ただのサッカー好きが、思ったことをただ書くだけ。 (06年終了)

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2008-03-31 Mon 17:46
ダービー×マンU
<マンU:4-4-2>
FW:ルーニー-Cロナウド
MF:ギグス-パク・チソン、アンデルソン-スコールズ
DF:エブラ-ビディッチ-ブラウン-オシェイ
GK:フォスター

1つ前のチェルシー戦で結構ボロくそに書いたダービー。その試合では守備の内容がひど過ぎた。基本的に守備の時間しかなかったわけだから、ほとんどの時間で悪い内容を見せられたとも言える。自陣に引いてブロックを作った後に何もしない守備。相手が入ってきても見ているだけ。とにかくルーズルーズ。ゴール前ベタ引きブロックでもそれが続き、相手選手を放しまくり。結果として6失点の大敗。それがチェルシー戦だった。

そのイメージで見た今回の試合。ダービーのあまりの内容の改善に驚かされた。まず、何よりもベースとなる1つ1つの守備が改善されたのが大きい。ちょっとでも相手が動くと浮かせてしまっていたチェルシー戦。それに対して今回は動いた相手に対してもしっかりと対応できてた。前半早々にDFムーアに出たイエローカードは、低い位置に降りてボールを受けに行ったCロナウドについていってのものだった。こういう部分にも象徴されるように、とにかくボールに対する1つ1つの守備意識の改善がかなり目立ったと思う。

加えてチーム全体としての守備の考え方も大きな転換。これは改善されたというよりも、文字どおりに転換されたイメージ。なぜならば前回のチェルシー戦で見られたチームとしての守備の考えも間違ったものだったとは思えないから。おそらく今回ぐらいに1つ1つの守備の意識が高まっていれば、あれほど破綻するってことはなかったんじゃないかって気がする。

その前回のチェルシー戦での守備のやり方は上にも書いたように自陣に引いて守る形。4‐1‐4‐1システムでトップの1を残して、残りの4‐1‐4が自陣に引きこもる形だった。ただ、ベタ引きになるっていうわけではなくて最終ラインは高めの位置を維持しようとする。後ろを前に引きつけ、前を後ろに引きつけてコンパクトブロックを形成する意図が見られた。この前後のコンパクトは今回の試合でも1つのポイントになった部分。とにかく、そうやってブロックを作って入ってきたボールをしっかりと狙いましょうっていう守備。ただし、入ってきたボールを全く狙わなかったことで結局はほとんど全員がゴール前に貼りつかされることとなった。

対して、今回はとにかく前から行きまくった。トップが深い位置のマンUCBにまでプレッシャーをかけ、マンUのSBがボールを持った時にはSMFが対応に出ていった。中盤の真ん中の選手も積極的に的陣内までプレッシャーをかけていく姿勢が見られたと思う。そういう意味ではチェルシー戦とは180°違った守備のやり方だったと言ってもいい。

この守備の考え方の転換がなぜ生み出されたのか。ホームだから積極的に行ったのか。この辺は微妙なところ。ただ、1つの可能性として、ダービーは相手に合わせて戦い方を変えるようなチームだっていう可能性もあるかもしれない。つまり、相手のよさをいかに消すかっていうことにポイントを置くやり方。今回のマンU戦以外にはホーム&アウェーのチェルシー戦しか見てないからはっきりしたことは分からないけど。

ただし、マンUに対して前から追いかけまくるってのが有効な手段であることは確か。前から追いかけまわされると、とにかく焦りまくる様子がマンUにはしばしば見られる。そうなったマンUはとにかく前線に蹴りまくる。前線の準備が整っているのかどうかに関係なく。でも、前線には高さがない。意図の薄いロングボールはつながらない。相手にボールが渡る。攻撃に厚みができない。攻撃後の切り替えで頑張るマンUの守備が機能しない。要するに攻撃も守備も効果的に機能しない。完全な悪循環。追いかけまわされたときのマンUはこんな感じになる。

チェルシーに対しては引いて守るっていう選択も間違ってはいないと思う。とにかくつなぐ意識が高まったイメチェンチェルシー。前から追いかけなくても前線に蹴られる心配はない。むしろ、相手の中盤でのつなぎを窒息させるために、引いてスペースをつぶすってのが効果的。前回はそれが機能しなかったわけだけど、それはここまで書いてきたように1つ1つの守備が効かなかったっていう要因が大部分。実際にホームで戦った試合では、全体として引いてスペースをつぶすと同時に、システム合致を利用して相手の人を捕まえたことで、チェルシーはボールを前線に供給できなくなってた。そして、低い位置での保持時間が異常に伸びてた。

そういうわけで相手に合わせて戦い方を変えてるのかもしれないダービー。他の試合も見られればすっきりするんだけど。どちらにしても、この観点から見ればシステムの変更も相手に合わせている可能性があると思う。4‐3‐3のチェルシーに対して4‐1‐4‐1、4‐4‐2のマンUに4‐4‐2。システム的に合致関係が作れる。やり方と同じく本当のところは分からない。

でも、そう考えると、今回の試合でマンUが得点を奪ったのはこのシステム合致を崩したからかもしれない。選手交代で前線をルーニー-サハ-Cロナウドにし、トップ下にギグスっていう4‐3‐3みたいな形に変更してた。それによってダービーはそれまでのような効果的な守備が効かずに、深い位置まで押し込まれるシーンが増えたのかもしれない。ただし、前半からハイペースだったダービーの運動量がガクッと落ちたことに原因を求める方が現実的であるとは思うけど。

ところで、今回の試合で相手に合わせた(?)やり方が機能したかどうかっていう部分について。とりあえず、全体として見ればチェルシー戦からは明らかに好転したってことは事実。ただし、その要因の多くの部分はここまでしつこく書いてきたように、1つ1つの守備の改善による部分が大きかった。だから、チームとしての大幅なやり方の変更が、どの程度有効だったかってのは微妙なところだったように思う。つまり、よかったのか悪かったのか分からない部分があったってこと。

少なくとも立ち上がりの時間は悪い変更のように思わされた。1つ1つの守備が改善したと言っても、あくまでもチェルシー戦と比べて。はっきり言って1つ1つの守備をしなかったと言ってもよかったチェルシー戦。それに比べれば、どんな変更でも改善と言えるわけで。立ち上がりはまさにそんな内容。確かに1つ1つのチェックには行く姿勢は見られた。ただ、態度があやふや。厳しく行ったり、行くふりをしてみたり。結果として連動性も築きにくく、それぞれが単発で終わることが多かったように思う。

こうなってくると前に対する守備意識の問題の方が浮き彫りになってしまう。中途半端に前に引っ張り出されて、後ろにギャップだけを残してくるってこと。マンUの方がギャップギャップをつないで一気にダービーゴール前まで至るシーンが多発。そして、何よりも広大なギャップ(というかスペース)がダービーの最終ラインの背後には用意されていた。

上にポイントとして挙げたのがダービーのコンパクトな守備ブロック。前回は自陣でそれを形成していたわけだけど、今回はチーム全体が守備において前がかってる。コンパクトなブロックを維持しようとすれば、最終ラインは超高い位置に設定されることになった。それはそれで悪くないんだけど、ただあやふやな立ち上がりのダービーの守備。ロングボールを防ぐ守備が効かないシーンが多々。それを利用して、マンUが単純なロングボールを相手ラインの背後に供給するやり方が多くなったと思う。

そのまま直線的に相手ゴールに向かうことも多かったし、どこかしらを経由して時間を使ったとしてもチャンスにつながるシーンが多かった。ウラに抜け出されてあわてて戻るダービーの選手たち。バランスを考えてる暇はなく、とにかくゴール前に戻る。その中で戻りすぎるってイメージの現象が多発。相手の1つ下を完全に空けてしまって、サイドをえぐった後のマイナスのボールから決定的なチャンスを作られまくった。

ちなみに、このウラへの1発のボール。マンUにしては珍しく意図のあるロングボールが見られた。その中でスコールズが果たす役割が多かったわけだけど、このスコールズが完全に復調してくればマンUのロングボールの質が高まるっていう可能性があるかもしれないって思った。質が高まるってのは精度ってこともそうだけど、以下に実効的にロングボールを活用するかってこと。マンC戦のときにも書いたように、マンUはあんまりロングボールの使い方がうまくない気がするから、これは大きい。

話を戻してダービーの守備について。とにかく、立ち上がりの時間は、守備の変更=改悪に感じられた。後ろにギャップを残してくるばかりだから。でも、もちろんメリットもあったと思う。それは攻撃とのつながり。チェルシー戦ではほとんど全員がゴール前に貼りついてたダービー。当然のように前線には人が少ない。というか、1枚しかいなかった。だから、攻撃をどうするかなんてことは考える余地もない状況に陥ってたと思う。

対して今回はいいか悪いかは別にして、とにかく前に向けての守備意識が高かったダービー。後ろに全員が引きつけられたチェルシー戦とは真逆の状態。高い位置に人が多いっていう守備の形を作った。だから、攻撃に切り替わったときにそれに反応できる選手の数が多い。単純にトップの枚数が1→2に増えた上に、中盤も前に引きつけられてる。シンプルなロングボールでも前回とは比べものにならないほどに可能性を感じさせられた。

だから、守備のリスクを犯して攻撃の厚みを取りに行ったってのが立ち上がりの内容だったと言っていい。ただし、そのリスクとリターンを比較すると明らかにリスクの方が大きかったわけだけど。何しろ、守備の問題があったこの時間。前に守備に行こうとして失敗し結局は後ろの守備に行くって形が多くなった。よって、狙いどおりに前線に攻撃の人数をかけるのは難しかった。

だから、普通に最初から受けてた方が怖さはないんじゃないかって内容だった。守備でも攻撃でも運動量を使うよりは、引いた守備ブロックで守備では省エネをしておき、攻撃で一気に飛び出して行けばいいわけだし。今回ぐらい1つ1つの守備が改善されれば、引いた守備でも前回ほどの破綻をきたすってことはなかったはず。

ただ、ダービーは前からの守備を続ける。そして、それが徐々に実を結び始めた。相手のプレッシャーに負けずに自分たちのやり方を貫いた結果。継続は力なりってとこか。とはいえ、前からの守備を続けたこと自体がいい内容につながったわけではない。時間とともに守備を修正していったことが、結果につながったと言った方が正確だったと思う。

上にも書いたように、この守備における問題は1つ1つのところがあやふやだったこと。チェルシー戦と比べると改善したとは言っても。このあやふや性が時間とともに消えていった気がする。0点で抑えている時間が伸びることで自信がついて行ったってのもあるかもしれない。とにかく、ボールに対するプレッシャーが忠実にコンスタントに行われるようになった。結果として、周囲の連動性も高まる。複数枚での効果的な対応が目立つようになっていったと思う。

そうやって前線からの守備の質が高まって行ったダービー。結果として中盤で効果的に引っかける場面も多くなった。これにはマンUの攻撃のやり方の問題も要因としてあったわけだけど、それについては後述。とにかく、中盤で引っ掛けるってことは当然のようにゴール前に押し込まれなかったってことを意味した。これはつまり、攻撃への切り替えでバランスの崩れていない前に引きつけられた守備ブロックをそのまま利用できるってことを意味した。当然のように攻撃に絡める人数は増えた。

こういう流れが明らかになってきたのが前半の30分過ぎから。マンUの攻撃はぶつ切りになり、むしろダービーの攻撃の方に連続性を感じる流れに。その中で決定的なチャンスも2、3と作り出す。この時間から後半の前半まではダービーのペースと言ってもいいような流れだったように思う。それはすべて、ダービーの1つ1つの守備の実効性と高い位置からの守備っていうチーム全体のやり方がうまくフィットしたからだったと思う。ついでに上に書いたマンUの攻撃の問題も。

さて、攻め込まれる流れになったマンU。攻撃の問題については後で書くこととして、こういう流れの中では守備の問題の方も浮き彫りになって行った気がする。その守備の問題は恒常的にマンUの守備に見られるってことは確か。でも、今回はそれがさらに酷くなったバージョン。ダービーの攻撃は厚みを増したとは言っても、それほど怖いものではなかった。でも、決定的なシーンを作られまくり。これはマンUの守備に問題があったからだって言える。

上に恒常的に見られるって書いたのはマンUの4‐2守備ブロック。2トップと両SMFで構成される変則4トップは自分の前に対する守備は頑張るけど(気分によっては頑張らないことも多々)、後ろに対する守備にはあまり興味がない。それは別に今に始まったことじゃない。だから、今回の4‐2ブロックも驚くに値しないのは事実。ただ、その内実がいつもとは大きく異なっていたわけだけど。

まず、今回はその4トップの一角にパク・チソンが入ってた。基本的にパク・チソンは4トップの例外で後ろの守備も頑張るのがいつものやり方。逆サイドとのバランスで3CMFの一角みたいな形を取ることも多い。そういう位置から攻撃に一気に飛び出す。そういう上下動がパク・チソンの1つの持ち味。でも、そのパク・チソンが今回はあまり守備に参加してこなかった。後で書くように、今回の試合では前線の変則4トップの攻撃面での役割がいつも以上に大きかったってことが影響してるかもしれない。とにかく、中盤で4‐3ブロックを作れるんじゃないかっていう夢ははかなく散ったことになる。

それでもいつもの4‐2はまだ残ってると考える。でも、DFライン前の2はアンデルソンとスコールズ。やっぱり2で中盤を守るならば、1人はハーグリーブスじゃないときついよねって気がした。アンデルソンも頑張って色んなところのボールにアプローチをしてたけど、いかんせんケアすべきスペースが広すぎた。相手には逃げ場がいくらでもあるわけで、逆サイドに展開なんてされたら、もうお手上げ状態だった。

だから、攻められたときには中盤はある程度捨ててたイメージ。ラストの安定感抜群の跳ね返し力でなんとかしようっていうマンUの守備。こういうやり方も普段から見られないわけではない。でも、普段どおりに安定感抜群の跳ね返し力があったかどうかが非常に疑問。最終ラインにはファーディナンドがいない。GKは初スタメンのフォスター。ドタバタ感満載のラストブロック。それまでの時点で守備の根拠が作れず、背水の陣的に築かれたラストブロック。いつものような跳ね返し力があるならいいけど、今回のメンバーではいかんせん心もとなかった。

だったらマンUの守備のもう1つの勝負どころである最前線はどうか。上にも書いたように、自分の後ろに対する守備の意識は弱い変則4トップも自分の前に対しては頑張る。正確には頑張ることが多い。今回の試合はどっちの気分だったかと言えば、頑張る気分だったと思う。トップのルーニーが追いかけるシーンが見られたし、Cロナウドも1つ下のスペースを埋める意識が見られた。この縦の2トップの位置関係は、前線の守備意識が高いかどうかを見る1つの指標になると勝手に思ってる部分。

ただ、おそらく守備をするつもりはあった前線の守備も機能しなかった。なぜなら、ここまで書いてきたように前線の選手の守備意識が発揮されるのは自分の前に対して。悪い時間帯には、その前線の選手にボールが入る前段階で引っ掛けられてしまうことが多かったわけだから。それに攻撃の厚みもあまり加えられなかったのが今回のマンU。高い位置の切り替えで効果的に守備ができる下地はそろっていなかった。

そういうわけで高い位置での守備が機能しなかった要因の中で攻撃がうまく機能しなかったってことが占める部分は大きいと言える。そもそも、ここ最近のマンUの攻撃は様子がおかしい。この試合の前に見たのはマンC戦とトッテナム戦だけど。例によって、この様子のおかしさがいいことなのか悪いことなのか分からない。今回の試合でも両面が見られた。柔軟性が生まれてきたアーセナル、つなぎまくりのチェルシー、システム変更のリバプールとともにマンUもイメチェンを図っている真っ最中なのかって気がする。

そのイメチェンの具体的な内容は縦へのスピードが増したってこと。今までこんなに縦への意識が高かったっけってぐらいに、とにかく前へ前へと向かう姿勢が見られる。上にも書いたように前線から積極的に守備をされて、仕方なく前線に蹴るって形が見られたのは事実。これも縦への意識と言えば縦への意識。今回の試合もそれに分類される可能性がないわけではない。でも、ほとんど前線からのプレッシャーをかけられなかったマンC戦の内容が今回と似てた気がする。だから、やっぱりイメチェンの最中なのかとも思う。

とにかく、最終ラインでパスを回して左右に揺さぶってから攻めるなんてやり方はほとんど見られない。というか、最終ラインに限らずボールがどこかの場所で滞在するってことがほとんどない。常にショートパスをリズムよくつないだり、ドリブルで仕掛けたり。とにかく、相手ゴールに向かって直線的に攻めるような意識が高い気がする。だから、ダービーが相手の今回も圧倒的に中盤を制圧するって形にはならなかった。ポゼッション率は高かったけど、印象としてはあまり感じられなかったぐらい。チャンスもダービーが相手なのにカウンターからの流れってのが多かった。

とにかく縦への意識が高まっている様子のマンU。上でもちょっと触れたように、攻撃における前線の変則4トップの依存度が高まってるように思う。ボールを持ったら、まずは前線の4人へっていう意思統一がされてるように見える。前線の4人は動きまわりながらうまくボールを引き出すし、前線に供給されたボールに対しても流動性ベースのやり方でうまく関係性を築ける。4人で攻めきることをまずは念頭に置いたやり方が目立った。

攻撃に厚みを加えるやり方は非常に簡単。絡んでくるのはアンデルソンと両SB。基本的には、まずは4人。そこにアンデルソンを絡ませる。サイドから行くならばSBも助けに行きますよって形。どちらにしても、後ろの上がりを促進させるために何かをするってこと(要するに中盤でボールを保持するってことだけど)はほとんどない。攻撃に参加したいなら勝手に追いついてきてくださいってイメージ。

まずアンデルソンの役割。スピーディーな展開を目指してるマンU。まずは前の4人に任せるわけだけど、そこで詰まってしまうシーンがどうしても多くなる。つまり、スピード感がなくなるってこと。そうなったときにアンデルソンが一気に上がってくる。これで再びスイッチを入れなおすっていうアプローチが目立ったと思う。それから下がってきてボールを触れるCロナウドと入れ替わりにってシーンも目立った。ちなみに相棒のスコールズは低い位置でのボールの供給役に徹してたと思う。そういう意味での役割分担はできてた。

次にSB。上にも書いたようにサイドの助け。前線の4人の関係性の中でサイドに起点が作られたときに、後ろから助けに来るってやり方が目立ったと思う。ただ、サイドに起点を作ったときとは行っても、基本的には前の選手は仕掛け中ってことが多かったと思う。とにかく、どの場所でもボールを滞在させないやり方の中で、最終ラインから追いつくのは難しいやり方だから、エブラの攻撃参加も今回はいつもほど見られなかった。

立ち上がりはこのやり方が機能したように思う。この時間はまだ相手の守備にギャップが多かった。だから、単純に前線に送られてくるボールも前の選手がうまく動いて引き出せば、うまく収まることが多かった。収まった後も前線の流動性、連動性をベースにギャップギャップをつなぎながら4人で攻めきってしまうシーンが目立ったと思う。ちょっと時間がかかれば、上にも書いたようにアンデルソンとかSBが助けに来た。

この時間は縦に進む攻撃、要するに前の4人に任せる攻撃のメリットが出た。奪って即縦に行くから相手の組織はできてない。というか、相手は戻りきれてないからスペースが多い。さらに、味方も少ない。前線には4人だけ。敵味方も少ない状況の中で1人1人が使えるスペースは広大だった。基本的に個人技に長けたマンUの前線の選手たちにとって、最も戦いやすい土俵だって言える。それを縦への意識が高い攻撃で実現してたと思う。

ただ、そのやり方がずっとうまくいったわけではなかった。上にも書いたように時間とともにダービーの守備の質が高まったわけで、それにつれて縦への意識が高い攻撃ができなくなっていったと思う。まず、ダービー切り替えでの守備が効果的に機能ことによって、奪って即縦へ進むことができなくなってしまった。それまでのような守→攻の切り替えができなくなったことで、相手に組織を作る時間を与えてしまった印象。

だったら、ゆっくりと作ればいいと思うわけだけど、今回の試合のマンUは相手が組織を作っても縦へ急ぐ姿勢が継続。マンUの前線は4人。しかも、この時間のダービーの守備はもはや動けば浮くってほど甘いものではなかった。よって受け手に問題が生じる。さらに、低い位置で意図的に相手を揺さぶるやり方はしないマンU。出し手も工夫なく入れようとする。受け手も出し手も問題あり。単純に前線にボールを供給しようとしても無理ですねって話。中盤で引っ掛けられることが多くなったのは上にも書いたとおり。

さらに悪いことに雨が強くなる。ピッチコンディションが悪くなる。個人の技術に負うところが大きいマンUの攻撃にミスが増えていった。さらにスピーディーな展開をしようとするところに、このピッチんコンディションの悪さ。正確性を失ったパスで攻撃がぶつ切りになって行った。前線にボールが供給されたとしても、こういう状況の中でいい攻撃につなげるのは難しかったと思う。

こういう状況になったマンUの選手たちは完全に空回り。縦への意識の強さを象徴するミスが多く起きる。つまり、前に出て行く受け手の背後にボールが行ってしまうってシーン。出したところにはもう選手はいないっていうミス。気持ちが前に向き過ぎてるのがよく分かった。気持ちは落ち着かず、ボールも落ち着かず。完全な悪循環に陥ってしまっていた気がする。

このマンUの縦への意識は何なのか。立ち上がりのような展開ならスペースが多いメリットを使って効果的に機能する。でも、意地でもそれを続ける必要性はなかったと思う。少なくともマンUの攻撃の中で縦へとにかく急ぐってやり方はこれまであまり見られなかった気がする。低い位置で幅を使った(右寄りだけど)揺さぶりなんかも見られた気がするし。ボールを保持した中で前線でグルグルとポジションを変えるってのがやり方だった気がする。その間にエブラが高い位置に入るとか。

今はそういうやり方のかけらも見られない。なぜかは分からないけど。とりあえず、この後はリバプール戦を見るつもり。後はローマ戦。この2試合でどういうやり方を採るのか。ただ、圧倒的な格下ダービーに対してボールを保持して戦おうとしなかったんだから、同程度の力を持った2チーム相手にそういうやり方を採ることはないかもしれない。こういうやり方とともに、最近ちょくちょく使ってる4‐3‐3も見てみたいなって思う。今回の試合の後半には見られたけど、本格的にはまだ見たことがないので。
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2008-03-27 Thu 23:53
U-23:日本×アンゴラ(A代表)
<日本:3-5-2>
FW:李-豊田
MF:梅崎、上田-細貝-青山敏-長友
DF:森重-伊野波-青山直
GK:西川

去年から見られるこのチームの課題はビルドアップの問題。それは去年の最終戦だったサウジ戦のときにも書いたとおり。前線に効果的にボールを供給するのがうまくないのがこのチームの特徴。ビルドアップで幅を使えず、前線の動きも少ない。その中で最終ラインからトップへの最長距離のパスを狙うことが多くなり、結果として引っかけられまくり。それがこのチームのビルドアップの特徴だった。特に相手が前線からプレッシャーに来ると致命的になるレベル。

これは五輪に向けて克服しておきたい課題。でも、今回のメンバーだけを見るとビルドアップをなんとかできそうな選手はいないように見えた。というか、去年の悪い内容の中でビルドアップをなんとか機能させてた選手が様々な理由でいなかったのが今回の試合だった。

1つはサイドの選手。低めの意味でボールを扱うことが多い本田圭から前線へのロングフィード、低い位置に降りてきた水野のドリブルでの持ち上がりってのが1つの形。2人とも今回は招集されず。ちなみに4バックを採用するとしたときに(今回は3バックだったけど)サイドのキーになりそうな安田と内田も不在だった。それから、FWの選手。森島と平山不在の今回は困ったらFWの頭への選択肢がなくなった。

そして、何よりも柏木の不在。去年の後半にチーム状態が好転したのは柏木が入ってから。それまで動きのなかった前線に動きをもたらして、うまくボールを引き出してた。柏木に限らず、前線の選手の組み合わせがあまり動かない選手から動く選手へとシフトする中でなんとかビルドアップに光が見え始めた。それが年越し前の状況だった。

これらのビルドアップ要員たちがことごとく不在だった今回の試合。どうなることかっていう思いが大きい試合前だった。でも、実際にはその不安は覆されることとなる。前線へのボールの供給がスムーズに行くシーンが目立ち、相手ブロック内での仕掛けが多くなった印象。確かにアンゴラは前線からプレッシャーをあまりかけてこなかったから、日本が苦手な形にはならなかったとも言える。でも、事前の予想以上にうまい組み立てができてた印象を受けた試合になった。

その形。最初のアプローチにおいてFWへの意識が高いってのは今までとは変化しなかった。実際に立ち上がりはリスクを回避するやり方の中で、これまでと同じようなトップを直接狙う1発のボールが目立ったのも確か。その流れの中でトップが落としたボールを梅崎が前向きで受け、仕掛けるっていうパターンが案外可能性を感じさせたわけだけど。ただ、時間とともにしっかりと組み立てる意識が勝って行き、トップへの大雑把なボールは減少していったと思う。

それでもトップに当てるってのが1つの形だった。でも、同時に、今回はトップへの最長距離を狙うっていうわけではなかった。それはトップが受ける意識を強く持っていたから。つまり、前線でボールが供給されるのを待っているわけではなかったってこと。積極的にトップの位置から中盤の場所に降りてきて、ボールを受けるっていうシーンが目立った印象。

ここでちょっと脱線してアンゴラの守備について。このアンゴラの守備のやり方が、日本の攻撃と関係してくるから。そのアンゴラの守備は上にも書いたように積極的に前線から来る形ではなかった。つまり、受ける形。そして、その守備ブロックはスタンダードな4‐4‐2の3ラインが形成される形だったように思う。とりあえず、その3ラインをコンパクトに維持しようとする意識は見て取れたし、同時に一体感を重要視するような印象も受けた。間に入られまくったことを考えればコンパクトブロックは維持できてなかったかもしれない。要するに、アンゴラの守備についてはちょっと曖昧な印象(あのテレビ局は全体を映してくれないから見えない部分が大きすぎるので)。

この守備をベースに日本の攻撃について再び考えてみる。高い位置から積極的に来ないから、日本の最終ラインはあまりプレッシャーを感じずに高い位置まで持ち上がることができた。そして、出し手としてはフリーの状況。これはボランチの選手でもあまり変わらなかった部分。加えて、上に書いたように前線の選手が積極的に降りてきてボールを受ける動きをする。うまく相手の守備ブロックのラインの間に入り込んで受ける動きを繰り返してた印象。下が押し上げ、上が下がり、どちらもある程度フリー。そういうわけで、中→中でも縦パスが案外簡単に収まるっていう状況が生まれてた。

ただし、このトップへの縦パスが直接的にゴールに向かう動きにつながることは少なかったと思う。確かに1度経由点になって受けるっていう形においては案外フリーになってた受けて。でも、入った後にそのまま相手ゴールに向かうほどにはフリーにはさせてもらえなかった。特別厳しく効果的だったとも思わないけど、ライン間に入った日本の受け手に対してアンゴラの方もとりあえずのチェックは行ってきたから。

日本にとってはそれでもよかった。なぜならトップに当てるってのは攻撃のアプローチの1つだったから。トップに当てる→簡単に下げる→縦パス→下げるっていうパス交換の繰り返しの中でうまく攻撃の形を作って行ったと思う。1つは相手ブロックに対するアプローチ。もう1つは味方の準備を待つっていう形において。

相手ブロックのアプローチっていう意味は簡単。真ん中でのパス交換を増やす中で相手の真ん中への意識を高めるっていうこと。一体感を重視してたような印象が強いアンゴラの守備については上にも書いたとおり。そういう意味ではより効果的だったとも言えると思う。そうやって相手を真ん中に凝縮させておいて、攻撃において意識的に起点を作ろうとしたサイドにスペースを作り出してた印象。真ん中での上下のパス交換からサイドへっていう展開が1つのパターンとして見られたと思う。

そして、そのサイドを有効に活用するためにはスペースがあるだけではなくて、そこに味方がいるってことが当たり前のように必要になる。後で書くように守備においてある程度押し下げられるWBを攻撃に参加させるための時間稼ぎが必要だった。そして、これが2つめの味方の準備を待つっていうことにつながった。パス交換で時間を作り、全体を押し下げさせるっていう考え方があったように思う。

その押し上げってのは今回の試合の日本の1つのテーマだった。これは後で書くビルドアップ以外のもう1つのパターンにおいても。とにかく後ろからの飛び出しが重視されてた気がするし、同時にそれが効果的に機能してた。最も運動量を求められたのは上に書いた両WB(特に長友の運動量は素晴らしかった)だったけど、いい時間帯にはボランチからの飛び出しが目立つようになり、さらに3バックの一角に入った森重が機を見て攻撃に参加してくるシーンを作り出すこともできたと思う。

真ん中での上下のパス交換でサイドを空けると同時にサイドの選手の押し上げを待つ。そういうアプローチの後で本来的に起点を作りたかったサイドへ展開。サイドには前線の選手が流れながらうまく数的優位を形成。そうやってサイドでうまく作っている間に中が上がってくる。逆サイドへの大きな展開を織り交ぜながら、相手に狙いどころを定めさせないやり方も見られた。そうやってボールを保持しながら、後ろからの飛び出しをうまく引き出してたと思う。

後ろの選手が飛び出せば前線の厚みは当然のごとく増す。結果として近さも生まれる。逆にそういう近さが飛び出してきた選手によってもたらされたってのがポイント。これによって前への勢いが増す。動きながらボールを引き出す形が増える。足元足元が多かったこのチームに動いてる選手に出すっていうパスの選択肢が増える。停滞感が生まれない。一番いい時間帯にはそういう動きながらの関係性で効果的にパスがつながって行くシーンが見られたと思う。

加えて、そういう時間帯には上でも触れたような効果的なサイドチェンジが目立つことになった。その要因も単純な話で、全体の押し上げの意識が高い状況の中では当然のように一番遠い選手も上がってきてるっていう話。近い関係でのパス回しのよさは書いたとおりだけど、そういう遠い選手の押し上げもしっかりと見ることができてたってこと。まさに接近→展開→連続ですねといったところか。

そして、こういう中盤でのパス回しの中で目立ちまくったのが梅崎だった。梅崎個人のことだけを考えるならば立ち上がりのような役割の方がよかったと思う。つまり、トップが落としたボールを前向きで受けてドリブルで仕掛けるって言う。ただ、今回の試合ではそういう梅崎らしさよりもチームの中での役割を重視してたような印象。それがいいのか悪いのかは分からないけど。

分かりやすく言っちゃえば柏木的。とにかく動きまわってボールを引き出す。ボール保持者に対しては常に近くに行って助ける動きをする。こういう梅崎の中盤での働きが中盤でのパス回しをスムーズにする潤滑油となっていたと思う。こういう動きもできるんだなっていうのはちょっと意外。どちらかというとこのチームで重視される技術よりで運動量が少ないタイプっていう印象のが強かったから。ただ、上にも書いたとおり、チームのためにっていう今回のプレーがいいのか悪いのかは微妙なところだけど。

というわけで、全体としては質の高いサッカーが見られたのが今回の日本。ただし、こういう質の高いやり方がずっと継続できたかっていえばそういうわけでもない。こういうやり方ができたのは、ほとんどアンゴラがお疲れの後半。それ以外の時間はどちらかと言えばアンゴラペース。確かにビルドアップから中盤の仕掛けとか作り方の部分でのよさが見られた今回の日本ではあったけど、それを生かせない時間が前半は長かったのも確かだった。

ちなみにビルドアップについて補足すると、今回の試合で改善されたのは幅が使えたってこと。中に意識を向けておいて外を空け、そこを利用するっていうアプローチは素晴らしかった。途中から相手の守備がルーズになってくると、そんな前置きなしでサイドに起点を作ることが増えたけど。どちらにしても、サイドに起点を作るってのは今までのこのチームではあまり見られなかったことであって、それがビルドアップの問題を作り出してたとも言える。上に書いたように、相手が1つ1つの入りどころにしっかりとプレッシャーをかけてきたらどうなるかっていう不安はあるものの、基本的には前進が見られたと考えてよかったと思う。

話が完全に右往左往してるわけだけど、ビルドアップから中盤の仕掛けが改善されたのにそれを生かせなかった前半の展開について見ていきたい。前半も立ち上がりの時間は後半のようにいい形での組み立てが見られた日本。真ん中に寄せて外を使うっていう1つのパターンもほとんどはこの時間帯に見られた。ただ、アンゴラの体が温まってくると段々と受ける時間が長くなりだした。その中で攻撃はカウンター主体になって行く。そして、最終的にはベタ引き無限ループにまで押し込まれる形になってしまったと思う。

この流れを考える上で日本の守備について見ていきたいと思う。基本的にA代表と同じように積極型と消極型を併用するこのチーム。ただし、A代表ほど積極型の質が高くない。FWだけが頑張って後ろが連動しないっていう前後分断に陥ることも多い。というわけで、たぶん消極型主体で戦った方が現実的だと思う。相手に合わせてシステムを変更するやり方も、それを念頭に置いてると思うし。A代表は積極型を採った方がいいと思うけど、こっちのチームは消極型でもいいかなって思う。

というわけで今回の試合でも消極型の守備が見られた日本。ただし、そのブロックの作り方がちょっと面白かった。単純に3‐4‐1‐2を作るのではなくて、最前線で李と梅崎をWGっぽく両サイドに張らせた(CFに豊田。ただし、入れ替えながらやってたかもしれない。)3‐4‐3の形になってた印象。これはサウジ戦でも見られた守備の形。このことが何を意味するのか。

1つは単純に攻撃で3‐5‐2を使った時には守備は3‐4‐3にしましょうねっていう考え方。受けると言ってもベタ引きにならずに、より高い位置で相手にプレッシャーをかける意識がある形だって言える。ただ、実際のところは相手に合わせた3‐4‐3っていう意識の方が強い印象。これについては相手が4‐4‐2以外のチームになってくれないと、はっきりとしたことは言えないけど。ただ、少なくとも今回は途中から攻撃も3‐4‐3っぽい形への変化していた。だからこそ、梅崎のサイドでのプレーが明らかに目立ったんだと思う。

3‐4‐3と4‐4‐2。全然違うように見えるこの両システム。でも、実際のところは以下の通りガッチリとシステム的合致が生まれる。オシム時代のガーナ戦がまさにこのシステム的合致を利用した試合だったはず。

<●:4-4-2、○:3-4-3(5-2-3)>
   ●  ●
●   ○    ●
○  ●  ●  ○
●  ○  ○  ●
○  ●  ●  ○
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とにかく全体として見るべき場所をはっきりさせるためのシステム的合致。それはつまり、徹底的に相手に合わせるような戦い方を意味することになる。だからこそ、今回の試合で時間とともにアンゴラがペースを上げてくると、それにそのまま引きずられる形で日本のペースがダウンしていくこととなった印象。今になってみればサウジ戦でも同じような流れが見られたように思う。

それでも最初のうちは相手をおびき寄せておいて逆にカウンターを仕掛けるような余裕もあった。ここでも上に書いた後ろからの飛び出しが効果を発揮。切り替えで多くの人数が飛び出すことによって、効果的な攻撃を可能にしてた印象。そのときにしっかりと豊田が起点になれるシーンも多かった。ただし、これはあくまでもベタ引きにされてないときの状況だったってこと。

この時間は要所要所で止める守備ができてたから、全体が押し下げられる結果になる前にボールを奪えるシーンが目立ってた。システム的合致を活用しながら、自陣に入ってきたボールに対しては忠実にチェックをする。その寄せで相手を足止めしておいて、周囲と協力して挟み込む。1度足止めができれば、周囲の協力が素早く効く形ができたのはよかった部分。その辺は昨日のA代表のバーレーン戦と似ていた部分だった。

ただし、今回の相手はバーレーンではなかった。そして、こちらもA代表ではなかった。昨日の試合ではバーレーンのボールの入りどころに日本が忠実にチェックをしていれば、かなりの確率で足止めは可能だった。でも、今回はそうは行かなかったと思う。基本的な運動能力で上回るアンゴラの選手たち。日本の選手のチェックなどものともせず、むしろチェックが効く前に逃げてしまうシーンがだんだんと目立っていったと思う。

1つ1つのチェックで効果的に足止めできなくなれば、守備の勝負どころが定まらなくなる。守備の勝負どころが定まらなければ、とりあえずはラストに人数ベースの守備ブロックを作るってことが選択肢の最初。さらに、アンゴラは流れが向くにつれて後ろからの飛び出しも活性化させる。特に左SBの選手が攻撃に積極的に出て来まくり。対応する梅崎は押し込まれまくり。前半は守備の方で目立った梅崎だった。その負担を軽減するためか後半は梅崎が左サイドに出てたと思う。

