ただのサッカー好きが、思ったことをただ書くだけ。 (06年終了)

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2008-04-29 Tue 17:58
アーセナル×リバプール
<アーセナル:4-1-4-1>
FW:ベントナー
MF:ウォルコット-フラミニ-セスク-エブエ、Gシウバ
DF:トラオレ-ギャラス-コロ・トゥーレ-ジャスティン・ホイト
GK:アルムニア

<リバプール:4-2-3-1>
FW:クラウチ
MF:リーセ-べナユン-ペナント、プレシス-ルーカス
DF:アルベロア-スクルテル-キャラガー-フィナン
GK:レイナ

CL、リーグ戦、CLの3連戦。その真ん中のリーグ戦がこの試合。両チームともメンバーを大量入れ替え。特にリバプールは完全にCL集中モード。ここまでやるかってぐらいに。何しろ中盤以前は全とっかえ。トーレス、バベル、ジェラード、カイト、マスケラーノ、Xアロンソがファーストチョイスだってことを考えれば、全くの別チームだってことは明らか。リーグの優勝は絶望、4位以内は濃厚になってるリバプールだからこその大胆なやり方。なんだか、毎年そんなことをやってる気もするけど。

対するアーセナルはセスク、フラミニの真ん中はそのまま残さざるを得ず。それに、この時点ではリーグの優勝も十分に狙えたアーセナルだから、この試合も中途半端にできない。そもそもからして疲れるサッカーのアーセナルなわけで、この辺の差が次のCLに及ぼした影響は予想以上に大きかったかも。まあ、その後の結果を知ってるからこその考えではあるけど。

とにかく、完全に別チームであったリバプール。でも、逆説的にその別チームリバプールがきわめてリバプールらしい内容を見せてくれたのが、この試合の立ち上がり。4‐5‐1システムを採用してから消えてしまったリバプールらしさが帰ってきた気がする。4‐5‐1システムのやり方はあくまでも、上に書いたファーストチョイスのメンバーでの4‐5‐1のときのやり方ってことなのかもしれない。

特に守備面ではそれを強く感じさせられた。そもそも、上に書いたファーストチョイスの4‐5‐1を組むようになってから、それまでの前線からの守備のやり方を放棄したリバプール。自陣にブロックを作って待ち構える完全受身の守備で、相手がブロックに入ってきたところでつぶすってやり方に転換してた。挟み込み、囲い込みがうまいリバプールだから、入ってきたところをつぶすっていう守備でも十分に機能してたのは事実。ただし、0‐3で敗れたマンU戦みたいに受身だからこそ相手のやり方によっては圧倒的に劣勢になってしまうっていう状況も背後に隠し持っていたと思う。

じゃあ、なんでシステム変更とともに守備を変更したのかって話。それはリバプール暗黒の1月の影響が大きい。まだ4‐4‐2で戦ってたリバプール。守備もそれまでの通りに前から行く意識が見られた。ただ、いくら前から行こうとしても次々と逃げられてしまう場面が多発してたのが暗黒の1月。トップが守備のスタートとして機能せず、仕方がないので中盤が守備のスタートとなったためにいろんな所にギャップができてる状況。だから、いくら前から頑張ってもボールが奪えないっていう最悪のパターンに。ちなみに、この月は攻撃も真ん中真ん中に入り込んで停滞してしまう流れだった。

というわけで、システムを変更したのがチェルシー戦。この試合ではまだ、前から守備をする意識が残ってけど、その後は完全なる受身へ。前から行って頑張っても無駄なんだから、待ってればいいじゃんっていう開き直りがあったかどうかは知らない。でも、システム変更とともに守備に対する積極性が明らかに薄れたのは事実。それに、中盤が5枚になったことで、ブロックを作って網を張って待ってた方が守備が安定するっていう意識があったかも。

確かに完全受身守備を採用すると、それまでよりは高い位置で奪えるチャンスは減ってしまう。でも、攻撃には前線に破壊力抜群の4人がいる。何も相手のブロックができる前に急いで攻めなければならない理由はなくなった。だったら、安定感を重視しようってことで。実際に守備に安定感が生まれたのは事実であったし。そんな意図があった気がする。

そして、今回の試合でもシステムは4‐5‐1のリバプール。メンバーはガラッと入れ替わっても形は全く変化なし。だったら、これまで通りの受身の守備をやる可能性も十分にあったはず。にもかかわらず、今回の試合の立ち上がりは守備に対する積極性が見られたと思う。4‐5‐1は4‐5‐1でも最近の4‐5‐1とは趣が違ってた。どっちかって言うと、4‐4‐2の守備時に2トップを縦関係にするっていうもともとのリバプールの守備ブロックに近かったと思う。マンU戦で言うならば、4‐5‐1で戦ったちょっと前のアウェーでの試合よりも、4‐4‐2で戦ってた去年末のホームでの試合の守備の内容に近かったと思う。

なんで、こんな変化が生まれたのか。理由の1つとして考えられるのは、上にも書いたように完全受身守備はファーストチョイスのメンバー専用って考え方。相手がしっかりと守備を固めても、それを崩し切るだけの前線が揃ってるからこそ、守備は安定性を求めてればいいってこと。逆に1枚落ちの今回のメンバー(それでもとんでもない人たちの集まりだけど)だったら、相手がブロックを作る前に攻めきるのが得策って考えたかもしれない。より高い位置で奪ってからのショートカウンターっていう狙い。

同じことを単純なる守備面から見ることもできる。要するにトーレスは守備をしてくれないけど、クラウチは守備をしてくれるってこと。そういえば、ほとんどファーストチョイスに近いメンバーでも4‐5‐1でも前からの守備意識が残ってたチェルシー戦。そのときに前線で異なってたのは、1トップがトーレスじゃなくてクラウチってことだった。

もう1つは、もっと切実なもの。それは相手がアーセナルってことを考慮に入れたもの。これまでにも書いてきた(後でも何度も触れることになる)通り、アーセナルの攻撃は縦パスが前線に入るってことがポイントになる。縦パスが入ったころをスイッチとして、そのボールに複数の選択肢を作るようなポジションに周囲が移動する。そうやって周囲が動いた場所に、その次が入ってくる。こういう動きをボールが動くたびに繰り返すのがアーセナル。文字どおりに人もボールも動くってのは今までにも触れてきたとおり。

そして、そのアーセナルタイムが始まっちゃったらもう相手は狙いどころが定まらない。何しろ1タッチ2タッチで次々にボールを回してくるアーセナル。だから、ボールを抑えるのは至難の業。じゃあっていうんで人を捕まえようとしても、それはそれで無理な話。何しろ 神出鬼没で次々にいろんなところから選手が出てくるアーセナルだから。

そういうわけで、アーセナルと対戦する相手はなんとしてもそのアーセナルタイムを始めさせないアプローチが必要となってくる。そして、その1つの方策として縦パスを機能させないってものがあるわけ。上にも書いたように、縦パスが全ての始まりとなるアーセナルだから、逆にいえばそれを抑えちゃえば何も始まらないってことになる。

例えばバーミンガムのやり方が1つ。ベタ引きで縦パスの入りどころを窒息させるってやり方。これは成功した。でも、良くも悪くも格下の戦い方。だったらってことで、今回のリバプールのやり方が出てくる。つまり、縦パスの出し手の方にしっかりとプレッシャーをかけてくってもの。そうやって自由にボールの配給をさせない。同時に次を狙うのが大得意のリバプールだから、そうやって前線で制限をかけておけば相手の縦パスを引っ掛けるのも簡単だった。

というわけで具体的なやり方について。守備の最初は4‐5‐1ブロックの形成。これはリバプールの恒例行事。受身だろうが、前からの守備だろうがまずは守備ブロックをセットする。もちろん、システムが変わっても変わらない部分。そこから、どうするかに違いが出てくる。受身のときにはどうもしない。相手がブロック内に入ってくるのを待ち構えてる。ただ、ここまで書いてきてとおり今回は受身の守備ではなかった。自分たちから動きを始めるような守備のやり方が見られたと思う。

まず、相手のCBはある程度フリーにしておく。ただし、そのCBがボールを持ちあがってある程度のゾーンに入ってきたらクラウチが対応。後ろとの関係を考えて、意図的に1つのサイドを切るようなプレッシャーをかけてた。相手SBに関してはボールが入ってから対応。ここが受身の守備とは大きな違い。受身のときには低い位置の相手SBは浮かせとく。でも、今回は相手SBにボールが入ったところでリバプールのSMFがブロックから出てきてプレッシャーをかけに行った。もっと厳しく行くのが相手のCMFのところに対する対応。入ってから対応する相手SBへの対応とは違って、入りどころを狙っていく。少なくとも前を向かせないような守備を行ってたと思う。

つまり、相手が1つ前にボールを入れてきたら守備を開始してたのが今回のリバプール。前への守備意識が高い2列目の3枚はフィルターとしての役割も担ってたと思う。受身のときの2列目の選手は後ろとの関係が主になってくるから、ここは大きな違い。それに、自分たちのブロックに相手ボールが入ってきたら守備を開始する受身守備と比べると、より高い位置から守備ができるのは明らか。

そして、守備のスタートが1つ高い場所になったことで勝負どころも高めの場所に移行してたと思う。そもそも前線でしっかりとプレッシャーがかかり制限がかかってるっていうことが、後ろのラインを押し上げることにもつながった。だから、いつもより高めの位置でコンパクトなブロックを形成したのが今回のリバプール。そして、上にも書いたとおり次のよさがあるのがリバプールの守備。前がしっかりと制限してるから、無理に相手が縦に通そうとしたところはことごとく引っ掛ける。いつもよりも高い位置でリバプール得意の挟み込み、囲い込みも多く見られる流れだった。

さて、これで困ってしまったのがアーセナルだった。ここまで書いてきたとおり、アーセナルの攻撃のポイントになるのは縦パスが前線に入ること。リバプールの守備によって、それが入らなくなってしまった。CMF、SBは満足に出し手として機能できない状況だったし、浮き気味のCBでは距離が遠すぎる。だからと言って、高い位置まで持ちあがろうとすればクラウチにしっかりと対応されてしまうし。そんな流れの中で無理やり前線に入れようとしたボールはことごとく引っ掛けられてしまった。攻撃のスタートが切れないアーセナルは低い位置で無為にパスを回す時間が長くなったと思う。

そうやって前線にボールが供給されない状況で痺れを切らしたのが2列目のフラミニとセスク。アンカーのGシウバの位置まで降りてきてボールを受けようっていう動きが多くなる。ただし、そうやって降りて受けようとする2人にも相手のルーカスとプレシスがしっかりと対応。だから、低い位置で受けたとしても、自由にはさせてもらえなかった。前を向けずに結局は後ろにただはたくだけっていうことが多くなった気がする。

しかも、これがさらなる悪循環を生むこととなった。相手SMFが蓋となって前線に出ていけないアーセナルのSB。Gシウバは相手のべナユンがしっかりと見てたし、そもそも本人の前線に出ていく意識が薄かった。そこにセスク、フラミニが降りてくるアーセナル。前線はベントナー、ウォルコット、エブエの3枚だけ。前線の人数が足りずに、ますますボールが供給できない状況に陥ったと思う。悪いときのバルサの流れ。

リバプールとしては非常に守りやすい。相手の受け手の選択肢はウォルコット、ベントナー、エブエの3枚だけ。しかも、ウォルコットとエブエはサイドからあまり離れない。ベントナーは収まりが悪い。押さえるとはとっても簡単だった。よって、守備の意識は益々前へと向けられることとなる。背後への心配がなくなった2列目の選手は、心おきなく相手の出し手へプレッシャーをかけていける状況が生まれたと思う。アーセナルを完全なる悪循環に陥れた。

こういうアーセナル×リバプールの流れを逆から見ると興味深い。つまり、アーセナルの守備×リバプールの攻撃っていう方向で見るってこと。なぜなら、アーセナルの守備の考え方もリバプールのそれと大きくは違わなかったから。ただし、リバプールの攻撃がアーセナルの攻撃とは大きく異なってたことで、その様相は全く違うものになっていた。その辺を見ていきたいと思う。

アーセナルの守備の根本にあるのは、最短距離を切りながら守備をしてくって言うもの。これは今までにも書いてきたとおり。その守備をどこから始めるかっていう部分についてはリバプールと似てたと思う。相手のCBにはある程度自由にボールを扱わせるけど、そこから1つ前に入ってきたところでプレッシャーをかけるってもの。今回はシステムが4‐1‐4‐1になったアーセナルだから、いつもよりも中盤の4が1つ前にいることになる。そういう意味では、より高めでの守備が効きやすい状況にはあったし、意識としてもいつもよりはスタートを前目に持って行ってる印象も受けた。

ただし、それが実効性を持ったかって言えば微妙。守備の質としてはリバプールのそれと大きくは変わらないのに、機能性は全く違うものになった。アーセナルの攻撃を完全に押さえてたリバプールの守備に対して、アーセナルの守備はリバプールの攻撃を押さえられてたとはお世辞にも言えなかったと思う。そして、その違いはどこから来たのかってことだけど、それは上にも書いたとおり両者の攻撃のやり方によるものが大きかったと思う。

アーセナルはとにかくパスを回す。久々に見たアーセナル、前に見たときは1発で蹴るようなボールを織り交ぜる柔軟性を見られ始めてたんだけど、今回は本当につなぐ意識が高かった。1発で前線に蹴るボールは皆無だったって言ってもいいかも。トップがアデバヨールじゃなかったことと関係があるのかもしれない(足元でも収まりが悪いベントナーに1発のボールは荷が重いとか)。とにかく、相手のブロックは自分の前で回るボールを注意してればよかったってことになる。結果として、大きなギャップが生まれなかった。

対して、リバプールの攻撃。リバプールらしいロングボール1発を多用。こちらはいつもよりも多いぐらい。後で詳しく書くけど、メンバー大幅入れ替えの影響があった気がする。そして、このロングボールの多用とアーセナルの守備との相性が抜群によかった。リバプールにとって。

リバプールが1発のボールを蹴るのは相手の2列目が守備をしようと意気込んできたとき。つまり、1度ブロックを作った相手の中盤の選手がブロックから飛び出して相手がプレッシャーをかけてきたとき。そのプレッシャーをあざ笑うかのように、頭の上を越えるボールを前線に蹴りこんでいった。この時点でアーセナルの中盤は引っ張り出され気味。常ににDFと中盤が近い関係を保つのも難しいわけで、リバプールがロングボールを蹴るタイミングではその間にギャップができてたって言える。

ここで4‐1‐4の1がケアすべきスペースが広がることとなったアーセナル。そもそもGシウバは相手の1.5列目に位置するべナユンを見る役割が大きいわけで、他の選手がその間に1の場所に入ってくると浮いてくるシーンが多発。そして、そこに入ってきたのは単純にクラウチ。リバプールのロングボールはやや下がって相手のDFから離れ、相手の1の場所で浮いたクラウチに入りまくりだった。

その後の展開。一番シンプルなのは、クラウチが競って近くのべナユンが拾って、そのままゴールへ向かうってパターン。得点シーンがまさにその形。ただし、もう1つのパターンもあったと思う。それはクラウチの頭を経由しておいて、再び作り直すってもの。アーセナルの守備にとっては本当に厄介な攻撃につながったのがこのパータンだった。

1発のロングボールでクラウチを狙うリバプール。クラウチは相手の4‐1-4の1の場所でうまく浮いて、そのボールを受ける。べナントが近くにいて、そのクラウチをフォローする。ここまではおさらい。さて、この時点で前への守備をしようとしてたアーセナルの中盤の4は後ろの引きずり降ろされる。間にうまく入り込まれて起点を作られてるんだから当たり前。

そうやってアーセナルの中盤の4を後ろに向けたリバプールは作り直す。相手のブロックの真っただ中の4-1-4の1の場所から、相手のブロックの外へ1度逃げるってこと。ここでポイントが2つ。1つはリバプールの方のプレシスが浮いてたってこと。アーセナルが安定したブロックを作ってた時には、ボールを持つとプレッシャーに晒されてたプレシス。でも、相手の中盤を押し下げてことで自由にボールを扱える状況になってた。

さらに、後ろから前線へ送り再び戻すっていう一連の流れの中でリバプールの前線には厚みが増してる。プレシスの相方ルーカスはいつものように、前線への飛び出しを活性化させ、さらにSB(特に左のアルベロア)も積極的に攻撃に参加していた。最初の時点ではクラウチ&べナントの関係しかなかった前線だったけど、作り直しを入れることによって前線に厚みを加えることが可能になった。

さて、出し手としてのプレシスが浮いたリバプール。アーセナルの方もそこを浮かせたままじゃまずいって意識が働く。前へ後ろへと動かされたアーセナルの中盤は、今度は前に向かって引っ張り出されることとなった。本当に行ったり来たり揺さぶられまくり。もちろん、後手後手の対応なわけで、プレシスは相手が寄せてくる前に前線にボールを供給。ギャップだけを残してきてる相手の中盤のウラに入り込むのは簡単だったと思う。結果として、再び相手の4-1-4の1の場所に入り込むことに成功。しかも、今度はしっかりと人数をかけた状態で。

この2列目の場所にリバプールとアーセナルの守備の大きな違いがある。リバプールの2列目は上にも書いたとおり、自分の前に対する守備だけをしてればよかった。これはアーセナルが、絶対にその中盤の2列目の場所を通るようなビルドアップをしてたから。そこを抑えることを目標にしてればよかった。だから、相手のCMF(または降りて行った選手)に対しては先手先手で入りどころを狙うことができた。

対してアーセナルの2列目は前へ後ろへと揺さぶられる展開。これはリバプールの攻撃が必ずしもアーセナルの2列目の場所を通るようなやり方ではなく、その2列目をロングボールによって飛び越すっていうやり方を採ってきたから。結果としてアーセナルの2列目は前に向けてだけ守備をできない状況。しかも、常に後手後手に回るっていう形。同じような守備のやり方なのに、その機能性に大きな違いが生まれたのはこの部分からだった。

ちなみに、ここまで見てきて分かるようにリバプールの攻撃はクラウチを常に目標としたものだったと思う。メンバーが大幅に入れ替わってる以上、このやり方はかなり合理的だった。チームとしてクラウチに当てることが最初の選択肢だったし、クラウチに入ったところで全体の動きが活性化してた。後ろからの攻撃参加(ルーカス、アルベロア)を多くしたり、下がって受けたクラウチを2列目が抜いて行ったり。べナユンを中心としてクラウチの近くで関係性を作ろうっていう動きも多くなった気がする。

クラウチ自身も軸としての役割を十分にこなしてた。真ん中にこだわらずにボールを引き出す動きをしてたし、何よりも真ん中での収まりの良さが圧倒的。受けるときに相手のマークから浮いてるシーンも多々。足元でも高いボールでもそこで収まることによるチームの安心感はかなりのものだったと思う。そして、その収まったボールのその後の展開での周囲の活かし方も素晴らしかったと思う。クラウチの高さっていう武器と足元のうまさを存分に発揮した今回の試合だった。

良く言えばシンプル、悪く言えば馬鹿正直とも言えるリバプールのやり方。でも、ここまで書いてきたとおりの大幅メンバー入れ替えの中では一番の選択だったと思う。何しろ分かりやすい。クラウチを目標にするっていう意思統一が行われれば、コンビネーションの不安をある程度は軽減できる。メンバー大幅入れ替えでも難しいことをやろうとし続けたアーセナルとは対照的だった。どちらがいいかってことは別にして。アーセナルとしても新しい選手にアーセナルのやり方を植え付けるっていう意味はあったと思うし。

攻守に渡ってアーセナルの良さを消したリバプール。これでこの試合は決まりだろうなっていう雰囲気があった。何しろリバプールの前にアーセナルは何1つできることがなかったわけだから。でも、突如としてこの流れに変化が生まれる。それは、意外に早い前半の15分前後の時間帯に訪れた。

この時間になってリバプールは急に守備のやり方を変更。なぜなのかは全く分からないけど、それまでの時間で完全にアーセナルの攻撃を封じてた守備を放棄。その代わりとして、受身守備が見られるようになった。この受身守備も微妙にいつもの4-5-1とは違って、べナントとクラウチがトップで横並びになる文字どおりの4-4-2。そして、この4-4-2ブロックは完全に自陣に作られた。それまでは中盤の2列目の3がハーフェイライン付近で守備をしてたわけだけど、4-4-2に変更してからは2トップがその位置に。全体としてどれだけ下がったかがよく分かると思う。

アーセナルにとってはありがたいことずくめのこの変更。まず、出し手が完全に浮いてきた。SBがボールを持った時のプレッシャーは今やほとんどなくなったし、CMFもブロックの外で浮いてきた状況。そして、CBも含めて出し手の選手がそれまでよりも高い位置までボールを持ちあがれるようになったと思う。そうやって出し手が浮いたことによって、前線の選手が助けに来る必要もなくなった。つまり、それまで3枚しかいなかった受け手の枚数が増えたことになる。さらにさらに、ハーフェイライン上の相手の3がいなくなったことで縦パスのフィルターも取り払われることとなった。

これによってアーセナルに光が見えてくる。何しろついに待ちに待った縦パスが入るようになったわけだから。今や縦パスを入れることに何の障壁もなくなった。ただし、相手はリバプール。そもそも受ける形であっても、十分に守備が安定するリバプールだから、入りどころに対する対応はしっかりとやってきたのは事実。それでも、アーセナルにしてみれば、それまで全く前線にボールを供給できなかった状況から比べれば、かなり相手ゴールに近づいたと思う。

縦パスが前線に入らないと動きが生まれないアーセナル。逆に縦パスが入れば、自然と前線の動きが活性化してくる。上にも書いたように、相手の守備によって縦パスを狙われることもあったけど、それがだんだんと減って行った。ボールが前線に供給されるようになったアーセナルは水を得た魚。全体の動きが徐々に良くなっていき、結果として前線で制限がかかっていないリバプールの守備陣が捕まえられない状況が生まれてきたと思う。

こうなればアーセナルタイムの始まり、始まり。近い関係で少ないタッチでパスが回って行くシーンが見られるようになっていった。ただし、いつもほどのアーセナルタイムにはならなかった。まず、1番はアデバヨールではなくてベントナーだったこと。ここまで書いてきたとおり、ベントナーへの収まりが悪い悪い。さらに、収まった後にももたつくことが多かった。結果としてベントナーのところでパス回しの分断が起こった。さらに、Gシウバがあまり攻撃に参加してこないこと、SBが攻撃参加のタイミングをつかめないこと、両サイドのウォルコットとエブエがサイドに居座ったことがあったから、いつものようなアーセナルタイムにはならず。ポジションも固定気味で常識にかなったレベルの流動性しか見られなかった。

要するに、メンバーが変わった影響がダイレクトに表れて、パス回しにギクシャク感がありまくりだったのが今回のアーセナル。それでもパスが回ってくのがアーセナルの恐ろしさ。いつもと比べるとスムーズさに欠けたとしても、リバプールの守備の狙いどころが定まらない状況が徐々に増えていく。それとともにアーセナルが深い位置まで攻め込むシーンも多くなったと思う。

こうなるとアーセナルの守備に機能性が生まれていく。アーセナルの守備の一番の勝負どころは、攻撃後の切り替え。そこですぐにラインを下げずに、攻撃の勢いそのままの守備をするってこと。立ち上がりの流れは前線にボールが出ず、人数もかけられず、深い位置まで攻め込むことができず、よって切り替え後の守備っていうものは全く機能しなかった。これに対して、攻撃の形ができてきてからのアーセナルは高い位置での守備が機能するようになったと思う。後半に限って言えば特に、そういう流れの中でリバプールの攻撃にはカウンターっていう選択肢しかなかった印象。

だからこそ、リバプールが守備のやり方を変えたのがなんでか分からない。後半になれば前半の最初の機能性の高いやり方に変えてくるかなって思ったけど、それもなく。前線から守備をしたら疲れるからなのか(次のCLに向けて体力温存しろってことか)とも思えなくもないけど、アーセナルにパスを回されまくった方が自分たちから守備をしてアーセナルに何もやらせないよりも、よっぽど疲れると思う。

とにかく狙いどころが定められなくなったリバプールは全体を押し下げられてしまう時間帯が長くなった。4-4ブロックで最後を固めるような展開が目立って行ったと思う。つまり、4-4-1-1で戦うことが多くなったってこと。カウンターを仕掛けようにも先細りで相手に守られてしまうわけで、これがジェラードが交代後の長い時間消えてしまった要因になったと思う。

そういう流れがトーレスの投入で変化したのはさすがと言うべきか。もちろん、運動量の落ちる時間帯、さらにアーセナルが前に人数をかけてきたってのはあったとは言っても。さすがにマンU相手の超劣勢の流れで前線で孤軍奮闘してたトーレス。4-4に守備は任せて、前線で引き出す動きを繰り返しまくり。そうやってうまくボールを引き出して、ジェラードとの関係で相手ゴールに迫るシーンが多くなった印象。

