ただのサッカー好きが、思ったことをただ書くだけ。 (06年終了)

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2008-01-31 Thu 00:26
日本×ボスニア・ヘルツェゴビナ
<日本代表:4-4-2>
FW:高原-巻
MF:遠藤-大久保-中村、鈴木
DF:駒野-阿部-中澤-内田
GK:楢崎

前回のチリ戦からサッカーのやり方がガラッと変化した。岡田色として取り上げたことがことごとく覆されたイメージ。その上でどういうやり方になったかと言えば、単純にオシムの形への回帰が見られたと言っていい。もちろん、それが完全なオシムのやり方そのものではないのは当たり前だけど、前回の内容から見ると大きな転換だったように思う。

チリ戦で見られた攻撃面から、岡田色として取り上げたことを振り返ってみると、①最初にトップに当てる意識が強い②だから縦への意識が強くなって中盤でのボールの滞在時間が短くなる③同時に真ん中に起点が作られる④そうやって真ん中に作っておいてサイドに展開する形が多い⑤それに伴ってSBの役割が組み立てからフィニッシュへ変化。

こういうやり方がほとんど見られなかった気がする。むしろ全く逆の状況が見られた部分の方が大きかったと言ってもいいかもしれない。①´何が何でもトップに当てる意図がなくなる②´横パスも組み合わせながらの展開で中盤でのボールの滞在時間が長くなる③´その中でサイドに起点を作る意識が高くなる④´そうやってサイドに作ってから真ん中、逆サイドへの展開が多い ⑤´SBの組み立てでのタッチ数が増える。

こういう展開の中で「接近→展開→連続」のやり方が体現されるようになったと思う。それはチリ戦のときに書いたような、オシム的な形で。つまり、1つのサイドでの数的優位とランニングを組み合わせたショートパス(接近)→詰まったら大きなサイドチェンジで広い場所へ(展開)→作り直し(連続)。こういうオシム的なやり方に岡田色を組み合わせながらの組み立てが見られたと思う。

ちなみに、この「接近→展開→連続」っていうキーワードには別の解釈もあるらしい。高い位置からの積極的なプレスで相手との距離を詰めていく(接近=守備)→奪ったら素早くボールを動かす(展開=攻撃)→その攻守の形の繰り返し(連続=切り替え)っていう解釈。ただ、現状の守備のやり方を見る限りでは「接近」と言うほどの守備ができてるか微妙。というわけで、これまでどおりの攻撃面でのキーワードとして今後も捉えて行くつもり。

とりあえず、まずは接近のところから見て行きたい。この接近のキーワードについては前回の試合でもその片鱗が見られたのは事実。前半には近い関係性でダイレクトパスを何本もつないでゴールまで迫るシーンも見られた。結果として相手に主導権を握られたことで、本当に数回になってしまったけど。

そうやっていい形で接近が生み出されたときには、その中心にトップがいた。上にも書いたとおり、トップに当てる意図が強い中で、意図通りにトップに入ったところが接近を作り出すスイッチになってた。トップに入ったところで2列目の3枚がボールをフォローするために流動的に(全体としては真ん中に寄り気味に)ポジションを動かす。そういう中で真ん中の場所に接近を作り出す機会が多くなったと思う。

対して今回の試合ではトップに当てる意図が薄くなったのも上に書いた通り。それに伴ってトップは接近のスイッチとはなりえず、接近を作り出す場所も真ん中にはならなかった。じゃあ、どこに変わったかって言えば、それがオシム的にサイドの場所になっていた印象。

特に左サイドに接近を作り出すことが多くなった印象。これは後で書く展開の部分とも関連してくることなわけだけど。とにかく前回はほとんど用いられなかったサイド、SB(駒野)が攻撃の組み立ての上で重要な役割を果たすこととなった印象。

このサイドでの接近はかなり徹底されてたと思う。少なくともベースとなるトライアングルは確実に形成されてた。極端なことを言えば、駒野+MF×4+FW×2って言う攻撃のメンバーのほとんどが左サイドに大きく偏って近さをもたらす部分も多く見られた。

少なくともFWの中盤降りは前回のように縦パスを受けるためだけではなくて、こういう場所での組み立てに参加するためっていう意図も大きくなった。それに遠藤と中村が同じサイドでプレーする時間帯も長くなったような気がする。上に書いた例は極端だとしても、サイドで近さを生み出す下地ができてたのは事実だったと思う。

そういう近さにランニングを組み合わせながら、サイドでいい関係性を作り出した。この辺はオシムが作り出したアプローチと似ている部分だったと言っていい。最低でも近い関係性で基本的なトライアングルを作りながら、狭い場所でもうまくパスコースを創出してたイメージ。

そういう意味では接近の部分はオシムの色が出てたって言えると思う。ただ、これに続く展開の部分においては岡田色を垣間見ることができた。前回のチリ戦で見られた縦へのスピードっていう岡田色をバランスよく、攻撃の展開に織り込むことができてたように感じた。

展開の部分での最初の選択肢は相手のラインウラへの単純なボール。2トップ+大久保(山瀬)を3トップとして見たときに、少なくとも1枚は相手のラインのウラを狙った。で、残りの2枚(または1枚)がサイドに流れたり中盤に降りたりしながら接近に貢献する形になってたと思う。特に中盤に降りたトップと入れ替わりに2列目の大久保が出てくような動きは効果的だったように思う。

中盤(サイド)で接近を作り出しているときに、相手の意識はそういう場所でのパス回しに集中する。意識だけではなくて、トップがそういう場所に参加することで最終ラインの選手が引っ張り出されるっていう物理的な意味もあった。

相手の意識を自分の前に集中させ、物理的にも最終ラインにギャップを誘うことが可能になった。その間にトップの1枚がウラに抜け出すタイミングを見計らう。そういうウラへの動き出しに対して、十分にタメを作った中盤の接近の場所からシンプルなパスが出る。微妙に合わないことが多くて決定的なチャンスにはつながらなかったけど、可能性を感じさせる形だった。

この辺が岡田色。前回の試合でも見られた縦への意識、要するにゴールへの最短距離を狙う意識の高さだった気がする。オシムの展開はよくも悪くも遠回り。サイドで詰まったら、逆サイドに展開して作り直すって形が多かった。縦パスを入れるのは十分に回しきった後に満を持してっていう意識が見られた気がする。

そういう意味では横方向の大きなサイドチェンジもオシムのやり方である作り直しとは違った意図のものだった気がする。単純にそのサイドチェンジの後に即ゴールに直結する形につなげるっていう意味が強かった気がする。そういう意味では作り直しのサイドチェンジに対して、勝負のサイドチェンジとでも名づけられるか。

ここで接近が左サイドで行われた効果が生まれてくる。上にも書いたように、左サイドに作ったときには中盤以前が極端に左寄りに位置するやり方が見られた。そうなれば当然のように相手もそのサイドに引き付けられるわけで、日本の右サイドには広大なスペースが空くこととなる。

その右サイドのスペースを担当したのが内田。おそらく右SBの内田の起用は前回も書いたように、そのスピードを生かすためだと思う。そう考えると、下手に組み立てに参加させずに前に内田の走力が活かせるだけのスペースを与えてやった方が効果的。

それに左で作ってからの右への大きな展開ってのにはもう1つ理由があると思う。それはSBの利き足の問題。展開された広いスペースを生かすことを考えたときに、内田のスピードもそうだけど、ボールを受けたままの勢いで一気にクロスまで行けるっていうのが大きいと思う。

逆に右から左への展開だと、駒野は勢いのままにクロスに行きづらい。どうしても右足に持ち直す時間ができてしまう。それではせっかく相手のブロックを偏らせた意味がなくなるんだと思う。大きな展開から相手のブロックのバランスが悪いうちにクロスを上げちゃうのがベストに決まってる。

この点については今回の試合だけでは分からない部分ではあるけど、左利きの左SBがいない現状を踏まえた上での意図的なものである可能性も考えられる。逆足の駒野は縦へ行けずとも横の展開はしやすいわけだから理にかなってる。左右のSBの役割を分担させることで展開をしやすくする工夫としては面白い気がする。

こんな感じでオシム色(横の展開)と岡田色(縦の展開)の融合が前回の試合よりも明らかに進んでいたのが見られたと思う。

例えば、まずは縦を見るのは岡田色。実際に2点目のシーンはそういう形。今野が奪った後すぐに縦の大久保を見たところが起点となった。オシムのやり方では縦に当てるのではなくて、とにかく横の広い場所に逃げるって形が多くなる。そこで1度保持してから攻撃をするだけにどうしても遅れてしまうっていうデメリットがあった。

逆に岡田色が出た前回はとにかく縦を見る意識が強すぎることで、そのデメリットが生まれてた。すごいスピードで中盤をボールが通り過ぎる中でうまくボールを保持することができなかったと思う。結果として攻撃の押し上げの時間が作れずに、間延び状態を最後まで修正することができなかった。

そういう点の修正として、オシム色が加わった。何でもかんでも縦ではなくて、無理ならボールを保持するって形。その保持の結果として、これまでに書いてきたようなサイドに起点を作るやり方が見られるようになったんだと思う。これが守備の安定にもつながった(守備については後述)。

ただ、ボールを保持できたってことについては相手との関係も大きかった気がする。チリと比べればボスニアはかなり戦いやすい相手だった。スタイル的にもコンディション的にも、今考えてみると初戦がチリとの対戦になってしまった岡田監督は運が悪いとしかいいようがない。

そのボスニアの守備は完全に受ける形だった。自陣に4-5-1(4-2-3-1?)の組織をしっかりと作り、入ってきた縦パスに対応する意図が見られた。ただ、その対応もチリと比べると明らかに甘々だった。そういうわけで、日本の最終ライン+その1つ前までの選手はフリーの状態でボールを持つことができてた。

ただ、そこからブロックに仕掛けていくとなるとちょっと厄介だった。自陣に完全に引きこもったボスニアだったけど、最終ラインは案外高めの位置を取る。結果として最前線から最終ラインまでの距離が短いブロックが作られてたと思う。そもそもの選手配置において中盤が厚いこともあって、単純なボールではその密なブロックに引っ掛けられる可能性が高かったと思う。

そういうわけで日本がとった策の1つがここまで書いてきたサイドに起点を作るやり方。そもそもSBが使えること自体がチリよりもやりやすかったことだったと思う。今回の試合を見てみると、前回SBを使えなかったのはあまりにも相手の守備が激しかったからってことがありそう。つまり、本当はSBを組み立てに使いたかったってこと。横パスを引っ掛けられるのが怖かったこととか、本来浮くはずのSBにもプレッシャーがあったことが影響してたかもしれない。

とにかく、今回の試合では真ん中よりは薄いサイドに1つ起点を作ることで、とりあえず最初のブロックへの仕掛けとした。そうやって1度入れることができれば、後はそれほど相手の守備の厳しさがないだけに、1人1人の技術と近さをベースとしたパス回しでどんどんと相手ブロックを押し込んでいくことができた。

そうやって相手を1つのサイドに集めて強制的に逆サイドに広い場所を作り、そこを利用するってのもここまで書いてきた通り。要するに横の展開によって、相手の守備ブロックののバランスを崩そうっていう狙いがこのやり方。

これに加えて、今回の試合では縦へのアプローチも多くなった。相手の守備ブロックに密集地帯が生まれるのは最終ラインが高めに設定されることでコンパクトな状況ができてるから。そういうわけで、そのコンパクトな状況を壊すためのロングボールも多くなったと思う。特に前半の前半の時間は単純に放り込む質のボールが多かった。

こういう縦横の展開の中で相手のブロックのバランスが段々と崩れてくる。最初は4-2-3-1的な形で自陣の高めの位置でも守備をする意図が見られたわけだけど、時間が経つにつれて4-4-1-1みたいな形に変化した。ただ、その深い位置まで押し込んだ4-4を崩し切ることができなかった。日本らしいと言えば日本らしい。

それでもチームとしてのボールの保持時間が明らかにチリ戦よりも伸びたのは事実。つまり、中盤でのボールの滞在時間が長くなったってこと。これによって後ろの押し上げの時間が生まれた。そうなれば、前線に人数が入ることとなる。人数が入れば前線の人の距離感が縮まる。結果としてパスコースが増える。そうすればボール保持がさらにできるようになる。

こういう形のいい循環が生まれた。ただ、その循環のを打ち破るゴールへの意識が少なくて、パスのためのパスが多くなってしまったのはオシムの残した不の遺産か(オシムの時には最後の方はもっとゴールに向かえてたけど)。ボスニアのラストブロックの固さに加えて、前半の無得点はこの辺の影響もあったと思う。岡田監督もそういうコメントをしてたし。

そういうチームとしての保持時間が伸びたことに加えて、個人としての保持時間の伸びも見られた。これもチリとボスニアの守備の違いによって日本にもたらされたものだったと思う。上にも書いたとおり、1つ1つのプレッシャーが甘かったからボール保持者が余裕を持つことができてた。そもそも、前回は敵陣で前を向いてボールを保持するなんてことはできなかったわけだし。

だから、前回の試合ではダイレクトにこだわったというよりもダイレクトじゃなきゃだめだったのかもしれないと思う。1人で2タッチもしてたらすぐに相手に寄せられてしまうから、すぐに次の場所にはたく必要があったのかもしれない。結果としてボールを保持することができなかった。

対して、今回みたいに個々の保持時間が伸びたことで色々なリズムの変化が生まれたと思う。1タッチしかダメっていう制限がつけば全てを1タッチでやらなきゃいけない。でも、例えば5タッチまでしていいっていう制限だったら、1タッチでも2タッチでも3タッチでも…することができる。もちろん5タッチなんて制限もないわけだから、色々なバリエーションがありえた。

それに、1人の保持時間が伸びれば逆にダイレクトでのパス回しがより効果的になる。常にダイレクトで回していたら、それはそれで相手にそのリズムに慣れられてしまう。緩急をつける意味では1人1人が保持可能な時間が長ければ長いほどいいに決まってる。その中で状況に応じてボールの離し時を見計らえばいい。

ただ、今回の試合に限って言えば1人1人の余裕が出たことが悪い方向に出たとも言える。受けてから考える時間があったからか、全体としてのまったり感が目立った気がする。余裕ができたことを生かして緩急をつけたいところなのに、緩緩の展開が続くことが多かった気がする。目先を変えるアプローチはできたけど、緩急によるアプローチはできなかった。それがラストのブロックを崩しきれなかった要因だったかも。

その中で余裕ができたことをうまく利用してたのが中村だった。十分にタメて相手を引きつけてからのパスがかなり効果的に決まってたと思う。相手の最終ラインに直接仕掛けるボールにしても、大きくサイドを変えるボールにしても。色々な展開につながるボールを基本的に相手を引きつけてから送ったことで、その受け手がフリーな状態で受けられることが多くなったと思う。

その中村は受け手としてもいい役割を担った。常にギャップを見つけ出してうまくボールを受けてたと思う。その中で効果的だったのがボランチの位置に降りてきてのボールタッチが増えたっていうこと。これはチリ戦で見られた問題の修正につながると思った。

その問題は攻撃のスタートをどうやって切るかって言うこと。1ボランチに入った鈴木ではちょっと攻撃面で物足りないってことがチリ戦のときに明らかになった。にも関わらず、2列目の選手はトップとの関係を重視して前へ前へと行ってしまうから、うまく攻撃を作ることができてなかった。

そういうわけで今回は中村が降りてきてスタートを担うことが多くなった気がする。鈴木の守備を任せて、攻撃を中村が担うっていう役割分担で、攻撃時については2ボランチと見てもいいような形だった。ちなみに上にも書いたように、DFラインの1つ前のところまでは相手のプレッシャーがほぼかからない状況。そういうフリーな場所で中村がボールを扱える効果も大きかった気がする。

こういう感じで日本は前回よりも明らかにいい内容で試合を運べてたと思う。それぞれのコンディションも上がってたようで前半は運動量も豊富だったし、いい形を生んだのはそういう運動量がベースにあったって面も大きい。

だからこそ逆に後半に対する不安が残った。運動量を生かしたやり方で得点っていう結果を残せず、その根本となる運動量が落ちたらどうなるのかと。いわゆる攻め疲れの状況が生まれる可能性は大いにあったし、実際にそういう状況に陥った。

まず前半から色々なところに顔を出してボールを触っていた中村が消える(相対的に遠藤が目立った)。意図してかどうかはともかく、前半は攻撃の中心にいた中村が消えるのはチームとしては痛かったと思う。攻撃の組み立てにスムーズさが失われ、効果的な展開も後半にはほとんど見られなくなってしまった。

次に消えたのが内田だった。前半から上下動を繰り返してただけに仕方のない部分もあった。こんな感じで全体としての運動量の落ちが目立ったと思う。一番痛かったのが前半にはいい近さを保っていた距離感もだんだんと遠くなったこと。当然のようにパスの成功率も下がっていって、攻めきれない展開が続くこととなった。

そうやって前半に比べると明らかに内容が悪くなっていく中でセットプレーで先制点を取るあたりは日本らしい。その得点者が中澤ってのも日本らしい。この得点は相手の不意を突いた速いリスタートから。3点目もそうだったけど、全体として相手の高さに対する工夫が見られたのはよかったと思う。

今回の試合に限って言えばコンディションがまだ整ってなかっただろうから、運動量が落ちるのはある意味では仕方のない点だったかもしれない。幸いだったのはボスニアの側も同じようにコンディションが悪そうだったことか。とりあえず、今回の試合みたいに紺半にガクッと落ちる展開はあまり好ましくないのは事実。

だからこそ、先制点はもっと速い時間帯に欲しい。ちょっとでもチャンスがあれば縦に仕掛けていく岡田スタイルでは休む時間があまりない。立ち上がりからのそういう積極的な展開で早めに得点を奪って、できれば少しずつ休む展開は入れて行きたいところ。

とはいってもそれは理想論なわけで。そういうわけで、後半の交代はヒントになると思う。高原→播戸、大久保→羽生、中村→今野の投入。前の2人は直接攻撃面の状況を打破するため。今野は中盤の配置の問題、守備からのつながりで攻撃につなげるため。

播戸と羽生はとにかく動き回る選手。羽生に関してはオシムも途中交代で使うことが多かったけど、どちらも停滞したチームの流れをランニングによって変えることができると思う。要するに起爆剤的な存在。組み立てに時間をかけてもしょうがない状況では高原みたいに中盤での組み立てもするタイプよりも、播戸みたいにウラへ、ゴールへって向かって行くタイプのが効果的。対する羽生は1人で数人分の仕事ができる。ゴールに向かう動き、組み立てを助ける動きの量が期待できる。

次に今野。今野の投入によってシステムが4-2-3-1になった。1点リードってこともあるだろうけど、全体の運動量が落ちている中で守備の方の安定を図る現実的な交代はよかったと思う。攻撃を考えても、中盤の枚数が増えることで単純に近さが生まれ、運動量でカバーし切れない部分を補うことことができる。それに底に鈴木と今野が控えてることで、前の選手が攻撃に重点を置くことができるのも大きい。1ボランチだとどうしても後ろ髪を引かれる形だと思うから。

最後に守備面について軽くまとめとく。2試合を見て、守備で岡田監督が言うように前線から積極的にって形はないってことが判明。前線から積極的にって言う言葉の解釈の問題もあるだろうけど。個人的にはトップからもっとガツガツ行くような形をイメージしてたから、少なくともそれはない。

とりあえず守備は4-1-3-2の組織を作るところから始まる。その上で相手ボール保持者がある程度の高さまで入ってきたらトップか制限をかける動きをする。それに後ろが連動する。正確には連動してるはずとしか言えないけど。テレビだとどうしても見えないけど、相手がなかなか縦パスを入れられないことを考えるとしっかりと次がついてるんだろうなってことは分かる。

ただ、トップが積極的に追いかける形ではないだけにロングボールは比較的簡単に入れさせてしまう。今回の試合でもそうだったし、チリ戦の立ち上がりもそうだった。単純なロングボールは跳ね返せるとの判断か。とりあえず、問題になるのはそういうロングボール攻勢の中でバランスを崩さずにしのぎきれるかってこと。

チリ戦はできなかった。今回はできた。その差は攻撃。今回は攻撃の時間を増やせたことによって相手のロングボールのアプローチで崩れたバランスを取り戻すことができたと思う。これはチリ戦ときにも触れたことだけど。

バランスを取り戻せなかったチリ戦は段々と地上からの攻撃も防げなくなっていった。距離感が遠くなって連動が図れなくなったから。今回はバランスを維持できたから、チリ戦のように簡単に地上からの展開を許す状況にはならなかったと思う。地上からブロックに仕掛けられたボールはすぐに囲い込むことができてた。

後半に攻撃が行き詰った時間帯には1ボランチ脇に入られるシーンがちょっと目立ち始めてヤバイかなって思ったけど、すぐに2ボランチにすることで対応。ちなみに2ボランチにした方がやっぱり鈴木の守備が目立ってた気がする。

少なくともタイ戦に向けては日本の守備に問題は感じない。いざとなれば中澤&阿部&鈴木の3人でも守備ができる形を持っているわけで。だから、やっぱり焦点は攻撃面ってことになるか。その攻撃面も今回の試合を見る限りでは大きな問題は感じないわけだけど。唯一あるとすればゴールに向かう積極性ってことなんだろうけど、それは別に今に始まったことではない。

とりあえず2試合見たことで岡田監督の形も分かり始めたので、次ぐらいからオシムとの比較はやめようかなって思ってる。本当にできるかどうかは分からないけど。


■ボスニア・ヘルツェゴビナ戦 リンク集
【日本×ボスニア・ヘルツェゴビナ】 山瀬功治の2ゴール (サッカーコラム J3)
これが岡田ジャパンの夜明けなのか(l.a.t. Project)
【嘆】結果オーライのリニューアル岡田ジャパン初勝利(ifeisfootball)
日本が良いのか、相手が悪いのか?(迷い人)
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2008-01-29 Tue 01:03
ミラン×ジェノア
<ミラン:4-4-2>
FW:パト-カカ
MF:セードルフ、アンブロジーニ-ピルロ-ガットゥーゾ
DF:マルディーニ-カラーゼ-ネスタ-オッド
GK:カラッツ

去年は何試合も見たミランだけど今回の試合はCWCの決勝以来。噂のパトもしっかりとスタメンに入り、ミランがどういうチームに変わったかが注目の試合だった。特にミランは試合中にFWが消えてしまう状況に悩まされ続けてきたわけだから、そのあたりがどの程度改善されたか。

おそらくチームとしてのファーストチョイスはロナウド-パトの2トップ。この組み合わせで臨んだナポリ戦では5得点という結果も残している。しかし、ロナウドはまたしてもケガ。結果として今回の試合ではカカとパトが2トップを組んできた。

サラッと書いたけど、これは結構大きな事件だと思う。ミランの試合を見るたびにトップが消えてしまう状況が見られるのは上にも書いたとおり。だから、どうせならカカを1トップの置けばいいんじゃないかってのは前にも書いたことがあったと思う。でも、当然のように実現はせず。

それどころか、2トップの一角にカカを置くことすらもなかった。守備時にはカカを2トップの一角に残すようなやり方が見られるものの(カウンターの威力を考えて?)、普段の攻撃時にはやっぱり1.5列目でのプレーが多かった。

それが今回の試合ではあっさりと2トップの一角に入ってた。もちろん中盤に降りてきてのプレーとかサイドに流れてのプレーが見られるのも事実だけど、その基本はトップの場所にあったと思う。これは単純にインザーギとかジラルディーノとパトとの違いから来るものだと考えていいと思う。

インザーギとジラルディーノのプレースタイルが全く異なってるのは知っての通り。ジラルディーノはエリア内仕事をする選手、対するインザーギは常に相手のDFラインウラを狙う選手。ただ、2人の間には共通点もある。それは常にゴールに近い場所に居座ってるってこと。ジラルディーノは基本的にエリア内で待ってることが多いし、ウラを狙うインザーギも狙うのは基本的に最短距離の真ん中の場所。

つまり、どちらも積極的に周囲のためにスペースを空ける動きをしないタイプだって言える。だから、その近くにカカがいてもプレーエリアを限定されてしまうことになるんだと思う。そもそも、インザーギ-ジラルディーノの2トップでさえも機能しないわけだから。結局、機能しないトップに人数をかけるのをやめて、ストロングポイントである中盤に人数をかける4-5-1がベースの戦い方となった。

こういう既存のFWと比べてパトが明らかに違うのは前線の動きの量。パトは最前線で動き回る。サイドに流れたり、中盤に降りてきたりっていう動きを繰り返す。もちろんFW的に相手のウラを狙う意識も強い。とにかく動き回るタイプのパトを置くことで、ミランの最前線に動きがもたらされたって言えると思う。

結果としてカカがトップの場所にいたとしても必要以上に窮屈な状況は生まれない。カカの技術を考えればちょっとしたスペースさえあればいいわけで、パトの動きによってそういうスペースがもたらされてるとも言える。そして、スペースがないっていう足枷が外れるならば、カカをより高い位置でプレーさせた方がゴールの気配が高まる。

同じことは逆の側面からも見ることができる。ジラルディーノとかインザーギと比べてパトはトップの場所にこだわらない。色々なところに動きながらトップの場所を留守にすることが多くなる。その時にパトが1トップだとすると、前までのミランとは違った意味で(本当の意味で)トップがいなくなる状況が生まれてしまう。それを防ぐためにカカを相方として置いた(本来はロナウドを置きたい?)っていう見方もできる。

そういう意味でこのカカとパトの関係は持ちつ持たれつだと思う。上にも書いたとおりカカもトップの場所を基本としながら、普段の中盤のときと同じように真ん中にこだわらずに動き回る。そういうときにはパトが本来のトップの場所に入る。逆にパトが流れればカカが真ん中を担当。

こういう形だからミランの前線の関係は面白い。2トップがどちらもトップの場所にこだわらない点では0トップ的で中盤の厚みがさらに増したとも見える。組み立てにはほとんど参加してこないインザーギとかジラルディーノがトップに入ることから比べれば、実質的に中盤の枚数が増えたとも言える(実際の試合ではそういう印象にはつながらなかったけど)。

上にも書いたような1枚が流れればもう1枚がトップの場所に残るっていう2人の関係性を見る中では変則的な1トップの形とも捉えることができると思う。トップの場所にいる選手が変化する出入りの激しい1トップっていうイメージ。

さらに、攻撃に厚みを加えている展開の中では低い位置の選手にボールを持たせて2トップが2人ともゴール前に入ってくる。その意味では2トップなんだけど、そういうシーンではほとんどの場合セードルフもセットでゴール前に入ってる。そう考えるとトップ下のセードルフまで含めた3トップとも見える形。

こういう前線の形の部分を含めて、パトがチームのやり方に与える影響は大きかったように思う。実際にはパトが入ったことがやり方の変化に直接つながったかどうかってことは分からないわけだけど、少なくとも今回の試合でのミランはこれまでのイメージとは少し違ったやり方をしているように見えた。

そのやり方の違いってのが寄寓にも日本代表の変化と同じ感じ。具体的には横の展開が少なくなって縦の意識が強まったこととか、中盤でのボールの滞在時間が減ったこととか。基本的には大きなメンバー変更がなくちょっとしたシステム変更だけでそういう状況が生まれたのも似た部分か。もちろん監督が変わった日本代表ほどに顕著な変化はミランには見られなかったけど、CWCまでの印象からするとちょっと違和感を覚えた。

この試合の、特に前半のミランはとにかくトップへのやや距離のある縦パスが多くなった気がする。前線で今まではほとんどなかったトップが引き出しの動きが見られるのが嬉しいかのように(実際のところは分からない)、どんどんと前線に縦パスを入れていったと思う。

こういう状況ではミランらしさは生まれ得ない。ミランらしさは中盤でボールをつなぎ、左右の展開を織り交ぜながら徐々に陣地を増やしていく形。その中でSBを利用したりしながら、前線に自ら強制的に距離感の近さを生み出す。そういう状況を作り出しておいて、少ないタッチでパスをつないで相手の守備を否していくっていうのがミランらしさ。

でも、今回の試合の前半には徐々に陣地を増やしていく状況にはならなかった。左右の展開なんてのはほとんど見られず、縦縦の意識が目立ったと思う。低い位置から一気に縦パスを入れるから、それが前線に入ったとしても後ろが追いつききれない。結果としてトップがはがれてしまう状況が多く見られた。

要するにチームが一体となって徐々に押し上げていくことによって生まれる、強制的な距離感の近さは生み出せないって言える。だから、パスの距離も前までのミランのイメージと比べると明らかに長くなってたと思う。当然のように相手の守備を否していくようなリズムのいいパス回しにはつながらなかった。

ちなみに横への展開が減って縦への意識が高まったのはSBの役割を見ても分かる。この点についても日本代表と同じことが言えるわけだけど。つまりSBが組み立てのところとフィニッシュのところのどちらに重点を置くかっていう話。

前までのミランイメージとしては組み立てにSBが参加することで左右の幅を利用すると同時に、中盤を中に押し込むやり方。それが今回はSBが組み立てにはほとんど参加せずに、ボールを追い抜いて前線に入っていくシーンが多くなったと思う。縦への意識が高まってたミランはそうやって深い位置に入ったSBに簡単に長めのボールを入れるっていうやり方も多くなったように思う。

もちろん日本代表のやり方の変更と同じように、こういう縦を目指すっていう変更自体が悪いわけではない。これまで期待できなかったトップの場所に起点ができれば攻めやすくなるのは事実だろうし、うまく行けば少々後ろが追いつけなくても前線の数人で攻めきるだけの力はある。むしろ、前までみたいに大きく遠回りをする必要がないだけ効率的とも言えなくもない。

ただ、実際にはミランの縦パスはほとんど入らなかった。これには上に書いたような0トップ的なイメージが影響してる部分もあるのかなって思った。4-5-1のときのミランはトップが消える状況の中で実質的に前線の起点になるのは、1.5列目のカカとセードルフだった。組み立ての中でその2人の当てながらうまく深みを与えてた側面があったと思う。

0トップ的なやり方では単純にそれが前に押し出されたこととなる。カカとセードルフの役割を1つ前のトップの場所でカカとパトが担うようなイメージか。ポジティブに捉えればよりゴールに近い場所に起点を作れるって言えるけど、実際にはその場所は相手の守備の勝負どころでもあった。

ジェノアの守備はイタリア的なイメージ。守備時には4-4-2の組織をしっかりと作って、安定して受ける体制を作る。その上で前線での守備は皆無と言っていい。一応、対応する選手がいたことはいたけど、距離が遠すぎて実効性には疑問が残った。そういうわけで守備の勝負どころは受け手ってことになる。特にゴールに直結するような場所に入ってくるようなパスの入りどころには厳しく対応して、思ったようにボールを収めさせなかった。

そのジェノアの唯一絶対の守備の勝負どころとミランが縦パスを送り込む場所がぴったり合致。結果として縦パスがうまくトップに収まるシーンはほとんど見られなかった気がする。だったら、そういう勝負どころを外して受ければいいっていう話なんだけど、そうやって1クッション置くぐらいならこれまでのやり方と変化がない。

こういう懸念は今回のジェノアに限らず考えられる部分。どう考えても相手がトップへの縦パスを簡単に入れさせてくれるわけがないんだから。これまではカカとかセードルフが1.5列目って言う微妙な場所で、うまくギャップに入り込むことで起点になれてた。実際にはそれ自体も簡単ではなかったってのが本当のところ。

さらにそういう相手の守備の勝負どころに送り込むにしてはパスの質が単純すぎたのも問題だった気がする。前までのカカとかセードルフに起点を作るやり方では、横への大きな展開っていうアプローチをした上での縦パスが多い。しかも、そこでは少ないタッチでのパス回しをすることで相手に狙いどころを定めさせてない。

これに対して今回は低い位置から1発。出し手はフリーだったとはいえ、あまりにもシンプルすぎる。縦パスを入れるために相手に狙いどころを絞らせないようなアプローチがないから、相手としても狙いやすい状況だったんじゃないかと思う。

さらに言えば距離も遠かった。前までの形は中盤から中盤へのパス。距離が短いからミスも少ないし、途中で引っ掛けられる可能性も少ない。ついでにパスの到達時間が短い。対して今回はボランチからトップ下を飛び越えていきなりトップまで。距離が遠いから、ちょっとしたズレでも大きなズレにつながるし、途中で引っ掛けられる可能性も高い。ついでにパスの到達時間が長いから、相手はちょっと遅れてでも対応できた。

そういうわけで前半のミランは縦パスを狙っては引っ掛けられるっていうよくない展開。途中で攻撃が分断されるわけだから、ミランらしい圧倒的なポゼッションにもつながらなかった。それに守備においてもこのことが微妙に影響を与えたと思う。

攻撃ではトップがはがれ気味だったってのは上にも書いたとおり。しかも、途中で引っ掛けられることが多くなったから、はがれたトップにフォローをするのも難しかった。つまり、ミランは慢性的に前線が薄い状況になってたと思う。

ただ、もちろん後ろにはフォローをする意識はある。攻撃は前の数人に任せておいて、残りは後ろのバランスを保っておこうっていうチームではないから。だから、奪われた瞬間には後ろが押し上げ途中の中途半端な押し上げ状況にあったこととなる。

これは切り替え後最初の守備が効果的に効かないことを意味する。後ろは押し上げ切れてないから、やっぱり前線は厚くない。だから、切り替え後の守備も厚くはない。逆に後ろの安定感は保たれてるかというとそうでもない。後ろは押し上げ途中だから、切り替え後の守備を考えると少なからずバランスが崩れてた。

もう1度確認するけど、前線の切り替え後の守備は効果的に機能しない。そこで奪えないのはもちろんだけど、後ろが完全に安定した組織を作るだけの時間を作るのは難しかったと思う。結果として守備における中盤の配置が変わってるってことが目立ったと思う。とりあえず形だけを安定させて、内実はその場で一番適切な選手が入るって形の守備が目立った。

こんな感じで前半のミランはいまいちペースがつかみきれなかったって言える。攻撃では流れが分断され、奪われた後に案外深い位置まで攻め込まれるってことが目立つこととなった。ミランが守ってジェノアが攻める展開の中でもジェノアがチャンスを作るシーンが目立った(これは後で詳しく)。

これに対して前半の途中から修正を加えたのはさすがミランというところか。本格的な改善は後半からってことになったけど、前半のラスト10分ぐらいからちょっとした変更が見られて、それが予想外にいい効果をもたらした。結果として前半の最後は終始相手を押し込むこととなった。

その前半の変更ってのはセードルフを目立たせること。それまでと同じように縦パスの意識が高いのは変わらなかった。でも、その縦パスを一気にトップに当てるのではなくて1度セードルフを経由させる形が多くなったと思う。そこで1度経由点を作ることによって、簡単にボールを失うシーンが明らかに減った印象。

要するにこれまでと同じようなやり方に変わったとも言える。トップに入る場所では厳しく当たってきたジェノアの守備陣も中途半端な場所で受けるセードルフは浮かせ気味だったから、案外簡単に経由点を作ることに成功した。そのセードルフの役割も1度受けたらシンプルに次に展開するっていう本来の形に近いものだったと思う。

前半の終わりに押し込まれたジェノアはちょっとやばいと思ったらしい。後半の開始当初はそれまでほとんどやらなかったミランのボール保持者に対する守備の強めてきた。高い位置での守備で相手との間合いが明らかに縮まったと思う。ただ、後半はミランがその上を行ったことで結局は無力化されてしまったわけだけど。

後半になるとセードルフを経由させる意図はそのままに、そうやって起点ができたときの後ろからの飛び出しを促進させた。いつものように徐々にチーム全体が押し上げるっていう形ではなかったけど、結果として生まれる効果は同じだったと言っていい。その中で近い関係性を生み出したり、サイドに展開したりっていう本来的な形も増えていった。

例えば1点目のシーンがそういう形。右サイドでカカ、オッド、ガットゥーゾの関係でボールを保持。その後、マルディーニとピルロの左サイドへ大きく展開しそこでもパス交換。最終的にはフリーになったピルロからのクロスが得点につながった。

特筆すべきはかなり高い位置で一連の流れが行われてること。左右の大きな展開も組み立てのアプローチではなく、相手のラストブロックへのアプローチとして行われている。後半に関しては徐々に全体の押し上げを図るいつものやり方からの脱却がいい方向に向かったといえる。前半の縦への意識と普段のやり方がうまく融合したイメージ。

前半のトップまでの距離を一気に稼ぐ縦への意識が失敗したこと、その後いつものようにセードルフの場所に経由点を作ることで改善が見られたってのはここまで書いてきたとおり。その経由点としてのセードルフが1つのポイントとなる。

