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ただのサッカー好きが、思ったことをただ書くだけ。 (06年終了)

2008-02-09 Sat 18:24
ミドルスブラ×リバプール
<リバプール:4-4-2>
FW:トーレス-ボロニン
MF:リーセ-マスケラーノ-ジェラード-ベナユン
DF:アルベロア-ヒーピア-キャラガー-フィナン
GK:レイナ

立ち上がりのリバプールはとにかく蹴りまくった。最終ラインから2トップを狙う単純なロングボールを放り込むっていうやり方を繰り返したと思う。高い位置からの相手の守備を否すためだっただろうこのロングボール攻撃。後々にしっかりと地上から攻めるやり方に移行した(しようとした)わけだけど、大雑把なロングボール攻勢を繰り返した立ち上がりの時間が最も相手を押し込んだのも事実だったと思う。

この時間のリバプールは本当にロングボール一辺倒。出し手としての最終ライン、受け手としての2トップに挟まれた中盤の役割が特徴的だった。そもそも中盤を飛び越えるような攻撃を繰り返す中で、組み立ての中での中盤の役割は大きくない。要するに、後ろからのボールをさばくような役割はほとんど中盤には与えられてなかったって言える。

その代わりにリバプールの中盤は前からのボールの処理を任されてた。要するにトップに当てたセカンドボールを拾うこと。トップとの距離を短く保つことによって、セカンドボールを効果的に拾おうっていう意図が強く見られたと思う。特に右サイドのベナユンはトップの落としを直接的に拾うシーンが多くなった。

そうやって中盤がトップとの関係を近くすることで、たとえセカンドボールが拾えなかったとしても次の対応がやりやすいっていう状況も生み出した。それは切り替え後の守備の部分。リバプールの持ち味である前線からの厳しい守備が、この時間に関してはうまく機能してたと思う。

結果として、ミドルスブラの選手はボールを持ったとしても、少しも余裕が与えられずに蹴りだすことが多くなってしまった。それを拾うことで再びリバプールが攻めなおすっていう展開が続いたと思う。だから、リバプールはロングボールが単純でもペースを握ることができたと思う。

このペースはミドルスブラとしてはある意味では理不尽だった。その後の時間を見ても分かるように、前線からのミドルスブラの守備の質は高かった。最前線のトップの場所から後ろとの関係を考えながら追いかける。でも、この時間はその全てを無効化するロングボールを浴びせられまくった。

相手がトップにロングボールを入れてくれば、それにあわせてミドルスブラの最終ラインも押し下げられる。さらに、セカンドボールを狙う相手の中盤に対してミドルスブラの中盤も下がって対応する必要がある。結果として本来的にはもっと高い位置に配置したい4-4ブロックが低い位置に押し込まれることになった。

結果としてミドルスブラはFWとの距離が空くこととなる。そして、そのFWを狙う意図が強いのがミドルスブラの攻撃。逆に言えば、FWとの距離が空いたことで効果的に攻撃に移れない。しかも、相手は切り替え後の守備を厳しくしてくる。結果として意図の薄い蹴り出しが多くなる。このままこういう悪循環から抜け出せない可能性もあったと思う。

でも、そうはならなかった。ミドルスブラは相手のロングボール攻勢には屈しなかった。確かに相手がロングボールを蹴りまくってる時間帯には押し込まれたけど、そこから地上戦に移行するにつれて段々と、ただし明らかに、ミドルスブラのペースに傾いていったと思う。

これはリバプールとしては誤算だったんじゃないかって気がする。立ち上がりのロングボール攻勢で相手の守備を後ろ向きにさせたかったはず。少なくともロングボールを蹴ってるときには、それが成功したと思ったはず。だからこそ地上戦に切り替えてきたんだろうし。

でも、十分な準備の後に移行したはずの地上戦では、ミドルスブラの前への守備意識が全く削がれてないことが分かった。そうやって地上戦への移行に失敗したリバプールは、結果としてその後ペースを握ることはできなかったと思う。

ただ、当たり前のことだけど、その移行がうまくできなかったからっていう理由だけでミドルスブラにペースを握られたわけではない。この試合のリバプールは攻守に渡ってイマイチ噛み合わないような印象を受けた。逆にミドルスブラは攻守の狙いがはっきりとして、それを実行できてた。その部分の差がダイレクトに出たように思う。

まず、違和感を覚えたのがリバプールの守備。個人的にはリバプールと言えば守備の内容のよさってぐらいなんだけど、その守備のよさが鳴りを潜めてた。いや正確には、その片鱗は見られた。やろうとしてることは普段とあまり変わらなかったと思う。でも、その実効性に疑問が残った。