久々に見たアーセナルの試合だけど、やっぱりメンバーが違うと期待どおりのものは見れないなってのが素直な印象。立ち上がりなんかは特に相手ブロックに入り込む糸口が全く見えなかった。リバプールが守備のやり方を変えてくれなければ、何にもできずに終わっただろうなって思う。リバプールが守備のやり方を変えて、さあアーセナルタイムの幕開けって思っても、いつものアーセナルタイムにならなかったってのは上にも書いたとおり。前に見たときには、柔軟性が出てきたように見えたアーセナルだったけど、やっぱり根本のところは変えられないんだろうなって思った。で、その根本のところは恐ろしく成熟が必要だってことを再認識。エドゥアルドがいなくなって一気に調子を落としたのも、そういう部分に影響があると思う。

対してリバプールはあれだけメンバーを変えても形になってた。何よりもシンプルにやったっていうのが大きいんだろうけど。クラウチを中心に据えたってのもそうだし、平行移動的(つまり流動性が少ない)攻撃も舞い戻ってきてた。下手にポジションを変えない方がいろいろと整理しやすいってことか。もちろんメンバー個々の特徴もあってのものなんだろうけど。しつこいようだけど、守備を変更しなかったらもっと楽に主導権を握れたはずだったと思う。

それから、今回の試合ではクラウチが本当に素晴らしかった。上にも書いたとおりだけど。アーセナルのトップがベントナーじゃなくてクラウチだったら、もっとアーセナルのパス回しの流れもよくなってたかなって思うレベルで。逆にリバプールのトップがクラウチじゃなくてベントナーだったら、リバプールの単純攻撃も機能しなかったかなっていう。なんかベントナーをボロクソ言ってるみたいになっちゃったけど、それだけクラウチのプレーの質が今回の試合では高かったってこと。とりあえず、今の処遇はもったいないなって思う。リバプールにとってはありがたいんだろうけど。
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2008-04-27 Sun 17:13
ヴェルディ×グランパス
<ヴェルディ:4-3-1-2>
FW:飯尾-レアンドロ
MF:ディエゴ、大野-菅原-福西
DF:服部-那須-土屋-和田
GK:土肥

<グランパス:4-4-2>
FW:玉田-ヨンセン
MF:マギヌン-吉村-中村-小川
DF:阿部-吉田-バヤリッツァ-竹内
GK:楢崎

噂のグランパス。好調を反映してかメディアで取り上げられることも多くなってるわけだけど、その中でアーセナルと比較する場面が多々ある。まあ、攻守に渡ってアーセナル的な部分がないわけではないけど、やっぱりまだ比べるのはおこがましいかなって感じ。ストイコビッチ自身が今期のアーセナルのサッカーが理想だって言ってること、さらにグランパスとベンゲルとの関係がその比較を生み出すんだろうけど、アーセナルのサッカーがそう簡単に実現できてたまるかってとこ。とはいえ、結果を残してるのは事実であって。そういう意味では、アーセナル的であろうがなかろうが1度グランパスのサッカーを見てみたいなって思ってたのは確か。それで、やっと機会に恵まれたのがこの試合。夜中にやってたカットカットの試合だったので軽く。

とりあえず、こちらからしてみれば、何もここで負けなくてもっていう気持ちが強い。他の試合を全く見てないからはっきりとしたことは言えないけど、残念ながら今回の試合では特別すごいっていう様子は見られなかった。負け試合だから参考がいにするべきなのか。むしろ、内容で上回ったのは明らかにヴェルディだったと言ってもいいぐらい。まあ、うだうだ言ってても仕方がないので試合内容について見ていきたいと思う。

ヴェルディの守備はおそらく対グランパスを想定してのもの。グランパスの攻撃は文字情報で読んだ限り、トップに当てる→サイドへ展開→ボールサイドに人数をかけて、近い関係性を作る(トライアングル形成)→少ないタッチでシンプルな打開。こんな感じ。確かにアーセナルに似ていると言えば似ている、このやり方。文字情報から得たこのグランパスの攻撃のやり方が正しいのならば、ヴェルディはそれを押さえるための守備のやり方を採ってきたように感じた。

なぜなら、ヴェルディの守備のポイントは、真ん中を固める=トップに当てさせないことと、サイドに人数をかける=相手にサイドで数的優位を作らせないってことにあったと思うから。つまり、グランパスの攻撃の起点となる場所をつぶそうっていう意識が見られた。ただし、このポイントの2つはある意味では真逆の部分になってる。真ん中を固めながら、サイドにも人数をかけるってものなわけだから。これをどうやって実現したかってのが、今回のヴェルディのやり方で興味深い部分だった。

上に書いたようにヴェルディのシステムは4‐3‐1‐2。3ボランチは今回の試合で特別に使ってきた形だったっぽいから、その辺からも対グランパスのための守備をやろうっていう意識が見て取れる。グランパスとしては強くなってしまったことの代償か。とにかく、ヴェルディのDFライン前には3枚のフィルターが並ぶことになった。さらに、トップの場所はディエゴが1つ押し出される形。自陣に引いて受ける形の守備をしていたことを考えると、逆に2トップが1つずつ下がってディエゴと同じラインに入ったって見る方が妥当かもしれないけど。どちらにしても、要するにヴェルディの守備ブロックは4‐3‐3の3ラインを形成するものだった。

4‐3‐3の3ライン。3枚のフィルターの2段構え。この時点でグランパスが真ん中→真ん中の縦パスを通すのは絶望的。目指すトップの前には3‐3のフィルターが待ち構えてるわけだから。結果として、グランパスは攻撃のスタートとなるはずのトップへの縦パスが収まらない状況に。ヨンセンも玉田も今回の試合では前線で全くと言ってもいいほど起点になれなかった。今回の試合でのグランパスは全体として動きが少なかったような気がしたけど、それは攻撃のスイッチとなる縦パスが入らなかったことに起因するかも。もし、そうならアーセナルと似てるねって話だけど。アーセナルも縦パスが入ったところで、例の流動性が開始される。逆に縦パスがいい形で入らないと、攻撃がうまく回らないってのは今までにも書いてきたとおり。

ちなみに、ヴェルディは基本的には受ける体制の守備。チャンスがあれば3トップがグランパスの最終ラインにプレッシャーをかけていくけど、多くの場合ではグランパスの最終ラインは自由にボールを保持できてた。だから、プレッシャーのない最終ラインからバヤリッツァがボールを持ちあがるシーンがちらほら。アーセナル的と言えばアーセナル的。あのチームも突然、ギャラスあたりがボールを持ちあがって出てきたりするから。まあ、別に全てをアーセナルと比べる必要はないんだろうけど。

とにかく、最終ライン=ボールの出し手がフリーでボールを持てたとしても、相手の二段構えのフィルターに邪魔をされてトップに縦パスを入れられなかったグランパス。仕方がないので、上の攻撃のプロセスの中からトップに当てるって項目を省略。じゃあってことで、攻撃のスタートはサイドへの展開から。普段からトップに当てる→サイドへの展開なんて定型的なことを常にやってるとは思えないから、いきなりサイドへの展開から攻撃のスタートをするのは別にイレギュラーなことではなかったかもしれない。むしろ、最近は“グランパスのサイド攻撃”っていうフレーズをよく聞くことを考えると、サイドこそがグランパスの攻撃のポイントだろうし。

で、そのサイドに起点を作ったところに対するヴェルディの対応。これはいたって単純だった。それまで真ん中のフィルターとして機能してた3‐3をそのままボールサイドにスライドさせる形。この時点で単純にサイドにはSB-ボランチ-トップの3枚がいるわけで、これによってサイドの守備の厚みが完成。チーム全体として見ても当然のようにボールサイドに人数が寄ってるから、相手の強みであるはずのサイドで、むしろヴェルディの守備の方が優位に立つって状況が生まれた。

グランパスの方からこのサイドでの攻防を見ると、やっぱり今回の試合では動きの精彩を欠いてるんじゃないかってのを強く感じた。いい攻撃の片鱗が見られたときには、サイドのボールに対してSB、SMFに流れてきたボランチとかFWまでが絡んで近い関係でのトライアングルを作ってたのは確か。でも、これがコンスタントな状況ではなかったと思う。サイドでボールを受けた選手が迷うっていうシーンが圧倒的に多かった。

その要因は簡単で、ボールに対する動きが明らかに少なかったから。これは上でもちょっと触れたとおり。結果として出し所が恐ろしく少ない。1つのボールに対する動きを増やしてパスの選択肢を複数作り出し、1タッチ2タッチでシンプルにつないでいくのがグランパスの売りのはず。実際に見たことはないけど。今回の試合では動きが少ないこと、距離が遠いことで、パスの選択肢が複数どころか1つもないシーンが多々。結果として1タッチ2タッチのパス回しが実現されるわけもなく。1人1人の保持時間がむやみに伸びてしまう状況が生まれてたと思う。

よって、作り直しが圧倒的に多くなる。サイドに起点を作る→相手の守備ブロックがボールサイドに寄ってきて、味方はパスコースを作ってくれない→仕方がないから後ろに戻す。恐ろしくアーセナル的ではない展開。さらに、この作り直しのアプローチにも問題があった。オシム風にいえば各駅停車。後ろに戻したところから、隣→隣をつないで逆サイドへってやり方が多かったと思う。これじゃあ、ボールサイドに寄ってたヴェルディの守備ブロックも十分にバランスを回復する余地があるわけで。結果として、サイドへ→詰まって戻す→各駅停車で逆サイドへ→詰まって戻す→…っていう展開が続くこととなった。

こういうサイドのやり方については後半にちょっとした反省が見られたのも事実。まず、前半には全く見られなかった逆サイドへの1発の展開が目立つようになった。ボールサイドに寄ってるヴェルディブロックにとっては、逆サイドは完全に薄くなってる場所なわけで。この1発のサイドチェンジによって、グランパスはやっとサイドの深い場所に起点を作れるようになったと思う。それとともにサイドでの複数枚の関係性も前半から見ると改善傾向。ただし、どちらもやっぱりコンスタントに続けられなかったのは残念。だから、後半も代わりなく決め手に欠くこととなった。

トップへの縦パスが入らず、サイドに起点を作ってもいい形で攻撃ができなかったグランパス。必然的に攻撃が停滞。作り直しを繰り返してる間にミスが出て相手に奪われたり、焦れてトップに無理やり入れようとしたところを引っ掛けられたり。全く攻めきれない流れが続いて行く。これも全ては、中と外を同時に押さえるっていう離れ業をやってのけたヴェルディの4‐3‐3ブロックの賜物。かどうかは微妙なところ。4‐3‐3ブロックを全体としてみると、確かに機能性は高かったし、それによってグランパスの攻撃の停滞を生んだのは確か。でも、局面局面を見ると不安な部分が多々。どちらかと言えば、グランパスが精彩を欠いてくれた結果押さえ切れたっていう部分の方が大きかったかもしれない。

特に目立ったのが1つ1つの消極性。サイドの局面では相手に作り直しを許したってのがそれ。明らかにヴェルディの方が数的優位の状況なのに、誰も勝負に行かない。人数は足りてるのに中途半端な距離を空ける。相手がゴールに向かう選択肢をしっかりと押さえてたのは確かだけど、ちょっと気になった部分。真ん中でも同じような状況。フィルターとなってる3‐3はフィルターとしての意識が強すぎたように思う。入りこまれないことを念頭に置いてるというか。だから、相手が3‐3の間に入り込んだときに誰も寄せようとしない。その場所で完全なるエアーポケットが生まれてた。

それでも今回の試合では後ろの方にそういう曖昧さがなかったのが幸いした。ルーズさが目立ったのは、前の3‐3の方。とりあえず、その場所なら致命的なシーンにはつながらない。最低限の仕事をしてたことを考えれば、チームとしては十分に働いてくれたってところかもしれない。対して、後ろの方でも、グランパスのトップに入るボールは最終ラインの選手が入り際に対してしっかりと厳しい対応をしてた。フィルターの効果もあったけど、そういう局面での厳しさによってグランパスのトップの選手が機能できなかったっていう要因も大きかったと思う。ただし、そういう入ってきたところを狙うっていう形の守備だと危うさを感じるのも事実。グランパスがもっと運動量を増やして、前線に厚みとか流動性を増してたらどうなっただろうかってのは気になるところではある。

とにもかくにも、ヴェルディの守備がグランパスの攻撃を上回ったってのは紛れもない事実。上にも書いたように、グランパスは最後の最後まで攻めきるシーンがかなり少なかった。逆にいえば、途中でヴェルディが引っ掛けるシーンが多くなった。そして、このときにグランパスの切り替えの守備が効果的に決まらない。全然、アーセナル的ではない。攻撃後に相手にボールが渡ったときに、その相手選手が余裕を持ってボールを扱える状況が多かった。そして、あまりにも簡単にヴェルディは前線の選手にボールを預けることができてたと思う。

そうやって前線にボールを預けるってのはヴェルディの攻撃の重要なプロセスの1つ。カウンターの流れに関わらず、普通に攻撃を組み立てる時にも同じ。これについては昨シーズンから継続して見られてる形でもある。ヴェルディはグランパスの攻撃のプロセスをうまく分断した。対して、グランパスは切り替えの守備が効果的に機能しないことで、ヴェルディの攻撃の重要なプロセスをあまりにも簡単に機能させてしまっていた気がする。

そもそもの組織を作った時のグランパスの守備に関しては、アーセナル的。これは本当にアーセナル的だって言ってもいいと思う。念頭にあるのは、ボールに対する忠実な1つ1つのチェックの繰り返し。その中で相手の攻撃の最短距離を切ってくってやり方。そういう最短距離を切るチェックを繰り返す中で、相手の選択肢を制限していく。そうやって追いこんでおいて、最終的にはボールサイドに人数をかけて完全に選択肢を0にする。そういう守備のやり方が見られたと思う。

ただし、今回の試合について言えばその守備のやり方が機能したとは言えない状況だった。その理由の1つはグランパス自身の問題。今回の試合では立ち上がりからずっと3ラインが間延びしてた。2トップが相手最終ラインにプレッシャーをかけても、中盤が連動しない。中盤は中盤で新たに守備を始めて、チェックチェックで追い込んでいこうとする。でも、最終ラインが遠い。だから、チェックチェックで追い込んだはずが簡単に4‐4の間に入り込まれるシーンが多発。4‐4‐2のうちの、特に4‐4の間のバイタルエリアの隙間はかなり危険な状況で空いてたと思う。相手の前線の選手がそこを有効活用してたことを含めて。1失点目のシーンも4‐4の間に1つ起点を作られたところからだった。

問題は単純に4‐4の間が遠いこと。アーセナルみたいに馬鹿みたいに最終ラインを高い位置に設定すれば、4‐4の間に隙間は生まれず、中盤のチェックを抜けられても最終ラインが対応できる状況となる。後はフラミニがいないってことか。ボールに対して忠実にチェックに行く意識があるのはいいけど、それによってみんなが前に引っ張り出されてしまう。誰も後ろで抜けてきたボールを掃除する役割を担ってない。結果としてどんどんとDFラインとの間が広がってしまうような状況が生まれてしまっていた印象。

そういうグランパス自身の問題に加えて、ヴェルディの攻撃のやり方との相性の問題もあったように思う。ヴェルディは上にも書いたように、まずは前線に預けるってやり方を採ってくる。だから、攻撃の最初ははっきり言って大雑把。丁寧につないでどうこうというよりは、前線に蹴ってしまうことの方が多い。これがグランパスの守備と相性が悪かったように思う。詰み将棋的な1つ1つ最短距離を切って追いこんでいくグランパスの守備は相手がパスをしっかりとつないでくれないと狙いどおりに機能しない。中盤での1つ1つのチェックが重要なのに、その中盤を飛び越してしまうのが今回のヴェルディの攻撃の最初の部分。

しかも、運悪く4‐4の間に隙間があった今回のグランパス。ある意味では大雑把なヴェルディの最初のパスが、前線の選手に収まるシーンが多くなったと思う。結果としてグランパスの選手は本来的な前に向けての守備ではなく、後ろに向けての守備をしなければならなくなる。単純に前線にボールを収められてしまう状況の中で守備ブロック全体としても低い位置に押し込まれてしまう状況が生まれた。

ここでポイントとなるのはヴェルディの前線の選手(特にディエゴ)はボールをキープできるってこと。相手数人に対しても、奪われずに時間を作ることができる。これによってヴェルディの後ろからの押し上げが活性化される状況。しかも、この時点ですでにグランパスのブロック全体が押し下げられていることが、よりヴェルディの後ろからの押し上げを活性化させたと思う。昨シーズンのヴェルディも攻撃のアプローチは前線任せってやり方だったわけだけど、それは本当に前線の外国人数人に任せるってやり方だった。対して、今シーズンはそれに後ろからの押し上げの要素が加わったことでいい形での攻撃が可能になってると思う。

ヴェルディの攻撃の組み立てが面白いのは、DF→FW→MFって形でビルドアップが行われるから。低い位置から大雑把なボールを前線に入れ、そこで時間を稼いでおいてボールを中盤に落とす。そうやって今度はゆったりと組み立てる。この時点では上にも書いたように、相手は押し込まれた状況。だから、ヴェルディの方が使える陣地は多くなってる。グランパスの4‐2の間に入り込んで、自由にボールを展開するシーンが目立ったと思う。そして、この中盤での組み立ての質の高さも目立ってた印象。

これには厚みがあるってことが何よりも大きな意味を持ってる。前線の3枚、SB、さらにボランチ(特に大野)が絡んで高い位置での組み立てを可能にしてると思う。しかも、その中で近さと遠さのバランスがうまく使えてると思う。近い関係性に関しては、むしろグランパスよりもいいんじゃないかって内容。前線の外国人2人はポジションにこだわらずに動き回りながらギャップギャップに入り込んでボールを引き出すし、そこにボランチも積極的に絡んでくる。その中で基本的なトライアングルを形成して、うまくパスを回していくシーンが見られた。加えて、遠さに関してはSBが担当。高い位置に置かれた両SB。ボールサイドのSBは近いパス回しに参加し、そのサイドが詰まれば逆SBが待つ逆サイドへの展開を行って局面を一気に変えていった。先制点のシーンも両サイドを有効に活用してるシーンからだったし。

さて、今回はグランパスの試合を見るつもりが、むしろヴェルディの質の高さを見せられたわけで。実際のところヴェルディの方もめちゃめちゃよかったかっていえば、そういうわけでもない。単純に今回のグランパスのやり方と相性がよかったってのが一番大きかった気がする。それは攻守に渡って。もちろん、スカウティングの結果、そういうやり方を採ってきたっていう意味ではヴェルディの勝ちなんだろうけど。

とりあえずグランパスについてはアーセナルと無理やり比べてみたりもしたけど(初めて見るから比較対象がないだけに)、やっぱり結果そのままに精彩を欠いてたんじゃないかと思う。少なくともシンプルに少ないタッチでパスが回るなんてシーンはほとんど見られなかったし、それが可能となるような選手間の距離の近さとか運動量の豊富さなんかも目立ったものではなかった。守備に関しては、やりたい形が何なのかってことはちょっと見えたけど。こっちもライン間の距離が開くっていう致命的な欠陥があったから、十分に機能したとは言えない。ひとことでいえば、攻守に渡って距離が遠かったのが今回のグランパスの問題だったと思う。次は今回の試合がベースにしながら見てみたいと思う。見る機会があればだけど。できれば、次はグランパス本来の強さを見せてくれるような試合で。
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2008-04-26 Sat 18:46
バルサ×マンU
<バルサ:4-3-3>
FW:イニエスタ-エトー-メッシ
MF:シャビ-デコ、ヤヤ・トゥーレ
DF:アビダル-ミリート-マルケス-ザンブロッタ
GK:Vバルデス

<マンU:4-4-2>
FW:テベス-Cロナウド
MF:パク・チソン-スコールズ-キャリック-ルーニー
DF:エブラ-ブラウン-ファーディナンド-ハーグリーブス
GK:ファン・デル・サール

マンUのシステムは4‐4‐2。セオリー通りに考えれば4‐3‐3(4‐5‐1)かなって思った試合前。なぜなら、相手がバルサってことを考えれば中盤は厚くしたいところだし、何よりも今までも何度も書いてきたように人ベースの守備をするマンUだから、システム合致を考えても4‐4‐2よりも4‐5‐1の方がしっくりと来る。なぜに4‐4‐2かってのがメンバーを見た時点の感想だったわけ。ただし、実際に試合が始まってみたら何のことはない普通に4‐5‐1だったわけだけど、なんでアンデルソンじゃなくてテベスなのかってのが1つのポイントになるかもしれないと思った。そして、それは相手との関係を考えた結果だったのかなって思う。そういう部分について見てみたい。

マンUのメンバーを素直に捉えればルーニー&テベスの2トップにCロナウドとパク・チソンが中盤の両サイド。守備に重点を置くときのマンUのやり方の選択肢に、こういうやり方があるのも事実。Cロナウドの守備は計算に入れず、逆サイドのパク・チソンがCMF的に振舞う。結果としてCロナウドが守備をしなくても、4‐3っていうとりあえずは安定した守備ブロックは形成できるってもの。

でも、今回の試合ではさらに守備的な布陣に。Cロナウドをトップに押し出して、両サイドをルーニーとパク・チソンに。どっかで見たことがある、このやり方。それは準々決勝のローマとの第1戦。あの試合はベースとなるシステムが4‐5‐1だったけど、両サイドにパク・チソン&ルーニーを置くってのは今回と同じ。守備の計算ができないCロナウドをトップに置くってのも今回と同じ。バルサ相手、しかもアウェーの今回の戦い。いくら片方のサイドにパク・チソンを置いたとしても逆サイドがCロナウドじゃ不安ってことか。4‐3ではなくて、あくまでも4‐4のブロックを作りたいって考え方が見られたと思う。

ただし、ここまでの時点ではなぜに4‐5‐1ではなくて4‐4‐2かってことに答えられてない。別に4‐5‐1の両サイドにルーニーとパク・チソンを配置してもいいわけで。なぜにアンデルソンじゃなくてテベスがスタメンだったのかっていう疑問には答えきれてない。実際に本当のところの意図を推し量るのが難しいってのも事実なわけだけど(当たり前か)、ちょっと考えてみたところを書いてみたい。

1つの理由としては、絶対的に劣勢になるっていうことが念頭にあったんじゃないかと思う。相手はバルサでしかもアウェー。そりゃ、絶対的な優位に立つのはおそらく無理。というか、パスを回されまくって、ベタ引きにさせられるっていう想定は少なからずあったはず。むしろ、チームとして最後の最後の場所に人数をかけて固めようっていう積極的ベタ引きの考え方があった気がする。ローマとの第1戦でも見られたような簡単に前の守備をあきらめて最後で跳ね返しましょうっていう積極的ベタ引き。しつこいけど、今回の相手はバルサ。ローマ戦よりももっとゴール前にベタ引きにされるだろうなっていう気持ちがあってもおかしくない。

そのときに攻撃をどう仕掛けるか。前にも書いたことがあるけど、マンUの4‐5‐1は自分たちが主導権を握る形。4‐5‐1だから主導権を握るのか、主導権を握りたい試合で4‐5‐1を使うのかは微妙。とにかく、中盤の厚みを増すことでボールの支配率が上がるのは確か。中盤での保持時間を伸ばし、後ろからの上がりを促進して、攻撃に厚みを加える。じっくり攻めるのが4‐5‐1。4‐5‐1について詳しく書いても仕方がないから、このぐらいにするけど。

対して4‐4‐2は攻撃は前線に任せますよって狙い。攻撃時の考え方は4‐2‐4。トップ下の場所を空けて、その場所の出入りを激しくしながら前線の流動性を高める。そして、早めにその前線の選手にボールを送る。そうやって早めに前線にボールを送ることで、敵は未だ準備ができてない。味方も少ないけど、そこはスペースがあればあるほど生きてくるマンUの前線の選手たち。動き回ってマークを振りほどき、敵も味方も少ない広大なスペースの中で少人数で攻めきる。それが4‐4‐2システム時の攻撃。CMFがうまく絡んで前線に厚みを加えることもなくはないけど、最近のマンUの4‐4‐2は4‐5‐1との差別化で縦へのスピードが目立ってるのも事実。

さて、今回の試合ではどちらを選択した方がいいのかって問題。ボール支配型の4‐5‐1か、縦急ぎの4‐4‐2か。守備でベタ引きにされる(意図的にベタ引きで守る)ことを考えれば、どう考えても攻撃はカウンター頼みにならざるをえない。そして、それに適してるのは縦急ぎの4‐4‐2。両サイドのパク・チソンとルーニーは守備でかなり深い位置まで押し込まれたとしても、攻撃になれば最前線まで出てくる頑張り屋。それはローマとの第1戦でも証明済み。ベタ引き守備で跳ね返し、前線に速攻で送ったところに頑張って両サイドが追い付く。相手が攻撃に人数をかけてくることを考えれば、十分に人数は足りてるカウンター。狙いとしては間違ってないと思う。ただし、それが狙いどおりにできたのかどうかは後々の話。