いつものやり方ではセードルフ(トップ下)の経由は組み立てのアプローチの1つでしかない。横への展開でコースが空いたらセードルフに当ててちょっと深みを与え、再び横への展開で…っていうように段々と陣地を増やしていくやり方。対して、今回はセードルフへの縦パスが攻撃の中での特別な事柄、つまりスイッチとして機能してたと思う。

セードルフに入ったところでもう1度横に展開するなんていう遠回りのことはしなかった。セードルフに入ったら一気に全体が押し上げ、その勢いを使って一気に敵陣に入り込むやり方が多くなったと思う。もちろん、セードルフに当てるのがスイッチってのは一例であって、全体として陣地の増やし方がいつもよりもスピーディーに行われた印象だった。

その要因は上でもちょっと書いたように後ろからの飛び出しが増加したから。前半はトップへの縦パスが収まらなかったことであまり目立たなかったけど、うまく起点を作れた後半にはかなり目立つ形だったと思う。アンブロジーニがゴール前に出てくるなんてのは頻繁に見られたし、ピルロとかガットゥーゾもゴールに直結するような場所でのプレーが目立った。

これはシステム変更によるものが大きかった。つまり、4-3-2-1から4-3-1-2になったこと。4-3-2-1の時にはトップの1が蓋になってた。結果、実質的にトップ的な役割を担うこととなったトップ下の2も大きく動き回らない。つまり、ここにも蓋があったことになる。結果として中盤の3が前線に出て行くような余地はあまりなかった。

対して今回はトップ下が1枚。だから、その両脇に出て行くべきスペースはいくらでもある。セードルフに入った瞬間に、それを抜いていくってのも可能だった。さらにトップの動きに連動してセードルフがトップ下の場所を捨ててトップの位置に入ることも多々あったわけで、中盤の3が出て行く場所が見つかりやすかった。

こんな感じで後ろからの飛び出しを増やしたことで相手を押し込むことに成功した。そうなれば後は無限ループ状態。前線の人数が増えたことで前半には機能しなかった切り替え後の守備が機能するようになる。結果、高い位置でボールを奪って相手の押し上げの時間を使わせない。セードルフのスイッチに頼るべき時間もそれほどなかった。中盤にはいくらでもスペースがあったから。

ちなみに後半になって4-3-1-2の攻撃面でのよさが見られたわけだけど、前半はこのシステムの守備面の綻びが見られたと思う。それが上で書いた、ジェノアの攻撃とミランの守備の関係でジェノアがチャンスにつなげるシーンが目立ったってこと。前半後の切り替え後の問題は上にも書いたとおりだけど、守備の組織ができた状態でもギャップがやや目立ってた気がする。

ミランの守備の意図はいつものように切って切って追い込む形。実際に前半の立ち上がりから、いつもどおりに最初の守備に対して、次が連動して動くような形が見られたのは事実だった。ただし、4-3-1-2システムではその中に微妙なギャップが見出せた。単純にこれまでの4-3-2-1と比較すると分かりやすい。単純に考えてみる。

相手の攻撃のスタートへの対応を考えたときに4-3-2-1では多くの場合でトップ下の2がその場所に当たることが多くなる。それは相手のボランチまたはSBの高さになるから。そして、4-3-2-1ではその横幅を2で担当するればいい。

対して4-3-1-2の形では横幅を1で担当することとなる。それでは当然のように足りないわけで。だけど、FWが降りてきて助ける意図は見られなかった。だから、ボランチの3から対応に引っ張り出される選手が出てくることとなったと思う。

これによって最初の切る場所はいつもどおりに守備ができた。でも、そこで制限をしても、今度は後ろで狙う選手が足りてなかったと思う。結果として前後の連動性のまずさが生まれた。そうなれば残るのはボランチが引っ張り出されたスペースのみ。ギャップにうまく入られて、場合によってはDFだけがさらされるシーンも見られた。

これに対して後半は最初の守備の強度を上げることで対応してきたと思う。後ろが少なくても、最初の守備のところでより強いプレッシャーをかけ、より相手の選択肢を制限してやれば対応できるから。とは言っても後半はほとんど攻めてたから、守備の心配はあまりしなくてもよかったんだけど。

ちなみにミランの守備に対するジェノアの攻撃は興味深かった。ジェノアは守備時には4-4-2だったシステムを攻撃時にはWGを置いた4-3-3みたいな形にしてたように見えた。ミランのサイドを突くためか?ミランのサイドにはいくつかの弱点があるから。

適当に列挙すると、トップ下の1の脇で最初の守備が効果的に効かないこと、SBが攻撃に出て行くだけにウラにスペースがあること、組織を作るとするとミランは最終ラインの4を真ん中に凝縮させる形をとること(WGを置くとその対応にミランのSBが引っ張られ本来の秩序を維持できなくなる)など。

こういう組み立ての部分に加えて、何よりも今までも散々書いてきたとおり、サイドからのクロスにとにかく脆い。このあたりを意識してのことだったかもしれない。逆にミランの真ん中の守備の堅さを避けて起点を作りたいってこともあったかもしれない。

久々のミランにはイメージを崩された。パトの加入の効果なのか、この試合限定のものなのか。少なくとも、1点目の後はいつものようにポゼッション型のやり方になったのは事実。特に相手が1人少なくなった後は、スペースを有効活用しながらパスをつなぎ続けた。

逆にパト加入による縦パス1発の効果も出てる。相手のGKを退場に追い込んだシーンがそうだったし、2点目もそう。どちらも、パトの引き出しの動きにシンプルにボールを送り込んだだけっていうシーンだった。
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2008-01-27 Sun 00:56
日本×チリ
<日本代表:4-1-3-2>
FW:高原-巻
MF:山岸-遠藤-中村、鈴木
DF:駒野-阿部-中澤-内田
GK:川口

<チリ:3-3-1-3>
FW:ボセジュール-ルビオ-フィエロ
MF:モラレス、セレサダ-エストラーダ-イトゥーラ
DF:ハラ-マルチネス-メデル
GK:ピント

メンバー発表の時点でもオシムとの違いは見られず。内田が加地になったのは意外だったけど、それ以外はオシムが監督をやったとしても変わらなかったんじゃないかと思う。そういう意味では招集メンバー発表のときにも書いたとおり、岡田色をどういう場所に出すか?ってのが注目になった。

まず、基本的な部分では中盤の形。オシムのときだったら、鈴木&中村のボランチの前に山岸&遠藤っていう形だった。でも、今回は鈴木の1ボランチ。その前に山岸-遠藤-中村を並べる形だった。ここに関しては新たに取り入れた部分であって、岡田色が見えたと言えるかもしれない。

でも、実際にはこの1ボランチの試みは失敗したと言っていい。1ボランチ志向だったオシムが結局07年は全て2枚のボランチを貫いた要因の一端が見られたような気がする。攻撃面での不安はもちろんだけど、本来の鈴木の仕事である守備面のよさも消してしまった気がする。

いい形で攻撃ができてたシーンを見ると2トップと3OMFの5人はゴールに向かう意図が強かったと思う。その上で、このチームの中では少ないタッチでのパス回しが念頭に置かれている。だから、本来はキープができる遠藤と中村を含めて、1人1人の保持時間を短くしようとする意図が働いてたと思う。

そう考えると攻撃の上で落ち着きを与える役割は中盤の底の選手に求められることとなる。それが1ボランチの鈴木だったわけだけど、そもそも鈴木のボールタッチの回数自体が多くなっかった。チリの選手の忠実なチェック+しかも1ボランチだから相手は限定できる+鈴木の攻撃面の能力を考えるとちょっと酷だった気がするけど。

とりあえず、こういう状況の中で攻撃において中盤の底が機能できなかったのはかなり痛手だった気がする。中盤をすごいスピードでボールが通過していった。後で詳しく書くようにチームとしての縦への意識が高かったこともあったけど、攻撃において落ち着きを与えるということが一切なかったと思う。相手のプレッシャーを差し引いても。

こういう攻撃面ではあまり1ボランチの鈴木の機能性は期待できないってことはある程度想定できてたかもしれない。だから、むしろ問題は鈴木の持ち味である守備面において、あまり目立つことができなかったことにあったんじゃないかと思う。

もちろん、鈴木の能力が落ちたわけでもなければ鈴木が守備をサボっていたわけでもない。ただ、鈴木が守備をするという状況を作れなかったことによる問題だった。要するに、必要な場所に鈴木がいられないっていう状況が多くなってしまったこと。

こういう状況は1ボランチの形を取る以上仕方のない部分もある。やっぱりピッチの横幅を1人でケアしきるって言うのは難しいわけだから。そういう意味では絶対的に前線の助けが必要になる。要するに前線がしっかりと守備の狙いどころを制限してくれることが重要。どこに出てくるか分からない、文字通り横幅全部を任せられる状況では機能するわけがない。

この点については守備のバランスがしっかりと取れているときには大きな問題にはならなかった。守備面についても後で詳しく書くけど、バランスが取れているときには2列目が自分の前に対してしっかりと守備ができてた。結果として相手の選択肢を制限し、鈴木が縦に入ってきたところを0距離で対応するってシーンも作ることができてた。

でも、時間とともに全体のバランスが悪くなる(これも後述)とともに、鈴木がどんどんと目立たなくなっていく。それでも色々なところに顔を出してがんばる鈴木だったけど、立ち上がりのようにボールの入り所で距離を詰めて勝負するシーンは明らかに減ったと思う。

そういうわけで1ボランチシステムの実効性にはかなりの疑問が残った。守備面については今後の修正で何とかなる可能性はあるものの、攻撃面で落ち着きどころが作れないのは痛い。いい位置で奪って一気に縦っていうなら分かるけど、それができるほどの守備のやり方は確立されてないと思う。

結果として今回みたいに、遠い距離を中盤を一気に通り過ぎて前線にボールがつながる形が多くなってしまうと思う。全体のバランスが崩れれば後半のように前線の数枚だけで攻める本末転倒な状況に陥る。ボランチの位置に1つ落ち着かせられる選手が欲しい。

そもそも後半は単純に中村を1枚下げると思ってた。どっちにしたって守備のバランスが崩れて前線の3枚は押し込まれ、2トップとの距離が開いている状況が生まれてたわけで。それでもまだ1ボランチにこだわる意図がちょっと分からなかった。中村をボランチに入れて時間を作る→全体の押し上げを促進→バランスの回復ってのが現実的だったんじゃないかと思う。

その上でアジア杯のときに見られたように機を見て中村が前線に飛び出していけばよかったと思う。そうすれば、事実上の前線の枚数は変わらないわけだし。それに、相手に完全にシステム合致を作られてる中では、そういう形の方が相手の混乱を誘う可能性はあったはず。

そもそも4-1-3-2は守備のためのシステムだと思ってた。中盤の前に3枚のフィルターを並べることでより高い位置から奪おうっていう。それができなかった以上、この形にこだわる理由もないと思ったんだけど。もし攻撃面の意図だとしても、その攻撃もうまく回ってなかったし。

1ボランチありきの1ボランチは危険だと思う。トレーニング時の形として言われてるのは4-1-3-2or4-1-2-3でどちらも1ボランチ。現状を見る限りでは、1ボランチにこだわらない柔軟な対応が必要だと思った。

という感じでメンバー発表の時点で見られた唯一の岡田色を早速批判してしまったわけだけど、この後もそういう論調になるかもしれないのでご了承ください。はっきり言って、今回の試合を一言で表すなら「オシムが作ったものを壊し、オシムが作らなかったものはそのまま残した」ってのがしっくり来る。まだ、岡田監督の形が浸透してないから、そういう印象を受けたんだと思う。生みの苦しみってやつか。

まずは前者の「オシムが作ったものを壊した」っていう視点から。壊したっていうちょっと過激な表現を使っているものの、実際にはそれほど批判的な意味はない。壊した上で岡田監督のよさが見られるならば、それはそれでいいと思う(個人的にはオシムのやり方を残して欲しいとは思ってるけど)。

で、具体的に何を壊したか?っていうと攻撃の組み立てのやり方。今回の試合を見る限りでは、アジア杯で浸透したオシムの考え方は消えてしまったと言っていい内容だった。それは上に書いたようにすごいスピードで中盤を通り過ぎるってことからも分かると思う。

そもそも今回の試合に向けてのキーワードとして「接近→展開→連続」って言うのが挙げられてた。個人的にこれは目新しいものではなかったと思う。そもそもアジア杯でオシムがやったのがこの形だったと思うから。サイドで数的優位を作りランニングを組み合わせながらパスを回す(接近)→詰まったら逆サイドへ大きくサイドチェンジ(展開)→広い場所で同じことをやる(連続)。

今回の試合を見る限りでは岡田監督は同じキーワドのもとで、ちょっと違ったやり方をやろうとしてるんじゃないかって感じた。それは展開の部分。オシムのやり方では外(サイド)から外(サイド)へのボールをつなぎながらのアプローチだったけど、今回の試合では中から外(サイド)への展開が多くなった。

そういう中でトップにボールを入れることが常に意識されてたと思う。トップの2枚も頻繁に中盤に降りてきてボールを受けようとする動きがかなり多くなった。そして、トップに収まることが1つのスイッチとして機能してたと思う。トップに入ったところで2列目が一気に動いてポジションを変えたり、SBが飛び出してきたりってやり方が目立った。

そのSBはオシム時代とは明らかに役割が変化した。オシムの時には組み立てにおいて大きな役割を担ってたのが両SB。両サイドを一杯に使った組み立ての中では、サイド専属のSBが固定され、そこにSMFだったりボランチだったりが絡むってやり方が目立った。

対して、今回の試合を見る限り、SBに求められてた仕事はラストの部分。最初にトップに起点を作ることで相手を真ん中に寄せ(接近)、その上でサイドに空いたスペースに飛び出してきたSBを利用する(展開)することが多くなった。そういう場所でSBはゴールに直結する仕事を求められた。

ここでSBの役割が重要になるのは、トップに起点を作ったところで前線の選手がみんな真ん中に凝縮しているから。前線にボールが入ったときに2列目は流動的にポジションをいたけど、その中でボールの近くに人数を集めることは徹底されてた印象。山岸が真ん中、もっと言えば逆サイドのボール近くまで顔を出すようなイメージとは違った動きを見せたのが象徴的。

こういうやり方は狭い場所を数的優位で打開するっていうこのチームの根本的な考え方に基づいてるんだと思う。この数的優位を利用してダイレクトのつながりで相手のゴールに迫るようないい展開もいくつかは見られた。とにかく、それを常に真ん中の場所でやろうとするのがオシムとは違った部分か。

とにかく、こういうやり方の中で中盤の2列目は真ん中に凝縮されることとなる。要するにSBにとっては蓋がなくなった形。逆に言えば蓋がなくなった前線を一気に攻めあがることが求められたとも言えるんじゃないかと思う。だからこそ、右SBは純粋なスピード能力が優れる内田が起用されることとなったと思った。

こういうやり方はオシムとは明らかに違う形。オシムのときに使った表現を使うならば、オシム色は横方向へのアプローチであり、岡田色は縦方向のアプローチだった言うことができる。今回の試合では攻撃においてとにかくトップに当てることが多くなってた。それが中盤でのボールの滞在時間を少なくする1つの要因になってたと思う。

同時に組み立ての時点では左右の幅をほとんど使っていない。サイドへの展開はあくまでも1度真ん中で深みを与えた上での次のアプローチ。SBが組み立ての時点でほぼボールを触れてないことからも明らかだと思う。ちなみに、組み立てにSBがいなくなったことは、最初に書いた鈴木の攻撃面での負担をさらに増やす可能性をはらんでる。

こういうやり方は個人的にはある意味では希望通り。トップに当てることがスイッチとなってるわけだから。代表には軸が必要だってことは前にも書いたとおり。オシムみたいに確固たる型を作り上げたならともかく、短時間でのチーム作りを余儀なくされた今回のチームには必然的に生まれてきたんだ思う。

前半の途中まではそういうスイッチがうまく機能した。トップの選手はうまく中盤に降りてきてボールを収めたし、そこから少ないタッチでうまく展開した。そこに流動性を高めた2列目、SBが絡んできて近い関係での可能性のあるパス回しも見られた。時間とともに機能しなくなったのは、全体のバランス崩れが痛かったと思う。相手が狙いどころを定めやすいっていう、ある意味では当然の状況も作り出したことは否めないわけだけど。

トップをまず見るっていう縦型・岡田型と両サイドをワイドに使いながら展開を繰り返す横型・オシム型。要するに速攻型と遅攻型。当たり前のことだけど、ベストはこの両者の使い分けだと思う。そして、オシムが横型を完成させたことを考えると、岡田監督が縦型の精度を上げることができれば、日本代表は高レベルの二刀流になれるっていうチャンスがあるってことになる。

それが実現したときのことを考えると、ベースとなるのは縦型かなって思う。さらに、そのベースとなるのが高い位置での効果的な守備。途中で引っ掛けてトップに当て、一気に2列目が絡むっていう形。当然、こういうやり方は攻守に運動量を使う形。だから、速攻の芽が摘まれたときには横型に移行する。結果として、モウリーニョがいうボールを持った休憩が可能となる。

これは個人的な理想論だけど、これを実現させるためには高い位置からの守備が必要となる。ただ、オシムのやり方は自分たちから積極的に守備をするものではなかった。それじゃあ、どうすべきかって話。以下、「オシムが作らなかったものはそのまま残した」っていう方から見てみたい。

お気づきの通り、オシムが作らなかったものってのは要するに確固たる守備のやり方。攻撃のための守備の形(2バック+1)は作られたわけだけど、守備のための守備のやり方にはしっかりとは作られてなかったと思う。

強いて言うならマンマークってことになるんだろうけど、07年の段階では移行期に入っていたと言っていい。その中で組織としての確固たる形が見えてこなかったのは事実。1人1人の守備に期待したやり方で、ある程度の形はできていたものの、時間をかけて型を作り上げた攻撃面に比べると、手が回ってなかったってのが本当のところだったと思う。

だから、岡田監督にはオシムが残した守備面に確固たる形を与えることを期待してた。その点についてはオシムのやり方をそのまま引き継ぐっていう選択肢はなかった気がする(同じ路線で洗練させるっていう考え方はあっただろうけど)。なぜなら、オシムの守備のやり方は2バック+1を見ても分かるとおり、攻撃との関連性が大きいものだったから。攻撃のやり方を変える以上は守備のやり方が同じってのは違うと思う。

そして、岡田型・縦型の攻撃を考えるならば、オシムの守備のやり方はそういう攻撃とは相性が悪いと思う。人につくことはいいとしても、積極的に守備をしないからチームとしてどこで取るか(取れるか)がイマイチはっきりしないやり方だから。

結果として奪った瞬間に一気に切り替えてチーム全体が飛び出すってのは期待できないと思う。縦の意図が強かったカメルーン戦もチーム全体が飛び出すというよりは、前線がはがれ気味だった。逆に言えば、奪う→保持する→攻撃するっていうように1クッション入る攻撃のやり方には問題がなkったわけだけど。

そういうわけで、ここまで書いてきたとおりに岡田監督には高い位置からの効果的な守備の採用を求めたい。攻撃のやり方を固定するなら。実際に本人もそういう守備を目指したいっていうニュアンスのコメントを残してたわけだから、あながち間違ってるとは思わない。というわけで、期待した今回の試合。

で、実際のところはオシム的な守備の内容だったと思う。最初にシステム合致を仕掛けてきたのは相手だったと思うけど、日本代表もそれを利用してある程度つくべき相手をはっきりさせてた。そして、その1つ1つに忠実にチェックするような考え方だったと思う。

その上で前線からの積極性はあまり見られなかった。1度組織を作ってからの対応で岡田監督のコメントから伝わるような前線からガツガツ行くような守備は全く見られなかったと言ってもいい。相手の3バックはかなり自由にボールを回してた。

それでも立ち上がりの時間には大きな問題は見られなかった。1つの指標としては、2列目の選手が自分の対応すべき相手に対して前に向かって守備ができているかどうかが挙げられる。それができているときには、最低限のチェックによって完全に相手のペースになるってことはなかった。

それでも、結果として相手に主導権を握られてしまったのは、そういう前線の守備の微妙な隙があったからだと思う。1つ1つのシーンを見ると大きな問題は感じなかったのは事実。対応すべき相手に対して最低限のチェックはしているように見える。守備だけのことを考えるならば、大きな問題を感じなかった。

ただ、前線で微妙に距離を開けてしまったことが後々のことを考えると微妙な歪となってしまった気がする。あくまでも後づけ的なんだけど、そういう歪が徐々に大きくなっていって、最終的には常に後手後手に回るような守備に陥ってしまったような気がした。

具体的に言えば、最初の守備によってロングボールを防げなかったってこと。前線の選手は1度組織を作ってからチェックに出て行くだけに、微妙に相手との距離が空いてる。そうやって日本の選手が完全に距離を詰める前にチリは単純なロングボールを放り込みまくった。

これが思惑通りに作用する。時間ともに日本のラインに間延びの兆候が見られる。再三のロングボールに対して最終ラインが押し下げられていったと思う。結果としてピッチ上の選手の密度が下がってしまうこととなった。これが色々な影響を及ぼしたと思う。

1つは周囲との関係性。選手間の距離が広がったことで、最初のチェックに周囲が連動することが難しくなった。囲い込んだり、挟み込んだりっていうシーンが明らかに減ったと思う。一番致命的だったのは1ボランチの周囲のスペースだったと思う。日本のラインが間延びしてくると、相手も1ボランチのところに起点を作ろうとしてきた。

例えばトップが降りてきて受けたとする。日本のCBはしっかりとマークについてボールが入った相手の動きを止める。でも、そこに連動できない。結果として相手のFWは起点としての仕事を十分にこなすことができたと思う。それが後ほど問題となる後ろからの飛び出しを誘発した。

それにそもそも、最初のチェックの強度自体が下がった。密度が下がったことで1人1人の見るべきエリアが広がった。だから、最初のチェックに行くための距離が相対的に長くなり、距離を詰めるための時間も長くなる。

最初のうちは奪えない状況になった。1つ遅れることでボールが入った相手に対して最低限仕事をさせないってやり方が多くなる。でも、これはまだいいほう。さらに時間が進むと、常に相手がいい体制でボールを持つっていうことが多くなった。相手の足元の技術があるだけに日本の選手は飛び込めずにズルズル下がる。飛び込めば簡単につぎにはたかれる。距離が遠いことで1×1の状況が多くなった(しかも相手の間合い)のも痛かった。

この時点で完全に後手後手の対応に回っていた。2列目の前への守備なんてのはほとんど見られなくなって、むしろ後ろ方向への守備が多くなった。最初のところで相手の起点をつぶせず、後ろからの飛び出しを許す。対応関係をはっきりさせてたわけだから、そういう飛び出しには日本の前線が戻って対応しなければならない。

こういう流れから何とか抜け出せる兆しが見えたのが大久保の投入後。実際にはその前の羽生の投入から流れが変わり始めたと思う。それは2人とも前線からがんばって追いかけたから。ここでやっと守備に先手が打てるようになったと思う。指標となる2列目の前への守備が復活してきた。その後に投入された矢野の追いかけを見ても、ベンチからの指示があったかもしれない。

何にしても、後手後手の守備で相手に主導権を握られたのは事実。ただ、今回の守備の内容がオシムのときと比べて恐ろしく悪かったわけではなかったと思う。基本はオシムのときと変わらないやり方を取ってるわけで、オシムのときはロングボールを蹴り込まれなかったかといえばそんなはずはない。ただ、オシムのときにはそれが大きなほころびに結びつかなかったってだけの話。

それが攻撃との相性の問題なんだと思う。オシムのときには、そもそも相手に攻撃の時間を十分に与えなかった。今回のチリのように、まずはロングボールでアプローチをして、相手が間延びをしたらパスをつないでっていうようなやり方をする時間はなかった。それに例えば今回のように蹴りこまれて一時的にバランスが崩れても、その後の圧倒的なボール保持によってバランスの回復が可能だった。

それが今回の試合では奪ったらまず、縦方向だった。トップを狙うボールが圧倒的に増えた。何度も書くように中盤でのボールの滞在時間が短い状況の中で押し上げの時間を作るのは難しかったと思う。さらに、トップにボールを入れたとしてもそこに2列目が絡むことが念頭に置かれてる状況。守備でみんな引かされてる形ではそれは無理だった。だから、攻撃もうまく回らない展開。

もちろん忘れてはいけないのがチリの強さ。3-3-1-3システムと前線からの忠実なプレッシャーっていう典型的なビエルサ色のやり方で日本を苦しめた。基本的な部分は日本と変わらないはずなのに、ほとんどの面で日本の上に行ったと思う。

守備はシステム的合致を利用しながら、最前線から忠実にプレッシャーをかけていく。最前線選手から少し遅れてでも追いかけるような献身的な姿勢が目立ったと思う。結果、日本のボール保持者はどの場所でも例外なくプレッシャーを受けていた。

そして、チリの後ろの選手は連動が図りやすかったはず。入った瞬間に完全に距離を詰めてるシーンが多くなった。さらに、そうやって相手の勢いを1つ止めたところでの周囲の連動性が抜群に速かった。一気に囲い込んでボール保持者を周囲から分断することができてたと思う。

攻撃では日本の守備が後手後手に回ってることもあって、十分に引き付けておいて、次のギャップにボールをはたくっていうやり方が多くなった。ここでは個人の技術の高さもベースになってる。その中で選択肢が少なければ無理せずに後ろに戻す。その上でサイドを変えて作り直すやり方が目立ったと思う。そういう意味で両サイドをワイドに使った展開も魅力的だった。

このサイドに関しては立ち上がりに形をつかむのに苦労した。結局、それは3バックの積極的な攻撃参加が目立ったからだってことが判明したわけだけど。それじゃなくてもWG+SMFの相手に対して2×2の数的同数になっている日本。さらに、3バックの1枚が出てくるとなると対応はかなり難しかったと思う。

その対応に鈴木がサイドに引っ張り出されちゃうと真ん中が大変なことになる。そもそも中村だったり山岸だったりがサイドの対応をしてるのも好ましくない。戻ってきて、1ボランチ脇のスペースを埋める選手がいなくなってしまうわけだから。結果としてどの場所でもストロングポイントを作れなかった。この辺は相手の戦術に負けたところ。

チリの弱点はある意味では日本的。組み立ては素晴らしくてもフィニッシュの形が見えてこない。あれだけ主導権を握ったのに、決定的なチャンスはなかったと言ってもいい。日本の守備陣がヒヤッとしたシーンもほとんどなかったはず。

とりあえず、チリの攻撃の中で今回の日本が見習うべき点だったとのは作り直し。今回の日本は何が何でもトップ、何が何でもショートパス、何が何でもダイレクトっていうような姿勢が見て取れた。その中でミスも増える。相手の守備のよさも相まって途中で攻撃の流れが分断されるシーンが多くなったと思う。少なくとも、接近→展開→連続の最後の“連続”はできてなかったと思う。

今回の試合ではオシム色とは違う岡田色の一端が見られた。本当は守備面で見られることを期待してたけど、攻撃面で。運の悪いことに、チリの守備のよさがその岡田色が完全に発揮されることを防いだわけだけど。初戦だから、ある程度主導権を握れる展開で見てみたかったのも事実。
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2008-01-24 Thu 13:21
マンU×バーミンガム
<マンU:4-4-2>
FW:テベス-Cロナウド
MF:パク・チソン-アンデルソン-キャリック-ナニ
DF:エブラ-ビディッチ-ファーディナンド-オシェイ
GK:クシュチャク

立ち上がりのマンUは全体としてしっくりと来てなかった。大幅にメンバーを入れ替えた影響が明らかに見られたと思う。それぞれの関係性がギクシャクして、個の分断が目立った。そういう中でパスがズレるシーンも多くなったと思う。結果として前に人数が入った状況で相手に引っ掛けられて、カウンターを食らうシーンが多くなってた。

その立ち上がりは前線の連動性も機能しなかったと思う。システム的には立ち上がりから上に書いた4-4-2を念頭にしてたと思うんだけど、この時間帯は前線が変則的な3トップみたいな形になってた。Cロナウドが左サイドに出て、Cロナウド-テベス-ナニの並びが見られたと思う。

こんな形で2トップ+右SMFが最前線、その下にパク・チソン-アンデルソン-キャリックが並ぶ形。そのままの形ならば最前線のラインと中盤のラインが互い違いみたいになるはずだった。でも、実際にはCロナウドがかなり左寄りにポジショニング。1つ下のラインはもともと左よりだったから、チーム全体が左寄りになったイメージ。

これで窮屈になったのがパク・チソン。パク・チソンの基本的なポジションである左サイドにはCロナウドが入ってきたのは上にも書いた通りなんだけど、チームとしてCロナウドのサイドに起点を作ろうとする意図が見られたと思う。

だから、3トップの残りの2枚も左に流れつつのプレーが多かったし、キャリックとかアンデルソンも絡んでくる。さらにエブラが積極的に攻撃に参加することで、もともとの左SMFであるパク・チソンが絡む余地がなくなった。

仕方なくパク・チソンはCMF的な場所でのバランス取りに終始してたと思う。本来のポジションでCロナウドを助けることが合ったのも事実だけど、いつの間にか左サイドの主役を奪われた。機を見て前に出て行くときも、前線の関係性を見ながら手薄な右サイドに流れたり、真ん中の厚みを加えに行ったりっていう工夫をした飛び出しが多くなったと思う。

ただ、右サイドに出て行っても、左サイドに起点を作るチームとしてはあまり重要視してないところ。真ん中に関しては、そもそもそこにボールまでボールが達する前に引っ掛けられることが多かった。パク・チソンとしては全体のバランスを見ながらの動きだったんだろうけど、全体が左に寄ったチームとしてはパク・チソンが見えてなかった。だから、パク・チソンにとっては追い出されてしまったようなイメージで、立ち上がりは消えてしまうことになったと思う。

同じように立ち上がりの時間はアンデルソンもバランスを考えたポジショニングをしていたと思う。常にボールよりも後ろにいる形だった。4-3-3と見るとアンカーのポジションに入ることとなるから、いつも以上にバランスを考えてたのかもしれない。

さらに、チームとして最後まで攻めきれず、途中で攻撃の流れが分断されてしまうことを考えてのものだった気がする。攻撃では個が分断気味のボール保持者のパスの逃げ場としてうまく1つ下のギャップに入り込んでた。

それ以上に大きかったのが相手のカウンターに対する対応。相手の速攻に対してまずは、アンデルソンが対応するシーンが多かったし、その中で相手の攻撃をつぶすシーンも多くなった。立ち上がりに相手のカウンターを食らう流れを食いとどめる役割としては、かなり大きな仕事をしたと言える。

こんな感じでチーム全体としての攻撃面でのバランスの悪さ、局面でのつながりの薄さが見られた立ち上がり。でも、そういう時間帯にも相手のブロックを崩すための布石はしたたかに打っていたと思う。結果として前半の15分までの間には、主導権を握ることができてた。

その布石は相手の4-4-2、特に後ろの4-4の関係性を崩すこと。バーミンガムの守備のやり方についてはアーセナル戦のときにも書いたとおり(実際には、この試合の後にアーセナル戦)。前線からの積極的な守備はせずに、あくまでもバランスを整えた4-4-2で受けるっていう受身の形。

そして、そのブロック内に入ってくる縦パスを狙いとして置く。コンパクトなブロックでしっかりとフィルターを置くことによって縦パスを入れさせない、入ったとしても近さを利用してすぐに囲い込むっていうやり方。その中でアーセナル戦では攻撃の経由点であるアデバヨールにボールを収めさせなかった。そして結局アーセナルはロングボールによるアプローチを選択することとなる。

このロングボールによるアプローチは相手の最終ラインを押し下げることを念頭に置いている。ロングボールのプレッシャーで相手の最終ラインの後ろへの意識を高め、結果として中盤との関係性をはがそうとするやり方。このやり方は一時的にはうまく行ったけど、相手の中盤が後ろに下がることで対応されてしまった。

こういうアーセナルのやり方とは違って、今回の試合のマンUは相手の中盤を前に引っ張り出すことでDFとの関係をはがそうとするアプローチを見せたと思う。立ち上がりは前線の関係がうまく回らなかったこともあってか、後ろでのボール保持の時間が長くなった。そういう場所での横とちょっと縦への微妙なアプローチによって徐々に相手のブロックを崩しにかかったと思う。

上にも書いたように相手のトップの選手が追いかけないだけに最終ラインの選手はフリーになることができる。基本的にはそういう最終ラインを左右にボールを動かすっていうセオリー通りのアプローチを見せた。ただ、その中で相手の中盤を引っ張り出すために、様子見の縦パスが入ることが多かったように思う。これがちょっと縦っていうこと。

様子見の縦パスは相手の中盤とトップの間の4-2の間に出される。単純にCMFが受けることもあれば、Cロナウド、ナニ、パク・チソンあたりが降りてきて受けることも多かった。そうやって受けた選手は、1度ボールを受けたら下手に保持せずにすぐに後ろに戻すことが多かったように思う。

これだけのことだけど、相手のブロックに対する影響は多大だったと思う。バーミンガムの守備はここまで書いてきたとおり、ブロックに入ろうとする縦パスを狙うっていうもの。そういう様子見のパスは距離が短いとは言っても、縦パスには変わりない。

というわけで相手の中盤の選手は例外なくそういう様子見の縦パスに対してもチェックをしに来た。ただ、4-2の間は4-4の間みたいに密集地帯じゃないから一気に囲い込むっていうことができない。だから、一応のチェックってことになることが多かったと思う。相手も無理をせずにすぐに戻すし。

これは前線での守備がないから仕方のない部分ではある。うまく限定してないから、あくまでも入ってからの対応になってしまう。厳しく当たって中盤で効果的に奪うってのはバーミンガムのやり方ではないし、守備だけを考えればそれが即致命的なシーンにつながることはない。

それは単純なことで、ゴールから遠い位置だから。4-2の間でちょっと収まったからといってあせる必要はない。あくまでもバーミンガムの守備は4-4の密集地帯に相手が入り込んでくるのを待ち伏せするようなイメージだから。

それがアーセナルに対して機能したのは、アーセナルは縦パスが入ることが1つの攻撃のアプローチになってるから。アデバヨールが真ん中で待ってるだけじゃなくて、色んな選手が動きながら起点になろうとするわけだけど。でも、4-4の密集地帯の中では動いてギャップを探してもそれが見つからなかった。

結果としてアーセナルらしくない攻撃のアプローチが多くなった。ロングボールで4-4をはがしたり、SBがドリブルで持ち上がったりっていう。そういう意味ではアーセナルに対するバーミンガムの守備は成功だったって言えるのかもしれない。

でも、マンUは何が何でも縦パスを入れなければならないチームでもない。アーセナルだったら珍しいロングボールでの距離稼ぎとかSB(には限らない)のドリブルでの持ち上がりなんてのは日常的に行われる。バーミンガムとしてはアーセナルを相手にしたときのように4-4の間の縦パスを狙ってればいいっていう話ではなかった。

だから、4-2の間の縦パスにも一応のチェックをしなければならなかった。そこでフリーにして一発のパスを供給されるのは嫌だし、スペースを与えればドリブルで仕掛けてくる可能性もある。そういう可能性がないのなら、4-2の間の縦パスなんか放っておいて、あくまでも4-4の間で勝負をする可能性だってあったはずだし。

こういう流れの中で中盤の前への意識が高まった。これは別に真ん中に限ったことではない。最終ラインでの横のパス回しに対しても1つ前で(CBとは段差をつけて)受けるSBに対しては、バーミンガムのSMFが引っ張り出されることが多くなった。結果としてバーミンガムの中盤の4が前に引っ張り出されるシーンが多くなったこととなる。

アーセナルは最終ラインの4に後ろを向かせることで、4-4の間にスペースを作った。マンUは同じことを中盤の前への意識を高めることよって同じように4-4の間にスペースをこじ開けることに成功した。後ろでの微妙なアプローチが徐々に功を奏し始め、前半の15分の時点ではすでにマンUの思惑通りの展開が生まれたと思う。

それまでほとんどボールを触れなかったテベスのタッチ数が明らかに増えることとなったと思う。逆に言えばそれまでの時間はテベスに対するボールは引っ掛けられてたことを意味する。マンU自身の前線の関係性のまずさがあったのも事実だけど、無理やりテベスに通そうとするボールを奪われてカウンターを食らったシーンもあった。

