されたってこと。だから、最終ラインがハーフェイライン付近までボールを持って出てきて、中盤以前は全員敵陣内っていう形が多く見られることになった。場合によってはSBも敵陣に入って自陣はCBだけっていう時間もあったように思う。

ユーベの方から見れば、これはうまくおびき出したってことになるんだと思う。こういう状況で相手の攻撃を途中で引っ掛ければ、崩すべき相手はほとんどいない。思惑通りに行けば、相手2人に対して勝負をかけられるってシーンもありえるわけで。ミランの絶対的な4-4の組織を崩すことを考えたら、これほど楽なことはない。

だからこそ守備の組織が引っ掛けること重視のやり方になってる。上に書いたような4-4-2の理路整然とした3ラインの形成によって完全に網を張り巡らせてた。ミランが本来使いたい中盤の場所は、ユーベのコンパクトな組織が完全にスペースをつぶしてしまった。それでもミランが強引に中盤を使おうとすれば、その網に引っ掛けられるような状況はできてたと思う。中盤の4の網はかなり厄介な存在だったし、その中盤後ろにすぐにDFの4が控えてることで二重に網を張り巡らせたと思う。

でも、ミランはさすがにこういうユーベの思惑通りには引っかかってこなかった。中盤がつぶされてるのに、いつもの自分たちのやり方に固執するほど頭が堅くはなかったと思う。そして、ミランはいつものやり方とは正反対のやり方に終始したと思う。それが中盤省略+サイド利用の組み立て。

本来は中盤で嫌というほどキープする。ギャップギャップに入りながらボールをつなぐやり方でポゼッション率を高めるってのはいつも書いてるとおり。さらに、いつもの攻撃の第一目標は真ん中の最短距離。サイド利用もあくまでも真ん中を空けるために1度経由するっていうイメージが強いし、SBの攻撃参加も1つ前を中に押し込んで真ん中に厚みを加える意図が強い。

これに対して今回の試合では真ん中から崩しに行ったシーンは皆無に等しかったと思う。そして、中盤を省略する縦一発でサイドに深みを与えるやり方が徹底的に繰り返された。このときにサイド→サイドでサイドを縦に進んで行くシーンが多くなった。ピルロ経由が見られなかったことからも分かるとおり、中→サイドの展開はほとんどなかった。あくまでもスタートのところでサイドを使って、そのままサイドを進攻してくイメージ。

だから、攻撃のスタートとなるのはSBの選手。これは上に書いたように最終ラインがボールを自由に持てたことも関係してると思うけど。この試合でのSBの役割はとにかく攻撃のスタートだったと思う。いつものように前に入って行って高い位置での組み立てに参加するシーンはほとんど見られなかった。

これは中盤省略に関係する。中盤を使わないで前線に入れるから、それだけ縦へのスピードが上がったことになる。要するにSBが攻撃に参加してくるような時間が攻撃の中ではほとんどなかったってこと。これもミランとしては異例だったと思う。

で、攻撃のスタートとしては右SBのオッドがかなり目立った。意図はよく分からないけど(ネドベドに守備をさせるため?)、特に前半は右から崩す意識が異常なほど高かったと思う。だから、攻撃のスタートはほとんどオッドが担ったといってもいいぐらいだった。

こんな感じでボールの出し手はSBが担ったわけだけど、受け手は中盤以前の選手が入れ替わり立ち代りサイドに流れてくることが多かった。多かったのは前線のカカ、ジラルディーノ、セードルフが交互に流れてボールを引き出すやり方が多くなった。さらに、機を見てアンブロジーニだったりガットゥーゾだったりが出てくるって形。

そういう引き出しの動きに合わせて、サイドウラのスペースに一発のボールが供給された。これで一気に距離を稼ぐ形を繰り返し繰り返し使ったわけだけど、実際にそこからチャンスは生まれてないような印象。深みを与えたものの、相手もしっかりと対応してきたから、そのサイドで孤立させられて攻撃の切られることが多くなった。むしろ、そうやって深みを与えて相手のブロックを押し下げた後の二次攻撃が可能性を感じさせた。とはいっても、決定的なチャンスはほとんど作れなかったわけだけど。

この一連の流れの中で目立ったのがジラルディーノ。個人的なイメージとしてはエリア内で待つタイプだったから、この試合で見られたような左右のサイドでの引き出しはプレーの幅を感じさせた。

逆にピルロは乗り切れなかった。上にも書いてるとおり、スタートの役割は免除されて受け手の役割を求められてたんだろうけど、うまくボールをもらうことができなかったと思う。動き自体はボランチの位置から長い距離を走ってトップの場所まで出てくような質の高いランニングもいくつか見られたけど、サイドに意識を向けるチームの中にあって、真ん中の動き出しにはうまくボールが出てこなかったような気がする。

カカについては本来プレーしたい場所であるDFと中盤の間を完全につぶされたのは痛かったと思う。ボールをうまく受けても、相手がファール覚悟でかなり厳しく対応してきたから、思い通りにプレーできなかったかもしれない。いつもはそういう状況の中でもいいプレーを要所要所で見せてくれるけど、この試合はユーベのカカへの対応が素晴らしかったと言えるかもしれない。それでも、FKをもらってる時点で最低限の仕事はしてると思う。

セードルフはいつもどおりのプレー。いろいろ動き回りながらタッチ数を増やした。
立ち上がりはジラルディーノ、カカと同様に前線で引き出す動きが多くなったと思う。これによって前線の枚数が多くなったから、サイドに引き出しても中にもしっかりと選手を置くことができてた。
前半途中には下がり気味でタッチ数を増やす時間もあった。これを見るとサイド→サイドの進攻の徹底は不本意だった部分もあるかもしれないと思った。トレゼゲにピルロが対応されてたから、それを助けに来てなんとか真ん中に攻撃のスタートを作る場面を作りたかったのかもしれない。

こうやってユーベの思惑通りに行かないようにミランは工夫をした攻撃を仕掛けたわけだけど、そういう状況下でもやっぱりユーベの思惑に近い展開につながるシーンがいくつか見られた。そして、それはことごとくチャンスにつながった。

このユーベの思惑を実現するためには守備のやり方のよさだけでは足りない。そこには攻撃の上での工夫も要求される。

そういう意味でユーベは切り替えの速さとそこからの縦へのスピードが光った。奪った後にすぐに縦に入れて、同時に後ろの選手も飛び出していく。そうやって一気に相手ゴールまで迫っていくシーンが多かった。ミランの攻撃から守備への切り替えのスピードを上回ることで、組織を作る前の相手守備陣に仕掛けることが可能になったと思う。

こういう一連の流れの中で経由点の役割を担うことが多かったのがネドベドだった。攻撃への切り替えで1度ネドベドに当てることが多かった。ボールを受けたネドベドは状況を判断して一気に少ない人数でゴールに向かうか、味方の押し上げを待つかの判断をしてたと思う。

ネドベドのこの試合での役割はミランのセードルフと似た質だったと思う。守備では中盤の4のラインの一角として参加し、攻撃ではその4のラインの他の3人よりはやや高い位置に入り込んでくる。サイドにこだわらずにタッチ数を増やすのも似たような点だと思った。