そういうわけで4‐5‐1じゃなくて、4‐4‐2を使った理由の1つは守備と攻撃のつながりを考えてのものなんじゃないかと思う。そして、もう1つの理由が相手の攻撃との関係性。特にヤヤ・トゥーレの存在。バルサの中盤のアンカーに入ったヤヤ・トゥーレは攻撃時にはバランサー的な役割を担う。前線にいつも入り込んでいくわけじゃなくて、後ろに残って逃げ場として機能しつつ、ここぞの場面で飛び出すっていう動きが多い。つまり、ヤヤ・トゥーレはあくまでもヤヤ・トゥーレの場所でプレーするわけで、攻撃時に後ろに残っていることが多いってことになる。それに対してマンUはわざわざ中盤の選手をつける必要があるのかってことがあった気がする。普通に2トップを縦関係にすれば、済むだけの話じゃないかっていう。

マンUが4‐5‐1を使うときには相手が4‐2‐3‐1であることが多い。つまり、中盤の底の場所に2人が置かれてる形。だから、相手の1枚が残って1枚が前線まで飛び出してくるってことが多いわけ。その飛び出しに対応するために、中盤の選手をつけるっていうことがあるのかもしれない。まだ、実際には見てないけどアーセナル戦でもマンUは4‐5‐1を使った模様。アーセナルのCMFも積極的に飛び出してくるわけで、それに対応するために中盤の選手をつけようっていう考え方のもとの4‐5‐1だったかもしれない。もちろん、アーセナルの中盤が怖いから厚みを加えたってのもあっただろうけど、それは後日見たときに注目してみたい。

話がちょっとずれたけど、とにかくヤヤ・トゥーレはそんなにめちゃめちゃ積極的にゴール前に出てくる選手じゃない。よって、わざわざ中盤の選手をつける必要がない。それに飛び出して来たとしても、そこにいるのは後ろへの守備が大得意のテベス。実際に試合の中で、ヤヤ・トゥーレの上がりに対してしっかりと戻って対応してたし。そういうことを考えたら、守備と攻撃のつながりを考えて2トップの方がいいんじゃないのっていったところか。結果として4‐4‐2が採用されたのかもしれない。

というわけで、ちょっと憶測めいた内容が多くなってしまったので、ここからは実際に試合を見た感想へ。試合開始からやっぱりマンUの方は積極的に行く意識はないなってイメージだった。トップに入ったCロナウドは完全に守備免除で(ちょっとやってもいいんじゃないかって思わされる部分は多々)、相手CBは完全にフリー。両サイドも前に向かって頑張るっていうよりは、後ろへの意識の方が強かったから(背後に相手WGがいたし)、低い位置でボールを触れる相手SBもフリー。バルサが低い位置でゆったりとボールを持つシーンが多かったと思う。

じゃあ、マンUの守備の勝負どころはどこだったか。普通に考えれば、相手が自陣に入ってきたところ=相手がブロックに入ってきたところってことになる。実質的な4‐5‐1を使ってシステム合致を作ってるんだから、入ってきたところで1つ1つ忠実に守備をしてくってのが妥当。でも、実際にはそうはならなかった。確かにチェックはする。でも、それは守備の勝負に持って行けるような厳しいものではない。一応のチェック、とりあえず最短距離は切りますよのチェックが多かったと思う。要するにローマとの第1戦と同じ考え方。相手がブロックに入ってきたところは、まだ守備の勝負どころではないっていうやり方。見方によってはルーズなやり方だけど、仕方のない部分もあった。

まず、距離を一気に詰めていくと抜かれるのが怖いってこと。何しろ相手はバルサ。1人1人の技術がとんでもない。相手のボール保持者にはりきって飛び込んで行ったら、あっさりと交わされるなんてことだってありうる。そして、それは非常に困るわけで。結果として飛び込めない。つまり、厳しく距離を詰めていけない。飛び込まない守備は傍から見てると、中途半端に距離を空けたルーズなやり方に見えてしまうってこと。

ただ、こういう状況を免れるための方法がないわけではない。それは相手の前線の選手にボール自体を触らせないってやり方。ボールの入りどころで先に触ればいい。でも、これも現実的ではなかった。何しろ前線では全く制限が効いてないマンUの守備。だから、どこかに狙いを定めるのは不可能。そして、動きながらボールを引き出すバルサの前線の選手たち。こういう状況下でゼロ距離の守備をするのは無理。よって、相手の入りどころを狙うってのは至難の業だった。

よって、マンUは相手が自分たちのブロック内にボールを送り込んでくるのをある意味では指をくわえて見てる状況だった。そして、この部分にはバルサの前線へのボール供給のうまさがあったのも事実だったと思う。マンUの選手たちは、バルサのやり方によってあるジレンマに陥ってしまった。結果として出し手に対しても、受け手に対しても効果的に守備に行けないっていう悪循環にはまって行ったと思う。実際にはこれがマンUにとっての悪循環だったのか、別にいいやってことだったのかは微妙なところだけど。

とりあえず、バルサのやり方について見ていきたい。スタートはバルサのトップ下が降りて行くことから。これに対して、マンUの守備陣、特に対応する相手であるCMFがどういう行動に出るかってのが1つのポイント。大雑把に言えば、(1)低い位置まで降りていく相手トップ下について行く(2)ついて行かないっていう2つの選択肢。でも、どちらにしてもマンUにとっては苦しい状況だった。

(1)ついて行く
:システム合致のマンUとしては、対応する選手にある程度までならついて行くのがベースとなるやり方。じゃあ、そのベースのやり方どおりに相手のトップ下に対してCMFがついて行ったら=引っ張り出されたらどうなるか。

その降りて行ったバルサのトップ下の選手がボールを自由に受けたり、扱ったりするのは難しくなる。後ろには対応するマンUのCMFがついてきてるわけだから。ただし、マンUのCMFとしては背後にスペースを残してきていることになる。DFと中盤の間のバイタルエリアにギャップを残すっていうリスクを負った上での守備ってことになる。そして、そのギャップをバルサの選手たちは見逃さない。メッシ、イニエスタ、エトーあたりがそのスペースにスルスルと流れてくる。特に目立ったのがメッシ。エトーが下がってそのスペースに出てくる場合には、単純にマンUのCBがついてくればいい。イニエスタも中に入ってくるような動きが目立ったのは事実だけど、今回の試合では根本的にバルサがメッシを経由させるような攻撃をしてたから。

この時点でバイタルエリアに受け手が入り込んだバルサ。マンUとしては、そこには何としてもボールを入れさせたくない。でも、その受け手の方は誰が見ればいいのか分からない状況。SBが中まで入ってくるのか、誰かに受け渡すのか。受け渡すって言ったって、誰に?って話。結果として中に入って行ったメッシ(なりイニエスタなり)が浮いてる状況。これは何としても出し手の方にしっかりとプレッシャーをかけて、パスを出させないような対応をしなければならない。

幸い相手の降りていったトップ下の選手にはしっかりと対応できてる。そのためにギャップができてるんだから当たり前と言えば、当たり前。ヤヤ・トゥーレもテベスがしっかりと見てる。でも、ここで思い出さなければならないことが1つ。相手の最終ラインは自由にボールを扱ってるってこと。しかも、高めの位置までフリーで出てきてた。この辺でCロナウドがもう少し守備をしてもいいんじゃないかって思ったわけ。何しろミリート、マルケスがヤヤ・トゥーレと同じぐらいの高さからパスを出すシーンがちらほら。それじゃ、他の場所を抑えても意味がないって話。どちらにしてもバルサの最終ラインが完全に浮いてて、何の問題もなくパスの供給役として機能したことで、出し手も受け手も浮く状況がバルサに出来上がった印象。

(2)ついて行かない
:(1)に失敗して、困ってしまったマンUの守備。とりあえずバイタルに入り込まれるのはヤバいだろってことで、相手のトップ下が降りて行ってもついていかない=引っ張り出されないっていう考え方が目立つようになって来る。ただし、根本的な問題解決には至らなかったわけだけど。

バルサのトップ下は低い位置に降りていくとマンUのCMFから離れることができた。よって、ボールを受けるのも扱うのも自由な状況。じゃあ、ついて行かなかったマンUのCMFはって言うと困ったことになった。そもそも人ベースの守備をするマンU。自分の対応する選手を放してしまったら、何をすればいいのかって話。しかも、その迷いに拍車をかけてきたバルサのやり方。低い位置でボールを受けたトップ下の選手が、ドリブルで持ちあがってきた。同時にまたしてもバイタルエリアに対する相手3トップの動きによる仕掛けが始まる。マンUのCMFはどっちを見るべきなのか。ドリブルに対応しようとすれば、その瞬間バイタルが空いてしまって、ついて行かずに待ってた意味がない。対応しなければ、相手は構わずに上がって来て決定的な仕事ができる場所にまで来られてしまう。

ちなみに、こうのときにマンUが困ってたバルサの攻撃のやり方はマンUの攻撃のやり方に似てたとも言える。トップ下の選手が降りていったバルサは、その時点ではトップ下不在。そうやってできたスペースに、メッシ、エトー、イニエスタが入ってくる。さらに、低い位置からの飛び出しもある(バルサの場合は1度下がって行ったトップ下の選手が帰ってくる)。要するにトップ下のスペースをみんなで使いましょうねって考え方。相手としては誰が誰を見るのかってのがはっきりしなくなってしまう。マンUとしては皮肉な状況に陥っていた。

(1)でも(2)でもバルサの思う壺。困ったマンU。1つの可能性があるとすれば最終ラインを高い位置に設定すること。しかも、かなり高めの位置に。そうやってCMFが高い位置で相手のプレッシャーをかけられるようにする。同時にバイタルを空けない。ただ、これは無理な相談なわけだけど。何しろ相手のトップに入ってるのはエトー。そのエトーはウラを狙う機会を虎視眈々と狙ってる。前線で満足に守備をしてない状況で、超高いラインを敷いたりしたらエトーとスピード勝負をしなければならなかった。それじゃ分が悪いだろってのは、誰にでも分かること。

というわけで、マンUはもう1つの選択肢を採った。それがベタ引き守備ブロック。要するにバイタルを空けなきゃいいんだろってやり方。もっと言えば、相手をエリア内に入れさせなきゃいいんだろってやり方。立ち上がりからベタ引き守備が頭にあったのは事実だったけど、それでもまだ最初のブロックはある程度の高さにセットしてたマンU。この時間帯はカウンター的な流れでパク・チソン、ルーニーあたりが絡むシーンも見られた。でも、このやり方でバイタルに簡単に入り込まれてしまう問題が生まれ、完全に最後を固める方法に。どうせ深い位置まで来られてしまうなら、DFラインだけよりも中盤も含めて鬼のように人数をかけた方がいいよっていう開き直り。もちろん、相手に支配された結果、中盤では全く守備をさせてもらえなかったっていう側面も多分にあったとは思うけど。

そういうわけでマンUの守備×バルサの攻撃っていう展開になったわけ。これはもう、立ち上がりからずっと。バルサにしてみれば、立ち上がりは相手のブロックにどうやって仕掛けて、そこからどうやって最後まで持ってくか。時間とともに相手が完全ベタ引きになったから、前線にボールを運ぶのは簡単だけど、相手のラストブロックをどうやって崩すかってことに変化していった。実際には、大した変化はなったかもしれないけど。

とりあえず、バルサの攻撃のやり方についてちょっと復習。ここまではマンUの守備との関連で見てきたから、1度流れとして一番目立つパターンについて見てみたい。まず、上に書いたようにバルサのトップ下の選手は積極的に中盤に降りて行く。そうやってバイタルエリアを空けておいて、そこに両WGが流れていく。そうやって両WGが中に入って生まれたサイドのスペースにSBが飛び出していくってパターン。エトーはWGとの関係で横に流れて行ったり、相手DFラインにプレッシャーをかけるようなウラを狙ってますよの動きだしをしたり。細かい動きでチームを助けてた。

というわけで、ボールを受ける準備は整った前線だけど、枚数的にもトップ下が降りる⇔SBが上がるって関係ができてるから、薄くなったってことはないし、何よりも相手に混乱が生まれてる。だから、前線へのボールの供給が恐ろしくスムーズ。場合によっては左右の幅を利用することで相手の選手間の距離を広げて、隙間を作るみたいなアプローチも織り交ぜてくるし。

そうやってスムーズにボールを送った後はどうするか。もう完全なるバルサタイム。とにかく、ギャップギャップをつなぎまくる圧倒的なポゼッション。そして、この時点でのポイントは1度下がったトップ下の選手が舞い戻ってきてるってこと。1度下がったとは行っても、高い位置でチームとしてボールを保持してるならば本来の場所に戻ってこれる。そして、このときにポイントとなるのは相手につかまってない状況で出てこれるってこと。バルサの攻撃の厚みと狙いどころが定まらないパス回しに対してズルズルと下がってしまう相手ブロック。後ろから出てくる選手までしっかりと見るなんていう余裕はない。だから、舞い戻ってきたバルサのトップ下の選手は自由な状況で攻撃に絡めるってシーンが目立った。

これを最大限活用したのがデコ。1つ下がったところで攻撃のスタートを切り前線にボールを供給しておいて、今度は舞い戻ってギャップに入り込む。こういう形の中でタッチ数が増えまくり。ギャップに入り込んでボールを受け、相手を引きつけて次のギャップへはたくっていう形で、攻撃の経由点として目立ちまくり。メッシ、デコが関係性を作った右サイドが今回のバルサではかなり目立った。

この右サイドが目立ったってのは、今回のバルサの1つの特徴だったと思う。そして、それがだんだんと弱点的になって行った印象。前半の圧倒的にいい時間帯でも右サイドが目立ってたのは事実。ただ、この時間帯は右に作りながら左に向かっていくみたいな攻撃が見られた。ほとんどの攻撃が右をスタートとしてたのは事実だったけど、その中で相手ブロック前を横切るパス回しで左サイドにボールを送ったり、メッシ自身が横切る動きで逆サイドまで出ていくって場面も目立ったと思う。ベタ引きブロックのマンUにしてみれば、この横切るっていう形がかなり嫌なわけで。誰も対応に行けないし、サイドを変えられるとせっかくの密集ブロックに綻びが生じるから。それが効果的だったのは、チャンスの数を見てもわかる部分。

ただし、時間とともに右でスタートして右で攻めきるって攻撃が多くなる。正確にいえば、右でスタートして最終的には真ん中に入り込むっていうやり方だけど。つまり、右半分だけを使った攻撃。これではマンUのベタ引きブロックは真ん中で待ってればよかった。最終的には真ん中に入り込むにしても、いい時間帯みたいに右→中→左→中っていうような揺さぶりがあれば、それなりにブロックを分散させることも可能なわけだけど、右→中だけでは何の綻びも生じさせられなかった印象。それでもメッシの仕掛け、デコの切れ切れの動きで何とか攻めきるシーンを続けてたわけだけど、この2人の交代で全く攻撃の手がなくなってしまったと思う。

こないだアルディージャ×レッズの試合にも当てはまるけど、相手がベタ引きだと遠回りをするのが面倒になるのかなって思った。ボールはいくらでも保持できるわけだから、別にわざわざ遠回りして左右に振ったりしなくても、とにかくゴールに向かいたいっていう。これは最終的に中に入り込んでしまう攻撃のやり方にも当てはまる部分。いい時間帯にはサイドをえぐってマイナスクロス(グラウンダーのパスってのがバルサらしい)っていう、ベタ引きの相手には一番効果的な形がいくつも見られたバルサだったのに、そういうやり方がほとんどなくなって行った。つなぎまくりがバルサの形はいいけど、何も馬鹿正直に相手の一番固い所に入り込まなくてもって思う。

とはいえ、それでもやっぱりバルサが試合を圧倒的に支配してたのは紛れもない事実。パスを回しまくるバルサタイムが延々と続いた。そのバルサのパス回しの特徴は落ち着きがあること。同じくショートパスをつなごうとするアーセナルとは違った色がある。アーセナルは1タッチ2タッチで次々に局面を変えていくことで、相手に狙いどころを定めさせないパス回し。同じ狙いどころを定めさせないパス回しでもバルサのやり方はちょっと違う。ゆったりとしたパス回しで、相手に狙いどころを定めさせない。

どういうことか。バルサのパス回しでポイントになるのはギャップギャップに入り込むこと。そのために1人1人がギャップを見つけて入り込むことが要求されるのと同時に、ギャップを作り出すことも求められる。つまり、ボールを持ったらすぐに次へってことではなくて、相手を引きつけて場所を空けてから、次へっていうやり方が目立つってこと。もちろん、チャンスがあればダイレクトダイレクトでつないでいくし、1人1人の保持時間も無駄に長くないから、ゆっくりとしたイメージはない。でも、スピーディーに次から次へとっていうのとはちょっと異質のパス回し。1人1人の技術力をベースに、相手を引きつけてっていうワンクッションを置くパス回しだと思う。とはいえ、相手としては奪おうとしたところを次に展開されてしまうわけだから、狙いどころが定まらないことに変わりはない。

ちなみにアーセナルと似た部分としては人もボールも動かしながらパスを回してくことで捕まらないってやり方。前にも書いたことがあるけど、人が止まってボールを持つってシーンがほとんどない。1人の保持時間が伸びるときは、ドリブルによる仕掛けに限られる気がする。そういう仕掛けの意識もあって、パス回しのときの選手の距離感をある程度保ってるのがバルサ。ここはアーセナルとの違いか。そういえばアーセナルもそういう方向にシフトしてきてたんだけど、最近あまり見る機会がないから、どうなったかが分からない。

とにかく、バルサはある程度の距離感でパスを回す。だから、遠くと近くの選択肢が生まれる。ボールの動く方向も多様。今回は右サイドに入り込んでしまったってのは上にも書いたとおりだけど、基本的には横、後ろにもボールを動かしていく。そうやって常にボールを動かしながら、仕掛けどころを探って行くのがバルサのパス回しのやり方だって印象。その中で仕掛けどころが見つかれば、ダイレクトダイレクトでスピードアップを図るし、個人の突破っていうアクセントもうまく取り入れてる印象。改めて言うまでもないけど。

とにかく、マンUにとっては守備の狙いどころが定まらない状況。あまりにも簡単にバルサの前線へのボールの供給を許した時点で覚悟はあっただろうけど。というか、ここまで何度も書いてるようにそもそもマンUの守備はベタ引きがベースだったような気もするわけで。中盤で狙いどころが定まらなくて、パスをいくら回されても全く意に介してなかったかもしれない。まあ、積極的にしろ不本意にしろマンUがベタ引き守備をせざるを得なくなったのは確か。

ここで登場したのがローマとの第1戦でも見られた6バックの守備。ルーニーとパク・チソンの両サイドは相手のSBの攻撃参加に合わせて戻ってくるわけだけど、守備時のほとんどの時間はSB的な役割を担ってたと思う。その代わりに本来のSBが真ん中に押し込まれる。結果として4枚がゴール前に密集する形。そして、その前にCMFの2枚が並ぶ。つまり、6‐2の守備(普通に4‐4と言えば4‐4)。ちなみに、相手の後ろからの飛び出しに対してはテベスが戻ってきて対応してきた。

ローマ戦の時にも書いたけど、本来的に4‐2だけで守れるだけの強さがあるマンUの守備。それが今や真ん中だけで4‐2の圧倒的な厚み。そして、相手はなぜかその真ん中を意地でも崩そうとする。これは上にも書いたとおり。マンUの真ん中の4‐2の守備ブロックは、そこで待ち構えて、相手の最後のアプローチを跳ね返してればよかった。この守備が機能したっていう意味ではルーニーとパク・チソンを両サイドに置くやり方は、ローマとの第1戦と同じような効果をもたらしたって言える。

ただし、攻撃はそれほど甘くはなかった。それはバルサの攻撃後の切り替えの意識の抜群の高さによる。マンUも攻撃後の切り替えが最初の守備のポイントになってるチームだけど、そんなのはあっさりと凌駕したと思う。奪われた瞬間に、本当に瞬間に最初の守備が効く。そして、ここぞとばかりに2つ目、3つ目も一気に連動してくる。もともとから言って、相手の上からの守備に脆さを見せがちなマンU。この相手の切り替えを抜け出すのは至難の業だった。しかも、この最初の守備の後ろにはバルサはヤヤ・トゥーレを隠し持ってる。対してマンUは下手するとCロナウド1枚。苦し紛れに前線に送ったボールはことごとく相手の手に渡ってしまった。そして、再びバルサタイムが続くこととなった。

この時点でマンUは普通の4‐4‐2になっていた。守備的な4‐4‐1‐1と言ってもいい。守備は4‐4‐2で攻撃は4‐2‐4でカウンターを仕掛けるっていう思惑は大外れ。いくらルーニーとパク・チソンが頑張り屋でも、上がる時間がなければ攻撃に絡むことはできない。何しろSBの場所まで押し込まれてるんだから。相手の切り替えの守備の前に、その時間を作り出すことができなかったと思う。マンUと戦ったリバプールと同じ問題に陥った今回の試合だったって言える。あのときもリバプールはサイドが押し込まれ、先細りの状況で前線へのボールがことごとくマンUの手に渡り、結果としてカイトの頑張りを生かせなかった。

ちなみに、バルサの攻撃後の守備が効果的に機能したのは今回はトップの一角にイニエスタとエトーっていう比較的守備を頑張るタイプが入ってたこともあったかもしれない。守備ブロックをセットした時にもエトーはマンUのCBを追いかけまわして守備のスタートととして機能した。そのうえで、入ってきたところを後ろが1つ1つ丁寧に寄せていくってやり方。そうやってマンUの選手に簡単には前を向かせないような対応をとってたと思う。

ただし、マンUの選手が簡単に前を向けたポイントが一か所。それがサイドの攻防。このサイドの守備についてはちょっとイレギュラーなやり方をとってるバルサ。これはセルティック戦の時にも書いたとおり。SMFには単純にSBがつくんだけど、それに対してマンUのSBの攻撃参加に対してはバルサのトップ下のシャビとデコが引っ張り出されて対応する。このサイドの攻防は次戦に向けてポイントの1つになるかもしれないと思う。

例えばマンUが4‐3‐3を使ってくるとする。このシステムだと、守備ブロックを4‐3で作れるから前線の3枚は戻ってくる必要がない。今回はルーニーもパク・チソンも守備的で差がてたから、何の問題もなく攻撃に出てこれたバルサのSBだけど、Cロナウドとかギグス(もう1枚は誰を使うか分からないけど)が前線に残っていたら、バルサのSBは攻撃に出てこれるか?出てこれないとするとバルサの攻撃は一気に停滞する可能性がある。上でも触れたとおり、組み立てのときにトップ下が降りて行っても代わりにSBが出ていくことで前線の枚数を維持するバルサ。このSBの上がりがないと、前線は3枚に。これではマンUの方も抑えやすいはず。

さらに、マンUがサイドに攻撃のポイントを持って行ったらどうするのか。SBが積極的に上がって行けば、バルサはトップ下が開いて対応することになるはず。メッシを後ろに残したままSBが上がるのが怖いなら、ローマとの第2戦のように真ん中からハーグリーブスがサイドに回るみたいな動きをすればいい。どちらにしても、このときにマンUのCMFは浮いた状況になる。今回は守備重視の戦いで、ほとんど全然に出て行かなかったスコールズとキャリックだけど、本来的には前線に飛び出していくタイプなわけで。サイドの攻防が、今度は真ん中にも影響を及ぼしてくるかもしれない。この辺は次戦でのポイントの1つになることは間違ない。

そう考えるとマンUが有利かなって思う。今回の試合で明らかに手の内を見せてないのはマンUなわけだから。そのうえ0‐0で乗り切ったわけで。まあ、開始当初のPKが決まってれば、それに越したことはないだろうけど。対して、バルサの方にはちょっとした不安が残った試合。それは後半の勢いの衰え。セルティック戦でも全く同じ状況が訪れたし。メッシがいなくなった影響は大きかった気がする。そして、そんな重要なメッシが途中交代した状況。まだ、万全じゃないっていう不安が残る。

ちなみに、後半のバルサはポゼッションの位置が1つ下がった気がする。前半のように好きなようにバイタルに入り込むことができなくなった。それは、その間での動きが明らかに停滞したから。1つの理由は上にも書いたとおりバイタルに入ってくる選手がいなくなったから。メッシに変わったボ-ジャンはほとんどサイドを基本にプレーしてたし。それに、メッシ自身がいなくなったのも大きい。今回の試合では明らかにメッシ経由での攻撃が多かったバルサ。そのメッシがいなくなったことで、チームとしての目標がなくなったイメージ。後ろの選手が誰に出していいか分からないし、前線の選手が何をスイッチに動きを開始していいか分からない。そして、そうやって前線にボールが入らなくなると後ろからの攻撃参加が停滞する。結果として前線の枚数が薄くなる。後半はボール自体は持ってるのに、前線の選択肢が少ないって状況が生まれたと思う。
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2008-04-22 Tue 18:45
レッズ×アルディージャ
<レッズ:3-4-2-1>
FW:エジミウソン
MF:高原-永井、相馬-トゥーリオ-細貝-平川
DF:阿部-堀之内-堤
GK:都築