とにかく、もはやベタ引きラストブロックを作るしかなくなった日本。3-4-3⇒5-4-1のヒディンク的移行。想定してたかどうかは分からないけど。奪ってからトップに預けて後ろが一気に飛び出すカウンターがなくはなかったけど、実際のところはないに等しかった。奪って前線に送ったボールを相手に拾われる→相手の攻撃が続く→押し上げが図れない…っていう無限ループ状態にはまった前半の後半の流れだった。

ただ、その中でも決定的なチャンスは作られてない。それはアンゴラの攻撃が個任せ単発だったから。中盤での1つ1つのチェックは個の力で否すことができたアンゴラ。でも、人数ベースの日本のラストブロックを個で崩すのはさすがに難しい。結果としてブロック内に入り込んで密集地帯で窒息させられるか、窒息を嫌ってブロックの外からシュートを打つか。そのどちらかだけ。そんな流れで決定的なチャンスを生み出すのは難しかったと思う。個人が組織に還元できればなって思うけど、それはアフリカ勢永遠の課題か。

さて、そんな感じで前半は一応主導権を握ったように見えたアンゴラ。主導権を握ったと言っても、ゴールに近づけない上にブツ切りの流れだったから圧倒的にっていう状況ではなかったけど。そして、その前半で疲れてしまったらしいアンゴラ。後半に入って再び日本のブロックをベタ引きに押し込むような形を作ることはできなかった。頼みの個は精彩を欠いて日本の忠実なチェックに止められる。そして、すぐに数的不利に陥る。加えて後ろからの押し上げが少ないから、ますます孤立。日本の前線の選手に守備を強いることもできない。

というわけで最初の方に書いたことに戻って、日本が効果的に攻撃を行う流れ。新しく入った選手もうまくチームにフィットして勢いをもたらすことに成功した。特に途中出場の香川はドリブルで仕掛けまくり。梅崎がチームのために働いて自分のよさを出せなかった(何度も書くけど、それでもチームのために働いた評価は高かったはず)のと比べると対照的。もちろん香川も前線でポジションにこだわらず動き回ったり、そうやってボールを引き出したりっていうチームのための働きもきっちりとしてたわけだけど。

こういう流れの中でチャンスも多く作れた。前半から重視してきたサイドからの攻撃もうまく機能してたと思う。上にも書いたけど、そのサイドで前半から上下動を繰り返しまくった長友の運動量は素晴らしい。中盤でのパス回し、接近→展開→連続っていう言葉に表せるようなショートパスと効果的なサイドチェンジの組み合わせ。そこに個々のドリブルも織り交ざられる。後半は相手がお疲れモードだったことを差し引く必要が多分にあるけど、基本的にはかなりいい形の試合運びができてたと思う。

その中で相手の集中力が一瞬切れたっぽいところを突いての得点。相手のお疲れモードを見ても、前半からの流れを見ても、その1点を守りきれる雰囲気がありまくり。逆に追加点が奪える雰囲気もありまくり。少なくとも昨日のA代表に比べれば。だから、内容も結果も伴った素晴らしい試合になる雰囲気がありまくりだった。

と思いきやの失点。ロングボールからの一発。FW2人だけでやられてしまった。どこかで見た流れ。今回の試合ではあまり気にする必要もないけど、オリンピックを見据える上で閉め方も考えていった方がいいかなって思ったりする。ちょっとでもプレッシャーがあると途端に安定感がなくなるっていう弱点が解決されたかどうかが定かではないだけになおさら、何かしらのアプローチをとる必要があると思った。

今回の試合に関しては主力がいなかったのは大きい。全然違うメンバーだったから、今まで見たことのなかったようなやり方があっさり採用できたと思う。でも、今回の試合みたいな形は実際にはこのチームの立ち上げ当初のやり方に近いんじゃないかって思ったりもするけど。あのころも後ろからの飛び出しが1つの攻撃のベースになってた。主力が戻ってきたらどうなるのか。

ちなみに去年の最後の方は技術路線から走り路線への変更を図りかけてたように見えたこのチーム。今回の試合でもどちらかと言えば走り路線。梅崎の役割とか、長友の頑張りを見たりすると。それに後ろからの飛び出しがベースになってたってのも走り路線の1つか
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2008-03-27 Thu 03:41
バーレーン×日本
<日本:3-5-2>
FW:巻-大久保
MF:山瀬、安田-鈴木-中村-駒野
DF:今野-中澤-阿部
GK:川口

はっきり言っちゃうと、見るべき部分があまり多くない試合だった。その理由は簡単。内容重視のサッカーを完全に捨てたから。つまり、結果至上主義のやり方を採ってきたってこと。だから、これまでの内容を踏まえてどうこうっていう形にはならなかったんだと思う。今回の試合で、結果を得るために岡田色もとりあえずは棚上げにされた。結果を求めるための戦い方を採るってのが岡田色と言えば岡田色か。どっちにしても、それだけ結果を求めた試合で結果が残せなかったってことをどう捉えるべきか。今回の試合は結果も内容も得られないものになってしまった。

結果を求めるために日本的なやり方を捨てた日本。どちらかと言えば、バーレーンのサッカーにそっくりだった気がする。それは上にも書いたように結果追求の中で選択されたやり方ではある。でも、実はバーレーンの土俵で戦うってことにつながってしまった気がする。いつもやってるサッカーをしてる(と思うバーレーン)と急遽バーレーン的なやり方を採用した日本。年季が違うって話。そう考えると、結果も予想外ではないのかもしれない。

その日本。立ち上がりからとにかく蹴りまくった。ボールが自分たちのものになったら、とにかく前線へ。それが合言葉だったような気がする。非常に日本らしくないやり方。何しろ中盤をぶっ飛ばしてしまうわけだから。にも関わらず、立ち上がりの時間帯にはこの蹴りまくりがある程度の成功を収めたと思う。

蹴りまくりの相手は前線の2トップ。大久保は動きながらボールを引き出し、巻は高さを生かしてボールを引き出す(巻にも動いて引き出す意識が見られたけど)。立ち上がりは、そこに山瀬もうまく絡むことができた。だから、蹴りまくりのボールが効果的に前線に渡ることが多かったと思う。そうやって前線にボールが渡ったところに、WBが一気の飛び出し。蹴る→2トップ+1へ→サイドへ。この一連の流れの中で深い位置に攻め込むシーンをいくつか作り出せた。相手の3バック脇の弱点も突きながら。

もちろん、大雑把な蹴りまくり作戦。効果的に前線につながる可能性が高いとは言えない。でも、たとえ蹴ったボールが相手に渡ったとしても、それはそれでよかった。なぜならば相手にボールが渡った瞬間に中盤での効果的な切り替え守備が機能するから。蹴って→押し上げた後ろの選手たちが、相手に奪われた瞬間に高い位置で効果的な守備を行った。だからこそ、立ち上がりは中盤で効果的に奪ってからの攻撃が目立ってたと思う。

ただ、こういう流れも長くは続かない。なぜならば日本はあくまでも結果を残すためのやり方を採ってたわけだったから。結果を残すってのは、今回の場合はつまり、負けないっていうこと。負けないためには失点を喫しないことが重要になる。そして、そのために守りに重点を置く意識が高まる。いつのまにか、守備に追われる時間が長くなっていった気がする。

基本的にバーレーンの攻撃も蹴りまくり。2トップ+1を狙って蹴って、後はボランチとWBの押し上げによって前線に厚みを増す。日本のやり方とは大きな差がなかったって言っていい。ただし、ボランチの攻撃参加の意識は立ち上がりからバーレーンのが強かった印象。この辺がホームとアウェーの差か。

どちらにしても一気に距離を稼いでくるバーレーン。日本のブロックは押し下げられる結果になってしまった。それじゃなくても、守りの意識が高い日本。最終ラインはほとんど5バック。これで蹴った後の展開に必要なWBの2枚が前線とは遠い位置まで押し込まれる。さらに、上に書いたような相手のボランチの積極的な攻撃参加に山瀬が引っ張られる状況。

ちょっと余談だけど守備時には最終ラインに帰って、攻撃時には最前線まで出ていくことがWBには求められてた。今回の試合ではサイドの意識が高かった日本の攻撃においてWBの果たす役割は大きかったと思う。結果として攻守に渡るすさまじい上下動を求められた両WB。後半になると安田が消えてしまった。逆にずっと目立ち続けた駒野の素晴らしさを再認識。

話をもとに戻すと、日本の方は典型的にトップがはがれる状態。それまでと同じように奪ったボールを前線に蹴っても、それまでとは違って効果的に前線に起点を作ることができない。蹴ったボールが再び相手に渡るっていうシーンが増えていった。そうなれば、当然のように後ろの押し上げが難しくなる。結果として2トップははがれたまま。だから、前線に起点を作れない。無限ループ状態に陥りかけた前半途中の流れだった。

ただ、この時間帯に圧倒的にバーレーンに流れが行くっていう状況にはならなかったと思う。日本陣内にボールがある時間は明らかに増えてたけど。それでもバーレーンの時間帯だっていう印象を強く受けたわけではなかった。その要因はバーレーンの攻撃のやり方にあった気がする。

バーレーンの攻撃は蹴りまくり。蹴りまくらなくても、2トップ+1に対する意識が高い。縦への意識が高い。中盤で時間をかけて組み立てるっていうよりも、とにかく前線にボールを供給してやろうっていう意識が高いのがバーレーンの攻撃の特徴だった。中盤の選手(WBとかボランチ)が絡んでくるのは、1つ前線に起点を作ってからっていうイメージだった。

流れがバーレーンに行きかけたけど、完全にはバーレーンに傾かなかったのはこのため。あり得ないことなんだろうけど、バーレーンがしっかりと中盤で組み立てるようなやり方を採ってきたとしたら、完全に流れが傾いてもおかしくなかった。なぜならば、日本の守備ブロックは5‐3。中盤は数的にスカスカ。しかも、あとで詳しく書くように全体として後ろに対する守備の意識が高かった今回の日本。後ろに対するってのは、後ろと協力して挟み込むっていうような形。だから、バーレーンが中盤でボールを回したとしたら、あまり苦労せずに実現可能だったと思う。逆に日本からしてみれば、相手がそういうやり方を採ってこないって分かってたからこそ中盤をスカスカのまま放置したっていう側面もあったと思うけど。

中盤を重視しなかったバーレーンは上にも書いたように、前線にボールを供給しようとする。そして、そこは日本の守備がしっかりと固めてるところ。マンベースの最終ラインに中盤が協力して、しっかりと押さえてるところ。そのブロックに入って来たボールは日本の側がうまく抑えることができてた。そして、そういう場所で奪ってから前線に蹴りだす。これが日本のやり方。バーレーンも前線に送りだして、日本側が待ち構えている場所に勝手に入り込んで4くる。蹴りあいの流れが続くことになった。

こういう流れの中で日本の方が工夫を見せ始める。基本的に蹴るってことは変えなかった。でも、蹴り方を変えた。それまでのように単純にトップのいる真ん中を目指すんじゃなくて、サイドのスペースを見るようになったと思う。その中で右→左への斜めの質のロングボールで安田を狙うっていう形が目立つようになっていったと思う。同時に中村の攻撃参加を活発化させたのも、この時間帯から。その中でバーレーンのカウンター的なロングボールが見られるようになってくる。日本の3バック×相手の2トップみたいな少人数での攻防が目立った。ただし、基本的には日本の方が苦もなく跳ね返してたけど。

というわけで、最初の工夫によっては大きな効果を上げることができなかった日本。仕方がないので、次のアプローチへ。それは何かって言うと、日本に戻るっていう単純なことだった。前半の30分過ぎぐらいの時間帯から徐々にしっかりとつないで行こうっていう意識が高まって行った。横に広がった3バックでのパス交換が見られるようになり、同時に低い位置での保持時間が延びた。なんでもかんでも蹴りまくってたそれまでの時間とは明らかに違ったアプローチ。

やっとバーレーン×バーレーンからバーレーン×日本に落ち着いた。そして、地上からの攻撃をしてみると、バーレーンの守備の問題点が明らかになってきたと思う。最初っから日本的に戦っていれば、案外簡単に行けたんじゃないかっていう形。もちろんアウェーの戦い方、つまりリスクを冒さない戦い方っていうことで選択された蹴りまくりだったんだろうけど、ちょっと蹴り過ぎた印象。

そのバーレーンの守備の問題。そもそもバーレーンの守備は3‐5‐2(5‐2‐1‐3というか、3‐4‐1‐2というか)をセットしたところから開始。突如として守備のスイッチが入って(日本がもたついたりしたときに)、全体が前へ前へと出てくるシーンがあったのも事実だけど、基本的には積極的な守備をせずに自陣で受けるイメージが強かった。そういうわけで日本の攻撃のスタートのところは結構浮いた状態でボールを扱うことができたと思う。そのスタートのところっていうのは最終ラインの3枚だけではなくボランチまで含めて。中村が浮いた状態でボールを持って攻撃のスタートを切れるってのは、日本にとってはかなりラッキーな状況だった。

ただ、この時点ではまだバーレーンの守備に大きな問題があるとは言えない。バーレーンとしては日本の攻撃のスタートのところをフリーにしてるんだから、受け手の方は絶対的な対応をしなきゃいけませんねってとこ。ただ、今回の試合を見る限りでは、その受け手の対応の方もルーズな状態だったっていう印象を受けた。

これが問題点。ブロック内に入ってきたボールに対して、中途半端に距離を空けて対応する。ボールが入った後で気づいたように対応する。つまり遅れて対応するシーンが増えて、結果としてラフプレーが増えることとなった。駒野がいい形でドリブルで仕掛けるシーンを増やしたのも、ボールを持ってから余裕があったから。相手が気づいて対応する頃には、主導権を握っているのは駒野の方だった。

出し手も受け手もフリーでボールを扱えた日本。これによって東アジア杯で見られたビルドアップの問題は解決。何の苦もなく攻撃のスタートを切ることができたから。この点については立ち上がりからの蹴りまくり作戦で解決したと言えばしたっていう問題だったわけだけど。とにかく、簡単にブロックに入られてしまうバーレーンはゴール前に人数ベースのベタ引きブロックを作るってことになる。1点リードの最後の時間に見られたような。全体としてのやり方を見る限り、バーレーンの守備のやり方は、そういうベタ引きが基本なんだろうなって思う。

でも、その日本がバーレーンをベタ引き状態にする時間はあまり長くなかった。日本的に中盤を重視して戦えば、簡単にそういう状況にできたと思うんだけど。そして、いつもと同じようにラストの1/3に気を使うことができたと思うんだけど。アウェーとはいえ、主導権も日本の側が握ることができたはず。実際にそういう流れにならなかったのは、ここまで書いてきたように日本が日本的なやり方を捨てたからに他ならなかった。

その中で日本的なやり方が見られた前半の最後の時間の話に戻ってみる。この時間はつなぐ意識を強くし始めて、その中でバーレーンの守備の問題に気付き始めたってのは上にも書いたとおり。出し手も受け手もフリーになって、ビルドアップの問題が解決したってのも上に書いたとおり。

懸念材料だったスタートの1/3の問題が相手の守備のまずさによって解決した日本。でも、今回は途中の1/3がいつものようにスムーズには進まなかったようか気がする。最初のスタートが切れても、次のところでもたつくというかなんというか。だから、ビルドアップの問題が解決されたとしても、ラストの1/3をどうしようかっていうような考えに集中することができなかったような気がする。

その要因の1つは遠藤の不在にあったと思う。このチームにおける遠藤の重要度は高いから。というよりは、遠藤、中村、山瀬の3人が攻撃においてもたらす役割がかなり大きいから。この3人にFW、SBを加え、流動性をベースとしながら次々にトライアングルを作ってくってのが岡田色の1つ。結果として途中の1/3の場所は他の場所に比べて、恐ろしくスムーズに、効果的にパスが回る印象が強いチームになってる。

最初の1/3の怪しさについては東アジア選手権のときに書いたし、今回もここまで触れてきたとおり。最後の1/3の問題については今さら言うまでもない。岡田監督になってから生まれた問題ではないし、すぐに解決する問題でもない。半ばあきらめ気味。そういうわけで、このチームの中の要は必然的に途中の1/3だってことになる。その中核を担う遠藤-中村-山瀬のトライアングルの一角が欠けた今回の試合。途中交代も山瀬→遠藤だったから、この3枚が揃うことは結局なかったわけだけど。その中で効果的に相手のラストブロックに仕掛けられないような状況が見えてきてしまった気がする。

加えて、今回の試合の日本はサイドに起点を作ろうとうする意識が強かった。相手が3バックってことを考えれば間違った選択ではない。ただ、岡田色は真ん中からの攻撃重視な気がする。当初はオシム色を一部引き継いで、サイドに起点を作りながらっていう形も見られたけど、接近→展開→連続の消滅とともに消えていった。その後はここまで書いてきた、中盤の3枚を中心として真ん中を崩していく形が増えてたと思う。サイドはフィニッシュの利用。

そういうわけでサイドに起点を作るっていうやり方も結果を求めたアプローチの1つ。そして、このサイドに起点を作るっていう意識の中で、中核となるトライアングルのうちで残った山瀬と中村も中核から周辺へと押しやられることになってしまったと思う。どちらも役割はサイドの助け(あとは攻撃のスタート)。サイドに流れながらのプレーが多くなった印象。

だからといって、絶対的にサイドに起点を作るかと言えばそういうわけでもなかった。サイドの選手は絶対的な攻撃の選手ってわけではなかったから。今回の試合でいえば、守備に重点を置いていたといってもよかったかもしれない。だから、攻撃の中で核とするにはちょっと足りない。その辺があいまいだったと思う。

結果として、どこからどうやって攻めるかはっきりしなくなった。FWもあまり組み立てに参加してこなかったし。このチームではFWが組み立てに参加するってのが1つのやり方だったはずなんだけど。全体として形が見えなくなってた気がする。これも結果を求めたアプローチの副産物。

自己中サッカーで常に自分たちのやり方を押し通せとは言わないけど、ある程度の核は必要だと思う。今回は3‐5‐2システムでこれまでの4‐4‐2or4‐5‐1が消え、蹴りまくり作戦でパス回しが消え、遠藤の不在で攻撃の中核を担うトライアングルが片手落ちになり。細かいところまで挙げればキリがないけど、あまりにも手を加え過ぎた気がする。結果としてバーレーンの土俵に乗ってしまったってのは上にも書いたとおり。全く試合が落ち着かずに、蹴りまくりの流れになったのは、明らかに日本のスタイルにはあってなかった気がする。

それでもパス回しからバーレーンの守備のギャップをついて光が見え始めた前半の終り。後半に向けてこのやり方を継続をして行けば、日本の土俵に引き戻すことが可能だったと思う。つまり、狙いどころがなくなってベタ引きになったバーレーン守備ブロックに対して、日本がゆっくりとボールを保持しながらギャップを見つけていく(作って行く)っていうやり方。少なくとも前半の終わりには、それを期待してた。

でも、実際には後半になると再び蹴りまくりに流れになった。なぜかはイマイチ分からない。ボールを持ったら前線に蹴りだす。つながらずに相手のボールに。っていう展開が続いたと思う。後半も立ち上がりはリスクを冒さずに、とりあえず蹴りまくりましょうっていう考え方だったのかもしれない。

もう1つ考えられるのが後半は立ち上がりからバーレーンが勝負に出てきたこと。前半にはなかった中盤でつなぐっていうシーンが見られたし、何よりも前線にかける人数が圧倒的に増えた。前線にボールを送り込んで、後ろが飛び出して厚みをもたらすっていう基本的な考え方は変わらない。でも、後ろから飛び出して厚みをもたらす選手が明らかに増えたと思う。

基本的に低い位置で守っている日本の5‐3守備ブロック。後ろから飛び出されまくると、捕まえ切れない。しかも、基本的には人をベースに守備をしている日本の守備。最初の時点で捕まえられてない相手選手にそのままゴール前に入り込まれるシーンが見られるようになる。結果として後半の立ち上がりの時間帯は危険なシーンが増えることとなった。

これに対して蹴りまくりに戻ってしまったって考え方。前線に人数をかけている相手に対して、味方ゴール前でパスをつなぐってのは危険な選択肢。それに、とにかくゴールから遠い位置にボールを送ってしまいたいっていう意識もあったかもしれない。とにかく、せっかくパス回し中心の日本的なやり方に戻りかけた希望があっさりと消えてしまったのは事実だった。

ちなみに、この後半の立ち上がりの時間帯に危険なシーンをいくつか作られた日本の守備ブロックだけど、全体を通して見れば安定感のある守備ができてたと思う。少なくともルーズさが目立つバーレーンの守備ブロックから見れば、格段の差があった。だから、守備だけを見ると今回の試合の結果は妥当だとは言えないかなっていう気がしなくもない。

基本的にこのチームの守備には2種類ある。アジア杯のときにも書いたと思うけど、大雑把に言えば積極的に行くか消極的に受けるか。その判断はFWの守備を見れば分かるってのも前に書いたとおり。FWが深い位置の相手最終ラインにもプレッシャーをかけて行けば積極的、1度戻ってブロック作りに参加すれば消極的っていう考え方でいいと思う。少なくとも、これまでの試合ではその分類が当てはまった。

さて、今回。FWの守備意識を見る限りでは消極型。後半になると相手最終ラインに対して守備をしようっていう意識が見られたのも事実だけど、後ろの連動を見るとチーム全体としての意思統一が図れてたかどうかは微妙。そもそも攻撃のやり方までを大幅に変えてしまうほどに、相手を尊敬してた今回の日本。後ろにギャップを残してくるっていうリスクを背負う積極型の守備を採るってのはちょっと考えられない。

それに、今回のシステムを見た時点でこの消極型の守備は予測できた。前線から積極的に行くにはトップがスタートとなり、その次、次って連動することが不可欠。これまでは4‐1‐3‐2もしくは4‐2‐3‐1の形で2トップか1トップ下に中盤の3枚のフィルターが並ぶ形。対して、今回は3‐4‐1‐2もっと言えば5‐2‐1‐2。トップが頑張ったとしても、次が連動するにはちょっと心もとない。

それにそもそも岡田監督になって初の3‐5‐2採用は消極守備の下地だともいえる。消極守備においてはFWが積極的に追いかけない。だから、相手の出し手はある程度フリーになる。だから、受け手の方をしっかりとケアする必要がある。これはバーレーンの守備について上に書いたことと同じ。そして、受け手をしっかりとケアする1つの方法は見るべき相手をしっかりと見るってこと。そして、そのためにはシステム合致が近道となる。

相手の3‐5‐2に合わせてた3‐5‐2でこれを作った。3バック(日)×2トップ(バ)はよし。両サイドの攻防もよし。中盤の真ん中は相手のトップ下の4番を鈴木が見て、中村が7番、山瀬が10番っていう大まかな決まりごとがあったような印象を受けた。

これを利用したことでバーレーンとは違った質の守備が可能になったと思う。受け手に対してもルーズだったバーレーンの守備に対して、見るべき相手をある程度定めた日本の方は入りどころに対してきっちりとした対応が可能になった。しっかりと距離を詰めて、相手を足止めするような守備ができてたように思う。

そして、今回の試合で目立ったのは上でもちょっと触れたような挟み込みの意識の高さ。1人が相手のボール保持者を足止めにしたときに、1つ上の選手が助けに来るシーンがかなり多く見られた。基本的に効果的にパスを回すっていう選択肢がない(引き出しの動きもそれほど良くない)バーレーン相手には、1人が止めて、もう1人が協力するって形の守備でも十分に大きな効果をもたらした気がする。この前後の関係性のよさは、今回の試合ではっきりとよかったと言える唯一の部分だったかもしれない。

さて、後半の最初にバーレーンが勝負をかけてきたっていう話に戻る。このバーレーンの勝負は長くは続かなかった。日本がしのぎ切ると、バーレーンが完全にペースダウン。もちろん意図しない。同時に日本が遠藤を入れて、本格的に流れを引き戻し始める。

しつこいようだけど、ここで山瀬→遠藤っていう交代はちょっと違う気がする。今回の試合での山瀬の役割、つまりサイドの助けっていうことを考えれば遠藤の方が適してたのは確か。山瀬のよさであるゴール前に顔を出すシーンはほとんど見られなかった(そもそもゴール前のシーンがほとんどなかったけど)し、ボール保持者を助ける役割なら遠藤は大得意だし。だから、それまでの形を継続するならば山瀬→遠藤の交代は間違ってない。何よりも今回の試合はバランスを重要視してたはずだし。

でも、本格的に相手を押し込もうとするならばここまで書いてきたように山瀬を残して遠藤と中村とともに中盤にトライアングルを作りたかった。鈴木を下げるってのは現実的じゃないから、消え気味のFW1枚を下げるか(中盤をなんとかしないと、FWが目立たせられないんだからしょうがない)、いつもの4バックにするか。山瀬と中村でいつもの3人分の働きをしようとして、どちらも窮屈になったそれまでの時間。山瀬→遠藤の交代ではそれが継続するだけだった。

確かに、この交代で日本の方に流れが来たのは事実。後半の開始当初の蹴りまくりも減って行く。それは山瀬よりも遠藤の方が中盤をスムーズに回すってことについては上回ってたからってのが1つ。もう1つは上にも書いたとおり、ここぞの勝負をしのぎ切られたバーレーンの運動量ガタ落ち。相手の運動量が落ちると、嘘みたいに元気が出るこのチームだからなおさら。

それでも最後の最後の相手ブロックに仕掛けることができたかって言えばそれは違った。印象の話になるけど、やっぱりその前の1つのピースが欠けてたイメージ。いつもの1つ手前で抑えられてしまうことが多かったと思う。だから、これだけ攻めてるのにっていうもどかしい展開でもなかったと思う。1つ前で引っ掛けられることが多くなって、最後のシーンに行きそうな気配があまりなかったから。相手ブロック前で無為にパスを回すっていうアジア相手に見られる日本らしさ(いいか悪いかは別にして)も見られなかった。ついでに圧倒的に保持できたわけではなかったし。これは未だ残る縦への意識の起因したわけだけど。

そのうちに失点。今回の試合では日本も多用した縦一発から。やっぱり縦一発ではバーレーンの方が1枚上手でしたっていう話。日本は蹴りまくっても蹴りまくっても、あれほど決定的なチャンスを作ることができなかったわけだし。そして、蹴りまくるならば絶対的なFW、ここぞのチャンスで決められるFWが必要だなとも思うわけで。日本には明らかに合ってないスタイル。というか、あれだけ蹴るならなんで田代&巻にしなかったのかなって思った試合終了後だった。

この得点後のバーレーンは完全引きこもり。本当に完全引きこもり。日本にしてみれば、やっと落ち着いてボールを回せる時間になった。バーレーンにしてみればボールを回させてるってことなんだろうけど。後半の30分過ぎからいつもの課題であるラスト1/3に取り掛かることになった日本。時すでに遅しって。そう考えるとバーレーンはなんて絶妙な時間に先制点を奪ったかって話。

とりあえず、今回の日本は相手を尊敬し過ぎた。相手を尊敬し過ぎて相手と同じやり方を採用した。そして、同じやり方をするならばこれまで培ったものが大きいバーレーンの方が上だった。ただ、それだけの話。本当に相手を尊敬するから、相手の苦手なことをすべきだと思うわけだけど。そして、相手が苦手なのは本来の日本のパス回しだった気がする。あの守備を見ると。ベタ引きにさせてしまえば、相手の蹴りまくり作戦も前線の人数が足りなくなるし。とはいっても得点は前の2人だけで決めたバーレーンだから、それがどれほどの意味を持つかは定かではない。
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2008-03-25 Tue 15:40
アーセナル×ミドルスブラ
<アーセナル:4-4-2>
FW:ファン・ペルシー-アデバヨール
MF:フレブ-フラミニ-セスク-エブエ
DF:クリシー-ギャラス-コロ・トゥーレ-サーニャ
GK:アルムニア

ブラックバーン戦から久々にアーセナルの試合を見た。ブラックバーン戦ではエドゥアルドが完全にフィットして本当の意味でどこからでも攻められるようになったアーセナル。パス回しの質も変化したイメチェンアーセナルが見られた。でも、その後の試合でエドゥアルドが悲惨な怪我で離脱。チームとしても引き分け続き。結果だけを見るとチームがうまく回らなくなっている様子が見て取れた。

対するミドルスブラはいつ見てもいい質のサッカーをするチーム。たまたま見る試合、見る試合が当たりってだけかもしれないけど。ともかく、前線からの積極的な守備をベースとしたいいチーム。攻撃はそういういい質の守備で奪ってから一気に縦を侵攻するやり方。FWの引き出しの動きが素晴らしく、チーム全体の縦への意識も高い。結果として超素早い通り抜けフープで相手ゴールに向かうことが可能になる。

今回の試合でもミドルスブラの考え方は変わらない。少なくとも立ち上がりはいつもどおりやり方で試合に入った印象。FWが低い位置の相手最終ラインのボール保持者もリミッターなしで積極的に追いかけ回したし、それに対する次の連動性もいいものだった。前へ前への守備の中でより高い位置で狙おうと、中盤の選手が敵陣内で守備をするシーンが目立ったと思う。

こういう2つ目以降の守備の連動性がミドルスブラのよさだって言える。1つ目が効果的に機能してるってのは当然のことと考えると。この2つ目以降の守備の連動性っていう意味では、囲い込みとか挟み込みの質の高さも目立つ。前線で追いかけて制限し、次で引っ掛けるのが1つ。もう1つは縦に入ってきたところで厳しく当たり、相手を釘づけにしておいてすぐに数的優位で囲い込むこと。どちらにしても、中盤での質の高い守備が見られる。

今回の試合でも立ち上がりは引っ掛け、囲い込み、挟み込みと中盤での質の高い守備が目立った。結果として敵陣で効果的にボールを奪うシーンも増えたと思う。そこから縦への意識が強いショートカウンターで敵陣深くまで入り込むシーンも作り出せてた。そういう意味でミドルスブラがミドルスブラらしく振舞った立ち上がりだった印象。

ただし、相手はアーセナル。これが大きな問題だった。ミドルスブラの中盤での囲い込みとか挟み込み。それが完成する前、つまり囲い込み切る前とか挟み込み切る前に逃げる力がアーセナルにはあった。それはアーセナルらしい流動性をベースとして、ボールに対して複数の選択肢を常に用意しておくやり方で。立ち上がりこそ相手のプレッシャーをそのまま受けてしまっていた印象の強かったアーセナルだけど、徐々にそれを否すことができるようになっていった。

そうなるとミドルスブラとしては困った話になる。前へ前への守備意識は、それが機能しているうちはいいけど、抜け出されるようになるとギャップが多いってことになる。守備のために前に出てきてる選手は裏を返せば引っ張り出されてるってことと同義であるから。抜け出されて、DFと中盤の間に入り込まれるシーンが目立ち始めると、ミドルスブラの方に怖さが生まれてきたと思う。この辺は時折相手のウラへ一発のボールを蹴り込むアーセナルのアプローチのよさもあったと思うけど。

とにかく、怖さが生まれてきたミドルスブラ。だんだんと高い位置に設定された一体感のある守備ブロックを維持できなくなっていった。それでも守備のスタートとなる最前線の追いかけは、忠実に行われ続ける。この前後のところにギャップが生まれ始めた、前半の5分過ぎだった。さすがはアーセナルのパス回しって話。

じゃあ具体的にどういうギャップができたか。まず、アーセナルの最終ラインを追いかけまわすことをやめなかった。普段は縦っぽい関係になることが多くなる気がする2トップだけど、今回は横並びでどちらも前に対する守備を行ってた。なぜかは分からないけど、この縦関係から横関係への変更もギャップを作り出す要因の1つとなっていた気がする。

中盤では左サイドのダウニングは頑張ってた。2トップと同じように自分の前に対する守備を積極的に行っていた印象。それに引っ張り出される形で、右SBのポガテツも積極的に前へ前への守備を行ってたと思う。それに対して右サイドのオニールは守備であまり目立たなかった。これは途中からってことではなくて、立ち上がりからずっと。サーニャにボールが入ると追いかけまわしてたダウニングとは対照的に、クリシーにボールが入ってもオニールは中途半端な距離をとってた気がする。

だから、ミドルスブラのいい守備に対するアプローチもアーセナルは左サイドから行った。立ち上がりのミドルスブラの守備の中で唯一のギャップといってもいい場所だったから。そういう場所を起点として攻撃をはじめ、徐々に相手ブロックの本丸に入って行ったイメージ。だから、立ち上がりのアーセナルは左サイドに起点を作るシーンが目立ったと思う。

それでも上にも書いたように、この右サイドの守備がギャップっぽくなってたのは試合開始当初から一貫してたミドルスブラ。それでも立ち上がりは高い位置での守備が機能してたのは上にも書いたとおり。2トップとダウニングの守備も一貫して、相手を追いかけまわすことで変化がなかったわけだから、つまり直接的に変化がもたらされたのはCMFの守備の意識だったと思う。

立ち上がりは敵陣で守備をすることが多かったミドルスブラのCMF。このCMFに任せられたのは、相手のCMFに対する対応。2トップが相手最終ラインを追いかけまわしてる以上、1つ下のスペースが空かないようにするのはCMFの役割。この場所はアーセナルのCMFだけではなくて、降りてきた2トップが入り込む場所でもあるから、アーセナルにとっては攻撃の中で重要な場所だったって言える。

立ち上がりはその場所でボアテングが目立ちまくり。FWが最終ラインを追いかけ制限した上で入ってきた縦パスに対して厳しい対応を繰り返した。ただし、スタートの時点で制限がかかっていなかった右サイド(アーセナルの左サイド)から入ってくるボールに対しては、相手を浮かしてしまっていたのも確かだったけど。とはいえ、CMFがFWウラのスペースを埋められてる間は守備が機能してたって言ってもよかった気がする。

でも、上に書いたようにそういう守備をアーセナルが逃げ出し始める。囲い込みとか挟み込みを抜け出されて、引っ張り出された状態で奪いきれずに、中盤のウラに入られるシーンが散見されてくる。この時点でミドルスブラのCMFに迷いが生じた。前に引きつけられるべきか、後ろの引きつけられるべきか。ここんとこにあいまいさが目立ってきたと思う。

前に引きつけられるときにはそれまでと同じように高い位置での効果的な守備ができる形を作り出せた。ただし、背後にギャップを残してきているっていう怖さとともに。本当は最終ラインを上げてその怖さを取り除けばいいところなんだけど、それはアーセナルの一発パスの怖さに負けてしまっていた。

逆に後ろの引きつけられたとき。アーセナルは攻撃のスタートのところが浮きまくり。CMFはフリーでボールを扱い、降りてきたFWにも簡単にボールが収まった。そこから、相手の守備が消極的な左サイド(ミドルスブラの右サイド。ミドルスブラの左サイドはまだ守備の積極性が残ってた)に展開することが多くなった。ミドルスブラのFWが頑張って追いかけ回したとしても、次が連動しなければ意味がない。ミドルスブラの守備のよさは次の連動のよさにあるってのは上にも書いたとおりだから。

とりあえず、簡単にアーセナルに攻撃のスタートを許すことになれば後はベタ引きになるしかない。アーセナルのパス回しが始まってしまった以上。途中途中で狙うってのは現実的ではないと思う。そういう途中途中で狙う形だと、嫌っていたはずのギャップを残すことになるわけだし。結局は最後の最後に人数ベースの守備ブロックを置くことになったと思う。

問題はここのところのあいまい性をどうするかって話。本来やりたい形を貫いて前に引きつけてリスクを負いながらも次の攻撃にもつながるような守備の形を目指すか、後ろに引きつけてベタ引きになるのか。あいまいは問題。どちらかに統一したい。というわけで、ミドルスブラは後者に統一。ベタ引き守備にして、守備の重心を後ろに移したと思う。

それならば、もうFWは追いかける必要はない。みんな後ろの守備意識が高いのにトップだけが追いかけてたらスタミナの無駄遣い。だから、前半の10分~15分の間ぐらいの時間にミドルスブラのトップは追いかけるのをやめた。2トップをハーフェイライン付近まで戻して、完全に引いて受ける形。潔いいというかなんというか。守備の180°の転換をあっさりと行ってしまった気がする。

この潔い守備は得点によってさらに潔さを増した。ちなみにこの得点にもあるように(ここはFKからだったけど)、ミドルスブラの攻撃は守備のやり方を変えても変わらなかった。つまり縦への意識が高いもの。トップの引き出しにロングボールを蹴りまくりっていう形。相手の中盤を飛ばす通り抜けフープ。ただ、潔さを増したミドルスブラはそういうロングボール一発の攻撃さえもほとんどしなくなっていったと思う。