話を戻して。ミランが組織を作る前の攻撃には切り替えのスピード以外にも要因がある。それはここまで書いてきてるようにおびき出したこと。ミランは敵陣に多くの人数が入り、その上で前線に流動性を加えてる。そういう状況で奪われるとどうなるか?守備に戻るときに本来の自分のポジションにすぐに戻ることができなくなる。もちろん、いつものミランなら切り替え後最初の守備のよさによってそういう時間を作り出すんだけど、この試合ではユーベの切り替えに上を行かれたことで難しくなった。だから、攻撃の流れのまま守備に帰るシーンが多くなったと思う。セードルフが右サイドに入るシーンが目立ったのが象徴的(これはネドベド対策にアンブロジーニを当てる意図もあったかもしない)。

こういう状況の中でミランは組織をしっかりと作って守備をする時間をほとんど作れなかった。相手の攻撃を受けるときには多かれ少なかれバランスが崩れてることが多くなったと思う。どうも守備のバランスが悪くて、人が足りないというか、厚みがないというかっていう印象を常に感じさせた。本来、一体感を保ってる4-4(4-3)の間にギャップが生まれることも多くなった。簡単に間に入りこまれて、DFだけが晒されてしまうシーンが目立ったような気がする。

DFだけが晒されるってのは一応の組織を作ったときの前後のギャップによっても生まれてたけど、一番ピンチになったのはカウンターの流れで完全にDFだけに勝負を仕掛けられたシーン。これこそがユーベが狙ってたやり方だったと思う。

それでも実際にはほとんどのシーンでミランが無難に切り抜けたと思う。それはDFだけが晒されたと言っても、ミランのDFの枚数がしっかりと揃ってたから。一気に縦に進んできたユーベはしっかりと人数をかけることができてないから、ミランの守備陣が枚数で上回ることができた。

これはミランが上に書いたようなやり方でユーベの思惑を100%機能させなかったから。いつものように中盤で組み立ててるときに奪われればもっと危ないシーンになってただろうし、そのときに本来のやり方通りにSBが高い位置を保ってたら最悪。中盤を省略するにしても強引に真ん中の最短距離を攻めていけば、奪われたときには相手にとっても最短距離になる。一発のパスでサイドウラに蹴りこんで、相手を押し下げたことでカウンターの脅威を減らした。同時にそのボールの出し手となったSBがあがってくるようなシーンが少なかったのも上に書いたとおり。こういう部分での両者の思惑の交錯は興味深い点だった。

むしろユーベがチャンスを作ったのは高い位置でのカットだったと思う。基本的な守備組織は自陣に作るわけだけど、攻撃後の切り替えではしっかりと守備をしてくる。そういう意味では攻→守備の切り替えもよかったって言えるし、そういう切り替えのよさがチャンスにつながった。

ミランの攻→守の切り替えに比べて、ユーベが上回ってたのは人数のかけ方。ミランの切り替えもしっかりと最初の守備をかけるっていう意味ではユーベと似てるけど、その守備に対しての人数の絡み方はユーベが格段に上回ってた。切り替え後の最初の守備に、2枚目3枚目がすぐに連動して複数で囲い込むことが多かったように思う。

これはミランの考え方による部分も大きかったと思う。ミランは奪った後、基本的にショートパスをつなぐ選択に出る。だから、敵も味方も密集した場所でパスをつなぐことになる。結果、ユーベは高い位置でも複数の関係が作りやすかったんだと思う。もしも一気に広いところに逃げられたら、そういう関係性を作るのは難しかったはず。
そして、奪った後のつなぎの中でボールが入るピルロは狙われていた。ポストに当たったトレ是gの決定的なシュートも高い位置でピルロからボールを奪ったのが起点だった。

組織を作ってからにしろ、攻撃後の流れの中にしろ、ユーベの攻撃は相手のボールを奪ってからを念頭に置いたやり方が目立った。自分たちが能動的に試合を進めるというよりも、相手との関係で攻撃をするイメージ。これは相手がミランだったこと、しかもアウェーだったことも大いに影響してると思うけど。

これを反映して、ユーベの攻撃の中では複数の関係性で崩すシーンがほとんど見られなかった。正確には近い位置で複数の関係を作るシーンがほとんど見られなかったっていえる。ボールを奪持ったら、その選手の選択肢は基本的に2つ。1つはより前線の選手につなぐこと。もう1つは自分の前のスペースを埋めるドリブルをすること。同時にボールを持たない選手は一気に縦に向けてランニングをする。結果、遠い位置での引き出しは増えても近い位置での引き出しはあまり多くならなかった。この試合のユーベのやり方を考えれば問題となる部分ではないけど。

最後にミランの守備について。上にも書いたとおり、ほとんどはバランスが崩れた状態で守備をすることを余儀なくされたけど、その中で意図通りに守備ができたところから見てみたい。

この試合で感じたのはミランの前への守備の意識がちょっと高まってるかもしれないってこと。今シーズンは4-4-1-1で受ける試合が多く見られたけど、昨シーズンの積極的な守備(何度か書いてるように、マンUとの試合での守備の内容は素晴らしかった)の片鱗が見られた。

守備のスタートはトップのジラルディーノ。カカもほぼ横並びになってた点を見ても4-4-2的なイメージがあったかもしれない。とにかくここで重要なのはある程度高い位置に守備のスタートが置かれてること。そして、そこを起点として中盤にかけて切って切って追い込む質の守備が見られた。結果、中盤で引っ掛けられるシーンが多くなったし、高い位置で複数の関係で対応できることも多くなったと思う。今後のやり方に注目(平行放送のCLをチラッと見る限りではやっぱり上からのイメージが強かったと思う。この試合に関してはそのうち見ます)。

ミランは結局この試合でもホームで勝てなかったわけだけど、内容自体に大きな問題は感じなかった。いつものミランとは違う形でも、アプローチの工夫としては面白かったと思う。ただ、個人的にはインザーギを頭から使うのもありだったかなと思う。インザーギに徹底してユーベの高いラインのウラを狙わせ続ける中で4-4の間に無理やりスペースを作り出すやり方も考えられた。

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2007-12-04 Tue 02:26
横浜FC×レッズ
この試合の結果で優勝はアントラーズ。守備が圧倒的に堅かったレッズ、攻撃が圧倒的に驚異的だったガンバに対して一番バランスが取れてたのがアントラーズ。攻守のつながりを一番感じさせた。

結果的には小笠原が帰ってきたのがいい影響をもたらしたと思う。動かないダニーロがスタメンから落ちて、チームがいい方向に向かった。小笠原は守備もがんばったし。

全体を通しては守備ではトップからの献身的な守備とラストの絶対的な堅さ。攻撃では変則4トップの超流動性とこちらも献身的なランニング。SBの利用もうまかった。
日本代表に一番近いサッカーをしてたのは、全然代表選手がいないアントラーズだったような気がする。

個人的なMVPはマルキーニョス。ボールなしでもボールありでもプレーの質が高いし、守備の貢献度もかなり高かったので。

システム的にもアントラーズのやり方は興味深かった。形としてはスタンダードな4-4-2なんだけど、内容はちょっと違う。
前の4人は上にも書いたように変則4トップ。1列目と1・5列目的な選手を並べた。その下で操るのがボランチの小笠原。見た目はボランチだけど、4トップ下とも見える。相方の青木は最終ラインもできる選手。要するに内実は5-1-4みたいな形。