<アルディージャ:4-4-2>
FW:デニス・マルケス-吉原
MF:金澤-斉藤-小林慶-小林大
DF:波戸-冨田-レアンドロ-村山
GK:江角

新シーズン初のJリーグ。新シーズン初のレッズ。監督交代後初のレッズ。去年は何度も見ていたレッズの試合。新シーズンが始まり、監督が代わってやり方がどう変化したかってのが大きな注目点だった。だけど、実際にやり方は変化せず。いろいろと変わっても、レッズはレッズのままかって話。結局はベタ引き、前任せの攻撃がそのやり方だった。前にポンテとワシントンがいなくなった分、難しいだろって思う。とりあえず、この試合の前までは4連勝で何かが変わってきたイメージだったんだろうけど、たぶん監督が変わったこと自体がチームのモチベーションにつながっただけなんじゃないかってのが素直な印象。今後もレッズが苦しむのは確かだと思った。

そもそも、監督交代のときにもっと攻撃的なサッカーをしたかった、オジェックの下じゃそれができなかったって誰かが言ってた気がするわけだけど。やっぱり結果を重視すると今までのやり方は崩せないんだろうなって思う。昨シーズンの開幕当初のアントラーズが産みの苦しみを味わったし、ガンバもシステム変更で苦労してた気がする。ちょっと前のマリノスも4バックを採用しようとして、大変なことになったことがあったし。おそらく今のスタイルは当分、変わらないでしょう。数試合を捨てて、大変革に行くってなら別だけど、結果が出ないのはサポーターが許してくれないだろうなってとこか。

さて、そのレッズ。ここまで書いてきてとおり、根本的な部分は何も変わっていなかった。まず、トップの守備意識。今回は高原&永井&エジミウソンの3枚併用だったわけだけど、この3人が守備をしない。まあ、前線の3枚の守備が免除されてるってのは昨シーズンも同じだったわけだけど。それでも途中からポンテが守備に献身的になった分、昨シーズンのがマシだったかもしれない。それに、今回の試合で見られた問題は前の3人が守備をするんだかしないんだかはっきりしないこと。自分の前に対する守備をしそうでしない。時々、気まぐれに前線から帰ってきて後ろのブロックに参加する。周り(後ろ)の選手は、それに頼っていいものだか悪いものだか分からない感じ。

立ち上がりにはそういう迷いみたいなものが見られた。前の3人が守備をしそうな雰囲気は見せる。だから、ボランチの2枚がやや高めのポジショニングを取ってた。でも、守備をしそうでしない前線の3枚。よって、前に出てきてたボランチが引っ張り出される。とはいえ、中盤のだだっ広いスペースを2人でカバーするなんてのは無理な話なわけで。あっさりと逃げられ、あっさりとDFとボランチの間に入り込まれるって形が多くなったと思う。

要するに、この時間はまだストロングポイントであるベタ引きブロックを作っていたわけではないレッズ。それはサイドの攻防を見ても明らかだった。相手がサイドに起点を作ったときには、まだ最終ラインに吸収されてなかったWBがしっかりとチェック。ボランチもそれを助けるために、ボールサイドに寄って行く。さらに、後ろは3バックがスライドしてWBのウラのスペースを埋め、逆サイドはWBが戻ってスペースを埋めるっていう対応をしてたと思う。ボールサイドに全体を寄せる守備ブロック。ここでアルディージャが一発サイドチェンジなんかをしたら、その逆サイドはスカスカだったんだろうけど、つなぐ意識が高めのアルディージャには一発でサイドチェンジをするっていう選択肢がなかった模様。

とはいえ、こんな感じでレッズが守備をできたのは本当に立ち上がりの時間のみ。その後はいつものベタ引き守備に入って行った。当たり前と言えば当たり前。DFとボランチの間にあまりにも簡単に入られたレッズには怖さが生まれるわけだから、ボランチは後ろに引きつけられる。未だ守備はしないFW。よって中盤は相手に制圧される。結果として相手のSBは上がり放題。そういう状況でWBが高めの位置を維持できるはずもなく。結果としていつもの5‐2ブロックへ。場合によっては永井が助けに来て、5‐3ブロックへ。

ちなみに、こういう状況になった要因に1つ1つの守備の甘さっていう問題もあったと思う。そもそも3枚を並べてフィルター的にしてる3トップが守備をしないレッズ。いるだけでは守備のスタートが切れない。で、中盤に入ってきたところには2枚のみ。上にも書いたように、2枚で広大な中盤のスペースを埋めるのは無理な話。厳しいチェックをするも何も距離が遠すぎて不可能。よって、1つ1つのチェックが甘い甘い。たまに効いても、次が連動してこない。そうやって、どうせ中盤で効果的に守備ができないんだったら中盤は相手にくれてやれってのがレッズの発想。中盤をくれてやった代わりにラストはやらせないよって形。

そういう意味ではバランスなんか関係ない、ラストで跳ね返せばいいんでしょってのがレッズの守備。対するアルディージャの守備はバランスがとてつもなくよかった。アルディージャの試合を見るのは、もしかしたら初めてかもしれないんだけど、こんないいサッカーをするチームだったのかってのが素直な感想。昨シーズンと今シーズンの成績の違いを見る限りでは、今シーズンから取り入れて来たのかもしれない。それにしては恐ろしく洗練されてるなって形だった。

守備ブロックはフラットな4‐4‐2。途中からちょっとした変化が見られた(後述)けど、長い時間で見られたのは、このバランスのいいブロックを自陣で形成する形。最終ラインは高めの位置を保持しつつ、コンパクトなブロックを作る意図が見られた。その上で、どちらかというと受ける意識が強い守備のやり方を採ってた。そして、構造上の勝負の時点で完全にアルディージャが上に言ったと思う。もちろん1つ1つの守備意識でもアルディージャがレッズを上回ってたけど、それは後の話。

<○:レッズ、●:アルディージャ>   

    ●  ●
●  ○ ○ ○  ●
    ●  ●
●   ○  ○   ●
○   ●  ●   ○
   ○  ○  ○

まず、アルディージャのFWの役割。上に書いたように、受けるイメージが強かったアルディージャの守備。だから、FWには前に向かって追いかけまわすっていうような役割は与えてられてなかった。実際にレッズの3バックはある程度自由にボール回しができてたし。そういう意味ではレッズのFWと大きく変わらないように見えるのも事実。ただ、その代わりにアルディージャのFWにはレッズのボランチを見るっていう役割が与えられてたと思う。

その上で、念頭に置かれてたのはそもそもレッズのボランチにボールを入れさせないってこと。3バックから中→中っていう縦パスを入れさせないように、アルディージャの2トップが真ん中を絞るようにポジショニングした。ここでレッズの構造上の弱点の1つが表れてる。それは3バックだと最終ラインのパス回しに幅を使えないってこと。どうしても真ん中寄りになってしまう3バックだから、ボランチにボールを入れようとすると中→中って形にせざるを得ない。そして、そこはアルディージャのFWが切ってる。だったら、そのFWを動かして外しってからって可能性もあるわけだけど、横幅が使えないから、それも不可能。結果としてレッズはボランチにボールを預けることができず。

預けることができたとしても、そこには相手のFWがきっちりと戻っての対応をしてきた。このあたりからも、アルディージャのFWにレッズのボランチを見る役割が与えられてたのは明らか。細貝が戻ってきたデニス・マルケスにつぶされるってシーンが目立ったこと、目立ったこと。

こんな感じで、FWがしっかりと戻って相手ボランチに対応してくれるってのがアルディージャとしては大きな意味を持ってたと思う。上の図を見て、アルディージャの構造的な弱点があるとしたら、真ん中のところ。相手の3トップに対してアルディージャは2CBで守るっていう数的不利な状況が生まれてる。でも、ここでボランチの対応にFWが当たるとどうなるか。アルディージャのボランチの2枚は前に引っ張り出されることがなくなる。よって、真ん中の2-2が常に維持できる状態。結果として相手の3枚を4枚で見るっていうような安定した状況が生まれてた印象。コンパクトなブロックを維持する意味でも、ボランチが引っ張り出されないことの意味は大きかった。

さて、これでボランチを押さえられてしまったレッズ。仕方がないので、サイドに起点を作ることになった。でも、そのサイドでも効果的に起点を作るのは難しかったと思う。なぜか?まず、上の図みたいにWBが低めの場所にいる状況。この時点でも相手のSMFによる忠実なチェックにさらされることとなった。しかも、ここでも構造上の問題が。そもそもサイドにWBしかいないレッズの形。よって、相手SMFは縦を切らずに中を切りながらあたってくる。仕方がないから、後ろに戻すってことが多くなった印象。

じゃあ、相手のSMFのウラで受けたらどうかって話。これは中を切ってくる相手に対して、縦にドリブルで運んでくってことも含めて。実はこっちの方がさらに厳しい状況になった。サイドが1枚のレッズに対して、サイドが2枚のアルディージャ。3バックを使ってる以上仕方がないことではあるけど、レッズはサイドで根本的な数的不利。結果として、あっさりと挟み込まれてつぶされるって形が多くなったと思う。

というわけで、中も外も選択肢がなくなってしまったレッズ。立ち上がりに、なんとかそれを助けてたのが永井の存在だった。永井は3トップの一角的な基本ポジションだったわけだけど、中盤に降りてきての仕事が多くなったと思う。そして、中盤に永井が降りてくるとある程度は浮いた存在になる。1つのパターンとしては永井の助けを借りて、サイドから攻めるってやり方。相手のサイドの選手を下がってきた永井が引きつけて、ウラに相馬が抜けるって形でチャンスを作ったのが1つ。後は後ろに戻さざるを得ない形になってた相馬に、降りてきた永井がパスコースを作ってやることで前に行くってパターン。要するに左サイド寄りの攻撃が多かったのが今回のレッズ。平川と相馬のスタイルを考えれば妥当。ただ、唯一の光となってたこういうサイドからの攻撃も5バックが顕著になると、ほとんど見られなくなっていったわけだけど。

それに、そもそも永井が降りてくるって形自体が問題だった。そもそも前線が薄いレッズなのに、3枚のうちのなけなしの1枚が降りてくるって形なわけで。前線の選択肢は高原とエジミウソンのみ。しかも、この2人が動かない動かない。大体において、この2人がもっと動いてくれればサイドにボールを出して、相手SBを引っ張り出したウラを使うみたいな形にありえたはずなんだけど。唯一、そういう動きを見せた永井は下がってのプレーが多くなってしまった。よって、なんとか相手ブロックに入ってもラストの仕掛けに行くのは絶望的だったと思う。この2人を下げて、梅崎と田中っていう選択はもっともな考え方だったと思う。

そして、こういう部分を見てレッズにとって何よりも痛かったのはボランチを押さえられてしまったってこと。ボランチのところに起点ができれば、それなりに人数をかけた攻撃ができてたのが今回の試合のレッズだった。両WBが上がって、幅を使える下地ができてたし。前線も3枚が近い中でいい関係性を見せてくれてた。そして、トゥーリオがさすがの攻撃的センスを発揮して、そういうサイドなり前線なりに効果的にボールを送る。こういうやり方を見る限りでは、トゥーリオを中盤に使う意味の大きさは分かるし、それによってチーム状態が上がったって意味も分かる。今回はキーとなるトゥーリオにボールをほとんど触らせなかったアルディージャの作戦勝ちって気がする。

とにかく、ボランチもサイドも押さえられてしまったレッズに残されたのはいつもどおりの前線任せ。最終ラインから一発のボールを蹴りだして、あとは前でお願いねって形。でも、これが機能しない機能しない。その要因は、なぜか一発パスを相手のウラに出さなかったから。これは全く意味が分からなかった部分。今回の試合でアルディージャの守備に唯一あった弱点はウラのスペース。高い位置を取ってる最終ラインと、追いかけないFW。ウラは完全無防備状態。にもかかわらず、そこに入れるボールが皆無だった。

じゃあどうしたかって言えば、当然のように最終ライン前で勝負しようとする。そして、ここはアルディージャの守備のストロングポイント。そんなことはちょっと考えれば分かること。前線がはがれてるレッズに対して、DFと中盤が近い位置を保っているコンパクトアルディージャ。レッズが蹴った次のボールをどちらが拾うかって言えば、その答えは必然。レッズは蹴るだけ蹴って終わりの流れだったと思う。

もちろん、上にも書いたようにアルディージャの守備の質が高まったのは構造上の要因だけではない。1つ1つの守備のよさが際立ったのも事実だった。その中でレッズと比べて完全に上回ってたのが、ボールの入りどころに対する守備。1つ1つのチェックがルーズだったレッズに対して、アルディージャは入りどころにゼロ距離守備。まあ、レッズの方に選択肢が少なかった上に足もとにばかりパスを出すっていう問題も多々あったわけだけど。それを考えても、質の高い最初のチェックができてた。

そして、そうやって最初の守備が効けば周囲の連動が自然ともたらされる。しかも、コンパクトなブロックを作って、もともとの選手間の距離が抜群に近いアルディージャ。入りどころに対する最初のチェックで相手を足止めして、すぐに周囲が連動して囲い込む。意図としてはリバプール的。今回の試合に限って言えば、その機能性(レベルはリバプールが明らかに上だろうけど)もリバプールレベルだった。レッズの前線の起点はことごとく潰して行ってた気がする。

そのアルディージャの攻撃。上にもちょっと書いたように、ショートパスをつなぐ意識が高いように見えた。中盤を苦もなく使えたから、蹴る必要がなかったと言えばなかったわけだけど。それでも上に書いたように一発のサイドチェンジも利用しなかったし、局面局面を見るとボールの近くでの動きが活発だったと思う。近づくランニングも多かったし。その中でギャップギャップをつなぐパス回し(ギャップが多かったのも確か)が目立った。そして、そういうパス回し主体の攻撃の中で、相手の弱点である中盤の2のところを効果的に使おうっていう意識が見て取れた。FW、SMF、ボランチが代わる代わるそのスペースに出てきてボールを受けるシーンが目立った印象。

ただし、そういう場所ばかりに入り込んだら相手は守りやすいってことともしっかりと意識してたと思う。もはや流れが完全にアルディージャに傾いた時間帯になると、SBを高く上げるようになった。その上で前線の流動性を維持しながら、サイドの出入りも増やし始めた印象。結果として中→外とか逆に外→中っていう相手の目先を変えるようなパス交換が目立って行った。

と、このあたりまでは攻撃におけるバランス感覚が見られたアルディージャ。でも、フィニッシュの場面となると、ことごとく真ん中に入り込んで行ってしまった印象。せっかくサイドに起点を作っても、結果的に真ん中に戻ってくる。これじゃあ、レッズの思うつぼ。何しろ5-2でラストを固めてるレッズ。人数が恐ろしいほどいるラストブロックの真ん中を崩すってのは、ほぼ不可能。ミドルシュートを打ったとしても、途中でレッズの選手に当たる可能性が高まるのは当たり前。

じゃあ、レッズのベタ引き人数ベースブロックを崩すためにはどうしたらいいか。それがサイドからのクロス。しかも、えぐればえぐるほど効果的。なぜなら人数がめちゃめちゃいても、横からのボールに対しては無効化されてしまうから。正面ほどの強さは見せないし、むしろ人数がいすぎる弊害が生まれる可能性だってある。サイドからのクロスに対して後ろから飛び出せば、おそらくレッズの選手は捕まえ切れないと思う。

そういう意味でアルディージャの結局は中に入ってくる攻撃は残念だった。真ん中に使えるギャップが多いと、それが魅力的なのかなって思う。ベタ引きのレッズのブロックはバイタルエリアがスカスカだし。逆にこれをレッズが狙ってやってるとしたら、恐ろしい。わざと中盤を2枚にして真ん中にスペースがありますよっておびき寄せる。結果として相手の攻撃は跳ね返しやすい正面からばっか。いくらバイタルを空けても、ラストは人数がいるから問題ない。逆にサイドから崩された方が怖いわけで。だから、相手に魅力的な最短距離を晒してるんじゃないかと。ないか。

どちらにしても前半は圧倒的にアルディージャペース。これで自信をつけた、後半のアルディージャはこのサイドの攻防でさらに積極策を採ってきた。下の図のように両サイドを1つずつ前に出してきたと思う。実際のところは本当にこういう2-4-4の形になったわけではないけど。簡単に言うと、サイドの選手の見るべき相手を1つずつ上げたイメージ。4-4-2は1度セットしておきつつ、相手の3バックの脇の選手に入ったらSMFがプレッシャーをかけに行く、その時に後ろはSBに任せるっていう形が目立つようになった。より高い位置からプレッシャーをかけつつ、安定性はそのままに保つ、いいやり方だったと思う。

<レッズ:○、アルディージャ:●>

    ●  ●
    ○ ○ ○  
●   ●  ●   ●
○   ○  ○   ○
●   ●  ●   ●
   ○  ○  ○

これによっアルディージャは攻撃も活性化。より高い位置に守備意識を持っていったわけだから当たり前と言えば、当たり前。SBの攻撃参加も前半よりも明らかに多くなった(前半も十分に多くなったわけだけど)。相変わらず最終的には中に入って行く攻撃だったけど、前半よりもより攻撃に厚みを加えることができたから、真ん中からでも崩せるんじゃないかって光が見え始めた。

これはまずいって思ったのがレッズの方。そこで選手交代。高原、エジミウソンに代えて梅崎と田中。この交代でレッズが何をしたかっていうのが興味深い。簡単に言えば、新しく入った2人をWGに置いた3-4-3に変更した。そして、この2人は基本的にWGの場所に張りつけって指示が出たんじゃないかと思う。だから、永井が中盤に降りていくとトップの場所に選手がいないような状況も生まれてた。

じゃあ、なんでそこまでして2人をWGの場所に居座らせたか。それは簡単で相手のサイドが攻守にわたって活性化したから。だから、レッズは3-4-3にシステムを変更することでサイドの数的不利を解消しに行った。WBとWGが縦に並んだレッズのシステムでは、両チームのサイドの人数は2×2になる。これによってアルディージャのSMFがレッズ最終ラインにまでプレッシャーをかけるなんてことは不可能になったと思う。前半のように4-4-2で受ける形が再び戻ってきた。

同時に田中と梅崎の怖さが生まれたアルディージャのSBの攻撃参加が明らかに減って行く。機を見て上がって行っても、そこには田中と梅崎がしっかりとついて行って対応。結果としてそれまでのようにサイドを効果的に使うことができなくなってしまったアルディージャ。攻撃が中へ中へと入り込んでいってしまった。それに、攻撃にそれまでほどの厚みがなくなって近さも解消。ドリブルでの仕掛けが目立っていく展開になったと思う。そういう停滞感が見え始めたアルディージャの攻撃をレッズが難なくブツ切りにして行く。結果として後半の途中からは両チームとも決定的なチャンスに行けないような流になってしまった印象。

今回の試合を見るとアントラーズがレッズに負けた意味が分からない。フラット4-4-2の守備はアントラーズも使ってる形だし、サイドとトップ(トップ下)の場所の出入りを激しくしてるのもアントラーズの形。そういう意味では今回のアルディージャのやり方はアントラーズ的だったとも言えるかもしれない。まあ、少なくとも攻撃についてはアントラーズの質の方が高いと思うけど。ただ、守備については今回のアルディージャの守備の質はかなり高かった。これは注目に値するチーム。
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2008-04-18 Fri 17:51
マンU×アストン・ビラ
<マンU:4-4-2>
FW:ルーニー-テベス
MF:ギグス-Cロナウド、スコールズ-キャリック
DF:エブラ-ビディッチ-ファーディナンド-ブラウン
GK:クシュチャク

トップが守備をするのかしないのか、それが問題。マンUに当てはまる、このキーワード。今回の試合のマンUにも例外なく当てはまったのも事実。久々に4‐4‐2だったし。ただ、そんなマンU以上にこのキーワードが当てはまったのはアストン・ビラの方だったのが今回の試合だった気がする。このトップが守備をするか、しないかってところでアストン・ビラの運命が決まったイメージ。

そもそも、アストン・ビラのトップは守備をしっかりとやるイメージが強い。少なくとも、過去に見たアーセナル戦とチェルシー戦ではそうだった。マンUのように、守備をしたりしなかったりっていう気まぐれの様子は見られず、忠実に前線からの守備をして行く様子が見て取れたと思う。そして、そのトップの守備こそがアストン・ビラの攻守に渡る流れのスタートとなっていた。

トップが守備のスタートとして機能し、1つ1つのチェックを忠実に行う。それに後ろがしっかりと連動して、高い位置で効果的に奪う。そういう守備から攻撃へのスムーズな切り替え。今度はトップが攻撃の起点として機能して、うまくボールを引き出す。典型的なショートカウンターで攻めきる意図が強いのがアストン・ビラの特徴。攻撃を遅らされたらされたでサイドを利用した攻撃っていう選択肢もあるわけだけど、どちらにしてもトップに当てる意図が強い。だったら、高め=トップの選手の近くで奪ってそのまま切り替えた方が効率がいいわけで。というわけで、アストン・ビラの攻守の流れは前線からの献身的な守備がベースになってるって言ってもいいと思う。

というわけで、試合前の注目点は前線から守備をするアストン・ビラに対してマンUがどうやって攻撃の組み立てを行うかってことだった。何しろマンUのシステムは4‐4‐2。4‐2‐3‐1システムを利用してるときには、組み立てにトップ下(アンデルソン)が助けに来るっていう方法で、高い位置からの相手の守備を否すことにある程度は成功したマンU。足元得意のアンデルソン&キャリック&スコールズが中盤の低めで並ぶことで、相手にプレッシャーをかけられた時にも落ち着きを保ったまま攻撃を組み立てる下地ができあがった。ただし、4‐4‐2では未だその問題は解決していないわけで。アストン・ビラが高い位置から来ることが予想される以上、それをどう否すかってのが今回の試合の1つのポイントだった。でも、ポイントになるはずだったってことで終わってしまったわけだけど。

最初に書いたとおり、今回の試合のアストン・ビラはトップが守備をするかどうか、それが問題だった。立ち上がりの時間は高い位置からの守備の良さが見られたアストン・ビラ。ある程度予想通りに前線からの守備が機能して、中盤で効果的に引っかけるシーンも多くなる。ただ、時間が経つにつれて、それが見せかけのものだってことが判明。見せかけってのは、そういう高い位置の守備がこの試合の本来的な守備のベースではなかったってこと。高い位置からの守備が効くのは、切り替え後の場面だけ。立ち上がりは後で書くようなマンUの問題によって、攻撃で深い位置に入り込むシーンが多くなったから、結果として高い位置での効果的な守備が目立ってってたってのが真相だったと思う。

じゃあ、ベースの守備はどういうやり方か。それは普通にコンパクトな4‐4‐2を自陣に作るってことだったと思う。能動的な守備を予想してた方としては真逆の展開。完全に受ける体制を作って、入ってきたところを狙おうっていう守備の姿勢が見て取れた。結果としてマンUのCBが落ち着いてボールを持てるシーンが多くなった。本当はこの2人をいかに焦らせるかがポイントだったのに。今回の試合でのマンUのGKはファン・デル・サールではなくクシュチャク。よって、いつもようにアストン・ビラがトップからの守備を機能させれば、マンUのCBはいつも以上に焦ったはずだったのに。そういう意味ではアストン・ビラが受けの体制を作ってくれたことは、マンUにとってはラッキーだったかもしれない。

それでもこの時点ではアストン・ビラの守備に致命的な欠陥が見られたわけでもなかった。トップが守備のスタートとして機能しないから、中盤で効果的に奪えなくなったのは事実。ただ、1つ入られれば後ろの4‐4でラストを固めるっていう選択肢がアストン・ビラには残されてた。これはチェルシー戦、アーセナル戦でも見られた形だけど、前からの守備を外された時にアストン・ビラのラストブロックの質はそれなりに高かった。今回は前からの守備を自ら放棄したわけだけど。とにかく、そういう4‐4のブロックに入り込もうとするところを引っ掛けるっていう方法の守備で安定感は維持できてた印象。

ただし、この4‐4‐2の守備にも徐々に綻びが生まれてくる。これについてもキーになったのはトップの2枚。しっかりとしたブロックを作ってるときには、当然のようにトップもそのブロックの一角として機能してたアストン・ビラ。トップが単純に横並びで4の前にいるって形だけじゃなくて、縦っぽい関係性になってたこともあったけど。どちらにしても中盤の4とトップの間にギャップができないような守備のやり方を採ってた。つまり、相手のCBはある程度自由にさせてやるけど、CMFには自由にボールを入れさせないぞっていう形。結果として、マンUの組み立てを本当の意味で機能させることは防いでたって言える。

でも、残念ながら時間とともに2トップが中盤からはがれていった。理由は分からないけど、とにかく4‐4‐‐2になっていったと思う。結果としてマンUのCMFが4‐2の間に入り込んで浮くっていうシーンが明らかに目立ったと思う。そういう4‐2の間でボールをフリーで持つ場面も目立った。要するにマンUの出し手のところが完全に浮いたって形。さらに、4‐2の間でボールを自由に持てるようになった時点でマンUはそこに2枚を横並びにしておく必要がなくなった。1枚は飛び出して行って、前線に厚みを加えるっていう役割を担えることとなったと思う。