さて、こういう潔いミドルスブラに対するアーセナルの攻撃。とりあえず楽にボールが持てたのは確か。恐ろしいほどにボールをポゼッションしてた。その中で今回の注目はアーセナルの攻撃がどうなってるか、エドゥアルド抜けのアーセナルがどういう方向に向かうのかっていう点だった。そして、今回のアーセナルの攻撃の問題はフィニッシュに行けないってことだった。あれだけポゼッションをしておきながら。日本代表かって話。

まず1つとして、左右の大まかな役割分担ができてたような気がする。もちろん流動アーセナルだから、完全役割分担ってわけではない。ただ、見た感じでそういう印象を受けたのは確かだった。それがフィニッシュに行けない要因の1つになっていたような気がする。その役割分担について見てみたい。

右サイドはエブエとサーニャとアデバヨール。こっちは縦への積極性。エブエとサーニャの積極的な仕掛けをアデバヨールが助けるっていうイメージが強かった。対する左サイドは、フレブとクリシーとファン・ペルシー。こっちは右サイドとは趣が違う。クリシーはサーニャほど積極的に出てこなかったし、ファン・ペルシーの役割もアデバヨールのようにサイドの助けというよりは、フレブと入れ替わりの動きっていう形が多かったように思う。

とりあえず、こんな感じで左右の大まかな役割分担ができたアーセナル。結果として1つの注目点であったエブエの特別性は見られなかったと思う。前のアーセナルは専業エブエの右サイドにみんなが集まる形が見られて、そういう超密集地帯でのパス回しで崩すことが多かった。エブエが戻ってきて、その部分がどうなるかって思ったけど、ここまで書いてきたように全員が右に集まるってことはなくて、むしろ左右にバランスのいい配置になってたと思う。

そして、この左右の役割分担をつなぐのが真ん中の2人。セスクとフラミニだった。大まかには後ろのフラミニと前のセスクっていう関係性。フラミニは後ろの逃げ場としての存在。詰まった時に後ろのフラミニを経由してサイドを変える役割が目立った。これも右サイドの特異性をなくした1つの要因。左右の幅の利用ができてたと思う。

これに対してセスクは前線での助け役。右サイドにボールがあれば右寄りに、左サイドにボールがあれば左寄りに位置してボールを受けられるような場所に入っていたと思う。そうやってタッチ数を増やしていた印象。ただし、これは非常にトップ下的な役割。そういうトップ下的な役割もいいけど、ちょっとトップ下的すぎた。セスクの良さであるCMFの場所からFWにまでなるような形がいつもより少なかったと思う。その1つ前で止まってしまうというか。結果として、FWが流れるとゲッターが少ないって状況に陥っていた気がする。

もちろん、いつでもどこでもFWが流れてるわけではない。アデバヨールは右に流れることがあったのは事実だけど、FWの場所でのプレーが多かったのは事実。少なくとも一時期のような流れまくりの状態ではなかった。ファン・ペルシーについても真ん中でのプレーがあったし、何よりファン・ペルシーが外に流れれば代わりにフレブが入ってきたわけで。だから、必ずしもトップレスの状態に陥っていたわけではない。問題は物理的に人がいるかどうかではなくて、実質的に人がいるかどうかにあった気がする。

つまり、FWの場所に人がいなかったわけではなかったけど、役割的にFWがいなかってのが問題だって言える。FW=ゴールゲッターと捉えた場合だけど。つまり、ゴールの近くにゲッターとして振舞う選手が少なかったってこと。どの選手もパス回しの中の1つの経由点として振舞う方に力を入れてたと思う。

確かにアーセナルの中でFWがパス回しに参加する意味合いは大きい。というか、FWに縦パスが入るってことがかなり重要になってくる。この縦パスの重要性に関しては、今までにも何度も書いてきたとおり。縦パスが入るごとに前に1人増えるイメージのアーセナル。縦パスがスイッチとなって流動性が開始されるアーセナル。そんな感じで書いてきたと思う。

縦パスが入るとそれに合わせて周囲が適切な場所に動く→選手が動いたスペースを次が埋める→次、次、、、ってな感じ。ボールが動けば状況が変わるわけで、その中でグルグルとポジションが変わって行くのがアーセナルらしさ。ボールの動きに合わせて人が動き、人の動きに合わせてボールが動く、さらに人の動きが人の動きを生み出す。そんなアーセナルサッカーのスタートは縦パスによってもたらされる。

だから、アーセナルにとって縦パスは重要。トップの選手の縦パスを受ける役割が大きく、そのための動きが多いのも確か。だからこそ、FWがCMFの場所まで降りてくるなんてのがザラに起こるアーセナル。ただし、今回の試合に限ってはトップに縦パスを入れる意識が高過ぎた気がする。結果として、トップがゴールに向かうよりも縦パスを受ける方の役割に追われてしまった印象。

その要因はミドルスブラの潔さにあったかもしれない。そもそもスイッチとなるアーセナルの縦パスは絶対的にトップに入らなければならないってことはない。例えば、左サイドで降りてきたロシツキーがボールを受ける→クリシーが飛び出し、トップがロシツキーのサイドに流れるってな感じで流動が始まる形もいくらでも見られたわけで。

ただし、今回は受ける選手はトップじゃなきゃいけなかった。もう少し正確に言うならばトップの場所にいる選手じゃないきゃいけなかった。縦パスを受ける相手は、その場所の選手しかいなかったから。例えば上のロシツキーの例。これは最終ラインがボールを持っていて、さらに縦に入れどころがないことが根底に流れてる状況。簡単に縦に入れられる状況ならば、わざわざロシツキーが降りてくる必要はないわけだから。

対して今回はどうだったか。ボールはかなり高い位置まで普通に持ちあがれる。ミドルスブラがベタ引きだったから。そして、前には受け手がいっぱいいる。全体が押し上げてるわけだから。出し手がフリーで受け手の選択肢が多い。だから、上から選手が降りてくる必要性はない。結果として縦パスはトップの場所に位置した選手に入れることが多くなる。

さらに別の見方も。効果的に高い場所でボールを奪った場合を考える。押し上げ途中の相手はベタ引きブロックを崩している。ベタ引きを作られる前に攻めきってしまいたいアーセナル。手っ取り早いのは前線に早くボールを供給すること。つまり、トップに縦パスを入れること。こういう点において、トップに縦パスを入れる意識の高さが目立ったって言えると思う。

そういうわけで、そもそもアーセナルというチームの中ではFW=ゲッターっていう図式が成り立たないのは事実ではある。トップが縦パスの受け手になった代わりに、適切な場所にいる別の選手がゲッターになればいい。それがアーセナルのやり方。だから、いつもよりはトップが縦パスを受ける方に気を取られてたかもしれない今回も、別の選手がゲッターとして入ってくれば何の問題もなかった。ただ、今回はそれもできなかったと思う。

その要因はアーセナルのダイレクトパス大好き状態にあった。アーセナルのダイレクトパス大好き状態は前々から見られた。ただし、イメチェンを図ってきたアーセナル。ダイレクトパス大好き状態には別れを告げ気味だった今日この頃。この試合の前の数試合を見てないから、はっきりしたことは言えないけど、少なくともブラックバーン戦まではそういう流れだった。

なぜか?エドゥアルドがフィットしたアーセナル。結果として本当の意味でどこからでも攻められるようになったってのは上にも書いたとおり。そして、これは攻撃における特異点がなくなったことを意味した。つまり、全体が平等になったってこと。そうなれば当然のようにピッチ全体の選手の配置のバランスがよくなる。だから、アーセナルらしさの1つであった超密集地帯の形成がなくなる。これは選手間の距離が広がることを意味する(アーセナルにとっては)。これに伴って1人1人の保持時間が延びる傾向にあった。これがアーセナルのイメチェンの1つだったと思う。

エドゥアルドが抜けたアーセナル。エブエが入ってもしかしたら特異点が再来するかもしれないって可能性はあった。前の特異点は専業エブエの周囲で作られてたから。それはそれで見てみたかったのも確かだったけど、実際に特異点ができなかったのは上にも書いたとおり。つまり、ピッチ上の選手の配置のバランスがいいっていう状況は維持された。

ここで考える必要があるのは、ダイレクト大好き状態は超密集地帯の形成とセットだったってこと。超密集地帯ならば、それぞれの距離が近いからダイレクトでのパスが回しやすい。それにダイレクトじゃなければそういう超密集地帯を抜け出すことは無理だったともいえる。

逆にいえば超密集地帯が形成されない状況ではダイレクトにこだわる必要はない。イメチェンもそういう方向に向かっていたってのは上にも書いたとおり。アーセナルの中でパスの重要度が高いのは事実ではあるけど、別に全てをダイレクトでやる必要はない。タメが相手のギャップを作ることもあるし、そもそもダイレクトではミスが多くなる。いくらアーセナルの選手たちとは言っても。

チームとしてパス回し重視は維持しながらも、ダイレクトが減ってきたアーセナル。もちろん全くなくなるわけではなかったけど。それなのに、今回のアーセナルはダイレクト重視に戻ってたと思う。なんでもかんでもダイレクトで回そうとしてた。超密集地帯を抜け出そうとするアプローチのように。でも、今や超密集地帯はない。ダイレクトでは正確性に欠ける。トップに当てて出て行こうとうする試みが多くあったのに、それが失敗する。ダイレクトでやろうとしてズレるから。結果としてFW以外のゲッターがゴール前に入ってくる形を作り出せなかった。

そもそもミドルスブラはベタ引き守備。鬼のようにベタ引き守備。ほとんど全員をゴール前に並べる時間も長かった。そういう意味では超密集地帯。でも、アーセナルの選手は超密集してない。ある程度の距離感を保った状態からスタートする。そういう状況でのダイレクト多用。ちょっとしたズレは相手の超密集に引っかかってしまう。何しろ人数が尋常じゃないわけだから。

これを考慮してか、後半は1人1人の保持時間が延びた印象。強引さが増したというか。ウォルコットの投入も似たような意図があった気がする。投入直後はドリブルで仕掛けまくった。ただ、本当はタメたかっただろうなってのが正直な感想。単純にドリブルでの突っかけなら、前半からエブエが頑張ってたし。それでも、前半のようにダイレクトにこだわって引っ掛けられる攻撃の繰り返しよりは可能性を感じたのも事実。

ただし、後半も時間が経つにつれて鬼のようなミドルスブラのラストブロックの枚数が鬼のように増えていく。何が何でも1点を守りきってやるぞっていうイメージ。途中からは何が何でも勝ち点1は持って帰るぞってイメージ。これだけの徹底ぶりはあまり見られない気がする。何しろアルムニアを残した全員がミドルスブラ陣内に入ってたぐらいだから。

アーセナルとしては最悪の展開。攻めても攻めても攻めきれない。前半からずっとその流れだった。ベタ引きの相手は前線の人数が少ない。当然のように跳ね返したボールはアーセナルのもとへ。そもそも、攻撃にかけた人数の分だけ守備の機能性が高まると言ってもいいアーセナル。なぜなら攻撃の切り替えからの守備の質が一番高いから。今回は攻撃にこれでもかってぐらいに人数をかけたわけで、その切り替え後の守備でボールを自分たちのものにすることが多くなったのは当たり前。ずっと攻め続けたって言ってもいいような試合展開だった。だから、なんとか追いつけてよかったねってとこか。

ところで途中交代のベントナー。前に見た時エドゥアルドとともに全くフィットできてなかったけど、今回はそれなりに目立つことが多かった。組み立てに参加するってのが1つのポイントになるアーセナルのFWの役割に慣れてきたイメージ。加えて高さっていう武器も見せつけるシーンがいくつかあった。エドゥアルドとは違ってコンスタントに使われてたわけではないけど、時間とともにアーセナル色に染まってきたなって気がする。

ミドルスブラの方は全く違ったイメージを抱かせてくれた。いつも見るときは前からの守備の良さだったから。はっきり言って今回は180°違った内容。今回は戦術云々よりも根性ベースというか、集中力ベースというか、そういう印象が強かったのは確か。それでも試合の途中で大がかりな改造をやってのけたってのはすごかった。下の方ではやっぱり一番注目したいチーム。
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2008-03-23 Sun 11:14
U‐23:アンゴラ戦招集メンバー
GK:佐藤優也、西川周作
DF:伊野波雅彦、田中裕介、細貝萌、青山直晃、長友佑都、森重真人
MF:本田拓也、梶山陽平、青山敏弘、上田康太、梅崎司、香川真司
FW:豊田陽平、李忠成、岡崎慎司、興梠慎三

まずFWの平山が外れたのが大ニュース。でも、こっそりと森島も呼ばれてない。このチームで一貫されてきた前線のターゲットが消えてしまったことになる。豊田って選手は見たことがないから、もしかしたら森島&平山の代わりになる選手?それとも、あきらめてオーバーエイジに託したのかもしれない。タイプ的には田代、前田、矢野あたりが有力なのかな。とりあえず、残ったFWは走りまわれるタイプばかり。かと思えば、カレンが呼ばれてなかったりするわけだけど。

まあ、こっから方向転換をして今までとは全く違う走り回りサッカーに変えてみるのも面白い。と思って、中盤を見てみると走りまわれない。菅沼とか増田とか枝村とか谷口とかチームのためにがんばるようなタイプがいない。だんだんと技術重視になったチームの中で消えていった選手たちは、このまま消えてしまう模様。で、その技術重視のチームで残ったがんばれる選手たち。柏木、本田圭、水野。残念ながら今回は呼ばれてない。これらの選手は外されたっていうよりは、それぞれの事情で呼ぶことができなかったんだろうけど。

とりあえず、アンゴラ戦のサッカーは全く予想がつかない。最前線は頑張るが空回り、中盤がなくなってしまい、守備の堅さでなんとか0‐0みたいなことにならなければいいけど。その守備の堅さも、水本が抜けたことでどうなるか未知数なわけで。本当は去年問題点として見られた、ビルドアップをどうすうるかってとこの修正を見たいこの試合だけど、そんなことは言ってられないかもしれない。何か1つでも収穫があれば。

このアンゴラ戦の前日はA代表のアジア予選。こっちのメンバーは東アジアを核として、層を厚くしたイメージ。それでも層が薄い気がするのは確かであるけど、まあなんとかなるでしょって感じ。メンバー的なものに対する不安はあまりない。ただし、どの方向に向かっていくかってのが大いに不安だけど。ただし、アジア予選っていう性格上、あまり内容を求めるものでもないのかもしれない。勝ちに行く試合でどういうやり方を採ってくるかってのも1つのポイントではあるけど。
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2008-03-20 Thu 21:23
チェルシー×ダービー
<チェルシー:4-3-3>
FW:カルー-アネルカ-Jコール
MF:ランパード-バラック、マケレレ
DF:Aコール-テリー-カルバーリョ-フェレイラ
GK:クディチーニ

残念ながらダービーは成績どおりのチームだった。プレミアでかなり苦しんでる様子が成績からはありありと見えるダービー。実際に試合を見てみると、それも仕方ないかなっていう内容だった。確かに個々の力差があるのは仕方がない。相手がチェルシーならなおさら。でも、ダービーはその個々の力差を埋めるような組織としてのアプローチをしていないような印象。結果として、個でも組織でも相手に対抗できるところがない状況。

そのダービーの守備は守備組織を自陣に作って受けるもの。トップのミラー1枚だけを前線に残して、後ろの4‐1‐4が自陣に引いてしまうやり方が見られた。でも、ベタ引きではない。最終ラインはある程度の高さを保つことが念頭にある。前線を後ろに引きつけ、最終ラインを前に引きつけ。早い話がコンパクトな守備ブロックを形成してる。そうやって相手が使えるスペースをつぶしてしまう考え方。

この組織作りの考え方には何の問題も感じない。むしろ、いい内容であるとさえ言える。でも、ダービーの守備はこういう組織作りの時点で完結してる。自陣のスペースをつぶした時点で満足してるイメージ。しっかりとスペースをつぶしちゃえば、相手はこっちに仕掛けてこれないでしょっていう自信があるかのよう。

でも、実際にそんなことはあり得るはずもなく。そもそも、能動的な守備は一切行わないダービー。相手の攻撃のスタートのところは完全に自由になる。つまり、好きなタイミングで好きなボールを前線に供給することが可能。ついでに、スペースをつぶしたことで酔っているダービー。相手選手が動いてボールをもらおうとしたところに対応する意識が恐ろしく低い。

これでスペースをつぶしただけで守れるって考え方は打ち砕かれる。相手の受け手が全く動かずにボールを待つならともかく、ちょっと動けばフリーでボールを受けられる状況。出し手も受け手もフリーな相手は好きなように前線にボールを供給してくる。

これに対してダービーは何もしない。文字どおりに何もしない。守備のベースはスペース潰しの組織づくり。それだけしかないダービー。このダービーの守備の相手が恐れをなして、ブロックに仕掛けるようなボールを入れなければダービーの守備は成功する。でも、ここまで書いてきたとおりにそんなことはあり得ない。そして、ブロックに仕掛けられたときのダービーには守備の根拠が皆無だった。

そういうわけでほとんどの場所において守備の根拠が皆無。ブロックに入り込むパスは見てるだけ。よって、ダービーブロック内に入ってきた相手のボールはフリー。ドリブルで持ちあがってくる相手にも特に対応はしない。見てるだけ。あえて言うならば、ブロック全体をズルズルと押し下げていくってことぐらいか。

全く守備のスイッチが入らないダービー。守備のスイッチが入らないというか、もっと言えば守備が行われないダービー。上にも書いたようにズルズルと下がって行くだけ。結局、残念ながらダービー自慢のスペース潰しブロックは維持できない。ゴール前を人数ベースのブロックで固めるっていう時間が長くなった。

ただし、その人数ベースのブロックも不安がありまくり。人が多いのに相手はフリーってことが多くなる。原因は相手を捕まえ切れないこと。人と人との間に入ってくる相手には誰もつこうとしない。完全に浮いてる。ゴール前の危険なエリアで。さらに、守備の構造上、相手の後ろからの飛び出しを捕まえられなかった。前線に1枚を残して、後ろにみんないるダービー。相手の後ろから出てくる選手を捕まえて戻ってくる人は物理的にいない。そして、後ろから飛び出してきた相手はみんな知らんぷり。

それでも時間によっては1つ1つの守備をはっきりさせようとする意図は見られた。前後半の立ち上がりと、1点目を奪われた後、それから後半にもう攻めるしかなくなってから。その時間にはブロック内に入ってきたボールに対して厳しく対応しようとした。ただし、実効性は微妙。1つ1つで抑えようとしても、次の連動がない。それ以外の時間よりはチェルシーがゴール前にボールを運ぶのが難しかったかなってレベル。後半は結構、厳しく来たけど楽に否されてギャップに入って行かれる形だった。

というわけで、チェルシーの方は全ての場所で自由にやれたと言っても過言ではない。さすがに相手のラストブロックを崩すのは、組み立てほどには楽ではなかったけど。ただ、これも相手がたくさんいすぎて窮屈になっちゃってるってだけ。上にも書いたように、ダービーのラストブロックに堅さがあったわけではなかった。だから、チェルシーの方に微妙なズレがなければ決定的なチャンスにはつなげ放題だったと思う。

こういう試合だからこそ、チェルシーのやろうとしてる形を見るには適してた気がする。好きなことを好きなようになれるのならば、普通に自分たちのスタイルが見えるでしょっていうこと。あえて、別の方式を採るほどひねくれてないはず。リバプール戦のように強いチームと戦ったときに、やりたいことをどれだけできるかってのがポイントになるのは事実。ただ、そもそも今回のようにやりたいことをやれる試合でやりたいことが何なのかってのを見てみたかった。

そのチェルシーがやりたいことは何か。早い話がパスをつなぎたいってことだったと思う。アーセナルにあこがれたのかどうかは知らないけど、とにかくショートパス至上主義。確実にパスをつなぐことを念頭に置いてる。確実性の薄いロングボールなんてものは、ほとんど見られなかった。そして、じっくりとパスを回しながらいろいろなアプローチを考えてる印象。縦を急いでスピーディーに攻めていくような、昔のチェルシーらしさは微塵もなかった。

もちろん相手がダービーだからじっくりと攻めた側面もあったかもしれない。下手に急がずに、確率の高いところ高いところへとつないで、機が熟するのを待つって考え方もありうる。ただ、前に見たリバプール戦でもパスをつなぐ意識の高さが見られたのは事実。ただし、リバプール戦では相手のいい守備の前に、パス回しを分断され失敗。それでもつなごうとしたのが逆に印象的だった。だから、このパス回しの意識は今のチェルシーがやりたいことだって言えると思う。

というわけで以下ではショートパス至上主義のチェルシーのやり方について見てみたい。少なくとも、モウリーニョ色は明らかに減退している。というか、真逆なんじゃないかと。モウリーニョのときと比べればどんだけゆっくり攻めてるんだよって話。モウリーニョ時代の悪い時期には人が追いついてないのに、ボールだけが前線に供給される状況だったし。そして、ドログバ頼み。そして、現状では、大きな方向転換が、段々と板についてきてる。それが結果となってあらわれてきてる今日この頃ってな感じか。

とりあえず、立ち上がりのチェルシーはまだやりたいことをやりたいようにはしてなかったと思う。この時点ではまだ、ダービー自慢のスペース潰しブロックのバランスが維持されてたから、ひとまずそのブロックのバランスを崩すアプローチをする必要があった。そういうわけで、立ち上がりの時間にだけ見られたやり方がいくつかあった。

1つは↓↑アプローチ。ちょっと言葉で説明するのは難しいので↓↑で表す。↓は前線の選手が降りてくるような動き。ランパード、バラックが交互に低い位置に組み立てを助けに来たり、アネルカが下がってきてボールを受けたり。これはこの時間に限らず、全体として見られたことだったけど。そして、後で詳しく書くように↓の動きは今のチェルシーの1つの特徴かも。

だから、この時間帯に限って特徴的だったのは↓と組み合わされた↑。これは誰かが下がる動きでボールに近づくランニングをしたときに、別の場所でボールから遠ざかるランニングで相手のウラを狙う動きが見られたってこと。相手はボールを受けに下がる選手に意識を向ける。つまり、意識が前に引っ張り出される。ボールウォッチャーになることが多かったダービー守備陣はなおさら。これと同時にウラへのランニングが来ることで、そちらへの対応がおろそかになったと思う。そもそもダービーの最終ラインはある程度の高さに設定することを念頭に置いていたわけだし。

このボールに近づくランニングと遠ざかるランニングを組み合わせた、↓↑のアプローチは興味深かったんだけど、時間とともにほとんどなくなって行った。その理由は簡単。ダービーの守備ブロックが完全に押し下げられてしまったから。もはや、↑の動きで狙うウラのスペースはなかった。

この立ち上がりの時間に見られたもう1つの特徴的なアプローチは低い位置での右寄りのパス回し。考え方としてはマンU的か。左のAコールは前線に積極的に飛び出して行くから、後ろのパス回しはCBと残った右のフェレイラで行われてたと思う。これにマケレレを加えて。結果として右寄りに攻撃の起点が作られることが多かったと思う。ただし、時間とともに横に対して揺さぶりをかける必要がないと分かったこと、フェレイラも攻撃に出て行くようになったことから、こういうやり方もほとんど見られなくなった。

ちなみに得点を重ねて行った後に試合を締める時間帯には、この最終ラインでの横のアプローチが復活。これにはAコールも参加してた。別に前線に上がって行く必要もない時間だったからか。そうやって最終ラインで大きく左右にボールを回しながらゆっくりと保持することが多くなった。ちなみに、そういう最終ラインのパス回しから得点も生まれた。低い位置のパス回しに相手の中盤が焦れて前に出てきたところで、DFと中盤の間に入り込んだランパードにボールを送り込んだシーンだった。

ここまで書いてきたのは、今回は立ち上がりの時間帯にだけ見られたアプローチ。でも、本来的にはこれらのやり方がコンスタントに使われるかもしれない。今回は途中からそんな遠回りアプローチの必要がなくなっただけ。そういう意味ではランパードとバラックの役割も。立ち上がりはランパードかバラックのどちらかがマケレレと横並びのような関係で、スタートを担うことが多かった。でも、時間とともにそういうシーンは減って行く。相手のプレッシャーが全くないから、マケレレとCBに出し手の役割は任せて、2人とも前線に出て行った。結果、前線の厚みが増す結果が生まれたと思う。

ちなみに、この出し手としてのマケレレの役割がチェルシーのイメチェンを最も象徴的に表してるような気がする。今回の試合ではマケレレは守備よりも攻撃で目立つことが多かったように思う。もちろん、守備で目立つ機会がほとんどなかったのも事実ではあるけど。それでも攻撃の起点としてのマケレレの役割はかなり目立った。中盤の底の場所でパス回しのスタートを担うことが多かったと思う。縦パスを入れるか、左右に散らすか。マケレレのスタイルとは違った、そういう攻撃面でのセンスが感じられた。得点につながる“キラーパス”もマケレレから供給された。

それに相手を押し込んだ時にも1つ下のマケレレの役割は大きかった。基本的には1つ下のマケレレの役割は守備を考えてのもの。特にSBが積極的に上がって行った今回は、後ろの守りを考えた2+1への参加が見られたと思う。ただ、同じ場所での攻撃の逃げ場としての役割も重要だった。マケレレが1つ下で逃げのパスを受けることで、攻撃における縦の幅が生まれた。みんなが前に前に詰まるのではなく、前後の揺さぶりを使えた印象。そうやって作り直すことで渋滞をなくす効果があったと思う。

マケレレとともに特徴的な動きが見られたのがトップのアネルカ。今回の試合で見られたアネルカはアデバヨールに匹敵するぐらい、いやそれを上回るレベルでトップの場所を留守にした。サイドに流れたり、場合によってはマケレレの場所に降りてきたり。それが時たまではなくてコンスタントに。普通の状態ではトップの場所にはいなかった。

結果としてトップの場所の出入りは激しくなる。バラック、ランパードにカルーあたりも効果的にそのスペースを活用。後で書くように前線にかなり多くの人数が入ったチェルシー。それでも前線の場所で思い切ったポジションチェンジを繰り返すことで渋滞を防いだと思う。しかも、動いた相手を誰が見るかはっきりしないダービー。それを考えてもトップの場所の出入りを激しくしたことで相手に与えた混乱は大きかった。上に書いた組み立ても含めて、前線の厚みをこう着させずに有効に活用するやり方が見られた印象。

こういう特徴的な動きが要所要所でいくつか見られた今回の試合のチェルシー。後はSBが超攻撃的なこと。その中で全体として見て一貫してたのはしつこいほどに言うようにショートパスをつなぐこと。それぞれが、そのショートパスをつなぐことを念頭においた動きが見られた。ポジション固定的なアーセナル。それは言い過ぎか。

とにかく目立ったのがボールの近くの選手の多さ。サイドに起点を作っている時には、チーム全体が明らかにボールサイドに偏っていた。そして、そういう近さを生み出すためのボールに近づくランニングも多かったと思う。↓が重要だって書いたのはそういうわけ。組み立てのところで、高いところから交互に選手が降りてきてボールを受けるシーンが多かった。これは一例。全体としてボールに寄って行って、ボールを引き出そうっていう動きが目立ってた印象。

そして、そういう近い場所でそれぞれの選手が適切な場所に入る。次を受けられる場所に入る。そうやって、近い場所での選択肢を増やして行ったと思う。基本的なトライアングルが作られまくり、ボールに対する近い場所の選択肢が常に複数用意されてたと思う。

そういうパス回しの中で、特に目立ったのがバラック。いつのまにバラックがこんなにチームの中核になったんだって感じ。ギャップギャップにうまく入り込みながら、常にボールを受けられる体制をつくり、経由点として機能してたイメージ。全体のバランスを見ながら効果的なプレーを繰り返した。

こういう近い関係性の重視は非常にチェルシーらしくない。正確にはモウリーニョからの大きな変化。以前のチェルシーはどっちかっていうと、遠くを意識してたイメージが強い。縦へ急ぐ中で前へ前へとスペースをつないでいくイメージ。結果として遠ざかるランニングが多かったし、一気に距離を稼ぐために遠いスペースを見る意図も強かった気がする。

そういう意味で現状のチェルシーは完全にスタイルが変化した。近い関係性を重視して、パスパスパス。とにかくパスをつないでいく。そして、1人1人の保持時間は長くしない。最後の崩し、持ち上がりは除いて、とにかくパスでつないでいく印象が強かった。パスを受けた選手は簡単にはたいて次の場所へっていう繰り返しの中でパスが回ってた印象。

そのパス回しの中ではいろいろな方向にボールが動く。下がってきた選手に縦パス、その選手は簡単にはたいて戻す。これが前後の動き。こういう要所要所の縦パスを利用して、相手のブロックを釘づけにしてたと思う。さらにサイドへの展開。攻撃参加が活発なSB、WGを利用して横の幅も利用する。とにかく、前後左右にボールが動きまくるチェルシーだった。そして、そうやってボールを動かしながらいろいろなアプローチをしていった印象。

ダービーにしてみれば困った困った。そもそも自分たちの守備の根拠が薄い。その上、相手はボールを動かしまくり。チェルシーのショートパスの選択肢が多いから、そのボールの動きの中で狙いどころが定まらない。さらに、1人1人の保持時間も短いチェルシーの選手。入ってからの対応では間に合わない。そうやって、ますます守備の根拠がなくなって行くダービーだった。

ショートショートでパスをつなぎまくるチェルシー。前後左右のいろいろな方向にボールが動くのは上にも書いたとおり。そういうパス回しで相手のブロックをどんどんと押し下げていく。そして、機を見た縦パスで相手のブロックを釘づけにしつつ、絶対的な陣地を確保。敵味方のフィールドプレイヤー全員がダービー陣地に入ることもざらだった。

パスを回しまくりのチェルシーは組み立ての時間が長い。中盤での滞在時間が長い。結果として後ろからの攻撃参加が活発になる。そして、この後ろからの飛び出しってのがチェルシーの攻撃の特徴になったと思う。SBの攻撃参加が増えたのも、その1つ。そして、この後ろからの飛び出しが1つのキーになる。何のキーになるかっていえば、前線の渋滞。後ろから考えずなしに次々に前に入ってきてしまえば、渋滞が起こる。でも、今回のチェルシーは渋滞をさせないような後ろからの飛び出しを行ってた印象。

ここまで何度か登場してる前線の渋滞。攻撃に人数をかけたときのジレンマになるのは知ってのとおり。ここまで書いてきたのは、前線の出入りの激しさとマケレレの存在がもたらす組み立てなおし。そして、これから取り上げるのは後ろからの飛び出しの質。

1つはパス回しの中で前線に向かう意識を織り交ぜること。近づくランニングが多いチェルシー。そうなると、スピードアップのタイミングが図れずにパス回しのためのパス回しが行われてしまう危険性がある。実際に今シーズンのチェルシーの試合の中で、そういう単調なリズムに陥ってしまう兆候も見られた。

それを取り除いた後ろからの飛び出し。近い関係でパスパスがつながってるときには、基本的には攻撃のスイッチとなりそうな動きがない。ギャップギャップに入るような動きは爆発的なものではなく、その場の状況に応じて微妙にポジションを動かしていくものだから。

そして、そういう停滞が生まれる可能性があるパス回しの横を後ろから一気に選手が抜いていく。遠ざかる動きでも、近づく動きでもなく、通り過ぎる動き。これによってパスパスパスにアクセントが生まれる。ボールを抜く動きによってもたらされる前への勢いを利用して、ギアチェンジを図ってたイメージ。しつこいように書くけど、後ろからの飛び出しはフリーだから、効果的にできたと思う。

これと関連して後ろからの飛び出しに時間差を作るっていう形も見られた気がする。第一陣がパス回しで相手を押し込む。そうやって後ろからの飛び出しに相手が対応できなくなったところで、第二陣が飛び出してくる。攻撃のリズム変化のスイッチが入り決定的なチャンスが到来した。

もちろん第一陣と第二陣っていう明確な分類があるわけではない。ここで言いたいのは、攻撃時に全体が前に入っちゃって待ってるっていう状況じゃないってこと。そもそも、全員が前に入っちゃったら、チェルシーが目指すパス回しも難しいと思うし。前で待ってる時点で、パスの方向が限定され、受け手の動きも限定され、相手にとってはかなり狙いやすい状況になってしまうから。

そういうわけで、チェルシーの攻撃のポイントはパス回しと抜く動きの組み合わせ。とにかくベースにあるのはパスをつなぐこと。近い関係のトライアングルを作りながら、いろいろな方向にボールを動かしていく。常にボールを動かしながらアプローチしていく。そうやって、時間をかけて攻撃することが後ろからの飛び出しを呼び込む。その後ろからの飛び出しによって、パス回しがパス回しのためのパス回しにならない。うまく前への勢いをもたらして、スイッチを入れる。チェルシーの攻撃の理想形をまとめるとこんな感じか。

ちなみにパス回しとともにポイントとなる飛び出し。これにもバラックの果たす役割が大きかった。今回の試合を見ても全体のバランスを見てるバラック。みんなが前に入った時にも、冷静に1つ下で待ってることが多かったと思う。1つはマケレレと同じように逃げ場。そして、もう1つが飛び出しの役割。前の状況を見計らってフリーで飛び出してくるシーンが目立った。

そういうわけでどちらかというとランパードの方が自由に動いてたと思う。トップの場所が不在ならば、迷わずにFWになることも多かった。結果としてこの試合では4得点。明確な役割分担は見られないランパード&バラックだけど、そういう微妙な住み分けができてるのかもしれない。少なくとも窮屈な感じとかギクシャクした感じは見受けられなかった。

こんな感じで攻撃ではそれなりの形が見られたチェルシー。上にも書いたように、そういう形が板についてきたのも感じた。ただし、対する守備は何をどうしたいかがイマイチ分からない。あいまいというかなんというか。守備については今シーズンのチェルシーには一貫して見られる不安点であるような気がする。

そもそもダービーは攻撃の時間がほとんどなかった。当たり前と言えば当たり前。9人が引いて前線に1枚残し。9‐0‐1。それに攻撃に対する意識が薄い。切り替えでの押し上げが遅い。前に蹴って、後ろがついてこない。そもそも前に効果的なボールを送ること自体ができなかった。そういうわけで、ダービーはほとんど攻撃のチャンスに恵まれてない。にも関わらず、ダービーが何かの拍子にボールを保持するとチェルシーは案外ボールを奪えなかった。ここに問題の一端が見え隠れする。

チェルシーの守備の基本はダービーとあまり変わらない。4‐1‐4‐1をセットして受ける形。能動的な守備はせずに入ってきたボールにしっかりと対応する形。そういう1つ1つのチェックは当たり前のようにダービーよりは上。ただし、1つ1つのチェックが1つ1つで終わる。単発。連動して囲い込むとかっていう形にならない。これは今回の試合に限らず、ずっと見られる問題点。リバプール戦の後半には回復したんだけど。結果としてボールの奪いどころが定まらない。1つ1つのチェックは忠実でも、そこから勝負どころに持って行けない。

これは結構、急を要する問題点のような気がする。今回は1つ1つの忠実なチェックだけでなんとかなる相手だったけど、ちょっと強いチームなら次々に逃げられてしまうはず。ギャップを後ろに残して当たり、そのギャップを相手に使われるシーンが多発する可能性もある。守備の質が高いチェルシーはどこへ行ったのか。

一番簡単なのは守備だけはモウリーニョに戻すこと。前線から追い込み追い込みの連動性の高い守備を復活させること。それができないならば、プレミア上位チームになることか。つまりアーセナルとマンU方式。絶対的な攻撃力をベースに、その流れとして守備を考えるってこと。決して守備をしないってことではない。攻め込んでおいて、切り替えの早さをベースにその場所で守備をするってこと。

そういう側面から見れば、今回のチェルシーはプレミア上位的か。切り替え後の守備が効果的に効いてたと思う。もちろん、相手の9‐0‐1の影響は多々あったとはいっても。ちなみにここでも目立ってたのはバラックだった。知らない間に攻守の要。
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2008-03-18 Tue 17:11
ローマ×ミラン
<ローマ:4-2-3-1>
FW:トッティ
MF:マンシーニ-ペロッタ-タッデイ、ピサーロ-デ・ロッシ
DF:トネット-ジュアン-パヌッチ-シシーニョ
GK:ドーニ

<ミラン:4-3-2-1>
FW:パト
MF:セードルフ-カカ、アンブロジーニ-ピルロ-ガットゥーゾ
DF:ファバッリ-カラーゼ-マルディーニ-オッド
GK:カラッツ