とにかく相手の4-4の間をこじ開けたことによって、立ち上がりは4-4-2だか4-3-3だか分からないようなおかしなバランスだった前線の関係性も回復したと思う。その引き金となったのはCロナウド。おそらく、それまでの時間は4-4の間のスペースがなかったことを嫌がって左サイドに流れてたんだと思う。結果的にそのCロナウドにみんなが引き寄せられてしまったのは上にも書いたとおり。

これに対して4-4の間にスペースが生まれたことで、Cロナウドが本来の真ん中のポジションに帰っていった。結果として一番恩恵を受けたのはパク・チソン。それまでは自分の場所を侵されていたわけだから、Cロナウドが真ん中に帰ったことでかなり生き生きとプレーできることとなった。その後の時間帯はサイドでのチャンスメイクからゴール前の飛び出しまで多くのシーンに顔を見せるようになった。

これでやっと全体のバランスが回復したと思う。変な形の4-3-3がすっきりとした4-4-2に統一されたことで型にはまった状況が生まれたわけではない。むしろ、全体が整理されたことによって有機的なポジションチェンジが生まれるようになったと思う。それまでは流動性のせいでバランスを崩していく状況だったから。

例えばテベス。4-3-3みたいな形の時には、CFがテベス1枚みたいな形になって真ん中に釘付けにされていたと思う。それがCロナウドが入ってきたことで、サイドに流れるシーンが増えた。その中でボールタッチの回数が明らかに多くなったし、周囲との距離感も改善した。それまでのテベスは前線の人数が多いのにも関わらず、孤立してたような状況だったと思う。周囲と有機的な関係性が築けてなかった。立ち上がりはパク・チソンとテベスがそういう状況に陥っていたように思う。

何よりも前線にうまくボールが収まるようになったのが一番大きかったように思う。うまくトップの場所にボールが入ることで全体としての関係性に改善が見られた。得点シーンもテベスに収まったところからCロナウドと近い関係性でゴールまで行ってしまったシーンだったし。

そうやってバランスとか関係性が改善されたことで、局面での明らかなズレが少なくなっていったと思う。全体を通してみると完璧とは言いがたかったけど(ナニとかキャリックは特に)、スムーズにゴール前までは行けるような展開が生まれたのは確かだった。

この順応性はやっぱり個がベースになってることに起因すると思う。周囲に求められるのは個を殺さずにフォローするってことぐらいだから、あまり難しいことではない。だから、低レベルなミスがなくなれば、何とか形ができてしまう。この辺はアーセナルとは全く違うところかなって思う。

そうやって無駄に相手にボールを渡すことがなくなり、さらに相手の守備のバランスも崩せたから途中で引っ掛けられるっていうことが少なくなった。ほとんどの場合において、深い位置まで攻めきることができるようになったと思う。

結果として相手のカウンターは明らかに減っていく。相手の守備ブロックを深い位置に押し込んだことで、一気にカウンターを食らう可能性がほとんどなくなったと思う。そうなったバーミンガムの攻撃(守備からの切り替え)はほとんどトップ任せの意図の薄いロングボール頼みとなった。そして、そういうロングボールはCBの2枚がことごとく跳ね返し続けた。ヒヤヒヤさせられるシーンはほとんどなくなったと思う。

そうやって安定して主導権を握れるようになって初めて、アンデルソンが最前線まで飛び出してくるようなシーンが生まれた。上にも書いたように、それまではバランスを取ることに重点を置いていたアンデルソンだけど、機を見て攻撃に出ることが多くなったように思う。この辺の状況判断は見事。

とりあえず、こんな形でマンUが主導権を握っていくこととなる。そして、主導権を握ったマンUの攻撃は基本的に斜めの質のボールの使い分けによって行われることになったと思う。

そして、この斜めの質のボールの出し手は多くの場合でオシェイ。攻撃のスタートとしてのオシェイの役割は主導権を握る前の時間帯からの継続だったわけだけど。この試合のマンUの攻撃はオシェイの右サイドをスタートとするやり方が多くなった。そこから左で終わるか、真ん中で終わるかっていう感じ。いい時間帯には前線でのもうひと展開ってのもあったけど。

とにかくオシェイがスタートとなるのは立ち上がりからずっと見られた形だった。逆サイドのエブラは仕上げのために高い位置に上がるわけで、結果として最終ラインのパス回しは2CB+オシェイで行われることが多くなったと思う。

そして、そのパス回しからいいなって時にオシェイが前線にボールを供給する。そのオシェイから前線に出すボールの質が2パターン。それが斜めのボールが2パターンっていうこと。

1つはオシェイからトップに入れる斜めのくさび。斜めのくさびのメリットについては前にも書いたことがあるような気がするけど、軽く触れとく。早い話が単純に真ん中は相手も固めてるだろっていうことなわけだけど。真ん中→真ん中の単純な縦パスは引っ掛けられる可能性が高い。相手も最短距離の縦を切って来るし、フィルターとしてCMF2枚が存在する。

対してSBからくさびを入れると、すぐに対応できるのは相手のSMF1枚だけ。その1枚がどういう対応をするかにも寄るけど、縦を切ってくるなら何の障害もなく斜めにくさびを入れてやればいい。斜めに入れることによって相手のCMFのフィルターもはずすことができる。

仮に相手が中(くさびのコース)を切ってきたら、何も無理してくさびを入れる必要もない。せっかく道を空けてくれてるんだから、自分でドリブルで持ち上がればいいだけの話。どうしてもトップに入れたいなら、ドリブルで外してから入れればいいだけの話。マンUの場合にはトップにこだわらなくても、1つ前に強力なSMFがいるんだから、そこに任せてもいいし。

今回の試合に関してはSBがスタートなることの重要度も高かったように思う。それは相手の途中からの対応。4-2の間に入られる様子見の縦パスを相手も嫌がってたのか、途中から2トップを縦関係に並べてきた。だから、簡単にはCMFを使えないし、同時に簡単には真ん中→真ん中のくさびは通らなかったと思う。

ただ、何度も書くようにマンUは何が何でもくさびを収めたいチームではない(そうだとしたら、もっと適切な選手を補強するはず)。だから、斜めのくさびを利用するのはあくまでも確実度が高いとき。要するに思惑通りに相手の4-4がはがれてしまっているときだったと思う。立ち上がり含めて、それができていないときにはもう1つの斜めのボールを使うこととなった。

それは一発で逆サイドに送る斜めのロングボール。SB~WGへの対角線のロングボールが多くなったと思う。相手のブロックの外から外への展開によって一気に距離を稼ぐと同時に、相手のブロックへの揺さぶりの効果もあったように思う。

こういう斜めの質のボールの多様は基本的に前半に多く見られた形。後半は相手が前に出てきたこともあって、もっと単純に攻撃ができてた印象。マンUが意図的にアプローチをしなくても、相手の中盤とDFの間には勝手にギャップが生まれてたから、そこをうまく使うやり方が見られたと思う。

その中で最も目についたのがCロナウドが起点になる形。Cロナウドがやや降りてきて相手のDFと中盤の間のギャップで受け、そこから周囲のスペースを利用してドリブルに入る。その間に押し上げてきた周囲を利用するような真ん中から外への展開。最終的にはクロスで仕上げっていうやり方が多かったし、その形で決定的なチャンスも作り出した。

何も起点はCロナウドには限らない。前線の選手、後ろの選手に関係なくギャップにうまく入り込んだ選手が受けてうまく攻撃の起点になれてたと思う。この時間には関係性の部分がかなり改善されてたからテベスの自由度が高まってたし、それと入れ替わってパク・チソンが真ん中に入るようなシーンが見られた。

さらにチャンスを作ったのがカウンター。前がかった相手のボールを奪ったら後は前線のスピードに任せて攻めきるシーンがいくつか見られた。おそらく相手にしてみれば、かなり怖い状況だったように思う。

結果としてバーミンガムの攻撃の勢いが衰える。後半はうまくギャップを使われ中⇔外の展開を許したこともあってか、前半よりも消極的なブロックになった。結果としてオシェイは攻撃のスタートをCBに任せて攻撃に参加してきたし、むしろファーディナンドがかなり高い位置まで入ってくるようなシーンも見られた。この時間はマンUが徹底して波状攻撃を繰り返したと思う。

でも、この時間にマンUは追加点を奪えなかった。そして、バーミンガムの選手交代によってガラッと流れが変わる。バーミンガムが再び攻撃に人数をかけ、守備もそれまでとは打って変わって相手のボールに厳しくアプローチをしていくような積極的なものになった。

そもそも後半はあまりリスクを犯して攻撃しようとする意思が見られなかった(波状攻撃の時間は相手を押し込んでたからリスクが少なかった)と思う。アンデルソンの攻撃参加もほとんど見られなかった。

この両者の思惑がある意味では合致したと言える。要するに攻めるバーミンガム×守るマンUの展開が生まれた。当然のことながら、マンUとしてはあれほど守る展開は思惑通りのわけがないけど。とにかく、前線の人数が足りず相手の守備の積極性が増したことで全く攻撃ができない状況に陥った。

この時点で守備の流れから抜け出せないマンUの脆さが見られるようになった気がする。1度相手に主導権を握られてしまってからは、もがけどももがけどもそこから抜け出すことができなくなった。結局、後半の後半はほとんどバーミンガムのペースで試合が進むこととなったと思う。

とりあえず、守備面だけを考えると大きな問題はなかったように思う。両SMFにパク・チソンとナニが入っていることによって守備ブロックが4-2にはならなかった(特にパク・チソンはしっかりと守備に参加した)。キャリックとアンデルソンがCMFを組んでたことを考えれば、両SMFが守備に参加したことは大きかったと思う。途中でハーグリーヴスを入れてさらに補強を加えたわけだし。後は持ち前の跳ね返し力で何とかしてたって感じだった。

逆に言えば両SMFが守備に行ったことで、守備の流れから抜け出せなくなった側面もあったと思うけど。マンUにとっては後ろが4-2で危なくても前に4枚を残しておく形の方があってるのかなとも思うところ。そもそも最前線でがんばるルーニーがトップに入れば、これほどのことにはならないんじゃないかってのも最近思うことではある。
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2008-01-23 Wed 22:28
キリン杯招集メンバー
GK:川口能活、楢崎正剛、川島永嗣
DF:中澤佑二、坪井慶介、加地亮、駒野 友一、岩政大樹、水本裕貴、内田篤人
MF:橋本英郎、羽生直剛、遠藤保仁、中村憲剛、鈴木啓太、阿部勇樹、山瀬功治、今野泰幸、山岸智
FW:高原直泰、播戸竜二、巻誠一郎、前田遼一、大久保嘉人、矢野貴章

(エジプト戦招集メンバー)
GK:川口能活、楢崎正剛、川島永嗣
DF:中澤佑二、坪井慶介、阿部勇樹、加地亮、駒野友一、今野泰幸
MF:橋本英郎、遠藤保仁、中村憲剛、鈴木啓太、山瀬功治、山岸智、藤本淳吾
FW:播戸竜二、巻誠一郎、前田遼一、大久保嘉人、矢野貴章


オシム最終戦のエジプト戦と大きな変更は一切なし。メンバーの時点では岡田色はまだ見られないと言っていい。初めてでどういう形にするのか(4-3-3?ダイヤの4-4-2?)全く分からないので当日楽しみにしておきたい。チリの監督がビエルサらしいので、こちらも楽しみ。
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2008-01-20 Sun 17:09
アーセナル×バーミンガム
<アーセナル:4-4-2>
FW:エドゥアルド-アデバヨール
MF:フレブ-フラミニ-セスク-ウォルコット
DF:クリシー-センデロス-ギャラス-サーニャ
GK:アルムニア

この試合のバーミンガムの守備のやり方はアーセナルと対する上では1つのヒントになるかもしれない。これまで見てきたアーセナルの相手は多くの場合で積極的な守備を見せていた。プレミアらしく局面で厳しく行くようなやり方で、ボールに対して積極的に厳しいプレッシャーを掛けていった。

そういう守備のやり方に比べるとバーミンガムの守備は消極的。前線での守備は完全に捨てて、自陣に作ったブロックで受ける形になった。トップの2枚が敵陣に入り、残りの4-4を自陣に置くぐらいの位置関係にコンパクトな3ラインを形成する意図が見られたと思う。

前者のようにプレミア的に局面でガツガツと当たられると、1つ1つの場所で個人が自由になれず精度がを欠いてしまうってのが本来的。むしろ、バーミンガムみたいに引いて守ってくれた方が自由に自分たちの組み立てができる気がする。

でも、アーセナルのやり方を考えると相手がガツガツ来てくれた方がやりやすいんじゃないかと思う。ある程度のプレッシャーの中でなら絶対的な個の力をベースに本来のやり方ができる。何よりも、そういう相手の激しいプレッシャーを否してパスを回していくのがアーセナルのやり方だと思う。

相手が距離を詰め切る前にはすでに次の場所にボールが動いてるっていう状況。相手としてみれば、十分にボールにプレッシャーをかけられない上に、自分が出てきた場所をギャップとして空けてきてしまう形。アーセナルは人を動かしながら、そういうギャップを突いていく。

そのときには1タッチ2タッチで次々に相手のギャップに入り込むのがアーセナルのやり方。そう考えるとアーセナルのパス回しは相手が守備に出てきたことで生み出される側面もある気がする。自分たちが意図的にバランスを崩して、そこからスペースを次々に生める中で流動性を高めるってのはいつも書いてるとおり。加えて、相手が守備に出てきたギャップも有効活用してるって言えると思う。

そうやって少ないタッチのパス回しでギャップギャップを突かれていく相手は混乱を始める。自分たち本来のボールに厳しく当たる守備が中途半端な形に終わり、そういう守備をすればするほどむしろ相手にスペースを与えるっていうジレンマに陥る。

結果として厳しい当たりができなくなる。そうなれば当然のようにアーセナルのパス回しはさらに加速。守備のやり方に迷い始めた相手は自分たちの守備のベースを失って守備の勝負ができてなくなる。結果としてズルズルと引かされてしまうってのが1つのシナリオ。

バーミンガムの守備のやり方ではこういう形に陥ることはなかった。バーミンガムはボールに対して激しくプレッシャーに行こうとしない。ゴールから一番遠いアーセナルの最終ラインなんてのは完全にフリーの状態になってたと思う。

そうやって積極的に守備をしない代わりに4-4-2の3ラインをコンパクトに配置してスペースをつぶしにかかる。激しくボールにアプローチしない分、そういうブロックから大きく飛び出していく選手はいない。結果としてバランスのいいブロックがそのまま維持されることとなるわけ。

アーセナルとしてみれば困った話になってくる。相手がボールに思いっきり釣りだされるってことがないから、いつものようにギャップギャップをつないでいくっていう形を作り出せなかった。それに対してのアーセナルのアプローチは後述。

こういう形で当面はアーセナルの思い通りの攻撃を防いだバーミンガムだけど、この守備のやり方にはある問題が内在してた。それは、この守備があくまでも消極的な受身の形であるってこと。自分たちから積極的にアクションを起こす形ではないだけに、守備の勝負どころを定めるのに苦労するんじゃないかっていう気がした。

でも、実際にはそういう心配はいらなかった。アーセナルの攻撃のアプローチには欠かせない縦パスを狙うことで、守備の勝負どころを定めたと思う。消極的で受身の形の守備だとはしても狙いどころを定めることに成功したと思う。それもこれも、アーセナルが自分たちの形を貫く中では縦パスを入れるってのが必須だったから。そして、この縦パスを狙う上でもコンパクトなブロック自体が重要なポイントとなったと思う。

まずはフィルターという点において。DFと中盤の関係が近づいたことで、中盤が縦パスに対するフィルターとしてしっかりと機能できることとなった。これによって縦パスが入る前段階のところで引っ掛けるようなシーンが生み出されたと思う。

さらに入った後の対応もやりやすくなった印象。コンパクトなブロックの中では当然のように選手間の距離が縮まる。それは1人1人の担当エリアが縮まるといい直すことができる。だから、縦パスが入った相手に対応するときの距離が近い。結果として短い時間で距離を縮めることができたと思う。前線であまり制限をかけなくても、密着した守備が可能になった印象。もちろん、キーとなるアデバヨールなんかにはしっかりとつく意図がもともとあったってのもあったけど。

そうやって相手を1度遅らせたところで(前で奪うシーンも目立った)すぐに協力体制を作ることも可能になった。DFと中盤の距離が近いから前後の挟みこみを含めて、複数で囲い込むシーンが目立ったと思う。特にアデバヨールに対しては徹底してた。

この前後の近さは流れる相手を捕まえやすくするのにも効果的だったと思う。流れるべきスペースを作らなかったのもあったし、マークの受け渡しもスムーズになった印象。そういう中でフリーでボールを受けさせなくできたのは大きい。

そうやって縦パスを念頭に置いた守備の中で効果的に相手のボールを奪うことができれば、次の攻撃にもいい形で切り替えることができてた。バーミンガムの攻撃はとりあえず、縦を狙う。トップに頼るボールを出すことが攻撃のスタートとなる。

でも、このときにトップだけに頼るっていうわけでもない。守備時にバランスのいい3ラインを形成しているだけに、そこから攻撃に移ったときにもトップだけが孤立してるっていう状況にはならないから。いい形で攻撃に移ることができれば、両SMFを中心に前線にある程度の人数はかけてた。

例えそこでいい形で攻撃に移行ができない、つまりトップに効果的にボールを渡せなくてもバーミンガムとしてはよかったんだと思う。トップに蹴り込むことでどちらにしても相手がボールを奪えるのは深い位置ってことになった。そうやって自分たちのゴールから距離を稼いでおいて、もう1度守備の組織を安定して受けることができたと思う。

この守備の組織を安定させる意識はこの試合のバーミンガムにはかなり強く見られた部分だったと思う。一番顕著だったのがある程度の人数をかけて攻めた後だったと思う。相手に奪われたら、明らかにファール覚悟でカウンターを防いだ。さらに、それによって相手のFKになるわけだけど、それすらも妨害した(ボールを蹴り出すとか)。それほどの徹底振りだったと思う。

こういう引いて受ける形に対するアーセナルのアプローチ。どことなく日本代表的なやり方が見られた。見られた気がしただけだったかもしれないけど。とりあえず、アジア杯の日本代表同様に引いた相手をどう崩すかが焦点になったのは事実だったと思う。おそらく以下で書くことは、前に代表で書いたこととかなりかぶる内容になると思う。

上にも書いたようにアーセナルの最終ラインはフリーになった。その最終ラインで左右にボールを動かしながら徐々にラインを押し上げて行った。そうやって最終ラインがボール保持者となることで、全体を前に押し出したと思う。結果として受け手の選択肢を増やすっていうやり方。

でも、そこからの単純な縦パスは通らなかった。これは上に書いたようなバーミンガムの守備のよさがあったため。結果として真ん中→真ん中の選択肢はなくなった。どちらにしても本来からアーセナルは何でもかんでも真ん中ってやり方は取らないのも事実なわけだけど。とにかく、これによって同時にSBの重要度が高まることになったと思う。

立ち上がりの最初に敵陣に入っていったプレーはサーニャのドリブルでの持ち上がり。縦パスでなかなかボールを入れられない中で最終ラインからの持ち上がりはボールを前線に運ぶ1つの方法になってた。相手も誰が対応すべきかはっきりさせられずに、深い位置まで入り込めることが多かったと思う。

それから真ん中への縦パスを切られてく中でサイドに起点を作る考え方も。上にも書いたように本来的にアーセナルは真ん中を単純に攻めるんじゃなくて、サイドに数的優位を作って深みを与えるわけだけど。ただ、今回はサイドアタッカータイプのエブエがいない中でSBの重要度が上がってた印象。

もちろんSBだけがサイドを担当するわけではない。1つ前のSMF、アデバヨール、CMFが交互に絡みながらサイドに数的優位を作るイメージ。流動的に動かしながら近さを生み出す意味ではアーセナルらしいわけだけど。ただ、実際にサイドに常駐してたのはSBだけだったって意味で重要な役割を担ってた気がする。

こういうSBと中盤の関係性は日本代表の形に似てる部分かなって思った。サーニャ・加地とクリシー・駒野がサイド一杯に常駐し、1つ前のウォルコット・俊輔とフレブ・遠藤は組み立てのためにサイドに限らずに動き回る形。その流動性の中でサイドに数的優位を作っていくのも。

ついでだから、他のポジションも代表と当てはめてみる。CMFはセスク・憲剛が前線に積極的に飛び出して行き、相方のフラミニ・鈴木は後ろでバランサーに。アーセナルの方が両者の攻撃的な意識が強いけど。さらに、アデバヨール・高原はトップにこだわらずに中盤とかサイドでボールを引き出したり組み立てを助けたりする。対する、エドゥアルド・巻はゴール前の仕事に専念。

なかなか前線にボールが入らないときには、フレブ・遠藤とかウォルコット・俊輔が降りてきて1つの起点となろうとする。そして、それと入れ替わりにセスク・憲剛が前線に飛び出していくやり方が見られる。この辺も似てたかなっていう気がした。

それぞれを当てはめてみると、アーセナルの方が前線への意識が強いのに気づくわけだけど。全体としてゴール前で仕事をできる選手が多い。その辺はSMFにFW的中盤を置くか、中盤的中盤を置くかっていう違いがあるのかもしれないけど。CMFのところを見ても、アーセナルの方がどちらも攻撃的に出て行くことが多いと思う。

そういう細かい個々の役割を見なくても、全体として日本代表の理想系はアーセナルみたいな形だったのは確かだった気がする。何よりも局面で数的優位を作って打開しようってのは、まさに類似点として挙げられる。型にはまった数的優位ではなくて流動性の中のものであり、当然のようにランニングがベースとなる。まさに、ボールと人が動くっていうキーワードに当てははまる。

そうやって局面を崩しながら、詰まったときに大きな展開を加えるかどうかってのが大きな違いかも。それでも今回のアーセナルはサイドチェンジも織り交ぜながらの組み立てが見られた。右サイドに人数をかけて作り、そこから大外のクリシーへの展開がいくつか見られたと思う。

純粋にアーセナルの話に戻ると、アデバヨールの存在はやっぱり大きいと思う。前回のベントナー-エドゥアルドの2トップよりも明らかにスムーズな攻撃が可能になった。アデバヨールがトップの場所にこだわらずに動き回ることでうまくボールを引き出し、組み立ての数的優位の形成にも絡んできた。

それだけにエドゥアルドがもっと組み立てに絡んできた方が面白かったと思う。エドゥアルドはやっぱりまだアーセナルのやり方にフィットしてないかなって気がする。ゴール前ではさすがの動きを見せるわけだけど、それ以外のところでは完全に消えてしまう時間が長いと思う。

結果としてアデバヨールの負担が大きい。攻撃の組み立てのところで相手はアデバヨールに重点を置いておけばいいわけから。結果としてすぐに囲まれてしまうことが多くて、アデバヨールの経由の攻撃がスムーズに行かなかった。逆にPKへの流れのところでエドゥアルドが完全に浮いていてのは象徴的だった気がする。

ちょっと話が逸れたけど、アーセナルの攻撃のアプローチについての話題に戻りたい。この試合のアーセナルに目立ったのは単純なロングボールだった。アーセナルらしくないけど、アーセナルらしいパス回しに必要なものとして仕方なく(?)取り入れたんだと思う。

バーミンガムは上にも書いたようにバランスのいい守備ブロックでスペースをつぶしてきた。アーセナルがいつものようにパスを回すにはスペースを作らなければならない。立ち上がりは上に書いたようなSBを利用したりしながら、それでも地上から攻めようとしたわけだけど、決定的なチャンスにはつながらなかった。だから、強引にやろうとせずにスペースを作ろうって形に方向転換したと思う。

それがロングボールだった。相手は前線の守備を捨ててたわけだから、最終ラインはフリーになる。そこから単純にトップを狙うロングボールの数が増えたと思う。そこで待ってたのがアデバヨールだったわけだから、相手には相当の圧力があったはず。

おそらくバーミンガムはアーセナルのロングボールを想定してなかったんじゃないかと思う。だからこそ、最前線は追いかけなかったし、それでも後ろの4-4は維持できると思ってた気がする。でも、実際にアーセナルが単純なボールを蹴り込んで来きたわけで、その意外性にも負けたかもしれない。

結果としてDFラインが圧力に負け始めた。それまでいいバランスを築いてきた4-4の関係性が徐々に崩れていって、DFと中盤の間にスペースができ始めた。こうなると上に書いたようにコンパクトなブロックだったからこそできてた守備ができなくなる。特に縦パスに関しては。

スペースが空くことで相手が動いて受ける余地を作ってしまう。さらに、前後の関係性が崩れてしまって入る前で縦パスを引っ掛けるのが難しくなった。入った後にしても、距離が遠くなったから素早い対応が不可能になり、さらに複数の協力で囲い込むのも難しくなった。

結果としてアーセナルのペースになる。アデバヨールはもちろん、フレブとかウォルコットも中に流れてきて、相手のDFと中盤の間に入り込んだ。そして、そういう場所に苦もなく縦パスが収まる状況を作り出したと思う。そうなれば縦パスが1つ入るごとに前線が1枚増えるアーセナルの法則が適用される状況が生み出されたと思う。

こういうことができるようになったのが得点前後の時間帯だったわけだけど、この時間帯のアーセナルの攻撃は素晴らしかった。サイド専門のエブエの代わりにウォルコットが入ったことで中盤の流動性がさらに増したと思う。

これまではエブエを軸とした右に寄った組み立てが多く見られたんだけど、今回の試合では真ん中、左サイドとバランスのいいピッチの使い方ができてたと思う。だから、変に全員の意識が右に寄ることもなかったんじゃないかと思う。それが狭い場所に入り込まないような展開を生み出したかもしれない。

そういう組み立ての中でやっとアーセナルらしいスムーズなパス回しが見られるようになった。流動性ベースの近い関係性にボールに対するはっきりとした動きを組み合わせることで常に複数枚の選択肢をもたらすイメージだった。

こうなるとバーミンガムは守備の狙いどころがなくなる。それまでは縦パス狙いの守備だったけど、そこには効果的に対応できなくなったわけで。そうなると、どこで取るべきか分からなくなる。その間にもアーセナルはパスを回す。結果とし中盤も低い位置まで戻してラストの人数かけブロックになったと思う。

そうやってアーセナルの攻撃がスムーズになってくると守備の内容もよくなる。前線に人数をかけ、近さを築いた形をそのまま守備への切り替えに活用することによって。切り替えでの最初の守備が効果的に効くようになって、相手に前線へのボールを蹴り出させなかった。

ただ、アーセナルはエブエの代わりにエドゥアルドが専門ポジションになった。上にも書いたようにゴール前のところ以外ではほとんど消えてしまっていた。だから、相手の最後のブロックへのアプローチに変化をつけることができなかったと思う。結果としてボールは圧倒的に支配しつつも、いつものアーセナルみたいにパスで最後も崩しきるシーンは作ることができなかった。

そのうちにバーミンガムが守備の修正を図ってきた。それまでよりも、さらに受ける意識を強くすることでDFと中盤のスペースをつぶしに来たと思う。要するに前線の4-2を1つ下げるっていうやり方。全員が自陣に帰るような形で1つ低い位置で理想的な守備をやろうとしたと思う。

でも、これは逆に考えると攻撃のチャンスが減ることを意味する。単純に相手のゴールまでの距離が遠ざかってしまうわけだから。そういう意味では後半の立ち上がりにセットプレーで同点ゴールを奪えたのはある意味ではラッキーだった。これによって引き分けでもよしのバーミンガムはさらに守備の意識を高めることとなる。

こういうこともあって、アーセナルの後半の内容は散々だった。相手の守備の修正によって再び縦パスが収まらなくなる。だから、攻撃に効果的に人数をかけられない。さらに、アーセナル自身の全体の運動量がガタっと落ちて、効果的にアプローチをするのが難しくなったように思う。

そういえばアーセナルの前後半の内容がガラっと変わるのはよく見る気がする。今まで見た中で最高の内容を見せてくれたのがアストン・ビラ戦だったけど、その試合でも後半は何もできなかった。そして、今回の試合でも明らかに後半の内容が悪くなったと思う。

超流動のサッカーの中で、それだけ前半の消耗度が大きいってことだろうし、逆に潮流どうせ消耗度の高いやり方をベースにしてるだけに運動量が落ちると一気に何もできなくなってしまう気がする。だから、今回の試合のように主導権を握っているのに得点が奪えない展開は最悪だった気がする。無駄に体力を消耗するだけっていうか。

後半は個々の距離が明らかに遠くなった。それに伴って選択肢が激減し、1人1人の保持時間が延びることになったと思う。当然のように強引に個人技で突破することも多くなるし、パスをしようとしても距離が長いから途中で引っ掛けられる可能性が高くなる。最後のアプローチにしても助けが足りないから、とりあえずクロスを放り込んだり、ミドルを打ったりってシーンがかなり多くなった印象。

こういう状況に陥ったとき用にベントナーをベンチに置いておくのは正解かもしれない。今回の試合では決定的なチャンスに絡むことはできなかったけど、アデバヨールと並べればシンプルな攻撃でもチャンスにつながる可能性がある。チームにフィットしてない感じはあるものの、チーム全体として理想的な組み立てができてない状況では関係のないことだし。

とりあえず今回の試合ではアデバヨールが代表に持っていかれなかったのはアーセナルにとって大きいってことを改めて実感。代表に持ってかれないって事はこの試合を見て知ったわけだけど。いるといないとでは攻撃の組み立てのスムーズさが格段に違う。

さらにこの試合ではアデバヨールが守備においてかなり低い位置まで戻ってくるシーンが見られた。攻撃で流動性を持たせるだけに切り替えの中では適切な選手が応急処置的に別のポジションに入るってやり方をしてるアーセナルだけど、それを考えても多かったと思う。

こういう部分を見てみると、アデバヨール自身の守備意識は高いのは確かだと思う。だったら、その意識を少し自分の前に向ければいいのにって気がする。前線でもう少し追いかければアーセナルは根拠のある守備ブロックが作れると思う。逆に言えば、チーム戦術として前を追いかけないのか?
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2008-01-18 Fri 18:57
大学サッカー決勝:早稲田×法政
両チームとも攻守に渡って似たようなチームだったと思う。攻撃ではショートパス中心の組み立て、守備では1つ1つの忠実なチェックをベースにボールサイドに人数をかけるやり方が両チームの目指すものだったように思う。こういう似たようなチーム同士の対戦で、結果として早稲田が勝つことになる。試合内容を見る限りでは攻守に渡って1枚上手に行った早稲田が順当に勝ったっていう印象を受けた。

法政の攻撃はショートパスを念頭においてはいるものの、微妙な距離感の遠さが気になった。基本となる4-4-2の形を思い切って崩さないやり方が見られて、どうしてもそれぞれの持ち場に対する意識が強くなってしまったと思う。味方の持ち場に入り込んで積極的に近さを生み出そうとする意識があまり見られなかった。

じゃあ、どうやってショートパスをつなぐかっていうことが問題になってくる。実は味方の持ち場に入って関係性を築こうとする形がないわけではない。ただ、それはあくまでもボールが入った後の動きであることが多かったと思う。ボールが入ることをスイッチとして、それから近づくランニングを始めるイメージだった。

だから、必然的にフォローが微妙に遅れることになる。さらに言えば、相手にとって予測がしやすい状況も生まれたと思う。気になるのは決勝まで勝ち上がる上でどうやって戦ってきたかってこと。ここまで書いたように、あくまでもボールが入った後のフォローの繰り返しで組み立てを図ったのか、もしくは本来的にはもっと積極的に近さを作るチームなのか。後半は本田の攻撃参加をスイッチに全体の動きの活性化が見られ、そこに個の仕掛けを織り交ぜることで、相手を押し込む展開が生まれた。そう考えると後者の可能性もあると思う。

とりあえず、今回の試合では失点をするまでの多くの時間は前者の戦い方が見られたのは事実だった。そして、そのやり方は早稲田の守備網にことごとく引っかかるような攻撃だったと思う。前半は早稲田の守備の前にほとんど中盤で引っ掛けられてしまうシーンが目立ったと思う。

早稲田の守備のやり方は最初にも書いたようにボールサイドに人数をかけるもの。高い位置からの激しい追いかけが見られない代わりに、後ろではしっかりとコンパクトなブロックを作ってスペースをつぶしてた。そして、そういうブロックにボールが入ってきたところが本格的な守備のスタートになる。

相手のボールが入ったところで1つめの忠実なチェックが行われるのは当然として、さらにサイドにブロックを凝縮させて守備における距離の近さを生み出す。そうやってボールに対して一気に数的優位の状況を作り出してたと思う。

このときに周囲がしっかりと相手の選択肢をつぶしてたのも重要な点。相手の1つ遅れてくるフォローにしっかりとマークがつくことで、そのフォローをフォローとして機能させなかった。法政としては見た目では選手が近くにいたとしても、実質的にはボール保持者が孤立するっていう状況に陥ることが多かったと思う。早稲田としては、このフォローを抑えることを考えたときに相手がボールが入った後に動いてくれるのは守りやすい状況だった気がする。

この早稲田の守備の中では前の選手の戻りながらの守備のよさが見られた。相手の後ろからの飛び出しにしっかりとついてきたり、手のボール保持者の囲い込みに参加したり。こういう前の選手の守備意識の高さによって、上下で挟み込んでボールを奪うシーンがかなり多くなってた印象。

こういう形の早稲田の守備に対して法政は攻撃の逃げ場を失うことが多かった。そもそも、相手のブロックに入った時点ですぐに相手の複数枚に距離を縮められてしまう。だから、大きな展開で逆サイドに逃げるってことを許してもらえなかった。

つまり、プレーエリアがかなり狭い場所に限定される状況が多く見られたと思う。相手の守備のストロングサイドから抜け出せずに、狭い場所でなんとかボールを保持している間に、早稲田の守備網がジワジワと距離を縮めてくるイメージ。最終的には完全に囲まれてボールを奪われるシーンが多くなった印象。

こうやって狭い場所に入り込んでしまい相手に奪われることが多くなった法政に対して、早稲田は狭い場所でも常に複数の選択肢を用意しておくことで、そういう局面を抜け出すシーンが多くなった。さらにいえば、そもそも狭い場所に入り込まずに広い場所の効果的な利用もできてたと思う。

その要因の1つはボールに対するフォロー。上にも書いたように、フォローが1つ遅れる法政は少ないタッチですぐに次に展開するってのが難しかった。ボールが入って少し時間を作ったところで助けが来るようなイメージだったわけだから。結果として早稲田の守備陣がボールに狙いを定めて距離をつめる対応がしやすかったって言える。それに、法政のフォローはやや遅れ気味に単発で対応しやすかったのも事実だったと思う。

対する早稲田の攻撃。法政ほどポジションにこだわりを見せずに柔軟に動きながらの組み立てができたと思う。その中で法政よりも1つ素早く味方に対するフォローができてたと思う。そして、守備の考え方と同じように近さを生かす攻撃につながった。ボールに対して常に複数枚を関連付けることで、少ないタッチでのリズムのいいパス回しが可能になった。

こうなってくると法政の守備陣は狙いを定めることができない。早稲田と同じようにボールサイドに人数をかける意識は見られたものの、実際には局面に人数をかけて相手を囲い込むようなシーンはあまり作れなかった。距離をつめようとするとそれを否されて次に展開されてしまうような状況だったと思う。

要所要所を見ても法政の守備が後手後手に回っているのが分かった。その1つが相手の縦パスに対する対応。法政の選手は守備意識自体は高いから、そういう場所を押さえようとする意図自体は見られる。でも、あくまでも縦パスが入った後の対応が目立った。しっかりと寄せることで直接的な仕事はさせないけど、後手に回ることで縦パスを入れさせないとか奪うっていうところまではできない。法政としては最低限抑えてるけど、早稲田のトップも収めてその後の展開っていう最低限の仕事ができてたと思う。

ちなみに、このトップの存在感も両チームの差を生んだ1つの要因になってた気がする。早稲田の2トップは引いてきてボールを受けたり、サイドに流れたり、さらには相手のらいんウラに抜け出そうとしたりっていう動きを繰り返した。チームとしてもそれをしっかりと見て使おうっていう意図が見られたと思う。だから、トップに入ったときに次の展開が可能になる場所にすぐに選手が入ったりっていう動きが見られた。

対する法政はトップが孤立してたと思う。4-4-2をあまり崩さないやり方の中で前線の2枚だけが後ろとはがれてたと思う。だから、ボールがあまり入らないし、ボールが入った後の周囲との関係も築けなかった。2トップが2人とも積極的に動かなかったってのも、うまく関係性が築けなかった要因の1つになってたと思う。