ボールに対しての厳しいアプローチはいつもと比べて大きく見劣りはしなかった。ただ、その次が続かずに、1つ1つのアプローチが単発で終ってしまう印象が強かった。結果としてチームとして追い込んでいくような状況が作り出せなかった気がする。

だから、効果的に数的優位を作ってボールを奪うことができなかったと思う。いつもは多く見られる、挟み込んだり、囲い込んだりっていうシーンが異常なほどに少なかった。それは要するにチームとしての狙いどころが定まってなかったからだったように感じる。

1人1人のボールに対する意図はいつもと同じぐらいある。でも、連動ができない。相手にとっては逃げ場が多い状況なわけで、プレッシャーに出てきた場所がギャップになってしまう状況が生まれる。本来はきっちりとつぶれてるはずの4-4の間に入り込まれることが多くなったし、そうなったときに中盤が焦って後ろ向きに守備をする場面も多く見られた。明らかにバランスが崩れてた証拠だと思う。

で、その原因。最近はリバプールの試合をあまり見てなかったからはっきりとしたことは分からない。でも、気になったのは守備におけるFWの役割。今回の試合ではリバプールの2トップが守備にほとんど関与してなかったように見えた。これが全体のバランスが崩れてしまった原因になってたような気がする。

本来のリバプールはFWが守備のスタートとして機能する。2トップを縦関係に置きながら1枚がトップ下のスペースを埋める。で、もう1枚が前線から厳しく追いかけていくことが守備のスイッチとなる。その最初のプレッシャーに対して中盤以降が連動することで、高い位置から有機的に次から次へと絶え間のないプレッシャーをかけ続ける。そのうちに相手の選択肢をつぶして、最終的には数的優位で囲い込むって寸法。

今回の試合ではそもそも、2トップの縦関係がはっきりしなかった。縦になる意図自体はあったかもしれないけど、埋めるべきトップ下のスペースが埋まっていない。それじゃあ縦関係でも意味がないって話。結果として中盤の選手が見るべきスペースが増えたこととなる。マスケラーノ、ジェラードあたりが長い距離のプレッシャーをかけるシーンが多かった。そして、それは非常に効率が悪かった。

これはつまりトップと中盤の間の距離が空いてしまっていることを意味する。だから、トップが守備のスタートとなって中盤が狙うっていう関係性の構築も難しかった。そして、何よりもトップがスタートとして機能しない。トップの守備の意識が薄い(守備をがんばるカイトの不在)っていう要因もあっただろうし、後で書くように物理的に難しいって側面もあった。

だから、前線で最初の制限が効かないままに中盤が守備をしなければならない状況が生まれてたように思う。要するに中盤が守備のスタートとして機能しなければならないってこと。本来のリバプールの中盤はある程度前線が制限した次を狙ってるのから考えれば、全然違う役割を担わなければならなかったってことが言える。

これでは厳しいプレッシャーは難しい。どの場所に重点を置くべきかが定まらないわけだから。ボールを持った選手に対して1つ遅れて、中途半端な守備に行くっていう状況がどうしても生まれてしまう。しかも、上にも書いたようにトップとの距離が遠くてケアするべきエリアが広いから、素早くプレッシャーに行くのは難しかった。

当然のように本来のリバプールよりも1つ1つの守備の強度は弱まる。これによって中盤で効果的に奪うのが難しいのはもちろん、次との関係を考えて相手の選択肢を制限するのも難しい。中途半端に距離が空いてるわけだから。結果として単発の守備の繰り返しって状況が生まれた。

つまり、何度も書くように守備の勝負どころを定められない状況。それでもボールに対する守備の意図はある。だから後ろにギャップだけが残る。特に中盤がズルズルと前線に引っ張り出される状況が生まれて、これが4-4の間のスペースにつながった。4-4-2のそれぞれのライン間の距離が気になる今回の試合だったように思う。

こういう感じでリバプール自身にも問題があったわけだけど、リバプールが本来的な守備ができなかったのはミドルスブラの攻守のやり方に影響された側面も大きかったと思う。逆に言えば、リバプールのよさを消すぐらいにミドルスブラの内容がよかったとも言える。実際に、この試合を見る限りでは下位に低迷するチームのサッカーではなかったと思う。

まず、その守備面。守備面に関してはリバプールがやりたいような守備の内容をミドルスブラがやっていたようなものだった。上にちょっと書いたように、守備のスタートはFWの2枚。相手の最終ラインのボール保持者に対しても積極的にプレッシャーをかけていく姿勢が見られたと思う。

しかも、そのときに次との関係をしっかりと考えた守備のやり方が見られた。意図的にコースを切った追い込みが見られたと思う。逆に言えば単純に強度が強いだけのプレッシャーではなかったことが、立ち上がりのロングボール攻勢を許してしまった側面もあったかもしれないけど、それ以上に長い時間の相手の地上戦を止める役割が大きかった。