もちろん、アストン・ビラの方も黙ってはいられない。スコールズが中盤でフリーでボールを扱ってるなんて状況は怖くて怖くてたまらない。だったら、FWを再び中盤に近づけるってやり方を採ればよかったんだろうけど、アストン・ビラはそういうやり方を選択しなかった。守備をするんだかしないんだか分からないFWに頼ってられないってことで、4‐2の間のスペースへのケアを中盤が担当することとなったと思う。この選択が結果として、致命的だったって言っても過言ではなかったと思う。

中盤が4‐2の間のスペースを埋めるって言ったって、やっぱり1つ1つの対応は遅れ気味。前線で制限がかかってないんだから、これは仕方がない。よって、中盤の選手が実効性が薄いチェックのために、背後にギャップだけを残してきてしまうっていう状況が生まれることとなった。そして、その4‐4の間にできたスペースはマンUの前線の選手の大好物。システムについては後で詳しく書くけど、4‐4‐2を使った今回のマンUは再び前線の流動性が活性化してた。要するにトップ下の場所が空いたことをいいことに、そこへの出入りを激しくし、さらにそれを全体に波及させるようなグルグルポジションチェンジが目立ったってこと。

つまり、マンUの流動性の中で重要なポイントとなるトップ下の場所が今回は空いてたことになる。そして、相手の4‐4の間のスペースがその場所と完全合致。敵も味方もいない空白地帯に、ルーニー、テベス、ギグス、Cロナウド、さらにはボール保持者じゃないCMFが次々に顔を出してくる。相手はそれを捕まえられない。よって、この時点でマンUの方は受け手が浮いてる状況が生まれた。2、3点目がこの場所を1度経由させてる(そして、その経由点になってるのがスコールズとCロナウド)っていう部分を見ても、このスペースの重要性が見て取れると思う。

アストン・ビラの方は致命的な展開。4‐2の間が空いてしまって、マンUの出し手が浮く。それに対応するために中盤の4が引っ張り出されて4‐4の間が浮く。結果としてマンUの受け手が浮く。全く持って、守備の勝負どころが定まらない状況。さらに、4‐4の関係性が崩れてしまって時点で人数をかけて最後を固めるっていう選択肢を選ぶのも不可能になってしまったと言ってもいい。

4‐4の間に入り込まれるシーンが増えたアストン・ビラには当然のように怖さが生まれる。結果として最悪でもゴールへの最短距離は絞めてやろうっていう意識が強まって行った印象。だから、全体として中寄りのポジショニングが目立っていった。そもそも4‐4‐2のコンパクトブロックを作った時点で、一体感をもたらすために全体を中寄りにしたって部分もあったわけだけど。とにかく、そういう中寄りのアストン・ビラブロックに対してマンUは時折、斜めの質で逆サイドの深い場所を突くようなロングボールを蹴ることで揺さぶりをかけていった印象。

そういうわけで、好きなようにマンUにやられてしまった印象の強いアストン・ビラ。だからこそ、アストン・ビラが受ける意識が高いような守備のやり方を採ってきたのが返す返すも残念。アーセナル、チェルシーにも通用した前線からの守備をどうして放棄したのか。しかも、特にマンUに対しては出し手を浮かせた時点で危険な状況を覚悟しなければならない。4‐4‐2を利用してきた今回は。動き回る前線の選手を捕まえるのは難しいわけだから、受け手の方にしっかりと対応するってのは現実的じゃない。だから、そういう前線の選手に対するボールの出所を押さえるべき。そして、ここまで書いてきたとおりアストン・ビラはそれができるチームのはず。今回の試合では前線からの守備をやめて、マンUの出し手を浮かせてしまった時点で勝負ありだったって言えるかもしれない。

ちなみに、前半のカリューのアクシデントによる選手交代でアストン・ビラはシステムを変更。4‐2‐3‐1の形を採ってきた。このシステム変更は合理的だったと思う。守備だけを見れば、全く機能していなかったトップを1枚削る。その代わりに中盤の枚数を増やして1列から2列へ。結果としてトップと中盤との間に前の3が引っ張り出されても、後ろの2がDF前にしっかりといるから大丈夫って形。

でも、実際にはそれほど安定感が出たわけではなかった。それは守備を後ろの4‐2に任せる部分が大きくなってしまったから。確かにマンUのSBが積極的に攻撃に出てこなかったから、数的には4‐2で守れないことはない。でも、前線でポジションを代えまくる相手に対して4‐2は心もとない。特に中盤の2の薄さが目立って、結局はDF前でボールを受けられてしまうシーンは減らなかったと思う。後半途中にマンUの方もシステムを変更して、SBの攻撃参加を活発にしながらサイドをより活性化させても相変わらずアストン・ビラは4‐2守備。結果としてサイドから斜めに入ってきたルーニーが完全にフリーっていう4点目みたいな状況が多々生まれることとなった。

というわけで形勢は圧倒的にマンU有利だった今回の試合。結果を見ても4‐0でマンUが圧倒した。でも、上にも書いたとおり立ち上がりはアストン・ビラの方が良さを見せたのも事実だったと思う。そして、その原因はアストン・ビラの側がめちゃめちゃよかったっていうよりも、マンUがめちゃめちゃ悪かったっていう方に求められる。今回のマンUの立ち上がりは明らかに何かがおかしかった。そのおかしさを一言で表すならば4‐4‐2への戸惑いだった気がする。おそらく、久々の4‐4‐2を使ったこの試合。どうやって守備をするのか、どうやって攻撃をするのか忘れてしまったんじゃないかっていうぐらいに立ち上がりの内容はひどかった。

そのスタートはまず、攻撃から始まってる。攻撃のまずさについては4‐2‐3‐1システムに変更する直前の悪さと大きくは変わらなかった。要するに、なぜか縦縦への急いでしまう現象。今回の試合でも同じように、そういう縦へ急ぐ現象が見て取れた。相手の切り替え後のプレッシャーがそれなりに厳しかったのは上にも書いたとおりだけど、別につなごうと思えばつなげたレベル。にも関わらず、低い位置で保持せずに、早く前線に当てようとする意識が強まってる。

こういう点については後で詳しく書くけど、4‐2‐3‐1よりも4‐4‐2の方が縦への意識が強いのは間違いないと思う。それは中盤の厚さの影響もあってのこと。ただ、4‐4‐2システムでもなんでもかんでも縦へ縦へっていう意識ばかりではない。これは今回の試合の途中からの流れで見て取れた部分。ただし、今回の立ち上がりを含めて悪いときのマンUは例外なく縦を急ぐ様子が見られるのは確かだと思う。

とりあえず、そうやって縦を急いでいた立ち上がりの時間のマンUについて見てみる。縦を急ぐマンUの攻撃ってのは、要するに前線の4人でなんとかしてねっていうやり方。スペースがあればあるほど持ち味を発揮できる前線の選手たちだから、相手の守備のバランスが整う前にそこを使おうとする考え方自体は悪くない。ただし、相手の守備陣にとっても狙いがつきやすいってのを忘れてはいけない。いつでも同じように縦にボールが来るならば、そりゃ相手も狙ってるよって話。それに、上にも書いたようにアストン・ビラの方は攻撃の切り替え後の守備はいい形で効いてたし。

というわけで、アストン・ビラがマンUの縦パスを途中で引っ掛けるシーンが多くなった。そのときにマンUの守備が致命的な状況に陥る。マンUの守備は両極端。前線でやるか、後ろで跳ね返すか。要するに攻撃からの切り替え後の守備がかなりのウエイトを占めてる。でも、縦に急いだマンUの前線は明らかに薄い。しかも、そういう前線の選手の前でボールを引っ掛けられてる。よって、重要な守備の勝負どころである前線の守備が全く機能しない状況。

じゃあ、後ろの守備はどうかって話になるわけだけど、こっちもかなり危険。何しろ攻撃への切り替えの縦パスが引っ掛けられてるわけだから、守備のバランスがいいわけがない。それにCMFが攻撃へ行こうと前線に向かってるシーンも多かった。結果としてバランスが悪いだけじゃなくて、枚数的にも4‐1っていうかなり危ない状態で受けなければならないシーンが多発。そんな状況で守備の勝負に行けるはずもなく。勝負に行って外されたらたまったもんじゃないから。結果、ズルズル下がる。ラストはクリアが精いっぱい。よって立ち上がりのアストン・ビラのCKの多さがかなり目立ってた。

さらにさらに、今回の試合の立ち上がりのマンUは局面局面での守備のあいまいさも目立ってたと思う。アストン・ビラの攻撃は最初にも書いたようにトップに当てることが最初の目標になってる。今回の試合に限って言えば、受ける役割を果たしたのはカリュー。カリューがかなり自由に動き回って効果的に引き出しを行ってたのは事実ではあったけど、あまりにも簡単に起点にさせすぎてたと思う。カリューへのボールの入りどころに対するプレッシャーが全く効いてなかった。

高い位置で効果的に引っ掛けて、しかも簡単に狙いどおりにトップに当てられたアストン・ビラ。当然のように攻撃がうまく回った。カウンター的に一気に攻めきるシーンも目立ったし、深い位置に1つ起点を作れることで後ろからの攻撃参加も活発になった。ボールの近くで関係性を作る人数の多さ、さらに攻撃の厚みはマンUのそれよりも明らかに質が高かった印象。

そして、マンUの立ち上がりの守備はそういう相手の攻撃の厚みに対してもうまい対応ができてなかった。相手のCMFなり、SBなりが後ろから出てきてもマンUの前線の選手が全く戻ってこようとしない。4‐2‐3‐1システム変更後のマンUの守備ブロックは4‐3で守ることが多かったから、今回の試合では久々に4‐2で守るマンUを見れた印象。全体のバランスが悪い、局面が微妙、ラストブロックが薄いっていう問題点を抱えまくりの立ち上がりのマンUの守備だったと思う。ついでに、そこに至る縦急ぎ攻撃もなんとかしたいところだった。

こういう最悪の流れからマンUが抜け出したのはアストン・ビラのおかげ。例の4‐2の間にスペースが出来上がったことが大きかった。これによって4‐2の間でCMFが浮く状態になったってのは上にも書いたとおり。そのCMFの場所を経由させることで、中盤をすり抜けて前線の4に向かっていったボールの縦のスピードがおさまった。要するに落ち着きがもたらされたってこと。加えて、余ったもう1枚のCMFが前に出て行くシーンが増えたってのも上に書いたとおり。結果として前線の4枚だけに任せるような攻撃からの脱却を図ることができたと思う。

ただし、SBは相変わらず攻撃には積極的ではなかった。それまでの時間は縦に急ぎすぎて追いつけないって側面があったんだろうけど、この時間は出ていくタイミング自体はいくらでもあった。だから、たぶん奪われた後の怖さがあったんだと思う。何しろこの時点ではまだ、前線が守備の助けに来てくれてなかったから。CMFが1枚出て行ってしまっていることを考えると、SBまで攻撃に出ていると、奪われた瞬間に大変なことになるし。それから、それまでと比べてマシになったのは言っても、やっぱり中盤であまり時間をかけずに縦を急ぐ意識自体が高かったのも要因の1つだったかもしれない。この時間の縦への意識は上に書いたとおり、出し手も受け手も浮いてる状況での意図があったものだったから、それほど悪かったとも思わないけど。

そんなこんなの流れの中でマンUが先制点を奪う。この得点以降、遅ればせながらやっと守備の方に修正が加えられた(攻撃が一足早く修正されたのはここまで書いてきたとおり)。それまでに悪かったところを一新したイメージのこの修正。やっと4‐4‐2のときの守備のやり方を思い出したかっていうイメージ。この修正以後はそれまでの不安はどこへやら。相手にほとんどいい形を作らせない展開となった。

その修正の1つとしては、まず、前線の選手が戻ってくるようになった。相手のSBの上がりに対して、Cロナウド(ポジションチェンジ中のルーニー)とかギグスがしっかりとついて来るようになった印象。本当の意味の4‐2でてんてこ舞いだった後ろの選手として見れば、これほど有難いことはなかったと思う。同時に2トップを縦関係にして、トップ下のスペースをテベスが埋めることになった。2トップが縦になるときのマンUは前線も守備を頑張るマンU。

テベスはそれまでの時間も自分の前に対してがんばって守備をしてたけど、それが全く報われてなかった。誰もその後に連動してきてくれなかったから。そんなテベスがトップ下の場所に入って、自分の後ろに対する守備を始めてからは目立ちまくり。守備で人が足りないところに助けに行きまくってたのが印象的だった。そして、そうやってテベスが守備で下がってきたことで攻撃の奪った後の攻撃の縦急ぎも減少。下がっていたテベスに1度預けて落ち着かせてから、しっかりと組み立てるってやり方が多くなったと思う。もちろん、チャンスがあれば一気に縦に進んでカウンターを仕掛けるわけだけど。

これによって全体のバランスが回復気味のマンUの守備。さらに、局面での守備の改善が大きかった。相手ボールに対してしっかりとチェックを仕掛けようとする姿勢が見られるようになった。1つ1つがあいまいだから、その実効性は甚だ疑問だったけど、まあ守備意識が高まったってことで。それに、出し手に対する守備がある程度ルーズでも、後ろがきっちりと対応するようになったのが大きい。入りどころに対して距離を詰めた対応が目立った。そして、今や中盤に厚みが生まれてるマンUの守備ブロック。入りどころに対する最初の厳しい対応に対して、前後での挟み込みが目立つようになった。4‐2じゃ無理なこういう挟み込みが多くなったのが、ブロックのバランスが改善された証拠。結果として相手のカリューは全く目立たない存在になってしまったと思う。

さて、ここからは4‐4‐2か4‐3‐3(4‐2‐3‐1、4‐1‐4‐1)かって話に移ろうと思う。今回の試合では4‐4‐2を採用してきたマンU。どっちを使うかをどうやって決めてるのかが、まずは問題。選手のローテーションの意味合いもあるだろうけど、個人的には守備を考えての面が大きいんじゃないかって気がする。ここまで書いてきたとおり4‐4‐2の守備は4‐2になりがちなマンU。それに対して、4‐3‐3だと4‐3ブロックを作れる安定感がある。もう1つシステム合致を作るって意味合いもあるかもしれないけど、それは二次的かなって気がするし。実際に4‐3‐3を使ってきた試合は、同等以上のチームとの対戦が多いと思う。

さて、今回の試合では4‐4‐2を利用してきたマンU。ただ、途中から4‐3‐3へと変更を加えてきた。変更を加えたのは、後半のファーディナンド→ハーグリーブス、エブラ→オシェイ、キャリック→アンデルソンの交代以後。メンバー的にはそのまま4‐4‐2でもできたんだろうけど、形は4‐3‐3っぽいものに変わってた気がする。

っぽいってのは、はっきりしたものじゃなかったから。まず、最終ラインは単純にオシェイ-ファーディナンド-ブラウン-ハーグリーブス。その前にスコールズがいて、OMFの場所にギグスとアンデルソンが並ぶ形だったと思う。難しいのは前線の組み合わせで、左サイドにルーニーが出てたのは確かなんだけど、Cロナウドとテベスはどちらも真ん中っぽい場所でプレーしてた。ちなみに守備時はその2人を前線に残して、中盤を変則的にルーニー-ギグス-スコールズ-アンデルソンみたいな形にしてたと思う。普通の4‐4‐2だったら、アンデルソンを中に入れてギグスをサイドに出せばいいわけだから、この辺から単純な4‐4‐2じゃないだろうなってのが見て取れた。そして、何よりもやり方が大きく変わったと思う。

その変化は2、3点目と4点目を比べると分かりやすい。2点目はカウンター的な流れ、スコールズが攻撃のスタートとして左へ展開、自身は相手の4‐4の間に飛び出していく。その4‐4の間で受けたスコールズは次は右へ展開。そこで受けたCロナウドから一番遠いサイドのテベスへクロスって形。こんだけ左右に振られたら、相手は対応するのは難しかったと思う。3点目は相手のDFの前でCロナウドが方向を変えて、ウラに抜け出したルーニーへ。両方に共通してるのは縦のスピード。対して4点目。このシーンの前段階でマンUはかなりの長時間ボールを保持した。そうやって時間をかけたことで、両SBも高い位置まで上がってきて前線に超厚み。最終的には真ん中でのパス交換で相手を引きつけておいて、完全にフリーになったサイドのルーニーへの展開だった。

ここに4‐4‐2と4‐3‐3の違いが鮮明に表れてる。それはボールを保持できるかどうかってこと。4‐4‐2の場合は中盤で圧倒的にボールを保持するってことがない。その理由はある意味では簡単で、中盤がCMF2枚しか存在してないから。前線は変則4トップって形で動き回りながら、あくまでも受け手として機能する。結果として、後ろが供給役、前線はボールをもらって少人数でなんとかするって形になってる。よって、中盤の滞在時間が短く、結果としてSBの攻撃参加が少なかったのも上に書いたとおり。

対して、4‐3‐3の場合は中盤での滞在時間が圧倒的に長い。中盤の真ん中の場所がたった1枚でも増えた影響は、かなり大きい。そうやって中盤での滞在時間を延ばすことで両SBも積極的に攻撃に参加してくる下地ができる。そうやってSBが上がってくることで、1つ前のWGを中に押し込んでますます中盤を厚くするような相乗効果も生まれる。攻撃の厚みっていう意味では、こちらの方が4‐4‐2よりも圧倒してると思う。

ここまで見てみると、守備面と中盤の構成力っていう意味で4‐3‐3のが優れてるっぽいわけだけど、もちろん4‐4‐2の方が上回る部分もある。それは前線の流動性。上にも書いたけど、トップ下の場所を空けていることで入れ替わり立ち替わり選手が出入りしてくるっていう面白さがある。例えば4‐4‐2のときには本来のトップの場所だけじゃなくて、サイドなり、トップ下なりに積極的に顔を出していたルーニーが4‐3‐3変更後は右サイド張り付きになってたのが象徴的だと思う。全体として相手を混乱させることを考えたら、変則4トップの方が上。つまり、前線へのボールの供給のしやすさで言えば、明らかにこちらの方が上。相手は捕まえ切れないわけだから。

ちなみに個人的には4‐3‐3派になびきつつある。4‐3‐3導入当初はポジション固定っぽいやり方に抵抗があったわけだけど、こないだのローマ戦(この試合の後だけど)を見る限りでは4‐3‐3に4‐4‐2的な流動性の要素を組み合わせる下地もできあがってきたかなって思うわけで。あの試合は基本ポジショントップ下のハーグリーブスが一番目立ったのはサイドだったし。そうやってハーグリーブスがサイドに出ることが、トップ下の場所に出入りができるスペースを空けることにもつながってた。それに、上にも書いたように4‐3‐3の方が攻撃に厚みが加わる。4‐3‐3でSBを高く上げたことがリバプール戦で主導権を握ることにつながったのは、そのときにも書いた通り。そして、攻撃だけじゃなくて守備にも厚みが加わるってのが一番。4‐2なんていう不安定守備よりは常識にかなった4‐3の方がいいに決まってる。ビディッチ不在の現状ではなおさら。

ちなみに、4‐4‐2のマンUにあこがれたのが今回のアストン・ビラだった。攻撃ではトップと両サイドにFW登録の選手を使い、ポジションチェンジも活発化させてた。マンUほどの流動性が生まれてたかって言えば、そこまででははかったけど。さらに、見習わなくていい守備面までマンUを見習ったアストン・ビラ。守備の中で重要な部分を占めたのが攻撃後の切り替え。トップの守備は気まぐれ。途中からは4‐2で守ろうとする。本当にマンUのやり方をまねしたってことはないだろうけど、ある意味ではそっくりな2チームの戦いになった気がする。
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2008-04-15 Tue 17:14
リバプール×エバートン
<リバプール:4-2-3-1>
FW:トーレス
MF:バベル-ジェラード-カイト、Xアロンソ-ルーカス
DF:リーセ-ヒーピア-スクルテル-キャラガー
GK:レイナ

<エバートン:4-1-4-1>
FW:ヤクブ
MF:ピーナール-オズマン-アルテタ-Pネビル、カーズリー
DF:レスコット-ジャギエルカ-ヨボ-ヒバート
GK:ハワード

1つ前の試合でマンU相手に弱点を露呈してしまったリバプール。確かにマスケラーノが前半で退場になったっていう事情はあったものの、それ以前の問題としてマンUに完全に主導権を握られてしまったと思う。その要因は4‐2‐3‐1が4‐4‐1‐1になってしまうっていう大問題。サイド攻撃をリバプールに思い出させた4‐2‐3‐1システムへの変更ではあるけど、それが4‐4‐1‐1になってしまったら、サイドも何もあったもんじゃない。4‐4‐1‐1は完全先細りシステムだから。4‐2‐3‐1と4‐4‐1‐1は紙一重なわけだけど、その実質的な差の大きさを感じさせられた試合になった。それを踏まえての今回のエバートン戦。

リバプールの基本的な守備のやり方はシステム変更後と変わらず。1度自陣に組織を作った上で、入ってきた相手ボールに守備をするっていうもの。実は今回の試合で守備が一番機能したのは、そういう受ける体制を作った時ではなかったのも事実だけど、それは後の話。とにかく、ブロック内に入ってきたボールには忠実に1つ1つのチェックを繰り返し、相手に前を向かせないような守備が目立った。そして、そういう1つ1つのチェックに対する周囲の協力体制も相変わらずうまく機能してた印象。

もちろん、エバートンもそういうリバプールの守備のよさを知らないわけがない。何の工夫もなく相手のブロック内に入って行ったら、完全にリバプールの質の高い守備網に引っかかってしまうに決まってる。というわけで、マンUと同じアプローチに出た。それはリバプールの守備網に入り込まず、それを飛び越してしまうって考え方。要するにロングボール1発で攻撃のスタートが切られることが多かったと思う。

その1発のボールでターゲットになるとは1トップに入ったヤクブ。エバートンの狙いは簡単。ヤクブの頭にボールを蹴る。ヤクブが競ったセカンドボールを2列目が拾う。4‐1‐4‐1システムを使っているだけに、バランスが崩れていない限りはヤクブのすぐ下の2列目に効果的に人数をかけられる。だから、1発で距離を稼いでおいて、それを拾うって相手ゴールに向かうって考え方は合理的ではあったと思う。そのゴールに向かうアプローチの中でサイドへの展開があるのがエバートンの攻撃のやり方。整理すると、蹴って拾ってサイドへ展開、そしてゴール前へ。これがエバートンの攻撃。

ここまで見たイメージとしてはマンUのアプローチと大きくは違わないって言ってもいい。マンUもリバプールの守備網を飛び越すロングボールを多用したし、サイドを効果的に利用(SBを高く上げる)ことによってリバプールのSMFを押し込んだ。結果としてリバプールのの4‐2‐3‐1を4‐4‐1‐1にすることが可能になってたと思う。今回のエバートンも、基本的に前から追いかけないリバプールの守備に対して、CBがある程度持ち上がることが可能だったしサイドに数的優位を作るようなアプローチもできてたと思う。リバプールにしてみれば悪夢再来かって話。

でも、実際には悪夢再来にはならなかった。なぜならば、ここまで見てきた感じだとマンUのアプローチに似ているように見えるエバートンのやり方だけど、その1つ1つの本質を見ていくと微妙な違いが大きかったから。ただそれだけの単純な理由。でも、やりようによってはマンUみたいにリバプールを完全に4‐4‐1‐1にするようなアプローチも取れたんじゃないかなとも思うわけだけど。とにかく、マンUとエバートンとのアプローチの違いについて見ていきたいと思う。

まずリバプールの守備網を飛び越えるロングボール。今回の試合のエバートンはヤクブと相手のCBを単純に競らせる質のボールを蹴ることに終始した。要するに相手のCBの前で勝負するような質。そのロングボールの次のアプローチとして、2列目が拾ってサイドへ展開ってのがつながってるから、仕方ないことだったのかもしれないけど。とりあえず、こういうエバートンのロングボールの質に対してリバプールのCBは全く焦りを見せず。1つ前のマンU戦で単純なボールでことごとくウラに抜けられてたのと同じ面子とは思えない落ち着きぶり。よって、エバートンとしてはロングボールを跳ね返されまくり。もっと言えば、相手のラインを押し下げるプレッシャーとしても機能しなかったと思う。

だから、ヤクブが競ったボールを2列目が拾うっていう最初のプランが崩されたエバートン。それに跳ね返されたセカンドボールもほとんど拾うことができなかった。今回の試合ではこういう場面に限らず、セカンドボールはことごとくリバプールが拾ってた印象。球際の勝負ではリバプールがエバートンを完全に圧倒してた。そういう1つ1つの積み重ねが試合の流れに大きな影響を及ぼしたのも事実だったと思う。