トップをうまく利用できた早稲田は要所要所で縦パスを入れることができた。これによって相手のブロックにプレッシャー与えることができて、深い位置に相手を釘付けにし、1つ下の中盤のところのプレッシャーを弱めたと思う。さらにトップに縦パスを入れた後の展開も可能になってた。

とにかく、法政は守備の勝負どころが定められない展開が生まれた。だから、早稲田は自分たちがやりたい攻撃をある程度はできる状況だったと思う。その中で効果的な展開が多く生み出されてた印象。

相手の守備のよさがあったとは言え攻撃のエリアが狭い場所に限定されてしまった法政に対して、早稲田はピッチを広く、しかも効果的に利用できてたと思う。相手の守備にストロングポイントを作らせなかったことがこういうやり方を可能にしたと言えるし、逆にこのやり方が相手の守備の分散につながったとも言える。そういう相乗効果が生まれたと思う。

そして、こういうやり方を生み出したのがパスの質の多様性にあったと思う。それを象徴してたのが先制点のシーン。降りてきた渡邉に対する楔→渡邉からのバックパス(落しのパス)→鈴木(?)からのロングボール1発→広いサイドを使う横パス。

このシーンに代表されるようにパスの長短、方向のバリーションがかなり多かったように感じた。ちなみにこのシーンでは降りてきた渡邉と中盤の松本が上下の入れ替わりの動きを見せたのもポイントだった気がする。

とにかく、早稲田のサッカーには展開のよさが見られた。そして、中心にいたのが中盤の低い位置に入った鈴木。特にこの鈴木は中長距離のパスでリズムを作った印象。トップの動きに合わせて1発のパスを相手のウラに放り込んだり、真ん中でサイドチェンジの経由点にもなった。左右上(下)のパスで相手を揺さぶるのに貢献してたと思う。

もちろん鈴木に限らず、チーム全体としてこういう展開を利用しようっていう意図が見られた。トップが引き出す動きをしたのは書いた通りだし、大きなサイドチェンジで相手の薄いサイドを突こうっていう展開が多くなったと思う。

特に効果的だったのが左サイドで作ってからの右サイドへの展開。左サイドには兵藤がいるから、相手としてもどうしてもそのサイドに意識が向けられる。相手の守備のやり方を考えても逆サイドには広い場所が生まれることとなった。そして、そのサイドにいた松本はドリブルのキレが目立つ選手。広い場所でボールを持たせることで、その仕掛けをさらに効果的なものにしてた印象。

早稲田はこうやって長短のパスで相手の守備ブロックを打開していった。基本的なトライアングルを形成し近い関係で少ないタッチで崩すことをベースにしながらも、そこに大きな展開を織り交ぜることによって、相手のブロックを集中させないことに成功したと思う。

こういう早稲田の攻撃を組織よりのショートパススタイルと置くならば、法政は個寄りのショートパススタイルだったと思う。後半は積極的な個の仕掛けによって、相手の守備を切り裂くやり方が見て取れた。その中で早稲田の守備陣が前半のような安定感を失い、危険な位置でファールをするシーンが目立ってたと思う。

後半はこういう形の個の積極性が見られる中で徐々に連動性も見ることができた。個の突破が周囲の動きを引っ張ったようなイメージ。明らかに周囲の動きがよくなるとともに、個の仕掛けを加えた選択肢も多くなった。結果として早稲田は前半のように守備の狙いどころを定められない状況に陥ったと思う。

結果として上にも書いたように早稲田のブロック全体が押し込まれる状況が生まれる。逆に言えば前線が薄いことを意味するわけで、これによって法政の守備のよさが見られるようになった。入りどころに対する対応が1歩も2歩も速まって、さらに相手の選択肢が少なくなったことで本当の意味で仕事をさせないことが可能になった。そうやって相手の勢いを止めたところで前後で挟み込んで奪うようなよさも見られたと思う。

そう考えると前半からもっと積極的な仕掛けがあってもよかったんじゃないかって感じた。ある意味では2失点で尻に火がついてから見られるようになった個の突破だけど、相手は対応しきれてなかった。前半のようにボールを止まった状態で受けて、止まった状態で処理しようとすれば相手に狙いどころを定められてしまうのは当たり前。受けたときに味方のフォローが薄かったとしても後半のように積極的に仕掛けていけば、そう簡単に囲い込まれる状況にはならなかった気がする。

前半はシステムを崩さない戦い方も含めて、リスクを考えて抑えていたのかもしれない。ただ、もしそうだとしたら裏目に出たってのが実際のところだったんじゃないかっていう気がした。

最後に、法政の本田は大学レベルに入るとやっぱり目立つなって思った。五輪代表では守備にばかり目が行く存在だけど、この試合の後半では攻撃に出たときの怖さも見られた。積極的な仕掛けを繰り返し、しかも簡単には相手に奪われなかった。

今後の進路はエスパルスってことで、らしさを活かせるチームに入ったなってのが素直な感想。1ボランチシステムを使うエスパルスの中では本田の持ち味が生きると思う。同時にエスパルスとしてもベテラン伊東の負担を減らす意味でいい選手を取ったと思う。

今回の出場選手ではアントラーズに入団する鈴木にも注目したい。上に書いたように、中盤での長短のパスを操り、組み立て(ときにはチャンスメイクまでも)を担う。低い位置でそういうパスを操れるピルロみたいなタイプはなかなかいないだけに注目したい。ちなみにこの選手は五輪代表で見たときには積極的に前線に飛び出す動きも見せて得点もしている。攻撃のバリエーションが多いと思う。
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2008-01-16 Wed 21:22
エバートン×アーセナル
<エバートン:4-4-2>
FW:ヤクブ-ケーヒル
MF:ピーナール-カーズリー-Pネビル-アルテタ
DF:レスコット-ジャギエルカ-ヨボ-ヒバート
GK:ハワード

<アーセナル:4-4-2>
FW:エドゥアルド-ベントナー
MF:ディアビ-フラミニ-セスク-フレブ
DF:クリシー-ギャラス-コロ・トゥーレ-サーニャ
GK:アルムニア

この試合はアーセナルらしくない内容だった。前半はアーセナルらしさを出そうとしても出せずにもがき続ける内容、後半はアーセナルらしさを自ら捨てたような内容だった。そのアーセナルらしさを捨てた後半に結果が出たのは皮肉なもの。とりあえず、そのらしくなかったアーセナルについて見てみたい。

最初にも書いたように、前半はアーセナルらしさを出そうとしても出せなかった内容だった。その要因になったのはやっぱりメンバーが入れ替わったことにあったと思う。後ろの4-2は変更されなかったものの、攻撃の核となるべき前線の4枚の組み合わせが変わったのがかなり大きな影響を及ぼしてた気がする。ロシツキーもベンチに入ったし、何よりもトップの2枚の組み合わせが変わったのが痛かった印象。

そういう組み合わせに左右されるのはアーセナルのサッカーの特異性を表してるように感じた。何度か触れてきたようにアーセナルのサッカーを考える上では前線の超流動性が重要になる。そして、その超流動性には型が存在しない。その場その場の状況に応じて、それぞれが適切なポジションを取ることが要求される。

そういう意味ではかなり難しいやり方だっていえる。型があるならばトレーニングからそれを叩き込むことによってチーム全体でのイメージの共有がしやすい。逆に臨機応変を求めるアーセナルのやり方には普段からのイメージの共有が難しいことになる。その場その場での判断力が必要とされるし、何よりも周囲を知ることが絶対的に必要になる。

そういうことを考えたときに、重要なトップの場所が新戦力2枚ってのはやっぱりきつかったんじゃないかと思う。この2人が明らかにアーセナルのやり方にフィットできてなかった。同時に周囲の選手も2とフィットできてなかった。結果としてチーム全体に閉塞感が漂う結果がもたらされた気がする。

一番目立ったのがそれぞれの関係性の薄さ。アーセナルのやり方を考える上では近い関係性が絶対的に必要になる。トライアングルを形成し、そこにランニングを組み合わせながら選択肢を増やし、そうやって次々に少ないタッチでパスを回していくってのはこれまでにも書いたとおり。

そして、本来的にはこの近さに貢献してるのはアデバヨールとフレブの2トップ。2人ともトップの場所にこだわらずにサイドに流れて数的優位に貢献する。その中でアーセナルではトップの選手のゴールゲッターとしての役割が薄いってのもこれまでに書いてきたとおり。そういう意味で2トップには組み立ての方も考えた動きが求められ、それが重要だってのがアーセナルのやり方なんだと思う。

そういう意味で今回の2トップは明らかに見劣った。組み立てのところに顔を出してくる機会はほとんどなかったと言っていい。FWの場所があくまでも基本であって、積極的に動き回って組み立てを助かるような動きはほとんど見られなかった。

つまり、2トップがパス回しから離脱したってこと。この時点で単純に組み立てにかけられる枚数が減るんだけど、さらに2トップの組み立てからの離脱は間接的にも薄さを生み出してしまっていたように感じる。それは2点あって、攻撃の厚みに貢献できなかったことと、攻撃の流動性を停滞させてしまったってこと。

攻撃の厚みへの悪影響は縦パスが入らないっていうこと。前に書いたことがあるけど、アーセナルは縦パスが入るたびに前線に人数が増えていくようなイメージがある。縦パスの出し手がそのまま飛び出してくような形で。そういう意味で縦パスが入ることはアーセナルの攻撃の厚みを考える上では絶対に必要なこと。

それを考えたときに今回の2トップはそれを引き出すことができなかった。トップの場所を基本にしすぎたことで中盤に降りてきてボールを引き出すっていう動きができなかった。本来はアデバヨールがそういう動きを繰り返すことを考えると、ベントナーがやってもらいたかった動きだったと思うんだけど。

ベントナーに関してはトップの場所に入ってくるボールもスパッと収まらなかったわけだけど、やっぱり何よりも降りてくる動きがないってのが致命的。降りてきたアデバヨールに縦パスをいれ、入れ替わりにセスクが飛び出すみたいな形が1つのパターンになってるアーセナルにとってはなおさら。結果、前後の動きを作り出すことができなかったと思う。

こういうのが流動性にも関わるような部分。縦の入れ替わりもそうだけど、トップがサイドに流れて真ん中を空けるようなシーンもほとんど見られなかった。それは上に書いたように、トップが組み立てを助けるような動きをしなかったことと関係しているわけだけど。

トップが組み立てのためにトップの場所を空けることがアーセナルの流動性のスイッチになる部分は大きい。前にも書いたことがあるけど、こういうトップの動きによってピッチにバランスの悪さが生まれる。つまり、スペースが生まれることになる。そうやってできたスペースを別の選手が埋め、結果できたスペースを次が・・・っていう流れの中でアーセナルの組み立ては行われる。

今回の試合ではトップがトップの場所に居座ったことで流動性のスイッチが入らなかった。加えて、逆の状況もあったかなとも思う。つまり、トップの動きを周囲が使えなかったっていう側面。エドゥアルドがボールを引き出すためにサイドに流れるシーンがいくつか見られたけど、その動きが全体に波及せずに自己完結してしまったイメージ。

何にしてもこういう形の中でアーセナルらしさは生まれなかったと言っていい。それぞれの選手がそれぞれのポジションに居座るっていうまったくアーセナルらしくない展開になった。言い方はが適切かどうか分からないけど、普通のチームの普通の攻撃に終始した気がする。

それぞれが担当ポジションにいるから、いつものような近い関係性は生まれない。当然のように1人1人の保持時間が延びるしドリブルでの強引な突破も目立ったと思う。ボールを持ってからの時間が明らかに長く、その上パスの選択肢がなくて自分で打開する場面が多かった。

要するに本来のアーセナルらしい少ないタッチでのパス回しはほとんど見られなかった。タッチ数が増える上に、距離が遠いからパスの距離も本来よりも長くなったと思う。そうなれば相手に奪われる可能性が高まるのも当然だった。

そうやって距離が遠くてもパスコースがあればまだいい方。上にも書いたとおり、パスのコースが見つからずに自分で打開するシーンも目立った。で、ピッチ状態もあってかそういう個の突破で足にボールがついてないシーンが多かった。どちらにしても相手に奪われてしまうのは変わらなかったと思う。

それに狭い場所を強引に打開するようなやり方も不可能だった。それを可能にするのは近さとそれによって生まれる選択肢の多さ、ショートパスの組み合わせのため。それができないならば、周囲は敵だらけの超不利な状況。

結果としてバックパス、サイドチェンジがかなり多くなった。特に横パスの数はこの試合の内容の悪さの1つの指標になるぐらいだったかもしれない。普段見られるようなアーセナルの縦への意識が減っていたのは確かだった印象。

前にも書いたように、アーセナルのサイドチェンジってのはほとんど見られない。照準を定めた場所を強引に打開するのがアーセナルらしさ。それができなかったから、1度ボランチとか最終ラインに戻して逆サイドの広いところに展開するやり方がかなり多くなった。やっぱり普通のアプローチ。

こういうサイドの局面もそうだけど、何よりも狭いのは相手の最後のブロックの場所。前回見たポーツマス戦では引っ掛けられても引っ掛けられても最後をパスで打開しようとしてたアーセナルだけど、今回は意図も簡単にそれをやめた。普段は満を持して上げるクロスを、今回は簡単に上げてことごとく跳ね返されてたと思う。

こういう形で普段と同じサッカーをやるのは無理だったように見えるアーセナル。でも、前半の気分はあくまでも本来のアーセナルだった。理想的な形を作るのは無理だったけど、あくまでもパスをつなぐことへのこだわりは捨てなかった。そして、これがエバートンの守備のぴったり合致したように思う。

エバートンの守備の考え方はシステム変更はあったものの、マンU戦のときと大きくは変わらなかった。前線が追いかけることと後ろが捕まえておくことをベースとするやり方。守備時の形は4-2-3-1っぽいエバートンだけど、大まかに分ければ前線の3-1が追いかけることで制限し、しっかりと人を捕まえてる後ろの4-2で勝負をする形だと思う。

立ち上がりの時間帯は前線からのかなり積極的な追いかけが目に付いた。そういう激しいプレッシャーの中でもエバートンの前線の選手はしっかりと次を考えているのが特徴的。マンU戦でも見られたけど、しっかりと意図した方向から追いかけることで強制的に追いつめることができてると思う。その中で前線の3-1だけで奪えるシーンも見られるし、後ろの4-2にとってもかなり楽だと思う。

その後ろの4-2はここまで書いてきたようにしっかりと人を捕まえてる。SBは相手SMFにしっかりとついて対応してるし、何よりもCMF2枚の守備力が目立つ。4の前に入って相手のトップへのボールのフィルターとなりつつ、相手CMFへの対応もきっちりとやる。セスク×カーズリーのマッチアップがかなり目立ったし、その中でセスクはほとんど目立つことができなかった。

こういうエバートンの守備に対して、本来のアーセナルだったらそれを打開できた可能性もある。流動性を高める中で相手に捕まってない選手を作り出すことができただろうし、そこにボールが入ることで次から次へとギャップを作るだけの力はある。相手のチェックに対しても本来の早いパス回しができれば、寄せきる前に次に展開できただろうし、選択肢を増やしながら狙いどころを定めさせない攻撃もできたはず。

でも、ここまで書いてきたようにこの試合のアーセナルは本来のアーセナルではなかった。だから、エバートンのいい内容の守備を否すだけの力はなかったって言える。それでもパスを回すことにこだわったことで完全にエバートンのペースになってしまった。

それはある意味では簡単なこと。エバートンは前線と後ろの協力関係で守備の狙いどころをしっかりと定めている。いつものように関係性を築けずに、それぞれの距離も遠くなっていたアーセナルは自ら選択肢を絞っていた。だから、エバートンとしては守備の狙いどころが完全に見えてたようなイメージだと思う。

そして、言葉は悪いけど、馬鹿正直にその狙いどころにパスが出てくる。ロングボールを織り交ぜたりすれば、そういう狙いを外せたはずだし、同時に相手の守備陣に後ろへの意識を高めさせることによって前後の関係性を分断できた可能性はある。でも、アーセナルはそんなことをするはずもなく。結果としてことごとくエバートンが中盤でアーセナルのボールを引っ掛けていった。

そうやって中盤で奪った後のエバートンの攻撃。基本的にエバートンのゴールに向かう攻撃の主役は左サイド。右サイドのアルテタは右にこだわらずに流れたりしながら組み立てを担当。対する左サイドはゴールに向かう意識が強くなると思う。

その左サイドを利用して一気に攻めきるやり方が見られた。ピーナール、ヤクブ、ケーヒルが変則3トップみたいな形になって、さらにそこにレスコットを絡ませながらゴールに向かうシーンが多く見られた印象。ヤクブとケーヒルも、どちらかが流れれば、もう一方がゴール前に入るみたいないい関係性を築けてたと思う。1トップ気味にも見えるヤクブの引き出しの動きのよさも目立った。

基本的に立ち上がりはこういうエバートンのよさばかりが目立った。相手の攻撃を途中で分断して、自分たちの攻撃では攻め切って深い位置まで押し込む。結果、アーセナルは多くの選手が深い位置に押し込まれ、前線の選択肢が少なくなる。そうなればエバートンはさらに途中で引っ掛け矢すくなる。その中でセットプレーからのエバートンは得点を奪った。

この得点から少ししてエバートンは守備の勢いを弱めた。前線からの追いかけが90分持たないと判断したのか、4-4-2で受けるイメージを強くした。最前線の2トップは最低限の追いかけはするものの、立ち上がりのように超ハイプレッシャーってことはない。守備の重点は4-4でバイタルをつぶすことに移ったと思う。

結果としてアーセナルはボールを保持できるようになった。でも、それはあくまでもエバートンの守備のやり方が変わったからであって、根本的な解決ではない。事実、ボールを持てるようになったとしても、相手の守備エリアに入れば何もできなかった。

それに対してのアーセナルの後半の対策。それを一番よくあらわしてるのが3得点の内容。1点目と3点目はセットプレー(FKとGK)だったけど、1発で放り込んだボールからそのままゴールへ。もっとも象徴的な2点目はベントナーが競ったウラにエドゥアルドが抜け出したシーン。

こういうシーンに象徴されるように、後半はとにかくシンプルな攻撃に終始した。パスを回そうとする意図が明らかに減って、ロングボールの数が明らかに増えたことからも分かるように、簡単な攻撃で相手ゴールに迫ろうとするやり方が多くなった気がする。

この要因の1つはアーセナルらしさをあきらめたってことだと思う。それまでのパス回しへのこだわりが消えてしまった。ロシツキーとアデバヨールはベンチにいたわけだけど、交代によってではなくてやり方の変更によって乗り切ることにした。それだけ2人を休ませたかったし、それだけトップの2人に経験を積ませたかったってとこか。その2人が絡めるようにアーセナル色を弱めた単純なやり方をとってきたんだと思う。

ちなみに4点目は交代出場のロシツキーとアデバヨールが絡んでのアーセナルらしい得点。アデバヨールがサイドに流れ、入れ替わりにロシツキーが中に入る。起点を作った時点でもアデバヨールとディアビの近い関係性が生まれた。このシーンのように明らかに2人が入ってからはディアビが目立つようになってた。そういうことを考えると、やり方を変えずに選手交代っていう選択肢があったのも事実だったと思う。

こういうアーセナル自身の要因に加えて、後半のやり方の変更には相手との関係もあったように思う。同点から逆転までを一気に許したエバートンはかなり前がかりに攻めてきたわけで、それに対する対応っていう意味でロングボールが増えたっていう側面。

攻勢に出ていたエバートンの攻撃の厚みはすさまじかった。前半と同じようにゴールに向かう起点は左サイド。レスコットはかなり高い位置に入ってきてピーナールとの関係性を築いた。それに右サイドのアルテタは前半以上に右サイドを捨ててタッチ数を増やした。加えてカーズリーの攻撃参加。積極的にゴール前に出てきて前線に厚みを加えるシーンが多くなったと思う。

こういう圧力にアーセナルが負けてしまうシーンが目立った。中盤以下のほとんど全員が自陣深くに押し込まれる時間が長くなったと思う。そして、それは当然のように好ましくないことだった。特に守備のベースを高い位置に置きたいアーセナルにとっては。

だから、そういう押し込まれた状況から抜け出すためにロングボールだったと思う。奪った後に下手につながずに蹴り出すことで相手の切り替えの守備を抜け出すとともに、押し上げの時間を作り出した。

もちろん苦し紛れ的なものだから味方につながる可能性も薄い。もしも蹴り出したボールが相手に拾われれば、トップの選手が追いかけることで相手にすぐに跳ね返されるのを防いだ。そうやってブロックをなんとか高い場所で保とうとがんばったと思う。

でも、実際には高い位置にブロックを戻しても結局は押し込まれてしまう結果になった。アーセナルが高い位置にブロックを置けば迷わずにエバートンはロングボールを放り込んだ。そして、そのロングボールが案外つながったことでその後の展開が生まれ、結局アーセナルのブロックは押し下げられることになったと思う。

こういうアーセナルのロングボールに対するもろさはアストン・ビラ戦でも見られた。高い位置にブロックを作っても相手の1発のロングボールが効果的につながることで結局は押し下げられてしまう。これは前線の守備があまり積極的じゃないことに原因があると思う。相手のロングボールの出し手にはあまりプレッシャーがかかってない。

基本的にアーセナルは守備のための守備のベースがない気がする。高い位置にコンパクトなブロックを作るのはそうなんだけど、だからと言ってそこで積極的に守備に入るわけではない。だから、今回の試合とかアストン・ビラ戦の後半のように相手が圧力をかけてくると簡単に押し下げられてしまう。

あえてアーセナルの守備の勝負どころを決めるなら攻撃後の切り替えのところ。奪われたときにすぐにブロックを作るんじゃなくて、まずそのままの場所で守備をしようと試みる。そういう場所で奪ってもう1度攻めなおすのがアーセナルの守備の考え方だと思う。

こういう守備を考える上で重要なのは攻撃時の近さ。おさらいだけど、アーセナルの攻撃はどこを切り取っても基本的には近い関係でショートパスをつないでる。だから、奪われるとしたらそういうショートパスが引っ掛けられるシーン。

大体の場合で相手が奪うのは守備側の味方とアーセナルの攻撃陣の超密集地帯。簡単に次に逃げ出すのは不可能だって言っていい。そして、アーセナルは切り替え後の守備が抜群に効きやすい状況にある。攻撃において近い関係にいた複数枚がそのまま守備に移行すれば、それはかなり効果的になるに決まってる。相手は焦って意図のないボールを蹴り出すか、下手に保持して囲まれるかだから。

だから、アーセナルの守備は攻撃ができてるときに一番機能するって言える。上で守備のための守備って書いたのはそういうこと。だから、相手に主導権を握られる展開には滅法弱いんじゃないかっていう気がしてくる。攻撃にも出れないし、守備の勝負もできない。ただ、押し込まれる展開が予想される。

こういう状況はマンUにも言えるわけだけど。マンUも守備のための守備の形がない。最後の跳ね返し力でなんとか持っているものの、不本意な形には変わりはない。同時に攻撃後の守備が守備の勝負どころなのも同じ。切り替えの速さで相手の最初に対して超プレッシャーをかける。これもルーニーがいないと??ってことが発覚しつつあるけど。

とりあえず今回の試合ではアーセナルがロングボールを蹴ったのが意外だった。同時にアーセナルの攻撃の難しさを感じさせられた。この試合みたいに連携の取れてない選手を複数入れるのは冒険かも知れない。4-1っていうのはあくまで結果であって、それには現れない危うさを感じさせられた。
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2008-01-14 Mon 18:19
高校サッカー決勝:藤枝東×流経大柏
<藤枝東:3-5-2>
FW:松田-岡崎
MF:河井、平井-小林-石神-藤田
DF:鳥羽-小関-村松
GK:木村

<流経大柏:4-4-2>
FW:上條-大前
MF:村瀬-中里-海老原-名雪
DF:比嘉-秋山-天野-中冨
GK:須藤

試合以前のところというか、本質的な部分の1つ手前の時点で流経大柏が上回ってたような気がする。準決勝までの流れからロングボールを多用して相手の高い位置での守備のよさをかいくぐるかもしれないと思っていた藤枝東は本来のパス回しを貫いた。それはそれでいいけど、当然のように高い位置からの流経大柏の守備にことごとく引っかかる結果。分かっていてやったのだから仕方がない。対する流経大柏はおそらく藤枝東ようにシステムを作ってきたように感じた。

そもそも今回の試合では、本来の2トップの一角である上條が戻ってきたのが大きかったと思う。準々決、準決のときにも書いたとおり、久場の前線でのスピードを活かした引き出しも魅力的ではあったけど、やっぱり本来的にはしっかりとボールを収められる上條が合っている。高円宮杯決勝でも見られたように、ボールを受けやすい場所に柔軟に動き、そこでしっかりと収めるプレーが目立った。

結果として流経大柏の攻撃に厚みが加わったと思う。縦への意識が強いことに変わりはないけど、久場がトップに入る場合にはウラに抜ける動きが多く、そこに対する1発のボールが多かった流経大柏。でも、今回は上條が相手DF前でしっかりと時間を作ってくれた。結果として後ろからの飛び出しが促進され、近い関係性の構築ができるようになった気がする。しっかりと軸として働ける上條とのコンビによって大前も生きてくることになった。

で、流経大柏の形としてはこの2人の2トップを含めて、上にも書いたような4-4-2が予想された。でも、立ち上がりの形は村瀬を1つ上げた3トップみたいな形になってた印象。その後ろに名雪と中里、さらに藤枝東の河井を見る海老原が並ぶ4-3-3みたいな形だった。

藤枝東はこういう相手の形に戸惑った。便宜上の3トップは流動的に動き回る。軸は一応上條なんだろうけど、上條も真ん中に張っているだけではなくて、流れながらボールを受ける動きを繰り返した。加えて村瀬と大前は中盤の低い位置まで降りていくプレーが目立ったと思う。さらに、上條に収まったところに積極的に名雪だったり中里だったりが絡んでいって厚みを加える形だった。この5人に関してはポジションを超流動的に動かしながら攻撃に絡んでいった印象。

加えて、SBがかなり高い位置を取ってくるのも今回の流経大柏の特徴だったように思う。前線にボールが入った瞬間に両SB(特に左の比嘉)がSMFとかWGと言ってもいいぐらいの高い位置まで入り込んできた。これは前の3-3の基本ポジションが中に寄ってるで、SB前の蓋がなかったことによると思う。

そのSBの攻撃参加にトップの選手だったり中盤の選手だったりを絡めさせながら、相手の構造上の弱点であるサイドへのアプローチをしてたように感じる。予想のように2トップを両翼に開かせる形ではなかったけど、SBの攻撃参加によって相手の3バック脇を攻める目標を達成してた印象。

こういうやり方に対して立ち上がりの藤枝東は完全に戸惑ってた。まず相手の基本的な形がつかめない。さらに、グルグルとポジションを変えてくる。下がってく選手がいるかと思えば飛び出していく選手がいるし、サイドに流れる選手がいるかと思えばSBが中に入ってきたりする。藤枝東は完全に後手後手の対応になってしまった。結果、立ち上がりのファールの多さにつながったと思う。

先制点のシーンもそういう形だったといっていいと思う。大前のボール保持に多くの人数が寄せられてしまった問題はあったものの、ゴールの村瀬を誰が見るかがはっきりしてなかった。予想外の3トップの形に対して、対応関係がイマイチつかみきれない時間帯に失点してしまったように思う。

ただ、こういう流れは時間とともに安定していく。藤枝東の選手が相手のやり方を見極め始めて、安定した守備に移行していった。結果ファールの数が明らかに減って行ったと思う。でも、実際のところは流経大柏のやり方のドツボにはまってたような気がした。

(●:流経大柏 ○:藤枝東)

  ○ ○ ○
  ● ● ●
   ○  ○  
○  ●  ●  ○
     ○
●    ●    ●
   ○  ○
   ●  ●

両チームの基本的な配置はこんな感じ。これまで書いてきたことを踏まえながら、この配置が意味するものを見てみたいと思う。

まず、3トップ×3バックは相性が悪い。展望では守備における1×1には絶対的な強さがあるって書いた藤枝東だけど、本当の意味での1×1はさすがに攻撃側が有利になる。守備側が主導権を握るためには、1×1の後ろにカバーがいなければならない。カバーがいることで守備の勝負ができるわけだから。

つまり本当の意味での1×1では守備の勝負ができないことになる。藤枝東の1×1の守備の強さはあくまでも守備の勝負におけるもの。守備の勝負ができない本当の意味での1×1の状況では藤枝東の守備のよさを発揮できなかった。結果として、これまで通りに先手を取る守備ができずにズルズル下げられるシーンが目立ったと思う。

ただ、藤枝東としてもそういう本当の意味での1×1をほっておくわけにはいかない。周囲のどこかが助ける必要が生まれたと思う。上にも書いたとおり、相手の2トップは図のように常に最前線に張っていたわけではないから、特に中盤に降りてくるときにはボランチが見る形になる。必然的にそのままトップの位置に3枚(最終ラインと1×1が生まれるときにも)がいるときにもボランチが助ける役割を担っていたように感じた。

そうやって藤枝東のボランチの後ろへの意識が強くなったところを畳み掛けるように名雪とか中里が飛び出していくこととなった。これによって藤枝東のボランチの守備への負担が増えたと思う。降りてくるトップへの対応、DFと協力しての守備、飛び出してくる相手中盤への対応ってことで。これで藤枝東のボランチは守備色に染められた。

同じことがWBにも言える。上にも書いたとおり、3トップとか中盤の位置から流経大柏の選手が代わる代わるサイドに出てきた。そして、そういう場所でボールを引き出して起点になる役割を担ってたと思う。これに対して、藤枝東の両WBが守備をしなきゃだめかなって意識になったんだと思う。。

それを畳み掛けるかのように上にも書いたようなSBの超積極的な攻撃参加。藤枝東がサイドの主導権争いに敗れた瞬間だった。WBの選手が深い位置に押し込まれ守備色に染まってしまう状況が生まれた印象。事前の展望に書いたとおり、藤枝東にとってWBが押し込まれてしまうのは致命的な状況。

ボランチもWBも守備色に染まった藤枝東の攻撃は実質上前線の3人に任せられることとなってしまった。そして、その3人のうちで核となるべき河井に対して流経大柏は完全なマンマークをつけて対応。藤枝東は何も仕事をさせてもらえなかったと思う。

これによって藤枝東は前線における収まりどころがなくなってしまった。そうじゃなくても流経大柏の高い位置からのプレッシャーは効いてて落ち着いてボールを保持できない状況なのに、前線にも目標がない。結果、守備のスパイラルから抜け出す術がなくなってしまったと思う。藤枝東が跳ね返したボールはことごとく流経大柏が拾っていった。

これに関しては藤枝東の2トップの動きの質の要因もあったように感じる。藤枝東のトップの2人は遠ざかる動きの量が多くなってた。まあ、流経大柏の最終ラインウラに広大なスペースがあったことを考えれば仕方のないところか。それに、近づいて(下がって)受けようとしても相手のCBが密着マークで仕事をするのを許してくれなかったし。

結果として藤枝東は個々の距離が遠ざかることになった。そもそも前線が過疎化してるのに、そのそれぞれの距離も遠い。ボールが収まったとしても、その後の展開場所がなかったと思う。そして、組織としての近さとそれをベースにした個の突破のよさも消えてしまった。

それは初戦でも見られた形だから、その内容を想定すればいいと思う。ボールが入っても次に展開できず、保持時間が長くなって、結果として相手につぶされてしまった。守備に人数を裂いていた分、攻撃の人数が少ないから、選択肢の少なさはさらに深刻だったように思う。

ただし、初戦と圧倒的に違ったのはこれが流経大柏のやり方のよさによってもたらされた点。流経大柏の方は攻撃のやり方によって藤枝東は守備のスパイラルに陥れたっていえる。はっきり言って、守備のよさを使うまでもないほど(もちろん、守備のよさがベースにあったのは事実だけど。特に最初の守備がしっかりと効くことで相手に切り替えで蹴りだす選択肢しか与えなかった。)に相手の攻撃の選択肢をなくしてしまった。

そして、この攻撃のやり方があったからこそ流経大柏は相手の攻撃を封じられたっていう面が大きかったと思う。前後半の立ち上がりの時間帯、藤枝東の攻撃のバランスが崩れていないときには、その攻撃が流経大柏の守備のよさを上回る可能性は感じさせてくれたから。

個の力と近い関係のランニングを組み合わせによって相手の守備の密集地帯を打開する場面も見られたし、何よりも大きな展開で広い場所を使うやり方が効果的だった。ボールサイドに人数をかける流経大柏の守備ブロックの大外を使うことで、フリーの選手を使うことができてたと思う。

こういう点においては、藤枝東のサッカーを貫いてもやり切れる可能性はあったと思う。ただし、そこには人数っていうベースがなければならない。ボール保持者が孤立しないように近い関係で数的優位は作りたいし、さらに大外の攻撃参加も必要。

そして、流経大柏のアプローチによって攻撃に人数をかけさせてもらえなかったのがこの試合の藤枝東だった。後半の立ち上がりにはボランチもWGも守備から攻撃に重点を移し変えて積極的に出て行こうとした。その瞬間にまさに3バック脇のスペースに起点を作られたところからの失点。結局、後半の決意も削がれてしまうことになった。

そういう意味で一番最初の話に戻るわけ。藤枝東は人数をかける攻撃ができれば、自分たちのやり方にこだわったとしても、相手を上回る可能性はあった。でも、流経大柏のやり方がそれを許さなかった。そして、その流経大柏のやり方は本来の自分たちの守備のよさにプラスアルファーをした攻撃の部分。おそらく相手の藤枝東のことを考えてのものだったんじゃないかと思う(河井のマンマークの海老原起用を考えても、相手に合わせた形をとることは十分に考えられる)。このプラスアルファーが最終的には圧倒的な差として出てきた気がする。

ちなみに、4-3-3で攻撃をしてた流経大柏だけど、守備時(相手にボールを保持されたときの守備時)には村瀬を中盤の一角に入れた4-4-2に戻していた。その上で本来的な高い位置からの守備のよさが見られたと思う。

トップの2人が追いかけ、後ろは超コンパクトな(中盤とDFが一体化するほど)ブロックを形成。トップの追いかけで出しどころを抑え、状況に応じてオフサイドも奪いながら高いラインを維持してたと思う。その上でブロックに入ってくるボールをことごとく引っ掛けた。その中でもボールを保持されればコンパクトなブロックにおける近さを生かした守備に入る。ボールサイドにブロックを寄せ、相手のボール保持者を孤立させ囲い込むやり方が見られたと思う。

さらに、流経大柏の守備では要所要所では人を抑えるのも特徴的。河井×海老原がその最たる部分だし、SBも相手のFWにしっかりとつくことで起点としての仕事をさせなかった。これは高円宮杯でも見られた形だけど、少しも自由にボールを持たせる時間を与えてないっていう意味で効果があったと思う。それに、そこで1つ抑えたところに対する周囲の連動の速さも光る。

とはいえ、上にも書いたとおりこういう守備のよさを見せる機会はほとんどなかったって言っていい。攻撃後の最初の守備をしっかりとやることで相手にボールを保持させなかった。そうやって相手が蹴りだしたボールを苦もなく拾うっていう場面の方が圧倒的に目立ったように思う。苦もなくといっても、そこには出足の速さとかっていう要素があるのは当然なわけだけど。

この流経大柏のサッカーの一番の素晴らしさが見られたのが3点目以降の時間帯の攻撃のやり方だったと思う。それまでは縦への意識が強いやり方を見せてた流経大柏だったけど、この得点の後はボールを保持しにかかった。そのボール保持の内容が藤枝東のお株を奪うようなものだったと思う。ちなみに後半は普通の4-4-2になってた気がする。

流経大柏がキープに入ったときには遅攻時に見られるようにやっぱりサイドに起点を作った。ボランチの展開力をベースにしながら、うまく左右のサイド(大前が流れたがる左サイドが多かったけど)をうまく利用したと思う。このボランチの展開力のよさは、いつ見てもこのチームに見られる気がする。

そうやってサイドに起点を作ったところで守備と同じように近さを利用。SBの攻撃参加にトップの流れ、ボランチの助けも利用しながらサイドにおける数的優位を作る。そうやってシンプルなトライアングルを形成すると思う。そういう形式的なものにそれぞれの動きを組み合わせながら、しっかりとパスを回してた。この時間帯はボール保持に入ったわけだから、詰まったら1度戻して作り直す余裕もあったと思う。その中でポゼッション率を高めていった。