こういうトップの守備をスイッチとして、中盤以降もしっかりと連動する。相手が最終ラインから縦パスを入れてきたところで、素早く距離をつめる対応が目立ったと思う。そうやって相手を1つ止めといて周囲との連携で数的優位を作ったり、その次に対する制限の役割を担ったり。

ただし、今回の試合に関してはさらにその上を行っていたようなイメージだったと思う。相手が最終ラインから入れる攻撃のスタートとなる縦パスを相手の前でインターセプトするシーンがかなり多かった。場合によっては敵陣で引っ掛けることもかなり目立ったと思う。前線の制限があったのは確かだけど、それ以上に全体としての意識の高さとそれに基づく出足の速さを感じた。

そして、その個々の意識がチームに還元されたってのがこの試合でのリバプールとの大きな相違点だったと思う。リバプールと違って守備における連動性の高さが生まれ、それによって1人1人の守備意識の実効性が高まる。つまり、狙いどころが定まることで効率的により強度の高い守備ができるってこと。

とにかく、個々の守備意識とチームとしてのよさを生かした守備の中で、かなり高い位置で相手のボールを奪うシーンが多くなった。このことをリバプールの側から見るとビルドアップの途中で引っ掛けられることが多くなったってこと。同時にトップまでボールが行く前に引っ掛けられるシーンが多くなったことを意味する。

これが物理的にトップが守備のスタートととして機能できなかった要因になったと思う。いくら守備意識が高くても、自分の背後のボールに対して最初の守備をするってのは難しい。トップが守備のスタートとして機能するためには、自分の前にボールがあり、それを追いかけるって形にする必要がある。トップまでボールが渡らない展開の中で、そういう状況を作り出せなかった。

さらにボールを奪った後のミドルスブラのやり方もリバプールの守備に影響を与えることになった気がする。ミドルスブラの攻撃はとにかく縦に速い。ボールを奪ったら即縦に行く。どの場所でもボールを保持せずに、一気にゴールに向かう姿勢が見られた。最近使ってる言葉から言えば、中盤を一気にボールが通り過ぎていくイメージだった。

このことはリバプールとしては守備の組織作りの時間がないってことを意味する。しかも、ビルドアップの途中で中途半端に全体が前がかってるっていうバランスの悪い状況。そのバランスを取り戻す前に相手の攻撃を食らうこととなった。

リバプールの守備は組織のバランスのよさ、特にDFと中盤の4-4の関係性のよさをベースにしてることを考えるとこれは痛かったと思う。上では守備の問題から4-4の間にスペースができてしまった要因を書いたけど、実際にはこういう切り替えのシーンでその場所が問題になることが多かった。

これはある意味では仕方のない部分。後で詳しく書くように、リバプールの攻撃はトップに当てる意図が強い。そして、そこに対して中盤を絡めることで厚みを加えようとする。だから、攻撃で縦パスが出た瞬間に中盤は一気に前線に出て行かなければならない。その途中で引っ掛けられてしまったら、後ろとの関係が密接ではないのは当たり前。

そして、ミドルスブラはそのギャップを突いてきた。得点シーンがその典型的な形で、縦パスをインターセプトした後すぐにリバプールの4-4の間に入り込んだ場面だった。そこからサイドへ展開してゴールまで。リバプールの中盤が急いで戻るシーンが目立ったのも、こういうところに原因があったと思う。

このミドルスブラの縦への意識を実効的にするためには前線の選手の意識の高さが絶対だった。特にトップの選手は味方がボールを奪ら常に動き出すってことを繰り返した。真ん中にこだわらずに前線で動き回ることで、うまくボールを引き出した。チームとしてもトップを狙う意図が強かったと思う。

そうやって前線で受けたトップの選手はチャンスがあればそのまま一気にゴールまで向かう。ただ、多くの場合では周囲の上がりを待つこととなった。そして、そのときに重要な役割を担うのが両SMFのダウニングとオニール。トップにボールが出るのと同じタイミングで一気に前線に飛び出していった。

そして、トップに一度預けてからこの両サイドを使うやり方が効果的だったと思う。この切り替えの時点で組織のバランスが取れてない状態だったリバプールの守備陣は相手のトップが受ければ、最優先的に真ん中を押さえることとなる。結果として両サイドにスペースが生まれることが多くなった。

得点シーンもそうだったけど、ミドルスブラはトップに当てて相手を真ん中に凝縮させてからSMFへ展開することでかなり広いスペースが使えた。それを有効に活用できてたと思う。そういう展開の中で両SMFがフリーの状態で受けるシーンも多くなった。