ここで話を進めて、ヤクブが競ったボールをうまくエバートンの2列目が拾ったとする。相手が跳ね返したセカンドボールを拾ったってことでもいいんだけど。どちらにしても、1発のボールで距離を稼ぐってことが成功。この後は上にも書いたように、サイドへの展開が待ってる。距離を稼いで真ん中に起点を作り、サイドへ展開して仕上げに向かう。これがエバートンの攻撃のやり方だってのは上にも書いたとおり。ただし、狙いどおりに距離を稼いでサイドに展開しても仕上げまで行けるシーンは皆無に等しかった印象。

それはサイドに展開した後につなごうとするから。ここで思い出さなければならないのは、そもそも最初になんで蹴るアプローチをしたかってこと。もちろん、そうやってトップに起点を作って行くってのがエバートンのやり方だってのが1つ。ただし、上にも書いたように待ち構えるリバプールの守備ブロックの上を飛び越すため。そうやって相手の守備のよさを出させないため。そのために蹴って距離を稼げたのに、そのあとのアプローチが相手ブロック内でパスを回すってやり方。これじゃ本末転倒。

さらに、そのサイドへの展開が徹底して左サイドに偏りまくり。もともとエバートンの攻撃が左肩上がりなのは事実。これまで見た数試合でも、左のピーナールが攻撃において大きな役割を果たすことが多かった。左のピーナールと右のPネビルが大まかに攻守の役割を分担してる様子も見て取れたと思う。それは今回の4‐1‐4‐1だけに限らず、本来的な4‐4‐2でも(特に今回のようにPネビルが右に入った時は)。それを考慮した上でリバプールは右SBにキャラガーを使うっていう選択をしたんだと思うし。

エバートンの選手たちはその左サイドに起点を作り、そのサイドでショートパスをつなぎながら崩しを図ろうとする。律儀なエバートンの選手たちは、そのパス回しのために左サイドに数的優位を作ろうとする。ピーナール、レスコットっていう基本ポジションが左サイドの2人に加えてヤクブも左サイドに流れまくり、さらにアルテタかオズマンか(余った1枚はゴール前に行くことが多い)もそのサイドに参加してくる。そうやって基本的なトライアングルをいくつも作りながら、ショートショートでつないで行こうっていう姿勢が見て取れた。

このサイドでのトライアングルづくり自体は悪くない。サイドを崩したとしても中に人が少ないんじゃないかっていう問題はあったもののの、局面だけを見ればいい形のトライアングルづくりで次々にパスを回しながら崩して行けるような下地があったのは確か。でも、相手はリバプール。エバートンとしては、リバプールの守備ブロックの中でパスを“つなぐ”ってことがどれだけ難しいかってことを思い知らされたんじゃないかと思う。

何しろ左サイドにみんなが集まっちゃってるエバートン。よって選択肢はショートパスのみ。リバプールとしては勝手に攻撃のエリアを制限してくれてありがとうってな感じか。エリアが制限されてるから、1つ1つのチェックをより厳しくすることができる。ついでに、サイドっていう場面設定も守備の勝負に思い切って行ける要因になってたかもしれない。そうやって1つ1つのチェックが厳しく機能する上に、リバプールらしい周囲が協力しての守備のよさが発揮。カイトが戻り、CMFが協力し、さらにジェラードまでが参加しながら相手のボールを追いこんでいった。そうやって囲い込み、挟み込みに行くシーンも多発。エバートンのパス回しは分断されまくってしまったと思う。

元に戻って考えてみると、この左サイドに偏ったってこと自体がマンUとの大きな違いだって言ってもいい。1つは上に書いたようにエバートン自身で勝手にプレーエリアを制限してしまったってこと。そして、もう1つは本質的に4‐2‐3‐1を4‐4‐1‐1に押し込むのが不可能だってこと。確かにエバートンが左サイドから攻めまくったことで、リバプールのカイトはかなり低い位置まで守備に戻るシーンが多くなった。

でも、全く攻め込まれない逆サイドのバベルにはプレッシャーがかからず。相手が左サイドに寄るのに合わせてリバプールの守備ブロックも右サイド寄りになっていたから、それをカバーするために1つ低い場所にポジショニングするような様子は見て取れたけど、守備負担は皆無だったって行っていい。結果としてリバプールは攻撃への切り替えにおいて、完全な先細り状態にはならなかったと思う。むしろ、効果的にサイドを使ったカウンターを繰り出してたと言ってもいい。それについては後で詳しく。

さて、ここでちょっと話を変えてみる。上にもちょっと書いたように本来的には4‐4‐2を使っているはずのエバートン。そのエバートンの今回のシステムは4‐1‐4‐1。ケーヒルもAジョンソンも怪我っていう苦しい台所事情がそのままシステムの変更に現れたのが今回の試合。実際にベンチにもFWの選手は入っていなかった。そして、システムが変わった影響を少なからず感じさせられたのが今回の試合のエバートンだったと思う。

攻撃ではヤクブの負担が大きくなったと同時に、前線にギクシャク感が生まれた。2トップから1トップになった影響がダイレクトに出たイメージ。ヤクブは最初に起点になるところから、組み立ての手伝いまでに働き、逆に本来のゴール前でのプレーがほぼ皆無に。だからと言って、代わりにゴール前に入ってくる選手もいないから中が薄くなってしまったってのは上にも書いた現象。本当は単純な2トップのときには2人で分散されてる役割が単純に全てヤクブに押し付けられてたイメージ。前線の選択肢がヤクブしかいなかったことでリバプールがどれだけ楽に守れたかって話。2列目との関係性がうまく築けてなかったのも痛かった。象徴的なものとしては、ヤクブを飛び越して2列目が出ていくなんてシーンは皆無だった気がする。

こういう攻撃面でのギクシャク感に加えて、さらに痛かったのが守備が効果的に機能しなかったことだったと思う。エバートンは守備の質が高い。前は相手の最終ラインに対してまで積極的にプレッシャーをかけていき、そうやって前で制限が効いていることをベースとして後ろがしっかりと人を捕まえて守る。それがエバートンの守備のやり方。実際にマンU戦、アーセナル戦でもこのやり方がかなり機能してたことを考えれば、その質の高さが分かると思う。そして、今回の試合ではそういう守備の質がシステム変更によって下がってしまったような気がした。

まず1トップのヤクブが最初にセットする位置は確かに高い場所。リバプールのCBはそういうヤクブのポジショニングに対して、ボールを持ちあがることができなかったのは確かだった。でも、ヤクブの守備がいつものように後ろにつながる質だったかって言えば微妙なところ。確かにポジショニング自体は高い場所だったけど、いつものように能動的に守備をしてたイメージはなかった気がする。だから、自陣深い位置に釘づけにされたリバプールCBもボールを保持すること自体は自由だった。2トップから1トップに変化したことの意味は、守備のスタートのところを考えるとかなり大きかったと思う。

とはいえ、エバートンの守備には後ろがしっかりと人を見るっていうもう1つのベースがある。これに関しては2列目のところはしっかりと機能してた印象。リバプールの両CMFが効果的に後ろからのボールを裁くシーンがなかった(本当に皆無だったって言ってもいい)ってのが象徴的。SBも抑えられてた今回の試合のリバプールの攻撃では“組み立てる”っていうようなやり方が採られてなかったと思う。よって、リバプールの攻撃はCBから蹴るかカウンターかの二者択一になってた。

ただ、このリバプールの攻撃が案外機能する。カウンターは後で書くとして、CBから直接前線にボールを送るってやり方でも思ったよりもボールを効果的に前線に供給することができてた。その要因の1つはリバプールのやり方。真ん中真ん中へと入り込んでしまった悪いときのリバプールはどこへやら、中と外に効果的にボールを散らしてた印象。前線の選手もリバプールにしてはポジションにこだわらない引き出しを行ってたと思う。結果としてCB→FWっていう相手にとっては守りやすい単純なボールの比率があまり高くなかった。

ただし、こういうCBからのボールが通った要因はエバートンの守備のやり方にもあったと思う。トップのところでいつものように効果的に守備のスタートが切れなかったエバートン。結果としてリバプールのCBがボールを持つこと自体は難しくなかったってのは上にも書いたとおり。そうやって制限がかかていない状況だったから、リバプールの方は相手の中盤の4の背後に簡単にボールを供給することができた。エバートンとしてはその中盤の4のところが、守備における1つのフィルターとして機能するはずなわけだから、そこを簡単に飛び越されるってのは痛い。

そして、そうやって中盤の4の後ろに入り込まれるとそこにはアンカーの1枚だけでケアしなければならない広大なスペースが広がってる。後ろが人を捕まえてるとは言っても、あまりにも簡単に1つ前のところをすり抜けられてきたら難しいわけで。よってリバプールとしては受け手も出し手も浮いているような状況を使うことができてた印象。CMF、SBを経由させずにシンプルなボールをSMFに出してそのまま攻めきるっていう流れが目立ってた印象。

ただ、実際のところリバプールが本当に効果的に攻撃を仕掛けたのはカウンターの流れだった。そして、このカウンターの流れに1つの工夫というかパターンのようなものが見られたと思う。簡単に言うならば、トップへ当てる→落とす=全体の押し上げ→左サイドへ=右サイドの押し上げ→ゴール前へor逆サイドへ展開っていうもの。この一連の流れからの攻撃が多かったこと、多かったこと。

その理由は簡単で相手との関係によるもの。相手のシステムは4‐1‐4‐1。DF前にはカーズリーが1枚。そして、攻撃時には近さを作ろうと頑張るエバートン。近さを作るためには前線に人数を入れることが重要なわけで、結果として後ろが薄い状況になってる。だから、カウンターの流れでリバプールが奪って→トップへっていう単純なボールを入れやすい状況が生まれてたってこと。そして、そうやってトップに当てることで後ろの押し上げを促進させた。ちなみに、こういう流れが多かったからリバプールのCMFは後ろからのボールよりも前からのボールを裁くシーンが目立ってたと思う。

じゃあ、なんで1度落としたボールを左サイドに展開したかってこと。これも相手との関係による部分が大きい、上にも書いたように、エバートンの攻撃は左サイドに偏りまくり。よって、カイトがかなり押し込まれたってのも上にも書いたとおり。つまり、リバプールは右サイドだけを見ればマンU戦のような4‐4‐1‐1的な状況に陥ってたってこと。逆に左サイドのバベルは守備負担は少ないし、守備で押し込まれてることもない。だから、カウンターでそのサイドを使うことが多くなったってわけ。

そして、そうやって左サイドから攻めている間に右サイドのカイトが一気に押し上げてくる。がんばり屋さんのカイトは今回の試合でも守備から攻撃までかなりの上下動を繰り返してたと思う。その上がってきたカイトを利用して効果的にサイドを変えたり、そのままバベルが左サイドを侵攻して、カイトはトーレスと2トップ的な場所に入るってやり方が多かった印象。

このカウンターでも見られるように、今回の試合でのリバプールはより前にボールを運び、同時により前に人を入れるっていうアプローチが効果的に機能してた印象。カウンターの流れで言えば、トップに当てることで後ろの上がりを促進したり、左を攻めてる間に右のカイトが上がってきたりってのがそれ。しっかりとした組み立てが見られなかったとは言っても、そうやって前線に効果的に厚みを加えることに成功してた印象。

これと関連して局面でも面白いアプローチが見られた。サイドのやや低めでカイトがボールを持ってるシーンがスタート。その前のスペースに真ん中の場所からジェラードが流れてくる。カイトはそのジェラードにボールを預けて、斜めに真ん中に入り込む。そのカイトへジェラードからリターン。こういう展開がジェラードをトーレスに変えたパターンも含めていくつか見られた。この展開の中では結果的にサイドに1枚、中に1枚っていう人の数は変わってない。でも、2つのパスのみでボールも人も、より深い位置に入り込むことが可能になってたと思う。

こういうシーンのジェラードに代表されるように、前線の動きが活発だったのも今回の試合のリバプールの特徴だったって言える。ジェラードは真ん中にこだわらずにサイドに流れたりしながら進出気没的に動きまわって、フリーでボールを扱えるシーンが多かった。このときにルーカスが1つ上に入り込めていければもっと攻撃に厚みが加わった気がするけど、今回の試合のルーカスはボールコントロールとかパスの質を含めて精彩を欠いていた。

こういうジェラードの動きに加えて、トーレスも真ん中へのこだわりが減少してたと思う。前回の試合ではチーム全体が押し込まれてる中で孤軍奮闘、前線でいろんなところに動き回ってたトーレスだったけど、今回の試合でもその余韻が残ってたイメージ。もともと真ん中にこだわるタイプの選手だって印象が強いわけではないけど、リバプールではそういう形になってることが今までは多かった。そこに柔軟性が出てきたってのはトーレス自身の変化っていうよりもリバプールのチームとしての変化かもしれない。カイトも4‐2‐3‐1導入当初とは違って、サイドにこだわらずにFWの場所に入り込むシーンがかなり目立ってたし。

そもそもリバプールの攻撃の印象は平行移動的なイメージが強かったわけで。それがここに来て変化してる印象。そもそも平行移動的な攻撃は次の守備を考えてのものだったと思う。高い位置から追いかけまくって中盤で勝負をするリバプール。そのためには素早く4‐4‐2を作ることが必要だった。それができないと、守備の勝負どころをすぐに通り過ぎられてしまうから。だから、攻撃後にすぐに守備ブロックを作れるような意図があったんだと思う。

それに対して、現状のリバプールの守備ブロックは高い場所で何かをしようとするやり方ではない。というか、低い位置にブロックを作って受ける形。だから、攻撃からの切り替えである程度の時間を稼いでおいて、あとは自陣にブロックを作ってしまえばいいだけ。攻撃後すぐに守備を開始して、その後をすぐに連動をして行くっていうやり方は求められてないと言っていい。今は切り替えでの必要最小限の時間稼ぎができてばいいってイメージか。だからこそ、攻撃でポジションを動かすってのが可能になってきたのかもしれない。

ちなみに、今回の試合ではリバプールの攻撃後の守備が機能しまくり。これが上に書いた本当の守備の勝負どころとして機能してた。得点シーンもある意味ではCK後の切り替えで高い位置で奪ったところかだったし。球際で勝ってた今回のリバプールだったから、切り替えのところで1つ1つを厳しくやれば相手はかなり余裕がなくなってた。どちらかというと、イメージがマンUとかアーセナルみたいなイメージになってきてる。攻撃後の切り替えで守備の勝負どころを作り、だめなら下がって受動的な守備っていうか。攻撃に流動性を活用する上では、理にかなった守備のやり方なのかもしれない。とはいえ、リバプールの流動性はアーセナルとかマンUと比べるとまだまだ常識的ではあるけど。

時系列に戻って後半の流れについて。後半になるとエバートンもさすがにやり方を変えてきた。1発ボールを跳ね返され左サイドに偏ったパス回しを分断されまくりの前半の流れはさすがにきつかったんだと思う。まず、きっぱりとロングボールをやめた。ヤクブには相手のCBと競る代わりに、そのCBを外したサイドで起点になるような動きが求められたと思う。前半はあくまでも真ん中で最初の仕事をしてから、サイドの助けに行ってたヤクブだったけど、後半は最初からサイドに流れるシーンが多かった。ただ、ヤクブがいくらボールを引き出して起点になっても近くには誰も人がいなかった。2列目が効果的に絡めてない証拠。完全に孤立してしまうシーンが目立ったと思う。

ちなみに、ヤクブは左サイドに流れることが多かった。よって、もともと左サイドに入ってたピーナールの(が)邪魔をしてはまずいってことでピーナールは右サイドへポジションを変える。前半とは違って左右にバランスよく起点を作れる下地ができたことになるわけだけど、逆に前半とは左右で戦力が分散してしまう結果がもたらされた気がする。どちらのサイドも決定的に目立つことができずに、ピーナールは結局途中で交代することとなった。前半の分断されまくる左サイド寄りのパス回しか、後半の左右に起点を作れる気がするけどどっちも中途半端になってしまった流か。どちらもあまり可能性を感じさせなかった。

ただし、そんなエバートンも守備の方はある程度の修正を図ってきた気がする。あくまでも気がする。なぜならば、見えない場所だったから。具体的に言えば相手のカウンターをどうやって防ぐかっていう部分。前半のリバプールのカウンターの流れの中ではトップに当てるってのが1つのポイントになってたわけだし、好きなようにそこに当てることができてたのも事実。でも、後半はその最初のところがほとんど機能しなくなった。上にも書いたように見えないところだったから、実際にはどうだったのか分からないけど。でも、時間とともにトーレスがサイドに流れる時間が増えたのを考えると真ん中のところが窮屈だったんじゃないかって気がする。

とにかく、真ん中に1つ当てることができなくなったリバプール。結果としてサイドをそのまま進んでくって形が多くなった。これでは後ろの押し上げを促進できないわけで前は薄い。しかも、個人技頼みになるのも否めない。前半のようにカウンターでゴール前まで攻め込むシーンが目に見えて減ってしまった。エバートンは前半からの流れと同じように効果的に攻撃ができない。リバプールも前半のように攻撃できない。ゴール前のシーンが恐ろしく少ない後半だった。

とりあえず、今回の試合のリバプールは前回のマンU戦のような問題に陥らなかった。相手が違ったとは言え。流れの中で4‐4‐1‐1っぽい形になってしまっても、幅を使ったカウンターを仕掛けることができてたと思う。ジェラード(トーレス)に当てて→落とす=トーレス(ジェラード)がサイドへ流れる→サイドへ展開。っていうような流れが見られたと思う。そのままだと先細りの前線1‐1でも幅を十分に活用できてた印象。ただし、後半の流れを見ても分かるようにスタートとしてのトップ当てが機能しないと、全体が停滞してしまったわけだけど。
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2008-04-11 Fri 15:36
マンU×ローマ
<マンU:4-1-4-1>
FW:テベス
MF:ギグス-アンデルソン-ハーグリーブス-パク・チソン、キャリック
DF:シルベストル-ファーディナンド-ピケ-ブラウン
GK:ファン・デル・サール

<ローマ:4-2-3-1>
FW:ブチニッチ
MF:マンシーニ-ペロッタ-タッデイ、ピサーロ-デ・ロッシ
DF:カセッティ-ジュアン-メクセス-パヌッチ
GK:ドーニ

前回の試合の記事の終わり。ローマが勝つためには後先考えずに前線から追いかけまわすような守備をすべきだって書いた。ローマの守備は引いた4‐4ブロックでバイタルをつぶすってのが本来のやり方。今回の状況でそういうやり方を採ったらどうなるか?おそらく、マンUは無理に攻めていかない。ゆっくりとボールを回しながら時間を使い、ここぞのチャンスでゴールに向かっていくってやり方を採ってくるはず。そうなったらもう、最低でも2点が必要なローマは絶望的。というわけで、本来の自分たちの形とは違ってでも自分たちから積極的に守備をするやり方が要求されたって言っていい。そして、それはマンUにとって苦手な部分だってのも今まで何度も書いてきたとおり。

さて、実際にローマはどういうやり方を採ってきたか。後先考えないレベルで前線から追いかけたかって言えば、そうではなかった。だからと言って、いつものように4‐4で受けるような形を採ったわけでもない。その中間的なイメージ。そもそも本来のローマも守備のブロックを作った時点では、前線の3のフィルターで引っ掛けられればいいなってやり方をまずは採ってくる。ただ、基本的に重心は後ろに傾いてるから、引っ掛けられればラッキーっていう程度。その引っ掛けられればいいなっていう意識を高めたってのが今回の試合だったように思う。

まず、いつもとの違いが見られたのがFWの守備意識。トッティがトップに入ろうが、ブチニッチが入ろうが、ローマのFWはそれほど守備の役割を求められてないってのがこれまで見られた形。中盤の3の前にただいるだけっていう形が目立ってた。だからこそ、中盤の3で引っ掛けられればいいなっていうレベルの根拠の薄い形になってしまっているわけだけど。そのブチニッチが今回は守備のスタートとして機能しようっていう意識を見せてた。

ただし、深い位置の相手の最終ラインまで追いかけまわそうっていう意識までは見られなかったと思う。あくまでもローマの守備は4‐2‐3‐1のブロックを作るところが最初。そのブロックを自陣の方に引きつけた状態で形成。その上で、ある一定の場所に入ってきた相手のボールに対して守備を開始するっていうようなイメージ。この辺が後先考えずにっていう守備の質ではなかったっていう部分。ただ、それでもブチニッチが守備のスタートとして機能し、相手の最終ラインに対してプレッシャーをかけてくれるってのは大きな意味を持ってた。

いつもはトップの守備が機能しないローマ。そして、基本は4‐4バイタルつぶしに置いてるローマ。最初に4‐2‐3‐1のブロックを作り、中盤に3のフィルターを築いたとはいっても、その2列目の選手たちの意識は後ろに向いてると言ってもいい。前の守備には根拠がないから、頑張っても無駄に終わってしまう可能性が高いわけだから。よって、中盤の3が高めの位置で効果的に機能することができない。相手がもたついたときに、その3から選手が出て行ってスイッチを入れるようなやり方が見られるのは事実ではあるけど。

それに対して、今回はブチニッチが守備に参加。よって、前の守備に根拠が生まれたこととなる。結果として2列目の3枚の前への守備意識が明らかに高まった。敵陣内の相手に対しても、次々とプレッシャーをかけに飛び出していくシーンが多かった。そうやって、相手のボールに対して自分たちから能動的に守備を開始することが多くなった印象。結果として今回のローマは4‐4‐1‐1よりは4‐2‐3‐1で戦う時間が長くなったと思う。途中で一瞬4‐4‐1‐1になった時間帯があったけど、それは後で詳しく。

とにかく、前線から能動的な守備が見られたローマ。この守備が狙いどおりに機能したならば、ローマのペースになったかもしれない。攻撃における後ろからの飛び出しがいいローマ。低い位置の4‐4で奪ったときでも、カウンターの流れで人数をかけられるローマ。そんなローマが高い位置で奪ってショートカウンターを仕掛けまくる流れになれば、それはマンUにとっては歓迎できないこと。どちらにしても、高い位置から積極的に守備を仕掛けられたマンUの攻撃が少なからずうまく回らなくってことは想定できたと思う。

でも、実際にはそうならなかった。確かにローマが高い位置の3のフィルターで引っ掛けるシーンも1つ2つは見られた。でも、基本は逃げられまくった。それにマンUの方も相手の守備に対して焦りを見せなかったように思う。追いかけられて蹴ってしまうシーンがあったのは事実だったけど、それがつながった。前が準備できてないのに仕方なく蹴ってしまうような、いつものマンUのロングボールではなかったと思う。前は準備できてたし、後ろからのボールの質も高いってことが多かった。前にマンUはロングボールの使い方が下手だって書いたけど、今回の試合を見るとすみませんって感じ。こうなってくると、逆に、縦に急いでどんどん効果の薄いボールを蹴りまくってたときは何だったんだって話になるわけだけど。そういえば1つ前に見たリバプール戦でもロングボールの使い方のうまさが目立ってた。

話を戻して。今回の試合でのマンU、そもそも相手のプレッシャーに負けて蹴りだしてしまうってこと自体も少なかったように思う。相手の前からの守備に対しても、落ち着いてつなぐ意識が見て取れた。つなぐ意識を持ちすぎて、相手の前線からの守備に引っ掛けられるってこともなく。そして、要所要所では“効果的な”ロングボールが供給されるわけで。ローマにとっては話が違うよってとこだったかもしれない。

ただ、その責任の一端はローマ自身の守備のやり方にあった。ブチニッチが守備のスタートとして機能し、2列目もそれに連動して前への意識を高めたローマ。でも、前への守備意識が高まってたのはこの前線の4枚だけだったようなイメージ。要するに前後で守備の分断が起こっていたようなイメージ。全体として間延び気味だったのが気になったし、何よりも前線の守備の後ろがついてこない。前で制限しても次が狙えてない。相手の選手は浮きまくり。よって、前線の選手が出ていっただけのギャップが残っていたことになると思う。

マンUはボールをそのギャップを送り込めばよかった。出し手の方は相手の前線からのプレッシャーによって完全には自由になってなかったけど、その代り受け手の方は周囲に人がいないような状況を作り出すことができたと思う。ギャップ探しがうまいギグスが相手のライン間でボールを受けるシーンが多かったこと多かったこと。それ以外でもマンUらしい前線の流動性をベースにしながら、相手につかまらない状況でボールを受ける選手が多々。ロングボールにしても、テベスがプレッシャーなしでそのままコントロールできるシーンが目立ったと思う。これがロングボールが効果的に前線に収まった要因。

そういうわけでローマは前線からの守備のギャップを突かれて、むしろ危険な状態に。いつもは4‐4で守ってるローマ。それが今や後ろだけがさらされた状態。前回の試合ではバイタルをつぶされてなかなかラスト1/3を崩せなかった、マンUだったけど、今回は恐ろしく簡単だった。相手の前線の守備を抜け出して、ギャップに入ってしまえば、あとはゴールに向かうだけ。立ち上がりからゴール前のシーンがかなり多い試合になったと思う。

こういう危険な状態をローマとしても放っておくわけにはいかない。時間が進むにつれて、守備のやり方を変更しながら対応した。大雑把にはこの後、2回の守備のやり方の変更があったと思う。それについては後で詳しく。とにかく、立ち上がりからローマが前回(いつも)とは違った守備のやり方を採ってきたっていうのがポイントだった。