こういう組織としての流経大柏のパス回しに対して、個ベースの藤枝東の守備では対処ができなかった。流経大柏と同じように前線から追いかけるし、流経大柏と同じように要所要所を抑える力は持ってる。でも、流経大柏と違うのは守備の連動性だった気がする。流経大柏の守備は1つめの守備はもちろん、それに対する2つめ以降の連動性が素晴らしいってのはこれまでにも書いてきたとおり。藤枝東はそれができなかったことで攻めたい時間にボールを持てないっていう歯がゆい展開になってしまった。

本当はこういう可能性はどの試合にもあった。これまでにも藤枝東の守備は個の強さによる部分が大きいってのは書いてきたとおり。それでも問題が起きなかったのは、自分たちが攻撃に出ることができたから。相手が今回の藤枝東と同じ状況に陥ってたから。要するに守備に人数を割かれ、攻撃は数人に任せられるって形。相手が攻撃に連携を用いない状況なら、守備にも連携はそれほど必要ない。個×個で上回ってれば何の問題も起きなかった。

そして、藤枝東にはそういう形を作り出すだけの攻撃力があった。チームとしての保持力もあるから、主導権を握ることができた。実際に全国の舞台でも初戦の悪い内容の試合を含めて、ほとんどの場合で主導権を握ったのは藤枝東だった。

ただし、その中でやや弱点を露呈したのが高川学園との準決勝の後半。今大会初めて相手に主導権を握られ、守り続ける状況に陥った。自分たちの攻撃の時間はほとんどなかったと思う。それでも、1点を持っているアドバンテージがあったためにべた引きのラスト守備でも何の問題も起きなかった。今回の流経大柏戦では立ち上がりから同じ状況を作り出されてしまったって言える。それは前半部分で書いたような相手のちょっとした工夫によって。

ここで考えなければならないのは、藤枝東は攻撃力で勝ち上がってきたチームだってこと。守備が悪いわけではなかったけど、攻撃力に見合った守備のよさがあるチームだった。だから、攻撃力をベースとして戦えれば全国決勝レベルのチームであっても、守備がベースとなったら全国決勝レベルかどうかは分からない。

対する流経大柏。今までにも書いてきたとおり、流経大柏のよさは守備力っていう意見を変えるつもりはない。でも、その守備から攻撃に移るだけの攻撃力も持ってるチーム。準々決勝では0-0だとはいえ攻め続ける内容だったし、準決勝はそのまま6-0っていうスコアがあらわしてる。決勝までは守備をベースとした攻撃力も見せながら勝ちあがってきたチーム。

本当は藤枝東の攻撃×流経大柏の守備っていうストロングポイント同士での争いになれば、もっと競った内容になったと思う。でも、実際には流経大柏の攻撃×藤枝東の守備っていう展開になった。というか、流経大柏がそういう展開に持ち込んだ。結果として藤枝東のみがベースとなるものを捨てて戦うことを余儀なくされてしまった。結果として力差を強く感じさせる試合につながったように思う。
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2008-01-13 Sun 18:43
高校サッカー決勝展望
藤枝東は今までのも書いたように個ベースのチーム。 ただし、静岡内では組織ベースのチームに見えるから不思議。 あくまでも静学と比べてだけど、だからこそ静学よりも上まで来れたっていう見方もできる。

攻撃に関しては、試合を追うごとに内容が良くなってるからあまり心配はないと思う。初戦は個分断の状況でどうなるかと思ったけど、だんだんと組織としてのよさ(ボールに対してのランニングの多さとか、広い場所を使う展開とか)が出てきた。そして、それが個を生かし始めた。 ただ、初戦の最悪な内容が緊張のためだとしたら、決勝という舞台に舞い上がらないことが必須条件か。

その藤枝東は守備も個ベース。 1×1は基本的に勝てるっていう絶対的な強さを持っている。 だから、流経大柏はいかに1×複数を作り出すかがポイントになってくるはず。 もう1つの可能性は0×1を作り出すこと。 要するにいかに相手のマークから外れるかっていう可能性。 どちらかと言うと、流経大柏にはこっちのがあってるかも。

流経大柏のスタイルは、最前線からの忠実な守備→高い位置でボールを引っ掛ける→ショートカウンター。 このショートカウンターで相手の押し上げ途中のバランスが崩れた守備ブロックに仕掛けられれば、0×1の状況を作り出せる。

そのためには準決勝をほとんどハーフコートの試合にしてしまったような高い位置での守備が機能することが必要となる。 この試合の大差は津工がつなぐことにこだわりすぎたことによって、完全に流経大柏の守備網に引っかかってしまったことによって生み出された。 逆に前線への蹴り出すことに終始した準々決勝の東福岡はスコアレスドローに持ち込んだ。 藤枝東がどちらのやり方を使ってくるかがポイントになる。

基本的な藤枝東のスタイルを考えると、つなぐ意識の強い津工寄り。 でも、試合を追うごとに藤枝東は1発のロングボールが増えてるのも注目すべき点。 初戦はどの場所でもとにかくショートパスをつないで組み立てようとしてたけど、準決勝ではロングボールを多用。 FWの引き出しの動きも試合を重ねるごとによくなって、ロングボールで距離を稼いでおいて、最後のブロック崩しっていう仕上げの部分にショートパスとか個の力を利用しようっていう姿勢が強くなってる。 決勝はどちらで来るか? 藤枝東のロングボールの数が1つのポイントになりそうな予感。

もう1つのポイントは流経大柏のフォーメーション。 2トップの大前と久場を両翼に配置する東福岡戦の形を採用すると面白いと思う。 その場所は藤枝東の3-5-2の構造上の弱点である3バック脇。 CBが対応しようとすれば真ん中が空いてしまい、WBが対応しようとすればサイドの攻撃が停滞してしまう。 藤枝東はWBが押し下げられると一気に相手にペースを握られるのは高川学沿線の後半に見られた状況。 スタート時の前線の形にも注目したいところ。
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2008-01-12 Sat 20:00
ポーツマス×アーセナル
<ポーツマス:4-3-3>
FW:クラニチャル-カヌー-ベンジャニ
MF:ムンタリ-ディオプ、ヒューズ
DF:フレイブルソン-ディスタニ-キャンベル-ローレン
GK:ジェームズ

<アーセナル:4-4-2>
FW:アデバヨール-フラミニ
MF:ロシツキー-フラミニ-セスク-エブエ
DF:クリシー-ギャラス-コロ・トゥーレ-サーニャ
GK:アルムニア

前回見たときにはいなかったセスクが、この試合では戻ってきたから、攻撃面における全体のバランスについて確認しときたい。本当はファン・ペルシーが入るのがベストメンバーなんだろうけど、アフリカネイションズカップがはじまることを考えると難しそうなので(タイミングがあえばなんとかなりそうだえど)、この試合のメンバーで見てみる。というか、この試合のメンバーの関係性が結構興味深かったりもするので。

中盤以前のメンバーの中で例外的な存在なのが右サイドに入ったエブエ。エブエだけは基本の右サイドからほとんど動かない。本来のポジションである右SBのプレーを1つ前でやってるようなイメージ。サイドでの縦方向の動きが多いと思う。

逆に言えば、エブエ以外の5人の流動性はかなり高い。2トップ(1トップ+1トップ下)の2人はサイドにも中盤にも積極的に顔を出してくるし、ロシツキーも前回見たアストン・ビラ戦よりも中に入ってきてのプレーが多かった。そうやって前線で動きが生まれたことによってできる前のスペースにCMFが飛び出していくことが多い。

このCMFの2人の役割はどちらも“助ける”もの。自分で何かの動きを作り出すと言うよりも、周囲との関係性を考えながら(全体としてそういう考え方が強いと言えば、そうなんだけど)動いているイメージが強い。

その中でセスクとフラミニが前後での役割分担をしてるイメージが強かった。セスクは前線に積極的に飛び出していく。前線の選手が作ったスペースを埋めるための飛び出しが多く見られたと思う。対するフラミニは後ろでのバランサー。そういう場所でボールの逃げ場として残ることで、前が詰まったときに助ける役割を担ってたような印象が強かった。

前回の試合ではディアラが後ろのバランサーや逃げ道として残って、フラミニが積極的に前線に出てくシーンが多かったけど、本来的にはこの試合で見られたような役割分担が主なんだと思う。もちろん、流れの中でセスクが後ろの逃げ場になったり、フラミニが前線に出て行くプレーも見られるわけだけど。

こういう流動性の中には1つの決まりごとというか、パターンのようなものが見られる。それは1つ前の選手が動いて空けたスペースに次が出て行くっていう考え方。これは、チームの決まりごととして強制されてるっていうよりも、それぞれが考えて動く中で生まれるパターンであるっていう意味の方が大きいと思うけど。これによって、スペースを無駄にせずに常に選択肢の多さを維持することができているように思った。

例えば前回の試合のときも書いたようなものが1つ。それは前線がボールを受けに下がってきたら、代わりに1枚が入れ替わって前に飛び出してくってもの。今回の試合で言えば、ロシツキーが下がって受け、代わりにフレブが出てくようなシーンが見られた。他にもエブエが下がって相手SBを引っ張り出したスペースをセスクが狙うような場面も見られた。

加えて、横方向(前が横に動いてできたスペースの利用)でも同じような考え方が見られたと思う。例えばトップの2枚がサイド(多くの場合で右サイド)で組み立てに参加している間に、CMFと逆SMF(多くの場合でロシツキー)がゴール前に入ることで人数を維持する形。

さらに、今回多く見られたのは左サイドの使い方。前回よりもロシツキーが中に入ってくる動きを増やしただけに目立ってたように思う。ロシツキーがいない左サイドのスペースに積極的にクリシーが攻撃参加を繰り返したり、アデバヨールが流れてボールを受けたりっていうシーンが多くなった。

こうやって、最初にできたスペースを次が埋め、さらにできたスペースを次が埋めっていう流れの連続の中で相手ゴールに迫っていくのがアーセナルの形だと思う。要するに個々の動きの質がかなりのウェイトを占めることとなっていると思う。1つボールが動けば、スペースが別の場所に生まれるわけだから、細かくポジションを代えながら次のスペースに入らなければならない。そして、その動きが次の動きを生み・・・っていうイメージだと思う。

ただ、ここで考えなければならないのは最初のスペースがどうやって生まれるかってこと。スペースが生まれるためにはバランスが崩れてなければならない。ピッチ全体に等距離の関係が出来上がっていたら、次の選手が埋めるべきスペース自体がありえないわけだから。

その最初のスペースを作る、つまりバランスを崩す要因がまたアーセナルらしい。なぜなら、最初のバランス崩れはボールに対する近さを作るために生まれるから。ボールサイドに対してアーセナルは人数を集める。近い関係でショートパスを回すために。前回も書いたように縦横に凝縮状態を作る。結果、それがピッチ上の選手配置のバランス崩しを生み、最初のスペースが生み出される構図になってると思う。

個々の動きで言えば、ボールを1度さばいたらそれで終わりではない。ボールを処理した後にはすぐに次のスペースに入り込む必要がある。必然的にパス&ゴーの数も多くなる結果が生まれたと思う。ボールの場所に合わせながら相手のギャップギャップに入りコースを維持する微妙な動きに、パス&ゴーをはじめとする爆発的なランニングを組み合わせることでリズムの変化を生み出してると思った。

こうやって次から次へのスペースを埋めながらのパス回しではポジションごとの役割分担が限りなく0になる。もちろん、CMFの2人の基本的な役割分担にあるように、もっと言えばFWとMFの違いみたいに完全に役割が同じになるってことはありえない。

ただ、それはあくまでも最初のところの違いだっていう部分が大きい気がする。CMFは攻撃のスタートを切る、逆にFWはそのボールを受けるのが最初の仕事。そういう流れの中で相手ブロックに仕掛けていく中で、だんだんと役割分担がなくなっていく。そこでは基本的なポジションよりも、それぞれの場面の状況がかなり影響してるのは事実だと思う。

こういうアーセナルのやり方を実際に言葉で表すのは難しいんだけど、前にも書いたように、状況に応じて誰もがチャンスメイカーにもゲッターにもなり得るやり方ってのが一番しっくり来る。最初の動きによってできたスペースに次が出て行き、またその次がっていうのを単純化すると、トライアングルの頂点がグルグルと回転していくイメージ。その頂点の中で一番ゴールに近い選手が最終的にゲッターになるとすれば、回転の中で誰がそこに入ってもおかしくはないことになる。

アーセナルの攻撃はこれがもっと大規模に行われているイメージだと思う。最初に攻撃のスタートを切った選手が次々にスペースを埋める動きの繰り返しの中で最終的にゴール前に入ることもあるし、最初はトップの位置にいた選手がラストパサーになることもありえる。

こうやって特化した役割を作らないやり方のアーセナルだから、普通に考えればどこからでもバランスよく攻められる状況のはず。でも、実際にはそういう形にはならない。どうしても起点が多くできるのは右サイド。前回見た試合ほど顕著ではなかったけど、やっぱり今回も右サイドでの打開が多かったと思う。

この要因は簡単なこと。上にも書いたように、中盤以前ではエブエだけが役割を特化させた選手だから。エブエだけは動いてスペースを埋めたりっていう動きをほとんどしない。逆に言えば、チームとしてエブエにボールを持たせたときが一番攻撃に厚みを加えられることとなる。エブエに持たせた方が他の人に持たせるよりも、周囲の助けが単純に1枚多くなる(エブエの分だけ)わけだから。

だから、起点を右サイドに作るのが一番効率がいいんだと思う。エブエにボールを持たせ、2トップ+サーニャがサイドに流れて近い関係を作る。真ん中はCMF+ロシツキーが入って枚数を維持。アストン・ビラ戦と今回のポーツマス戦を見る限りでは、このパターンが最もスムーズに相手ゴールに迫れる形だったように感じた。

ちなみに大きなサイドチェンジが少ないのも、この要因に基づくものだって気がした。右サイドに作ったときにロシツキーは真ん中に入ってきてることが多い。結果、逆サイドには展開する相手自体がいないっていう状況が生まれるように感じる。

もちろんショートパスに対する絶対的な自身もあるように思う。広い場所(逆サイド)になんて逃げる必要がないというか。狭い場所でも打開できる自身があるから、わざわざ遠回りをする必要がないっていう考え方なのかもしれない。

さて、アーセナルの攻撃のやり方についてはこれぐらいにして以下では本格的に試合の内容について見て行きたいと思う。とりあえず、まずはここまで書いてきたようなアーセナルの攻撃に対するポーツマスの守備について。

ポーツマスはきっちりと守備をしたってのが素直な感想だった。結果を見ても無失点だったし(0-0)、決定的なチャンスもほとんど作られていない。アーセナルのパス回しに対して翻弄されず、しっかりと要所要所を押さえたことで生まれた結果だったように感じた。

そのポーツマスの守備ブロックは4-3-3。この4-3-3のブロックを作っておいて、前線の3トップからそれぞれにしっかりと役割を与えてたように感じた。その中ではアーセナルの人を見る意識をある程度しっかりと持った守備が見られた印象。アーセナルがポジションを大幅に入れ替えながら攻めてくるわけだから、絶対的な対応関係にはならなかったけど、1つの基本事項としてこういうやり方ができてたと思う。(途中から形が4-2-3-1みたいになったのは、セスクの攻撃参加が活発になったことで、1人が下がったように見えたからか?)

(○:アーセナル ●:ポーツマス)

   ●  ●   
●  ○  ○  ●
○   ●    ○
   ●  ●
●  ○  ○  ●
○   ●    ○
   ○  ○
   
3トップが相手の最終ラインに対してまずプレッシャーに行く。ガツガツと追いかけるような質のものではなかったけど、後ろとの関係で最低限の守備はしてたように思う。その上で本格的な守備のスタートは相手が1つ縦パスを入れたところ。そこにおいて上に書いたような対応関係を生かしながら、一気に距離を詰めて行く形が目立った。

上にも書いたようにアーセナルは攻撃の形を作っている間に徐々に動きが加わるわけであって、スタートのところでは基本ポジションから大きく動かない。結果として対応関係が素直に生まれる状況になった印象。

そうやって相手の縦パスに最初の守備が効いたところで一気に守備のスピードアップが図られる。周囲も対応関係を利用しながらしっかりとマークについて相手のパスコースを消し、敵陣に押し戻していくやり方が多かった印象。そして、勢いのままそういう敵陣のボールも追い掛け回すやり方が見られた。

そういう意味で対応関係はいい意図だったと思う。アーセナルの速いパス回しに対して入った後の対応をしていたら、簡単に否されてしまったはず。おそらく中途半端に距離を詰めた時点ですでにアーセナルのパスは次に展開されていたと思う。結果として中途半端に出てきたギャップだけが生まれる状況になっいてたはず。

それが対応関係を作ったことでより素早い寄せが可能になった。最初から目標がある状態で守備ができるわけだから。前線が最低限の守備をしてくれたのも意味があったけど、入った瞬間もしくは入る前に対応ができたことによって、アーセナルに次の展開を簡単には許さない状況を作り出せてた印象。

ちなみに、この対応関係を作ったときに重要な役割を担ったのが中盤の底に入ったヒューズ。上の図を見ても分かるとおり、ヒューズは守備のフリーマンになっている。その中で基本的な役割はCBと協力して2トップを見ること。2+1×2の関係を作り出した。他にも相手の後ろからの飛び出し、前線からの下がりに対する対応、CBがサイドに引っ張り出されたときのカバーなんかを担ってた。

ただ、一番大きかったのは相手のトップへのパスのフィルターになったことだったと思う。基本的にアーセナルは真ん中の場所に起点を作ることができなかった。アデバヨールが受けられるのも、ほとんどがサイドに流れてのものだったと思う。そして、これが一番大きかったのはカウンターを含めてアーセナルの縦へのスピードを阻害したこと。結果、常にブロックを作った状態で相手の攻撃を受けることができた。

ポーツマスとしればできる限り上に書いたような図の状態でバランスを崩せずに守備ができれば最高だった。ただ、アーセナルの攻撃もそれほど甘くはない。ポーツマスの前線からの忠実な守備網を抜け出して、相手ブロックに入り込むシーンを増やしたと思う。

そうなったときのポーツマスは潔かった。全体のバランスなんてものはほとんど考えなかった気がする。トップを含めて全員が自陣に入り、多くの人数でゴール前を固めるやり方に移行した。ボールに対しては最低限のチェックには行くものの、あくまでも守備の目標は最後の最後の場所。あくまでも、ショートパスで打開しようとするアーセナルの最後の崩しを人数ベースの守備ブロックで寸断し続けたと思う。

結果、アーセナルはポーツマスのブロックを崩して決定的なチャンスを作るっていうところまでつなげられなかった。そもそも相手が人数をかけた超密集地帯をあくまでもショートパスで崩そうとしている時点で、途中で引っかかる可能性が高いわけだけど(アーセナルらしい?)、加えて今回の試合ではそのパスに微妙なズレが目立った気がする。

おそらくこれは単純にピッチ状態の悪さのせいかなって思う。試合中に選手が足を取られまくってたし、そういう中で微妙なズレが生じたんじゃないかと。特にギリギリの精度が要求される最後の場所ではその影響がモロに出てしまったかもしれない。

ただ、最後の場所に限らず今回の試合では途中でパス回しが寸断されてしまうシーンが目立ったのも事実だった。途中で引っ掛けられたり、明らかにアーセナルの選手のミス(単純なミスから連携のズレまで)によったり。そういうパス回しの寸断の中でうまくリズムを作れなかったのも事実だった気がする。

もちろん、その要因にここまで書いてきたようなピッチ状態の悪さがあったのは事実だったと思う。同時に、ポーツマスの守備の内容のよさがあった。そして、アーセナルはそのポーツマスの守備に対してズレを作ることができなかったように感じる。

ポーツマスの守備はここまで書いたような高い位置でのバランスを保ったブロックにしろ、低い位置での密集ブロックにしろ、コンパクトなブロックを作ることを念頭に置いていた。低い位置での密集ブロックではある意味では当たり前にコンパクトな状況が作られるし、高い位置では最終ラインを高めに保ってそういう状況を作り出した。

アーセナル自身も攻撃時にはコンパクトな状況を作り出してることを考えると、狭いゾーンの中に敵味方かなりの人数が入り込むこととなる。これは組み立ての途中でも最後のブロックへの仕掛けでも同じように。

結果としてスペースがつぶれ、パスを通すときのコースもかなり制限されることになってしまうと思う。狭い関係性の中でそれぞれの距離間がかなり縮まっているから、そういう場所を通すには本当にギリギリの場所を狙う必要が出てくる。その中でミスも出てくるし、結局相手に引っ掛けられてしまうシーンも増えたんだと思う。

そして、アーセナルらしいというかなんというか、そういう状況を打開するアプローチがなされなかった。例えば相手の高いラインのウラに1発のボールを狙うだとか、ベタ引きブロックの前を通り過ぎるサイドチェンジを繰り返す打とか。そういう工夫がなくて、悪く言えば馬鹿正直に相手ブロックに仕掛けていくイメージが強くなった気がする。結果、途中で分断されることが多くなってしまったように感じた。

そういう意味では攻撃の内容は前回見たアストン・ビラ戦よりも悪くなってたイメージ。あの試合の前半はほぼ完璧だったってのもあるんだろうけど。対して、守備の内容は明らかに好転してたように感じる。

アーセナルの守備においては攻撃からのつながり重要になる。ここ最近で取り上げた中では流経大柏の守備のやり方に似てる面があるように思う。つまり、攻撃の流れのままに守備に入るっていうやり方。まず引いて組織を作るんじゃなくて、最終ラインをはじめとした全体を攻撃のときのままの高い位置に保って、最初の守備をするやり方が見られたと思う。

立ち上がりはこの守備のやり方がかなり機能した。高い位置での最初の守備が機能し、攻撃に厚みをかけている分そういう場所での守備にも人数をかけることができた。敵陣内で複数枚で囲い込んで奪うっていうシーンも見られたと思う。

こういう高い位置でのアーセナルの守備に対して、ポーツマスの選手に焦りのようなものが見られた。相手のプレッシャーがかかる前にボールを離してしまおうっていう意図が強く見られて、奪った後に前線に闇雲に蹴り出す質のボールが多くなった。当然、そういうボールが効果的につながるはずもなく、結局相手にボールを渡してしまう状況が生まれてた印象。

ただ、時間とともにポーツマスの選手が落ち着き始めた。相手の切り替え後最初の守備のプレッシャーに負けずに、しっかりとボールを保持することが多くなったと思う。それでも目標は前線のカヌーへのボールなかわけだけど、明らかに立ち上がりには見られなかったような精度の高いボールが供給される場面が目立ったと思う。そして、ある程度の精度のボールが来ればしっかりと保持できるだけの力がカヌーにはあった。

そして、ポーツマスはカヌーに入ったときが攻撃のスイッチ。カヌーに収まった瞬間に後ろから一気に押し上げを図る。カヌーは受けたボールを一度サイドに展開することで押し上げの時間を作る。この流れの中でゴール前には後ろから飛び出した選手を含めて厚みが生まれることになる。結果、可能性のある攻撃が生まれた印象。

そうなったときに今回はDFと中盤のはがれ状態もあまり見られずに、いい関係性を築いてたから最後のところが危険な状況になることはなかった。ちなみにアーセナルがブロックを作ったときには最終ラインを高めに設定してコンパクトな4-4ブロックを作る。その上でボールサイド寄りにずらした形でボールに圧力をかける。

ただ、これはあくまでもバランスが取れたブロックを形成した場合。カヌーに当ててからの展開で相手が前線に厚みをかけてくると、どうしても多くの人数が低い位置のブロックに参加することとなった。

問題はそこから抜け出すとき。縦への意識が強いアーセナルは切り替えでまず前線のアデバヨールを狙う。そして、そこに対する相手の守備の意識が高いのは上にも書いたとおりだった。アーセナルとしてはしっかりとアデバヨールに対するボールには対応をされてしまったことで、攻撃のスタートがうまく切れなくなってしまったと思う。

結果、前線に人数を押し上げることも難しくなった。さすがに1×1なんかを見ればアーセナルが上回ってるだけに、最後のところに張り付かされるような状況にはならなかったけど、効果的に攻撃を繰り出せなくなったのは事実だったと思う。この時間帯はポーツマスペースだった。

これに対してアーセナルは攻撃のやり方の変更によって再びペースを取り戻したと思う。具体的にはロシツキーのポジションを大きく動かしはじめた。実はその前にセスクの攻撃参加を活性化させるっていうアプローチもあったわけだけど。とにかく、ロシツキーが完全に左サイドを捨ててかなり自由に真ん中に入ってくることが多くなったと思う。

この時点で実質上、上に書いたようなポーツマスの対応関係は崩れ去った。要所要所ではしっかりと人についていたけど、ピッチ全体での対応関係は築けなくなったと思う。結果として対応関係ベースのバランスのいいブロックでの守備は難しくなった。守備において、低い位置まで押し込まれ、最後の最後で守るやり方が多くなったと思う。

そうなればカヌーに対するサポートも難しくなる。そもそも奪った後にカヌーを狙うのに距離が空きすぎてしまった。入ったとしてもいい時間帯のように厚みを持たせた攻撃は難しくて、カヌーとベンジャニのスピードにかけるやり方が多くなったと思う。

最後にアーセナルの守備についてもう少し。アーセナルの守備のキーワードは上にも書いたとおり、攻撃からの流れの重視。その攻撃が流動的にやっていることを考えれば、それからつながる守備にも当然のように影響が見られた。一番分かりやすかったのがセスクとフレブの関係にあったと思う。

前半の途中からセスクが積極的に飛び出すシーンが多くなったのは上にも書いたとおり。その中で当たり前のように最前線まで飛び出していくシーンが見られた。問題はそうやってセスクが飛び出していったときに、途中で引っ掛けられた場合。そういうシーンではセスクがすぐに守備ブロックの本来の場所に戻るのは難しかった。

だから、そういうときには一時的にフレブがブロック内に入って対処するやり方が見られたと思う。中盤の並びをロシツキー-フラミニ-フレブ-エブエにしてバランスを保った。もう1パターンとしてはバランサーとしてのフラミニを利用する形。フラミニをDF前に置き、他の3人を押し出すことでセスクが戻るべき距離を縮めた。その上で4-1-4-1みたいなブロックで対処するやり方も多かった気がする。

アーセナルはファン・ペルシーが帰ってきたらどういう形にするのか興味がある。フレブを右に出してフレブの場所にファン・ペルシーか?だとすると、現状では固定になってる右サイドにも流動性の波が押し寄せることになるかもしれない。それはそれで面白い。
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2008-01-09 Wed 23:27
07年日本代表総括
少し遅くなったけど、07年の日本代表の総括を。07年のキーワードは「攻撃の型作りとそのための守備の転換」。まずは後者の守備の転換から見てみたい(守備面については天皇杯決勝の記事についての議論と関連する点が多いです)。

守備の戦術変更が抜本的に行われたのは、キリン杯のコロンビア戦。相手の2トップに対して日本は4バックで臨んだ。これはオシムジャパンとしては大改革なわけだけど、自分の記事を見直してみると全くそのことに触れられてないわけで。

その記事(旧ブログ)でサンチェさんに頂いたコメント。

後半のディフェンスですが、個人的には、今野の投入以降、後ろが3枚(中澤・阿部・今野or駒野)な感じがしました。

なるほどと。真ん中が2×2だからそれをカバーする役割をSBが担った結果、そういう形になったってことだと今にして思う。もっと言えば、SBのスタメンは中田浩だし交代は今野だったのかと(他にSBがいなかったことも事実だけど)。

じゃあ、なんでこんな重要なことに気づかなかったのか(自分の見る目がないのは根本として)。1つはカミカゼシステム自体に目を奪われてしまったこと。特に1つ前のモンテネグロ戦の攻撃が不満だっただけに、攻撃の方に多くの注意を向けてしまった。もう1つはあまりにもスムーズに守備の転換が行われたってこと。

普通に考えればマンからゾーンへの大きな守備の転換。実際に1つ前のモンテネグロ戦では相手に合わせて4バックと3バックを試合中に変更してるわけで、そう考えるとやっぱり大きな転換。それでも、大きな転換が大きな転換に見られなかったのも事実だったと思う。

そもそも今にして思えば、07年初戦のペルー戦からその予兆はあったのかもしれない。このペルー戦で日本代表は序盤に主導権を握られた。その要因は前線で効果的な守備ができずに、ブロックが低い位置に押し下げられてしまったこと。基本は引いてブロックを形成し、相手の縦パスを狙うっていうものだった。

こういうやり方は前線から積極的にボールにアプローチしていった06年の日本代表とは違った形だけに違和感が残ったのが事実。その時点で可能性として考えられるのは、海外組招集による影響だったわけだけど、2人も守備に関しては献身的にこなしていた。

だから、もしかしたらこの時点で前線から最終ラインまでのピッチ全体でつくべき選手をはっきりするやり方をやめたんじゃないかって気がする。だからこそ前での守備に戸惑いが生じ、結果として下がって受ける形になったんじゃないかと。それでも後ろはしっかりと人についてたから、そういう場所に入ってくる縦パスは狙える。

本当のところは分からないけど、こう考えるとしっくり来る気がする。実際に試合の中で守備の内容が改善して行ったのも事実だった。これはそれまで守備の役割に困っていた選手が、自分のやるべきことを見つけた結果だったのかもしれない。

同時に攻撃面では縦のポジションチェンジ(後ろからの飛び出し)が明らかに減ってしまった。06年最終戦のサウジ戦では、最終ラインから次々と選手が飛び出していくダイナミックな攻撃でチャンスを多く作ったのにも関わらず。この点においても守備で完全なマンマークを崩したことの裏返しだったのかもしれない。

このペルー戦の次に行われたのがキリン杯のモンテネグロ戦。この試合では上にも書いたとおり、相手の3トップに対して4バックで臨んだ。でも実際には駒野が攻撃的に行き、阿部が引く左右のバランスを意図的に崩した形。阿部-中澤-坪井の変則3バックと行ってもいい。だから、相手が2トップに変えたところではこの変則3バックがそのまま配置を入れ替えて(阿部をリベロに置いて)3バックになっただけのイメージだった。数的同数に対してSBが助けに来るってことではコロンビア戦と同じ。ただし、ペルー戦ではそこをはっきりと3バックにしたわけだけど。

さて、問題はなんでオシムがこういう守備の変更を行ったってこと。短期的に見れば、その後すぐのアジア杯につなげる意図が強かったのは確かだったはず。アジア杯での2バック+1つ前のリベロでの守備は期間中にしつこく触れた点。そして、この2+1の守備は攻撃のためっていうのはオシムも述べていた通りだった。以下、前にも引用したコメント。

今日の試合を含めて、この大会はそうであったわけだが、相手が2トップで来ても2ストッパーで対応し、その隣にサイドがいるが、事実上真ん中の2人のストッパーと、ボランチ2人のうち1人の3人で中央を守る。そういうリスクのある守備をしつつ、中盤のプレーメーカーを自由にさせる。(韓国戦後オシム会見より)

でも、これではどうしてゾーンに変えたかってことは直接的には明らかにされてない。その詳しい点については、以下の文章を参考に。

(ゾーンの)4バックの導入は守備のためというよりも、攻撃のため、中村憲剛を起用するためといってしまってもいいだろう。4で(鈴木啓太をカウントすれば5人で)守れるなら、数合わせ要員として阿部勇樹が担当していたポジションはいらなくなる。つまり、鈴木と組むボランチに、展開力のある中村憲剛を起用する余地が生まれる。(『「日本」を超える日本サッカーへ』より)。

つまり、こういうこと。マンベースの守備をするなら相手の形を見て3バックと4バックを転換しなければならない。その中ではモンテネグロ戦のように試合内での変更もあり得る。そして、この転換のためには中盤でも最終ラインでもプレーできる阿部を“数合わせ”で起用せざるを得ない。ゾーンにすることによって、それを回避した。

そう考えるとモンテネグロ戦はもう1つのテストだったかもしれない。もしもコロンビア戦でゾーンが崩壊した場合には、数合わせの阿部をSBに入れることで鈴木&憲剛の組み合わせを作り出した可能性は十分にあることだと思う。

ただ、ここで疑問が1つ残る。オシムの守備はどこに向かおうとしてたのか?ってこと。残念というかなんというか、アジア杯後(3位決定戦の韓国も含めて)に戦ったチームは全て1トップまたは3トップ。要するにマンだとしてもゾーンだとしても4バックで対応する形だった。しかも、カメルーン戦では阿部&鈴木が復活してる。

よくも悪くも、2+1はアジア杯用の形だったのは間違いない。関連してゾーンもアジア杯用の形だったとしても何の不思議もない。つまり、後で書くように“攻撃の型”を作るための守備の形だったって言っていい。だから、あれだけリスクを負う守備だったのにも関わらずカウンター対策も十分とは言えなかった。要するに守備のための守備のやり方は手付かずのまま残ったっていうこと。この点については岡田監督に引き継がれるべき課題だって言える。同時に岡田監督ならうまく守備の形を作ってくれるように感じるのも確か。

さて、この2+1の守備によって攻撃の厚みを状況で行われた攻撃の型作り。まず、この型作りのためにスタメンの固定が行われた。アジア杯では高温多湿の気候の問題、Jリーグとの関連における日程の問題があったのにも関わらず、ほとんどメンバーを変更せずに6試合を戦い抜いた。選手交代も同じポジション同士の交代が目立ったのは注目すべき点だったと思う。同じメンバー、同じ形で徹底的にベースを作る作業をしてた。

その中で生まれたのが圧倒的なポゼッションサッカー。出し手となれる選手(W中村+遠藤)を並べ、ランニングを生かしたショートパスと一気に局面を変えるサイドチェンジを繰り返しながらボールを保持し続けた。

アジア杯ではこのポゼッションの型をしっかりと作ったのが大きかった。そして何よりもそういうポゼッションの維持が困難だと思われた(個人的に)、スイスを相手にしたときもしっかりと機能したのが大きい。今や日本の型となったと言っていいわけで、岡田監督にもその継承をお願いしたい。そういう意味ではオシムサッカーの影響を受ける大木さんがコーチに就任したのは大きいかもしれない。

そして、このポゼッションサッカーの中で重要な役割を担ったのが両SBだったのはアジア杯後にも書いたとおり。守備は2+1に任せながら攻撃においてなくてはならない存在となった。アジア杯後にポイントとして挙げたのが以下の5点(攻撃に関しては1~4)。

①味方を前線に押し出す
ビルドアップのときに最終ラインの選手がボールを持ち上がる(ある程度高めの位置まで持ち込むことも重要)ことで、中盤より前の選手を前に押し出すことができた。具体的には憲剛、遠藤、俊輔の起点としての負担が減って、前で受け手となれる状況が生まれる。同時に前線に人数が入ったことでターゲットが多くなるから、前線にボールを入れる選択肢が多くなった。さらにそうやって前線に入ったときに近い関係性も築きやすい。

②1つ前のポジションを中に押し込む
サイドのスペースをSBが担当することによって、その前の遠藤とか俊輔がサイドのポジションを捨てて中に入っていけるようになる。もちろんサイドで数的優位を作ろうっていう試みもあるけど、ずっとサイドに釘付けにされないのは大きい。こうやって中の厚みを増したことでゴール前に人数を揃えやすくなった。

③中にギャップを作る
外に一度起点を作ることで相手の目先が変えられる。それにSBがボール保持者となってドリブルで出て行たり、敵陣の深いところで受けたりすれば、当然相手はそこに対応しなければならない。結果として相手の中のブロックにギャップを生み出すことができる。

④大きな展開
③と関連する部分もあるけど。SBがタッチライン一杯をに張り出すことで最大限のサイドチェンジが可能になる。そういう大きな展開の繰り返しで相手のブロックを横に間延びさせる。同時に守備の勝負どころを定めさせず、ズルズルと押し込んでいく。

⑤対応する相手を押し込む
基本的には相手のSMF。日本のSBがかなり高い位置を取ることで対応する相手の選手は自陣深くまで押し込まれることになる。結果として前の人数が少なくなって、守⇒攻の移行のスムーズさがなくなる。カウンターの選択肢としてもトップに当てるものしかないから、そこはしっかりと鈴木を中心に押さえられる。


アジア杯時のようにSBが攻撃ばかりを考えていられない相手との対戦では当然のように守備の負担も大きくなる。それでも攻撃の役割も担わなければチームとしての形が崩れてしまう。そう考えると、両SBには豊富な運動量はもちろんのこと、戦術理解度の高さも要求される。