知らないうちに5位まで順位を押し上げてたミラン。この分なら昨シーズンと同じような展開でCL出場権を確保するところまで行けるか。ただ、昨シーズンはマイナススタートだったこと、今シーズンのCLで早々と敗退してしまったことを考えると、チーム力の衰えは隠しきれない問題になってきたかもしれない。

知らない間に変化してたのはミランの順位だけではなかった。ミランのやり方も知らない間に大幅な変化を遂げていた印象。去年は見ることが多かったミランの試合も年が明けてからあまり見る機会がなかったから。そして、その年明けからはパトの存在があったわけで。今年に入って唯一見たジェノア戦でも変化を感じたのは事実。その変化が今回の試合を見る限りでは恒常的に、今後のミランのスタイルになって行くのかもしれないと思ってるところ。

そのミランの変化を一言で表すならば、横から縦へ。これはジェノア戦でも見られた傾向だったけど、今回もそういう状況が明らかに見られた。難しいのは、この変化が改善なのか改悪なのかの判断がつきにくいこと。ミランの圧倒的なポゼッションが強い者としては違和感を覚えるけど、結果が出てるのは事実であって。とりあえず、具体的に見ていきたいと思う。

ミランの横から縦への変化を一番特徴的に表してるのが中盤でのボールの滞在時間。ミランと言えば、これでもかってぐらいのポゼッションで中盤を圧倒的に制圧するチームだってのが一番の印象。そういう状況が明らかに薄れてるのが、横から縦への変化にあると思う。中盤を通り過ぎて前線に次から次へとボールが供給されていくことが多くなってると思う。

こういう変化をもたらした要因の1つにパトの存在があるのは明らかだと思う。ジェノア戦のときにも書いたけど、パトはこれまでのミランの主力FWとは大きな違いがある。これまでの主力ってのはジラルディーノとインザーギ。2人のスタイルはかなり異なってるのは事実だけど、基本的には真ん中でプレーするタイプってことに代わりはない。エリア内でプレーするタイプって言い換えてもいい。

そして、この2人の存在が最前線の蓋となっていたのがミランの状況だった。2トップが真ん中から動かず、スペースを作る動きもしないから2列目以降がトップの場所に出て行きにくい。ついでに言えば、2人とも試合中に空気になってしまうことが多い(特にジラルディーノは)。

結果としてミランは中盤から人が前線に出て行けず、ボールも前線に出せない。必然的に中盤の場所に人が溜まっていく。SBも攻撃に参加して。これによって強制的に中盤の厚みが生まれるミラン。あとは個々のギャップに入り込むうまさをベースにしながら、無限にボールを回していくだけの話。ボールを回しまくってもFWが消えてるから、最後の仕掛けができないのもミランだった。つまり、ミランの圧倒的な中盤支配は仕掛けができない問題をはらんでいたとも言えるわけ。

今や、その問題を生み出した2人はいない。スタメンに名を連ねるのは、2人とは全く逆のタイプのパト。パトはとにかく動きまわる。エリア内以外での仕事の方が多いぐらいに動いてボールを受ける。ボールを受けてから自分で仕掛ける。今回の試合でもサイドに流れまくってボールを引き出す動きが目立ってたし、そういうゴールから遠い場所で受けてからの個での突破の試みも多くなった。

1トップのパトが動き回る。つまり本来のトップの場所にはスペースが生まれる。それをそのまま放って置いたら、文字どおりの0トップになってしまう(前はトップの場所に人がいるのに消えてしまう0トップだった)。そういうわけで、カカとセードルフのFW的な役割が強まる。ジェノア戦のときには、カカとパトが2トップを組んで、セードルフは中盤的な振る舞いが目立ってたけど、今回の試合ではセードルフも前への意識を高めてた。3トップ的ともいえる形。

最前線でパトが動き回ってボールを引き出す。これまで組み立て時にトップの引き出しの動きがなかった(ラストの仕掛けではインザーギが動きまくったとしても)ミランの後ろの選手は嬉しくなって、前線にボールを供給してやりたくなる。そうじゃなくても、攻撃の中心となるべきカカとセードルフは前線に行ってしまっている。攻撃では2人を見る意識がどうしても強くなるのは仕方ない。結果として、これも前線へボールを供給する要因となる。

セードルフとカカが攻撃の中心であることは変わらない。そこにボールを集めようとする意識も変わらない。でも、2人のいる場所が変わった。以前はトップが蓋になっていて強制的に中盤でプレーせざるを得なかった2人。今はトップの場所でのプレーが多い2人。このことが中盤重視から縦への意識の重視へとミランのやり方を変化させた要因であった気がする。

とにかく、今回の試合でも中盤をすり抜けて前線に供給されるボールが多くなった。トップ下に経由点がないわけだから、当たり前と言えば当たり前。問題はこのことが何を生み出したかっていう部分。縦への意識が高まり、最前線にボールが供給されることが多くなったこと自体は以前のミランからすれば改善とも取れる。前は最前線にどうやってボールを供給すればいいか分からなかったわけだから。でも、もちろん失ったものも大きいわけで、その辺を見ていきたいと思う。

縦への意識が高くなったことで生まれた一番の問題は前線がはがれてるってこと。中盤でのボールの滞在時間が短くなり、一気に縦に送られるボール。ボールのスピードに後ろはついてこれない。結果として前線の3人で攻めなければならないシーンが多くなった。この3人の爆発力なら、続けてればそのうち決定機は作れるだろうと思う。ただし、攻撃の厚み自体がなくなったのは事実として見ておかなければならない部分。

これに関連して、攻撃で幅を使えなくなった。今までも何度も書いてきたことだけど、ミランの攻撃において幅を使う役割を担うのは両SB。中盤は流動的にやる中で、サイド専業でタッチライン際のエリアを一手に引き受けるSB。そういうSBの組み立てへの参加が攻撃に幅を生み出し、左右の展開を織り交ぜながら相手の狙いどころを失わせていく。それがミラン的やり方。

そのSBの組み立てへの参加がほぼ皆無になった。これはある意味では当たり前。前線にボールがどんどんと蹴られていく状況の中ではSBが押し上げてくる時間はない。それにチーム自体の横幅を使う意識も弱まってるわけだし。結果として攻撃が真ん中に偏ってしまう事態に陥った印象。

さらにSBの攻撃参加が促進されないことが、もう1つの問題を引き受ける。上にも書いたように本来的にミランのサイドを担うのはSB。これは1つ前の中盤の選手を中に押し込む効果をもたらす。結果として、真ん中に人が多くなるミラン。後ろからの押し上げも相まって、強制的に近さが生み出される。そういう近い関係性の中で少ないタッチでパスを回していくのがミラン的なパス回し。

この近さが生み出されなかった。そもそも前線がはがれてるわけだから、当たり前と言えば当たり前だけど。ただ、遅攻になったときにも全体としての遠さが目立った。これには今回の試合でアンブロジーニがタッチライン際でのボールタッチばかりになってたような状況が少なからず影響してたと思う。つまり、中盤が横に広げられたってこと。縦の間延びと相まって、ミランらしい中盤の形は作られえなかった。

そういうわけでミランの攻撃は非常に単調。後ろから前線に一発のボールを蹴るだけ。出し手としてのピルロの力と前線3人の能力をもってしても、ほとんど決定的なチャンスを生み出せてない。得点シーンは皮肉にもSBオッドの攻撃参加から生まれたわけだし。この試合で唯一サイドを効果的に侵攻したシーンだった。

そんなミランも本来的なミランの片鱗を前半の途中に見せてくれた。この時間帯はセードルフとカカがヤバいって気づいた時間帯。それまでのように前にばかり出て行くんじゃなくて、下がってきての中盤の場所でのタッチ数を増やした時間だった。そうやって中盤に1つの経由点を作り、中盤で時間を作ることで重要なSBの攻撃参加が生み出された。SBに限らず全体の押し上げもできた。

幅を使いながら、前線の厚みを増すことに成功。しかも、最前線では相変わらずパトの動きが活発。最前線の出入りが激しくなったことで、本来的なミランのやり方に戻っても、仕掛けができない状況には戻らなかった。これこそ理想形だと思うわけだけど。なぜか、カカとセードルフが中盤で組み立てに関与するプレーはあまり増えなかった。

そういうわけで攻撃での様子のおかしさが見られたミラン。同時に守備についても、ちょっと違った印象を受けた。攻守の違和感の因果関係ははっきりとはしなかったけど、そのベースになっている問題は同じ。つまり、前後の分断にあったと思う。

ミランの守備ブロックは4‐3‐3だった。あまり見たことがない形(でも、今シーズンのホームでのローマ戦はこの形。対ローマ用?)。カカが前線に押し出される形はよく見かけるけど、セードルフはどちらかというと後ろに引きつけられることが多い。4‐3‐2‐1からセードルフを下げて4‐4‐1‐1のブロックを作ることは多いと思う。でも、今回は完全に前線にセードルフを押し出した4‐3‐3だった。

そして、最前線の3トップは基本的には守備を免除されてる。この点については攻撃と関係あるのかもしれない。縦への意識を高めてるのが明らかなミラン。だったら、最初の選択肢はカウンターで攻めきっちゃうこと。そう考えたら能力の高い3人の守備を免除し、最前線に残しておく効果は多大なわけで。そういう意味があるのかもしれない。

とりあえず、最前線の3トップが守備を免除されてることは確定。よって守備は後ろの4‐3が担当することになる。後ろは最終ラインを高めに設定して、コンパクトなブロックを高い位置に作る意図を持ってたと思う。ただ、4‐3で守備をしなければならない以上、高い位置での効果的な守備はちょっと期待できない。最前線から行われるミラン的な切って、切って、追い込む方式も難しい。あれは前線の守備の貢献と、中盤の厚さがあってことだから。そういうわけで受ける意図が強い守備ブロックの形成になったと思う。

それでも立ち上がりは迷いが見られた。中盤の3がどういう守備をしていいのか分からなかった気がする。とりあえず、本来のミランのやり方どおりに前線から1つ1つのボールにプレッシャーをかけて行こうかなって感じだった。

でも、これには大きな問題がある。最前線の3が守備をしないミラン。中盤のプレッシャーには根拠が薄い。守備のスタートを中盤が担わなければならない状況だから。結果、そういうプレッシャーで引っ張り出されて後ろにギャップを残してきちゃうパターンが増えた。中盤が3枚しかいないのに、1枚が引っ張り出されるのは結構痛い。そういうわけで、中盤の選手は後ろとの関係を重視することに決めた。

結果としてミランのブロックは4‐3‐‐3のイメージ。最前線の3はとりあえず自分の前に対する守備はしようとしてたけど、ウラに入られたら守備をやめた。中盤は上にも書いたように、4‐3の方の関係性を重視。結果としてFWと中盤の間にできた3‐3のギャップは放っておかれた。

ローマにとっては願ってもない状況だった。攻撃の組み立ての中心となるデ・ロッシは浮きまくり。ついでに、3‐3の間では何のプレッシャーも受けずにボールを持ちあがることも可能になってたと思う。これによってローマの攻撃のスタートは恐ろしくスムーズに切られる状況が生み出された。

この時間のローマの攻撃のやり方は非常にシンプル(この時間に限らず、非常にシンプルな攻撃が目立ったけど)。相手の3‐3の間に入り込んで余裕を持って攻撃のスタートを切る。そして、そのスタートとなるボールはサイドに展開されるシーンが目立った。これも合理的。相手の4‐3ブロックは真ん中に凝縮気味だから、サイドのスペースは空いてる。そして、そこからのシンプルクロス。ローマらしい後ろからの厚み増しによってゴール前にも人数が揃ってた。そして、クロスの対応はもうずっとミランの弱点である。

この中→外→中の展開で敵陣深くまで攻めきるシーンが目立ったと思う。サイドではSBの攻撃参加を活発化させて、数的優位を作ろうとするのも忘れなかった。相手のガットゥーゾがどれだけ低い位置まで押し込まれてたかってのが1つの指標。ローマの攻撃については後で詳しく書くけど、とりあえず、全体として最後のシーンにまで行けることが多くなった。その割には決定的なチャンスが少なかったけど。それは4‐3で守ると決めたミランの最後の最後の厚さのせいだった。

とりあえずミランの方にもちょっと好きなようにやらせすぎっていう意識がだんだんと増してきたんじゃないかって気がする。攻撃のスタートであるデ・ロッシはあまりにもフリーだったし、その後のサイドからのクロスも簡単に上げさせてしまった。そういうわけで、ミランの方も守備を見直そうって時間が前半の30分前後に訪れた。

この時間になって、最前線の3が守備意識を増大。後ろに戻っての守備には相変わらず意識が高くなかったけど、最低限自分の前に対する守備を頑張りましょうねってことになった。そして、これによってミランの中盤の3が前に向けての守備をすることが可能になったと思う。最前線でしっかりと制限がかかるようになったから。そうして、今までいいように使われてた3‐3の間のスペースに対する守備意識を高めた。

これに対してローマはそれまでの時間のように好きなように攻撃をするのは不可能に。でも、これで手詰まりになるほどの状況には陥らなかった。とりあえず、中長距離のボールを有効活用することで相手の前線からのプレッシャーを否しにかかったと思う。ミランの守備はボールサイドに人をかけるものだから、別の場所にはスペースが存在する。それをシンプルかつ効果的に使った。2点目のシーンにもつながったように、今回の試合のローマは遠くのスペースを有効活用する中長距離のパスのよさが目立ってたように思う。

こういう中長距離のパスに加えて、ローマ式流動性も相手の前線からのプレッシャーを否すのに効果を発揮。相手の守備が変更されてから、ローマの前線の動きが活性化されたと思う。正確にはそれまでも流動性はあったから、流動性が効果的に機能するようになったって言った方がいいかもしれないけど。相手が4‐3で受けてる時は、前線で動きを作ってもギャップ自体が少なかった。いまや、前から守備をする相手の背後にはギャップができており、そこに動き回るローマの前線の選手が入り込むシーンが多くなった。中盤に降りてくるトッティの存在が目立ち始めたのもこの時間帯からだったと思う。

ギャップに入り込まれたミランの守備陣には怖さが生まれる。しかも、相手の流動性は捕まえるのは難しい。やっぱり4‐3の関係性を築いて、スペースを自体をつぶしましょうねっていうやり方に回帰。これが後半。ただし、前半の反省もしっかりと踏まえた。セードルフにデ・ロッシを見させることで、とりあえず前半のように自由に攻撃の組み立てをさせないようにしたと思う。

そのうちにミランに先制点が生まれる。この後のミランは非常にミランらしいやり方に変更。とりあえずはおびき寄せ作戦の決行。それまでの最終ラインの高さが嘘のように全体を押し下げて受ける体制を築いた。最前線の3トップでさえも自陣に戻っていたぐらい。そうやって相手をおびき寄せといて、奪ったら一気に前の3人でカウンターを仕掛けるやり方。結果的にはこのおびき寄せ作戦で追加点が奪えなかったのが痛かった。

ただし、守備だけを考えれば圧倒的に安定感は増した。この時間はローマが選手交代でスムーズさを失ってた時間とも重なる。ピサーロとジュリの交代で前線の枚数を増やしたけど、ボールを前線に運ぶ存在がいなくなった。デ・ロッシはセードルフに抑えられてて、他の選手はボールを前線でもらおうとしてる。効果的に組み立てができなくなって、守りに入ったミランのブロックに引っ掛けられるシーンが多くなった。そして、それはカウンターを食らう危険を意味した。

この流れの中ではミランの逃げ切り濃厚の雰囲気。これに対してローマはアクイラーニを投入してバランスの回復を図る。底の位置を増やして組み立てを再びスムーズにさせる意図があったと思う。そういう意味では効果的な交代だった。そして、何よりも大きかったのはこれと時を同じくして行われたミランの選手交代。セードルフに代えてエメルソンが入った。

普通に考えれば守備の安定を増すための交代。実際に4‐4‐1‐1の形に変更することで、ますます堅さが増したと思う。ただ、この交代で抜けたのがセードルフだったのが痛かった。まず、ローマにとって相手のカウンターの怖さが半減。そして、何よりも後半にセードルフが行っていた守備の仕事が宙に浮いた状況になった。

それは上にも書いたようにデ・ロッシを抑えること。それまでのローマはとにかく出し手がいないことに困ってた。だから、アクイラーニを入れて出し手を増やそうとした。そしたら、相手が勝手にデ・ロッシを放してくれた。ローマにとっては超ラッキー。その後の時間は再びデ・ロッシが浮いた。前半のように好きなように組み立てができるようになった。2点目もフリーのデ・ロッシがアシスト。

そして、逆転を許したミラン、セードルフを下げたミランにはもはや攻める方法がなかった。そのうえカカも負傷で下がってしまう不運。セードルフ→エメルソンの交代は、まさにこの試合のターニングポイントになったと思う。怪我明けのセードルフを休ませたかったとは言っても。

ここまでミラン中心の論じてきたので、以下ではローマについて触れてみる。CLでは再びマンUとの対戦を控えるローマ。ローマのやり方には結構注目してるんだけど、いかんせん見る機会が少ない。トッティがいる試合となると本当に久し振り。そして、ミランと同様にローマにもイメチェンの跡が見て取れた。

ローマの守備は4‐2‐3‐1の形を作るところから始める。そのうえで中盤の3のフィルターで引っ掛けられればいいねって形。特別、能動的にその3で引っ掛けようとする意図が見られるわけではない。よって本当の守備の勝負どころは、後ろに置かれることになる。単純に両サイドを下げた4‐4‐1‐1の中盤の4にマンシーニが参加しないブロックが作られることが多かった。早い話が左右のバランス崩しの4‐3‐2‐1みたいな形。

その上で4‐3で受けることが守備の本当のベース。4‐3を深い位置に作っておいて、とにかくバイタルをつぶそうっていうもの。そこに入ってきた縦パスに厳しく当たることで、ブロックに対する相手のアプローチをことごとくつぶしていった。

こういう後ろに重点を置くローマの守備のやり方は前からのイメージ通り。ただ、前からのイメージよりは前線での守備意識が高まったかなって気がする。相手がもたついたところで、自分たちから守備を仕掛けていくやり方が見て取れた。前のやり方はもっとスパッと後ろのバイタルつぶしのブロック作りに入ってた気がするから。

この守備の変化と共にトッティ依存も明らかに減退している。前はベタ引きブロックで受ける→奪ったらトッティへ→一気に飛び出しってのがパターンだったけど、今回の試合のローマにはこういうパターン化が見られなかった。普通の攻撃の中でもトッティを経由させるボールは明らかに減ってたと思う。

その代わりに見られたのが上でも触れたようなサイドに起点を作るやり方。トッティよりもデ・ロッシ(今回はラッキーなことに浮けたこともあって)が中心となって攻撃の組み立てを行った。ミランの守備ブロックがそもそも真ん中を固める型であることは事実だけど、トッティの存在が相手を真ん中に引きつけるってのもあると思う。その上でサイドを使うことで、サイドの選手が比較的自由になれる。SBを積極的に上げてサイドで数的優位を作るのも忘れなかったのは上にも書いたとおり。

そうやって徹底してサイドに起点を作っていると、相手の意識もサイドに向いてくる。つまり、真ん中が空いてくる。ここでトッティの登場。トップの場所にこだわらないトッティが積極的に中盤でのタッチを増やす。その時には、前にしっかりと2列目の選手が入れ替わりに出て行っている。

中にも外にも実効的に起点を作れるのが今回見られたローマの強み。相手に狙いどころを定めさせないことが可能になった。もっと言えば、相手の守備ブロックを分散させることにも成功。変幻自在にいろいろなところに起点を作りながら、その1つ1つはシンプルにやることで(サイドに起点を作れば、簡単にクロスを上げるとか)相手ゴールへの仕掛けを増やしたと思う。

そのローマの攻撃のベースといえばランニング。もっと言えば人を抜くランニング。今回の試合では、それが明らかに目立つってことは少なかった。その要因は上にも書いたように、今回のローマが中長距離のパスを中心として攻撃を組み立ててから。ランニングが目立つのは、近い関係性を築いてるとき。

でも、これはランニングが目立たなかったっていうだけ。少なかったってことではない。広いスペースを使う中長距離のパスが出たのは、それを引き出す遠い場所でのランニングがあったから。多くの場合では斜めの質のパスが多くなったわけだけど、そのボールが飛んでいる間に地上では人が次々に前線に入って行くっていう形が多かった。だからこそ、大きな展開でサイドを変えたときに中にしっかりと人が揃っていて、時間をかけずにシンプルにクロスを上げることが可能だったと思う。

もちろん近い関係性で可能性を感じさせるプレーもあった。ボールを抜く人、そこにボールを出して再び抜き返す。簡単にいえばそういう関係。これを2人だけじゃなくて3人でやるようなシーンも見られた。何かのインタビューでジュリ(だったかな)が言ってたことを引用すれば“三つ編み”。そういう近い関係性のよさを利用した、ダイレクトが多いリズムのいいパス回しも目立ったと思う。

こんな感じでローマの攻撃には明らかに幅が広がった。なぜか幅が狭まってしまったミランとは対照的。今回の試合を見る限りでは、今の順位も両チームにとって妥当な結果だってことを感じさせられた。そして、今シーズンに限らず今後もそれは逆転しないかなって思う。ミランが抜本的に改革をしないかぎり。ローマは今のままの路線を継続したら、面白い。
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2008-03-17 Mon 17:27
リバプール×ミドルスブラ
<リバプール:4-2-3-1>
FW:トーレス
MF:バベル-ジェラード-カイト、マスケラーノ-ルーカス
DF:ファビオ・アウレリオ-アルベロア-ヒーピア-フィナン
GK:レイナ

折り返し前のアウェー(リバプールにとって)でのミドルスブラ戦。個人的にこの試合ではじめてリバプールの様子のおかしさを感じた。今シーズンはこの試合の前にマンUとの対戦を見ただけで、そのマンU戦ではリバプールのやり方に問題は感じなかった。それだけにミドルスブラ戦の内容はちょっとした衝撃。そして、それは1つ前のチェルシー戦で改善の光が見えるまで続いてた。その間は結果自体も出てなかったわけだから、実際に何かのおかしさが確かにあったってことは間違いなかったと思う。

そのアウェーでのミドルスブラ戦を軽く振り返ってみると、この試合で見られた違和感は攻守に渡る。攻撃ではまず、トップに当てる意識が強すぎた。その後の試合を見ても、真ん中真ん中に入り込んでしまう状況が見られた。ミドルスブラ戦では、相手の守備のよさも加わってことごとく中盤の場所で引っ掛けられてしまうシーンが目立ったし、途中から引きこもった相手に対しても活路が見出せなかった。

守備に関しては狙いどころが定まらない状況。本来的には勝負どころとなるはずの中盤がスタートとして機能しようとして、機能しきれなかったことが原因。もっといえば、なぜかトップの守備への貢献度が低かったところに端を発してる。結果として高い位置で効果的に奪うシーンは作り出せなかった。ただ、これに関してはリバプールの本来的なやり方と比べてっていう制約付き。とりあえず、後ろの4‐4で受ける守備はある程度の安定感があるから、大きな問題があったってわけではない。

こういう攻守にわたる問題点をその後、数試合引きずったリバプール。特に引き寄せられるかのように真ん中真ん中に入って行ってしまう攻撃のやり方は大問題だった。3得点を奪って結果としては復調の気配を見せたかに見えるサンダーランド戦も前半は同じような状況。後半になってやっとサイドの存在を思い出したことが3得点につながった。

こういう状況に対しての修正策が見られたのが、チェルシー戦のシステム変更。システムをそれまでの4‐4‐2から4‐2‐3‐1へ変更した。この変更はここでも何度か提案したことだったわけだけど、とりあえず安定感を取り戻すっていう側面からは成功したと言っていい。守備では中盤で奪えるシーンが増えたし、攻撃でもトップ下の場所に入ったジェラードがいろいろな方向にボールを動かすことで真ん中へのこだわりを薄れさせた。今度こそ明らかな復調気配が見られたといってもよかったと思う。

さて、これを踏まえた上での今回のミドルスブラ戦。上にも書いたように、前回のミドルスブラ戦で明らかに精彩を欠いてたリバプール。そう考えれば、前回のチェルシー戦で見られた復調気配が本物かどうかを捉えるには格好の相手。ミドルスブラに対してのやり方によって、リバプールの変化を見ることができる試合だったと思う。ちなみに、ミドルスブラの方のやり方は前回と大きく変わった様子はなかったから、それも判断する上ではラッキーだった部分。

そのミドルスブラのやり方。守備に関しては前回と同じくリバプール的な考え方。前回はリバプールがリバプール的な守備をできず、ミドルスブラがリバプール的なやり方をするっていう面白い状況だったぐらい。前線からの質の高い守備で、中盤で効果的に引っかけるシーンが目立ったのが前回の試合だった。

その守備のスタートは2トップ。1枚が前に対して守備を市、もう1枚が後ろのスペースを埋めるっていうある程度の役割分担ができてる。縦関係というか斜め関係というか。その前に向けての守備は、低い位置の相手の最終ラインに対しても行われる。ただし、とにかく根性で追いかけまわすっていうっていうよりは、あくまでも次を考えた戦術的守備っていうイメージが強い。それでも、トップが制限を決めずにとにかく深い位置まで守備をしていくことに意味がある。

こういうトップの守備に対して2列目以降が連動する。相手が縦に入れてきたところで、しっかりと距離を詰めて対応。それに対して周囲が連動することで囲い込み、挟み込みによる数的優位を作り出す。まさにリバプール的。相手の縦パスを途中で引っ掛けてしまうっていうシーンも目立つ。ただ、今回の試合ではアウェーってこともあってか、2トップと2列目の間の距離が開き気味(後ろの受ける意識が高い)っていう印象をちょっと受けた。

前回はこういうトップと2列目以降の守備でことごとくリバプールの攻撃の流れを分断したミドルスブラ。上にも書いたとおり、中盤で効果的に奪うシーンが増えた。これは次の攻撃を考えると抜群に効果的だった。だから、リバプールの攻撃の改善を見るためには、相手にいかに効果的な守備をさせないかってことがポイントになる。要するに、高い位置で奪われるシーンをどうやってなくすかってことが重要。逆にいえば、どれだけ相手のブロックを押し下げられるかってこと。

この点については今回のリバプールは明らかに改善が見て取れた。その要因はとっても簡単は話。前回のように全て真ん中真ん中に入り込まなかったってだけ。真ん中を通す縦パスを単純に入れようとし続ければ、相手としてはこれ以上守りやすい展開はないわけで。何しろ、相手が勝手に引っ掛かってきてくれるわけだから。それだけ前回のリバプールのやり方がまずかったってこと。

対して今回のリバプールの攻撃は上にも書いたように真ん中にこだわる姿勢が薄らいだ。ただし、とりあえずの最初のアプローチはいつもどおり。それは、蹴りまくり作戦。高い位置から守備をしてくる相手に対して、迷わずにロングボールを前線に蹴りまくった。これに関しては前回のミドルスブラ戦の立ち上がりも同じだった。

この立ち上がりの蹴りまくり作戦はリバプールにとっては恒例行事。それと関連してかは分からないけど、試合開始直後のリバプールはいつもどおりの4‐4‐2で戦ってる気がする。これはチェルシー戦でも見られた形。前線に適当に蹴りまくるなら、ターゲットは1枚よりは2枚の方がいいわけで。そういう蹴りまくり作戦から地上戦に移行する中で4‐5‐1へと移行していってる気がする。

で、その地上戦。しつこいほど書いてるように、真ん中へのこだわりが薄れてると思う。これは同じシステムを採用したチェルシー戦から見られた形だってのも上に書いたとおりだけど、その内容は微妙に違ってたと思う。それはボールの方向を変える役割を誰が担ったかっていう部分の問題。

チェルシー戦でその役割を担うことが多かったのはジェラードだった。トップ下に入ったジェラードが経由点となって、1度受けてから左右へ展開っていうやり方が目立ったと思う。対して、今回の試合で散らしの役割を担ったのはCMF以下の選手たち。低い位置から縦に入れてサイドっていう回りくどいやり方ではなくて、低い位置からいきなりサイドへっていう展開が目立った(低い位置から真ん中へも織り交ぜつつ)。

この効果はいくつかある。1つはジェラードを経由させると、そこが狙いどころになってしまうっていう問題の解決。チェルシー戦ではそこまでジェラードにこだわった様子は見られなかったけど、そういう意識が高まりすぎてしまう危険性ははらんでた。そして、ジェラードを経由させる意識が高まってしまうと結果は依然と同じ。トップに当てる意識が高いのも、ジェラードに当てる意識が高いのも、相手に狙いどころを提供してやってることに変わりがないわけだから。

低い位置からのボール供給時点で左右真ん中へといろいろな方向へ出すことで、より相手の意識を散らすことができる。それでこそ本当の意味で左右の幅を使う意味があるとも言えると思う。そもそも、相手を左右に間延びさせて、真ん中を広げることが狙いなわけだから。そういう点を考えて、ここで提案してきた4‐5‐1にはXアロンソの存在を想定してきたわけだし。ただ、チェルシー戦のときにも書いたとおり、ルーカスの前線への飛び出しも魅力的ではある。

こうやって相手に狙いどころを定めさせないっていう効果に加えて、ジェラードの自由度が増すっていう効果もあると思う。この点については、チェルシー戦との違いとして今回の試合で明らかに見られた部分だった。ジェラードの経由点としての役割が強すぎるとジェラードがトップ下の場所から動きにくくなる。対して、今回の試合ではジェラードのポジションの流動性が高まった。トップ下の場所にこだわらずにサイドに流れるシーンが目立ったし、それに伴って前線の4枚の流動性も増した。特にジェラード⇔バベルのポジションチェンジは目立ったと思う。2点目を奪った時間の前後は、こういう流動性が相手のブロックに混乱を生み出してたと思う。

加えて、自由度が上がったジェラードは前への意識も高まってたように感じる。経由点としての役割が強すぎると、後ろからのボールを裁くってことが多くなるから、どうしても意識が後ろに向いてしまうんだと思う。対して、今回のジェラードはゴールに向かうプレー、つまり直接的なチャンスメイクとかシュートが多くなった印象。これは1つ下に組み立てを任せたことによる部分が大きかった。

左右へのボールの供給役を誰が担うかっていう部分の違いはあったものの、基本的に左右の幅を効果的に利用できたっていう点においてはチェルシー戦からの継続性が見て取れた。そして、そのベースには当たり前のことながらサイドに人がいるっていうこと自体が重要になる。そして、それも4‐5‐1システムが生み出した産物だった気がした。

1つは単純に両SMFのサイドの存在確率が高いってこと。これはトップ下の場所に人がいる4‐2‐3‐1の形によって促進されている側面があると思う。スタンダードな4‐4‐2だとトップ下の場所にスペースができてしまうだけに、両サイドの選手が真ん中に引っ張られてしまうっていう部分があったと思う。特に純粋なサイドアタッカーを使わなかったり、使っても中に流れるタイプが多い最近のリバプールでは。サイドに人がいないのにサイドにボールを出せってのは無理な話なわけで。結果として真ん中に入り込んでしまった部分があったと思う。

こういう純粋なSMFの役割の変化に加えて、SBの攻撃参加も今回の試合では活性化してた印象。特に左のファビオ・アウレリオはかなり高い位置まで入り込んでくるシーンが目立って、サイドでの数的優位に貢献した。

これに関しても4‐2‐3‐1の効果が大きい。4‐4‐2の場合はCMFに入っていたジェラードが攻撃時には前線に出て行ってしまい、後ろはマスケラーノ1枚が残ることとなる。このバランスを考えてSBが攻撃参加を自重してた側面があったと思う。いまやジェラードは本来的な攻撃の場所に入っているわけで、ルーカスの攻撃参加もジェラードほど活発ではない。そうやって後ろの安全が確保されたことで、SBの攻撃参加が活発化した側面はあった気がする。

もちろんチームとしてサイドに起点を作ろうっていう意識が高まってるのが大前提。SMFのポジショニングにしても、SBの攻撃参加にしても。それに1トップのトーレスもサイドに流れるシーンが目立った。こういう受ける方の意識に加えて、出す方も幅を有効活用しようとしてるわけで。その合致によって、真ん中にこだわる意識が薄らいだのは事実だったと思う。

ただ、それが直接的に決定的なチャンスの量産につながったかと言えば、それほど単純なものではなかった。前回のミドルスブラ戦から比べると明らかに相手にとって効果的な場所で奪われるシーンは少なくなった。これは幅を効果的に使えるようになって、相手の狙いどころが定まりにくくなったから。そうやって相手の狙いどころを定めさせないような組み立てで、相手のブロックを徐々に押し込んでいったのも事実だった。

問題はここから。押し込まれた、つまり低い位置に作られた相手のブロックをどうやって崩しましょうかってこと。バーミンガムは低い位置の4‐4‐2で受ける守備にもよさがあったと思う。4‐4でバイタルを完全につぶして、相手を入り込ませない守備ができてた印象。もし、無理に入ってくるなら一気に囲い込んで奪ってしまうやり方だった。

リバプールの方は攻め手がなくなってしまった。せっかく相手を押し込んだのに、そこから相手ブロックに入り込むことができない。結果として、攻めて詰まって作り直す展開が目立っていった印象。1つ低い位置でバランスをとってたマスケラーノのタッチ数が多かったのが、作り直しの多さを物語ってる。最終的に3得点を奪ったリバプールだけど、結局相手の4‐4に入り込むことはできなかった。

じゃあ、得点をどうやって奪ったのか?って話はひとまず置いとく。とりあえず、リバプールの攻撃は前回よりはマシになった、でも相手を崩しきるところまではいかなかったって感じ。とりあえず、前進が見られるのは確か。ただし、逆に守備面については前進したか後退したか微妙なところ。後退はしてないかもしれないけど。

とりあえず確実なのはトーレスはあまり守備を頑張らないってこと。ただし、このことは織り込み済み。最近のリバプールの問題はトーレスの相方も守備をしなかったことにあった。早い話がトーレスの相方にカイトが指名される試合が少なかったってこと。とにかく、2トップが2人とも守備をあまりしなかったことで中盤の負担が増えた。狙いどころからスタート役に変化したってのは上にも書いたとおり。結果として守備に問題が見えるようになってきた。

こういう側面があって、中盤を5枚にしたらいいんじゃないかって書いてきた。普通にカイト&トーレスで組ませる本来的な4‐4‐2でもいいんだけど、そこは攻撃との兼ね合いもあって。攻撃は2トップにすると全部真ん中に入っちゃうから。しつこいぐらい書いてきたとおり。とにかく、中盤が5枚になった前回のチェルシー戦では守備が復活気味。トップがトーレスじゃなくてクラウチだったこともあったかもしれないけど。

それに対して今回はチェルシー戦のときのような守備ができたり、できなかったり。できたときには中盤に入ってきたボールに対して忠実なチェックが繰り返され、それに対する連動が図られてた。そうやって相手のボール保持者を囲い込んで孤立させるやり方ができてたと思う。対して、できてなかったときにはチェックが無効化される。単発で後ろにギャップだけを残すようなイメージで、次から次へと逃げられていった。先制点のFKまでの流れではかなり相手にパスを回されてたし。

できたときと、できなかったときの違いは何か?それは守備組織がセットできてたか、どうかってことだった気がする。バランスのいいブロックが形成で来てれば相手のボールがブロックに入ってきた瞬間に守備をスタートできたし、その後の連動もスムーズだった。対して、バランスが悪い状態で攻められたときには狙いどころが定まらずにズルズルと押し下げられてしまう状況。

で、バランスのいいブロックを作った時には4‐5‐1を採用してるよさができてたと思う。少なくとも4‐4‐2で守備の悪さが出ていたときには、バランスのいいブロックを1度作っても、そのバランスを崩してしまうイメージだったから。FWがやるべき仕事までを任された中盤の選手が長い距離を引っ張り出されて、バランスが崩れるってことが多かった。結果として後ろの3ラインの間にギャップができるっていうリバプールらしくない状況が生まれた。

対して4‐5‐1ならば中盤の選手が引っ張り出されても、後ろに4‐4を維持できる強みがある。ジェラードが引っ張り出されれば、そのまま後ろの4‐4が維持できるし、ルーカスが引っ張り出されたスペースをジェラードが戻って埋めるような形も見られた。だから、これは最低でも後ろの4‐4の関係性に一体感を持たせて受ける形は維持できたと思う。

こういうことが局面での数的優位の形成にもいい影響をもたらしたと思う。1つの例はマスケラーノのの守備の目立ち方が変わったってこと。悪い時には他の選手の尻拭い的な役割ばかりが目立ったマスケラーノだけど、ここ2戦では周囲との関係を築いて効果的にボールを奪うシーンが目立つ。もちろん尻拭い的(カバー)の役割もしっかりとこなしてるけど。