この変則的な形を機能させたのは各選手の万能性(ボランチで言えば、青木も攻撃に出るし小笠原も守備をする)と献身性。全ての選手が全ての役割をしっかりと献身的にやることでチームがうまく回った。個々の意識がチームに一体感をもたらした。

そうなったときにこのシステムが怖さを感じさせた。守るとなれば本気(ハイレベルってこと)で守れる選手が5枚いる。攻めるとなれば本気で攻められる選手が5枚いる(小笠原含め)。絶対的な守備陣が5枚いれば相手は簡単には崩せない。絶対的な攻撃陣が5枚入れば相手は簡単には守りきれない。そして、攻撃陣は守備の仕事、守備陣は攻撃の仕事もしっかりとやる。だから、攻守に渡る厚みがすさまじかった。

このチームを作ったオリヴェイラ監督は素晴らしい監督だったと思う。シーズン当初は結果が出ない中でのメンバー固定に違和感もあったけど、それが結果として戦術の浸透につながった。アジア杯時のオシムのアプローチと同じような意図。

優勝おめでとうございます。


以下、本題の横浜FC×レッズ

<横浜FC:4-1-4-1>
FW:カズ
MF:アツ-滝澤-根占-カタタウ、山口
DF:中島-岩倉-小村-山田
GK:菅野

<レッズ:3-5-2>
FW:ワシントン-永井
MF:ポンテ、平川-長谷部-鈴木-細貝
DF:ネネ-阿部-坪井
GK:都築

レッズには迷いがあったのかもしれない。立ち上がりの時間のどたばた感がかなり気になった。

そもそもメンバーを見る限りではいつも以上に守りに重点を置いた試合と見ることができる。両WBの組み合わせが相馬-平川ではなくて、平川-細貝だった。単純に細貝と相馬を比べれば、明らかに前者が攻撃に偏った選手。逆に細貝は守備の能力が魅力的なわけで、チームとして守りの意識を示していた部分ではなかったかと思う。

それを表すかのように、攻撃は完全に前の3人に任されてた。いつも以上に後ろからの押し上げが全くなかった。あまりにも前の3人だけの攻撃が多いから、やっぱりレッズの選手の疲れが異常なほど溜まってるんだろうと思ったぐらい。だから、後ろからの押し上げがしたくでもできないんだと思ってた。確かにそういう疲れの要因もあっただろうけど、失点後の攻撃の厚みを見る限りでは、攻撃のために後ろを晒したくない意識が強く出ていた気がする。

ただ、このいつも以上に守備に偏るやり方が当初の狙い通りかと言えば、微妙だった。確かに細貝を使ってる時点で安定を求めたのは見て取れるけど、あまりにも消極性が目立ってた気がする。優勝がかかった試合のプレッシャー、さらにそういうムードを振り払えるトゥーリオの不在が少なからず影響を及ぼしてたような気がする。

これを感じたのは守備の面から。当初の狙い通り、いつも以上に守備に重点を置く意図があったんだとしたら、当然守備はいつも以上に安定感があるはず。にもかかわらず、この試合のレッズは全く逆の状況だった。攻撃に人数をかけなかった時間にも、その守備の安定感というものが全く感じられなかった。この辺に違和感を覚えた。

そもそも最初のプレーからおかしさを感じさせられた。横浜FCは最終ラインでボールを奪った後の展開を理想的に作って、最初のチャンスを作った。スタートの縦パスが入ったカズ→カズが落とした中盤の選手→そこから展開されたボールを受けたカタタウ→カタタウの個人技っていう一連の流れの中でレッズの守備が全く機能しなかった。確かにカウンター的な側面があったものの、この流れの中で全く守備の勝負がかけられずにゴール近くまで行かれたのはレッズらしくない。この一連の流れに象徴されるような守備が立ち上がりの時間には目立ったと思う。

レッズの守備はどこで何をするかってことがかなりあいまいだった。レッズの守備の形として見られるのはよくも悪くもバランスが崩れた形。5-2-3で最後を固めるやり方。それがこの試合では中盤にもしっかりと選手を置くことが多くなったと思う。中盤が2枚になってスカスカになるいつものブロックから比べれば、選手の配置としては明らかにバランスがよくなった。ただ同時に守備の勝負どころがはっきりしないっていう状況が生まれた。

いつもなら途中までをやられても最後でやらせないっていう守備ができる。最後に人数をかけて、ことごとく跳ね返すってのがレッズらしいやり方。それが今回の試合では守備の選手配置が変化したことで、そういう守備の勝負どころをどこに置くかってことがはっきりしなくなった。選手配置の濃度がピッチ全体で悪い意味で均一になってしまって、ストロングポイントを作り出せなかったような気がする。その中で守備のやり方自体にもあいまい性が目立ってた。

まずはボールに対する対応の甘さ。中盤のボール保持者に対するアプローチが甘かったように思う。これはいつも見られるといえばそうなんだけど、この試合ではその内容が違ってた。いつもはシステム的に中盤が2枚しかいないってことが、そういう状況をもたらす。それに対して、今回はもっと本質的な問題。人は足りてるのに寄せきれないシーンが目立った。

もちろん個々の意識の要因がなかったわけではない。そこには疲れが溜まってるって要因もあったと思う(疲れについては何度も書くけど、それぐらいに感じさせられた)。
でも、それ以上にチームとして中盤でどこまで厳しく行くかってことがはっきりしてなかったのが問題だったような気がする。中盤で勝負をかるにしても最低限やらせない守備にしても、次のところとの連動は絶対的に重要になってくる。その意思統一ができてないことで、中途半端な寄せが多くなってしまった。ただ、いるだけってことが多くて相手のボール保持者の動きに合わせてズルズルと下がってしまうことが多かったと思う。横浜FCの選手のレッズ陣内でのドリブルに直線的なコースが空いてるっていう状況が多く見られた。

いつものやり方と今回のやり方は同じ中盤を空けるといってもやっぱり質が違った。いつものやり方では遅れてでも長谷部とか鈴木がアプローチをかけてくる。これは相手にとってはかなりのプレッシャーになるはず。それに対して、今回は2人とも待って受けてしまった。この時点で主導権は完全にボール保持者にあるわけだから、そのプレッシャーはあまりないと思う。

とは言っても、レッズとしてはそうやって中盤を空けたとしても最後を固めればいいってのがいつものやり方なのも事実。そういう意味では中盤での対応のあいまいさはいつものレッズならば致命的な部分にはつながらなかったはず。でも、この試合のレッズはそうではなかった。

中盤でのボールへの対応は出し手に対する対応と言い換えられる。だから、出し手をフリーにしても受け手を自由にさせないのが本来のレッズのやり方ってことになる。そして、今回は出し手だけではなくて受け手もかなり自由にさせてしまっていた。トップの位置のカズがどれだけ真ん中の場所でボールを受けられたかって話。いつもなら完全に密着マークでケアするはずのレッズDFが、この試合ではちょっと引いたりしたカズを完全に空けてしまっていた。そして、そこからの展開も生まれた。カタタウへの対応を見ても、ちょっと受け手をフリーにしすぎることが多かった気がする。特にカタタウにはドリブルで好き放題やられた。