にも関わらず、07年の代表は基本的には加地&駒野の固定だった。何らかの事情でどちらかが出場できない場合には阿部や今野っていう本職のSBではない選手がその場所に入った。重要なポジションなのに選手層が薄いっていうジレンマを抱えていたように思う。そう考えると12月の合宿における初招集メンバーのうち2人(安田と徳永)がSBの選手だったのはよかった点だと思う。

とりあえず、アジア杯においては組み立ての型が作られたと言っていい。ただし、圧倒的なポゼッションの割りにフィニッシュにまでつながらない問題も指摘された。この点についてはアジア杯の総括でも書いたとおり、アジア杯は組み立ての型を作ることで徹底されてたんだと思う。結果としてフィニッシュの型作りまでには手が回らなかった。組み立てでの連動性に加えて、最後の部分でのギクシャク感は明らかだったように思う。

これに対して、次のカメルーン戦で一気にてこ入れが行われれた。メンバーの入れ替えとともに、今までにも書いてきたように、横のアプローチから縦のアプローチへの一気に転換が見られた。この試合では組み立てどうこうではなく、相手の最後のブロックに対する仕掛けに重点を置いてたと思う。だから、FWも(タイプの違いもあるものの)組み立てに参加するよりはゴールに向かう動きを繰り返した。

これは推測でしかないけど、おそらくトレーニングでもフィニッシュに対するイメージ作りが進んだんじゃないかと思う。結果として07年の最後の2試合はともに4得点。明らか過ぎるほどの変化が生まれ、いい形での締めくくりが行われた。

以上が07年の日本代表の総括。結果としてこれがオシムジャパンの総括になってしまったのは非常に残念。新生岡田ジャパンについては現状でどうこう言ってもしかたないので、とりあえず試合を見てからコメントしたいと考えています。
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2008-01-08 Tue 18:30
ウェストハム×マンU
<ウェストハム:4-5-1>
FW:カールトン・コール
MF:リュングベリ-ノーブル-ソラーノ、パーカー-マリング
DF:マッカトニー-スペクター-アプソン-ニール
GK:グリーン

<マンU:4-4-2>
FW:テベス-サハ
MF:ギグス-Cロナウド、ハーグリーヴス-フレッチャー
DF:エブラ-ビディッチ-リオ・ファーディナンド-ブラウン
GK:クシュチャク

立ち上がりのマンUはどうなることかと思った。特に守備が大変なことになっていた。後で詳しく書くように、途中からはしっかりと修正してきてなんとか安定を取り戻したけど、得点までの時間の守備の内容はいつやられてもおかしくないような状況だった。立ち上がりは最後の最後のCBの強さのみでなんとかしてたイメージだったと思う。

この守備を悪い状況を作り出したのが、前線の4枚。その4人が普段は最低限しっかりとやる自分の前に対する守備を完全に放棄した。確かに本来的に前線の4枚の守備に対する負担はある程度免除されてるってのはこれまでにも書いたとおり。だからと言って、ここまで全く守備をしないのは久々(初めて?)だった気がする。前線で守備を一番頑張るルーニーがいなかったとはいえ、あまりにも酷すぎたと思う。相手の低い位置のボール保持者は本当にノープレッシャーだったと言っていい。

これによって、守備は本当の意味で後ろの4-2に任された。普段から後ろの4-2で守ることが多いのは確かだけど、最前線で守備のスイッチ自体は入る。4-2だけで守る状況だとしても、ある程度は前線で制限されてるし、相手の後ろからの飛び出しのフィルターの役割も担ってくれる。それが今回の試合では皆無だった。

結果として本来的に負担の大きなCMFの2枚の負担がさらに増大することとなった。DF前のフィルター、ブロックに仕掛けてきた相手ボールへのチェックっていうような本来の仕事に加えて、そもそも守備のスタートから担わなければならなくなった。さらに、守備においてケアしなければならないゾーンも増えたと思う。

マンUの立ち上がりのシステムはスタンダードな4-4-2。テベス&ルーニーが2トップを組むときには守備時にはテベスが1つ下がって(ルーニーが追いかけ、1つ下の相手の逃げどころをテベスがケア)、4-2-3-1みたいな形になることが多いんだけど、今回の試合ではテベスとサハが横並びのような形になってた。

これによって本来のトップ下がいる場所にスペースが生まれる結果になったと思う。そして、全く守備意識が見られなかった立ち上がりの前線4枚はそのスペースを埋めようとしない。スペースがスペースのまま残った上に、その場所にはウェストハムの攻撃の起点となるパーカー。CMFの2枚はその場所のケアっていう仕事までを押し付けられた印象。

やるべき仕事が多く、見るべきゾーンが広いマンUのCMFは見るべき人も多くなった。マンUの前線の守備意識が薄いからウェストハムの後ろからの飛び出しはし放題。さらにウェストハムは2列目がかなり流動的に動いてくる。こういう選手を見るのもCMFの仕事の一環だった。

これだけの多くの仕事を求められたCMFが機能するはずもなかったと思う。1つ1つの仕事が全て疎かになってしまうのも仕方なかった。相手の出し手に対しても受け手に対しても効果的な守備ができなかった。全ての場所がルーズになってしまい、ウェストハムにやりたいようにやられてしまったと思う。

だから、ウェストハムは攻撃の組み立てをやりたいようにやった。ボールはある程度自由に持てたし、前線の厚みと流動性に対して相手が押さえ切れない選手が続出したから、出すところもいくらでもあった。

その中でも自分たちが使いたいカールトン・コールへのくさびも面白い程に収まった。その前に相手の中盤のフィルターがないんだからある意味では当たり前だけど。カールトン・コール自体が完全にフリーになってっていうシーンはさすがに作れなかったけど、周囲がフリーで近い関係を作ってたからいくらでも次の展開ができたと思う。

そうやって好きなように組み立てをしたけど、最後の最後はマンUの最終ラインの跳ね返し力に屈してしまった。それでも、決定的なチャンスを生み出したりと得点を取るのは時間の問題みたいな展開だったと思う。マンUは瀬戸際ギリギリのところで守備をすることが多かったし。

ウェストハムが立ち上がりに主導権を握ったのは、こうやって攻撃でやりたいことをやったからだけではなかった。実際には立ち上がりからの守備のよさの方がその要因としては大きかったと思う。攻撃でやりたいようにできたのは、マンUの守備のまずさによって生まれた部分もあったわけだから。

そのウェストハムの守備は前線からの献身的な守備をベースとしていた。守備において前線がなくなってしまったマンUとは大違いに、最前線から相手のボールに対しての忠実なチェックが繰り返された。そうやって相手のボール保持者に余裕を与えないのと同時に、後ろとの連動性もはかってたと思う。マンUが縦パスを入れた時点ではすでに、ウェストハムの守備陣の準備ができてるってことが多かったと思う。前線でしっかりと制限したことで、狙いどころが定めやすくなってた。

こういう前線からの忠実なチェックをベースとした守備によって、ウェストハムは相手の攻撃を中盤で引っ掛けることが多くなったと思う。そうじゃなくても、1つ1つをフリーにしないことでマンUの攻撃陣に効果的な仕事をさせなかった。

マンUは前線からのウェストハムのプレッシャーに対して、効果的に攻撃を組み立てることができなくなった。この点についてはアンデルソンの不在がかなり痛かった気がする。例えば相手が前線から忠実にチェックをしたきたリバプール戦。この試合ではそういう相手のプレッシャーの中にいてもアンデルソンが落ち着いてキープをし、その上でボールを展開してた。そうやってうまく攻撃の組み立てができてた印象を受けた。

これに対してアンデルソンがいなかった今回のウェストハム戦。相手の前線からのプレッシャーに対して落ち着いてボールを展開する選手がいなかった。組み立ての最初のところで相手のプレッシャーに負けてしまう選手が続出。効果的に攻撃のスタートを切ることができなかったと思う。

だから、マンUの攻撃は前線の選手になんとかしてもらおうっていう意図が強くなった。前線に効果的にボールを供給できる選手がいないから、ボールの運び方は1発のロングボールかCロナウドの持ち上がり。立ち上がりは特にCロナウドが低い位置で受けてから自分で持ってくシーンが多かったと思う。

普通にボールを前線につなごうとしても完全に前線任せ。準備ができてるとか相手のマークとの関係はどうかなんてことは気にせずに、とにかく前の選手に預けるってことが多かったと思う。だから、入った時点ですでに不利な状況ってことも多かった気がする。さらに、そこに対するフォローも期待できなかった。

そもそも守備で押し込まれることが多かったわけだけど、中盤で1つタメを作れるアンデルソンがいなかったから、ボールが中盤を通過してすぐに前線に供給された。同じくアンデルソンの不在によって、ここまで書いたように大して質の高くないボールが前線に供給される。これでは前線の選手が効果的にキープしたり仕掛けたりするのも難しい。結果として時間を作れる場所が存在しないことになった。

これによって前線に厚みを加えられないことが多かった。SBもボランチも攻撃に参加できずに、攻撃は前の4人だけに任された。前線には4人しかいないから、当然のようにそれぞれの距離が遠い。もともと個ベースの攻撃をするマンUだけどこの試合では完全に個が分断されてた。個以外の選択肢がほとんどないわけだから、そこに対しては相手の囲い込みが容赦なくやってきてた。結果として途中でボールを失うシーンが多くなってしまい、さらに押し上げが期待できない悪循環に陥った。

こういうフォローの少なさについては前線の動きについても問題があった気がする。そもそも、後ろからの攻撃参加が期待できない状況の中で前線の4人自体も完全に分断してしまっていた。ボールに対するランニングがほとんどなく、味方が打開して抜け出してくるのを待ってるってことが多くなったと思う。ルーニー&テベスが2トップに入ったよきのような動きの多さが完全になりを潜めた。

そういう意味ではサハ&テベスの2トップの戸惑いがあったような気もする。上に書いたような守備面での違和感もあったし、攻撃でもどちらもイマイチ関係性が築けてなかった。サハがCF的に真ん中に居座るは想定内として、テベスも同じように真ん中で待ってた。

昨シーズンのサハ&ルーニーを見ると、真ん中で軸となるサハと動き回るルーニーである程度いい関係が生み出されてた。そう考えるとテベスはもっと動き回ってもよかった気がする。普通にルーニーと組むときぐらいの動きを見せてくれれば、それなりに前線の関係がうまく行ったと思うんだけど。やっぱり連携に難があったか。

とりあえず、こういう形のマンUの攻撃には全く可能性を感じさせなかった。前に人数が少ない、その関係性がよくなくて個が分断、さらに前にいいボールが供給されないから個では攻めきれない。

にも関わらず、前半12分に得点が入る。ウェストハムにとっては不運なことに、前線任せのマンUの攻撃が結果につながってしまった。最初のボールは前線任せの意図の薄いボール(というかクリア)。これをテベスがうまくキープして一気にカウンターで相手ゴールまでつなげたシーン。テベスのキープがスイッチになり、ギグスとCロナウドが飛び出したってことでは前線の連携が生まれたシーンではあった。

この得点後マンUの守備が突如として安定を取り戻す。最後の最後以外はほぼ全ての場所がルーズだったと言ってもいいそれまでの時間と比べると、雲泥の差のある守備の内容が見られるようになった。前線の4枚もしっかりと守備に参加するようになって、CMFの負担が減った。やっとこさハーグリーヴスが自分の間合いで守備ができるようになったのが象徴的だったと思う。

この守備の改善を生んだのがシステム変更だった。上に書いたような、2トップの配置の違和感をはじめとして立ち上がりは前線の形にあいまいさがあったと思う。それが守備のあいまい性につながり、1つ1つの守備が後手後手に回る状況を作り出した印象。

これに対して得点後はシステムを4-2-3-1をはっきりさせた。1トップにサハを置き、2列目にテベス-ギグス-Cロナウドを並べる形(2列目は配置が変わることもあったけど、基本はこの形)。ここで見るべきはウェストハムのシステムも4-2-3-1ってこと。これによってシステム合致が生まれ見るべきところがある程度はっきりした。

マンUの守備陣(前線含めた守備ブロック)は役割をはっきりさせてやると、しっかりと働く印象がある。それまで全く守備をしなかったのが嘘のように前線の選手がしっかりと守備に参加してきた。対応するボール保持者に対するチェック、さらに相手SBの攻撃参加へのケアのために低い位置まで戻ってくるシーンも多かった。それまで自分の前にさえも守備意識を向けなかったのが嘘のよう。

とりあえず、このシステム合致によってマンUの守備陣は落ち着きを取り戻した。それまで浮きまくってた相手選手に対してしっかりと対応できるようになったと思う。それまでは受け手にも出し手にもしっかり対応できてなかったのが、見るべきところをある程度はっきりさせたことで受け手にも出し手にも対応できるようになった。結果としてウェストハムは立ち上がりのように自由に攻撃ができなくなったと思う。

1つの指標はカールトン・コール。立ち上がりは収め放題だったカールトン・コールに対してほとんどボールが入らなくなる時間帯が生まれたと思う。そうなってくると、収まったカールトン・コールとの近さを目標にするウェストハムの2列目の流動性もそれほど効果的に機能しなくなってしまった。

こうやって守備においては当面の目処が立ったマンUだったけど、攻撃は手付かずのまま。当たり前の話だけど、相手の攻撃の勢いを止めたからといって相手の守備の勢いまでもが止まるはずもないわけで、相手の前線からの忠実なチェックは機能し続けた。マンUはそのチェックに相変わらず悩まされ、効果的な攻撃の組み立てができないでいたと思う。むしろ守備の安定後はそれまでよりも攻撃の停滞感が漂った気がする。

その要因の一部となったのはシステム的合致のデメリット。忘れてはいけないのは、マンUにとってのシステム的合致はウェストハムにとってもシステム的合致だってこと。ウェストハムがそのシステム的合致を効果的に利用したことで、マンUの攻撃が停滞してしまう結果になったような印象を受けた。

それまでの時間のマンUは曲がりなりにも前線にボールを入れることはできた。そのボールの質、入った時点での体制はともかく、ボール自体は供給された。個の力があることを考えれば、そこから前線の選手が何か起こしてくれる可能性はなくはなかった。

ただ、システム合致が生まれてからはそういうボール自体が入らなくなったと思う。ウェストハムはそれまで続けてきた出し手に対する忠実なチェックに加えて、受け手に対する対応もしやすくなったと思う。ウェストハムの前線のチェックに見るべき選手がはっきりしたことが加わって、マンUとしてはもともと少なかった前線の選択肢がほぼ0になった。

結果として相手ブロックに仕掛けるボール自体が入らなくなってしまった印象。それまでの時間はマンUの選手にブロック内に入られると最後に多くの人数をかけるような守備に移行(この移行が速かったし、跳ね返す力もあった)することが目立ったウェストハムの守備ブロックが、常にバランスを保ったまま攻撃を受けるような状況ができあがってた。

そういう状態のマンUにとにかく目立ったのがサハの頭狙いのロングボール。それほどプレッシャーがかからない最終ラインから一発のボールを蹴り込むことがとにかく多くなった。そのサハの競り合いのこぼれ球を両翼から絞ったテベスとCロナウドが狙うって形一辺倒になってしまったと思う。でも、残念ながらチャンスにはつながらなかった。

マンUとしては相手の守備におけるシステム合致を崩せなかったのが痛かった。前に書いたエバートンもマンUに併せた守備の対応を見せてきたけど、それはマンUの前線の流動性があっさり破った。同じようにやれば今回のウェストハムのシステム合致もそれほど気にするものではなかったように思う。でも、同じようにはできなかった。

その要因の1つは前線の選択肢の少なさ。これまで何度も書いてるように、中盤で時間が作れなかったことでマンUは後ろからの飛び出しを促進できなかった。結果としてそういう動きによって相手の守備のブロックを崩すようなアプローチが不可能だったし、相手としても見るべきところが少ないから押さえるのが楽だった気がする。

もう1つは横の動きの少なさ。特に前線における流動性がほとんど見られなかった。これがルーニー不在でテベス&サハの組み合わせになった弊害だったかどうかは分からないけど、本来は変則4トップみたいな形でグルグルとポジションを変えるマンUのやり方が皆無だったように感じる。それぞれがそれぞれの場所でのプレーを基本として、思い切った動きをしなかった。

こういう状況のマンUは全体が平行移動して攻撃をしてるような状況。前後の入れ替わり(後ろからの飛び出し)の少なさはアンデルソンの不在、横の入れ替わり(前線の流動性)の少なさはルーニーの不在によってもたらされた部分が大きかったように思う。この2人の不在がチームにかなりの影響を及ぼしたのは間違いない部分だった気がする。

これがシステム合致を裏から見た弊害なわけだけど、単純に表から見た弊害もあったように感じる。マンUの守備におけるシステム合致は守備の安定性をもたらしたけど、次の攻撃を考えると必ずしもよくなかったんじゃないかってこと。

一番分かりやすいのはCロナウド。ウェストハムの左SBのマッカートニーはかなり積極的に攻撃に参加してきた。そのときに対応するポジションはマンUの右SMFCロナウド。マッカートニーの攻撃参加に対してCロナウドはかなり低い位置まで引っ張られる時間が長くなってしまったと思う。

それまでの時間、マンUの攻撃で一番機能してたのはカウンターの形だった。実際に得点シーンもカウンターだったし。そのカウンターの形で重要な役割を担ってたのがCロナウドだった。相手が出てきて空いたスペースでボールを受け、ドリブルで一気に距離を埋めるシーンが多くなったと思う。このカウンターがCロナウドが引かされてしまったことでなりを潜めてしまったと思う。

そういう意味でマッカートニーの攻撃参加は興味深い。そもそも立ち上がりは右SBのニールの攻撃参加が目立ち、マッカートニーは自重気味だった。それはCロナウドは守備に参加せずに前に残る(ギグスは結構戻って守備に参加することが多い。)っていうことがフィルターとして働いたからだと思う。でも、失点後に攻撃に参加してみたらCロナウドはついて戻ってくるじゃないかって話。だったら、後ろを気にせず攻撃に参加できるって状態だったと思う。

だから、途中からマンUの右サイド、ウェストハムの左サイドの主導権を握ったのはマッカートニーだった。Cロナウドは守備意識を高くしたことで、逆に相手の攻撃に勢いをもたらすっていう状況に陥っていた印象。

そして、少なからず同じような状況がピッチ全体で起こった。このシステム合致を作ったのはマンUの得点後。逆に言えばウェストハムが得点を取りに来てる時間帯だった。それまでの時間は圧倒的にボールを支配してたことを考えれば、ウェストハムはすぐにでも追いつきたかったはず。結果として後ろから次々に選手を押し上げて厚みを加えてきた。

それに対してシステム合致を利用したマンUは要所要所を押さえて決定的なシーンまでは作らせなかった。でも、ウェストハムが人数をかけたことで陣地を増やしたことは確かだったし、どちらが主導権を握ったかと言われれば間違いなくウェストハムだったと思う。

これが顕著に現れたのが後半の立ち上がり。この時間帯、ウェストハムは両SBを含めて全体をかなり高い位置に入り込ませた。これに引っ張られて、対応関係がはっきりしているマンUの選手がどんどんと押し下げられていったと思う。そうなれば後は例の悪循環。マンUが跳ね返したボールが相手に渡り、押し上げの時間を作れず、、、、っていう状況だった。

このひとしきりのウェストハムの攻撃を耐え切ったマンUは徐々に攻撃の形を作り始めて、一進一退の流れになった。ウェストハムのソラーノとパーカーが外れたこと、マンUがアンデルソンを入れたことが流れを変えた要因か。とりあえずアンデルソンが入ったことでマンUはボールがいろんな方向に動くようになった。それまでは前線に任せるボールばかりだったのが、横に展開したりっていう質のボールが増えたと思う。その中で押し上げの時間も作ることができて、攻撃に厚みを加え始めたと思う。

だから、ウェストハムの2得点は意外な時間帯に入った。2点ともセットプレーからだったけど、マンUとしては一番苦しい時間を乗り切ったのになんでだって感じ。でも、試合全体の流れから見れば妥当な逆転劇だったと思う。

そういう意味では立ち上がりの両者の違いがそのまま試合全体の流れを決めてしまったっていえると思う。特に守備の質の違いがそのまま出たかもしれない。前線からの忠実なチェックを90分間貫いたウェストハムと立ち上がりの守備が超ルーズだったマンU。これで試合の流れが決まったと言ってもいい。

そういう意味ではマンUはルーニーの不在が大きな影響を及ぼしたと思う。攻撃よりもむしろ守備に関して。立ち上がりから前線の選手がいつものように最低限自分の前の守備はしてれば、こういう流れにはならなかったはず。そのスイッチとなるルーニーがいなかったことで前線の守備が機能せず、仕方なく(?)システム合致の守備に移行。前線の選手は自分の前どころか後ろへの守備も要求されることとなった。それが相手へのプレッシャーの減退を生み、次々に押し込まれる状況を作ってしまったと思う。
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2008-01-06 Sun 16:36
高校サッカー準決勝
【流経大柏×津工】
津工は何もできなかった。津工の試合を見るのは初めてだから何とも言えないけど、解説を聞く限りではショートパスをつなぐチーム。そのショートパスと個の突破を組み合わせる中で攻めて行くチームだと思う。そして、そういう攻撃のやり方はこれまで何度か書いてきた流経大柏の守備にとっては抜群に相性がいい形。

津工は深いところからでもしっかりとボールをつないで組み立てて行こうとする意図が見られた。それに対して流経大柏の1つ1つのチェックをしっかりとやってくる。最終ラインをハーフェイライン付近の超高い場所に設定して、敵陣の深いところから最初の守備を開始して行った。そうやって最前線からの忠実なチェックに対する次のよさがあるのは、これまでにも書いてきたとおり。前線の守備でしっかりと制限をして後ろの出足の速さを促進し、相手がつなごうとするボールの入りどころでことごとく奪う。奪えなくても距離を0にして相手に前を向かせず、そこに対してすかさず周囲が囲い込みに入る。

結果としてほとんどの時間は津工陣地で試合が進んでいった。しっかりとつなごうとする津工のパスはことごとく流経大柏の網に引っかかった。津工としては、つなごうとすればするほど相手にボールを奪われるジレンマに陥ったと思う。足元足元のパス回しは完全に狙われてたのに、その状況を続けてしまった。ウラへの一発のボールをもっともっと多用すべきだったと思う。基本的にほとんどプレッシャーがかからなかった流経大柏の最終ラインはラインを高い位置に保ち続けた。逆に言えば、トップの位置からのしっかりとした守備で流経大柏がロングボールを蹴らせなかったっていう側面もあったと思う。

この高い位置での守備は実際に得点にもつながった。点が入りすぎて何点目かは分からないけど、2得点は最前線で奪ったところから。ただ、流経大柏にとってはあまりにも守備が高い位置で機能しすぎたっていう贅沢な悩みもあった気がする。ボールはことごとく敵陣で奪うことができた。それは相手にしてみれば、全く押し上げの時間がないってことを意味する。だから、奪われたときには守備のブロックがそのままの形で維持されてることが多かった。だから、流経大柏は高い位置で奪っても相手のしっかりと作られたブロックを相手にしなければならなかった。

津工としても後ろのバランスをあまり崩したくなかったのも事実だったと思う。攻撃は2トップ+2OMFの4枚をベースとして行うことが多かったように思う。相手を深い位置まで押し込めば、そこにボランチが絡んだりすることもあるけど。基本は2+2の攻撃、4+2の守備のバランスはあまり崩さなかった。攻撃の時間があまり長くなかったこともあるけど、SBの攻撃参加なんかはほとんど見られなかった。攻撃の際にも大きくはバランスを崩さずに個の突破をベースに攻めきろうっていう意図が見られた気がする。

でも、ここまでも書いてきたようにほとんどは津工の陣地の中で試合が進んだ。津工は4+2の守備と2+2で攻撃どころではなくて、4-4が全員深い位置に釘付けにされてしまっていたと思う。

ただし、当たり前のことだけど津工としてはこういう状態は不本意だった。それを作り出したのは縦の意識が強い流経大柏の攻撃だった。相手が少しでもラインを押し上げようとすると、ウラのスペースに対して一発のボールを蹴り込んでいった。奪ったらまず縦ってのが流経大柏の本来のやり方であって、そのロングボール一発のプレッシャーが津工の守備陣にのしかかってたように感じる。

そういう意味ではこの試合でトップに入った久場は前線で言い動きをしてたと思う。止まって待っているだけではなくて、常に相手の最終ラインと駆け引きをしながら動き回ってた。そこに対してロングボールが出てくるとスピードがあるだけに、相手のマークを離してチャンスになるシーンも多かったと思う。昨日の試合では右サイド基本のプレーが見られたけど、今回の試合のようなトップの位置で常に動き出しを狙うやり方の方が相手にとっては脅威になるように感じた。組み立ての中でも久場の動きを中心として前線での流動性を高めながら、相手の最後のブロックにアプローチしていくやり方が多くなったと思う。

流経大柏はこういうトップへの縦パスをいつものように最初のアプローチにしていたし、実際に4y点目はそういうボールから生まれたと言っていい。でも、今回の試合に関してはそういうやり方にこだわらないバリエーション豊かな攻撃も見せてくれたと思う。自陣に入られたときには、まず縦一発で距離を稼ぐ。そうやって相手を押し込んでおいて、今度は自分たちのよさである高い位置での守備が見られてくる。そういう高い位置で奪ったときには、上にも書いたように相手がベタ引き状態で守備のバランスが崩れていなかったから、単純な縦一発では可能性が薄かったと思う。そういう中で高円宮杯の決勝でも見られたようなサイドへの展開が増えることになったと思う。

このサイドへの展開が効果的だった。津工の守備ブロックは真ん中に寄る。守備を重点的に行うSBは真ん中に絞ってきて、4バックで中を固めるようなやり方が見られた。だから、両サイドへの展開でボール保持者がある程度フリーになれる状況をもたらした印象。そこにSB、ボランチの攻撃参加を加えながらサイドで優位な状況を作り出した。

ただ、そうやってサイドで単純に進攻していくのがポイントだったわけではない。重要だったのはそうやって1度サイドに作った後の逆サイドへの大きな展開。相手は4バックの作り方を見ても分かるように、人数をかけたブロックの一体感をベースとする。だから、1つのサイドに作ると、津工のブロック全体がそのサイドに寄ることになる。そこからの大きな展開によって、完全に薄いサイドに入り込むことができた。相手の大外を有効に利用する攻撃が多かったと思う。実際に先制点は右サイドに相手ブロックを寄せ、真ん中を経由して左サイドの大前を使ったシーンだった。本来は最初にケアするべき大前が逆サイドからの展開を使ったことによって、一瞬フリーにすることができた。

このシーンでは真ん中で経由点になった田口(だと思う)も重要な役割を担ったと思う。この試合での流経大柏の前線は2トップか1トップか微妙なやり方を取っていた。久場は完全にトップの位置だったけど、田口は中盤かトップか微妙な場所でのプレーが多かった。FWにしてはゴール前に入るプレーが少なく(久場とも斜めっぽい関係)、トップ下としては中盤でのタッチが少ない。そういう中途半端な場所でプレーをしたことによって相手としてみればかなり捕まえ状況が生まれた。得点につながったシーンも、DFと中盤の間に完全に浮いてる存在だったと思う。

流経大柏はこういう左右への展開によって相手のブロックを左右に動かした。1つのサイドに相手を寄せてから逆サイドへ展開することによって、相手は再びブロックを動かす必要があるわけだから。さらに上下のアプローチも効果的に利用してたように感じた。何でもかんでも仕掛けていくのではなく、前線が詰まったら1度下に下げる。そこから再び展開するやり方が多かったように感じる。

津工の方としては守備の時間が長くなった上に上下左右にブロックを動かさなければならなくなった。前半はそれでも最後に人数をかけるブロックを形成して最後のところを跳ね返していたけど、後半になって完全に切れてしまったと思う。立て続けの失点シーンはマークもルーズで集中力が切れたとしかいいようがなかった。攻められ続ける内容の中で体力的にも精神的にもギリギリだったように感じる。

結果として沈黙を守っていた大前が4得点の大爆発。ここ2試合は左サイドを基本としたプレーが多かったけど、この試合の前半途中から本来の真ん中に戻してゴールの近くで仕事をする時間が長くなった。後半は相手の守備がルーズになったこともあって、決めるべきところをことごとく決めていったと思う。


【藤枝東×高川学園】
立ち上がりは高川の内容が悪すぎた。4-3-3の各ラインが攻守に渡る分断が起こってしまっていた。特に守備の分断がその悪い内容の要因になってしまっていたと思う。

その守備の分断はトップの守備意識があまり高くなかったことから生まれた。トップの3枚は前線に残しておくようなやり方の中で、守備がある程度免除されてたような印象を受けた。だから、簡単にトップの3を抜けられ、後ろの4-3に仕掛けられる状況が目立った気がする。

この後ろの4-3を考えたときに特に問題になったのが中盤の3だった。3-5-2システムの藤枝東の中盤5枚に対して、どう考えても人数が足りなくなってしまうのは明白だった。さらに、その中盤の選手はボールに寄せる意識を持っている。確かにそうやってボールに行ったところで奪えれば問題ない。でも、ピッチ全体をケアするには枚数が足りなさ過ぎて相手のボールに対しても距離が空きすぎてしまう状況が生まれてた。結果、中途半端な守備になってしまったと思う。

そういう中途半端な守備によってギャップばかりが目立って、中盤がスカスカ状況が生まれた。藤枝東の選手は相手が寄せてきたところでちょっとズラしてやれば、自分の前には完全にスペースが空いている状況が生まれてた。高川のDFだけがはがされて、守備の厚みを効果的に作れない状態に陥ってたと思う。

高川の守備がこういう状態だから、また藤枝東が圧倒的に中盤を支配する展開が生まれると思ってた。でも、実際にはそういう状況にはならなかったと思う。確かに押し込んではいたけど、ボールポゼッション率を圧倒的に高める三鷹戦のような展開は生まれなかった印象(サイドを広く使いながら、広いところ広いところを使うやり方は相変わらず見られたわけだけど)。

その要因は藤枝東がロングボールを多用したから。とりあえずロングボールで距離を稼いでおいて、それから相手のブロックにアプローチを始めるっていう高校サッカー的なやり方が増えた。それによって実際に相手を押し込むことに成功したわけだから、現実的なやり方だったって言える。

これが成功したのは相手の3ラインがバラバラな状況があったから。逆にロングボールを多用することによって相手のラインをバラバラにしたっていうこともあった。まず、前線の守備意識がそれほど高くないからロングボールの出し手はあまりプレッシャーがない状況でボールを供給できた。だから、トップに対してはそれなりの精度のボールが供給されたと思う。さらに、高川は後ろのDFと中盤の関係もはがれてる。だから、競り合いの後のボール藤枝東につながる可能性が高くなったと思う。それでも前との関係を築くためにラインを上げようとする最終ラインに対しては、ウラにロングボールを放り込むことで後ろへの意識を高くさせた。

ロングボールにしろスカスカの中盤を進攻していくやり方にしろ、藤枝東はかなり楽にボールを深い位置まで持っていくことができた。トップの引き出しの動きがよくて前線に起点を作れたのもよかったと思う。そうやって深い位置まで押し込まれれば、高川の中盤も後ろに戻らざるを得ない。それまでは分断していた関係が、今度は悪い意味で一体化してしまった。藤枝東はその相手のラストブロックを崩すことに重点を置いておけばよかったと思う。

そのラストブロックに対してはいい仕掛けができてた。得点シーンがよく表してるように、密集地帯でも質の高いプレーができる個の技術に加えて、ランニングの質もよかったと思う。さらに、後ろからの飛び出しも加えながら、攻撃の人数を増やし近い距離関係を作った。そういうやり方をベースに相手の密集地帯を細かく速いつなぎで打開していこうとする姿勢が見られたと思う。

こういう状況で前半は藤枝東が押し込む展開になった。高川の攻撃を考えると守備に押し込まれてしまった中盤以降とトップの間に大きな距離が開くことになってしまったと思う。そういう状況でトップにボールが出ても、フォローができない状況。3枚は残してるもののそれぞれの距離が遠くて、結局は個の力に頼るやり方になってしまったと思う。そして、そういう個の勝負は藤荏田東の守備陣の土俵だった。

これに対して高川は途中でシステムを変更した。トップの1枚を下げて4-4-2の形に。これによって枚数的には中盤のスカスカ状態は解消されたことになる。でも、実際には大きな変化は生まれなかった。守備ではシステムを変更しても、やり方自体がはっきりしなかった。どこからどういう守備をすべきか?ってことがあいまいだったと思う。結果として枚数だけが増えても、まだギャップが多く見られる状況だったと思う。逆に前線の枚数が1枚少なくなってしまったことで、それまで以上に攻撃のチャンスがなくなってしまったように思う。

これに対しては後半の高川は明らかに守備をはっきりしてきた。4-4-2の組織を作った上で最前線から守備をする意図が強くなったと思う。ここにはトップの選手も守備の一角として機能してたから、4-4-2の3ラインの関係もよくなった。しっかりとコンパクトな3ラインを形成できてた印象。

こういう守備の改善をベースにしながら、後半は高川のペースで試合が進んだと思う。高川の最前線からの守備のよって藤枝東は思ったような攻撃を仕掛けられなくなったし、前半多く見られたロングボールもほとんどなくなってしまった。それだけ、高川の前線のチェックが速かったって言えると思う。攻撃からの切り替えもよかったから、多くの時間で藤枝東陣内で試合が進むことになった。

この守備の改善によって高川は攻撃の形も作れるようになった。守備時に3ラインのバランスが大きく崩れずにいい関係を保ててるから、攻撃でも2トップがはがれるような状況が少なくなったと思う。中盤も効果的に絡ませながら厚みのある攻撃の組み立てができたと思う。そういう中でサイドに起点を作ったことによって、藤枝東のWBを押し込むことにも成功した。

そういう意味で後半は高川のペースで試合が進んだと言ってもいい。でも、実際にはほとんど決定的なチャンスを作れなかったと思う。その要因は高川の攻撃が最終的には個ベースになってしまったから。上にも書いたとおり、個ベースの攻守の1×1の対応関係は藤枝東の土俵。局面局面で個をつぶされ流れを分断されたことで、高川は畳み掛けるような攻撃をすることができなかった。1つ1つの守備の強さをベースとした藤枝東の守備の安定感が光った試合でもあったと思う。

これで決勝は流経大柏×藤枝東の対戦に。流経大柏は高円宮杯決勝と選手権の2試合(計3試合)、藤枝東はインターハイ県予選決勝と選手権の4試合(計5試合)。個人的に今シーズン何度も見たチーム同士の対戦になった。前にも書いたとおり、個をベースとする藤枝東と組織をベースとする流経大柏の対戦。時間があれば展望も書こうと思うけど、興味深い試合になるはず。
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2008-01-05 Sat 23:58
高校サッカー3回戦、準々決勝
【藤枝東×日大藤沢】
立ち上がりは日藤が主導権を握った。その中で大きく異なっていたのは攻撃の組み立て方。県大会の決勝ではボランチを組み立てとして、左右上下への大きな展開を織り交ぜながらの幅のある攻撃を組み立ててたけど、今回の試合では縦への意識が高まってたと思う。

その要因の1つが藤枝東の守備のやり方。今大会では初めて藤枝東が本格的な守勢に回る時間が見られたわけだけど、その中ではブロックを高い位置に設定させるやり方が見られた。最終ラインがかなり高く設定されて、ボランチのラインまでが敵陣に入っている時間も長かったと思う。その上で前線から相手のボールに対するチェックを繰り返した。

結果として日藤は攻撃のスターとなるボランチが自由にボールを持てなかった。相手ブロックとの関係でその組織の中に入り込んでしまうことが多くてボールタッチを増やせなかったと思う。さらに、ボランチにボールが入ったとしてもそこにはすぐに相手のプレスが効いてきた。組み立てのための効果的な展開をするのには余裕がなかった印象。

これに対して日藤の攻撃は縦への意図が強くなった。特に多くなったのは相手の高い最終ラインのウラへ放り込む攻撃。首藤の動き出しのよさが目立ったし、首藤が中盤に相手を引っ張り出して後ろの選手がウラを狙うような動きは日藤らしい縦の動きが見られたと思う。しかも、この縦への展開を素早くやるのが特徴的。前へ前への意識がある藤枝東の守備陣が寄せきる前に一気に縦を狙っていった。