このマスケラーノの役割の変化の裏にシステムの変更、もっと言えばルーカスの存在がある気がする。4‐4‐2の悪い時には、中盤の誰かしらが引っ張り出されることが多かった。それがマスケラーノ自身ってことも多かったわけだけど。とにかく、そういうバランスの崩れに対してマスケラーノは本来以上の役割を求められていたと思う。

対して、今は中盤から引っ張り出される選手がいない。ルーカスが隣に常にいる状態。単純なCMFの枚数は変わってないけど、実質的には大きな違いがあると思う。ルーカスの存在がマスケラーノの守備の実効性を高めてる気がする。ミランがアンブロジーニを入れた4‐5‐1で安定感が増したときと同じ匂いを感じる。

とりあえず、ブロックができてるときにはしっかりと守れて、ブロックができてないときには守備の安定感がなくなるリバプール。いや、これはリバプールに限らず当り前のこと。だからこそ、いかに早く守備ブロックを作るのか?守備ブロックを作る時間をいかに稼ぐのか?がポイントになる。前者については、リバプールは平行移動的攻撃でずっとやってきたけど、最近はちょっと崩れ気味。ただし、今回に限って言えばポイントは後者にあった。

まず、1つはミドルスブラの攻撃のやり方。ミドルスブラの攻撃の特徴は縦へのスピード。これが尋常じゃない。奪った瞬間のボール保持者が常に縦を狙う意識の高さもそうだし、受け手となる2トップの切り替えが何よりも抜群。味方が奪った後、瞬時に引き出しの動きを開始。しかも、相手のマークを振り払う効果的な動き方ができてると思う。この出し手と受け手の意識の合致によってミドルスブラの切り替えは相手に守備組織を作る時間を与えない。通り抜けフープ状態でボールが相手の中盤を通過してトップまで到達する。

リバプールの守備がチェルシー戦のように機能しなかった要因はここにある。チェルシーの攻撃は多くの場合でゆっくりとした組み立てがベースになってた。加えて、一気に前線までボールを運ぶっていうよりはつなぎながら前線にボールを運ぶ意図が強かった。つまり、リバプールの守備から見ればかなり相性がよかった。

これに対して、ミドルスブラの通り抜けフープにはリバプールは手を焼きまくり。守備の狙いどころを定めるも何も、そんなことを考えてる間にボールは一気に相手の前線の選手に渡ってしまった。せっかく安定感をとりもどした中盤の守備も無効化。準備ができる前に簡単にすり抜けられてしまうシーンが目立ったと思う。先制点につながったFKはミドルスブラのパス回しからの流れってのは上にも書いたとおりだけど、そのパス回しの最初はあまりにも簡単にDFと中盤の間で相手のFWがボールを受けて起点になったところからだった。

ただ、こういうミドルスブラの通り抜けフープも前回ほどは決まらなかった。この点についてはリバプールの守備がよくなったと言うよりは、リバプールの攻撃が良くなったことに関係してたと思う。上にも書いたようにリバプールは攻撃の改善によって相手にとって効果的な位置でボールを引っかけられるシーンは少なくなった。それに深い位置まで攻め込めるシーンも多くなった。

そうなれば相手の切り替え後の攻撃には距離が必要になる。つまり、時間がかかるってこと。これはリバプールにとっては組織作りの時間が生まれたことを意味するわけで。結果として、前回の対戦よりはバランスのいいブロックで守れることが多くなった。ただし、単純な縦パスを通そうとすると、それはミドルスブラに引っ掛けられて、攻め上がり途中の不安定なブロックに攻められるシーンがあった。要するにミドルスブラの方にはあまり変化がなかったと思う。

こういうわけで攻守において前回の対戦よりはマシな内容になったリバプール。でも、畳みかけるほどにはいい内容ではなかった。対するミドルスブラは前回とあまり変化なし。だから、文字どおりに一進一退の展開が生まれた気がする。どちらが主導権を握ったかがイマイチ分からない試合展開だった。ただし、先制点を奪ったのはミドルスブラ。リバプールがそれをひっくり返すほどミドルスブラとの間に違いがあったかと言えば微妙だった。

この状況の中リバプールの同点ゴールはかなりラッキーな場面から生まれた。ミドルスブラの先制点もラッキーと言えばラッキーだったからおあいこか。でも、単純におあいこではなかった。リバプールにとっては単なる同点ゴール以上の意味があったと思う。この同点ゴール後のリバプールは異様に元気になった。そして、そのままの勢いで逆転を果たすことになる。

元気になったリバプール。それまでのサッカーからギアを1段階上げたようなイメージ。全ての場所でスピード感が急激に上がったと思う。この確変は逆転ゴール後しばらくまで続き、ふたたびこの試合でのスタンダードなリバプールに戻って行った。

まず目に見えて変化したのは切り替えのスピード。特に攻撃後の切り替えが抜群に速くなった。各々が相手に奪われた瞬間に一気に距離を詰める意識を高めてた印象。これによってミドルスブラの通り抜けフープが無効化。リバプールの抜群に速い寄せによって縦へのコースを瞬時に切られたのが、その原因だった。逆にいえば、それまでは切り替え後の守備が効果的に効いていなかったってこと。

ミドルスブラの通り抜けフープを途中で引っ掛けまくりのリバプール。ここには全体の出足の速さの向上があった。1つ1つの局面で、相手よりも先にボールに触れることが明らかに多くなったと思う。普通の守備の中でも1つ1つのチェックがはっきりとして、相手に逃げ場を作らせなかった。そして、周囲が連動するリバプールのよさ。両面において高い位置で奪うシーンが多くなったと思う。

そうなれば逆通り抜けフープ。上がりかけの相手に対して一気に縦を通して、中盤をすり抜けて4‐4の間に入り込む。ミドルスブラの4‐4の間になかなか入れなかったリバプールだけど、このやり方なら簡単だった。そして、こういう高い位置で奪った時にこそリバプールがこだわりなくったトップへのボールが効果的。最短距離を通すボールで一気に相手ゴールに迫れる場所に起点を作ることができたと思う。

そういう攻撃の流れの中にもスピード感が生まれた。とにかくパス回しが抜群に速くなった。パススピードはもちろん、1人1人の保持時間も明らかに短くなって次から次へと局面を変えていく状況。ここに至って、やっとリバプールの攻撃が本当の意味で実効性を持ったと思う。

たとえばサイドチェンジ。幅を使えるようになった今回はサイドチェンジ自体は立ち上がりから多かった。でも、それはゆっくりとしたパス回しの中で。オシム風にいえば各駅停車で。相手のブロックに効果的に揺さぶりをかけられず、4‐4の関係をはがすこともできなかった。対して、確変中のリバプールはとにかくスピーディーにボールが回る。サイドチェンジでも効果的に相手ブロックに揺さぶりをかけることができてた。

この一連の変化が出たのが逆転ゴール。切り替え後の厳しい守備と出足の速さによって相手の通り抜けフープを引っかけたところから。それを即縦へ送って、簡単に4‐4の間に入り込む。そして、中→外→中とスピーディーなパス回しで相手を揺さぶった。最終的にシュートを打ったトーレスは真ん中でフリーに。それまでにはありえない、相手の真ん中のフィルターが外れたシーンだった。

気になるのは、こういうスピード感のあるいい展開をなんで最初からやらないのか、続けないのかってこと。できるならやるに越したことはないと思うぐらいにいい内容だと思うわけだけど、確変中の内容が継続できるなら、もっと簡単に勝ち試合を増やせると思う。それに、そもそもこの時間帯のサッカーこそがリバプールの本来的なものだったような気もする。

最後にミドルスブラについてあと少し。ミドルスブラのやろうとするサッカーの質が高いことは明らか。高い位置からの守備で効果的に奪って一気にショートカウンターを仕掛ける。遅攻時もロッケンバックの組み立てから、左右の幅を効果的に使ったいい攻撃ができてると思う。リバプールと同じく、こちらももっと上にいてもいいチームのような気がする。
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2008-03-13 Thu 17:20
ACL第1戦要点整理
【クルンタイバンク×アントラーズ】
<アントラーズ:4-4-2>
FW:マルキーニョス-田代
MF:本山-野沢、青木-小笠原
DF:新井場-大岩-岩政-内田
GK:曽ヶ端

メンバーを見ると本気度が高そうなアントラーズ。内容を見ると本気度が低そうなアントラーズ。サッカーの質が恐ろしく低かった。とはいっても、その質の低さは自ら意図的に生み出したもの。気候、日程、アウェーっていう条件を考慮した結果、省エネサッカーをやりましょうってことに決めたんだと思う。

だから、1-9っていう大差もアントラーズが本気を出したからではない。どちらかと言うと、クルンタイバンクが弱かったから。でも、アントラーズがホームの立場になったときにもっと圧倒的な差がつくかと言えば、そういうわけでもないと思う。今回はクルンタイバンクがホームだったことで、前に出る意識を強くしてくれたことがこの結果を生み出した。たぶん、クルンタイバンクがアウェーの戦い方をしたらもっと常識に適った点差になるはず。

そのホームでのクルンタイバンク。システムは4-1-4-1。途中で4-4-2になってみたりと優柔不断だったけど、ベースにあったのは4-1-4-1ってことでよかったと思う。実は4-4-2っぽい形の方が安定してたのは内緒。この4-4-2のときには引き気味で戦って、アントラーズの攻撃をうまく跳ね返せてたのも内緒。だからこそ、システムはともかくアウェー用の引いた形で戦えばもっといい勝負になるだろうなって思ったわけ。とにかく、難易度の高い4-1-4 -1を選択してしまったことがクルンタイバンクにとっては根本的な問題だったと思う。

このシステムをベースにホームのクルンタイバンクは積極的な守備を展開。敵陣のボール保持者に対しても、厳しいアプローチをかけていった。加えて、そういう最初の守備の対する後ろの連動性も悪くない。しっかりと次の入りどこを勝負どころと定めるような守備のやり方ができてた。少なくとも、最初の数分はこの守備が成功する雰囲気が見られたのは事実。すぐにアントラーズに慣れられてしまったけど。

よさそうに見えるクルンタイバンクの守備のやり方。惜しかったのはトップの場所に入ったコネが守備をしなかったこと。チームとして守備を免除されてた可能性もある。それでも、クルンタイバンクの守備は前線から厳しくがモットー。必然的に中盤の選手が次から次へと引っ張り出されていく展開が生まれるわけで。結果として4--1--4みたいな感じで、弱点になるボランチの1の場所には恒常的に広大なスペースが生まれてた。

それでも、前線の4の守備が効いてるときには何とかなってた。それが立ち上がりの数分。厳しく当たるから、アントラーズの選手も意図の薄いボールを出すことが多くなったし、後ろも狙えてたと思う。でも、だんだんとアントラーズの選手が落ち着いていく流れ。技術力をベースに慌てず騒がずボールを処理するシーンが多くなっていく。クルンタイバンクの前線のプレッシャーにも動じなくなっていった。

それにそもそも相手は中盤の選手が出てくるわけで。どうしてもアントラーズの低い位置の選手に実効的な守備をするには距離が遠すぎる。クルンタイバンクにとっては、いわゆる背後にギャップだけを残してきちゃう展開に陥った。そして、アントラーズがそのギャップを見逃すはずもなかった。

アントラーズ得意のギャップ探し。とりあえず相手のプレッシャーを否すために左右の展開を増やし始める。大きくサイドを変えるボールを織り交ぜながら、相手の守備の狙いどころを定めさせないやり方。前線から守備をしようとする相手の意識を空回りさせ、自分たちは常に広い場所を利用した。

そうやってある程度フリーになれば、使えるべきギャップはたくさんある。DFの4と中盤の4の間をつなぐボランチの1の場所にある広大なスペース。そこにマルキーニョス、田代が降りてきて自由に起点となれるシーンが多くなったと思う。ここでいつものアントラーズの通りに流動性ベースの厚みのある攻撃を展開していれば、もっとゴールに迫るシーンを増やせたはず。

でも、今回は省エネで意思統一が図られてるアントラーズ。願ってもないギャップに入り込めても、ここぞとばかりに人数をかけてこなかった。結果として、普通の組み立ての中からは決定的なチャンスは作っていない。実際に9得点の全てがセットプレーかカウンターから生まれてるわけで。この辺にもいつものアントラーズとは違った部分を感じた。

省エネアントラーズの攻撃はとにかく縦への意識が強いもの。というか、前線で何とかしてくださいね方式。上に書いたような相手のブロックを揺さぶるための最低限の左右への展開以外は、ほとんど意図的な組み立ては行われていない。単純に言い表すならば、スタートとゴールしかないようなサッカーが展開されていた印象。

つまり、組み立てで人数をかけたり手数をかけたりっていうやり方は採ってこない。攻撃にかける人数に関して言えば、得点が入るごとにどんどんと減らしていった印象。そもそもスタートの時点で、攻撃に積極的に絡んでいったのは前線の4枚と新井場ぐらい。ちょっとしたら、青木と小笠原がトップが流れたスペースに飛び出すっていう本来のアントラーズ的な流動性も見られはじめたけど、その瞬間に先制点。結果として、青木と小笠原が前線まで飛び出していったのは、それぞれ1回ずつだった。内田も同様に積極的に攻撃に参加する意識は薄かったと思う。

その後、2点目が入ると新井場の攻撃参加が目に見えて減った。要するに前線の4人だけで攻撃はなんとかしてくださいねの流れ。さらに3点目が入ると本山の攻撃参加が減少。どちらかと言うと守備に貢献するシーンが目立ち始め、役割的には3ボランチ(青木+小笠原+本山)と野沢っていうイメージだったと思う。あくまでも役割的なもので、形は変えなかったけど。結局、後半は前線3人で攻撃をするシーンが圧倒的に増えた。

細かい部分を指摘するなら、守備時に田代⇔野沢とか本山⇔小笠原みたいな単純なポジションの入れ替えが時々見られたと思う。この辺にも、それぞれの消耗度を平等化させるような意図があったのかもしれない。とにかく、今回のアントラーズのやり方の念頭にあったのは、無駄な疲れを残したくないってことだった気がする。

そのアントラーズは守備も省エネ。いつものように前線から追いかけていく時間は皆無で、自陣で4-4-2(4-2-2-2)のブロックを形成して受ける形をとった。相手の最終ラインが自由にボールを持てたのが何よりの証拠だったと思う。

その上で自陣に縦パスが入ってきたところで守備の開始。自陣に入ってきたボール保持者に対しては忠実にチェックを繰り返す。そして、そういう1つ1つのチェックに対してすぐに周囲が連動。ボールサイドに人数をかけて、相手の選択肢を限定して行った。このときにはトップの選手(特に田代が目立った)が戻ってきて次の狙いに入るシーンも目立ったと思う。今回の試合では前への守備を免除された代わりに、後ろの手伝いの役割が求められていた印象。

この守備のやり方が実効的に機能したのは特に後半だった。それは次との攻撃を考えたとき。後半にあれほどの得点を稼げたのは、こういう受ける形の守備のその要因があった印象。シンプルな守ってからのカウンター、もっと言えば、狡猾なおびき寄せ作戦が功を奏した後半だった。

そもそもクルンタイバンクは攻撃にもホーム的な色が見られた。要するに攻撃に人数をしっかりとかけようっていう考え方。この考え方自体が悪いわけではない。でも、あまりにも前に人数を入れようとしすぎる傾向が強かった。最終ラインがボールを持ってるときに、その近くに選手が全然いない。なぜかって言えば、みんな前線に出て行ってしまっているから。守備でも前後の分断、攻撃でも前後の分断。

その前線では近い関係でいいパス回しの片鱗は見せてくれた。流れてボールを引き出すコネと2列目の選手がいい距離感でトライアングルを形成し、少ないタッチでパスが次々に回るっていうシーンが1、2回できたと思う。めちゃめちゃ素晴らしいコンビネーションっていうわけではないけど、とりあえずタイのリーグで2位っていう意味は分かるぐらいのパス回しが見られた。というか、逆にこの部分にしか2位と納得できる部分はなかった。

ただ、ここで大問題。そのいい関係性を築ける前線にどうやってボールを供給しようかってこと。ボールの出し手である最終ラインといい関係性を築ける可能性のある前線までの間に、経由するような場所はなかった。時間をかければかけるほど、どんどんと前線に人数が入り込んでしまう状況だったから。結局、一番深い位置にいけるのはコネへの単純なロングボールって形になってしまったと思う。

ここにおいてアントラーズのおびき寄せ作戦は大成功。相手の出し手である最終ラインは結構高い位置までボールを持ち上がってくる。自陣には敵味方が大勢入り込んで、スペースはない状況。しかも、相手の出し手と受け手の間にはアントラーズの選手が多く入り込むことができた。その理由はここまで書いたように、相手の攻撃に前後の分断が見られたから。特に後半は相手も前がかって来てるわけだから、こういう傾向が強くなってたと思う。

こういう状況の中で待ち構えるアントラーズの選手がボールを途中で奪うとどうなるかって話。相手は前線にみんな入り込んでるわけだから、切り替え後の守備は効きにくい。そういう守備をするには戻りながらのものが要求されるから。そもそも、クルンタイバンクの選手の切り替え後の守備意識はかなり怪しいものだったし、クソ暑い中で戻って守備をするなんてのはやなこったって話。

結果として奪ったところ、もしくはそこからちょっとボールを動かすとアントラーズのボール保持者は簡単にフリーになれた。そして、その後の攻撃で崩すべきは相手の最終ラインのみ。しかも、相手の最終ラインはかなり高い位置に引っ張り出されてるわけで、ウラには広大なスペース。何も考えずに、そのスペースを使ってれば得点につながったのが後半の流れだった。

そういうわけでアントラーズにとっては素晴らしい試合展開。スコアもそうだけど、考えうる限りでもっとも効率的に試合を進めた。いつものように攻守に渡ってランニングをベースとしてないわけで、ほとんど待ちの姿勢で相手のボールを奪い、後は蹴ってただけ。攻撃では前線の負担が大きくなったけど、2トップは途中交代で休ませることができた。

大体において前半の得点は全部セットプレーなわけで。セットプレーでの相手の対応もまずい部分が目立ったけど、とにかくこのセットプレーで得点が奪えたってのが大きかった。特に先制点は。これによって得点を奪うために攻撃で勝負に出る時間ってのも必要とされず、むしろ攻撃にかける人数を徐々に減らしてくような状況ができたわけだから。またしても、大人のアントラーズが垣間見えた試合だった。


【ガンバ×チョンブリFC】
<ガンバ:4-4-2>
FW:ルーカス-バレー
MF:二川-寺田、遠藤-橋本
DF:ミネイロ-水本-山口-佐々木
GK:藤ヶ谷

偶然、ガンバの相手もタイのチーム。でも、本当のこの2チームが1位と2位なのかっていうほどに量チームのサッカーの質には違いが見られた。もちろん、上に書いたクルンタイバンクはホームの戦い方をしたことでギャップが多くできたことは考慮しなきゃいけないし、逆にチョンブリの方はアウェーの戦い方でギャップを作りだなかったとも言える。とはいえ、両チームのチームとしての質は明らかに異なってた印象。

クルンタイバンクは上にも書いたように、攻守に渡って致命的な前後の分断が起こってた。対して、ガンバと戦ったチョンブリは守備においてすさまじいまでの一体感を感じさせられた。そして、ガンバは最後の最後までそのチョンブリの一体感を打ち破ることができなかったと言っていい。本当の意味での最後の最後の時間の得点は、文字通りチョンブリの集中力が切れたことで生まれた。

そのチョンブリの守備はスタンダードな4-4-2。2トップは状況に応じて縦関係になることで、ガンバのボランチを見ることもあったけど、基本的には3ラインの意識が高い守備ブロックの形成だった。そして、そのそれぞれのラインをコンパクトにまとめる。立ち上がりはガンバに負けず劣らず最終ラインを高い位置に保ってたから、そういう高い位置のコンパクトブロックが本来の形だと思われる。

ただし、相手がガンバってことで後で詳しく書くように、だんだんとブロックが押し下げられることとなった。そうなったときにも、FWを含めてこの3ラインの一体感を保ったままに低い位置にブロックを形成するようなやり方が見られた。この3ラインの一体感はこのチームの特徴であると思う。

ガンバの方から見れば、この3ラインの一体感をどう崩すかってのがポイントになる。要するに、ラインとラインの間、特に4-4の間にどう入り込むかってことがポイントになった。そこをこじ開けなければ、ガンバ流の中盤制圧が難しいし、何よりもゴールに向かうのに障壁が多すぎる。

ただし、当然のことながらチョンブリの方もそう簡単には4-4の間には入れさせないぞって守備をしてきた。チョンブリの守備は縦パスが1つ入ったところからスタート。そのときに中盤の選手が、ガンバのボール保持者に対して強烈にプレッシャーをかける。球際の厳しさ、強さがかなり目立ってたと思う。そうやって中盤で1つ1つつぶしていくことで、簡単には縦パスを4-4の間に入れさせないような守備のやり方を採ってきた。

これに対してガンバ。とりあえず立ち上がりの時間はロングボールを蹴りまくった。相手の中盤のボールに対する意識とそれをベースにした守備の質が高かったから、それを飛び越す考え方は妥当。そうやって直接に相手最終ラインに仕掛けてやろうっていうボールを蹴りこむことが多くなったと思う。そのときにはバレーの高さ、ルーカスの献身的な引き出しの動きが有効活用された。後ろが追いつけずに2トップが剥がれるシーンが目立ったのがちょっと気になったけど。

そのせいかどうかは分からないけど、ガンバはあっさりとロングボールを捨てた。自分たちのスタイルじゃないから嫌だったのかもしれない。とにかく、相手の中盤のプレッシャーなんのその、いつもどおりにショートパスで崩してやるぜっていうサッカーに変更した。

その変更があっさりと機能するのがガンバの素晴らしさ。中盤の流動性、両SBの攻撃参加、FWの組み立てへの参加を利用しながら普通にパス回しをしていった。特にボランチに入った遠藤の存在が大きかったと思う。タッチ数を増やしながらリズムを変え、そうやって相手のブロックにギャップを作る、さらに自身の攻撃参加で4-4の間に余った選手として入っていくことが多かった。

こういうパス回しの中で相手のギャップギャップをつなぐパス回しが見られ始める。相手の中盤がボールに寄せに来たことでできたギャップを有効活用しながら、4-4の間にあっさりと入り込むシーンが目立ち始めたと思う。そう、あっさりと入ることはできたわけ。

ただ、入り込んだ後はどうしようもなかった。これに関してもチョンブリの守備のよさ。基本的には自分の前のボールに対するアプローチを担うチョンブリの中盤。でも、4-4の間に入り込まれた瞬間にいっせいに戻りながらの守備を開始する。そうやってDFとの関係で一気に挟み込んでしまうシーンが目立った。

結果としてガンバの選手は4-4の間に入り込めたとしても、その後の仕事をする前に窒息させられてしまった。素早く囲まれて、つぶされるシーンが目立ったと思う。チョンブリの中盤はとにかくDFだけを晒させないってことを絶対的に考えてたし、その役割を遂行するために前だろうが後ろだろうが献身的に守備をした。この辺に一体感を感じさせられた。これだと、4-4の間は、入ったが最後、すぐに一気に囲まれてしまうっていう罠状態だった。

ガンバはロングボールをあきらめ。真ん中からのショートパスでの打開も諦めざるを得ない状況。仕方がないので次のアプローチに変更した。それはサイドに起点を作る考え方。真ん中よりもサイドが薄くなるのは必然なわけだから、そこに数的優位を作って攻めていこうっていう意識が見られたと思う。

今回の試合で特に使われたのが左サイドだった。ミネイロが超積極的に攻撃に参加し、二川もサイドに張り出し気味でプレー。さらにルーカスがサイドに流れる動きを繰り返して厚みを増し、そこにボランチを絡ませながらサイドに数的優位を作り出すことに成功したと思う。

これによって得られたのは、相手のブロックを押し下げたってこと。サイドに起点を作り、そこに数的優位を作ってショートパスとかミネイロの突破によって深い位置まで入り込んでいくガンバ。これに対して、チョンブリは立ち上がりのように高い位置でのブロックを維持することができなくなった。相手のサイドの侵攻に対して、ブロックを押し下げて最終的にはゴール前に人数をかけるような形になることが多くなったと思う。

これによってカウンターは有効に使えなくなった。立ち上がりは中盤で引っ掛けてカウンターを仕掛けるシーンがいくつか見られたチョンブリだけど、ガンバに押し込まれる中で一体感を重要視するために前に人数を残さずにみんなが戻るってことが多くなる。結果として奪った後のカウンターが効果的に機能しなくなった印象。

ちなみにチョンブリのカウンターはなかなか鋭かった。得点シーンも(後半だったけど)も典型的なカウンターだったし。基本的に4-2または4-1は後ろに残した状態で前の少人数だけで攻めようって形。特に2トップと右サイドに入ったアティットの役割が大きかった。トップに当てて、その間にアティットが飛び出し関係性を築くってことが多かったと思う。起点としてのファビアーノの存在も大きかったと思う。

そう考えると相手のカウンターを防いだっていう意味ではガンバのサイド起点の攻撃には一定の意味があったのは事実。ただし、本当に何とかしたかったのは攻撃面。特に相手の4-4の関係性を何とはして剥がしてやりたいって事。この点については、何の根本的な解決も得られてなかったのも事実だったと思う。

この要因の1つはガンバのサイドの使い方にある。上にも書いたようにガンバはサイドに起点を作るやり方に変えたわけだけど、それが何を意味するかってこと。ガンバはサイドを単純に使わない。つまり、深い位置にえぐってクロスってやり方はほとんど見られなかった。サイドに起点を作ったって言っても、それは経由点。最終的にはショートパスで崩すことが念頭にあるから、起点を作ったサイドから結局はパスのつなぎで中に入ってこようとする。

これじゃあ、問題を先送りにしただけ。結局は相手の4-4を崩さなきゃならないわけだから。単純にサイドをえぐってクロスの形ならば、その4-4との対戦は避けられる。前からのボールに対しては2層構造の4-4も真横からのボールには無力化されるわけだから。でも、ガンバはそういう方式は採らなかった。クロスはアーリー気味に上げることが多くて、結局は4-4の実効性が残ってる状態。

確かにここまで書いてきたようにサイドに起点を作って深い位置に入り込めたのは事実だし、それによって相手を押し込むこともできた。でも、最終的には相手の4-4を相手にしなければならない状況。そして、そこで何もできずに困る状況に陥ってたと思う。これが問題を先送りにしただけっていう意味。

どうしても本来的なパス回しで崩したいならば、その4-4の関係を崩すアプローチを採らなければならない。その中でもっとも現実的なのは左右をワイドに使った展開ってのが考えられる。相手のブロックを左右に間延びさせることで、関係性を希薄化させるってこと。そうやってギャップを作っておいてから、本来的なパス回しをすればいい。

こういうアプローチをガンバはできなかった。左右の揺さぶりに関しては皆無。特に前半は全ての攻撃が左サイドから行われたといってもいい。立ち上がりこそ佐々木の攻撃参加が活発に見られたけど、結局はほとんどの時間で消えてしまっていた。その理由は単純に左のミネイロが超攻撃的に行ったことで、バランスをとらなければならないっていうことだったと思う。結局、これによって左右のバランスが崩れてしまうワイドに使う選択肢はなくなった。

工夫したアプローチなしで相手のブロックにショートパスで仕掛けていこうとするガンバ。まさに天皇杯準決勝のサンフレッチェ戦と同じ状況に陥ってしまった印象。上に書いたように左右に広げることはなかったし、前へ前への意識が高まる中で下げて作り直す選択肢もなかった。結果として超窮屈な展開を余儀なくされ、そうやってもたついてる間に前線にどんどんと人数が増えていく状況。サンフレッチェ戦と同じように前線渋滞状態に陥った。

みんな引いて守ってるチョンブリの守備に、みんな前線に出て行ってるガンバの攻撃。スペースが本当になくなった。そういう状況の中でガンバの前線に入り込んだ選手の動きもほとんどない。みんなが待ってる状況。攻撃側が待っててくれれば、守備側も待ってればいい。よって、ますますチョンブリの守備ブロックは安定感を増すことになったと思う。

で、ガンバのアプローチの面白いところは前線が停滞すると前の人数を増やそうとすること。サンフレッチェ戦と同じく、今回も途中から中盤がダイヤモンド型に変更されてた。前が渋滞してるのに、もっと前へっていう考え方はちょっと面白い。とりあえず、ますます窮屈な状況に陥ってしまい、ますます動きが停滞していった。

ただ、後半の開始時にちょっとした改善が見られた。これは選手交代によって。佐々木⇒山崎の交代。これによって2つの改善がもたらされる。1つは遠藤が再び低い位置に戻ったこと。橋本がSBに下がったことで、遠藤が底を担当することになった。結果としてピッチで使える広さが広がったと思う。さらに、前線の3トップ気味の3人が動きをもたらし始めた。流動性を持たせながら、出入りを激しくしたと思う。これによって前線渋滞の雰囲気が緩和された。形はダイヤの4-4-2のままでも、中身が変わったことで前半よりはいい流れが生まれたと思う。

でも、いい流れが生まれたところで先制点を奪われる。この失点後、なぜか知らないけど再び前線が停滞。全体の前への意識が高まった結果なのか、また最前線に人が入りすぎて、同時に動きが少なくなる渋滞が生まれた。ここにさらにFWの選手を入れるってアプローチは諸刃の剣。入ったのが播戸だったから、前の動きが再活性化される可能性もやっぱり人が多すぎて窮屈になる可能性もどちらもあったと思う。

で、結局どっちになったか。結局はそれ以前の問題だった気がする。それまで少なくとも攻撃に深みを与えることには多大な貢献をしていたミネイロが下がったことで、それまでのように深い位置に起点を作るのは難しくなった。仕方がないから、FWを頼る面が大きくなってしまったと思う。これはパワープレー的な意識が高まりつつあったからかもしれないけど。それまでの渋滞はどこへやら、今度はFWが前線で剥がれるような展開が生まれてしまった。

そういうわけで、それまで以上に得点の臭いが薄くなったガンバ。相手の4-4ブロックは相変わらずゴール前でバランスを崩さずに守備をしていた。つまり、このテーマは最後まで解決されなかったって言っていい。カウンターからの失点も不運だったけど、最後に同点に追いつけたのは運がよかった。どっちにしても引き分けが妥当な試合だったと思う。

そういうわけで今回の試合で見つかったガンバの課題は、ありきたりな言葉で言うならば「引いた相手をいかに崩すか」。もっと工夫をしましょうねっていう話。工夫なく狭いところを強引にパスで崩すのはやっぱり難しい。アーセナルじゃないんだから。左右を広げてみるとかはやってみないと。

ただ、ガンバの戦術はよくも悪くもボールへの意識が高いのかなって思える。守備でもボールサイドに人数を集める意識が高いし。4-2-2-2の2-2-2はボールサイドに明らかに寄りながら守備。そうやって、相手のプレーエリアを狭めながらボールを奪おうっていうやり方。別に悪いってことじゃないけど。最終ラインを高めに保ってることを考えると、縦横にコンパクトな守備ブロックっていえる。

後は前線の渋滞状況を何とかしないと。これは前線に人数が入るのが悪いっていうわけじゃなくて、前線に人数が入った状態で動きが停滞するのがまずいって言ってるわけ。パスで強引に崩すとしても、足元足元のつなぎじゃ無理でしょってこと。ボールの近くで待つ選手ばかりではなくて、同じように人数をかけるにしても出入りを激しくしたらいいと思う。とにかくラストの崩しで、もう少し工夫が欲しい。結局は個人の強引な突破に頼るのが現状。少なくとも、実際に見たここ2試合(今回の試合とずっと前のサンフレッチェ戦)では、そういう状況に陥ってた。
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2008-03-12 Wed 17:16
チェルシー×リバプール
<チェルシー:4-3-3>
FW:Jコール-アネルカ-SWフィリップス
MF:ランパード-バラック、マケレレ
DF:Aコール-カルバーリョ-アレックス-ベレッチ
GK:チェフ

<リバプール:4-2-3-1>
FW:クラウチ
MF:バベル-ジェラード-カイト、マスケラーノ-ルーカス
DF:リーセ-キャラガー-スクルテル-フィナン
GK:レイナ

ここのところずっと様子がおかしかったリバプール。攻守に渡って違和感ありあり。とりあえず守備は本来のリバプール的ではないっていう程度のもの。前線からの守備が効かず、結果として中盤が守備の勝負どころになれない。これに伴って3ラインの関係性の密接度が薄まるって感じ。対して、攻撃は致命的。制限をかけられてるのかってぐらいに真ん中に引き寄せられる。組み立てがエリアの幅だけを使って行われ、真ん中に縦パスを入れなきゃいられない症候群。相手が守りやすいのも当たり前だった。

この様子のおかしさがそのまま結果にも現れた。ずっと勝ちきれなかったのは、明らかにこの様子のおかしさに原因があると考えてよかったと思う。今回のチェルシー戦の1つ前のサンダーランド戦で久々の勝利。この試合も前半は様子のおかしさそのままのサッカーで0-0で折り返し。後半にサイドの存在を思い出して3得点っていう展開だった。

この様子のおかしさに対して、とりあえず4-4-1-1を採用してみれば?ってのがここ数戦の間折に触れて書いてきたこと。守備のスタートとして機能しないFWを捨てて中盤を厚くする考え方。これでとりあえず、それぞれのラインがはがれるようなバランスの悪さは改善できる。攻撃でもいきなりトップに当てずにトップ下の場所に経由点ができる。4-2-3-1の方が両サイドのサイド的な役割が増えることで、チームとしてサイドを思い出せるかもしれない。ってなイメージでの提案。

この願いを受け入れてくれたのか(そんなはずはない)、今回の試合でついに4-2-3-1(守備時は4-4-1-1)を採用。もともとはマスケラーノ&ジェラード&Xアロンソ併用ってことで考えてたから厳密に言うと違うけど。Xアロンソの左右への展開が期待できない代わりに、機を見て前線に厚みを加えるルーカスの動きのよさが見られたからよし。

とりあえず、システム変更のリバプールは様子のおかしさどこへやらって感じ。実際のところ、本当にシステム変更の効果がダイレクトに出たのかは微妙なところ。密かにチームに停滞感を生んでた気がするトーレスが外れたからって気もするし、マンU戦でも見られたような強いチームに対する本気っぷりのおかげって気もする。数戦の様子見が必要か。嬉しいことに、その後4-2-3-1を基本で戦っているようなので。まあ、結果が出てるってことはそれなりにシステム変更の効果は大きいってことなのかもしれない。

とにかく、今回の試合のリバプールはいろんなところで改善が見られた。まずは攻撃面。真ん中のトップにこだわる姿勢は明らかに減退したと思う。ある意味ではクラウチにこだわる印象もあったけど、それはまた別の話。結果として攻撃が真ん中に引き寄せられてしまうっていうような状況にも陥らなかった。ここ数戦の中では明らかにクロスの数が群を抜いてたと思う。ゴール前に真ん中→真ん中だけではない、いろんな方向からボールが入ってきてた印象。

ここで重要な役割を担ったのがトップ下に入ったジェラード。バベル、カイトとのポジションチェンジも目立ったけど、基本的にはトップ下の位置にはジェラードが入った。このジェラードがトップの前に入ることで経由点として、かなり効果的に機能してた印象。まさに、上に書いた狙い通りいきなりトップに行ってしまうのを防ぐ存在だった。

そうやってトップ下の位置で経由点となったジェラードは高めの位置でボールの方向をいろいろに変えていった。低い位置から入ってきたボールを左右に振る、サイドから中に入って来たボールを逆サイドに振る。こういうジェラードの経由点としての役割が、攻撃に幅をもたらすことにつながった印象。後で書くように、左右の幅を効果的に利用したことによってチェルシーの守備陣に狙いを定めさせない効果も見られた。

もちろん、なんでもかんでもトップ下のジェラードを経由させるわけではない。それだったらなんでもかんでもトップに入れようとしてたときと対して変わらないわけで。ジェラードのところでいろいろな方向にボールが動いたってのも重要だったけど、その前段階でのバリエーションもいくつかあった。

それは例えばトップ下を経由させずにいきなりサイドに起点を作るようなボール。ただ、一番多く見られたのはクラウチの頭を狙いましょうねっていうボール。低い位置から一発でロングボールを放り込むシーンが目立った。特に立ち上がりの時間帯は。素晴らしくリバプールらしいアプローチ。基本的にクラウチの頭を狙うときには、カイトが流れてきてるシーンが多かったと思う。トップ下の入れ替えの中で、組み立てのときにはジェラードを使い、大雑把にやるときにはカイトが入るっていうようなイメージだった。