1つの要因は上に書いたような守備のあいまい性。単純化すれば出し手→0受け手→100だった守備の意図が、今回は出し手→30受け手→30になったイメージ。どちらもあいまいになったことで、守備力の総量が減った感じだった(あくまでも単純化)。
現実的に考えると後ろの枚数が減ったことが大きい。中盤の前への意識が高まったことで、最後のところにかけられる人数が少なくなった。配置的なバランスがよくなったことで逆にトップへのコースが空いてしまったイメージ。いつもなら最後に人数をかけることで、その中に相手のトップを埋め込ませてボールを触らせない。そういうやり方ができなくなってしまったと思う。

そして、こういう守備のやり方の変更以上に大きかったのが相手の組織との相性の悪さだったような気がする。レッズの3バックに対して横浜FCは1トップまたは3トップの形。3×3ではさすがにまずいのでレッズは一応の対応を見せてきた。それは守備時には平川を下げて後ろを4バック気味にするやり方だった。
 
  ワ  ポ
    永
   長 鈴  細
平 ネ 阿  坪

その上で対応関係を作ってきた。坪井×アツ、阿部×カズ、平川(ネネ)×カタタウ。でも、これはあくまでも応急処置的だった。一応は4×3で通常状況を作り出せたけど、後ろの安定感はあまり感じられなかった。

それが出たのが横浜FCの得点シーン。右に流れたカズに阿部が引っ張り出され、そもそもアツを見る坪井も右サイドに。結果、真ん中の場所はネネ1枚だけだった。得点者の根占の中盤からの飛び出しについてきた長谷部を合わせても2枚。カウンターじゃないのに(スローインからの流れ)これだけレッズのゴール前が薄くなるのも珍しかったように思う。

この得点シーンは相手について行くことをはっきりさせて、そこで止められなかったシーン。でも、他のシーンを見ると見るべき相手を離してしまう場面も見られたのは上にも書いたとおり。カズとかカタタウに簡単にボールが収まってた。本来のレッズを考えれば、しっかりと密着する失点シーンみたいな形が普通だと思う。このシーンは真ん中から2枚が引っ張り出されたことで失点につながったわけだけど。他のシーンでそこがルーズになってしまうのはレッズらしくなかった。

それからこれが応急処置的だってのは左右のバランスの悪さを見ても分かると思う。細貝と坪井の2枚の関係になってる右サイドに比べて、左サイドは実質的に平川1枚が対応。これが横浜FCのカタタウが生きてきた要因だったと思う。同時にこのサイドは横浜FCの山田も積極的に攻撃に出てきた。そうやって数的優位を作った右サイドを使って横浜FCはボールを深い場所に運んだ印象。

この試合のレッズは右サイドに気を使ってるように感じた。そもそもスタメンに細貝を使っていることを考えても、相手の左サイドを押さえる意図が強かったような気がする。この点については横浜FCの試合をあまり見ていないだけになんとも言えないけど。
攻撃時にも右サイドから攻めることで相手の左サイドを押し込む意図が感じられた。平川と比べると明らかに細貝の方が攻撃で目立ってたし、そのサイドには永井が流れて出てくることが多かった(ポンテも)。

このサイドの攻防はある意味では面白かったと思う。でも、それを制したのも横浜FCだった。

そもそもレッズの変則的4バックは守備の組織作りの上で構築されるもの。攻撃時は平川も高めのポジションに入って後ろは3バックの形になってた。だから、攻撃後の流れでは3バックの形で受けることになる。そして、横浜FCはセオリー通りにその3バック脇を使う意図を明確化した。中盤の選手が流れることでサイドで数的優位を作ったり、単純な一発のパスでサイドに供給したり。

このときにレッズの3バックは横に間延びする状況が生まれてしまった。アツを見る坪井は右サイドに出てのプレーが目立ったし、逆のネネもカタタウだったり山田に対する対応で引っ張り出されることが多くなった。結果、真ん中が薄くなってしまったと思う。これは上に書いた失点シーンにもつながってる部分だった。

この失点後、レッズは完全に浮き足立ってしまった。攻撃には序盤と比べると明らかに人数をかけるようになったけど、気持ちばかりが先に行ってバランスが悪い。守備も立ち上がり以上にバランスが悪くなってしまった。

まずはその守備から。守備に関しても気持ちが空回りしてたような印象を受けた。立ち上がりには寄せが甘かったのは上にも書いたとおりだったけど、失点後の時間は全く逆。前へ前とボールに積極的にアプローチを仕掛けていった。個々の守備意識だけを見れば改善したように見える。

ただ、問題は何度も書いてるように気持ちが空回りしてたこと。前へ前への積極的な守備が全て単発だった。周囲との連携を考えずに、全ての場所で半ば無謀な勝負に出て行ったようなイメージ。そうやって連動性が築けないから、1つめを抜けられると簡単にその選手が出てきたギャップに入られてしまった。守備における個の分断が起こって完全にバラバラになってしまっていたと思う。

そして、このバラバラな守備を横浜FCがかなり効果的に突いてきた。前半のいい時間帯は今年の成績が嘘のようにいい形での組み立てが見られたと思う。そして、このベースにあったのが4-1-4-1システムと流動性、個々の引き出す動きだったように思う。

そもそも4-1-4-1システムがトライアングルを作りやすいシステムであることは今までにも何度も書いてきたとおり。クリスマスツリーの4-3-2-1もトライアングル形成には向いてるけど、両サイドを効果的に使いたいことを考えると4-1-4-1が効果的だったように思う。

もちろん、このシステムだけではだめ。この試合の横浜FCはトップのカズをはじめとして全体を流動的に動かすことによってうまくパスコースを作り出してた。カズとか滝澤、根占がサイドに流れたり、山口がうまく上がってきたり、SBの攻撃参加を利用したり。特にカズの流れによってトップレス的な状況が生まれたから、相手はかなり混乱させられてた。
そうやって基本的なトライアングル形成を念頭としたパスコースの創出が多く見られた。ここには近い関係での引き出す動きが重要なのは言うまでもない。

このシステムと個々の意識利用の基本的なトライアングル形成によって横浜FCはボールに対して常に複数のパスコースを創出した。これがレッズの空回りにピッタリ合致。
相手が前へ前への厳しく来ることを考えると、そこに連動性がなくても、ボール保持者はかなり焦ることになる。五輪代表がカタールの単発チェックにやられまくったことを見れば分かると思う。
対して、今回の横浜FCのように複数の選択肢があれば単発チェックは何も怖くない。むしろ、チェックに来た選手が出たきた場所のギャップを使えるからラッキーなぐらいだと思う。

このやり方でボールを支配した横浜FCだけど、そこには個の力も欠かせなかった。

一番分かりやすいのはカタタウの仕掛け。とにかく深い場所で積極的に正対する相手に仕掛けるのは相手にとってはかなり嫌なプレーだったはず。こういう仕掛けの積極性はカズにも見られた。積極性って言う意味では遠目からのシュートのチャレンジもよかったと思う。