この寄せきる前っていう考え方は縦への放り込み以外の部分にも見られる部分だったと思う。縦への放り込み以外ではサイドに起点を作るやり方が多かったわけだけど、そういう場所にしっかりと数的優位を作るシーンが多かった。もちろんシステム的な相性もあったわけだけど、ボールに対して近い場所に助けを常に置いていた印象。そうやって逃げ場を置くことで、相手が寄せきる前の展開を可能にした。これによって藤枝東の守備と1×1の関係を作らないことに成功したと思う。

立ち上がりの日藤は前線のウラを狙う動き出し(そういう動き出しが全体として多かった)と、そこに対するシンプルなボールの供給によって主導権を握った。藤枝東としては本来の前線での守備を否されてしまって、後ろに引っ張られる形。結果としてだんだんとブロックが下がるシーンが目立ちはじめた。そうやって相手を押し下げながら日藤の方は前線に人数を入れて攻撃の厚みを増していった。

こういう時間帯は守備においても日藤のよさが見られたと思う。前線に人数をかけた後の切り替えの守備がうまく機能した。これは本来的に日藤に見られるもので、守備に移ってからも簡単にはラインを下げず前線からの守備に力を入れていく。そういう中で相手が無理やりに蹴りだしたボールに対しては、50/50の強さを見せてことごとく日藤がものにしていったと思う。

ただ、そういう時間は長くは続かなかった。徐々に藤枝東が盛り返していった印象。その要因は日藤の立ち上がりの内容のよさは、ある意味勢いに支えられている部分が多かったからだったと思う。つまり、1つ藤枝東に攻撃をされると、その時点で日藤のよさは一気に減退して行ったってこと。これは攻撃のやり方に関係している部分が大きい。

例えば藤枝東の攻撃(後述)によって日藤の中盤以降が自陣深くまで押し込まれたことを想定してみる。ちなみに、今回の試合では日藤のDFラインだけがはがされるようなシーンはあまり見られなかった。

そうやって押し込まれた後の日藤の攻撃も基本的には縦の意識が強いものだったと思う。藤枝東の切り替えの守備のよさがあったから、奪った後にも余裕を持って攻撃に移ることができなかったのも事実だけど。とにかく、多くの人数が押し込まれた状況では前線の人数が当然のように少ない。そういう状況では藤枝東が個々の守備力の高さをベースに問題なく守備をすることが可能になったと思う。動きながら周囲を生かす首藤も完全にターゲットになったことで、よさが消えてしまった。

ここにおいて日藤の攻守に渡るよさは消えてしまった。前線が薄く、前後の距離が開いてしまったことで攻撃での日藤の上下の動きが生かせなくなった。同時にサイドも間に合わずに選択肢が狭められてしまった。そして、守備面を考えると日藤の守備は攻撃からの流れを念頭に置いているから、攻撃がよくなければ守備の内容もよくないってことにつながったと思う。高い位置での守備が機能しなくなって、ゴール前まで入り込まれるシーンが多くなった。こういう悪循環に完全に陥ったわけではないけど、こういう傾向が見られたのは確かだったと思う。

それに対して後半の日藤はやり方を変えてきたと思う。守備から攻撃への切り替えの中で一気に前線に蹴りだすボールを減らし、しっかりとつなぐ意図を持ち始めた。その中でしっかりとした組み立てが目立って、左右のサイドを効果的に利用する本来の日藤のやり方が多くなったと思う。

そうやってしっかりと組み立てる攻撃の流れの中では立ち上がりのように前線の人数を増やすことができた。結果、切り替えでの守備も再び機能するようになり流れを引き寄せることに成功したと思う。守備ブロックを作ったときにも、前半のように簡単に押し込まれずに、1つ1つの守備の前への意識を高めることで藤枝東の攻撃のスタートにも積極的にプレッシャーをかけていッ多と思う。

日藤としては主導権を握っている時間帯にしっかりと得点を奪えなかったのが痛かった。ただ、そこには藤枝東の個の力をベースとした守備の強さっていう要因もあったと思う。ある程度深い位置まで入られても、最後のところの競り合いで負けない強さを見せたから相手にいいフィニッシュまで行かせなかった。最後の場所では1×1の意味が強くなるから、そこにおいては藤枝東の守備の個の力が存分に発揮されたと思う。逆に日藤の得点はサイドからのボールに対して、1×1が作れない(要するにフリーになった)シーンだった。

その藤枝東の攻撃についても、日藤と同じくここまでの印象とはちょっと違った。近い場所でのパス回しが減って、もっと一気に距離を稼ぐボールが多くなったと思う。相手が組織を作ったときに、ボールサイドに寄せる傾向があるから、そういう場所で狭いところ狭いところに入り込むと抜け出せないってことを意識してたと思う。

逆にその相手の守備のやり方を効果的に活用した。前の試合から見られ始めた、左右の展開をうまく利用したと思う。1つのサイドで作って相手の組織を寄せておいてからの逆への展開は効果的だった。特に最後のアプローチでの大きなサイドチェンジ(大外を狙うクロス)でチャンスを作り出した。

加えて、今回の試合で目立ったのがトップへのくさびの数。これまでは中盤で組み立ててから、最後の仕上げとしてトップに入れるイメージが強かったけど、今回の試合では攻撃のアプローチの中にトップへのボールが組み込まれてた。トップの選手がDFの前で受ける動きをし、そこにシンプルに当てるアプローチが見られた。

その中で攻撃に深みを与えることができたと思う。これは、とにかく中盤でつなぐ意図が強かった前の2試合と比べると明らかに変わった部分。結果としてトップ下の河井が2トップの近く、ゴールの近くでプレーする機会が増えた。さらに、WBとかボランチの上がりを促進して攻撃に厚みを加えることができたと思う。

そして何よりも大きかったのが個の仕掛けの有効活用ができたことだったと思う。1度トップに当てて、落とすことによって、ボールを受ける選手は前を向いてボールを受けることができた。結果として個の仕掛けがしやすい状況が生み出されたと思う。これまでは受けてから時間がかかりすぎて、相手に距離を詰められてしまうことが多かったけど、今回の試合ではくさびを有効活用することで持ち味である個の力をうまく引き出せてた印象。


【流経大柏×東福岡】
流経大柏のサッカーを見るのは高円宮杯決勝のサンフレッチェユース戦以来。そのときには素晴らしい守備とその守備の流れからの攻撃をベースに優勝。今大会ではそのときの流経大柏の内容を上回るチームが見つけられないだけに、優勝候補の最有力として注目だった。

基本的に流経大柏のやろうとしてたやり方はイメージとは大きくは変わらなかった。最終ラインを高く置いて、コンパクトなブロックを形成。さらにボールサイドに人数をかけることで連動性を持たせやすいような選手間の距離の近さを作り出す。その上でトップの場所からの前に向けての守備が見られる。その1つ1つのチェックにおける個々の意識はもちろん、流経大柏のよさはこの個々の守備を組織に還元する力。最初の守備に対する連動性のよさが見られる。しっかりと最初のチェックで制限をかけて、次で相手の前で奪えることが多い。前の守備によって、後ろの出足の速さが生み出されてると思う。

この流経大柏の守備に関してはシステム的合致を利用してる部分もあると思う。サンフレッチェユースとの試合では相手のダイヤの中盤に対して流経大柏もダイヤの中盤を採用。今回の試合では5-1-3-1みたいな形の東福岡に対して4-2-3-1を採用した。相手が変則的なシステムってことで完全な合致状態にはならなかったけど、相手のSBの攻撃参加に対して左サイドの大前が自陣深くまで下がって対応するようなシーンが多かったことを考えると、ある程度は対面した相手についていくことがはっきりしてくように感じた。2試合しか見てないから分からないけど、相手に合わせながら守備の組織を変えるチームなのかもしれない。

ただ、今回の4-5-1に関しては攻撃の面を考えた部分も大きかったかもしれない。相手のマンマークを混乱させるためか、2トップを両翼に置く形になっていた。その代わりにトップの位置にはMF登録の田口を置いて軸とした。そこに最初に1つ収めることことで、攻撃のスタートが切られることが多かった印象。その上で2トップがサイドから斜めに入ったり、前線の配置を入れ替えるポジションチェンジが見られたと思う。そこにボランチの飛び出しを加えながら、攻撃に厚みを加えていった。

その流経大柏の攻撃の内容も印象としては高円宮杯と似たものだったように思う。とにかく縦への意図が強い。サイド利用は多いけど、横パスはほとんどない。サイドに出すときには前方に斜めの質のボール。後ろへのボールに関しても、1度トップに当てた後の落としっていう攻撃的な意図があるもの以外にはほとんど見られなかったと思う。奪ったら一気に縦に向かう切り替えの速さは健在だった。どちらかと言えば、流経大柏が主導権を握ってたと思うけど、しっかりとポゼッションするっていう意図はあまりなかった気がする。

ここまで高円宮杯の内容も含めて書いてきたように、高い位置からの組織的に洗練された守備で奪い、切り替えの素早さで一気に縦縦に進み(真ん中に限定されるわけではない。トップも動きながら両サイドにも起点を作る)、戻りきる前の相手の組織に仕掛けるのが流経大のやり方。ただ、今回の東福岡はこういうやり方の流経大にとっては相性の悪い相手だったように感じる。

東福岡は上にも書いた通り、5バックシステムで完全に守りに入った。当然のように攻撃で一気に押し上げるようなやり方は取ってこなかった。だから、流経大柏が持ち前の前線からの守備でうまく中盤で奪ったとしても、その後の攻撃に効果的につなげるのは難しかった。流経大柏は切り替えのスピードを上げて組織が整う前に攻めきる形だってのは上にも書いた通りだし、今回の試合でもそういう切り替えの速さが見られた。ただ、その時点で東福岡の守備が大きく崩れてることがなかったと思う。後ろの重心を置いた内容の中で、攻撃時に簡単に後ろが薄くなるってことを防いでたから。そして、そうやって受ける体制を作られたときに攻めるのは流経大柏の形ではないように思った。

それでもまだ、中盤で狙い通りの守備ができているときはよかった。最後の最後に人数をかけた東福岡の守備ブロックに対して、なかなかシュートに行くことができなくなったけど、ボールは支配していたし、敵陣深くまで進攻していくことができた。でも、時間とともにそういうやり方がうまくできなくなって言った気がする。

その要因は東福岡の攻撃のやり方にある。東福岡は立ち上がりはそれなりにつなぐ意図を見せていた。そういうパス回しを狙われて、相手の守備のよさによって途中で引っ掛けられるシーンが多くなった。それを見てか、時間とともにロングボールで一気に距離を稼ぐボールが多くなった。前線にはトップ(と両サイド)を残して後は全部引く。トップに対して一気にロングボールを放り込み、相手が下がったところで後ろが押し上げてくるようなやり方が多くなったと思う。そうやって距離を稼いだ後にサイドに展開するやり方も目立ってた。

このやり方に対して流経大柏は本来の守備が見られなくなった。本来の守備の勝負どころである中盤の場所を簡単に飛ばされたわけだから。さらにコンパクトなブロックを作るために高めに設定したラインのウラに単純なボールを放り込まれ続けた。その内にだんだんと守備の意識が後ろに向かってしまうのは必然だったし、ロングボールに対してDFだけがはがされる状況が生まれる中でコンパクトさが失われる結果になってしまったと思う。

これが前半の途中から東福岡のペースになった要因。ロングボール攻勢で流経大柏のブロックが押し下げられ、そういう状況を作ってから東福岡は後ろの選手を押し上げて行った。そういう流れの中で流経大柏は最後のブロックの堅さも見せてくれたように思う。押し込まれる状況は意図しない形だったとは思うけど、それでも最後の跳ね返し力で相手に決定的なチャンスは作らせなかった。東福岡の攻撃が基本的にあまり厚くなかったってのもあるんだろうけど。

流経大柏は危なげなかったと言っていい。東福岡もラストに人数をかけたブロックをベースとしての守備の堅さも見られたけど、やっぱりチャンスを作ったのは流経大柏だった。大前が抑えられても、久場のスピードを利用しながらゴールに迫っていった。逆に守備では不本意なやり方だったのにも関わらず、安定感を見せてくれたと思う。こういう点を見るとやっぱりチームのベースは守備だって思われる。さすがに、チャンピオンチームだと思う。


【藤枝東×三鷹】
両チームの初戦の内容を比べると圧倒的に三鷹が優勢だった。個が分断され勝手に相手の守備もうに引っかかっていくようなイメージだった藤枝東に対して、三鷹は後ろの飛び出し、流動性をベースとしながらいい内容の攻撃を展開してた。でも、その後の両チームは対照的な展開。1回戦の内容がどんどんと好転して組織としてのよさを見せていった藤枝東と守備の時間が長くなる中で1回戦のような厚みのある攻撃ができなくなって行った三鷹。そういう両チームの対戦だった。

立ち上がりは蹴り合いの試合になった。攻める藤枝東と守る三鷹っていう構図、さらに藤枝東にはその後の切り替えのよさもあるだけに三鷹が蹴り出しまくるってのはある程度予想できた。でも、藤枝東が蹴り出すっていうのはある意味では予想外であり、大会内で明らかに変化が生まれた点だったと思う。

この藤枝東のロングボールの意図は単純に相手のブロックを押し下げたいってことにあったはず。立ち上がりの三鷹は自陣にしっかりとバランスをしっかりとしたブロックを形成していた。そういうバランスをベースに中盤以前でも藤枝東のボールに対して、しっかりとプレッシャーをかけてきた。藤枝東としてはそういう形では攻撃がやりにくいし、何よりも相手の守備の流れからの攻撃が怖い。そういう守備時のバランスがいいと、攻撃時の飛び出し、上下の連動がしやすくなるわけだから。縦のバランスが崩れさせた方がそういう心配がなくなる。そのためにロングボールで相手のブロックを崩しに言ったんだと思う。

結局、この蹴り合いの中で段々と三鷹のブロックが押し下げられていった。前線の厚み、個々の技術で上回った藤枝東の方がロングボールの実効性を高めてたから、ある意味では必然だったと思う。そして、そうやってある程度まで相手を押し込み陣地を増やしたところで藤枝東が本来のやり方に変更。そして、この組み立てのやり方がこれまでの中で一番いい内容だった。個と組織のバランス、中長短距離っていうパスの距離、サイドと中の使い方、ランニングの質のバランスが最高だったと思う。

相手をある程度下げからは左右のサイドを一杯に使った展開が見られた。片方のサイドに起点を作り、相手が狙いに来たところで逆のサイドへ。さらに前回の試合から多くなりはじめたくさびのパスも織り交ぜる。そうやって左右真ん中と起点を分散させ、さらに横パスに縦パスを織り交ぜることで相手のブロックの低い場所に押し込んだ。パスの質も短短長のリズムでさまざまなバリエーションを増やしたから、相手に完全に狙いどころを定めさせなかった。結果、圧倒的なポゼッションが可能になったと思う。

こういうパス回しを可能にしたのは、ボールに対する動きの質がよくなったたからだって言える。味方が囲まれているときのフォローの遅さをはじめにまだまだランニングの質に不満が残るところは多いけど、1戦目から比べると明らかに走りの質のバランスは改善されてきている。受けに来るような近づくランニングとスペースで受けるような遠ざかるランニングの質がバランスよく織り交ぜられている印象。特に遠ざかるランニングが多くなってきていることで、ショートパスにこだわらずに一発で相手のブロックに仕掛けるようなパスが引き出されているように思った。

そして、こういうパス回しが個の力を引き立てる。パスを回しながら広い場所に入り込み、チャンスがあれば積極的に仕掛けていくような姿勢が目立った。そのときに個が第一選択になってないのがよかったと思う。個での仕掛けにこだわり、窮屈になったら逃げるようにパスを出していた初戦と比べると明らかに違う場面。あくまでもパスは少ないタッチで回りつつ、チャンスがあれば仕掛けるっていうようなバランス感覚が生まれたと思う。逆にパスにこだわる姿勢ではないのもいい部分。

前にスペースがあるときにはもちろん、1×1のときには積極的に仕掛けていく姿勢が目立った。この試合に関しては数的不利の状況も個の力で打開してしまうシーンが目立った気がする。ただ、それはあくまでも相手との個の力差があったから。今後はやっぱりもう少し早くフォローに行きたいところ。とりあえず、効果的な組み立てと個の力差によって絶対的に試合を支配できてたのは確かだと思う。

正直なところ、三鷹としてもそういう個の力差は感じてたはず。ただ、圧倒的な粘り強さで最後の最後を跳ね返し続けたのは素晴らしかったと思う。精神論はあまり好きではないけど、本当にあきらめない姿勢というか、最後まで集中するような姿勢が見られた。結果として流れの中では1失点っていう内容とは不釣合いな結果がもたらされたように感じた。

ただ、やっぱり初戦のときに懸念材料に挙げていた守備の問題が浮き彫りにされたように思う。正確にはラストの堅さがあるわけだから、守備と攻撃のやり方の相性の悪さって言った方がいいかもしれない。後手後手の守備に回る中で最後まで持ち込まれる状況が続いてしまった。

そして、この最後まで押し込まれる守備ってのが三鷹の攻撃のやり方とは相性が悪い。基本的な三鷹の攻撃は上に書いたように縦の関係性を重視するものだと思う。2回戦のように縦1発攻勢で勝ち上がった試合もあったけど、それは本来のやり方ではないはず。何よりも2トップのタイプ的にロングボール1発でなんとか打開できるような攻撃には向いてないと思う。

そういう意味で今回みたいに中盤以降が完全に引かされる状況は好ましくなかった。トップがはがれてしまって、跳ね返しても跳ね返しても自分たちの攻撃に移ることができなかった。そうやって守備のバランスを整えられないっていう悪循環が生まれてしまった印象。本当は三鷹の攻撃を考えたら、中盤で引っ掛けるような守備をしたいってのは1回戦のときも書いたとおりだった。

対して、後半は修正を加えてきた印象。それは守備時に不用意に中盤のラインを下げないってこと。前半は中盤が完全にDFと一体化してしまう状態が目立ったけど、後半は中盤をそう簡単には一体化を作り出さないように意識してた。結果として守備時にはDFラインだけで守ることを余儀なくされるシーンもあったけど、攻撃でのバランスは取ることができた。結果として近い関係のパスが回って、敵陣深くまで入り込むシーンも見られ始めた。少なくとも立ち上がりはそういう姿勢が見えていたと思う。

それでもやっぱり最終的には個の差が大きかった。数的優位を作っても打開されてしまうのは痛かったと思う。初戦では藤枝東の個ベースのやり方に懐疑的ではあったけど、やっぱり個の力の重要性を実感させられる試合になった。そういう意味では組織としてのやり方が素晴らしい流経大柏との決勝を見てみたい。おそらく高円宮杯的なクラブユースと高校の試合みたいな展開が生まれるような気がする。加えて、準決勝に残った残りの2校のサッカーに明日は注目してみたい。
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2008-01-03 Thu 00:17
高校サッカー2回戦
【藤枝東×室蘭大谷】
藤枝東の攻撃の内容の好転が明らかに見られた。前回の試合では個の分断、狭い場所への限定っていう部分を中心に藤枝東の攻撃の悪い部分ばかりを挙げたわけだけど、今回の試合ではその多くの部分に明らかな改善が見られた。

その改善のもっともベースになっていたのがボールなしの動きの量と質の両面での改善だったと思う。組み立ての中での引き出しの動きが多くなり、結果としてスムーズな展開が可能になった。前回の試合では個々の保持時間が伸びてしまう傾向が見られたけど、今回はボールなしの動きの改善によって少ないタッチでのパス回しも見られた印象。

さらに動きの質の改善による人数的な厚み(後ろからの飛び出しも豊富だった)も手伝って、攻撃の選択肢が多くなったと思う。そうやってパスの選択肢が増えたことによって、個人の突破にも実効性が生まれた気がする。相手としても個だけの突破しかない状況では守備の勝負どころを定めやすい。それがパスの選択肢ができたことによって相手にとっては押さえるべきところが多くなり、必然的に個の突破に対するケアに思い切って行けない状況が生まれた印象。

こういう選択肢の増加と少ないタッチでのリズムのいいパス回し、さらに人の動きを生んだことで相手の守備にしっかりと対応しやすい場所を作り出させなかった。結果として相手に守備の勝負どころを定めさせない攻撃のやり方が見られた。室蘭大谷も後で書くように守備のよさが見られたけど、それをかいくぐって深い位置まで藤枝東が進攻することが多かった。

相手に狙いを定めさせないっていう意味ではピッチを広く使う意識が生まれたのもよかった部分だったと思う。前回の試合では狭い場所狭い場所に入り込んでいってしまって、相手にとってはかなり守りやすい状況を作り出した。対して、今回の試合では左右のサイドを広く使う展開が見られた。1つのサイドで詰まれば、1発または真ん中を使うことで広い逆サイドに展開するやり方が多かったと思う。結果として相手のブロックに横方向の間延びとかDFと中盤の関係のズレを生むことが多かったと思う。

さらにトップの動きの質によるアプローチができたのもよかったと思う。前回より単純に放り込むボールが多くなったし、何よりもウラに抜ける質の動きが多くなったのは効果的。前回の相手もラインを高めに保ってきたけどそういうウラへのアプローチが少なかったのが不満だった。今回はその反省を踏まえて、縦方向のアプローチもできてたと思う。

こういう藤枝東の攻撃に対して手を焼いていた印象の室蘭大谷だったけど、上にも書いたとおり基本としてた守備のやり方は悪くなかったと思う。室蘭大谷の守備は自陣に4-4-2のきれいな3ラインを形成して受ける形。それぞれのラインの関係性もよかったと思う。

最前線の2が相手のボールをうまく制限するプレス、ポジショニングが見られて、中盤が次を狙いやすい状況が生まれた。トップが戻ってきて中盤の守備を助けるシーンも多かったと思う。そういう中盤で効果的に奪えなければ4-4でバイタルを締めるやり方を取ってきた。そうやって相手の最後のアプローチをつぶす意図があったと思う。

でも、今回の試合ではその室蘭大谷の守備の質を藤枝東の攻撃が上回ったと思う。内容としては室蘭大谷の守備も香川西の守備も大きな違いはなかったと思うけど、明らかに今回の方が藤枝東の攻撃にスムーズさが見られた。それだけ初戦は堅さがあったってことか。

室蘭大谷の守備は狙いどころを定められない中で押し下げられた。そのときにはエリア前の4-4のところでは絶対に止めようとする意識が強くなった。結果として危ない場所でのファールが多かったと思う。その内の2本をきっちりと藤枝東が決めて、試合の流れを決定づけた。

室蘭大谷としては本来の高い位置のコンパクトな4-4-2の3ラインを維持できなかったのが痛かった。相手の攻撃に押し込まれ、エリア近くまでそのブロックが押し下げられた。そして、そこでは体勢の有利不利に関わらず守備の勝負をするしかなくなった。その中でファールが増えたって展開だったと思う。

そして、この押し下げられたブロックは攻撃にも影響を及ぼした印象。そもそも。室蘭大谷の攻撃パターンは大きくわけて2つ。1つはトップの宮澤に当ててからの展開。もう1つは相手のウラ、3バック脇に蹴りだす1発の放り込みだった。

そのうち最優先はトップの宮澤への縦パスだった。その宮澤に入った時点で2列目以降が飛び出して、攻撃に絡むっていう形が立ち上がりには目立った。ただ、これはあくまでも守備のバランスのよさがベース。4-4のブロックが押し下げられてしまってからは、宮澤に収まったとしても周囲が助けに行けない状況が生まれてた印象。

そして、その中で藤枝東の守備の強さが見られた。藤枝東の守備は個々の強さが多く見られたと思う。1×1の状況ではボールを奪える強さが目立った。これは最前線(切り替えのとき)から最終ラインまでに共通して見られたこと。もちろん、その1×1を助ける囲い込みのよさも見られたけど、あくまでもベースになってたのは個々の守備力の高さだったと思う。

だから、主導権を握っている時間には藤枝東の守備がことごとく機能したと思う。相手が前に人数をかけられなかったから、数的不利の状況にならずに個々の守備力が存分に発揮された。逆に後半に相手が出てきた時間には押し込まれることが多くなった。相手の前線に入ってくる人数が増えたことで、1×1の強さがそのまま発揮できなかった。ただ、最後のところでは本質的に1×1の強さが要求されるわけだから、多くの場合では跳ね返すことができてた印象。失点シーンは左右に振られたことで中が空いてしまったシーンだった。

次の藤枝東の相手は日藤。日藤のサッカーは県大会の決勝を見たから、ちょっとまとめておこうと思う。
http://himajin0112.blog101.fc2.com/blog-entry-167.html

まず、キープレイヤーは1トップ気味の首藤。組み立てでは起点となるボールを引き出しのよさが見られ、フィニッシュ段階では中盤的になって2列目の飛び出しを促進する。首藤のどちらのよさにも後ろの連動が必要で、そういう後ろからの飛び出しのよさが見られる。

さらに組み立て段階では大きな展開を効果的に活用する。ボランチの2枚が視野の広さで広い場所を見つける。同時に長いボールの精度の高さがあるから効果的な展開につながる。右に相手を集めて、逆サイドの広い場所に浮いたドリブラー河瀬を利用する展開も効果的。

守備は切り替えからの流れでの高い位置の守備とブロックを作って受けるやり方。切り替え後はすぐにラインを下げずに高い位置での守備を念頭に置く。ここでは個々の守備意識がベースになる。

そういう場所を抜け出された時点で、低い位置での4-5-1作り。ここでも最終ラインを下げずにコンパクトな組織を作り、ボールサイドに寄せることで横の近さも生む。そうやってブロックに入ってきたボールに対して近さを利用した守備が見られる。

弱点となりうるのは高い場所に設定されたブロック。当然のようにウラに1発のパスを通されると危険な状況に陥るだけだけど、そうやって後ろに向けての守備が要求されたときにDFだけがはがされるシーンが目立つ。藤枝東にとってはここまでの2戦以上に単純な放り込みが要求されるかと思うけど、つなぐ意識が強いだけにどうか?


【三鷹×矢板中央】
両チームが攻守の切り替えを素早くし、しかも縦へのスピードを上げたことでボールの行き来の激しいスピーディーな展開になった。その中で三鷹のサッカーの内容には前回とはちょっと違った面が見られた印象。

この試合の三鷹は前線の少人数で攻めきる意図が強くなった。前回のように1度前線に起点を作り、後ろの飛び出しを促進させるやり方は見られなかったと思う。前線に収めるというよりも、相手のラインウラに一気に蹴り出して手数をかけずに攻めきる意図が強かったように思う。

これは前回よりもカウンター質の攻撃が多くなったことに起因すると思う。矢板中央が攻撃で前線に人数をかけ、結果として三鷹の守備ブロックが深い位置に押し込まれることが多くなった。そういうときに前線に1度収めて、後ろが一気に出て行くってのはある意味難しい。そういう攻撃は前後がコンパクトになってるからこそ可能なわけで、後ろが押し込まれて前後の距離が開いてしまった状況では機能しなかったと思う。距離が遠いことで最初の縦パスの収まりが悪くなるし、後ろからの人数をかけた飛び出しにも時間がかかる。

だったら、相手の組織ができる前の段階で攻めきってしまおうっていう意図があったんだと思う。前後の距離が遠い中では、それが機能したとしても1つ当てての飛び出しっていう手数をかけている間に相手の組織が出来上がってしまう。にも関わらず、機能する保障もないってことであえてその方法を取る必要がなかった印象。

こういう三鷹の攻撃のやり方を許さなかったのには、矢板中央の守備のよさがあったのも事実だった。切り替え後最初の守備が効果的に効いて、三鷹の最初のボール保持者は自由にならなかった。結果として余裕を持った組み立てができずに、1発のボールが増えたんだと思う。さらに、切り替えでの受け手に対するケアも厳しくできてた。三鷹がトップに収めようとするボールを入れる瞬間に、受け手の選手を完全につぶして起点として機能させなかった。三鷹は前線に入ったとしても、後ろが飛び出すような時間を作るのは難しかったと思う。

ただ、三鷹はしっかりと組み立てたときには本来の厚みを加えたいい形が生まれてたと思う。前線で時間を作る中で、後ろからの飛び出しによって厚みを生み出し、前線に近さを作る。その中での動きも豊富にしながら、少ないタッチでパスが回る状況を作り出した。だから、矢板中央としては組織を作っての守備(つまり、三鷹が組み立てる)のときには狙いどころが定まらずに、1つ1つの寄せがルーズになることが多かった印象。

対する矢板中央の攻撃は前回の試合で三鷹のイメージと似たやり方だった気がする。1つトップに起点を作って、後ろから厚みを加えるやり方。システム的に前線が3枚っぽかったから、トップと近い位置に選手を配置することができてたと思う。そうやって前線に人数を増やす中で相手の守備ブロックを押し下げることも多くなったと思う。

相手のブロックを押し込む意味では矢板中央の左右の展開も効果的だった。三鷹の守備はボールへの意識が高い。ブロックに入ったところで一気に囲い込むやり方もそうだけど、相手が片方のサイドに起点を作ったときに、そのサイドに人数をかけるやり方が見られる。そうやってボールサイドに寄ることで守備の連動性を高め、スペースも消してる印象。

逆に言えば、逆サイドへの展開によって広い場所を使われるのも事実。矢板中央は1度片方のサイドで作ってから、逆へ展開することで広い場所を効果的に使った。三鷹はそういう展開に対して素早いチェックをかけられる状況にないから(ボールサイドに人をかけてて)、結果全体のブロックを下げて受けることが多くなる。そういう展開から余裕を持った組み立て、時間を作ることでの後ろからの飛び出しを生み出したと思う。そうやって前線に人数をかけた。
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2008-01-02 Wed 02:43
天皇杯決勝:サンフレッチェ×アントラーズ
<サンフレッチェ:3-5-2>
FW:佐藤-平繁
MF:高萩、服部-森崎浩-森崎和-駒野
DF:盛田-ストヤノフ-槙野
GK:下田

<アントラーズ:4-4-2>
FW:田代-マルキーニョス
MF:野沢-青木-小笠原-本山
DF:新井場-大岩-岩政-内田
GK:曽ヶ端

今回の試合でサンフレッチェの守備の問題の一端が見えた気がする。もちろん、気がするだけなのかもしれないけど、ちょっと気になったところがあった。それはガンバ戦の立ち上がりの時間に見られたような、前後の分断状況にも関係してくる。

そもそも基本的な組織は全員を自陣に戻して作られる。その中でFWの守備意識の高さが見られるし、当然のように自陣に守備の厚みを築ける。さらに当初の組織作りでは最終ラインを下げずにコンパクトなブロックを作ることができてる。

局面を見ると中盤では相手ボール保持者に対して最低1枚が対応しに行こうとする。ガンバ戦のようにある程度見るところをはっきりさせようとする形は確認できなかったけど、相手の中盤のボール保持者を完全にフリーにするのは避けようとする対応が見られた。そういう中盤の守備に対して後ろはしっかりと人につく。特にトップに入る縦パスに対しては、しっかりと体をぶつけての対応が見られたと思う。

こういうサンフレッチェの守備を見てみると、大きな問題は感じないのが正直なところ。全体の組織の作り方も、局面局面の守備に関しても。これは前回のガンバ戦を見ても感じた部分であって、実際に最多失点の原因をつかみきれずにいた。

ただ、最初にも書いたように今回の試合を見る中でちょっと気になった部分が露呈してたのも事実。それが実際に最多失点につながったかどうかはともかくとして(実況、解説の話を聞く限りでは、サンフレッチェの天皇杯での守備はリーグとは切り離して考えた方がいいようなニュアンスだった)、少なくとも今回の試合では危険な状況を生む要因の1つになってた部分があったように思う。

それは全体の守備が無難すぎるってこと。上にも書いたように、1つ1つの守備の要素には大きな問題を感じない。ただ、全体として見てみるとその1つ1つの要素が全て無難にこなされてるのが感じられた。要するに守備のストロングポイントがないってこと。全ての守備が平均的にこなされてて、大きな問題は感じられないけど絶対的な強さも感じられないイメージだった。

単純に、前線か?後ろか?っていうことで考えてみる。例えばレッズは前:後1:9ぐらい。前の守備が破綻しても後ろで守りきれる強さがある。逆に後ろが破綻したら大変なことになるけど、そこは守備のストロングポイントであって、そう簡単には破綻しない。

この単純化をサンフレッチェに当てはめてみると、前:後=5:5ってイメージ。平均的に守備ができている分バランスがいいように見えるけど、実際にはそうとも言えない。前か後ろかのどちらかが崩されれば、一気に守備力は5になる。そして、前も後ろも同じように破綻の可能性を秘めてる。

実際にはこれほど単純ではないけど、サンフレッチェの守備には悪い意味での平均化が見られたのは事実。中盤ではボールに対して寄せる意識はあるものの、厳しく行って奪う意図は少ない。ガンバ戦のときにも書いたように、あくまでもボール保持者をフリーにさせないイメージ。逆に後ろの守備に関しても1つ1つのところで相手選手に対応してるものの、絶対的に跳ね返すほどの厚みは感じられない。

ただ、ガンバ戦のときには後ろに絶対的な堅さを感じたのも事実だった。ただ、今回の試合を見てみるとサンフレッチェの守備らしさってことになるのかは微妙な気がする。上の単純化を使うならば、ガンバに押し込まれて前+後=10っていうブロックができたのかなって気がした。ただ単に、中盤がガンバに押し込まれたことによって勝手に生まれたってことなんじゃないかと。

これにはガンバの前線詰まりも関係してた。ガンバの選手が次々に前線に入ることで、サンフレッチェは自動的に後ろの堅いブロックが形成。そして、ガンバは前線の選手が動かなかったことで勝手にスペースをつぶして行った。サンフレッチェの守備ブロックは最後のところで待っていれば相手が勝手に引っかかってきてくれるイメージだったってのは前にも書いたとおり。

逆に立ち上がりにサンフレッチェの守備分断が見られたときには、ガンバの攻撃もいい意味で分断(組み立てとフィニッシュの区別がついてた)時間帯。ガンバのFW(フィニッシュ)がFWとして、中盤(組み立て)は中盤として機能したことで、サンフレッチェはストロングポイントを作れなかった。要するに5:5の状況が生まれたわけで、それが前後の分断として表れてしまったんだと思う。

そして、こういう守備の問題が隠されているサンフレッチェにとってアントラーズの攻撃はかなり相性が悪かった気がする。サンフレッチェ自身の問題によって守備の勝負どころがはっきりしなかったのに、アントラーズの攻撃のアプローチによってさらに守備の勝負どころがうまく定まらない状況が作られてしまったように思う。

アントラーズの攻撃のアプローチについてはこれまでも書いてきた通り。キーワードは前後左右のアプローチってことになると思う。そして、その内実は人的な部分とボールの動きの部分っていう2つに分けて考えることができる。

人的な部分としては上下方向への動きの多さと左右方向への動きの多さ。要するにトップの場所の出入りの激しさと、サイドでの出入りの激しさっていうことが挙げられると思う。そして、そういう前後左右の流動性を利用した、前後左右へのボールの動きが生み出される。基本的には組み立て時の横の展開と、フィニッシュに向けての縦のくさびってことが多いと思う。もちろん、縦に1つ入れて攻撃のスタートとするっていうやり方も多いし、サイドからのクロスでフィニッシュにつなげるってこともあるわけだけど。

1点目はまさにこの前後左右のアプローチを利用した得点だったと思う。組み立ての段階でかなり左右に振る大きな展開を織り交ぜ、右サイドに上がってきた内田がフリーに。そして、その内田がくさびをマルキーニョスに入れることで横のアプローチから縦のアプローチへの転換しスピードアップを図ったシーンだった。

横の利用についてはSBの攻撃参加に加えて中盤(場合によってはトップ)が入れ替わりサイドに流れることで厚みを増す。今回の試合では横方向の大きな展開がかなり効果を発揮してたと思う。

対して縦の利用はトップの動き。マルキーニョスが下がって受けるプレーとか、チャンスにもつながった田代のウラを狙う動き。本来的にはここに中盤が絡んでくるのが理想なんだけど、今回の試合ではあまり見られなかったと思う(疲れのせい?)。

それでも人とボールによる前後左右のアプローチはサンフレッチェの守備を崩すのに効果的だったのは確かだった。上に書いたような左右への大きな展開によってサンフレッチェの中盤のチェックを無力化した。広いサイド広いサイドを利用することで、相手の中盤に寄せをさせずにフリーな選手を作り出した。同時に横の間延びも誘って真ん中を空けて言ったと思う。