じゃあ、なんで立ち上がりはロングボールが多かったかって話。上にも書いたようにリバプールらしいアプローチなわけだけど。それはチェルシーの守備ブロックがまだバランスをしっかりと整えてた時間帯だったから。とりあえず、そのバランスを崩しておいてからゆっくりと攻めましょうねってのがリバプールの考え方。ここではロングボールが有機的に機能すること、つまりトップの場所にクラウチがいることがかなり大きな意味を持つことになったと思う。

チェルシーの守備はブロックをセットしたところから始まる。そうやって受ける体制をしっかりと作る。そうやってブロックを作ってしまったら、自分たちから積極的にっていう守備のやり方は採らない。リバプールのCBには自由にボールを持たせておいて、そこから1つ縦(SBを含めて)に入ったところで守備を開始するっていう考え方が見られた。

そのときに今回の試合ではシステム合致を利用できた。リバプールが4-4-2ではなく4-2-3-1を採ってきた副産物としてこれが生まれたわけ。リバプールの4-2-3-1とチェルシーの4-1-2-3は完全合致状態になったわけで。チェルシーの選手は自分と対応する選手にボールが入ったから、しっかりとチェックするっていうことがはっきりしてたし、それを忠実にやろうっていう意識も見られた。

システム合致を利用しながら自分と対応する選手に当たってやるぜってやる気満々のチェルシーの選手達。でも、ここでリバプールのロングボールアプローチがはじまる。やる気満々なのに、ボールは自分の上を飛び越えていく。やる気満々なのに、それを削がれたチェルシーの選手たちだった。

結果として守備の根拠がなくなってしまったと思う。一気に距離を稼がれた状況の中でシステム合致は効果的に利用でない。システム合致利用で効果的にチェックをするならば、その対応する選手が自分の前にいることが好ましいわけだし、相手がつないできたところに局面局面での忠実なチェックで制限を加えて行くのが理想的。一気に距離を稼ぐリバプールのロングボールに対しては、そのどちらも通用しなかった。

ちなみにシステム合致利用の守備は1つ1つが単発に終わりやすいのにも注意が必要。単発と言ってもそこに意図を持って追い込めればいいけど、意図のないやり方だとどこにも勝負どころが定まらなくなってしまう。それぞれがそれぞれの対応選手を見るわけだから、人のところを助けるなんて余裕はあまりないわけで。つまり、守備の連動性が築きにくいっていえる。

そして、今シーズン唯一見たアストン・ビラ戦でのチェルシー。まさに単発守備のループに陥ってた。1つ1つのチェックはしてるんだけど、どこで勝負をすべきかが定まらない。アストン・ビラが効果的にスピーディーな展開をしてきたこともあるけど、次々に局面を変えられて結局は最後のシーンに行かれる場面が多かった。そういうわけで、チェルシーの守備の連動性は微妙って印象を受けた。

加えて今回の試合ではリバプールが効果的に攻めてくる。それが立ち上がりのロングボール攻勢と途中からの左右の幅を使った攻撃。縦横へのアプローチの中で、ますますチェルシーの守備の根拠をなくしていったと思う。

まず立ち上がりにロングボールを増やす中で、チェルシーに対して縦の揺さぶりをかけてきた。クラウチの高さによってロングボールに怖さが生まれたチェルシーの後ろの選手は押し下げられる。それにあわせて前線も押し下げられる。ここで前後が分断せずに、全体を押し下げて守備をしようとするのはチェルシーの守備意識の高さか。まあ、前線から追いかけまくってロングボールを蹴らせないっていう積極的な可能性もなくはなかったけど。

とにかく全体が押し下げられたチェルシー。リバプールにとっては陣地が増えたことになる。ここに来て、全てクラウチの頭を狙う方式はやめる。とはいっても、やることがなくなればクラウチの頭なんだけど。それでも陣地が増えたことで低い位置の選手が浮いてきたから、しっかりとつなぐ意識が高まった印象。結果として上に書いたようなジェラード経由の左右の幅を使った攻撃が見られ始める。

この左右の幅を使ったリバプールの攻撃に対してチェルシーはますます狙いどころが定まらない。いまや全体が押し下げられてシステム合致の根拠は薄くなってしまったチェルシー。その上左右に揺さぶられて横に対する間延びの状況。一応、ボールに対するチェックには行こうとするものの、完全に単発に終わってしまうことが多かったと思う。

前後左右に揺さぶられまくった状態でブロックのバランスが完全に崩れてるシーンもかなり目立った。カウンターの流れでもないのに、サイドを変えたときにリバプールの選手が完全にフリーとか、前後の間に致命的なスペースができて中盤にマケレレ1人しかいないとか。チェルシーが守備の形を見失ってしまっていた証拠。

それでも助けられたのはリバプールがさっさと攻撃を終わらせてしまおうとしたから。サイドにボールを出したとしても、じっくりと攻撃をせずにアーリーでゴール前に上げるシーンが目立った。チェルシーの守備ブロックにギャップを見つければしっかりとサイドをえぐるシーンが多かったのも事実だけど。とにかく、そういう早めの攻撃をチェルシー自慢のラストの跳ね返し力でなんとか抑えるっていう展開が続いた。

ただ、そうやって守備を何とかしてるときにも攻撃に期待できたわけではない。むしろ、攻撃には期待ができなかったと考えてもいいと思う。チェルシーのブロックに対して揺さぶりをかけながら攻めて来たリバプールに対して、チェルシーは何の工夫もなく攻めているようなイメージだった。

守備が単発っぽかったってのは上にも書いたとおりのチェルシー。攻撃もそれに負けず劣らず単発のものだったと思う。要するに連動性があまり感じられなかったってこと。前線が完全に剥がれてしまっていたイメージだったし、そもそも個々の分断も目立った気がする。

チェルシーの攻撃の中で重要な役割を担ってるのがトップに入ったアネルカ。チェルシーの中でアネルカは自他共に認める起点となる選手だと思う。自他共にってのは、まずチームとしてアネルカに当てる意識が強いってのが1つ。それをアネルカも分かってるから、受けられる場所に動いてボールを引き出す。とりあえず、前半はそのボールを引き出すってこと自体はできた。

ただ、アネルカが起点になってもその後をどうしようかって問題。前線が剥がれてるからアネルカの選択肢は恐ろしく少ない。Jコールはアネルカが出てきた真ん中のスペースに入っていく。SWフィリップスはスピードを見せて前へ前へとランニングをしていく。後ろは追いついてない。ボールを持ったアネルカはシンプルに出せる場所がどこにもないって状況。頼みの綱の3トップの残りの2人に出すには、振り向かなきゃならなかった。相手がしっかりと密着してるのに。

そういう意味で3トップがバラバラに動いてたイメージ。3トップ自体がそもそも剥がれてるのに。前線に3トップがいるというより、前線に3人いるって感じ。とにかく、結果としてボールが入ったアネルカの保持時間が延びる。リバプールがそれを黙って見てるはずもなく。すぐに囲い込んで仕事をさせなかった。そうやってリバプールにボールが奪われるかどうかっていうタイミングでやっとこさランパード&バラックがボールを受けられる位置に入ってくるってな感じ。もう手遅れですってことがかなり多くなったと思う。

そういう意味でバラックとランパードは効果的に攻撃に絡めてなかった。本当のことを言えば守備にも絡めてない。上に書いたように、チェルシーの守備が単発気味になったのは2人があまり助けに行かなかったから。自分の相手にはとりあえず守備をしてたけど、周囲と協力してっていう形には参加してなかった。実質的な中盤が3人しかいないのに、そのうち2人が助けにこない。それじゃ、守備も単発になるわって話。マケレレ1人じゃいくらなんでも無理なわけだから。

そういうわけでチェルシーは前後に分断が生まれてた気がする。守備では後ろの5人が頑張り、攻撃では前の3人が頑張る。その間に位置してたバラックとランパードは守備にも攻撃にも中途半端に参加しない。少なくとも前半はどちらも消えてしまった存在だったと思う。重要なポジションの2人が消えたら、そりゃ相手に主導権を握られても仕方がないねって話。

とりあえず守備以上に連動性を感じさせなかったチェルシー。その唯一の希望が左サイドのコール&コールの関係性だった。2人が近い関係性を築くってのはもちろんだけど、Jが流れていってその空いたスペースにAが上がってくるっていう形の関係性も見られた。ここの場所だけが関係ってものを感じさせたところ。ただ、それだけでリバプールの守備を崩せるはずもなく。むしろ、弱点として晒すこととなった。

そもそも今回の試合のリバプールは守備の内容も改善した。トップが守備の中で消えてしまうこと、それによって各ラインの関係が希薄になることっていう最近見られた問題点があっさりと解消されてた。これについてもシステム変更がいい方に出た部分だった気がする。

そのリバプールの守備の根本的なやり方はチェルシーのそれと大きく変わらない。1度セットしたところから守備をスタートさせるし、チェルシーのCBは基本的に自由にボールを持て、そこから攻撃が開始されたところでリバプールの守備がスタートされる。ゾーンの意識が強いリバプールだから、チェルシーみたいにシステム合致をそのまま利用するっていう意図はあまり感じられなかったけど。

それでも大きな相違点があったのも事実。1つはリバプールの守備にはチェルシーにはない連動性がしっかりと見られるってこと。もう1つはチェルシーの攻撃のやり方の中にロングボールっていう選択肢がなかったこと。この相違点が前半の流れを決定づけたと言っても過言ではない。

リバプールの守備は前にも書いたとおり、次を狙うのがうまい。前が制限した次でインターセプトとか1つめのチェックに対する、2つめ3つめの囲い込みとか。それが最近の様子のおかしさで見られなくなってしまっていた。中盤が本来以上の役割を任せられたことでケアするべきエリアが広がったのがその要因。引っ張り出されることが多くなって、それぞれの距離感が広がってしまっていた。結果として連動性を築くのが難しくなり、次から次へと逃げられてしまう状況に陥っていた。

それに対する今回のシステム変更。中盤が5枚になり、それぞれがそれぞれの持ち場でプレーできる状況が生まれたと思う。マスケラーノが広いエリアをカバーするのは相変わらずだけど、様子がおかしいときに見られたような本来的にはFWの場所である高さまで出て行くっていうようなイレギュラーな状況は皆無。これはシステム変更の効果だったと思う。

とにかく上に書いたようなイレギュラーな状況が生まれなかったことで、後ろの4-4の関係性が保たれた。加えて、守備時にはジェラードとかクラウチっていう最前線の選手も助けに来たことで中盤の密度が上がった。左右に選手間の距離が近いっていう状況が生み出されたと思う。

結果として縦パスに対して、素早くチェックができる下地ができた。選手間の距離が近いだけに、それぞれが担当するエリアが狭まってチェックに行くための距離が縮まったから。そして、そういう最初のチェックに対して素早く複数枚が連動する状況も多く見られたと思う。前後の関係で挟み込んで奪うってシーンがどれだけ多かったかっていう話。そうやって最後の場所に行かれる前に奪うことができた。明らかにリバプールらしい守備が戻った印象。

そして、上にも書いたようにチェルシーがロングボールを蹴らなかったことで、こういういい質の守備がさらに効果的に機能することになった。トップのクラウチは前に向かって追い掛け回すような守備をしなかったから、上にも書いたように相手のCBは浮いてた。そこから蹴りまくることも可能だったと思う。でも、チェルシーはそれをしなかった。あくまでもショートパスをつなごうとしてきた。この辺がぽゼッション型に移行してるってのを表してるのかもしれない。

とにかく、そういうわけでリバプールの方からしてみれば組織を作って待ってれば相手が勝手に網に引っかかってきてくれるような状況。ロングボールはもちろん左右の展開っていうようなアプローチもなかったから、ブロックのバランスはそもそも崩されない。そして、そうやって待ちに待ってるブロックに単純な縦パスが入ってくる。上に書いたように前後が分断したチェルシーの攻撃では狙いどころがはっきりしてる。結果としてリバプールはいい内容の守備を発揮し放題。途中で引っ掛ける、入ってきたところで一気に挟み込み、囲い込んで孤立させて奪うシーンが多発。ゴール前にさえ近づかせない展開が続いたと思う。

そして奪ったボールは一気に縦へ。一番多かったのがジェラード経由カイト行きの展開。上にも書いたように、チェルシーの攻撃で唯一の巧妙はコール&コールの左サイド。必然的にそのサイドに起点を作ることが多くなった。当然期待されてるAコールは攻撃に出てくる。ウラにはスペースが空き放題。カウンターでリバプールはそのAコールウラを有効活用。チェルシーは左サイドから、リバプールは右サイドから、つまり同サイドでの攻防が続いた前半だった。

こういう流れの中で前半は明らかにリバプールペース。本来の輝きを取り戻したリバプールの攻守の内容に、その両面でチェルシーは圧倒されてしまった。このままの流れでは後半もリバプールのペースになるのは明白だし、得点が入るのも時間の問題とさえ思われた。でも、その期待は裏切られることとなる。

その要因はチェルシーの後半に向けての修正。その修正は守備の方で行われてたと思う。簡単に言ってしまえば、リバプール化。それまで単発に終わることが多かった、1つ1つの守備に連動性を持たせるっていう意識を高めてきた印象。局面で1×1ではなくて、1×複数を作るような守備のやり方が多くなっていった。

だから、後半はバラック&ランパードが急に目立ち始める流れ。前半に完全に消えてしまったのが嘘のようにいろいろなところの守備の助けに奔走した。2人が普通に守備をしてくれるようになった時点で、普通に守備の厚みが増したわけ。加えて、チーム全体として局面の守備で数的優位を作る意識が高まってるわけだから、前半とは比べ物にならないほどに守備の質が高まった。

よって後半のリバプールは前半のように思い通りにはできなくなってしまったと思う。パスを自由に回して、いろんな方向に展開するっていう形は皆無に。そのパス回しの途中で引っ掛けられてぶつ切りにされてしまう流れが圧倒的に多くなった。守備の方は相変わらず効いてたから、体力的にどうこうってことはなかったと思う。それだけチェルシーの守備が改善したって単純に考えていいと思う。

ただ、このリバプールの守備は悪くなってないってのが見てる方としては厄介だった。チェルシーは攻撃の方にも改善の意図が見られたのは事実。前線でバラバラに動くんじゃなくて、ある程度一体感を持たせようと試みた。バラックとかランパードも前半よりは攻撃に目立つシーンが見られたと思う。でも、アネルカは消えた。一体感を持たせるために全体が真ん中に偏ったからプレーエリアがなくなったからかもしれない。そういうわけで劇的に攻撃がよくなるってこはなかった。

そして、リバプールの守備は効いてる。劇的変化のないチェルシーの攻撃ではリバプールのいい内容の守備を崩すのは難しい。結果として最後のシーンに行く前に流れを止められてしまう前半と同じ流れ。そして、上にも書いたとおり後半は逆の関係でも同じ状況。リバプールは最後のシーンに行く前にチェルシーに流れを止められてしまった。

そういうわけで後半は圧倒的にゴール前でのシーンがなくなった。両チームが中盤でいい内容の守備をしたことで、ピッチの真ん中でボールが行ったりきたり。どちらも攻めきれず、どちらも攻めきらせない。ある意味では守りあいの展開って言えるけど、どっちも危ないシーンにまで行ってないから守り愛とも言えない気がする。4強のうちで守備の方によさのあるリバプールとチェルシーの対戦。後半はその象徴のような試合展開になった気がする。お互いの攻撃がお互いの守備を上回れなかった。

とりあえず、今回の試合で復活の兆しが見られ始めたリバプール。その後の試合でも4-2-3-1システムを利用しながら好調を維持してるようで。そもそもなんで様子がおかしくなったのか?ってな部分についても、できる限り考えてみたいと思う。
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2008-03-11 Tue 17:10
マンU×マンC
<ユナイテッド:4-4-2>
FW:Cロナウド-テベス
MF:ギグス-アンデルソン-スコールズ-ナニ
DF:オシェイ-ビディッチ-ファーディナンド-ブラウン
GK:ファン・デル・サール

<シティー:4-1-4-1>
FW:ベンジャニ
MF:ペトロフ-アイルランド-フェルナンデス-バッセル、ハマン
DF:ボール-ダン-リチャーズ-オヌオハ
GK:ハート

ミュンヘンの悲劇から50年ということでちょっと普段とは違った雰囲気の中行われたこの試合。このある意味では異様な雰囲気の影響をもろに受けたのはユナイテッドだったように感じる。立ち上がりから、ちょっとおかしな感じを受ける部分が多くなった。もちろんユナイテッドが負けた原因の全てが、この雰囲気に帰結されるわけではないと思うけど、少なくともその原因の一端を担ってたのは確かだった気がする。ちなみに、もう1つの大きな要因はルーニーとエブラの不在だったけど、それは後述。

まず、そういう雰囲気に呑まれてるなって感じたのが守備面。そもそもユナイテッドの守備は気まぐれ。前線から追いかけまくったかと思えば、見てるだけの選手ばっかになったりする。それでもルーニーがいるときにはしっかりと守備をするんだろうなって思ってたら、1つ前のトッテナム戦でルーニーがいなくても守備をしないときはしないってことがバレた。

それでもルーニーみたいに追いかけてくれる可能性がある選手がいればマシな方。今回の2トップはテベス&Cロナウド。テベスは守備意識がないわけではないけど、相棒ルーニーが頑張ってるときにしか守備をやろうとしない。守備をしないサハと組んだときに、それが判明。そして、今回はおそらくサハ以上に守備をしないであろうCロナウドが相棒。こりゃ前線からの守備には期待しない方がいいなってのがメンバーを見たときの感想。

それでもCロナウドが1枚上がったことで、下のブロックは安定するだろうなって思った。ギグスは本来的にCロナウドよりは守備においてブロックに参加しようとする意識が高いし、ナニにもそれがいえる。だから、いつもみたいにバランスが崩れた4-3または4-2にならず、安定した4-4が築ける気はした。それならば、別にトップが守備をしなくても致命的ではないかなって話。

ここまでがメンバーを見て考えた部分。でも、実際に試合が始まってみたら驚くべき状況が見られた。2トップをはじめとして、みんなの守備意識が高いこと高いこと。しかも、敵陣の一番深いところから相手のボール保持者に対してプレッシャーをかけるような積極性が普通に見られた。全体が守備における前への意識を高め、敵陣内でボールを奪い返すシーンがとにかく増えたと思う。局面を見ても相手よりも前で触る意識がかなり高かったから、チーム全体の意識の高さを感じさせられた。

上にも書いたようにユナイテッドの守備は気まぐれなわけで。特別な試合とスタジアムの雰囲気っていう外的要因に守備が影響を受けたとしても何の不思議もない。そして、立ち上がりの守備意識の高さはおそらく本当にそういう雰囲気に呑まれた部分が大きかったと思う。なぜなら、前半の時間が経つごとに目に見えて守備意識が減退していったから。たぶん、立ち上がりに雰囲気に呑まれて勢いがついちゃったって感じだと思う。ちなみに、後半は2点ビハインドで折り返したこともあって、これはやばいってことで再び前線から守備をしまくったけど。

ちなみに余談だけど後ろの4-4が安定するっていう方も予想外だった。確かに受ける形を築いたときには、ナニもギグスも中盤のラインに入って見た目は4-4の形成ができてるように見えた。もっと言えば、Cロナウドがしっかりとトップ下の場所を埋めるユナイテッドらしくないバランスの取れた4-4-1-1が形成される時間もあった。

ただ、実際には見せかけ的な部分が大きかったと思う。全体のバランスはいいはずなのに、なぜかアンデルソンがかなりの広さの場所で守備をすることが多かった。つまり、いるだけで機能しない問題児が多かったってこと。早い話が前線の変則4トップなんだけど。守備をするときとしないときはやっぱり気まぐれ。最終ラインの位置まで戻ってみたり、上がっていく選手を放っておいて前線で歩いてたり。そういうわけで、常時計算できたのはやっぱり4-2。ユナイテッドらしいといえばユナイテッドらしい。

ちょっと話がずれたけど、とりあえず立ち上がりからユナイテッドが前線からガツガツと守備をしていったのは確か。この流れに引っ張られて、試合全体のスピード感も増すことになった。でも、このハイペースはユナイテッドにとっては好ましくなかったものだったと思う。自ら作ったものであるにも関わらず。保持率が高めたい(実際に高かった)ユナイテッドよりも、カウンターを狙い続けたシティーの方がこういうハイペースに適合してた印象。ボールの行き来が激しくなった方がカウンターを仕掛けられる可能性も高くなるわけだから。

だから、ユナイテッドはどこかで試合の流れを落ち着かせる必要があった。立ち上がりの前線からの守備はとりあえず悪いっていうものではなかった(ユナイテッドらしくはなかったけど)から、落ち着かせるとするならば攻撃。実際に相手がカウンターを狙ってることを考えたときに、一番重要なのは相手にボールを渡さないこと。できるだけ保持時間を延ばし、攻めるときは攻めきってしまうことが必要だったと思う。

この両面において、今回の試合のユナイテッドは失敗した気がする。保持できなかったし攻めきれない流れも続いた。そして、この部分が雰囲気に呑まれてるなって感じた2点目。そして、時間とともに勝手に減退して行った前線の守備とは違って攻撃におけるこの問題点はなかなか修正ができなかった印象。

そもそもシティーの守備は前線では厳しくこない。アーセナル戦のときにも書いたように、シティーの守備の基本的な考え方は受ける意識が強い。だから、ユナイテッドの低い位置のボール保持者(最終ラインとか低い位置で触るCMF)は落ち着いてボールを保持できる状況にあるといっていい。

でも、今回の試合でのユナイテッドの低い位置のボール保持者はなぜか焦ってた。ゆっくりと低い位置で落ち着かせればいいのに、すぐに前線にボールを入れたがった。これはユナイテッドの悪いときの流れ。高い位置から相手にプレッシャーをかけられると、とにかくボールを前線に蹴りこむってやり方を取ろうとする。そういう悪い状況が、相手が前線からプレッシャーに来ない今回の試合でなぜか見られた。

確かに今回の試合では単純に前線に蹴りだすボールが有効だったのも事実だった。これについては後で詳しく書くけど、最終ラインを高めに設定する相手の守備ブロックに対するアプローチとして単純なロングボールを蹴りこむのは悪くはない考え方。でも、あまりにも急ぎすぎ。前線に人材が揃ってないのもあるんだろうけど、ユナイテッドはロングボールの使い方が下手くそな気がする。

とにかく今回の試合のユナイテッドは前へ前へを焦ってるような印象を受けた。どの場所でも落ち着くっていうことがなくて、とにかくボールを前に運ぼうとする。そのときに問題なのは前で準備ができてないことが多いってこと。後ろで時間をかけずに、すぐにボールが来るんだから仕方がない。

結果としてボールが入った前線の選手はボールを受けてから、次のことを考えるような場面が増える。後ろで使われなかった時間を前で使うっていうイメージ。ただし、これは落ち着きではなくてもたつき。そして、そのもたつきがシティーの守備のスイッチとなった。これについても後で詳しく書くけど、とにかくシティーの守備網に引っかかってユナイテッドの攻撃がぶつ切りになるシーンが多くなったと思う。つまり、ユナイテッドにとっては攻めきれない状況。相手にカウンターのチャンスを多く作らせることとなった。

こういう前への焦りはやっぱり雰囲気に呑まれた部分が大きかった気がする。いろいろなアプローチをしながら、相手のブロックのバランスを崩してから攻めるっていう遠回りになってしまう考え方は頭に無かった気がする。とにかく、前へゴールへっていう意識が高くなった。最終的にはパワープレーに頼ることになったユナイテッドだったけど、攻撃のアプローチの仕方はそれまでとは大きく変わらなかったと思う。

要するにユナイテッドの攻撃はかなり単純だったっていえると思う。そして、この単純なやり方は雰囲気に呑まれたことに加えて、上にも書いたとおりエブラとルーニーの不在が強く影響した部分でもあった。特にエブラの不在はそのままダイレクトに大きな問題を引き起こすことになってしまった印象。

今回の試合ではCロナウドが中盤に降りてきてボールを受けるっていうシーンがかなり目立った。特にトップの位置に入ってた前半は。逆にいつものようにサイドに流れてボールを引き出すっていうシーンはほとんど見られなかったと思う。これがちょっと謎。全ての始まりは、このCロナウドの横ではなく縦に流れる動きにあった。

想像するならば、今回の試合のユナイテッドは相手のブロックを縦に揺さぶる意図が強かったのかもしれない。そう考えると1発のロングボールの多用も説明がつく。ロングボールで相手の最終ラインの意識を後ろに向かせておいて、前線の選手は降りてきて中盤でボールを受ける。そういえば、Cロナウドだけではなくて前線の選手が降りてきてボールを受けるシーンが目立ったのは確か。ただ、その実効性はいかほどかって話だけど。

とにかく、Cロナウドは降りてきてボールを受ける。そして、Cロナウドが降りてきたスペースに左サイドのギグスが斜めに入っていくってのがパターン化されてた印象。考え方としては、そうやってギグスが空けたスペースにエブラが上がってくるってもの。でも、今回の左SBはエブラじゃなくてオシェイ。そして、オシェイは思い切って攻撃に参加できなかった。結果として左サイドには人がいませんねっていう状態になったと思う。

下がってきたCロナウドも次の対応に困った。サイドにはたく選択肢は失われる。残されたのは3つ。相手につぶされるか、無理せず下げるか、振り向いて個人で突破するか。最後の選択肢が一番Cロナウドらしいけど、振り向いた先には既にギグスがスタンバイ。個人で突破していくスペースは残されてなかった。結果として無難に下げるシーンが多くなってしまったと思う。

そうやってCロナウドがボールを下げた時点で前線ではギグスとテベスとCロナウドの3人が真ん中に固まってる。下がってきたCロナウドと入れ替わりにアンデルソンが出て行ったりするシーンも多かったから、前線の真ん中は完全に渋滞状態。ここで本当は左右をワイドに使いたいところ。でも、ここまで書いてきたように左サイドは人がいませんね状態。必然的に使うとしたら右サイドってことになった。

その右サイドはナニとブラウンの関係性だったんだけど、こっちのサイドも死んでた。なぜか。まずブラウンに対しては、対応する相手のペトロフがしっかりとマークについてた。だから、そもそも効果的に使えない状況。さらに、1つ前のナニが右サイドに居座り気味だったのが問題を大きくした気がする。

本来的には前線の4人が流動的にポジションを変える変則4トップがユナイテッドの形。でも、今回の試合ではナニがその変則4トップからあふれ出してた。最終的に真ん中に集まってしまったとはっていも、一応残りの3人はポジションをかえながらいい感じで流動性を築いてた。でも、ナニは上にも書いたように右サイドに居座るような状態だったと思う。

相手にとってはかなり捕まえやすい。本来のユナイテッドは前線をグルグルと入れ替える中で浮いてる選手を作るわけだけど、逆に今回のナニみたいに固定ポジションになってしまうと相手に捕まえられてしまう。そんな相手に捕まった状態の選手にボールを簡単に入れられるわけもなく。結果として、右サイドにも起点を作れない状態に陥ってしまった。

ちなみにナニは右サイドにいてもボールが来ないってことに途中で気づいた模様。途中から真ん中に寄ってプレーするシーンが多くなってきた。ただ、問題はその代わりにサイドに出て行く選手がいなかったこと。結果として真ん中の渋滞を酷くしただけ。今回の試合のユナイテッドは前線の関係性のギクシャク感がかなり感じられた。確かに今回のメンバーの組み合わせはあまり見ないから、その変も影響したのかもしれない。

こんな感じで前線が真ん中に偏ってしまったユナイテッド。さらに問題は後ろも真ん中に偏ってしまったことにあったと思う。ここにもエブラの不在が影響してる。本来的に攻撃時の最終ラインはエブラが高い位置に入って右寄りの3人でパス交換をすることが多い。その右寄りの3人(ビディッチ-ファーディナンド-ブラウン)の組み合わせは今回も変わらなかったわけだけど、そのパス交換はほとんどなかったと言ってもいい。

それはブラウンの攻撃意識が強まってたから。エブラがいないから俺が攻撃に出てやるぜって思ったかどうかは知らないけど、低い位置で味方がボールを保持してるときにいつものように、そのボール保持に加わるんじゃなくて前線に出て行って受け手になろうとうすることが多くなった。

だったら、いつもとは逆になって左のオシェイがパス回しに参加してくれればよかったんだけど、オシェイはこっちにも参加せず。エブラの不在を強く感じさせられるバランスの崩れ方。結果としてパス交換はCBの2枚とその1つ前にいるCMF(多くの場合でスコールズ)。結果として真ん中にしか選択肢がない。ここで効果的に左右の幅を使ったりできないことが、低い位置で保持してても仕方ないっていう意識を生んだのかもしれない。

そういうわけで今回のユナイテッドは全く横幅が使えなかった。出し手は真ん中にしかいないし、受け手も真ん中にしかいない。真ん中→真ん中のこじんまりとした展開が多くなる。当然のように途中で引っ掛けられることも多くなるわけで、2点目のCKの流れはそもそも真ん中→真ん中のパスをカットしとこから生まれてる。縦の揺さぶりはロングボールと前線の選手の中盤に降りてくる動きでそれなりにかけたけど、横の揺さぶりはほとんどかけられなかったと言っていい。

そして、縦の揺さぶりも実効的には機能しなかった。なぜなら相手を間延びさせても、それを使える下地がなかったから。準備ができてない状態で前線にボールを入れても後ろがついて行けてない。つまり前線がはがれた状態。そして、その関係性を築く前にハマンを初めとした相手の中盤がつぶしに来た。これによって確かに相手のブロック自体は下がった。結果としてユナイテッドは陣地を増やすことができたけど、シティーとしてはラストブロックは崩されませんよって形。むしろ相手をおびき寄せた分、次のカウンターがかけやすいぐらいだったと思う。

なぜなら何度も書くようにユナイテッドの攻撃は真ん中に限定されてた。そして、その真ん中の場所はシティーの守備ブロックでは最強の場所だった。全く横の揺さぶりをかけられてないシティーの守備ブロックは、その最強の真ん中の場所がベストの状態で相手の攻撃を受けることができた。そう簡単には崩されないって分かってただろうし、実際に崩されてない。

じゃあ、なんでそんなに真ん中が強いかって話。まず、人材的な部分。ダン&リチャーズのCBは今回の試合で活躍しまくり。さらに重要な場所である中盤の底のハマンもハードワークで守備に貢献した。本来的にこの3人で絶対的に抑えられてるわけだから、単純な攻撃で崩せるはずもなかった。

さらに基本的には守備時(ほとんどが守備時だったけど)には1つ前に入ったアイルランド&フェルナンデスも助けに来た。これで真ん中は2-3の計5枚で抑えてることになるわけで、枚数的にも5枚が位置する。守備時には中盤がフラットな5のラインに見えるような形がこれを実現した。実際の真ん中はアイルランドが相手ボール保持者にアプローチをかけ、フェルナンデスがハマンと共にDFライン前を押さえる役割分担ができてた。ちなみに、サイドもしっかりと人数が足りてることを付け加えておく。

ユナイテッドは何の工夫もなく、相手がこれだけ固めてる真ん中を何の工夫もなく攻めようとしてたわけで。いくらなんでも無理ですねって話。敵も味方もいっぱい入ってる真ん中の場所では得意の個人技を繰り出すスペースがつぶされてしまっていたのも痛かった。

ただ、シティーの守備に弱点がないわけではない。それはアーセナル戦でも見られた部分。つまり、結局どこでボールを取るの?っていう問題。シティーの守備ブロックはコンパクトだし、人数をかけてるから選手間の距離は近い。だから、守備のスイッチが入った時点で一気に連動できるような下地はある。

でも、アーセナル戦ではそのスイッチが入らない問題があった。最初の縦パスが入るっていうようなスイッチになりえる場所で厳しい対応をしない。だから、簡単に起点になられてしまう。そして、前線に起点ができればアーセナルのパス回しは開始される。後はギャップギャップをつないでひたすらにボールを回すだけだった。シティーの守備ブロックも何も関係ない状況だったと思う。

基本的にこの場所が大きく改善されたイメージはない。ユナイテッドの選手が本来のポジションからちょっと動けば、ボールを受けるのは簡単だった。ちょっと下がったアデバヨールが簡単に起点になれたアーセナルと同じ状況。そういう意味でシティーの守備のやり方はアーセナル戦のときとは違ったと思う。

ただ、今回の相手はアーセナルではなくユナイテッド。しかも、この試合のユナイテッドは様子がおかしかった。上にも書いたとおり、関係がギクシャクしてた印象を受けたし、ボールを受けてから考えるっていう状況も目立ってたと思う。そして、そうやってできた微妙な時間をシティーが効果的に使ったと思う。

入りどころに厳しく対応をする形ではないシティーの守備。そこをスイッチにできないかわりに、今回のユナイテッドに多く見られたようにちょっと時間ができれば、それをスイッチとしたと思う。ユナイテッドのボール保持者がもたついた瞬間、つまり選択肢が少なくなった瞬間に守備の勝負のスイッチが入るイメージが強かったと思う。ここにおいて、ついに近さが有効活用された。効果的な前後の挟みこみがかなり多く見られたと思う。そういう意味で、前の選手が後ろの向かってする守備の質の高さも感じさせられた。

だから、シティーにとっては守備のスイッチをどうやって入れるかがポイントになるかもしれないと思う。守備のスイッチを入れる前段階の組織作りと、スイッチが入った後の挟み込み、囲い込みによる数的優位の作り方の質は高い。問題は一番重要なスイッチをどう入れるかってことになる気がする。

この点についてはあまり気にする必要もないかなって気がしたのも事実。今回の試合みたいに、相手が自分達のブロック内にボールを入れたところで前後(左右)から挟み込むってやり方でいい気がする。アーセナルみたいに、一度起点を作られたら奪いどころがないなんてチームはほとんどないわけだから。今回の試合では時間とともに自信がついたのか、間合いが分かったのか、こういう形の守備の質が高まってったのも事実。だから、このやり方の質を高めていくっていうのも1つだと思う。

ただし、あくまでも受け身っていうことを忘れてはいけない気がする。今回の試合でもいくつか見られたようなアーセナル的やり方、つまり最初に起点を作ってそのまま人もボールも動かして少ないタッチでギャップギャップをつないで行く形ではユナイテッドも抜け出しそうなシーンを作り出した。シティーのやり方はどうしても後手後手に回される可能性が高くなるから、こういう危険性もはらんでいるように感じる。

こういう守備をベースとしたシティーの攻撃はカウンター。今回は完全にユナイテッドに攻めさせておいて、その背後を狙う形に徹した印象。実際にそれで2得点を奪ってる(2点目は直接的ではないけど)わけだし、成功した形と言ってもいいと思う。このカウンターの流れで重要になるのが、ベンジャニの収まり、ペトロフのスピード、フェルナンデス&アイルランドの運動量だったと思う。

攻撃への切り替えにおいて、まず目標とされるのがベンジャニ。ベンジャニに入れることで1つ時間を作り、後ろの攻撃参加を促進させるっていう形が多かったと思う。これはカウンターに限らず、遅攻の場面でも。そういう意味ではベンジャニは1トップとしての役割をかなり高い質でこなしてるって言えると思う。

で、カウンターにおいてはこのベンジャニを経由させたボールは左サイドに展開される。場合によっては直接左サイドに行くこともある。とにかく、カウンターにおけるペトロフの役割は大きい。ペトロフは上にも書いたように、守備において相手に引きずり降ろされてる。次のカウンターを流れを見ると、この引きずり降ろされてるのは罠かもしれないとさえ思う。

攻撃の流れの中でペトロフはスピード能力を発揮。低い位置に引きずり降ろされてるってことは、それだけ相手を高い位置におびき出してるって言える。シティー陣内から戻るブラウンと飛び出すペトロフのスピード比べ。基本的にはペトロフが勝って、フリーな状態でサイドを駆け上がっていくシーンが多かった。このパターンは面白い。

この中→左サイド→ペトロフ駆け上がりっていう一連の流れの間にフェルナンデスとアイルランド(とバッセル)が猛烈に前線に飛び出してくる。これがカウンターに厚みを加える要因。その意味でフェルナンデスとアイルランドの運動量はすばらしい。守備時はハマンとの逆三角形の関係を築き、攻撃時はベンジャニとの三角形を築く。この前後の行き来を何度も行ってた印象。

前半はこういう形で効果的なカウンターを繰り出しまくったシティーだけど、後半は前半ほど多くのカウンターを繰り出すことができなくなってしまった印象。その要因はユナイテッドのやり方の変更にあったと思う。もちろん前半のスタミナの消費量が尋常じゃなかったシティー自身の疲れもあったんだろうけど。