ドリブルに関しては仕掛けの質だけじゃない。上にも書いたけど、相手の寄せが甘かった時間はつなぎのドリブルも多くなった。なんでもかんでもパスを出すんじゃなくて、スペースを埋めるドリブルで距離を稼ぐ判断もよかった。

さらにパス回しでの個の力はコースを創出するポジショニング。これには相手のギャップに入り込むうまさが要求された。特に目立ったのが中継でも言われてた山口。常に味方に逃げ場のコースを作ってやることで、無謀なチャレンジを減らして作り直す余裕も生まれたように思う。
それから山田の動きもよかった。攻撃参加の際にタッチライン際にこだわらずに中に入ってくる動きが多くなった。味方がゴール前に多く入って、1つ下にスペースが空くことが多い中でのこの判断はよかったと思う。相手の跳ね返したボールを拾うことで波状攻撃につなげることができてた。

この一連の横浜FCの攻撃の中で強いてあげるなら、もっとゴールに向かうプレーを増やしてほしかったってこと。チャンスになったのはカタタウの仕掛けとミドルシュート。得点シーンのように2列目からの積極的な飛び出しがもっと見たかった。カズが流れることが多い中で、もっと後ろからの飛び出しを増やすことで攻撃のバリエーションが増やせたんじゃないかと思う。ちょっとパスをつなぐための動きに偏ってた気がする。

対して横浜FCの守備×レッズの攻撃っていう側面でも横浜FCの攻撃が上回った。逆説的だけど、レッズの攻撃の中で可能性を感じさせたのは前の3人だけで攻めてる0-0の時間帯だったと思う。

そもそも立ち上がりは横浜FCがかなり積極的に出てきた。失うものはない強さで積極的に前へ前への姿勢を見せてくれたと思う。そして、これは守備面にも見られた。

立ち上がりの守備は4-1-4-1の本来の特性を利用したものだった。トップのカズの積極的なチェイスをスタートとして中盤の4の網で引っ掛ける意図を持ってたように思う。そして、この中盤の4の守備はある程度機能してた。相手の攻撃のスタートとなる鈴木の長谷部のところには一気に距離を詰めて対応した。結果、自由にボールを展開させなかったし、複数での対応の中で奪える場面も目立った。

問題はこの前線の4を抜け出されたとき。中盤の4の守備はよかったけど、この4と後ろの4-1との間にギャップがあった。だから、前線の守備を次に連動させることができなかったと思う。さらに言えば、中盤の4を抜け出されると即DF晒されシーンが生まれた。立ち上がりはあまりにも多くDFだけでの守備が見られたと思う。この辺には今シーズンの結果の面影を見せられた。

ただ、この状況でも失点まで行かなかったのは一重に相手の攻撃が3人しかいなかったから。DF4枚だけが晒されてるとしても、相手が3枚ならまだ数的優位。この数的優位によってなんとか持ちこたえてたような印象が強かった。でも、運がよかったっていう側面も多大にあったと思う。
レッズとしてはこの晒されたDFラインにもっと効果的に仕掛けたかったし、この時間に畳み掛けたかった。でも、それをするだけの人数が高い位置まで上がってこなかったってのはここまでにも書いてきたとおり。

そしてそのうちに横浜FCが得点。これによって横浜FCは守備の内容を安定感のあるものに変更してきた。前への意識を捨てて、自陣で受けるイメージを強くしたと思う。この時間から終了時までは本来レッズがやりたいことを横浜FCがやってた気がする。要するに1点を守るための引きこもり。

ただ、やっぱり前後半ではイメージが違ってた。前半の残り時間の方がレッズの攻撃に怖さがなかったから、バランスが崩れずに横浜FCはその後の攻撃でもいい形を作れてたように思う。

これもレッズの気持ちの空回り。まだまだ時間は多くあったのにパワープレーみたいなことになってた。ポンテ、ワシントン、永井が3トップ気味に並びWBは超高い位置、さらに長谷部まで前線に出て行った。立ち上がりとは一転、前に人数は揃ったけど、そこに誰がボールを運ぶんだって話。中盤が全くなくなってしまったから、せっかくの前線に入った選手に効果的にボールを供給できなかった。その間に相手に引っ掛けられたり、跳ね返されたりってことが多くなったと思う。そういう中で前半は完全に横浜FCペースで終わった。

これに対して後半のレッズはしっかりと修正を加えてきた。この辺はさすが。分かりやすかったのがネネ→田中の交代だったと思う。

この交代によって守備が安定した。前半にあいまいだったところにメスを入れた印象。変則4バックで守ってた最終ラインを完全な4バックしたことが1つ。さらに4-3-3同士にして見るべきところをはっきりしたのが1つ。
これに加えて、後半は相手が消耗したこと、散々やられてたカタタウが交代したこと、前がかりにならざるを得ない状況で相手を押し込んだことも重なって、前半ほどの危ないシーンは作られなかった。リスクを犯してるだけに1度カウンターを食らうとピンチになったけど、高い位置に人数を入れたことでそういう場所での守備も効果的に決まってたから大きな問題にはならなかった気がする。

ただ、攻撃については必ずしもうまく行ったとは言えない。確かに相手を押し込むことには成功した。はっきりと3トップにしたことで相手のSBを押さえつけ、そこのポンテのプレッシャーも加わったし長谷部も積極的に出て行った。ここまでは前線とあまり変わらない気がするけど、後半はSBがいたのが大きかった。そこを利用しながらSB→WG(右サイドが多かった)によって前にボールを入れること、攻撃に深みを加えることに成功したと思う。

でも、攻撃に深みを加えることで終わってしまった。横浜FCの人数をベースとしたブロックに最後のアプローチはことごとく跳ね返されてしまった。いつもレッズが他チームにやってることをそのままやられてしまったイメージだったと思う。

ここにおいてレッズの最後の崩しのバリエーションのなさが露呈した。特にポンテが故障(?)で後半はほとんど仕事ができなかったのも痛かったと思う。

このレッズの最後の崩しがうまう行かない原因はボールに対する動きが少ないから。ほとんどの選手がボールを待ってる。だから、前線に動きを作ることができない。攻撃の選択肢は少ないし相手のブロックにプレッシャーをかけることもできなかった。

この動きの少なさがワンパターンな攻撃を生んだ。3トップは変則的に田中-ワシントンの2トップ+右WGの永井みたいな形。真ん中を固める横浜FCのブロックに対してはサイドの永井が空くことになった。他の場所に出すところもないから、とりあえず永井に預ける。永井は別にやることもないからそのまま上げる、もしくはドリブルでちょっと深いところまで行ってから上げる。中は待ってるだけ。この連続。たまに永井が細貝に変わったぐらいだった。

この前線での動きのなさは深刻だったように思う。待ってる選手が多いだけに全く動きが作れず、前線が詰まってしまう状況が多々見られた。ダイナミックな動きのなさはやっぱり疲れが影響してるのかも。それがそのまま最近の得点力不足に現れてた気がする。