そして縦のアプローチによって相手の最後の堅さを許さなかった。ガンバのように前線が詰まった状況だったら、サンフレッチェの最終ラインは大きくバランスを崩さずに対応できたはず。でも、中盤に降りて行って受けたり、ウラを狙うっていうやり方の中で相手の最終ラインのバランスを崩していった。人につく意図が強いサンフレッチェの守備陣はしっかりと動きにつくことで、ラインから引っ張り出されるわけだから。それから前線で動きを作り、何でもかんでも人数を入れなかったことで相手の最終ラインとDFラインの張り付きも防いでた印象。これは中盤のパス回しの中で相手の中盤を引っ張り出したのも大きかったと思うけど。

こういう流れの中でアントラーズの一方的な試合になる可能性もあったと思う。実際にアントラーズの先制点まで、サンフレッチェは守備の勝負どころを決められない不安定さが見られ、ボールも支配されてしまった。ただ、実際にはそういう流れにはならなかったと思う。

その要因としてはアントラーズが先制点後、明らかにペースダウンしたから。極端なことを言えば、前半8分の得点後はもう試合を閉めに行ったっていえるぐらいだったと思う(さすがに、言い過ぎか?)。

それがまず見られたのは守備面。立ち上がりは最前線から追い掛け回す守備のやり方が見られたと思う。そうやって相手の最終ラインのボール保持者に対しても余裕を持たせなかった。そして、そういうトップの追いかけに対して次のところも高い位置で連動して行った。そういう激しい守備によって相手に試合の主導権を握らせない意図があったと思う。

そういう意味では得点に関係なく、ある程度の時間帯になったら守備のペースダウンを図るつもりだった可能性もある。でも、今回の試合では事実として得点の前後での守備の質が変わった印象。

得点後の時間は受けるイメージが強くなった。切り替えでの守備のよさをベースとして、まず組織を作るっていう意識が強く表れてた気がする。トップの2枚も自陣近くまで戻って3ラインの一角になった。だから、相手の最終ラインは立ち上がりと比べるとかなりフリーでボールを持てるようになってたのが象徴的だった。ただ、同時にサンフレッチェはその最終ラインから相手ブロックに仕掛けるボールがほとんど入れられなくなったと思う。横パスばかりが続いて、攻撃のスタートが切れなかった。

この要因はアントラーズの守備の組織作りのうまさにあった印象。4-4-2の3ラインをコンパクトなブロックを基本として相手の縦へのコースをしっかりと締めた。さらに、この後ろの4-4のボールサイドを上げることで斜めのブロックにして同時にボール保持者に対しても間接的なプレッシャーをかけてたと思う。この斜めブロックによってアントラーズの最前線が3トップみたいな形に見えることが多かった。サンフレッチェとしては、こういうアントラーズの組織作りに対して仕掛ける活路を見出せなかったと思う。

こういう守備ブロックを基本として、スイッチが入ったところで一気に守備のスピードアップが図られるっていうやり方が見られた気がする。ブロックに仕掛けられたところでは当然のようにしっかりとチェックがかかる。そして、それに周囲が連動することで素早い囲い込みが見られたと思う。これは1度組織を作ったことによって生まれた近さがベースとなる部分もあるけど、前線からの守備に見られるような個々の守備意識の高さが本質的なところにあるのは事実だと思う。

さらに前半に関しては1度組織を作ってから、前に対する守備をしていくことも多かった。相手が前線への入れどころに迷ってもたついたところで一気に守備が開始されることが多かったと思う。多くの場合では斜めに配置された中盤の1枚(単純に最前線のFWってこともある)が一気に距離を詰めるのが守備のスイッチ。そして、そのスイッチが入った時点で周囲の選手が一気に活動的になる。1度作ったブロックから次々に飛び出して相手の選択肢を削って行く。勝負どころと決めたら、守備ブロックを押し上げて一気に畳み掛ける守備が見られたと思う。その中でほとんどが高い位置でのカットにつながってたのが素晴らしかったと思う。

そして、遅ればせながら感じたのはアントラーズの守備のよさはこの緩急にあるってこと。シーズン当初のアントラーズはこの試合の立ち上がりでも見られた最前線からの追い掛け回しをベースとした守備をしてた。そして、前線から個々の守備意識が高いからそういう守備がしっかりと機能して、高い位置でのカットが目立ってた。

個人的には最近までこのイメージを引きずったままアントラーズの守備を見てきてた。実際に前線からの守備は素晴らしく機能してたわけだから、それがある意味ではベストのやり方だと信じてた。結果としてシーズン終盤のガンバ戦、レッズ戦、フロンターレ戦は、力関係とか戦術的名意図からあえてそういう前線での守備を捨てて、受けるイメージを強くしてるんだと思い込んでた。

ただ、実際にはいつの間にかアントラーズの守備のベースは組織作りの受ける方に変わってたんだと思う。シーズン当初のエスパルス戦から長期間アントラーズの試合を見る機会がなかったから、はっきりとどこで転換したかは分からない。でも、今になって考えてみるとこの守備の転換がチーム状態を上げた要因だったのかもしれない。実際にいい守備をしてた(と個人的に思ってる)シーズン当初には苦しんでるわけだから。

この転換によってもたらされる一番の恩恵は、省エネ。高い位置からの追い掛け回しによる守備は効果的であるのと同時に現実的ではない。90分間ハイプレッシャーを続けるのは、さすがに難しいから。対して、1度組織を作ることをベースにすると無駄が省かれたやり方だっていえる。

基本的な組織を作ることで激しいプレッシャーなしでも相手に攻撃の糸口を与えない。そうやってもたつかせたところで、1つのスイッチとともに一気に守備をスピードアップさせる。それが自陣に入ったところなら、選手間の距離が近づいてることで効率的に連携を図ることができる。それに最初のチェックにも長い距離を走る必要性が減る。それに、上に書いたようなブロックの外に対する守備に関しても効率性が生まれると思う。1度組織を作ることで、選手の配置が整理される。結果として最小限の手数で相手を追い込むことができると思う。

同時にこの緩急をつける守備はそう簡単にできるものではないことも事実だと思う。緩に関しては、組織の作り方のバランスが求められる。激しいプレッシャーなしで相手の縦パスを防ぐには、3ラインの配置をはじめとしたかなりのバランス感覚がが必要とされるし、相手のボールに対して決め細やかな修正も必要とされる。急については、個々の守備意識の高さとスイッチが入った瞬間の意思統一、運動量。このやり方はシーズン当初の高い位置での守備をベースにしながら作られた部分が大きいと思う。

そういう意味ではアントラーズの守備のやり方は一朝一夕にできるものではない。組織としての絶対的な連携と個々の戦術理解度の高さが求められる。流動性をベースとした攻撃を含めて、アントラーズの組織としての成熟度の高さを再認識させられた。

アントラーズの前半の守備はここまで出てきた2パターン。立ち上がりの最前線からの追いかけと、得点後の自陣にバランスのいい守備ブロックを形成する形。どちらの守備についても、相手の攻撃をほぼ完璧に許したっていえる。ほとんど自陣内にはいい形で入られてない。これに対して、後半は3つめのパターンが見られたと思う。それは自陣深くのブロックで跳ね返す形だった。前半と比べると自陣内に入られる回数が明らかに増えた。

後半のアントラーズは立ち上がりこそ積極的に守備をしたものの、多くの時間では基本的なブロックの形成を前半よりも深い位置で行うやり方が見られた。前半は敵陣に入ってた2トップも自陣に入る時間が長くなった。後ろの4-4も前半のように斜めにならずにシンプルな横並びになることが多かったと思う。要するに相手ボール保持者に対する意図が弱まったことを意味する。

結果として後半はサンフレッチェのボールも人もアントラーズ陣内に入ってくる時間が増えたと思う。もちろん、1点を追う展開でサンフレッチェ自身が前への意識を高めたこともあるだろうけど。ただ、前半とのあまりの差を見るとサンフレッチェの攻撃意識だけでは片付けられない。おそらく意図的にアントラーズが下がって、相手をおびき出そうとした気がする。

このときにアントラーズの守備のベースになったのは絶対的な最後の跳ね返し力だった。真ん中は4-4(4-2)のブロックでバイタルエリアをつぶした。残りの選択肢である、サイドまたはブロックの外からのアプローチはことごとく跳ね返し続けた。結果としてポゼッションを相手に渡す中でも、ほとんどチャンスを作られてない。実質的な主導権はアントラーズが握ってたって言ってもいいと思う。

これでアントラーズの守備のやり方は大雑把に分けて3パターンに。そのどれもが高レベルで安定してるから、得点差とか時間を考えてチョイスできる。これはかなりの強みだと思う。上でサンフレッチェは守備のストロングポイントがないって書いたけど、そういう考え方だとアントラーズはそのときの意図によってどこにでもストロングポイントを作れるってことになるんだと思う。

ちなみにアントラーズは攻撃面も時間とともに(守備のやり方とともに)変えていったと思う。立ち上がりは上にも書いたように、左右上下のアプローチによって相手ゴールに向かっていくやり方。それが得点後は横のアプローチを増やしたと思う。左右の大きな展開を使いながら、中盤を制圧していった。もちろん流動性ベースの近い関係でのパス回しも織り交ぜつつ。縦パスに関しても強引に入れずに、ポゼッションの方に力を入れてたと思う。これが前半の8分時点で試合を閉めにかかったって書いた要因。逆に言えば、ゴールに対する積極性が失われたわけで、それがサンフレッチェの守備のギャップを隠したと思う。

これに対して後半はベタ引きの守備に引きずられてカウンター主体に。マルキーニョスに当てて、後ろの押し上げを待つっていう展開になった。ただ、このやり方が思ったよりも機能しなかった気がする。運動量(疲れ)の問題か、リスク管理の問題か、時間ともにフォローが少なくなって可能性のあるカウンターが少なくなっていった。いつものアントラーズの飛び出しの量があればもっと効果的な攻撃につなげられた気がする。それでも、マルキーニョスは助けが少ない状況でファールをもらってたのはさすがだったと思う。

ちなみにサンフレッチェはマルキーニョスをはじめとして、キーとなるところには厳しく対応することが徹底されてた(ある意味ではストロングポイント?)。結果としてアントラーズにFKのチャンスが増えることになった。そのときにアントラーズは合わせる選手がGKの前にスペースを空けて待つやり方が多かったと思う。キッカー(多くの場合は小笠原)はそのスペースに対して速いボールを蹴り込む。そこにスペースに対して勢いよく走りこんできた味方が合わせる形。この走り込みに対しては相手もしっかりとついて守らなければならないわけで、ゴールに向かって敵味方入り乱れて向かっていくことになる。そして、そこに速い質のボール。いつ交通事故的なゴールが生まれてもおかしくなかった。

アントラーズの攻撃の内容に戻ると、守備と同じくバリエーションが豊かなことが分かる。大きく分けるとポゼッションとカウンターだけど、その両方が計算できるやり方。今回の試合はどちらのやり方でも縦の動きが少なかったけど、本来のアントラーズの攻撃では流動性(飛び出しの多さ)をベースにして攻撃を組み立てる。それがどちらにも応用できてる要因だと思った。

攻守に渡ってこれまで見えてなかった部分を含めて、アントラーズの組織としての成熟度の高さを改めて感じさせられた試合だった。そして、そのチームを作り上げた監督の手腕は素晴らしいと思った。

対するサンフレッチェの攻撃は柏木の不在を感じさせられた。柏木の不在は守備よりも攻撃に響いてた気がする。それがよく表れてたのが前半の流れ。ほとんど前線にボールを入れられなかった要因になったと思う。

サンフレッチェの攻撃は概ねガンバ戦と同じような内容でできてたと思う。それがサイドに起点を作るやり方と流動性。ただし、そういうやり方がうまくリンクしなかったことで相手ゴールまで迫ることができなかったと思う。つまり本来は柏木がリンクの役割を担うんだと思う。例えば今回の試合ではサンフレッチェの2トップがはがれてしまう状態が生まれた。局面を見ても、個々の分断が見られた気がする。

これは柏木の不在によって選手間の距離が広がったことを意味する。全体としての動きが少なかったわけではないけど、色々なところに顔を出す柏木の不在によって関係性が築きにくくなった。それが個の分断を生んで、相手の囲い込みにあうシーンも目立ったと思う。

さらに細かいことをいくつか取り上げる。まずは、相手のブロックへのアプローチ。流動性はあるけど爆発的なランニングがなかったことで、相手の組織にギャップが作れなかった。それが前半に縦パスを入れられない状況を生んだのは上にも書いたとおり。そういう縦パスの質から言えば、低い位置の組み立てを助けに来る選手がいなかったのも問題だった気がする。攻撃のスタートは常に最終ラインが担って、後はみんな前へ意識を向けていた印象。それに伴って、前回は見られた大きな展開も減ってしまった。後半にポゼッション率を上げたときには、前線で動きがない詰まり状態が生まれた。動きのスイッチを入れる柏木の不在が見られた。

もちろん、ここまで書いたこと全てが柏木の不在っていう要因だけで生まれたわけではない。アントラーズの守備のよさがあったことも事実なわけだから。でも、前回のガンバ戦を見るとこういう部分に少なからず柏木が絡んでたのは事実だった。このチームでの柏木の存在の大きさを感じた。

最後に勝手な意見を言わせてもらうと、柏木はフロンターレに行くと面白い気がする。マギヌンがいなくなるフロンターレはマギヌン的なトップと絡めるトップ下を欲しいはず。そう考えると2列目から飛び出す動きがある柏木の存在は穴を埋めるのには十分だし、守備を考えても前線の3枚のフィルターの強化が期待できる。さらに大きいのは後ろとの関係。谷口と中村の組み合わせを想定すると、柏木を含めた面白いトライアングルが作られると思う。どの選手も守備も頑張るし組み立てもできる。そして何よりも攻撃参加が魅力。ここでグルグルとポジションを変える状況が生まれると相手としてもかなり厄介な中盤になるはず。実現可能性は低いかもしれないけど、柏木を一番生かせるんじゃないかと思った。
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2008-01-01 Tue 02:53
高校サッカー1回戦
【三鷹×高知中央】
三鷹の目指すサッカーはいいものだと思う。今回の試合を見る限りでは三鷹の狙いは中盤で奪ってからのカウンター。守備はボールに対するアプローチの意識が強く、それに連動して後ろでは入りどころを狙うやり方が見られた。そして、そうやって奪った後はシンプルに縦パスをトップに当てる。そして、一気に後ろが飛び出して攻めきるっていうやり方。ここ最近の高校サッカーのトレンド(流経大柏、盛岡商がそういうサッカーだった)が表れてた気がする。

実際に攻撃の方は(特に前半は)狙い通りに進んだんじゃないかっていうように感じた。まず、奪った後のトップの引き出しの動きがいい。特に10番の白井が前線でうまく引き出しの動きをしたと思う。そうやって1つ収めたところで、一気に後ろからの飛び出しが見られるのは上にも書いたとおり。次々に出てくる後ろの選手が攻撃に厚みと勢いを持たせる。そういう中で相手ゴールに向かって少ないタッチでパスが回るシーンが見られた。

ただ、一連の流れの中でミスが多くて流れが分断されることが多かったのは気になった部分。雨、風、初戦の堅さっていう要因が考えられるわけだけど、ちょっと多すぎた気がする(高知中央にも言えたこと)。やろうとしてることのよさ、ボールなしのランニングの精度とか量のよさがあるのに、基本的な技術の問題でそれが消されてしまうのは残念だった。

ちなみに、こういうカウンターの流れで起点となる白井は単純に真ん中で待っているだけではなかった。左サイドを基本としながら、カウンターでの選択肢を増やしてた印象。もちろん、1度収めて単純に下にはたいて後ろの攻撃参加の勢いを利用するってのは1つの形。加えて、相手の高めのラインのウラをサイドから陥れる狙いも見られた。特に序盤はウラに単純に抜け出そうとする動きが多かったし、チームとしてもスルーパスを多用。

ただし、抜ければチャンスになったであろうこういう動きもミスによって消えてしまった印象。それに、サイドに通ったとしてもゴールに向かう質よりもサイドで起点になる役割の方が大きかった。そのサイドの起点に対して、後ろが次々と飛び出してくるのは上に書いたやり方と同じ。

繰り返し書いてきたように三鷹の攻撃は後ろからの飛び出しをベースにしてる。運動量の多さをベースとした効果的なランニングが多かったと思う。3点目もFWを抜いてゴール前に入ってたのはボランチの選手だったし。奪ってから一気に後ろが飛び出してくるっていう意味ではエスパルス的なイメージか。

こういう後ろからの三鷹の飛び出しに対して高知中央は自分たちのやりたい守備をやらせてもらえなかった。おそらく高知中央の本来の守備の狙いどころは中盤の場所だったんじゃないかって気がする。最終ラインを高めに設定して4-3-3のコンパクトなブロックを作ってたことを考えると、ベタ引きの守備を念頭に置いてなかったのは確かだと思う。たぶん、そういうブロックに入ってきたところで一気にアプローチするような狙いがあったと思う。でも、結果として高知中央はゴール前のところまで押し込まれるシーンが多くなった。

これは三鷹の後ろからの飛び出しのプレッシャーに負けたことが大きかった。さらにその飛び出しをベースにしていいリズムでパスを回す三鷹に対して守備の狙いどころを定められなかった。そうやって最初のアプローチができず、相手はどんどんと後ろから飛び出してくる。しかも、三鷹がサイドから深みを作ってきたのも守備の狙いを定められなかった要因になった気がする。

そうやって守備の勝負どころを定められないままに、高知中央のブロックはかなり深い場所まで追い込まれるシーンが目立った。そうなったときに後ろから出てくる相手選手を捕まえきれないシーンも目立った気がする。基本的に前線の守備意識(低い位置まで戻ってくるような)があまり高くなかった印象。というか、次の攻撃を想定してチームとして前線を残しておくやり方だったかもしれない。

ただ、この高知中央の守備のやり方が得点後の時間には改善されてた。それまでルーズだったボールへの意識が高まって、距離を詰めるのが速くなった印象。この時間の三鷹は失点後の焦りとあいまって、全く狙い通りの攻撃ができなくなっていたと思う。無為にトップに蹴りだすボールが増えてしまった。

とはいっても、三鷹の攻撃は概ねいい内容だったと思う。何度も書くように後ろからの飛び出しを利用して勢いと厚み、近さを加えながら攻めるやり方。ただ、こういう内容の攻撃をすることを考えると守備の内容がもっとよければ、もっと楽に相手ゴールに迫れた気がする。要するに攻撃への切り替えの速さを考えると、中盤で効果的に奪ってのショートカウンターが有効であるように思う。

三鷹としては最初にも書いたように、そうやって中盤で効果的に奪うことを狙ってたのは確かだったと思う。中盤とは言わずとも、効果的に相手のボールを引っ掛けて勢いのあるまま、相手の組織が戻る前に攻めに転じたいっていう意識はあったと思う。

それは守備のやり方を見ると分かる部分。三鷹は受け手と出し手の両方をしっかりとケアしようとする姿勢が見られた。中盤の選手は相手のボール保持者に対してしっかりとチェックを繰り返し、それに連動して低い位置の選手はしっかりと相手の人を見て入りどころを狙ってたと思う。

立ち上がりの時間はこのやり方がある程度機能してた。高知中央がしっかりとつなぐ意識を強くしたことで、最初の守備に行きやすい状況が生まれた。最終ラインでの相手のつなぎにプレッシャーをかけて、かなり高い位置で奪うシーンもいくつか見られたと思う。

ただ、高知中央はすぐにトップの近藤に単純に入れるやり方に移行。おそらくこれが本来のやり方なんじゃないかって気がする。そして、このシンプルなトップ当ての攻撃を繰り返す高知中央の攻撃に対して、三鷹の守備が狙い通りに機能しなくなった。

まずギャップが生じたのは出し手に対する守備。三鷹の選手はしっかりと出し手に対してチェックをして行くのは上にも書いたとおり。ただ、そのチェックは追い掛け回すようなやり方ではなくジワジワと距離を詰めるようなもののだった。結果としてシンプルにトップに入れる高知中央の出し手に対しては十分に距離を詰めることができなかった。三鷹としてはある意味では寄せの途中で次の展開をされてしまう形。

そうやって出し手に対してのプレッシャーが機能しないと、後ろの守備にも影響が出てくる。後ろの選手の受け手に対する入りどころの狙いはあくまでも前線でのチェックによる制限をベースにしてる。その前線のチェックがルーズになったことで、後ろの選手は入りどころに対する対応ができなくなった。ボールが入ってしまってから寄せに行くっていう後手後手の対応が目立ったと思う。

さらに、前線がズルズルと相手の出し手に引っ張り出されてしまうことで(しかも、効果があまりない)上下のギャップも生み出された。結果としてDFライン前のフィルターが効果的に機能しない状況が生まれたと思う。簡単に相手のトップの近藤にボールが入るシーンがかなり目立ってた。

ただ、高知中央はそのトップの近藤が孤立気味だった。厚みのある攻撃を仕掛けるときには3トップが近い関係を作り、さらにサイドのスペースに選手が出てくるようないい攻撃も見られたけど、そういう攻撃はあまり多くはできなかった。近藤には当たるけど、その後のフォローが少なくて厚みのある攻撃につながらなかったと思う。

それでも三鷹の次の攻撃を考えると痛かった。あくまでも引っ掛けて縦の展開を作りたかったのに、1つ収まりどころができたのは事実だった。何よりも後手後手の対応の中で単発だった相手の攻撃に厚みが加わるシーンが目立ったと思う。前線が後手に回り、それに引きずられて後ろも後手に回るっていう悪循環は断ちたかったところ。

さらに言えば、もっと攻撃に厚みを加えるチームが相手だったら、次の自分たちの攻撃っていう以前に守備の時点で危険が生まれる気がする。前後の分断は修正したい部分。特に前線は出し手に行くなら行く、後ろとの関係で受けるなら受けるってことをはっきりした方がよかった気がする。後半は相手のトップへのボールをまず切るっていうことがはっきりして、いい内容の守備に修正されたと思うけど。

最後に注目選手ってことで三鷹の7番北見を挙げとく。この選手は中盤の底でボールを裁いてからの前線への飛び出しが魅力。組み立てで出し手になったと思ったら、そこで止まらず一気に長い距離を走って前線に飛び出していく。そうやって出し手から受け手への役割の変更をしてたと思う。


【藤枝東×香川西】
香川西の守備の内容のよさが目立った。前半は最前線を3トップ気味にしてフィルターをかけ、最終ラインをかなり高い位置に設定する超コンパクトなブロック(4-3-3みたいな形)を形成。そうやって、藤枝東が攻撃の開始の縦パスを入れたところ厳しいチェックをしていった。その1つ目のチェックに対する周囲の連動の速さも目立って、常に相手のボールに対して複数で囲い込む状況を作り出せた印象。

コンパクトなブロックで選手間の距離が近いから、相手の入りどころに対してのチェックに素早く当たれたり、周囲との連動もしやすかったと思う。もちろん個々の意識の高さも見られる。80分間1つ1つのチェックを欠かさずに相手の入りどころに対してアプローチをし続けた運動量とか囲い込みの際に前線が戻ってくるような守備意識の高さも見られた。

それでも後半の立ち上がりの両チームが点を取り合った時間はさすがに組織の間延びが見られ始めてた。そういう状況になったところで前線に1トップを残して中盤の厚みを増した。システム変更によって選手間の距離を縮め、1人1人の持ち場を狭めることで前半と同じような守備ができるようにしたと思う。高い位置でのフィルターがなくなったことで前半よりはブロックに仕掛けられることが多くなったけど、入ってきたボールにはしっかりとアプローチができてた。そういう工夫が80分間のコンスタントな守備を支えた要因になってたと思う。

対する藤枝東の攻撃は香川西の方から見ると、守備との相性が抜群によかったと思う。結果、藤枝東の攻撃はやりたいことが全くできなかった。それでも自分たちの形に固執したことが藤枝東の攻撃停滞させた要因だったように思う。

藤枝東の個がベースになっている。というか、個が分断されている。ボール保持者に対する動きが少なく、ボール保持者自身もあまり周囲を使おうとする意識を見せない。だから、1人1人の保持時間がかなり延びてしまう状況が生まれてたと思う。1タッチ、2タッチでパスを回すどころか1人が最低でも3タッチ以上はするような状況だった。

香川西からすれば素晴らしく狙いがつきやすい。相手のボール保持者は一定時間はボールを保持してくれるわけだから、そこに思い切ったチェックが可能になった。そうやってすぐに囲い込んだのは上に書いたとおり。

藤枝東のパスはこういう香川西のチェックによって困ったときの逃げ場っていうイメージが強くなった。相手に寄せられてさすがにキープできなくなったところで、誰かもらってくれっていう質のパスを出す。それが効果的なパスにつながることはないわけで、中盤のチェックでしっかりと制限が効いている香川西の守備陣がことごとくカットして行った。

さらにそのパスがショートパスばかりになってしまったと思う。相手に一気に距離を詰められて、大きな展開が難しかったっていう要因もあったかもしれないけど、チームとしてショートショートでつなぐ意図が見られた。大きな展開で相手のブロックにギャップを作る場面はほとんど見られなかったと思う。

1つは単純に放り込むロングボールがほとんど見られなかった。相手が最終ラインを高く設定し、中盤をタイトにしている時点でウラに放り込むロングボールっていうアプローチが考えられる。そうやって相手の後ろへの意識を強め、本来使いたい場所を空けていくってのが1つのセオリーになる。でも、この試合では藤枝東はそういうボールをほとんど使ってない。結果として相手の守備ブロックはプレッシャーなしに高い位置を保てた印象。

ウラへのロングボールを使わないならば、もう1つ考えられるのは横のアプローチ。左右に大きく動かすことで相手の守備ブロックの横への間延びを誘発する。結果として選手間の距離を遠ざけて、寄せを遅らせ連動性の築きにくさを生む。

でも、この試合の藤枝東は横のアプローチも使えてなかった。同サイド同サイドとショートパスをつないで攻めていく中で、相手にとってはかなり守りやすかったと思う。香川西としてみれば勝手にプレーエリアを限定して、守備の狙いどころを決めてくれたイメージ。

そういう意味で藤枝東には組み立ての工夫が見られなかった。相手のいい内容の守備ブロックに対して予備的なアプローチをせずに、何が何でも縦に行くような強引さが見られた。そのときに組織としての連動性が薄いから、勝手に相手の守備網に引っかかっていくイメージが強くなった印象。

この試合を見ると静岡のチームが現状、再び覇権を取り戻すことはないだろうなって気がする。去年の静学も含めて、あまりにも自分たちの形に固執しすぎる。さらに、組織としての連動性が薄く、個が分断してる。今の高校サッカーは個人技だけで勝ちあがれるような状況にはないと思う。やっぱり組織としての強さが求められる。

ただ、逆に静岡勢の人材の輩出は今後も続くはず。先々を考えれば個ベースのサッカーで1人1人の技術力とか積極性が育っていくわけだから。組織としての強さは入ったチームで覚えればいいってことを考えると、高校年代の個ベースのサッカーには意味がある。本当は野洲みたいに個ベースだけど、組織としての連動があるってのがベストなんだろうけど、すぐにそういうチームを作るのは難しい。

組織的なやり方で“高校サッカー”での強さを目指すか、個ベースのサッカーで個を育てるかってのは難しい問題。でも、ユースに個を奪われる現状では、高校チームは前者を選ぶしかないのも事実なんだと思う。

余談が長くなったけど、試合の内容に戻る。ここまで見てきたように藤枝東の攻撃は香川西の守備に完全にシャットアウトされてしまった。でも、香川西の守備が守備までで終わってしまったことで、実質的にどちらが流れを握ったかが難しい試合になったと思う。

香川西は守備内容は素晴らしいのに、そこから攻撃へのつながりが感じられない。守備の時点で完結してしまって、守備の勢いのまま攻撃に転ずることができなかったと思う。常に前線の人数が薄く、攻撃が単発。そういう状況の中で藤枝東の切り替え後の守備に引っ掛けられてしまうシーンが目立った。守備の時間が短かった藤枝東だけど、切り替えの守備の内容がよかった。相手の攻撃が薄いこと、システム的に藤枝東の中盤が厚いことで香川西と同じように中盤のチェックとそれに対する連動が見られた。弱点とすれば3バック脇のスペースだったけど、香川西はそこをうまく使えなかった気がする(使おうとする意識自体はあった)。

ここまで見てきた2試合。香川西の守備に三鷹の攻撃が組み合わさるといいチームができる気がする。そんなたらればを言っても仕方ないわけだけど。


【帝京×済美(1時間圧縮版)】
高校サッカーぽい試合になった。前線に1発で放り込むボールが両チームに目立ったと思う。結果として蹴りあいの試合展開。トップの能力に対する依存度が高い試合になったと思う。

そのロングボール主体のサッカーは両チームのスタイルでもあるんだろうけど、それ以上に量チームの守備の戦術が大きかった。トップの献身的なチェイスを起点として前線から相手に対してプレッシャーをかけていくやり方が両チームに見られたと思う。結果として、どちらも途中で引っ掛けられることを恐れてロングボールが多くなったっていう側面があったような気がする。

逆に守備については両チームとも狙い通りに進まなかった内容。高い位置で奪いたいのにも関わらずロングボールで一気に距離を稼がれてしまう。帝京は5バック気味の形になり、済美も中盤以降が下がってラストで跳ね返すシーンが多くなったと思う。

そういう意味では両チームほど攻守に渡る狙いは同じようなものだったって言える。単純なロングボールの後はサイドを使おうとする意図が見られたのも両チームの共通点だった。ただ、結果には3-0っていう明確な差が現れてる。そして、その差は1つ1つの部分についての両チームの少しの差の積み重ねに起因してたと思う。

最も根本的だったのは切り替えのスピード。この点においては明らかに帝京が上回ってた。守備では攻撃後の最初の守備の効き具合。帝京は1発のロングボール事態はある程度余裕を持って放り込むことができたけど、済美はそれすら許されなかった。帝京の切り替え後最初の守備とそれに対する連動性のよさが目立って、極端なことを言えば済美は奪った瞬間に、すでに余裕がないっていう状況が生まれることもあった気がする。

実際に帝京の先制点は切り替えの速さが生み出した。最初の守備からの流れでかなり高い位置でボールを奪ってサイドに展開したシーン。相手は1度味方ボールになったことでマークを離してしまい、さらにサイドに展開されたことで完全に見失った。中では2枚が完全にフリーになってしまった。

逆に帝京は守備から攻撃への切り替えも済美に比べて速かった気がする。これがロングボール1発でスタートする攻撃に実効性をいかに上げるかってことに影響を及ぼしてた印象。帝京はロングボールがトップに入ったところに、すぐに複数のフォローが効いてた。結果として攻撃に厚みを生んだと思う。

サイドを含めた次の展開が容易になったし、相手を完全に押し込むことにも成功した。そうやって、より切り替え後の守備が効きやすい状況を作り出した気がする。結果として、最初のロングボールが次から次への攻撃につながることが多くなった。

対する済美の攻撃には薄さが目立った。とは言っても、後ろからの飛び出しを利用して広い場所使う展開もあったから、あくまでも帝京と比べてってこと。ただ、その中で選択肢が狭まってたのは事実で、トップに当てて右サイドに展開っていう形ばかりになってしまった。

この差はラストのアプローチの効果にも影響を及ぼした。人数をかけられる帝京は当然のようにラストのアプローチの選択肢が多かったわけだけど、数的な問題だけではなくてそこにうまく個々の動きも組み合わせられてた気がする。

そういう意味では帝京は面白いチームだと思う。攻撃で距離を稼ぐ、つまり敵陣深くに入るやり方はある意味では雑。1発のパスが大きくなるわけだから。ただ、そうやって敵陣に進攻した後は丁寧な組み立てが目立った。ランニングを組み合わせながら少ないタッチでパスを回し、狭いところを打開したり、逆にスペースがあればドリブルで仕掛けたり。中にこだわらずにサイドも効果的に使えてたのもよかった部分だったと思う。

この帝京の攻撃を支えたのがトップの2枚であったのは確か。ここに収まらなければ、帝京の攻撃にはつながらないわけだから。中でも奥山はいい選手だと思った。組み立てでの引き出す動きが基本的にいい。組み立てに限らず先制点のシーンのようにゴール前のフィニッシュ(ファー→ニアの動き)の際の動きのよさもある。さらにボールの受け方がうまいと思う。あまり背は高くないと思うけど、うまくボールを収めてた印象。

それに帝京の2トップは守備も献身的。最前線でのチェイシングが献身的で後ろを助ける部分が大きいと思う。今回の試合では上にも書いたとおり相手がロングボール主体で来たことによって、中盤との連動を築くのは難しかった。でも、後半に相手がつなぐ意識を強く持った時間には守備のスタートとしての2人の役割がうまく機能した印象。前線でしっかりと追いかけることで、制限をかけ後ろの選手が守備の勝負に行きやすい状況を作り出した。結果として後ろの選手はボールの入り際を狙えるシーンが多くなったと思う。さらに、2トップはそうやって中盤が相手の勢いを止めたところに戻ってきて連動するような守備意識の高さも目立った。


【水戸短大附×日章学園(ダイジェスト)】
放送時間の関係、さらにPK戦までもつれ込んだことでカットカットの放送になってしまったので手短に。見られた時間が短かったから、「~だろう」っていう文脈も多々あるのでご了承ください。一応、県予選の段階(チラッと見ただけだけど)で水短のサッカーには注目してたので取り上げたい。

水短は予想通りに前線からの献身的な守備。トップからの厳しい追いかけによって、相手のボール保持者を自由にさせなかった。そうやって相手から余裕を奪った上で、次の連動によって次をしっかりと狙ってくる。前線の追いかけ方が次を考えてしっかりと制限をかけられてるのが効果的。

水短が予想通りにこういうサッカーをできてた時点で水短が試合の主導権を握ると思った。それぐらい水短の守備の内容には素晴らしさがあった。ただ、個人的に誤算だったのは日章学園も水短に負けず劣らず前線からの守備が見られたってことだった。日章の守備も水短も似たイメージ。前線からの追いかけに対して次が連動してボールを奪うってやり方。前半は特に相手の縦パスをことごとく先に触るシーンが見られた。

両チームとも最前線からの素晴らしい内容の守備。攻撃では両チームとも余裕を持ったプレーができなかった。結果としてどちらも攻撃の流れはぶつ切りに。途中で引っ掛けられて最後の場面まで行けないシーンが目立った気がする。これが前半の両チームのシュート数の少なさを生んだと思う。

その中でより深い位置まで攻め込めたのは日章だった。早稲田をはじめとした個の力によって深い位置までの進攻は可能だった。ただ、水短がそういう場所にしっかりとブロックを作ってしまうともう崩しきれない。ボールに対しては前線での守備を見ても分かるように、忠実なチェック。そうやって相手の勢いを止めておいて、後は低い位置に人数を揃えたことによる近さを利用。一気に囲い込んでボールを奪うシーンが目立った。

対する日章の守備はあまりバランスを崩されなかったんじゃないかと思う。場合によってはDFライン以外は全て敵陣に入るような前線からの守備が見られた。水短よりも組織としての選手の置き方なんかでも相手にプレッシャーかけてた側面がある。もちろん個々の追いかけも見られるものの、水短と比べると弱かった(あくまでも水短と比べると)。むしろポジショニングで狙いどころを定めるスマートな守備。水短みたいに厳しく行って人数勝負で囲い込むやり方よりも、ピンポイントで狙って相手より先に触るっていうシーンが多くなった印象。

ただ、このやり方が最初の失点を生んでる。出所へのプレスがやや弱まり、結果として高い最終ラインのウラに1発で通すボールを許してしまった。水短としては相手のDFライン前ではことごとく狙われてしまってたから、背後を陥れるっていう考え方はよかったと思う。

後半は水短の攻撃に前半と比べるとスムーズさが生まれた。後ろからの飛び出しが多くなって前線の選択肢が増える時間が長くなったと思う。その中で後ろからの飛び出しの勢い、人数が入った近さを利用した少ないタッチでのパス回しが見られるようになった。結果、日章としては守備の狙いどころが定まらなくなり、前半よりも深い位置まで押し込まれることが多くなった。

対する日章も前半よりは相手のゴールに迫るシーンが増えたと思う。基本的には前半と同じように早稲田を中心とした個の仕掛けで進攻してきたわけだけど、水短と同じく後ろからの飛び出しも活発化した。結果として水短としては前半よりも見なければならない場所が増えたと思う。個の仕掛けに対しては同じように対処しても、相手には逃げ場が生まれてた。奪って跳ね返しても相手の厚みに引っかかってしまうシーンが目立った気がする。こういう流れの中で前半よりはゴールに向かう時間が両チームとも長くなってた。
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