とにかく後半のユナイテッドは横幅を使うようになった。これが最大の改善点。前線の並びを変えてCロナウドをサイドに出し、オシェイの攻撃参加も活発化させた。これによってサイドの深い位置に入るシーンが増えて、結果として前半のように真ん中にこだわるようなやり方は明らかに消えたと思う。

それでも最後の最後のところはシティーの真ん中の強さに抑えられてしまうこととなったわけだけど、ここで重要なのは攻めきる流れが生まれたってこと。変な場所で引っ掛けられてカウンターを食らうっていう心配はとりあえずなくなった。

そうやってカウンターの心配を取り去った上で大胆な交代。オシェイ→キャリック、アンデルソン→ハーグリーブス(その前に、ナニ→パク・チソン)。これでギグスを左SBに下げ、スコールズをトップ下に上げた。さらにビディッチをトップに上げてパワープレーへ。この一連の変更にはFWの人材不足の苦しさを感じさせられるわけだけど、とにかく何が何でも得点が欲しい本気度は見られたわけで。結果としてそれが実って1点を返したわけだけど、時既に遅し。
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2008-03-07 Fri 18:39
バルサ×セルティック
<バルサ:4-3-3>
FW:ロナウジーニョ-エトー-メッシ
MF:デコ-シャビ、ヤヤ・トゥーレ
DF:シウビーニョ-プジョール-テュラム-ザンブロッタ
GK:バルデス

<セルティック:4-2-3-1>
FW:ヘッセリンク
MF:マクギーディー-中村-Sブラウン、ドナーティー-ハートリー
DF:ネイラー-マクマナス-Gコールドウェル-ウィルソン
GK:ボルツ

遅ればせながらセルティックはシステムを4-4-2から4-2-3-1へと変更してきた。この変更はバルサに対してただ単に中盤の人数を増やすことで対応するっていう意図以上のものがあったように感じるし、実際にその効果も見られた気がする。今回の試合でのこのシステム変更は守備の安定に対して、かなり大きな影響を与えたように思う。

それは前回の対戦で4-4-2システムに大問題が見られたから。それもこれも、守備においては問題児だとしか思えないヘッセリンク&マクドナルドの2トップのせいだといってもいい。2人が守備に関心をよせないことによって、後ろがいくら頑張っても構造上の数的不利が生まれるっていう致命的な現象が起こっていた。これは前回の試合のときに詳しく書いたとおり。

2トップが守備をしないことの直接的な影響は、バルサの中盤の底に入ったヤヤ・トゥーレが完全に浮いてしまうっていう部分に現れてきた。他の場所は基本的に1×1(相手CFに対応するCBのところは1人余らせてカウント)をはっきりさせていくと、本当にトゥーレに対応することができる選手が余っていなかった。

だからといって、完全に浮いているトゥーレをそのまま放っておくわけにはいかないわけで。仕方がないから、中盤の真ん中の2枚で相手の3枚に対応するっていうイレギュラーなやり方を取るしかなくなった。そうなれば当然のようにギャップが生まれる。そして、そのギャップが全体に波及していくこととなった。常に相手選手がどこかしらで浮いてるような状況に陥っていたと思う。

それじゃなくてもFWが守備をしないことで守備のスタートが切れなかったセルティック。にも関わらず、後ろも人数が足りてないから、受ける形での守備も満足にできない。結局は根拠のないとりあえず守備でなんとかしなければならない状況に陥った。

そういう流れの中で途中からは構造上の問題がどうだとかっていう話とは関係ないぐらいに圧倒的な展開になってしまったわけだけど、そのスタートは相手のヤヤ・トゥーレを浮かせてしまったことにあったのは間違いのない事実だった。

ただし、ここのところに対応するのは簡単だったはずだった。単純に守備時にFWを配置してトゥーレを抑えればいい。もう1つ相手のCBに積極的にプレッシャーをかけていって、トゥーレに入るボールの出所を絶つって考え方もなくはないけど、守備における問題児2枚がならんだ状況では現実的ではなかった。

そうは言っても守備時に縦関係になることぐらいはやってくれないと困るわけで。でも、結局は90分間2トップがそういうちょっとした守備意識を見せることはなかった(実際には途中でヘッセリンクが交代したけど)。つまり、90分間トゥーレは浮きまくってた。それは90分間構造上の不利を抱えたまま戦ってたってことと同義になる。

そして、1戦目をを全てそういう問題を抱えた状態で戦い終えた後の今回の2戦目。ここに来てやっと問題を解決しようとするシステム変更。これが“遅ればせながら”っていう言葉の意味するところだし、その効果が単純に中盤の枚数を増やしたこと以上の効果をもたらしたってことも分かってもらえたと思う。

このシステム変更で2トップを単純に縦にしなかったのは、アウェーの戦い方だったからなのか、それともヘッセリンク&マクドナルドの2トップは維持でも守備をしないからなのか。ただ、そういう部分も含めて全体の選手起用と配置にちょっとした工夫が見られたのもよかった点だった気がする。それは中盤の3の部分だった。

前回の試合で好き放題にやられてしまった感のあるロナウジーニョのサイド。今回はそのセルティックにとっての右サイドに本来の中村ではなく、守備的な中盤に入ることもあるブラウンを起用。そうやって守備力強化を図る意図があったんだと思う。実際にこの効果が現れたかどうかは分からないけど、少なくとも前回の試合に比べてロナウジーニョが目立たない存在になったのは事実だった。

そうやって右サイドにブラウンが入ったことで、中村はトップ下の場所に押し込まれる。中村の守備意識がマクドナルドより高いことは明白だから、トゥーレを見る役割を中村に任せるのは何ら問題はない。同時に中村の守備負担を少しでも排除する目的もあったと思う。

トゥーレは組み立てのところでは押さえておくべき選手ではあるけど、試合の中で頻繁に最前線まで飛び出してくるタイプではない。中村にとっては右サイドに入ってロナウジーニョと相手左SB(前回はアビダル、今回はシウビーニョ)の対応に引きずり降ろされることを考えれば、かなりの守備負担の軽減になる。チームとしてもそういうサイドでの守備をより守備の力がある選手に任せるほうが合理的だった印象。

こんな感じで今回のシステム変更によって、前回の試合で見られた問題点のうちある程度簡単に修正が図れる部分はしっかりと修正がなされた印象。そして、その副産物として(意図的な狙いだったかもしれないけど)相手とのシステム的な合致関係が生み出された。4-1-2-3と4-2-3-1のシステム上の合致は完全に1×1が定まるっていう意味でかなりはっきりしたものになるから、これを利用しない手はなかったと思う。

ただ、立ち上がりはこのシステム上の合致を全く有効に活用できなかった。見るべき相手が定まってるはずなのに、その相手に対して厳しく守備ができない。この時間は相手もダイナミックにポジションを変えずに、せいぜい上下の動きぐらいだったのに、はっきりとした対応ができてなかったと思う。対応しようとはするけど、中途半端に距離をとった寄せが目立って、これじゃバルサにとっては何のプレッシャーにもならないだろうなって感じた。

そして、この中途半端な対応はその対応が中途半端だから問題につながった。対応する相手に中途半端にプレッシャーに行くことは、背後にギャップを残してくることになる。前に対しては厳しく効果的にチェックを行わず、後ろに対してはギャップを残してくる最悪の状況。そして、相手はギャップギャップをつないでいくのが大得意のバルサ。致命的欠陥だった。

この時点で前回の試合と同じ臭いを感じさせられた。システムの修正が行われたとしても、内在する問題は何も解決されてないってこと。どの場所でも中途半端なチェックしかできないから、守備の勝負どころが定まらない。ついでにギャップだけを残してくる。そういうギャップに簡単にボールを動かされ、さらに効果的なチェックができない。でも、放っておくわけには行かないから、とりあえずチェックに行く。

完全に後手後手の対応。守備の勝負どころが定まらないのに、ズルズルと引っ張り出されてギャップだけを残してきてしまう問題点。この部分が全く修正されてないと感じさせられた。結果として開始3分で奪われた先制点が全てを物語っていたと思う。一連の流れの中で、セルティックの選手は常に後手後手の対応。全く守備の狙いどころを定められない状況の中で、バルサに好きなようにパスを回されて絵に描いたような展開でゴールまで行かれてしまった。

ただ、今回のセルティックは前回とは違った。失点をして発奮したのか、相手の攻撃に慣れがでてきたのかは分からないけど、とにかく時間とともに1つ1つのチェックの質が上がっていったと思う。そこではシステム的な合致を利用して、すばやくプレッシャーをかけることができるようになっていった印象。結果として相手との距離が明らかに狭まった。

失点後の時間になってファールで相手にFKを与えるシーンがやっと生まれた。それがいいか悪いかは別にしても、それまでの時間はファールするほど近い場所で対応できてなかったのも、また事実。本来のセルティックの考え方ならばファールをするぐらいの厳しい対応の方がよかったように思う。

そういうわけで時間とともに1つ1つの守備の内容が好転していったセルティック。加えて、前回の試合ではうまくできなかったべた引きラスト跳ね返しの質が今回の試合では明らかに高まってた印象。チームとしてラストブロックで跳ね返すときに意思統一が図れてた感じがした。前回のように人はたくさんいるのにみんながやりたいことが違ってギャップができまくりなってことにはならなかったと思う。守るときには守るとして最後の最後の人数ベースの守備ブロックが形成されてた印象。

こういう1つ1つの守備意識の好転とラストブロックの堅さが生まれたことで、前回の試合よりは明らかにバルサの決定的なチャンスは少なくなった。後半にセルティックが攻撃的に行ってる時間を除けば、得点シーン以外で決定的に崩されたシーンがなかったと言ってもいいかもしれない。ただ、決定的なチャンスを作らせなかったとは言っても主導権を握ったのは明らかにバルサ。ここには守ることと奪うことの違いが見えてた気がする。

守ることに関しては今回のセルティックには前回ほどの問題が感じられなかった。ただ、ボールを奪うってことになるとやっぱり見劣る部分が大きい。これはセルティックのやり方の問題というよりは、埋めようのない個の力差による部分が大きかった気がする。セルティックにとっては、守備における1×1をいかに1× 多にもってくかっていうテーマに悩まされることになった印象。

前回の試合と今回の試合の立ち上がりの時間は中途半端なチェックが目立つ中で、そもそも1×1自体も満足に作れてなかった。それが今回の試合ではシステム合致と個々の意識の高揚によって、しっかりと距離を詰めて1×1を作ること自体はできるようになってた印象。ただ、バルサの選手からボールを奪おうとすれば、1×1の関係でってのはやっぱり現実的ではない。本気で奪うとなれば、その勝負どころを決めて1×多で囲い込むシーンを作るしかないと思う。

1×1を1×多にするために考えられるには、まず1×1のところで相手を足止めする。つまり、厳しいチェックで仕事をさせずもたつかせるってこと。その瞬間に周囲が連動して囲い込むっていう考え方。セルティックのベースとなる守備のやり方を考えると、このやり方が現実的だと思う。前線から積極的、能動的になってるなら1×1で足止めするっていう過程を経なくても、チームとして狙いどころが定まるんだろうけどセルティックはそういう考え方ではない。だから、1×1で足止めをしたところをスイッチとして機能させる必要がある。

だから、1×多への移行においては1×1でいかに足止めできるかどうかが大きなポイントになると思う。しかも、セルティックはシステム合致を利用した守備のやり方だったわけで、つまりこれは基本的な1×1ができあがってることを意味する。逆に言えば、1×多を作り出せば他の場所が空いてくる。だから、それだけのリスクを犯してでも囲い込みに参加できるだけの根拠が必要になるっていえる。

そして、今回の試合ではそれだけの根拠を作り出せないのが実際のところだった。相手からボールを奪うためには1×多を作らなければならないってことは分かってただろうけど、それでも1× 多を作り出すところまで行かなかった。つまり、1×多に移行するだけの根拠、守備勝負どころのスイッチを作り出すことができなかったって言っていい。結果としてバルサから効果的にボールを奪うシーンは少なくなり、奪うというよりも跳ね返すシーンが増えた。奪いどころは相手が狭いところを強引に来たところをきっちり締めるって場所になることが多かったと思う。

ただし、上にも書いたようにこれはセルティックの守備の問題というよりも両チームの力差による部分が大きかったのも事実だったと思う。単純に考えれば1×1で相手を押さえ込むには、それなりにそれぞれの個の力が拮抗してる必要がある。そこに差があれば、1×1で次を考えて足止めするなんてことよりも、その局面で最低限の仕事をさせないってことが優先されるわけだから。

加えて、バルサの攻撃のやり方の中には“静”のタイミングがない。ボールも人も常に動き回ってる。どこかしらで攻撃側に止まるタイミングがあれば、そこで狙うっていう考え方もできる。でも、バルサにはそれがない。いや、あることはある。でも、それは止まったことで相手が守備の狙いを定めることを逆に利用する。今回の試合で言えば、ロナウジーニョが止まって受け、セルティックがここぞと数的優位を作ったところで外を回ったシウビーニョに出すっていうシーンが多かった。得点シーンもそういう形だったわけで。

とにかく本来的にはボールと人が動き回ってるバルサ。基本的に1タッチ2タッチでギャップギャップをボールがいろんな方向に動いている。それにあわせて、人が適切な場所に入り込む。ボールを出した後の選手も、すぐに次の場所に入っていく。ボールを受ける選手は動きながら引き出し、動きながら受け、そのまま動きながら次に展開する。ボールの保持時間が長い選手はボールを動かしながら、つまりドリブルをしながら次の展開を狙う。本当の意味で止まるなんてことは上に書いたロナウジーニョみたいな例みたいなときぐらい。

こういう文字通りに流れるようなバルサの展開の中で、セルティックの側が相手を足止めをするってのはかなり難しいと言わざるを得ない。ボールなり人なりが動きの中でいろいろな展開が生まれていくっていう意味では、バルサの攻撃の中には特異点がない。特異点がなければセルティックはチームとしての狙いどころが定められない。本気で1×多を作るためのスイッチとして相手を足止めするならば、セルティックの個の判断とか力量で行われるしかない。そして、個の力ではバルサが圧倒してたのが現実だった。

こういう部分をセルティックの攻撃×バルサの守備っていう側面から見ると個々の力差の影響が見て取れる。バルサの方の守備も基本的には最初のボールへのチェック、つまり1×1がスタートになる。そして、その1×1の中で相手を足止めしたり選択肢を制限したりする。そして、最終的には複数枚が協力してだんだんと相手のプレーエリアを狭めて行って奪い取る形。1×1から最終的には1×多での守備へとつながっていく。

そして、セルティックの攻撃×バルサの守備の側面ではセルティックの攻撃側が1×1で相手に圧倒されてしまう状況が目立った。後ろに戻すボールがかなり多かったし、そういう1×1で相手に主導権を握られてしまってパスミスをする、出しどころがなくて持ち過ぎてしまい結局は複数枚に囲まれてしまうってことが多かったと思う。

もちろん、ここには攻撃の質の差があるのも事実。人数をかけて、しかもそのそれぞれが適切な場所に入って選択肢を増やすバルサに対して、セルティックのボール保持者の選択肢は圧倒的に少ない。だから、1×1の状況でもセルティックはコースが消されて余裕がなくなる。逆にバルサは相手1枚に1つのコースを消されたとしても、他にもいくらでも出しどころはありますよって感じだった。実質的にはバルサの攻撃 ×セルティックの守備は多×1で、セルティックの攻撃×バルサの攻撃は本当の意味での1×1だったって言えるのかもしれない。

でも、こういう部分を見てみると個の力ってものの威力をかなり感じさせられてしまう。個々の力があったバルサが勝ったって言ったら元も子もないのは確かだけど、それでも今回の対戦(1、2戦目通して)は個の力差が明確に現れたのも事実だったと思う。

ただし、セルティックの守備における1×1から1×多への移行を阻んだのはバルサの選手個々との力差だけではないのは事実だった。バルサの方には組み立てにおける組織としての工夫が、そういう状況を生んだのも確かだと思う。それはつまり、セルティックが1×多に持ってくための根拠となる選手の密集地帯をいかに作らせないかっていう部分だったと思う。

1×多を作り出すために必要なのは上にも書いたように、そのスイッチ。加えて、スイッチが入った瞬間に周囲が囲い込めるような選手の近さも要求される。たとえば、バルサは最終ラインを高い位置に保ってコンパクトなブロックを作り出すことで、その近さを生み出しているといってもいいと思う。逆にセルティックはそういう近さを生み出すことができなかった。

その理由はバルサの組み立てのやり方にある。バルサの組み立ては幅をかなり有効に活用してくる。まず、左右に関してはWG+SBで両サイドのタッチライン際までの幅を利用。その中で中→外→中→逆サイドみたいなボールの動きをかなり繰り返してた印象。

これに対してセルティックのブロックは大きく揺さぶられる。これはセルティックが受動的な守備のやり方を取っている以上、ある程度は仕方がない。特に前半は相手の最終ラインを浮かせてたから、好きなように左右への展開を許してしまった。そして、そういう左右への展開に対して受動的なセルティックの守備ブロックはその都度ボールサイドに寄せられる。それを繰り返されれば、当然のようにセルティックな横に対しての間延びが生まれてしまう。つまり、選手間の距離が遠くなったと言えると思う。

それに1つのサイドに寄せといて、逆サイドの広いところを使うっていうパターンもある。セルティックの守備ブロックはボールサイドに寄ってるわけだから、逆サイドは過疎化。そこでは1×多を作り出すような人口密度が確保できてなかったと思う。

バルサはこういう左右の揺さぶりに加えて、上下の揺さぶりも有効活用。1つは簡単な組み立てなおし。相手がゴール前のラストブロック作りに入ったら、無理をせずに1度下げることが多かった。その下げたところではヤヤ・トゥーレが浮いてたわけで、そこからもう1度左右を使うような組み立て直しが見られたと思う。そして、そういう組み立てなおしによって相手のラストブロックから選手を引っ張り出す考え方があったと思う。

これに加えて、もっと多く見られてもっと効果的に決まった縦の揺さぶりがある。それが相手のシステム合致を逆手に取った考え方だったと思う。その主役はデコ、シャビ、メッシ。今回の試合ではデコとシャビが自陣に降りてくるシーンがかなり多かった。システム合致を利用するセルティックの守備陣は、これによってCMFが引っ張り出されることとなる。そうなれば当然のようにその背後にスペースが残されることとなった。

なぜならばセルティックの守備の考え方はあくまでも受動的だったから。CMFが引っ張り出されたのはあくまでも対応する選手を見るっていう個々の役割のため。だから、そうやってCMFが引っ張り出されたからといって最終ラインがそれにあわせてラインを上げる義理はない。結果としてDFラインと中盤の間に広大なスペースが生まれることとなった。

この広大なスペースを有効活用したのがメッシ。メッシは右サイドを積極的に攻撃参加するザンブロッに任せて、自分は中に流れていくシーンが多くなった。そして、多くの場合でメッシはDFラインと中盤の間っていう絶好のポジションで浮きまくってた。そして、そこにパスを供給する下がったシャビ(とデコ)も自陣で浮きまくってた。

ここにはセルティックの迷いが見え隠れする。まずCMFはかなり下がって受けようするデコとかシャビに対して、どこまで着いて行くべきか分からなくなった。さすがにFWの高さまで行くのはダメだろってな感じで、途中で着いてくのをやめることが多かった。そして、多くの場合は着いてくのをやめた後は自分のポジションに戻るんじゃなくて、未練を残したかのように高い位置に留まった。

で、これに対してSMFが影響を受ける。シャビ(デコ)が自陣とはいえフリーだけどいいのか?って感じ。でも、それに対応するにしてはバルサのSBの攻撃参加が怖い。結局、SMFも中途半端な場所に残る。これがセルティックのSBに影響を及ぼす。相手のSBに対応しなきゃならんってことで、中に流れてくメッシを簡単に離してしまった。ついでに、メッシはDFラインを横切るように入ってくるから、セルティックの方はCBが対応するってのも難しかったと思う。

結果としてバルサの方は出し手も受け手もフリーの状況を作り出した。その上、メッシが相手のDFと中盤の間である程度自由にボールを扱えるっていう最高の状態も作り出した。このメッシの中への流れは得点シーンの起点にもなってるし、バルサの攻撃の1つのパターンと言ってもいい程に何度も見られた形だった。

ただ、このやり方は諸刃の剣だっていえる。OMFが下がってボールを扱い、トップ下の場所にスペースを空けてくるっていうやり方は確かにメッシの中への流れによって、かなり効果的に機能したと言っていい。ただ、同じようにトップ下の場所にスペースを作るようなやり方がリヨン戦では問題点として現れてた。

リヨン戦のOMFの組み合わせはシャビとグジョンセン。シャビは今回の試合と同じように下がってきて、ヤヤ・トゥーレと同じぐらいの高さでボールを裁くシーンが多かった。対するグジョンセンは2列目から前線に飛び出すような動きを繰り返して、前への意識を高めた。結果としてトップ下の場所にスペースが生まれたのは今回と同じ。

ただし、このリヨン戦ではメッシが下がってきてボールを触ろうとする意図が強かった(ちなみに逆サイドのイニエスタも)。これはリヨンがコンパクトな守備ブロックを作ったこともあるんだろうけど。とにかく、トップ下の場所のスペースがスペースのままに残されるような状況。これによって前後の分断が起こり、結果としてバルサは攻撃における経由点を失い、効果的に前線にボールを供給できない状況に陥った。

そして、今回の試合でもメッシが負傷交代をした後はこういうトップ下不在の問題点が浮き彫りになった気がする。つまり、トップ下のスペースがスペースのまま残されたってこと。このやり方を採るならばメッシの存在が不可欠だったってことを感じさせられた。最前線のロナウジーニョ&エトー&アンリの中にメッシの代わりとなる(能力的にというよりもタイプ的に)選手はいなかったと思う。

そもそも最前線の3人はメッシのように思い切った動きをしなかった。つまり、相手の最終ライン前を横切るような動き(時間によって3枚の並びを入れ替えたりはしてたけど)。確かに相手のDFラインと中盤の間に空いたスペースを使おうっていう意図自体はあった。でも、それは単純に下がって受けようっていうやり方。今やシステム合致の1×1がはっきりと意識づけられているセルティックは、そういう単純な動きには問題なく対応してたと思う。

さらに、こういう単純な動きには問題がある。それは、上に書いたように前半のバルサでは見られなかった特異点が現れてしまうっていう事。トップに入った場所っていう狙いどころが相手に作られてしまう。それはなぜかって話。

前半のバルサもトップに入れるボールを使わなかったわけではない。ただ、トップに縦パスを入れるのは最後のブロックに対する仕掛けのときだった。この段階ではバルサは攻撃に人数をかけて近い関係を作ってるから、トップに入ったボールもほとんどダイレクトで次に展開された。だから、トップへの縦パスだからっていう理由だけでセルティックの狙いどころになることはなかった。

でも、後半のトップへの縦パスは組み立ての一環。しかも、ここで重要なのはバルサのOMFは低い位置に下がってプレーしてるってこと。つまり、トップに入ったときに次への出し所がなかったってことになる。結果としてトップのところでもたつく場所ができるわけで。しかも、エトー、ロナウジーニョ、アンリといえども相手を背負った状態で個で突破するのは難しい。だから、良くない体勢でのキープが生まれる。セルティックにとっては待ちに待った狙いどころの発生。入った瞬間に前後で挟み込む場面が見られ始めたし、むしろ入りどころを狙ってカットするって場面も目立った。

こういうバルサの状況はリヨン戦とは確かに微妙に違う。リヨン戦は前線にボールを送ること自体が不可能だったのに対して、今回は前線にボールを入れた後の展開ができなかった。ただ、根本的に攻撃がスムーズに行かないってのは同じだったと思う。前線でいい形でボールが保持できないから、後ろからの攻撃参加も停滞して前がはがれた状態になるシーンが目立った。むしろ、後ろが押し上げてる途中で奪われてカウンターを食らうシーンも増えたように思う。

ちなみに、この後半は時間とともに改善傾向にあったセルティックの守備がいい形で機能してた。上にも書いたように1つ1つのチェックが厳しくなり、孤立気味の相手の前で触る意識も見られ始めた。それにスノの投入も大きかったと思う。下がってプレーする相手のOMFにどこまで着いて行くか迷ってたドナーティーに対して、スノーはどこまででも着いて行った(もちろん指示もあったはず)。そうやって、相手の守備のスタートすらもスムーズに切らせなかった印象。後半は4-1-4-1みたいに見える時間が長かった気がする。

こういうスノの積極性に触発されてか(もちろん、この部分も指示があっただろうけど)、守備における前への意識も高まったと思う。自分達から能動的に前へ前へのプレッシャーをかける意識が高まった。これによって後ろが狙える下地が生まれたのも事実だったと思う。バルサとしても前半のように最終ラインで左右の幅を使って揺さぶりをかけるのは難しかった。

そういうわけで後半のセルティックは攻撃に出るシーンが増えたと思う。この攻撃においては、前半の攻められてる時間からの流れを含めて中村の存在が大きかった。この試合での中村は、とにかくボールのタッチ数を増やそうっていう意識が強く見られた。左右上下に積極的に動き回ってボールを引き出そうとしてたと思う。この点においては、守備負担が減ったトップ下の場所に入ったことで自由度が増したって言えると思う。

特に前半は中村のこういう引き出しによって安定感が増してた。前回の試合ほど相手の切り替え後のプレッシャーに困らせることもなかった気がする(それでも高い位置で奪われるシーンはいくつか見られた)。前回は相手のプレッシャーに負けてやみくもに蹴りだすか、なんとかつなげようとして相手に引っ掛けられるかのどちらかだったから。

対して今回は守備で奪った後の次のところで受けられる場所に中村が入ってくることが多かった。そこに1度入れることで落ち着きをもたらすシーンが目立ったと思う。そうやって、とりあえず相手の最初の猛守(切り替え後の厳しい守備)をいなし、ある程度落ち着いて組み立てができる状態を作り出した。

結果として今回の試合でのセルティックはかなりつなぐ意識が強かったと思う。そこでも経由点としての中村の存在は目立ってた。逆につなぐ意識が高まったことで、ロングボールは本当にほとんど見られなかった。ただ、今回みたいに余裕がある状態で意図のあるボールが蹴れるならばロングボールも効果的かなって思う。高さではヘッセリンクが確実に勝ってたし、相手の高いラインウラにマクギーディーを走られるパターンも考えられた。

今回の試合ではいいときのバルサと悪いときのバルサが共存した。前半のバルサ=いいときのバルサはチームとして戦えるのに対して、後半のバルサ=悪いときのバルサは個々が分断する。そして、この良悪にロナウジーニョがかなり左右されるってのを感じさせられた。

ロナウジーニョは個人で何でもできると見せかけて、実は組織の中でこそ生かされるタイプのような気がする。セルティックとの2試合でいいパフォーマンスが見られたわけだけど、そこに大きな役割を果たしたのが左SBの存在だった。前にも書いたようにロナウジーニョが一番いいプレーを見せてたのは、ファン・ブロンクホルストとの関係が良好だったときなわけで。そして、SBが効果的に攻撃に参加できるのはバルサがチームとしてサッカーができてるとき。

だから、ロナウジーニョのコンディションの良し悪しの問題は実はバルサのチームとしての内容を反映してるように思う。逆にメッシは本当にどういう状況でも個でなんとかできるタイプ。チームがいいとか悪いとかは関係ない。だからこそ、コンスタントに活躍できてるって言える。だから、そのメッシの離脱がバルサに与える影響はかなり大きいはず。逆にメッシなしでもいいサッカーができるならば、チームとしていいサッカーができてるってことなのかもしれない。
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2008-03-04 Tue 13:35
アーセナル×ブラックバーン
<アーセナル:4-4-2>
FW:エドゥアルド-アデバヨール
MF:フレブ-ジウベルト・シウバ-フラミニ-セスク
DF:クリシー-センデロス-ギャラス-サーニャ
GK:レーマン

<ブラックバーン:4-1-4-1>
FW:サンタクルス
MF:ぺルナー-リード-ペニー・マッカーシー-ベントリー、トゥガイ
DF:ウォーノック-ヒザニシュビリ-オーイエル-エマートン
GK:フリーデル

ブラックバーンはおそらく対アーセナル用システムを採ってきた。前に見たマンU戦ではスタンダードな4-4-2だったけど、今回は4-1-4-1。攻撃を見ても本来は4-4-2でやってるだろうっていう部分が見られたと思う。攻撃で自分たちがボールを支配してるときには、OMF2枚の役割が明確に分かれる。マッカーシーはサンタクルスと横並びになることが多かったし、逆にリードは下がってきて組み立てに参加することが多かった。どちらかと言えば4-4-2の形に近かったような気がする。

じゃあ、なんで4-1-4-1を採用したかって話。当たり前のようにアーセナルの中盤を警戒してってことだと思う。最近の試合を見てみると、アーセナル相手に中盤を5枚にするチームは珍しくないし。中盤を自由に使われたら厄介だってことが分かってるだけに、システム的に少しでもスペースをつぶしてしまおうっていう意図があると思う。

でも、それだったら4-2-3-1でもいいんじゃないかってのも事実。むしろ、攻撃時の4-4-2を考えれば2トップを縦関係にするだけっていう必要最小限の変更を加えればいいわけだし。それにアーセナルに対して中盤のスペースをつぶしたいならば、底の位置は1枚より2枚の方が絶対に安定感がある。

そう考えると、なんで4-2-3-1じゃなくて4-1-4-1なのかっていう疑問を感じるのも事実。ただ、この疑問に対しては試合の中で答えが得られた。この試合のブラックバーンの守備の考え方を体現するためには、4-2-3-1じゃなくて4-1-4-1の方が適してたと思う。

そのブラックバーンの守備の考え方ってのは、アーセナルの攻撃のスタートのところを押さえようっていう狙い。サンタクルスはがんばって守備をする感じではなかったから(相手がもたつけば適切にプレッシャーをかけるけど)、アーセナルのCBはある程度落ち着いてボールを保持することができた。ただし、そこから1つ前に入るところで対応する意識がブラックバーンの守備には強く見られたと思う。

ここではある程度のシステム合致を利用してる。アーセナルの両SBにはブラックバーンの両SMFがつき、アーセナルのCMF2枚にはブラックバーンのOMF2枚が対応。だからこそ、トップ下の場所は1枚じゃなくて2枚いる必要があった気がする。4-2-3-1では完全に押さえるのは無理だから。

この守備のやり方にはアーセナルの攻撃のやり方がしっかりと考慮されてる。基本的にはショートパスをつなぎたいアーセナル。当然のように最終ラインから大雑把なパスを出すのは嫌うと思う(最近は仕方がなければロングボールも蹴るようになったけど)。だから、組み立ての中でCMFなりSBなりを経由するのはほとんど必然。ブラックバーンはトップのサンタクルスが追いかけなくても、狙いどころを定めることができた。

ただ、トップのところで守備のスタートが切られてないから、ブラックバーンの中盤の4での守備はあくまでも受ける意識が強い。対応する相手に入ったところで寄せて前を向かせないっていうやり方が目立った。意図としてあったのは最低限仕事をさせないっていう考え方であって、奪おうっていう質の守備のやり方ではなかった気がする。だから、アーセナルのSBなりCMFがボールを触ること自体は可能だった。そこからの展開は許してもらえなかったけど。

この最低限仕事をさせないっていう守備のやり方はブラックバーンの守備の特徴であり、弱点にもなりうる部分でもある。これはマンU戦でも見られた。ある程度つくべき選手をはっきりとさせる中で、対応する選手にボールが入ると一応の寄せは見せる。だから、直線的にゴールに向かわれることはない。

でも、それはあくまでも一応の対応であって、奪う質のものではない。結果としてボールを自分たちのものにするためには、相手のミスを待つかなんかのきっかけで個人がカットするかってことになる。それに、一応のチェックが多い中で守備のスイッチも入りづらく寄せが単発で終わってしまうことが多い。守備の勝負どころが定まらないっていう問題も生まれると思う。

今回の試合では立ち上がりは前線からの一応のチェックの繰り返しで守備に大きな問題を来たすことはなかった。前線で相手のスタートを押さえる意味では、一応のチェックでも十分だったから。むしろ、アーセナルを相手にするならば前線から積極的に追いかけるよりも、待っていて入ってきたところを狙う方がよさそうってのは、ここでも何度か書いてきてる通り。

前から追いかけても、抜け出されて後ろにギャップを残してきたらアーセナルの思う壺。個々の力量に差がなくて前線から効果的に守備ができるならともかく、個々の能力に差があるならば背伸びをせずに受ける形がアーセナルに対しては適切な気がする。その上でアーセナルの攻撃のスイッチとなる縦パスを忠実に狙うのがいい気がする。

そういう観点から見ると今回のブラックバーンの守備はそれなりに意味があったと思う。立ち上がりは相手のスタートをつぶすことで、アーセナルの中盤のパス回しと押さえつけることができてたのも事実だった。ただ、この時間にセットプレーから失点してしまったのは痛かったと思う。その後、アーセナルがブラックバーンの一応チェックにほころびを見つけて、アーセナルタイムに突入していった。というわけで、アーセナルがどうやってブラックバーンの守備のバランスを崩して行ったかを見てみたい。

相手の中盤の4によって、SBとCMFっていう攻撃のスタートのところを押さえられたアーセナル。そういうわけで、立ち上がりのアーセナルはとりあえずしっかりと組み立てるっていうことをあきらめてた気がする。上に書いたように、この時間はアーセナルの中盤でのパス回しはほとんど見られなかった印象。

じゃあ、どうしたかって言うと、アーセナルは単純に前線に送るボールを増やした。このボールはある程度自由になれたCBから送られることが多かったけど、単純なロングボールっていうよりも長距離のくさびっていうイメージが強かったかもしれない。とにかく、たいした工夫なく前線にボールを送ってたわけだから、つながればラッキーって感じだった。

普通ならあまり効果的じゃないようなこのやり方。何しろつながればラッキーって言うぐらいに確率は高くないわけだから。ただし、ここで思い出さなければならないのはアーセナルの守備。アーセナルの守備が一番効果的に決まるのは攻撃からの切り替えのところ。つまり、敵陣内深くの場所だってこと。

つまり、適当に前線に送ったボールが相手に奪われても何の問題もなかった。奪われた瞬間に高い位置で守備を開始するアーセナル。切り替えでの最初の守備の強さ、素早さが目立ったし、最終ラインを下げずに、高い位置に人数をかけた状態だから連動もしやすい。ことごとく敵陣でボールを奪うことができた。SB、CMFが経由点として機能できない状況の中で、ある意味では相手を経由点にするようなイメージのやり方だった気がする。

こういう敵を経由させたやり方の他に、もう1つ攻撃のスタートを切る方法。こっちの方が正統なやり方だし、アーセナル的なやり方。それは前線の選手が降りてきて攻撃のスタートのなるっていうこと。今回の試合ではフレブ、エドゥアルドがその役割を担うことが多くなった。試合の流れを支配する時間帯になると、セスクもそういう動きを見せ始めてたけど。

上にも書いたようにブラックバーンはつくべき選手をある程度定めている。加えて、1つ1つの守備が単発だってのも書いたとおり。だから、逆に言えばつくべき選手がはっきりしないと効果的に守備ができないともいえると思う。そして、アーセナルの前線の選手が低い位置まで降りてくるってのは、そのつくべき選手がはっきりしないってことに当てはまる。

例えば、フレブがSBの位置まで降りてきてボールを受けるシーン。もちろん、このときにクリシーは入れ代わりに前線に飛び出していく。そうなったときに、相手の右サイドの選手はどちらがどちらを見るかってことを定められなかった。結果としてフレブは浮いた存在になり、攻撃のスタートとして十分に機能することができたと思う。同じことが真ん中のエドゥアルドのところで起こったし、むしろエドゥアルドの方が攻撃のスタートをスムーズに切ることに貢献したといえるかもしれない。

そして、そうやって浮いてしまう選手が1人でもできるとブラックバーンは大混乱に陥る。浮いた選手をフリーにしとくわけにはいかないから、周囲の誰かが助けに来る。これはつまり助けに来た選手がついてたアーセナルの選手が浮くことを意味する。そして、そういうギャップギャップをつないで行くやり方はアーセナルの得意分野。

ブラックバーンにとっては、この時点である程度つくべき選手を決めるやり方ってのが破綻してる。最初の浮いてる相手選手に対応すると次が浮く、さらに次、次っていう連鎖が起こる。守備のベースである見るべき選手がはずされて行く中で、行き当たりばったりの守備のやり方の連続に陥ることが多かったと思う。結果として後手後手に回っていってしまう。

相手を経由させる方法(つまり単純に前線に入れる方法)にしろ、前線の選手が降りてきて経由点になる方法にしろ、とにかくブラックバーンの中盤の4のウラ側に入ることには成功したといえるアーセナル。そして、このウラ側に入ってしまえばアーセナルにとっては障壁は取りされれたっていえる。