そうなると個頼みになるんだけど、後半は人数かけブロックでその個がプレーするスペースをつぶされてしまった。前半のスペースがある時間には横浜FCの守備陣がよく守った(これは後半もだけど)。特に山口。カウンターの芽を摘み、ワシントンへのパスを途中で引っ掛け、DFが抑えたワシントンを前後で挟み込み、ポンテを見、そのエリアに後ろから入ってきた選手(多くは長谷部)にも対応。1ボランチに求められる多くの仕事をこなした。

横浜FCは最後の最後で維持を見せた。内容も伴ってたからこの勝利はフロックではないはず。対するレッズは疲れを隠し切れなかった。トヨタカップまで一週間しかないけど、どうやって立て直してくるか。厳しいことを言えば、どんどんと悪い方向に向かってる現状ではセパハンにリベンジされる可能性がかなり高いと思う。天皇杯敗退をいい方向に取って、ここにうまう照準を合わせられるか。

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2007-12-01 Sat 16:46
リヨン×バルサ
<リヨン:4-3-3>
FW:ゴブ-フレッジ-ベナルファ
MF:ジュニーニョ-ファビオ・サントス、トゥララン
DF:グロッソ-アンデルソン-スキラッチ-ルベイエール
GK:ベルクトール

<バルサ:4-3-3>
FW:イニエスタ-ボージャン-メッシ
MF:グジョンセン-シャビ、ヤヤ・トゥレ
DF:アビダル-ミリート-プジョール-ザンブロッタ
GK:Vバルデス

立ち上がりのリヨンの守備は中途半端なやり方が目立った。全体として意図がはっきりせずに、一応の守備の対応の組み合わせによって守備が成り立ってたようなイメージだった。

その守備のスタートは一応トップのフレッジ。このフレッジは一応相手の最終ライン(CB)のボール保持者に対してチェックに行く意識が見られた。ただ、そこではっきりとした意図とか姿勢が見られないから、相手のボール保持者はプレッシャーをあまり受けなかったし、味方の連動にもつながらなかったと思う。事実、立ち上がりはバルサのミリートが十分に攻撃のスタートとして機能した。
その最終ラインに対する対応としては、相手のSBに対して対応しようとする一応の意思も見られた。SBにボールが入ったところでチェックに行ってた。ただ、これに関しても、ザンブロッタが十分に攻撃のスタートとして機能してたことを考えるとあまり機能してたとは言えない。もっと言えば、ザンブロッタの積極的な攻撃参加も消えなかったから蓋にもなれてかったような気がする。

こういう前線の守備のスタートに対して、後ろは対応する人につく意識がはっきりしてた。この人につく意識は試合全体を通して見られたことだけど、立ち上がりに関しては前線の守備との間に意図のズレがあったように思う。前が一応追いかけてるから、後ろには連動性を求めたいけど、後ろは関係なく自分の対応する相手を見るやり方だった。結果、前の守備が無駄に終わってしまったような気がする。

それにこの人につく意識をどこまで継続させるかがはっきりしてなかった。相手が本来の場所にいるときは問題ないんだけど、動いた相手にどう対応するかってこと。特に引いてボールをもらいに行く相手に対する対応が気になった。多くの場合では、そういう相手についていってブロックの外に引っ張り出されてしまい、バランスが崩れることが多かったように思う。これはリヨンの守備ブロックがどこからどこまでかってことがはっきりしてなかったから生まれた気がする。

こういう立ち上がりのリヨンのあいまいなやり方だけど、一応は機能してた。バルサの出し手も受け手も完全にフリーにするってことがなかったから。バルサにチャンスを作らせないってことを考えると成功だって言えたかもしれない。
バルサの立場を考えると、立ち上がりから攻撃に出る必要がなかったってのも影響した。攻撃が詰まれば、1度後ろに戻してやり直すような余裕を持った組み立てが見られたと思う。ゆったりとしたペースでの展開が多かったから、中途半端なリヨンの守備も致命的にバランスを崩すことにはつながらなかった。

それでもリヨンは深い場所にまで入られるシーンが多かった。これはバルサの横の質の大きな展開によるものが目立ったと思う。横への展開を繰り返され、左右に動かされる中で徐々に守備ブロックのバランスを崩されていった。最初の守備の設定では高い位置に置いた守備ブロックが遠いとこ遠いとこをつながれるうちにズルズルと下がっていってしまったと思う。そうやってバルサが陣地を増やしながらポゼッション率を上げていった立ち上がりだった。

でも、そういう場面では最後のシーンに人をかけたブロックでなんとか跳ね返してた印象。そもそもの守備のバランスも特別悪いものではなかったし、バルサもゴールへの意識がそれほど高くないこともあって、膠着状態が続くことが予想さえれた。

と思ってたら、予想以上に早い時間に試合が動いた。バルサがカウンター1発で先制し、その後すぐにリヨンがお家芸のセットプレーで追いついた。

そのバルサの先制点。この場面はこの試合の守備における考え方が表れてたシーンだったけど、それは後述。ドリブルのボージャン(フリーランニング)とメッシ(ドリブル)が相手の1人に仕掛けることによってどちらに対する対応もあいまいになった。この工夫は頭のよさを感じた。その中で相手はとりあえずボールを持ったメッシへの対応を選ぶ。その瞬間メッシはボージャンにはたく。ボージャンは当然のようにフリー。そして、この一連の流れが右サイドで行われてる間に逆サイドではイニエスタがするすると上がってきた。結局、ボージャン→イニエスタのパスで勝負あり。DFとGKの間に通したボージャンのパスの質はすばらしかったし、チームとしてもいい展開の結果生まれた得点だった。

この一連の取り合いの後、試合は本当に膠着状態に入った。これにはリヨンの守備のやり方の改善が大きかったように思う。

得点後(失点後から徐々に変わってたけど)リヨンはあいまいだった守備をはっきりさせた。中途半端な相手の最終ラインへのアプローチを捨てて、完全に引いて受ける体制を作りだした。その中で人につく守備は継続されたと思う。ここで利用されたのがシステム上の合致。両チームが4-3-3同士だったから、見るべき選手が定めやすかった。その上で相手の低い位置は自由にさせるっていう意思統一ができてたから、ブロックから引っ張り出されてバランスが崩れることもなくなったと思う。どこまで相手についていくかがはっきりした。

さらに、組織としてのバランスもよくなった。上に書いたように選手がブロックから引っ張り出されないってのもそうだけど、コンパクトな守備ブロックが形成できたのが大きかったと思う。立ち上がりも最終ラインを高く上げる意図は見られた。でも、同時に前線がズルズルと前に出て行ってしまうからコンパクトな守備ブロックの形成にはつながらなかった。それが全員が自陣近くまで引いて受ける体制を作ったことで、前後の距離が縮まることになった。

人にしっかりとつきながら、コンパクトな守備ブロックでスペースも消したリヨンに対してバルサは攻撃の術がなくなってしまった気がする。前線にボールの入れどころがなかくて最終ラインでの保持時間が長くなってしまった。

そうやって前線にボールが入らないから前の選手がボールを触りに下がってくる。両WGのメッシだったりイニエスタが本来よりも低い位置でボールに触るシーンが多かった。そして、何よりも痛かったのがシャビの位置。シャビはほとんどトゥレと横並びの関係でのボールタッチが多くなったと思う。これによってトップ下不在の状況が生み出されてしまったと思う。