対してマンUはどうだったかってことなんだけど、マンUの方も前回のローマ戦とは違った趣の守備が見られたと思う。前回のローマ戦では完全に受ける形を採ったマンU。もっと言えば、ベタ引きブロックが一番の守備の勝負どころだったと言ってもいい。そうやって状況によっては6‐3の超人数をかけた守備で相手の攻撃のラストを跳ね返し続けた。そのために1トップCロナウドの選択だったのかもしれないってのは前にも書いたとおり。そういうわけで1戦目ではどちらもベタ引きブロックをベースとした守備で、結果として逆に言えば両チームとも1/3がなかなか崩せないっていう試合展開になったわけ。

それに対して今回のマンUは立ち上がりのテベスの追いかけまわしが象徴的な守備のやり方。要するに前から積極的に守備をする意識が見られたってこと。ローマと同じく重点を後ろから前に移す変更。その理由は単純にアウェーとホームの戦い方の違いだったと思うけど。ただ、ベースの4‐4バイタルつぶしから大きな転換を図ったローマに対して、マンUの方はベースの部分は変わらなかった気がする。つまり、人につく意識が強い守備のやり方と、そのためのシステム合致の利用。その守備をどこから始めるかっていう部分だけが前回との違いだった。

守備を全体として前に置いたマンU。前回の試合では自陣深くで跳ね返し役になっていた中盤の選手たちが、今回は敵陣内で守備をする時間が長かったと思う。少なくとも立ち上がりは。その中で1つ1つの守備の意識が高まってた印象。前回は相手の流動性に混乱した部分があったとはいえ、1つ1つのチェックがルーズでシステム合致を効果的に使えたとは言えなかったマンU。それに対して、今回はシステム合致をしっかりと利用して、自分の対応する相手にきっちりとチェックをして行くやり方が多かったと思う。

これが効いた要因はここまで書いてきたように、守備の場所を1つ高いところに置いたからだったと思う。これが意味することは大きかった。そうやって守備に位置を高めたことで、相手の流動性が発揮されないような場所で守備をすることができたから。前回の試合では全員が自陣に引きつけられて守備ブロックを作ったマンU。前に対する守備意識も高くはなかった。結果としてローマの攻撃のスタートとなるボランチのところが浮きまくり。自由に組み立てができる状況だった。そして、ボランチが出し手としてしっかりと機能したローマは同時に流動性ベースの受け手が動き回る。結果として、出し手も受け手も浮いた状態で組み立てが行われた。逆にマンUは狙いどころが定められなくなって、下がるしかなくなった。最初からそういうズル下がりを念頭に置いてたのも確かだとは思うけど。

これに対して高い位置に守備の意識を置いたマンU。自分の前に対する守備意識も高かった。これによって、一番の効果が発揮されたのが相手ボランチに対する守備。しっかりとシステム合致上で対応する選手が相手のボランチにプレッシャーをかけていった。完全に浮いていた前回の試合と比べると雲泥の差。これによってローマは攻撃のスタートをうまく切れなくなってしまった。ローマの攻撃においてボランチが果たすスタートのところの役割が大きいだけになおさら。しかも、本当にキーとなるピサーロに対してハーグリーブスをぶつけられてたわけで。普通に考えたら、ハーグリーブスが底に入った方がしっくり来るのにも関わらず。

こういう状況の中で攻撃のスタートの要のところをつぶされてしまったローマの選択肢は2つ。サイドに起点を作るか、ブチニッチの頭か。前者は難しかった。高い位置に守備の意識を持っていったマンUは当然のようにサイドのところにもきっちりと対応してきたから。よって、ブチニッチの頭が多くなる。というか、とりあえず前線へっていうボールが多くなった。これでは前線の流動性も何も関係ない。

というわけで珍しく(?)守備の機能性を感じさせられたマンU。この守備もローマと同じく、段々と変質してくるわけだけど、それについても後で詳しく。ただし、いい形の守備にしてもシステム合致を利用した人ベースのやり方っていう意味ではいつもと変わらない。これは上にも書いたとおり。それよりも、今回の試合で興味深かったのは攻撃のやり方の面白さだった。

守備では4‐1‐4‐1のマンU。これはいつも見られる形。残念ながら相手が4‐2‐3‐1システムのチームとの試合ばかり見てるから、システム合致を作るためにこういう形を採ってるのかどうかが未だ判明しないけど。それでも、1つ言えるのは攻撃時の形は4‐2‐3‐1を採ってるってこと。スコールズ&キャリック&アンデルソンの組み合わせのときには、守備時はキャリックを底にスコールズとアンデルソンが前に入り、攻撃時はスコールズとキャリックの2枚が横並びになってアンデルソンがトップ下に入る。そういうやり方が今までは見られた。

それに対して今回の試合では攻撃時にも4‐1‐4‐1の形での攻撃になってたと思う。今までにも書いてきたとおり、トップ下に人を入れるべきか入れないべきかってのはマンUにとっては1つのポイント。普通に4‐4‐2で戦って前線の変則4トップの面白さを使ってもいいし、リバプール戦のようにトップ下に軸を置くことで中盤で正統パス回しが見られるって形もありうる。ただ、やっぱりトップ下の場所は空けておいて次から次へといろんな人が入ってくるってのがマンUには合ってるような気もする。そういう意味では4‐2‐3‐1よりも4‐4‐2の方がいいのかなって思ったりもするわけで。そういう風に考えてみると、トップ下が1枚から2枚に増えた今回の試合はどういう形になるのかってのがかなり興味深かった。

で、その結果どうなったか。結論から端的に言っちゃえば、トップ下が1枚増えたことでトップ下がいなくなったようなイメージ。トップ下が2枚になったことで、絶対唯一のトップ下がいなくなったイメージ。その2枚も流動性の波に押し込まれたって感じだった。今回の試合ではアンデルソンが動き方を今までとはちょっと変えたこと、それからもう1枚のトップ下がハーグリーブスだったこと(今回の試合のハーグリーブスみたいな動きができる選手が入ったこと)が大きな意味を持ってた印象。以下で、詳しく見ていきたいと思う。

まずはアンデルソンの動きの変化。今回の試合でのアンデルソンは全くトップ下の場所にこだわらなかった。実質的に底の場所で1枚になったキャリックを助けたり、テベスが流れたところに入り込んでFWになってみたり、ギグスと入れ替わってSMFに出てみたり。いろいろなところに顔を出す動きが目立ったと思う。これはトップ下が2枚になったからというよりは、このシステムに適用してきた結果っていうように見た方がいいかもしれない。

リバプール戦では絶対的なトップ下的に振舞っていたアンデルソンだけど、前回のローマ戦では意図的にトップ下の場所を空ける(同時に組み立てを手伝う)動きを見せ、今回の試合ではさらに幅が広がったイメージ。上にも書いたように、前線の流動性の波に押し流される(いい意味で)ようになってきたかもしれない。これによって中盤の厚みを維持しながら、トップ下の場所の出入りが激しいような一石二鳥的なやり方ができるようになるかもしれない。

そして、もう1枚のハーグリーブス。今回の試合では、このハーグリーブスの役割というか動きが効果的に機能していた。ひとことで表すなら受動的なイメージだったハーグリーブスの動きのよさが目立った。前線の選手がある意味では好き勝手に動くマンU。もちろん、それぞれがそれぞれの動きを見ながらっていう面があるからこそ、ここまで機能してるわけではあるけど。それでも、そういう前線の流動性に補完的に働くハーグリーブスの動きがさらに機能性を上げることに役立ってたと思う。

で、受動的っていう意味だけど、それは主体的に前線が動いてできたスペースにハーグリーブスが動くってこと。自分からっていうよりは、全体を見ながらっていうイメージが強い。だから、サイドのスペースに流れたり、トップの場所に飛び出してきたり。さらに、そうやって動くときに見ているのは味方の動きだけではないように思う。しっかりと相手のギャップを見つけられてた印象。だから、動いたハーグリーブスがフリーな状態でボールを受けるシーンが目立った。

相手としても、ハーグリーブスよりはギグス、テベス、パク・チソン、アンデルソンの方が怖い相手。どうしても、そちらに引きつけられる。加えて、動き回る4人。そういう4人の主体的な動きが相手の混乱を誘う。そういうところに、他の選手と比べれば意識を向けていないハーグリーブスが出て行く。絶好のタイミングで絶好の場所に。捕まえ切れるかって話だと思う。ローマの方は本当に最後までハーグリーブスだけは捕まえ切れてなかった印象。そして、最終的には決定的な仕事をされてしまった。

その決定的な仕事、つまり得点シーンは右からのクロス。この試合のマンUはとにかく右からの攻撃が目立った。もしかしたら、左からのクロスはなかったかもしれないぐらい。それはハーグリーブスが右SMF的に振舞うことが多かったってことにも関係してると思う。FWの位置に飛び出して行って決定的なチャンスに2つぐらい絡んだハーグリーブスだったけど、全体としては右サイド寄りでのプレーが目立った。右サイドにはもともとパク・チソンがいるわけで、さらにテベスが流れてくるシーンも多かった。よって右サイドには絶対的な数的優位。真ん中に人がいなくなることを防ぐために、アンデルソンとギグスは中寄りに入ってくるから、チーム全体が右寄りになってた今回のマンUだった。

立ち上がりはこういう右からの攻撃を中心としてマンUがチャンスを量産。最初にも書いたように、ローマの守備にギャップが多かったから、そこに入り込んじゃえば後は攻めきるのは簡単だった。真ん中から相手のブロックに入り込み、サイドへ展開、最終的にクロスっていう一連の中→外→中の流れが多かったのも効果的だったと思う。薄くなっているローマのブロックを揺さぶりまくった。スピーディーな流れでゴール前まで攻めきる流れが続いた。スピーディーにってのは悪いときのマンUのように縦に急ぐ状況ではなく。

そうやって攻めまくってる流れの中でもSBをあまり攻撃に参加させなかったのが、今回のマンUの特徴的な部分だったと思う。上にも書いたように、縦へ急ぐっていう状況とはちょっと違ったから攻撃に参加しようと思えばできたと思う。にもかかわらず、SBが上がってこなかったのは単純にリスクを考えてのものか。その代わりにサイドにハーグリーブスを出して厚みを加えたって見方もできる。攻撃ではハーグリーブスが絡むことでサイドの厚みを維持しつつ、後ろはしっかりと安定させておく。サイドの攻防でマンUが上回ったイメージ。特にローマのマンシーニのサイドってことに意味があったかもしれない。

そんなこんなで攻められまくりのローマだったけど、上にも書いたように途中で守備のやり方に修正を加えてきた。前から積極的に行っても狙いどおりに奪えず、むしろ危険なシーンを作られまくったローマ。前半の20分過ぎに、いつもとは違う前線からの守備をあきらめた。守備の重点を後ろに置いて、バイタルつぶしの4‐4ブロックで受ける意識が明らかに高まってた印象。その後(結果的にこういう守備をしたのは10分ぐらい)は当然のようにマンUのポゼッション率が高まり始めたけど、同時にそれまでのような決定的なシーンも作られなくなった。むしろ、おびき寄せておいてカウンターっていう方法で自分たちが相手ゴールに近づくシーンが目立っていったと思う。

そして、こういうローマのやり方の変更につられてなのかどうなのかマンUの方も守備のやり方を変更。本当はいつもの気まぐれ守備が発動したのかもしれない。テベスの守備に対する意識が弱まり、チーム全体としても自陣にブロックを置いて受ける形に。どちらかというと、前回のローマ戦のような受身形の守備の形になったと思う。

結果としてローマの方はこの試合では初めてボランチが浮いた。攻撃のスタートがスムーズに切れるようになったのと同時に、ピサーロにそういう役割を任せておいてデ・ロッシが前線に出て行くシーンも目立っていったと思う。そして、ここでやっとローマ的流動性が発動。出し手が浮いている状態で受け手も動きながらボールを引き出す。特に今回はブチニッチが起点として機能しまくった。中盤に1つ降りてきて受ける動きが効果的だったと思う。1つ下がペロッタに戻ったことで、前回よりも関係性がうまく機能したのかもしれない。

とにかく、それまで要所要所を押さえていたマンUの守備陣の対応が1つずつ遅れるようになっていった。結果として狙いどころが定まらないマンUの守備陣はラストで跳ね返すっていうどこかで見たような流れになって行った。とは言っても、前回のように6‐3ブロックっていう超極端な形にはならなかったけど。

こういう雰囲気がちょっとずつ見られ始めた時間に生まれたのがローマのPKのチャンス。このシーンにしても、最初のところではピサーロが起点になってるわけで。攻撃のスタートがスムーズに切れる、つまりボランチが浮くことに意味は大きかったと思う。でも、この絶好のチャンスをデ・ロッシが外す。この後のところで、もう1つの変化が生まれたと思う。

PKを外したことでローマが開き直ったのかまたしても前からの守備が復活。そして、この後の前線からの守備は第一次前線からの守備とは違って、機能性が高まっていた。何よりも前後の関係性の回復が大きい。前の頑張りを後ろがしっかりと活用してた。マンUの受け手が浮きまくっていた第一次前線からの守備とは違って、入りどころにしっかりと対応するシーンが目立ったと思う。出足が明らかに速くなって、相手より前で触るシーンも多かった。結果としてマンUはそれまでのようなスムーズな攻撃が不可能に。どちらかと言えば、蹴って相手ボールになってしまうマンUの悪い流れがちょっとだけ見られたと思う。それまで目立ちまくりのハーグリーブスも目立たなくなってしまった。

ローマの守備は回復。でも、マンUの守備は回復せず。よって、ローマが敵陣内に入るのはそれほど難しくなくなった。そして、敵陣内にボールが入れば後ろからの飛び出し、動きながらのパス回しで攻撃に厚みを加えながら相手に狙いどころを定めさせないようなローマのサッカーが可能になったと思う。要するに前回と同じ流れ。結果としてマンUがズルズルと下がってラスト跳ね返しの形になったってのも上に書いたとおりだった。

ちなみに、そのベタ引きブロックが前回ほど極端なものではなかったってのも上に書いたとおり。そもそも、今回のマンUの左サイドに入ったのはギグスであって、守備を頑張れるルーニーが左サイドに入った前回とは趣が違った(右のパク・チソンは変わらなかったけど)。もともとCロナウドに比べれば守備に戻ってくる意識が高いギグスだし、今回の試合でも相手のSBについてしっかり戻ってくることが多かったのは確か。でも、全て献身的にやるかって言えばそういうわけでもなかった。守備ブロックにも参加したり参加しなかったり。

リバプール戦で同じような形が見られたときには、アンデルソンがサイドの助けに行ってた。これは今回も変わらなかった。ただ、今回の試合ではもっと極端なやり方が見られたのも確か。それはそのままアンデルソンが左SMFみたいな形でブロックに入っちゃうってやり方。結果として4‐4ブロックができるこの形が試合中に何度か見られた。

そういうわけで前回のローマ戦と比べると守備にかける人数が多かったってわけではないマンU。それでも一時期の4‐2ブロックよりはよっぽど人数が多く、安定したブロックを作れてたのも事実。というわけで、ローマは再び困ったことになる。敵陣内に入るのは立ち上がりから比べれば恐ろしく楽になった。その中である程度ボールを回すこともできる。でも、ラストの1/3をどうやって崩そうか。この問題は前回の試合で90分かけても解決できなかったこと。今回は実質的には60分ぐらいか。しかも、アウェー。やっぱり難しかった。最後の最後は跳ね返されてしまうっていうシーンが続いたように思う。

マンUの方からすれば計画通りの試合展開か。ルーニーとCロナウド、さらにスコールズを温存。加えて、故障明けのシルベストルをスタメンで使い、Gネビルも投入できた。ただ、本当のことを言えばもっと早くに試合を決めてしまいたかったんだと思うけど。具体的には立ち上がりのチャンス量産の時間帯に得点を奪いたかった。逆に言えば、その時間に試合を決められなかったから長期専用のやり方を採ってきたのかも。立ち上がりは前から前から積極的に守備をして行って、そこで試合を決めてしまう意識。それが不可能となった時点で、だったら引いて受けてやろうと。マンUは2点を奪われなければいいんだから、何も疲れるような追いかけまわしをする必要もないわけだし。そして、ラスト跳ね返しは崩されない自信もあったんだと思う。

月並みだけどローマとしては1戦目と同じくトッティの不在を嘆く試合展開。ラスト1/3のところで決定的な混乱を相手に来すことができなかった。やっぱり今回も1トップは1トップだったっていう感じか。それに、狭い場所でも絶対的な技術力で対応できるトッティの存在はラスト1/3を崩すことを考えたら、絶対的に重要だった気がする。やっぱり最後のところの微妙な差でマンUとの差が出てたのは否めない。それから守備の問題。途中からの前後がしっかりと一体感を持ったやり方を立ち上がりからできてれば、もう少し変わったかもしれないと思う。時間が惜しい中で、立ち上がりの20分を前後分断の守備で無駄に使ってしまった印象。
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2008-04-07 Mon 18:33
マンU×リバプール
<マンU:4-1-4-1>
FW:ルーニー
MF:ギグス-アンデルソン-スコールズ-Cロナウド、キャリック
DF:エブラ-ファーディナンド-ビディッチ-ブラウン
GK:ファン・デル・サール

<リバプール:4-2-3-1>
FW:トーレス
MF:バベル-ジェラード-カイト、Xアロンソ-マスケラーノ
DF:ファビオ・アウレリオ-キャラガー-スクルテル-アルベロア
GK:レイナ

リバプールは4‐2‐3‐1への変更がうまく行った模様。少なくともこの試合の前の結果を見る限りでは絶好調。得点も奪いまくり。大スランプの頃の真ん中真ん中に入り込りすぎて得点を奪えないって状況は完全に払拭されたと思われる。今回の試合でも立ち上がりにほんのちょっとだけ、そういう改善の流れが見て取れた。CMFがボールの供給役となって、サイドにボールを送る。サイドにはSMF、SB(特に右サイドのアルベロアは趙積極的だった)が協力して起点を作る。その間に後ろが上がってきて真ん中に厚みを。そういう展開が見られた。トーレスにしても真ん中にこだわらない動きを見せて、攻撃が真ん中に入り込まないような形を作っていたと思う。

ただし、繰り返す通り本当に少しだけ見られた形。とはいえ、主体的に(カウンターではなく)攻撃ができたってこと自体が少なかったわけで、逆にいえば主体的に攻撃をしたときには、いい形の攻撃が見られたのも事実。そういうちょっとしたところからも、この試合の前の絶好調の様子が見て取れた。今回の試合ではマンUに完全に主導権を握られてしまった結果、さらにマスケラーノの退場によって、そのよさを見せられなかったってだけだった気がする。

そういうわけで4‐2‐3‐1がうまく行ってるように見えるリバプール。その4‐2‐3‐1で行われる守備はどういう形かってことをおさらいしてみたい。そもそも4‐4‐2スランプ時のリバプールはトップが守備に参加しないっていう大問題を抱えてた。結果として本来的に守備の狙いどころとなる中盤が守備のスタートの役割も担うことに。効率が悪い上に、ブロックから引っ張り出される状況。結果として4‐4‐2の3ラインの関係性がうまく回らないって形に。簡単に4‐4の間に入り込まれ、やばいと思った中盤の4が後ろに戻り。そうやってベタ引きブロックになることが多かったと思う。

これに対して4‐2‐3‐1採用後のリバプール。この変更によって前線から積極的に守備をするっていうある意味ではリバプールらしい守備は捨てた模様。1トップにトーレスを置いた時点で仕方なかたない選択か。でも、今回の試合ではトーレスは頑張ってたけど。どちらにしても、前から前から追いかけまわすやり方はなりを潜めたっていう事実は見られる。代わりにどうするかって言えば、簡単な話。受ける形の守備へ。せっかく4‐2‐3‐1にして生まれた中盤に厚みを有効活用するためには、いい選択かもしれない。

そういうわけで4‐2‐3‐1採用後のリバプールの守備は受身形。チェルシー戦、ミドルスブラ戦と今回の3試合を見ただけだから、もしかしたら普遍性はないかもしれないけど。とにかく、見た試合では全て受身的な守備。まずは守備組織を作るところが守備のスタート。その上で守備のスタートにリミッターがついてる。前から守備のリバプールはリミッターなしで追いかけまわしてたけど。というわけで、深めの場所の相手最終ラインはフリー。そこからブロックに入ってくるボールを狙おうってのがリバプールの守備のやり方。

入ってきたボールに対しては忠実にチェックが行われる。この辺は前から守備の頃と同じように1人1人の守備意識の高さがベースとなってる。上にも書いたように、中盤を厚くしたシステムになったことで、ブロックに入ってきたボールに対するチェックが素早く効く状況が作られてる。それぞれの距離が近く、結果として1人1人の担当エリアが狭いから。この近さを生み出すために、最終ラインは高めに上げてコンパクトブロックを形成する。

ついでに、この近さが守備の連動の速さも生み出してる。入ってきたボールに1人目が忠実にチェック。それで足止め。そこに周囲が一気に協力。挟み込み、囲い込みで相手からボールを奪い取る。これがリバプールの守備のやり方。受身形の守備でバランスのいい守備網を形成してることが、そういう協力体制のスムーズさを生んでると思う。それに前から守備の頃からリバプールの守備の次のよさがあったのも事実だった。前が追いかけて制限した次を狙うとか、協力して囲い込むとか。そういう部分のよさが生かされてる形。

ただし、リバプールは守備ブロックを作ることが守備のスタート。だから、組織ができる前に攻め込まれると案外簡単に入り込まれてしまう。これはミドルスブラ戦で見られた弱点。ミドルスブラの攻撃が特別に縦へのスピードが高いやり方を採ってるからこそ、目立った弱点だって言えるかもしれないけど。それに、組織が作られてない状態で攻められると脆いってのは何もリバプールだけに言えることだけではない。それに、組織が作れてない状態で受けたり、組織を生かせない状況で攻められると弱いリバプールの守備の問題は前々から弱点になってた気もするし。

これに対して今回の試合では前から追いかけることをやめたことによって生まれた弱点っぽい部分が見られたと思う。リバプールの守備は上にも書いたように、受身形に変更された。受身形ってのはつまり組織を作っておいて、そこに相手が入ってきたっていうことを守備のスタートとするってこと。これも上に書いたとおり。逆に言えば、相手が入ってきてくれなければ守備のスタートが切れないとも言える形ってこと。

例えばチェルシー戦ではこの問題は見られなかった。というか、むしろ守備のよさの方が目立った。それはチェルシーがことごとく入ってきてくれたから。つなぐ意識が高い現状のチェルシー。ショートパスをつなぎつつ相手ブロックに入り込もうとする。リバプールの方から見れば、網の中に入り込んでくるようなもの。入ってきたところで忠実にチェック、さらに囲い込み。これでチェルシーの攻撃を分断し続けた。

対して今回のマンUは網に入り込んでは来なかった。網を飛び越していった。そして、最終的には網を外しにかかった。そういうわけで立ち上がりのマンUはロングボールを蹴りまくった。このロングボールが今回の試合の1つのポイントになったように思う。そもそも、前回の対戦でも立ち上がりは蹴りあいの流れになった両者。でも、マンUのロングボールの意図は前回とは全く異なったものだったように思う。

前回のマンUのロングボールは仕方なしの印象が強かった。この頃はまだ前線から追いかけてたリバプール。そのプレッシャーに負けたマンU。仕方なく前線に意図の薄いロングボールを蹴るシーンが多くなった。つなごうとすればことごとく中盤で引っ掛けられたのも1つの要因。どちらにしても意図が薄いし、前はルーニー&テベスで効果的につながるわけもなく。むしろ、ロングボールのベテランのリバプールの蹴りまくりのプレッシャーに負けてしまった試合だった。

リバプールの守備が前線から来なかった今回。最終ラインはある程度自由にボールを持てた。よって、前回の対戦のように焦って蹴らなければならない状況ではなかったと思う。それでも、蹴る選択肢を選んだマンU。当然のように意図のあるボールが前線に供給されることとなる。相手の高めのラインのウラをルーニーが虎視眈々と狙いまくる。そこに効果的に1発のボールが供給される。こういう形からチャンスにつながるシーンが目立った。つまり、相手ブロックを後ろに向けるっていう意図のあるボール。そして、そのロングボールは相手が待ち構えてる守備網の頭の上を越えるっていう意味もあった。

上にも書いたように、相手の網を取り払うことが最終目標だったマンU。意図的なロングボールはそのための1つのやり方だった。そして、これをボールによるアプローチだとすると、今回のマンUは人によるアプローチも見られたと思う。相手の網を取り払う、要するに相手の守備ブロックを押し下げるっていう1つの目標のためにいろいろな工夫が見られたのが今回の試合だった。というわけで、以下ではもう1つの人によるアプローチについて見てみたい。