アーセナルにとって厄介だったのはあくまでも中盤の4。それより後ろではもはやブラックバーンの一応チェックの繰り返しではアーセナルの攻撃を止めることはできないわけだから。さらに、そういう流れの中でアーセナルが深い位置まで入り込めばブラックバーンの中盤の4は押し下げられることとなる。結果としてアーセナルは攻撃のスタートのところも自由に使えるようになった。

こうなると完全にアーセナルタイムのはじまりはじまり。アーセナルの攻撃の中で重要なのは、縦パスが入るってこと。このことは今までにも何度か書いてきたとおり。縦パスが1つ収まることをスイッチとして、全体の動きが生まれ次々に選択肢を形成してくのがアーセナルのパス回し。その最初の縦パスが入るかどうかが大きなポイントになるってこと。

アーセナルタイムに突入してからは、縦パスが入りまくりの時間を作ることができた。これがブラックバーンの守備の問題点ってことになる。何度も書くように、ブラックバーンの守備の考え方はボールが入った選手に仕事をさせないって言うこと。連動性が築けない中で前線で制限をかけるのが難しく、入りどころを狙うのが難しい以上仕方がない部分。とりあえず、ボールが入った選手にそれ以上仕事をさせないって言う点については忠実に守備ができてるといえば、できてる。

ただし、アーセナルにとって重要なのは縦パスが入るっていうことそのこと自体。縦パスが入った選手がそのままゴールに最短距離で向かえるならばそれはそれでラッキーだけど、とにかく縦パスが入ればアーセナルの攻撃にとっては万々歳の流れ。だから、縦パスが入った後に対応しようとするブラックバーンの一応のチェックはほぼ意味がなかったといっても過言ではなかったように思う。

それでも立ち上がりは攻撃のスタートを切らせないっていうやり方で耐えていたブラックバーン。その役割を担っていた中盤の4はいまや無力化。これでアーセナルのスタートのところが浮いてしまったのは、上にも書いたとおり。結果としてブラックバーンとしては出し手に対しても、受け手に対しても効果的に守備ができないっていう最悪の状況に陥った。

それに対して好きなように組み立てを行ったアーセナル。機を見て縦パスを好きなように入れ、相手を釘付けにしておいて中盤を完全に我が物として制圧した。その中でアーセナルらしいリズムのいいパス回しが繰り返されることになるわけだけど、そういう組み立ての質が変化してるっていうのはマンC戦でも書いたとおり。最近のアーセナルは明らかにイメチェンを図ってる。

そのイメチェンをひとことであらわすならば、柔軟性が増したっていえると思う。何でもかんでも自分たちのパス回しを貫くっていうこだわりが減っている。相手のラインが高ければロングボールを蹴りだすし、左右に大きく展開して相手のブロックに揺さぶりをかけるなんてことも多い。それに攻撃の中で狭いところを何が何でも崩すっていう意識が薄れて、詰まったら広いところを使うなんていう柔軟性も強まってるように感じる。

こういう柔軟性を発揮するためにはピッチ上にある程度バランスよく選手が配置されることが重要になる。一時期のようにピッチの真ん中から右にほとんど全員が入ってしまうっていうような状況では、広い場所を使おうにもその場所に味方がいないなんてことになってしまう。要するに選手の距離感のバランスがある程度よくなる必要があるってこと。超密集地帯でかなり近い三角形を作るなんて場面はあまり見られなくなってる。

こういう距離感の遠さをあらわしてるのがパスの距離。超ショートパスの比率よりも、常識にかなったショートパスのつなぎが多くなってきたと思う。それにタッチ数もそれなりに増えてきてる気がする。めちゃくちゃ近いわけじゃないから、なんでもかんでもダイレクトってのは難しいと思うし、逆に広い場所を使えるからなんでもかんでもダイレクトにする必要がないといえる。

そういう意味で、距離感が遠くなったメリットも多い気がする。これもマンC戦のときに書いたけど、パスの選択肢が増えてると思う。超近い関係性では、その超近い場所へのパスっていう選択肢しかない。敵も味方も密集してるから、そこを抜け出すようなボールを出すのは難しいから。逆に現状はいい感じで選手の距離が開いてるから、広い場所が見える。スペースを見るボールも多くなってるように感じる。

ちなみに、距離感が遠いといってもあくまでもアーセナルにしてみればってことだけど。一時期のアーセナルの距離の近さは異常だったと思うし。サイドに5人ぐらいが集まって超近い関係を作るってのもざらだった。今の状況も普通に考えればパス回しに十分にいい感じに近い関係性が保たれてると思う。それをあらわすように、アーセナルらしいパス回しのよさは消えてないわけだから。

こうやってピッチ全体にある程度均等に選手を配置するっていう意識があるからかは分からないけど、それぞれの役割に秩序が生まれてるのも最近の傾向のような気がする。誰もがゲッターにもチャンスメイカーにもなれるっていう考え方は確かに残ってるけど、一時期ほどの混沌ぶりは見られない。それぞれがそれぞれの役割のうちで重点を置く場所を意識してるようなイメージ。

今回の試合でそれがはっきりしたのがアデバヨール。この試合でアデバヨールはほとんど組み立てに関与してない。前みたいにサイドに積極的に流れてパス回しに参加するなんてのは皆無だったし、下がってボールを受けるシーンもほとんど見られなかった。FW的に相手のゴールの近く、相手の最終ラインにプレッシャーを与える場所で待つこと時間が長かった。というか、ほとんどだった。

この変化はある意味では劇的。同時に混沌とした状態が薄れてる証明になると思う。一時期は2トップのアデバヨールとフレブがサイドのどちらも組み立てに参加して、ゴール前にはセスクとロシツキーなんてシーンも多々見られたわけで。そう考えると、FWの1人はゴール前にいるっていうような秩序が生まれているのかと思う。確かにその方がバランスがいいだろうけど、個人的には2トップがゴール前からいなくなるようなめちゃくちゃなやり方も面白いと思う。

ちなみにゴール近くで待ってることが多かったアデバヨールに対して、今回の試合で組み立てに参加しまくったのが相方のエドゥアルド。上にも書いたように下がってきてボールを受けるシーンが目立ってたし、サイドに流れてのプレーも多かったと思う。ボールに近づく動きが積極的で局面での数的優位に貢献する動きが目立った。

こういうエドゥアルドの組み立てへの参加は試合を重ねるごとに増えてる。最初のころはほとんど組み立てには参加せずにゴール前だけで目立ってたエドゥアルド。代わりにアデバヨールが組み立てに参加してた側面もあったかもしれない。それが、ここのところ変化が見られてきて、今回の試合では完全に逆転した。

そういう意味ではエドゥアルドがついにアーセナルのやり方にフィットしたともいえる。2トップの関係性もよくて、前後逆に動く(アデバヨールがウラを狙い、エドゥアルドが下がって受けに行く)やり方で相手はかなり混乱してたと思う。アデバヨールがウラを狙うことで相手の高めのラインを押し下げてエドゥアルドの受けるスペースを作ったり、逆にエドゥアルドが下がってことで相手の最終ラインにズレをもたらしてアデバヨールがウラを狙うなんてシーンもあった。そういう意味ではバーミンガム戦でのエドゥアルドのケガは非常に残念。この相手にファールを受けた場所も中盤に降りてきたところだった。

こんな感じでアーセナルの攻撃のやり方に変化が見られるのは確かだけど、そのベースとなる確固たる部分は変化してない。それは1つのボールに対していくつもの選択肢を用意するってこと。そして、その選択肢を作るためにポジションにこだわらずに動くってこと。

1つのボールに対して、アーセナルの周囲選手は常に適切なポジションに入る。しかも、1人じゃなくて複数が連動して動く。シンプルなトライアングルが必ず形成される。そして、ボールの周囲の選手が動いたスペースにさらに次が入るような波及的な連動性が見られると思う。そうやってボールに対して局面だけではなく、全体で動くことで多くの選択肢を用意することができてる印象。さらにボールが動けば、それに合わせて周囲も動く。周囲が動けば、その次もっていう連鎖が生まれると思う。

要するにありきたりな言葉で言うならば、ボールも人も動くっていうのが文字通りに体現されてるといっていい。ボールの場所によって人が動き、その人の場所が次のボールの動きを引き出す。それに人の動きが人の動きを生み出すことも多い。エドゥアルドが下がれば、代わりにフラミニが出て行く。セスクが真ん中に流れることが多かった今回は、蓋のなくなったサーニャが右サイドで上下動を繰り返す(セスクはロシツキーみたいなイメージだった)。人が動いたスペースをスペースのまま残さずに、しっかりと有効活用してると思う。

こういうアーセナルのやり方に対して相手としては狙いどころが定まらないのはある意味では当然。ボールを捕まえようとするといろんな方向に次々に動かされてしまう。人を捕まえようとすると、いるはずのない選手が自分の前にいる。結局、最後の最後を固めてなんとかするしかなくなってしまう。これはブラックバーンの守備のやり方がどうだとかっていう問題じゃない。アーセナルタイムに入ったら、相手はもうそれを受け入れるしかない。

ただ、このやり方は疲れる。とにかく常に動き回ってるから。だから、アーセナルタイムが終わった後には必ずその後遺症が現れる。選手の運動量がガクッと落ちてしまう状況。そして、そういう選手の動きが攻撃のベースになっているアーセナルの攻撃は当然のように停滞してしまう。大体、後半はいつもそういう状況に陥るんだけど、今回はそれが前半の途中から来た気がする。それ以降はカウンター以外で効果的な攻撃を仕掛けられなった。交代選手がいなかったのも痛かった気がする。

そうやってアーセナルの攻撃が停滞した要因はブラックバーンの守備に改善が見られたってこともあったと思う。時間とともに守備に対する意識がはっきりする状況が見て取れて、1つ1つのチェックが改善された。一応の寄せから意図を持った厳しい、素早い寄せへの転換が見られたと思う。そういう意識変革がチーム全体に見られるようになった。

これによってブラックバーンの守備にはある意味では勝負どころが定まることとなる。対応関係をある程度はっきりさせた中で、その出足を早めたから相手より先に触ったりっていう狙いができるようになった。相手に保持されたとしても、最低限仕事をさせないような質から完全に0距離で次の展開を許さないような厳しい対応ができるようになったと思う。

そうやって1つ1つの守備が改善されると不思議と連動性も生まれてくる。厳しいチェックで相手を足止めしたところに、周囲が協力して囲い込むっていうシーンも多くなった。それに厳しいチェックによって相手の選択肢が制限され、それにズレることも多くなったから、次の場所で効果的にカットするシーンも目立ったと思う。それまでのように好き放題に縦パスを入れられるなんていう状況にはならなかった。

その中でブラックバーンの攻撃によさが見られてくる。相手に攻められないってことは、相手に攻めた後の守備をされないってことになるから。最初にも書いたようにアーセナルの守備は攻撃後の切り替えのときが一番質が高い。普通に組織を作ったときには、最後の最後の場所は除いて、崩せないっていうほど堅いっていうわけではない。だから、ブラックバーンが攻撃の主導権を握るとチャンスを結構作ることができた。

そのブラックバーンはさすがに中位にいるだけあって、攻撃の質の高さが見られた。そもそもボールをつなぐ意識の高さが目立ったと思う。ブロックを作ったときに最短距離をきるアーセナルにだから、なかなか前線に入れどころがない。大抵のチームはそれでじれてロングボールを蹴っちゃうんだけど、ブラックバーンはしっかりとした意図を持った組み立てが見られたように思う。

それがサイドを利用した攻撃。ブラックバーンは攻撃時には両SBを高い位置に上げて、左右をワイドに使う意図が見られたと思う。そして、そこに供給されるパスの質がよかった。それは中長距離のパスを一発で出すってこと。この中心にいたのが底の場所に入ったトゥガイだった。トゥガイはかなり効果的に左右への散らしをしてたと思う。

ここにはアーセナルの守備の問題点が見られる。まずトゥガイが浮いてること。FWの前への守備意識が薄いアーセナル。低い位置でボールを持つトゥガイは苦もなく組み立てができたと思う。さらに、そのボールの質。中長距離のパスはアーセナルにとっては厄介。最短距離を切りながら、追い込んでいくアーセナルの守備。これには相手がつないでくれるってことが念頭にある。頭の上を行かれたら、追い込むもなにもないわけだから。

ただ、アーセナルに対する多くのチームがロングボールを蹴りこむのも事実。それでも十分にアーセナルの最終ラインは対処できてると思う。それに対して今回はそうはいかなかった。それはサイドのウラのスペースに蹴りだすボールが多かったから。しかも斜めの質で薄いサイドに。これによってアーセナルは単純にロングボールを跳ね返すことが難しくなった。ブラックバーンは右サイドから決定的なチャンスを作り出したし(アーリーが多かったのも特徴的)、そうやって相手のブロックを押し込むことに成功した。

そうやって押し込んでしまうとブラックバーンには地上からのパス回しのよさも見られたと思う。上にも書いたようにもともとつなぐ意識が高そうだから、本来的にはパスで崩すチームなのかもしれない。トップも絡めた基本的なトライアングルを形成して、1タッチ2タッチでパスをつなぐシーンが目立った。そうやって相手のギャップギャップをつなぐやり方は、アーセナルのお株を奪うものだったと思う。

これに対して、アーセナルは引いて受ける形に変更した気がする。特に後半はそういう意識が強まった。もちろんゴール前にみんなが引いてラストで跳ね返すようなバランスの悪い守備は採用しなかったけど。あくまでもそれまでのコンパクトなブロックを一段階下げたイメージだった。1点リードしてたし、自分たちはアーセナルタイムの後遺症で効果的に攻撃を仕掛けられない状況、さらに引いて受ける守備の意識を高めて、相手をおびき寄せてからのカウンターの意図もあったかもしれない。そうやって引いて受けたときにはアーセナルのラストブロックの強さがあるし。

そのうちブラックバーンの攻撃の勢いも弱まっていく。活用可能なスペースがあるのに、人が出てこれないっていうことが多くなったと思う。前半から散々振り回されてたから仕方がないといえば仕方がない。だから、むしろ少ない人数で縦を急ぐアーセナルの方にチャンスが多く生まれた。

とりあえず、今回の試合はセットプレーが明暗を分けた気がする。アーセナルは開始後すぐのCKで先制点。ブラックバーンも効果的に攻める時間がそれなりに長かったから、セットプレーを結構奪えたけど、特にCKほとんどが直接レーマンの手に渡った。そのセットプレーをもっと効果的に活用できてれば、試合の流れも変わったかもしれない。
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2008-03-01 Sat 18:49
ゼロックス:アントラーズ×サンフレッチェ
<アントラーズ:4-4-2>
FW:マルキーニョス-田代
MF:本山-野沢、青木-小笠原
DF:新井場-大岩-岩政-内田
GK:曽ヶ端

<サンフレッチェ:3-5-2>
FW:佐藤-平繁
MF:森崎浩-桑田、服部-青山-李
DF:槙野-ストヤノフ-森脇
GK:木寺

昨シーズンのアントラーズは攻守に渡って状況に応じた色々なやり方を選択できる強みが見られた。守備では高い位置からの積極的な守備、コンパクトな3ラインを形成した上で受ける形、さらにラストブロックで跳ね返す形。こういう守備のやり方と関連した攻撃はポゼッションと速攻。それぞれのやり方が高レベルで機能してたと思う。そのベースとなるのは個々の戦術理解とそれを体現する技術、そしてそういう個々の意識がチームにしっかりと還元させれるようになった昨シーズンの後半は本当に隙のないサッカーが展開できてた気がする。

今回の試合でアントラーズが選択してきたのは、守備では前線からの積極的な守備、攻撃ではポゼッション(遅攻)の考え方だった印象。天皇杯のときにも立ち上がりは、前線から相手を追い掛け回すようなやり方で入ったはずだから、そういう意味では同じようなイメージでの立ち上がりだったって言えるかもしれない。

そのアントラーズの守備のやり方。上にも書いたように前線からの積極的な追いかけが目立った。敵陣のかなり深い場所でボールを保持している相手最終ラインに対しても迷わずにプレッシャーをかけていくような積極性が見られた。結果としてサンフレッチェの選手はピッチ上のどの場所でも余裕が持てないっていうような状況に陥ってたと思う。

サンフレッチェの攻撃は奪ったらトップなりサイドなりにすぐに展開するような印象が強い。そういう展開をアントラーズの高い位置からの守備は全く許してくれなかった。結果としてサンフレッチェは高い位置で相手に奪われるか、意図の薄いボールを蹴りだしてやっぱり相手のボールになってしまうかのどちらかを選ぶような状態だったと思う。基本的には後者の方がまだマシなんだろうけど、今回の試合のサンフレッチェはつなぐ意識が強かったから、高い位置で奪い返されるってことも多かったと思う。

こうやってアントラーズの守備が高い位置で効果的に機能するためにはトップが深い位置まで追いかけていけば、それでいいってわけじゃないのは当たり前。トップの積極的な追いかけに対する2列目以降の連動性の高さも目立ってた。最初のスイッチが入った時点で、後ろの選手が次々のブロックから引っ張り出されてくるイメージ。そうやって次の場所を狙っていった。見た目としては全体が前へ前へと引っ張り出されていくような感じだった。

こういう部分を含めて、アントラーズの守備には最初の守備に対する連動性のよさが目立ったと思う。高い位置からの追いかけに対する次の狙いもそうだし、素早いチェックで相手を足止めしたときの囲い込みの速さも目立った。1つめの寄せに対して、2つめ3つめが素早く参加してくるってことが多かったと思う。サンフレッチェのボール保持者があっという間にアントラーズの複数枚に囲まれて、完全に孤立させられるシーンがかなり目立った印象。

どちらにしてもベースには最初の守備の積極性があるのは、こういうやり方の中では当然とされてる気がする。ボールに対してはサボらずに必ず意図のあるプレッシャーをかけていく。ここでは意図のあるってのが重要。一応のチェックではなく、そこで狙えるチェック、次を考えたチェックが全ての場所でかかる。結果として次の連動もしやすい気がする。

ただ、こうやって最前線から強度を高める守備だけにスタミナ的な問題が表れてくるのも事実。だからこそ、攻撃でのポゼッション(遅攻)っていうのが重要になるんだと思う。効果的な場所で奪えば一気に攻めきってしまうけど、そこで1度詰まったら無理をせずにポゼッションに入る。今回の試合でも立ち上がりの時間帯に最終ラインでパスを回す時間が長くなってた印象。

これにはアントラーズの事情だけではなくサンフレッチェの守備のやり方の要因もあったと思う。サンフレッチェの守備のやり方については後で詳しく書くけど、昨シーズンに見た2試合と同じように基本的な守備ブロックは自陣に引いて形成した。だから、アントラーズの最終ラインは必然的に浮く状況になってし、逆に言えば最終ラインはフリーにしても縦パスは入れさせませんよっていう守備の意図だったと思う。アントラーズとしても立ち上がりのまだ様子見の時間帯。無理やり相手の密集地帯にボールを入れる必要もない。だから、最終ラインでの様子見のパス回しが目立ったっていう側面もあった気がする。

それでも時間が進むごとにアントラーズが相手ブロックに対してアプローチを開始する。そのときにはまずサイドに起点を作ることが多かったと思う。これは天皇杯のときと同じ。そうやってサイドに作ってから、逆サイドに向かう。天皇杯のときのように一発でサイドを変えるパスはあまり見られなかったけど、アプローチの意図としては同じような感じだったと思う。1つのサイドに作り、真ん中の小笠原を経由して逆サイドへっていう展開が見られた。そうやって両サイドを使う過程の中で降りてきたマルキーニョスに縦パスを入れる。この縦パスによって相手のブロックを低い位置に押し下げ、釘付けにするっていう効果があったと思う。

時間とともに左右の展開と機を見た縦パスでサンフレッチェのブロックを押し込み出したアントラーズ。でも、この時点ではトップから中盤の流動性はそれほどでもなかったし、SBも高い位置に入り込むというよりは組み立てでの役割を担うっていう意図の方が強かった。それでも様子見の時間帯は終って、そろそろ仕掛けようかっていう雰囲気は見られ始めたと思うわけだけど。でも、岩政の退場によってその雰囲気が実現されることはなかった。

この岩政の退場に対してアントラーズは交代なしで対処する。ボランチに入った青木がCBに入り、マルキーニョスを1つ下げて4-4-1に。さらに立ち上がりから見られた前線での積極的な守備を中止。コンパクトな3ライン(と言っても実質4-4の2ライン)で受ける形へと移行した。それまでは全体を前に引っ張り出すイメージの守備だったのが、岩政退場後は後ろに引き付けるっていう180°異なるやり方で対処。最初に書いた臨機応変性が存分に発揮された気がする。

ちなみに天皇杯のときも立ち上がりは前線から積極的に守備をし、今回と同じぐらいの時間帯でコンパクトな3ラインで受ける守備へと移行した。ただ、そのきっかけは全く違う。前回は得点、今回は退場。天皇杯のときにはコンパクト3ラインで相手に縦パスを入れることすら許さなかったけど、今回はそれほど完璧なやり方を貫くのは不可能だったと思う。

まず、最前線が数的に足りない。サンフレッチェは天皇杯と同じ最終ラインのパス回しでも、3バックを1CB+2SBみたいな形に広げるやり方を取ってきた。これはアントラーズが1トップだったから。2トップで守備をされたら、あれだけ両翼を広げるのは難しかったと思う。サンフレッチェの真ん中が攻撃力(=足元の技術)もあるストヤノフってことも要因の1つだったとは思うけど。とにかく、サンフレッチェは攻撃のスタートの時点で天皇杯の時にはなかった幅を利用できた。それにパス回しに深みを与えることにも成功したと思う。

こんな感じで攻撃のスタートのところで幅を使うサンフレッチェに対して、アントラーズはブロックを左右に動かされる問題が生まれた。2トップなら後ろは安定させておいて、前の関係でそういうスタートにアプローチをかけることもできるんだろうけど、今回は直接的に中盤に揺さぶりをかけられるような状況になってしまったと思う。加えて、アントラーズのブロックが下がったことでサンフレッチェの両WBが高い位置を取ることができた。この場所はサンフレッチェの攻撃の起点になる場所だから、アントラーズとしても意識を向けざるを得なかったと思う。

つまり、アントラーズの守備ブロックが物理的にも心理的にも横に揺さぶられたことになる。結果として真ん中が空いてくる効果が生まれたと思う。結果としてサンフレッチェは真ん中→真ん中を直接的に狙うようなパスが結構、収まるようになってた。これは真ん中の出し手も受け手も浮いてることによる。

まずは出し手の方。サンフレッチェは最終ライン前に青山と下がってきた森崎がいることが多かった。2人がいるから、アントラーズは田代1人で見るのは難しい。だからと言って、中盤が引っ張り出されたら4-4-1にした意味合いがなくなる。アントラーズの方もそういう出し手のところは仕方ないとあきらめてたかもしれない。

その代わりに4-4の関係性で受け手の方は抑えようっていう意識はあったはず。でも、サンフレッチェのやり方によって上に書いたように物理的、心理的に横に揺さぶられたアントラーズ。フィルターとなるべき中盤が横に間延びするような形になってしまって、真ん中が締め切れなくなってた。この辺は青木が1つ下がったことで、小笠原&本山っていうWボランチの組み合わせになったのも影響してたと思う。

とにかく、サンフレッチェとしては真ん中の場所で出し手も受け手も浮くこととなった。最前線から4-4の間に降りてきた平繁にボールが収るシーンが明らかに多くなった。そうやって真ん中に1度起点を作ってアントラーズのブロックを今度は中に寄せ、そうしてからサイドに展開っていう効果的なやり方もいくつか見られた気がする。サンフレッチェとしては思惑通りに行きかけた。

でも、それをずっと許してくれるほどにアントラーズは甘くはなかった。平繁に2つ3つ効果的なボールが収まった時点で、アントラーズは簡単に入れさせすぎな状況に気づいたと思う。そして、あっさりと修正を加えてきた。結果として、平繁は岩政退場後の数プレーで目立っただけで、後は完全に消え去ってしまった印象。

そのアントラーズの修正は真ん中に起点を作られたくないなら、真ん中を固めればいいじゃんっていうかなりシンプルなものだった。逆に言えば、サイドでの守備にあまり重点を置かなくなったって言える。もっと言えばサイドは捨てたといってもいい。サイドである程度作られても、どうせ最後は真ん中で跳ね返せばいいっていうような割り切ったやり方だったと思う。

結果としてサンフレッチェの揺さぶりは通用しなくなる。3バックを広げてパスを回しても、アントラーズの中盤は釣り出せない。もっと言えば、その1つ前のWBも完全に浮いてるっていう場面が目立ってた。さすがにアントラーズも高い位置でサンフレッチェのWBに入れば、そのまま放っておくってことはなかったけど、入るまではフリーでもほとんど意識を向けてなかった印象。

だから、サンフレッチェはサイドを利用しながら攻撃に深みを与えること自体は可能だった。でも、深みを与えられるだけだった。最後のアプローチは全く許してもらえなかったと思う。アントラーズはサンフレッチェに決定的なチャンスを作らせずに、ことごとく跳ね返し続けた。そうやってボールを奪ってからはトップに当てて一気に出てくっていう形が多くなったと思う。

サンフレッチェはボールを持てても決定的なチャンスにつなげられない。アントラーズはカウンター頼みになったけど、前線に1枚残しじゃさすがにきつい。11人×10人の時間帯はある意味では膠着状態だったって言える。そして、この膠着状態を抜け出したのはサンフレッチェの李が退場してからだった。

CBが退場したアントラーズとWBが退場したサンフレッチェ。一般的に言えば、アントラーズのがつらそうな気がする。でも、退場の影響をより受けたのは実はサンフレッチェの方だったってのが素直な感想。最終的にはPKで勝ったサンフレッチェだけど、李が退場したことによって生まれたギャップは最後まで埋めきれてなかった気がする。

アントラーズの方は岩政の退場に対して4-4-1で何の問題もなかった。前線からの守備が消えたこと、守備に重点を置いて攻撃ができなかったっていう影響は多大だったように見えるけど、これは岩政が退場したからではなくて、相手の方が1人多かったから。実際に人数が同じになってからは、どちらの問題も解消してるわけで。攻撃は変則4トップ+小笠原+SBで行うアントラーズ。相手と人数が同じになれば、普段どおりにできるだけの人材は残ってた。

対するサンフレッチェ。まず、上にも書いたようにサンフレッチェの攻撃の起点はWBに置かれる。特に今回の試合では、10人になった後のアントラーズが真ん中を固めたことで攻撃でのタッチ数が増えてたわけで、その重要度はさらに高まってた気がする。つまり、攻撃ではただ単に1人少なくなったっていう数的な問題以上の影響があったと思う。

ただし、こういう攻撃面よりは守備面に与える影響の方がもっと大きかったように感じた。その守備面への影響を見るために、11人×11人のサンフレッチェの守備について見てみたいと思う。まず、上にも書いたようにサンフレッチェの守備は自陣に全員を引かせたところから開始。相手の最終ラインは自由にしといて、自陣に相手が入り込んできたところで守備を開始するっていう受身の考え方だと思う。

そのサンフレッチェの守備はどこが勝負どころだかイマイチ分からないってのを天皇杯のときに書いた。今回の試合を見ても、そんなイメージだったと思う。自陣に入ってきたボールに対しては、最低1枚が忠実に対応してる。下では人をしっかりと捕まえて対応できてる。でも、どこでも最低限仕事をさせないような守備でボールを奪うってことが意識されてないような気がする。結果としてボールが取れるのかどうかは相手任せになってしまう部分が大きい。ミスをするとか、シュートを打ってくれるとか。最後のブロックに人数をかけるっていう感じでもないから、跳ね返し力があるってわけでもないと思う。

天皇杯と比べてよくなったところをあえて挙げるとすれば、局面での対応の部分。1つ1つのボールへの寄せ、低い位置で人を見てる選手の対応が天皇杯のときより厳しくなった気がする。だから、今回の試合ではそういう個々の器量で守備の勝負どころが決まってたって言ってもいいかもしれない。でも、それに伴ってファールが増えたのも事実だし、チームとして見るとやっぱり問題がある気がする。守備がベースになるJ2だとどうか?明らかに力差がある(メンバー的に)だけに、攻めて攻めて攻めまくる考え方でもいいかもしれないけど。

そういう守備のベースのなるやり方の中で、ちょっと注目だったのは相手のサイドに対する対応。この場所は3-5-2×4-4-2で構造上、数的に不利になる場所だから。天皇杯でも相手の左右の展開に対してやられっぱなしだったわけで、そこをどう見るかが1つのポイントになったと思う。そういうサイドへの対応について見て行きたい。

この対応についてはある意味では普通だった。ボールサイドのWBが引っ張り出され、逆サイドが下がるっていうやり方。アントラーズのSBがボールを持ったときに同サイドのWBが寄せに行く。対して、逆サイドのWBは下がって最終ラインに入る。結果として最終ラインは実質的に4バックになるわけで、ボールと同サイドの数的不利は解消されることとなる。

こういうやり方はあくまでも応急処置的なのは事実。なぜならば逆サイドの問題は何も解決されてないわけだから。今回の試合に関して言えば、アントラーズが天皇杯のときのように大きな展開をあまり利用しなかったこと、立ち上がりの時間はSBがそれほど積極的に出てこなかったことで大きな問題にはつながらなかったわけだけど。それでも逆サイドに展開されるときにはFWが助けに行くシーンが見られた。

でも、こういうサイドへの対応はあくまでもバランスのいいブロックが構築されてるときに限る。例えば、アントラーズが徐々に押し込んでいった時間にはサンフレッチェの最終ラインは5バックになってしまうことが多かった。こうなると後ろから出てくる相手SBに対してWBが対応するのは難しい状況になってしまう。

そうなったときにサイドの守備を助けてたのがトップ下に入った森崎と桑田。実際には青山が守備の軸と置いた3ボランチ気味とも捉えられる形だったけど。その守備の軸の青山が引っ張り出されないように、前の2枚が相手SBに対応するやり方が見られた。要するに相手に押し込まれたときのサイドの対応はOMFとWGが協力してやるってことで、ここがポイントになる。

じゃあ、李が退場したサンフレッチェはどうしたかって話。とりあえず前半のうちは桑田を右サイドに出して3-4-2みたいな形にした。つまり、それまで押し込まれてたときにサイドの守備を助けてた場所の選手がいなくなったことを意味する。森崎はボランチに入ったような形になってしまったし。

そして、アントラーズはここぞとばかりに攻撃に出てきた。要するにサンフレッチェにとっては、まさに押し込まれた状況に陥った。しかも、立ち上がりは自重気味だったアントラーズのSBの攻撃参加が活性化。サンフレッチェとしてはこれによってサイドでの数的不利が明らかになって、アントラーズの方に浮いてる選手が現れ始めた。オフサイドでノーゴールになったシーンも、新井場がフリーで抜け出してきたシーンだったし。

とにかく、10人×10人になった後のアントラーズはまたしてもやり方を変更した。前半は時間が少なかったこともあって(しかも、相手が混乱気味だって事もあって)、一気に攻勢に出たと思う。守備も立ち上がりのように最前線からの追い掛け回しと、それに対する2列目以降の連動が見られるような形だったし、攻撃では両SBの攻撃参加も活発化したように前にかける人数が明らかに増えた。

この傾向は後半の立ち上がりとともにもっとはっきりする。後半のアントラーズはシステムを4-3-2にしてきたと思う。守備面を考えれば、再び最前線からの守備が効きやすい形。単純にトップの場所の人数が1人増えたっていうだけでも大きな影響をもたらした。実際に2点目は高い位置からの積極的な守備から生まれてるし、それ以外にもそういう守備からのチャンスが目立ったと思う。

攻撃においては相手のサイドを突くっていうことを再確認したイメージ。SBの活発な攻撃参加を継続させた上で、この試合では初めてサイドの出入りっていうアントラーズらしさが見られてきた。トップ、2列目の選手がサイドに流れていくっていう動きが目立ってたと思う。

こういうサイドからの攻撃に対してサンフレッチェは押し込まれる流れに。アントラーズはここぞとばかりに小笠原、本山を含めて前線の厚みを一気に増す。相手が苦し紛れに跳ね返したボールを拾いまくっての2次、3次攻撃が効果的に機能した。相手がしっかり奪ったとしても、そこにはすぐにアントラーズの前線からの効くわけで。

そういうわけで後半の立ち上がりは完全にアントラーズが敵陣内でプレーする時間帯だった。そして、あっさりと先制点、追加点を奪う。行くと決めたときの決定力は素晴らしかった気がする。そして、この2点後は前線での守備の勢いを弱めて後ろに引き付け、攻撃でも人数をあまりかけないようになってきた。さらに中盤の守備の安定のために中後を投入してアントラーズとしては、完全な逃げ切りパターンだったと思う。

対するサンフレッチェ。後半開始とともに桑田に変えて高萩を投入。李が退場した後の前半の混乱を鎮めにかかった。まず、守備時の形は4-3-2になったと思う。左の服部をSB的な場所において、右には森脇をそのまま押し出してた印象。中盤は青山を軸に左右に森崎と高萩を置く形だった。

だから、ある意味では11人時に押し込まれた5-3-2の形から最終ラインを1人減らしたようなイメージ。相手のサイドに対してはボールサイドのMFとSBが対応し、逆サイドのMFが真ん中に絞るような形が見られた。この逆サイドが真ん中を絞るやり方によって、当然のように逆サイドの人数は薄い状況に。アントラーズのサイドチェンジに振り回される状況が目立ったと思う。実際に1点目はそういう流れからだったし。

ただ、2失点目以降は守備の問題がどうこうなんて言ってる場合じゃなかった。幸いなことにアントラーズが攻撃への意識を弱めてくれたから、後ろを気にせずに攻撃に出て行けるような下地もあったと思う。久保の投入、ユキッチの投入(特にユキッチは青山に代えて)で前線を活性化して、得点に出て行く意識を浸透させたと思う。

メンバー交代以外でも例えば守備のブロックの作り方に変化が見られた。一貫して自陣に全員を戻す守備ブロックを作ってたサンフレッチェだったけど、2点目を取られたからは2つぐらい守備ブロックを高い位置に上げたと思う。2トップが敵陣の真ん中あたりにポジショニングするやり方が見られた。

これはいい考え方だった気がする。全体のブロックが前に押し出されたことで、アントラーズの最終ラインにそれまでほどの余裕がもたらされなかった。結果としてアントラーズは時間をつぶしたり、チーム全体を休ませるようなボール保持が難しくなってた印象。立ち上がりから積極的にやったアントラーズ。それじゃなくても10人で長い時間を戦ったわけで、ここで休めないのは痛かった。実際に2点目のシーンではほとんど前線の選手が帰ってこれなかった。

対して、この2点目のシーンはサンフレッチェの前への意識を感じさせた。カウンターの流れにも関わらず、後ろから次々に選手が飛び出して来たのが印象的。最終的にエリア内に3人が入ってた気がする。相手の前線の守備を抜け出してからは、相手の最終ラインに対して多くの人数で仕掛けられる下地ができてた。

この2点目のシーンはともかくとして、全体としてみればアントラーズの逃げ切り濃厚の展開だった。サンフレッチェの前へ前への圧力は確かにあったけど、ちょっと空回り気味。人は前に行っても効果的にボールが供給されない展開だった。それにアントラーズのラストブロックの安定感もあるわけで、得点が期待できる状況ではなかったと思う。PKのシーンにしてもサンフレッチェが前に人数をかけてたのと同じようにアントラーズもしっかりと最後を締めてた普通に危険なシーンにつながる状況ではなかったと思う。PKは交通事故。

そういうわけでアントラーズとしては罰ゲーム的な試合展開になった。タイトルが取れなかったのはもちろん、過密日程が控えてるのに、10人で長い時間を戦うこととなり、その上CBの2枚が開幕戦に出場停止。伊野波を獲得しといてよかったねって話。青木、中後、伊野波でCB2枚とボランチを組み合わせることになるか。

対するサンフレッチェは2点を追いついての勝利だけにJ2開幕に向けていいスタートを切れた。そもそも上にも書いたように、メンバー的に圧倒してるわけで、少々の守備の問題は関係なく、来シーズンは順当にJ1に帰ってくると見てよさそう。たぶん、自分たちが主導権を握る試合で強さを発揮するタイプのチームだと思う。

最後に余談だけど、サンフレッチェには日本人の左利きがいっぱいいる。久保、佐藤、服部、柏木、森崎浩。日本代表が左利き欠乏症で困ってる現状で、この人材の多さは特筆すべきものかと。たぶん、たまたまこうなったんだろうけど。
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