このトップ下不在の原因はシャビだけじゃなくてグジョンセンにも関係すること。グジョンセン自身の動きはよかったと思うけど、チームの1ピースとしてみるとちょっとフィットしてないような印象を受けた。
この試合、グジョンセンが繰り返したのは2列目からトップの場所に飛び出すような動き。相手の守備の対応が薄い1ボランチのところからの飛び出しだったことを考えても、いいチャレンジだったと思う。でも、そこに対して全くボールが供給されなかった。

結果、このグジョンセンの前への意識のデメリットばかりが浮き彫りになった。OMFの2枚のうち、シャビはボランチの位置でグジョンセンはトップの位置に動いた。だから、全体としての形としてはボックスの4-4-2みたいな形。
この形になるとトップ下の位置にスペースができる。そのトップ下のスペースをSMF(メッシとかイニエスタ)とかトップ、ボランチが効果的に使えれば問題ないんだけど、リヨンがコンパクトなブロックがつぶしてるスペースにわざわざ入り込もうとする選手はいなかった。結果、トップ下のところに経由点を作れなかった。ボールを受けたい選手はかなり低い位置(リヨンのブロックの外)まで下がってくるから、前後の分断状況も生まれてしまった気がする。

この状況の中でバルサは前線にボールを入れられなくなってしまった。距離が遠いし、選択肢が少なかったから仕方がないと言えば仕方がない。最終ラインで回す→ちょっと様子見に縦パスを入れる→相手に対応されて前に行けない→戻す→…っていう繰り返しだった。こういう状況だからSBだったりボランチだったりが積極的に攻撃に出るシーンも作れなかったと思う。ただ、あくまでもボールを支配してるのはバルサだった。最後のところまでは行けなくても主導権を握ってたと思う。

これはリヨンの守備の問題。リヨンの守備はあくまでも仕事をさせないことを大前提に置いてた。逆に自分たちが能動的に奪いに行く姿勢が見られなかったと思う。完全に引いて相手がブロックに入ってくれば対応して戻させる。守備の勝負どころがはっきりしなかった。これはバルサの個に対して飛び込んで外される怖さがあったんだと思う。基本は1×1だから、1人が外されるといろんなところにギャップが生まれる可能性があった。そういうわけでリヨンは守備の勝負に行けずに、ただひたすら相手に攻撃させないことだけを考えてたと思う。

こういう状況だからバルサはなんだかんだでシュートまで行けることが多かった。攻撃を始めてからの時間はかなりかかるけど、それでも途中で奪われずに最後のシーンを作ることができた。守り続けてる間にリヨンの守備に微妙なギャップができたり、バルサが個の力で打開してしまうようなシーンができるのは仕方がない。途中で相手の攻撃を切るわけではないから、結果的にシュートまで行かれるのは必然だった。だから、リヨンの守備は相手の攻撃の機会をなるべく減らす質だったって言ってもいいと思う。

そうやってバルサが深い位置に入るシーンではシャビが高い位置で絡むことが多くなった。シャビが高い位置に入ってきたときには、他の選手に比べると自由になれることが多かったように思う。

それは攻撃の組み立てで1つ低い位置に入ってたことが影響してたと思う。リヨンは4-1-4-1の守備ブロック。ボランチの1に入ったトゥラランは守備のフリーマン的な役割だったと思う。他の場所は1×1をはっきりさせてたけど、トゥラランのとこだけは入ってきた選手に対応するって形だった。
もともと相手が複数そのスペースに入っていれば、ファビオ・サントスなんかがやや下がり気味のポジションに入って対応してたけど、後ろから飛び出してこられるとどうしても対応が遅くなってしまう状況があったような気がする。結果、シャビが浮く状況が生まれてしまったんだと思う。
ちなみにシャビだけじゃなくてメッシとかイニエスタなんかが斜めに入ってきたときにもチャンスにつながった。やっぱり味方がいないトップ下のギャップをうまく埋められたときがチャンスになった気がする。

でも、バルサは押し込んだシーンでも崩しきるところまでは行かなかった。一番可能性を感じたのは、相手を完全に押し込んで後ろから出てきたヤヤ・トゥレがフリーでミドルシュートを打つっていうやり方。たぶん2つぐらいあったと思う。要するに基本的にはブロックに仕掛けられなかったっていえる。

もちろん要因の1つはリヨンの守備のよさ。設定時はバランスを重視したブロックを高い位置にコンパクトに作ったけど、1つ入り込まれたらすぐにゴール前の守備に移行した。前の選手の戻りも速くて、ラストのブロックも人数ベースの堅いものになったと思う。

ただ、やっぱりバルサの攻撃の問題も感じさせられた。それは前の連動性と動きの少なさ。例えばトップの位置に人がいなくなってしまう状況が多かった。ボージャンはサイドに流れることが多かったんだけど、そのときに誰も真ん中にできたスペースに入ってこようとしなかった。組み立ての段階ではトップの位置に出て行く動きを繰り返してたグジョンセンも、なぜかそういうときには真ん中にいなかった。その辺もグジョンセンがいまいちフィットできてないと感じた部分。ただ、後半はボージャンの流れとグジョンセンのスペース入りがかみ合いだしてチャンスを作ってた。

とはいっても、全体としてはやっぱり個の分断を感じさせられた。そもそも前線の枚数が少なかったのは上にも書いたとおり。結果、距離が遠くなって関係性が築きにくかった。
さらに組み立てのときにもWG⇔SBをはじめとした関係性が見られなかったような気がする。結局、足元足元をつなぐ質の動きが多かったしスピードアップも図れなかった。

こういう個々の分断がリヨンの守備を機能させた要因になったかもしれない。1つの局面に複数が有機的に絡んでこないから、リヨンの選手は自分の責任下にいる選手に意識を注ぐことができた。

このバルサの個の分断は昨シーズンの終わりぐらいにも見られた状況。1人1人の距離が遠くて、個人の突破でしか打開策が見出せなかった。そのときはランニングなどの献身性の不足が要因だったと思うけど、この試合では連携不足の影響が大きかった気がする。上に書いたトップレスの状況も連携不足。前線の3トップとグジョンセンはあまり試してない組み合わせだろうから、前線で有機的な関係性が築けなかった。もちろん動き自体も少なかった気がするけど、それもどこに動けば分からないっていうイメージが強かった。

逆に2点目のPKにつながったプレーは関係性が築けてた。左サイドに流れてボールを受けたボージャンの外をザンブロッタが抜いていった。この2人にリヨンの3人が寄せられて、近い位置にいたメッシへの対応が一瞬甘くなった。その瞬間、一瞬のギアチェンジ(メッシらしい)でメッシがエリアに侵入。そこに十分にタメたボージャンからパスが出た。完全に対応が遅れた相手が思わずファールをしたシーンだった。ちなみに中のスペースにはちゃんとグジョンセンが入ってた。他のシーンではこうやって相手守備を混乱させられるシーンを作れてなかったように思う。

対するリヨンも攻撃の状況は似たようなものだった。組織としての崩しがあまり見られずに、個の力に頼らざるを得ない状況が生まれてたと思う。さすがにバルサの個の力と比べると見劣るだけに、バルサよりも事態は深刻だったかもしれない。