ちなみにミドルスブラの前線への飛び出しは両SMFに限らない。出足の速さを生かした守備をする中で、奪ってそのままの勢いで前線に飛び出す選手が多くなった。得点シーンのボアテングがそうだったし、後半には最終ラインからフートが出てくるシーンも見られた。全体としての切り替えの早さが目立ったと思う。この飛び出しを生かしながらギャップギャップをつなぐパス回しも見られた。

こういう形のミドルスブラの守備から攻撃の流れを見ると、いかに立ち上がりのリバプールのロングボール攻勢が相性が悪かったかが分かると思う。守備の狙いどころは飛び越えられ、全体が押し込まれたことでトップとの距離が空くって状態になってしまったわけだから。

そして、地上戦になったとたんにペースを握ったのも分かる部分。ペースを握るどころか、立ち上がりとは全く反対の展開にまで持ち込んだ気がする。

トップに単純に当ててくるミドルスブラの攻撃のスタートのプレッシャーに負けてリバプールの最終ラインが下がる。そこに飛び出してくる相手の2列目以降のプレッシャーに負けてリバプールの中盤も下がる。結果としてトップとの距離が空く。さらにミドルスブラは切り替え抜群で高い位置から守備をしてくる。リバプールは蹴りだすしかない。またミドルスブラのボールになる。

本当に間逆の流れだった。リバプールの中盤以下が自陣のかなり深い位置まで押し込まれて、バランスどころではなかったと思う。そういう状況の中でも冷静にオフサイドを奪うリバプールの守備陣は素晴らしかったけど、好ましくない流れ出なかったのは確か。しかも、そこから抜け出す術も見つからなかった。

ただ、後半になるとミドルスブラの勢いもさすがに弱まった。前線からのハイプレッシャーに奪ってから息もつかせぬ速攻。保持時間が短いだけに休む時間もなくて、さすがに前半のやり方を90分やりとおすのは難しかったってとこか。

でも、これによって完全なリバプールペースにならなかったのがこの試合のリバプールのおかしさだったと思う。ミドルスブラは疲れて効果的に攻撃に人数をかけられないし、対するリバプールも相手ゴールに迫るようなシーンまでつなげられない。後半になって中盤がなくなり気味だったのに、ゴール前も熱くないっていうよく分からない展開になった。

この要因はリバプールの単純すぎる攻撃のやり方にあったんじゃないかって気がする。上でもちょっと書いたとおり、リバプールの攻撃はとにかくトップにくさびを当てようとする。この意識の高さが本当に目立った。立ち上がりのロングボール攻勢に限らず、地上戦でもくさびの意識はかなり高かった。

だからと言って、トップの選手はミドルスブラの2トップのように動き回らない。出す方も最終ラインの選手または低い位置のCMF。要するにトップまで距離が遠い選手が出し手となることが多い。そして、その間に経由点がいない。後半の途中にシャビ・アロンソが入ってからのいくつかのプレーではジェラードがトップ下の場所に流れて経由点になったけど、そのいくつかのシーン限定だった。

まるで日本の五輪代表を見てるようだった。一番遠く、しかも一番相手が重点的に抑えてるところを、何の工夫もなく使おうとする。当然のように相手に引っ掛けられる可能性はかなり高い。もっとトップへのくさびの意識を捨ててもいいんじゃないかって気がした。シャビ・アロンソが入ったことで散らし役ができたと思ったけど、大きくは改善しなかったってのが正直な印象。

というわけで疲れたミドルスブラも容易に守れる展開が生まれる。前線からの守備をするのは難しくなってリバプールの出し手は見きれなくなったけど、ラストブロックで真ん中を押さえておけばなんの問題もなかった。相手は必ずそこに出してくる。前半から通してくさびに対する意識は高かったから、それを持続すればよかったし、その前のフィルターとしてのボアテングの存在も心強かった。

逆に失点シーンはそのどちらもが外されたシーン。ボアテングはサイドに引っ張り出され、トーレスがかなり下がって受けたことでCBもついてなかった。この試合唯一と言ってもいいほどの致命的なギャップが生まれ、結果として決められてしまったシーン。リバプールとしてはこのシーンも真ん中を侵攻したものだった(起点はサイドだったけど)。

この試合を見る限りリバプールが攻守に渡って精細を欠いてたのは事実。守備はリバプールっていうイメージを持たなければ、決定的なシーンもあまり作られてないし、深刻な状況にはつながらないだろうけど、攻撃はもう少し柔軟性が欲しいところ。

とりあえず荒行として昨季のCL決勝みたいな4-4-1-1を使ってみたらどうかと思う。攻撃において、トップ下の場所に経由点を作りたい。あまりにもトップへの意識が強すぎる気がするから。マスケラーノもシャビ・アロンソもジェラードも使いたいとなると、現実味はあるかもしれない。この形なら守備の大きな変更も必要ないし。
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