そもそも立ち上がりは全く満足に攻撃の組み立てができなかった。それはバルサの守備との関係が大きかったように思う。

そもそもバルサの守備は個々の守備による部分が大きい。ボールの近くにいる選手がボールに激しくプレッシャーに行き、後ろは入りどころを厳しく狙う。1つ1つを厳しく行きながら相手の攻撃の流れをぶつ切りにするやり方。

このことを考慮したとき、この試合の前線の組み合わせはこのチームの中では守備ができる選手が揃ったっていえる。だから、切り替え後最初の守備がかなり効果的に機能したと思う。切り替えが速く最初の守備が効果的に効いて、リヨンは奪った後に余裕が全くなかった。そこから抜け出しても縦に入ったところをことごとくつぶされた。結果として守備から抜け出せない流れになってしまったと思う。切り替えで蓋をしてくるヤヤ・トゥレも厄介な存在だったと思う。

バルサはこうやって高い位置からの効果的が見られたわけだけど、この試合に関しては守備の意識は低い位置にあったと思う。低い位置で4-1-4を作って受ける意識を考えると、リヨンのそれと似たようなイメージだったって言えるかもしれない。ただ、実際にはちょっと違ってたけど。バルサは高い位置で奪うチャンスがあれば一気に勝負をかけて奪いに行き、ボールを相手に保持されれば下がって受ける質。対するリヨンは切り替え後の守備は最小限の時間作りにして、あくまでも守備の組織を作ることを優先した質だった。

何にしてもバルサは4-1-4で受ける意識があった。これが見られたのが上に書いた1点目のシーンにつながった守備だった。このシーンは相手にボールをもたれた瞬間にバルサがさっと受ける組織を作った場面。その中で相手の縦パスを引っ掛けたところからのカウンターだった。相手が出てきたウラをつくことで完全にカウンターに結びついた。

このシーンはもう1つ守備の特徴が見られた。それがボージャンの役割。このシーンではトゥラランに後ろからの突っかけることでミスパスを誘発したように思う。ボージャンは4-1-4が引いたときに、このトゥラランを見ることが多くなった。しかも、このシーンに見られるように後ろから忍び寄るような形で。そうやってリヨンの攻撃のスタートをつぶす役割を担ったように思う。

それ以外にもボージャンの守備の貢献度は高かったように思う。切り替え最初の守備はもちろん、そういう切り替えで味方が相手を足止めしたときのフォローも速かった。特にサイドでもたついた相手に対して、すぐに数的優位を作るようなフォローが見られたと思う。さらに、次のコースに入って相手のコースを限定させるポジショニングもうまかったように思う。相手の中とか後ろとかへの選択肢を削るシーンが多かった。攻撃の面がピックアップされる選手だけど、この若さでこれだけ頭を使った守備ができるのはすばらしいと思う。

こういうバルサの守備に対してリヨンが主導権を握ったのは前半の半ばあたりから。この時間帯になって、バルサが前線での守備の厳しさをやや弱めた。基本的に高い位置の守備にはハイペースだったから、それを続けるのは無理っていう判断だったろうし、攻撃で高い位置に入り込まれなくなったから単純に効果的に守備が効かなかったってのもある。

とにかく余裕を持って攻撃のスタートを切れるようになったリヨンが徐々に流れを巻き返し始めた。そのリヨンが狙ったのは、バルサの1ボランチの場所。相手のブロックへの仕掛けの最初はそういう中途半端な場所にボールを供給することが多かった。これはアプローチとしては理にかなってるし、実際にボール自体は入った。

でも、その次が絡んでこなかった印象。入ったとしてもその選手が次に展開する場所がなかった。やり方も単調だった気がする。こういう点に個の分断を感じさせた。
この個の分断の状況では、個々の単純な力関係は往々にしてバルサの守備>リヨンの攻撃って状況。しかもバルサも受ける体制をとってるから、数的優位を作るのも速かった。

そのときに、バルサとは違って個での打開がうまくいかない(バルサもうまく行ってなかったけど)。結果として、最後の最後まで崩しきることはできなかったと思う。バルサとは違って前線にボールを供給するところまではうまく行ってたから、もったいなかった。

これと関連して、リヨンの攻撃が単発で終わるシーンが目立ってた気がする。勢いを持って入り込めば深いところまで行けるけど、途中でその勢いを止められてしまうと終わり。その後の展開が期待できなかった。これは攻撃の選択肢が少なかったことを意味すると思う。勢いがあるときには少ない人数でも縦へ縦へと持ち込むことができるけど、それで終わりになってしまったと思う。

そして、基本的には勢いを持って最後まで行くのは難しい。特にバルサは個々の守備をベースに1つ1つのところで厳しく来るから、その全てを否してゴールまで行くのは難しかったと思う。どこかで必ず勢いが弱められ、同時に攻撃も終わりを告げた。

ちなみに2点目のPKにつながったシーンは勢いのままに深い位置まで入り込んだシーン。奪った勢いのまま深い位置までボールを運ぶことができた。確かに1度は跳ね返されたけど、それを拾って再び仕掛けたことがPKにつながった。

この時間のリヨンは絶対に点がほしい状況で守備が序盤のように前に意識を持ったものに変化してた。同時に序盤とは違ってチームとして前への移行の意思統一がはっきりしてたと思う。だから、高い位置でのチェックに対しての連動性も図れてた。それまでの時間は見られなかった、複数で囲い込む守備も見られたと思う。

逆にバルサは守備の意思統一が図れてなかった。これは後半開始時からの流れだったけど。前半は全体を引いて受ける意識を持ってたんだけど、後半は前の4の守備ブロックがやや高めに置かれてた。結果として後ろの4との間にスペースが生まれて、危険なシーンにつながる可能性を残してたと思う。結果的にはそれによって致命的な問題が起こることはなかったわけだけど。

それは何度も書くようにリヨンの攻撃のぶつ切り感によって生まれたものだった。そういう攻撃の中で可能性を感じさせたのは左SBのグロッソの攻撃参加。グロッソは代表でも見られるけど、タッチライン際の上下動ではなくて斜めに入ってくる動きが多い。これが相手の1ボランチのスペースと重なるとかなり厄介な存在になった。
それから、ベナルファもいい選手だと思った。サイドでのWG的な仕事をするゴブに対してベナルファは自由な動き。そうやってうまうボールを引き出すシーンが目立ったし、入ったときの技術もなかなかだった。

結果は2-2の引き分けだったけど、ロナウジーニョの投入はちょっと疑問だった。意図がちょっとつかみにくなった。実質的にグジョンセン→イニエスタで中盤を安定させようとしたのか。ロナウジーニョの前線のキープで主導権を握ろうとしたのか。守りの人数を増やすために前を少ない人数で崩せる並びにしたのか。守備の意図か攻撃の意図かがはっきりしなかったと思う。
ただ、ロナウジーニョ自身はそれなりにいいプレーを見せてくれた印象。特にロナウジーニョが入ったことで高い位置で横の幅が使えるようになったのは効果的だった。相手を左に集めて、大きな展開で右のフリーな選手を使うボールが増えたと思う。

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