このアプローチが一番顕著に表れたのがSBのポジショニングだった。今回の試合は久々にマンUのSBが高い位置を保つ場面を長く見られた試合だったと思う(CLローマ戦でもそういう場面は見られたけど、それはこのリバプール戦の後)。ダービー戦の時に書いたように、縦へ急ぐ意識が目立ってたここ最近のマンU。ボールを持ったら即縦の変則4トップに預ける意識の高さが目立ってた。この形では後ろが追い付くのは難しいわけで。それがSB(特にいつも攻撃に積極的なはずのエブラ)が攻撃で消えてしまう要因の1つになってた印象。

これに対して、今回の試合のマンUはSBをとにかく高い位置に置いておこうとした。というわけで、最終ラインでの保持時間がここ最近の試合に比べると伸びてたと思う。ボールを持ったら即縦っていう意識は薄れてた印象。加えて、この最終ラインでのボールの保持にしても特徴的なやり方が見て取れた。

今まで攻撃時のマンUの最終ラインの形は右寄りになることが多かったように思う。エブラを高い位置に上げて、CB2枚と右SBブラウンでパスを回すっていう。これに対して、今回の試合では右のブラウンも高い位置に上げるシーンが多かった。よって最終ラインはCB2枚がパス交換をするって形。2人が距離をとってパス交換をするってシーンが目立った。正確にはこの2枚にファン・デル・サールを加えた3人でのパス交換ってことが多かったわけだけど。これもリバプールが上から積極的に守備をしてこなかったおかげか。

というわけで、最終ラインで左右の幅を使って揺さぶるようなパス交換は不可能だったマンU。横幅を2枚でカバーしなければならないわけだから、どうしても真ん中に寄ってしまう。だから、最終ラインでのボールの保持の意図はあくまでも時間を作ることにあったと思う。大体において最終ラインから前に供給されるボールはやっぱり縦1本ってことが多かった(ウラ狙いの意図も含めて)。そう考えると縦に急ぎまくる最近のマンUのやり方とは大きくは変わらないとも言える。変化したのは最終ラインでのボールの保持時間であって、そして、それが大きな意味を持つことになった。

SBをかなり高い位置に上げることとなったマンU。これによってリバプールの守備ブロックがどうなるかってことが重要。そもそもリバプールのSMFは後ろへの意識が強い。前への守備をチームとして捨てたリバプール。その中におけるSMFの役割は後ろのSBと協力して、相手のCロナウドだったりギグスだったりを挟み込むってことになる。だから、意識としては後ろに重点が置かれてるわけ。そして、そこに追い打ちをかけるようにマンUのSBの高いポジショニング。ますます後ろへの意識が高められることとなったと思う。

ここで考えなければならないのは4‐2‐3‐1と4‐4‐1‐1は紙一重だったこと。ただ、両SMFが下がっただけのこの形。4‐2‐3‐1の形ならば、前線に3のフィルターもあってより前で守備が可能。中盤の選手配置のバランスもいい。これに対して4‐4‐1‐1は相手の陣地を増やしてしまう可能性が高い。さらに、ここで思い出さなければならないのは、マンUがボールによるアプローチも行ってたってこと。要所要所でウラを狙うボールを送り込む(しかも、決定的なチャンスにつながる)マンU。これに対してリバプールの最終ラインは怖さが生まれる。後ろに押し下げられる。これに引きつけられる中盤の4。4‐4が後ろに押し下げられた状況が徐々に顕著になって行った。結果としてマンUの使える陣地がどんどんと増えていった印象。

ちなみに、4‐2‐3‐1が4‐4‐1‐1になってしまったリバプールは攻撃の方にも悪い流れが生まれた。立ち上がりの流れからも効果的に幅を使えてたリバプール。その幅利用が4‐2‐3‐1へのシステム変更によってもたらされた部分が大きいのは、これまでにも書いてきたとおり。ただ、その4‐2‐3‐1がちょっと変化して4‐4‐1‐1になってしまった段階で真逆の展開が生まれることとなった。

4‐4‐1‐1では単純に考えて前線が1‐1の状況。しかも、真ん中にいる1‐1。4‐2‐3‐1では中→外→中っていう展開が使えても、4‐4‐1‐1ではそれが難しい。サイドを使おうとするなら、中→中→外か外で奪ってそのまま外か。どちらにしてもサイドの選手の頑張りが必要になるけど、現実的には前者が多くなる。要するにサイド攻撃のために、1度中を経由するって形になるわけで。それではトップにこだわりまくってたスランプ時の流れと変わらない。

相手としても狙いどころは定まってる。ジェラードはキャリックがしっかりと押さえてたし、それに相手に陣地が増やされて行く中でジェラード自身も守備ブロックに吸収される始末。マスケラーノ退場後はCMFとしてプレーしたし。というわけで、リバプールの攻撃の最後の希望はトップのトーレス。トーレスは広大なスペースの中で真ん中に居座らずに動き回る工夫を見せた。でも、さすがに1人だけじゃ厳しいって話。ことごとくマンUのCBに潰されてしまった。4‐4‐1‐1で先細りになったリバプールの攻撃の選択肢は恐ろしく制限されてしまったわけだから、マンUとしても守りやすかったと思う。

ちなみに、上に書いたようなキャリックがジェラードをしっかりと押さえていたっていう事実。これはリバプールにとってはチャンスにつながる可能性を持った事実だった。ジェラードが流れるとキャリックもついていく。システム的には1ボランチ的なキャリックが引っ張り出されると、マンUのDFラインにはスペースが。そこにカイト、トーレスが入り込んでフリーで受けるって形がいくつか見られた。結局、そのギャップを有効活用することはできなかった。

本題に戻って。SBの攻撃参加とウラ狙いの1発ボールによって相手のシステムを4‐4‐1‐1にすることに成功したマンU。最終ラインのパス回しで大した工夫をせず、ただ前線に単純なボールを送るだけのやり方でも、ここ最近とは全く違った展開を生み出すことに成功。それが時間を作ったことにあったのは上にも書いたとおりだけど、結果として前線に厚みを加えることに成功。前線変則4トップ任せとは明らかに違うし、単純なボールも拾う選手が多ければそれだけつながりやすいねって話だった。

そして、マンUにとって前線に人数が多いっていうことの意味はかなり大きい。なぜならば、それが直接的に守備のよさにつながるから。マンUの守備の一番の勝負どころは攻撃後の切り替えのところ。守備に関して気まぐれな前線の選手たちも、切り替え後の守備はしっかりとやる。だから、その前線の守備に合わせて畳みかけられる場所で守備をすることが、守備に最も厚みをもたらすことになる。それに、基本的には前に対する守備意識しかない(最近はちょっと違った趣が見られるけど)前線の選手たち。そう考えると、その選手たちの前で守備をすることが一番人数をかけて守備をすることにつながる。

でも、最近の試合ではそういう切り替えの守備のよさを見ることができなかった。なぜならば攻撃において前線がはがれてたから。前線の4人に攻撃が任されてたから。逆に言えば、切り替え後の守備も前線の4人だけに任されてたことになる。いくら前線の選手が切り替え後の守備を頑張っても、4人じゃ抜け出されちゃうって話。そして、後ろに入られれば彼らは守備をしない。後ろが頑張ることになる。非効率的だった。

前線に人数をかけられた今回は切り替え後の守備が全面的に回復。高い位置の切り替えで効果的な守備が効いた。4‐4‐1‐1の相手が前線に選択肢がなかったこともよかったと思う。結果として攻めの時間が続きまくり。2次攻撃、3次攻撃が面白いほどに決まった。先制点のシーンも攻めて、切り替え守備で奪い返して、2次攻撃の流れからだったし。

というわけで、前線の厚みが全てをいい方向に回したって言える。気になるのは、この改善とシステム変更の関係。関連性があるのか、ないのか。個人的な意見からすれば、なかったんじゃないかと思う。システム云々というよりも、ここまで書いてきたように最終ラインのところで時間を作れたのが大きかった。そして、その時間を利用して両SBを上げたったこと。4‐4‐2でもやろうと思えば、できたはず。あえて言うなら、下での時間作りにキャリック&スコールズがもたらした効果か。2人とも相手の網の中でも安定してパス交換を繰り返した。ただし、これにしたって4‐4‐2のCMFを入れ替えればいいだけの話なわけで。

じゃあ、システム変更の効果が全く見られなかったかって言われればそれほどでもない。というか、その効果は大きかったって言えると思う。ただし、それがよかったのか悪かったのか。その辺は微妙なわけだけど、その両面について見てみたいと思う。

少なくとも立ち上がりからのかなりの時間はシステム変更は失敗だっていうイメージの方が強かった。本来的にマンUの攻撃の特徴は変則4トップがグルグルとポジションを変えるってこと。そして、このグルグルポジションチェンジの中の1つは、4‐4‐2システムで空いているトップ下の場所を入れ替わり立ち替わり4人が使うってこと。Cロナウド、ギグスが中に流れてくる。ルーニー、テベスが下がってくる。そういう動きをスタートとして、例えばルーニーが下がって空いたトップの場所にギグスが出て行くみたいな関係性が生まれる。場合によっては、トップ下の場所にアンデルソンが飛び出していくみたいな形で攻撃に勢いをもたらすわけ。

要するにマンUの攻撃においてトップ下不在ってことの意味はかなり大きかったって言える。例えば、後半に4‐4‐2に変更した後にはそういう関係性の中から得点が生まれてるわけだし。これに対して、今回の試合ではトップ下の場所に専業アンデルソンがいた。アンデルソンは中盤の選手。変則4トップの一角にはなりえない。トップ下を基本としてトップ下の場所でプレーする時間が長くなったと思う。これによって前線の流動に停滞感が生まれてたような気がする。

確かに前線のポジションチェンジが目立ったのは事実。でも、それは単純な横関係のポジションチェンジばかりだったと思う。薄っぺらいというかなんというか。相手を大混乱に陥れるほどではなかった。トップ下のフリーゾーンがなかったわけだから、その流動の動きが制限されるのはある意味では仕方がなかったって言えるかもしれない。

というわけで、システム変更を否定的に見ていた立ち上がりの流れ。しかも、この時間はやっぱり蹴りまくってるなって印象を受けた時間帯でもある。まだ、意図が見えてこなかったから。その上でこの後の試合のローマ戦について考えると興味深かった。流動のためにフリーゾーンのトップ下をアンデルソンが空けてたのがローマ戦。そうやって低い位置に3枚CMFを並べることで、蹴りまくりの流れをなくした。ローマ戦ではトップの流動性が今回のリバプール戦と比べると明らかに多くなったし、複雑にもなってた。アンデルソンにしてもトップ下に居座るんじゃなくて、1つ下からトップ下に出ていくことでそのスペースを有効活用したと思う。これをシステムの進化として見ると面白いと思った。

ただ、実際にはこの後の時間にはシステム変更のメリットの部分も見られた。それはもはやマンUが好きなように攻撃を組み立てられてた時間帯。SBが超高い位置に入ってたのは上にも書いたとおり。この高い位置に入ってたSBが1つ前のWG(というかSMF)を1つ中に押し込んだ。結果として真ん中に厚みが加えられることとなる。近さも生まれた。ミランかって話。

この段階でトップ下アンデルソンのよさが見られた。半ば強制的に作られた近さの中でのパス回し。その中心にいたのがアンデルソンだった。アンデルソンを経由しながら、1タッチ2タッチで次々にパスが回る回る。しかも、相手ブロック内で。押し下げられたとはいっても相手はリバプールの守備ブロック。4‐4の安定したブロックを作ってたし、1つ1つのチェックも相変わらず忠実にかけ続けた。それを否すパス回しが見られたのは、大きな収穫。中盤的中盤がトップ下に入った効果がここにあったと思う。Cロナウドもギグスもサイドでの仕掛けはほとんどなし。タッチ数もいつもと比べればとてつもなく少ない。マンUらしくないと言えばマンUらしくないか。

どちらも面白い形ではあるけど、守備を考えると4‐3‐3の方が明らかに安定感がある。最初に書いたように、今回のマンUのシステムは4‐1‐4‐1。ローマ戦と同じく攻撃では4‐2‐3‐1、守備では4‐1‐4‐1みたいな使い分けが行われてた。守備ではローマ戦ほどはっきりした4‐1‐4‐1ではなかったけど。どちらにしても、これも相手が4‐2‐3‐1を使ってることに起因するものだったと思う。

人につく意識が強いマンU。それをはっきりさせるシステム合致。4‐2‐3‐1と4‐1‐4‐1が完全合致なのはローマ戦にも書いたとおり。そして、不思議なものでシステム合致を作ると守備意識が向上する。攻撃においても1×1の意識が強いマンUだからなおさらかもしれない。自分の対応する相手に入ったところで、素早く距離を詰めて仕事をさせないような対応が目立った。

前線の選手もいつも一応はブロックに戻ってくるギグスはしっかりと相手SBについて深い位置まで戻ったし、Cロナウドにしても低めの場所に守備で帰ってくることが多かったように思う。でも、システム合致を利用してる以上、戻ってきたり戻ってこなかったりってのだと大破綻が起きる可能性があるわけで。それを考えて、ローマ戦でのCロナウドを1トップに置く選択が生まれたってこともあったかもしれない。

そして、何よりもラストブロックの安定感。長らく4‐2で守備をしてきたマンU。当然のようにギリギリの守備。CBの跳ね返し力と、何よりもハーグリーヴスの存在が大きかった。でも、スコールズが帰ってきてからはハーグリーヴスはベンチへ。それでも4‐2で守備をしようとすると、さすがに無理が大きい。というわけで、4‐3で守備の安定へ。ついでに攻撃に力のあるCMF3枚を併用することで攻撃力もアップ。そういう公算があったかもしれないと思った。

ここで試合の流れについて軽くおさらい。4‐2‐3‐1から4‐4‐1‐1にされたリバプ-ル。そして失点。加えてマスケラーノの退場。踏んだり蹴ったり。システムを4‐4‐1に変更。前半は4‐4で受けてやり過ごし、後半から回復にかかる。中盤の4は前への守備意識を高めたように見えた。前半に押し込まれた流れをなんとか盛り返そうと頑張った。

そうやって前への意識を高めたリバプールの中盤に対して、マンUは入れ替わり立ち替わり4‐4の間に選手を投入。4‐4の間で受けていいの?って感じで、次から次へと選手が入ってくる。リバプールの中盤の4は怖くなる。前への意識が削がれていく。行こうか行くまいか迷う。結局、4‐4の関係を重視。マンUは相変わらずパスを回しまくりの展開が続いた。

その後、リバプールはバベルを下げてべナユンを投入。べナユンが具体的に何かをしたわけではないけど、この交代で吹っ切れる。背後なんて気にせずに前への守備意識を回復。攻撃でも前線の厚みを増すことに。ある意味では捨て身で前に出てきたリバプール。この勢いに対して、マンUが押し込まれる時間が生まれた。これに対してマンUはシステムを4‐4‐2へ。リバプールと同じく、この交代によって再び流れを回復。お疲れリバプールにとっては、この時間で相手の変則4トップが登場する最悪の展開。追加点を奪われると、切れてしまい3点目を奪われてジ・エンドだった。

マンUは2つのシステムをどうやって使い分けるのか。守備を考えて、相手の形によって使い分けるっていう可能性が1つ。もう1つは4‐4‐2から4‐3‐3へ本格的に移行してる途中だって可能性もある。ファーガソンはときたま4‐3‐3を試そうとすることがあるから、本来的には4‐3‐3をやりたいって可能性もなくはないわけで。ちなみに、そのシステムを利用するなら1トップにCロナウドを置いた形がいいと思う。中盤もアンデルソンをトップ下というよりはCMFの一角として使うローマ的な形がいい。トップ下で使うよさが見られたのは上に書いたとおりだけど、マンUらしい前線のグルグルポジションチェンジが失われるのが惜しい。

対してリバプール。攻撃では良さの片鱗を見せた。守備でも受ける形で入ってきたところをつぶす良さがある。今回はこういう結果になってしまったけど、スランプ時からの立ち直りは明らか。ただ、4‐2‐3‐1が4‐4‐1‐1になってしまってばかりだと問題。やっぱり前からの守備を復活させて、それを防ぐのが一番手っ取り早い気がする。相手SBに対してリバプールSMFが自分たちから向かっていく守備をすれば、今回のように受動的に引かされることはないと思うし。ちなみに、攻撃において今の意識を維持するならば別に4‐2‐3‐1にこだわる必要もないかなって思う。4‐2‐3‐1はリハビリ的に捉えて。
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2008-04-05 Sat 22:05
ACL第2戦要点整理
前に書いてたのを忘れて、アップしてなかったのでいまさらです。


【全南×ガンバ】
<ガンバ:4-4-2>
FW:バレー-播戸
MF:二川-ルーカスー遠藤、明神
DF:安田-山口-中澤-橋本
GK:藤ヶ谷

前回の試合でガンバの攻撃に見られた問題点。それは前線の渋滞。パスでの崩しを念頭に置いているガンバ。パスを回すと組み立ての時間が長くなる。これ自体は必ずしも悪くないけど。それでも組み立てに時間がかかると後ろからの押し上げが促進される。これも悪くない。でも、前線に入った人の動きが停滞してしまうのがガンバの問題。相手がベタ引きだと敵も味方もいっぱいの状況で動く余地がないから。それでもパスを回すガンバ。ボールサイドに人が集まり、あとはゴール前で待つ形。相手のブロックを揺さぶる余地がなくなる。そういう窮屈な場所でもガンバはパスを回せてしまう。ますます渋滞が加速。パスが回っても、仕掛けられない状況に陥る。

というわけで、攻撃における渋滞を起こさないことがガンバのテーマ。攻撃への意識の高さが逆に攻撃の停滞を生んでしまう渋滞はガンバにとっては致命的。攻めきれずカウンターを食らいまくるっていう最悪の状況に陥るわけで。この渋滞を解消するのは急務だともいえる。

この部分について今回の試合ではどうだったか。実際のところ渋滞は起こらなかった。直接的に渋滞を起こさないためのアプローチではなく、アウェーの戦い方とか相手との関係っていうためっていう部分が大きかった気がするけど、それでも渋滞が起こらなかったのは確か。前半は必ずしもいい流れだとは言えなかったけど、後半は渋滞が起こらないスムーズな攻撃でいい流れを呼び込むことができてたと思う。

そのアプローチを見る前に、とりあえず相手の全南の戦い方を見ておく。全南はレッズ的に試合に入った。時間とともにそのスタイルが変化していったけど、少なくとも前半の間はレッズ的に戦ったと思う。要するに守備はベタ引き、攻撃は前線にスタイル。完全にレッズのコピーかって言われれば、そうでもないわけだけど。

まず、守備は自陣に入って受ける形。3‐4‐2‐1(3‐4‐1‐2のときも)のブロックを自陣に作った上で自分たちから積極的に守備をしようっていう意図は見られなかったと思う。ちなみに最初の時点では最終ラインを深く置かずに、ある程度コンパクトなブロックを形成する意図が見られたと思う。

こういう自陣で受ける形の守備の全南。当然のように自陣に入ってきたところで、守備を開始するっていうやり方が考えられた。でも、実際には自陣に相手が入ってきても守備を開始せず。この点も時間とともに変化していったわけだけど、立ち上がりはルーズな守備だなって印象を受けた。

そういうわけでガンバの方が敵陣に入るのは、それほど難しくなかった。そうやって自陣にあっさりとはいりこまれた全南はすばやく人数ベースのベタ引きブロックの形成へ。ゴール前に人数をかけることで最後を固める意図が見られたと思う。このときには最前線の選手も自陣のかなり深い位置まで戻ってくるような徹底ぶりだった。

こういう守備で奪った後は単純に前線へ。シモンエス+1か2が待っている前線に一気にボールを蹴りだすことが多かった。このやり方を見る限りでは大雑把で可能性が薄いように思える。でも、案外ちゃんとした攻撃につながったと思う。それはシモンエスの動きのおかげ。最前線で動き回りながら、ボールをうまく引き出した。ガンバの守備陣が捕まえ切れないことが多かったと思う。シモンエスの動きに合わせながら、最前線の場所はグルグルとポジションを入れ替えながらボールを引き出してた印象。

そういうわけで大雑把なボールでも案外、前線に収まった。そして、そうやって収まったところで後ろから選手が飛び出してくる。特に中盤の4の両サイド(もっと言えば、右サイドの25番)が攻撃に絡んでくることが多かった印象。守備ではかなり低い位置まで戻り、攻撃では切り替えとともに一気に最前線まで。すさまじい運動量だった。

ってな感じで全南の前半の攻撃はかなりシンプル。一気に前線に送るボールで距離を稼ぎ、根性で上がってきた後ろの選手が前線に厚みを加える。ただ、これだけだった。中盤がルーズなベタ引きを念頭に置いた守備と合わせて、レッズ的だってことがよく分かる内容だったと思う。本当にレッズをお手本にしたかどうかは知らないけど。

とりあえず、全南のやり方についてはこれぐらい。上にも書いたとおり、時間とともに変化が見られたわけだけど、それは後ほど。というわけで、本題に戻ってガンバの攻撃のアプローチについて見ていきたい。このアプローチには実際によかった部分と、渋滞を防いだのは確かでも本当に良かったかどうかは微妙な部分があったと思う。

まず、普通によかった部分はサイドの利用の仕方。前の試合のときにもサイドに起点を作ることが多かったガンバ。ただ、そのときにはサイドはあくまでも起点だったってのは前にも書いたとおり。つまり、サイドをボールが経由するのは確かだったけど、そこはあくまでも経由点だったってこと。そういうサイドの経由点から、やっぱりショートパスつなぎで中に切れ込んでくることが多かった。結果として、結局はベタ引きの相手のブロックに正面から向かっていくこととなったと思う。

対して今回の試合では明らかにサイドからのクロスの数が増えた。決勝点も左サイドの安田からのクロス。前回と同じく、左サイドが攻撃的で右サイドが守備的っていう左右のバランスが崩れ気味ではあったけど、こういうクロスの数には明らかな違いがあったと思う。そして、それはサイドの使い方の意識の違いによる。前回の試合では上にも書いたように、攻撃の起点、経由点としてだったけど、今回はフィニッシュに向けた仕上げの中での利用が増えた。

これに伴ってサイドでボールの滞在時間が短くなった。前回は1つ起点を作って、そこで数的優位を築いてパス回しをすることが多かったけど、今回はサイドに出して即クロスっていうやり方が多くなった。外→外→外っていうボールの保持から、中→外→中っていう瞬時に目先を変えるシーンが多くなったと思う。結果として安田の攻撃参加を、その勢いを殺さないままに活用するシーンが増えた印象。その安田からのチャンスにつながるクロスも多かった。

これと関連して、サイドの深い位置に入り込む意識が高まったのもよかった部分だと思う。前回はエリアの角ぐらいの場所でのパス交換が目立ったわけだけど、今回はタッチライン際まで入り込むことが多くなった。安田に限らず、遠藤とか二川あたりもサイドの深い位置に入るシーンがあったと思う。

こういうサイドの使い方の変化によって相手のブロックを横から攻めることが可能になったと思う。馬鹿正直に正面から行く必要は全くない。相手がラストに人数をかけて守っているなら、それをある程度無効化するサイドからの攻撃を使えばいい。前回はそれができなかった。今回はそれができた。3バックの相手のサイドにスペースがあったってことも関係したんだろうけど。

もう1つ良かった点は相手ブロックに揺さぶりをかけるっていうこと。それは相手ブロックに仕掛けるパス回しの中で、どれだけ幅を利用できるかってこと。前回は窮屈な場所に入り込み、超狭いエリアでのパス回しが多くなったガンバ。結果として幅を利用できずに、相手のブロックに揺さぶりをかけられなかってってのは上にも書いたとおり。

今回の試合ではそういう状況が消えてた。ボールを狭い場所で保持して、そこから抜け出せなくなるっていうことはほとんどなかった。その要因は組み立てにおいて、どこに足場を置くかっていうことにある。前回に限らず悪いときのガンバは、相手のベタ引きブロックのすぐ近く、もっと言えば、そのブロック内でボールを保持する状況になると思う。そして、そういう場所にどんどんと選手が入り込んでいってしまう。結果、別の広い場所の選択肢がなくなる。それでもパスが回せるのがガンバなんだけど、窮屈な状況であることは否めない。

それに対して今回に限らず、いいときのガンバは上下の選手は位置のバランスがいい。全員が前に入らずに、後ろに残って逃げ場となる選手がいる。今回の試合でいえば明神がその役わりを担うことが多かった。前が詰まったら1度下げて作り直す。こういう単純なやり方の繰り返しが、縦の幅を使うことにつながる。そして、そういう縦の揺さぶりがガンバの攻撃のよさでもある。

そして、そういう縦の揺さぶりが横の揺さぶりにもつながる。1度下げたところで、サイドに展開する(サイドを変える)っていうアプローチが可能だから。今回の試合では、まさにそういうやり方が見られた。結果として左右の幅を利用することも可能になってたと思う。

ただし、こういう前後左右のいい形での揺さぶりは実際にはあまり多く見られなかった。でも、前回のような悪いときのガンバが見られたわけでもない。その理由はポゼッションに意識自体が少なかったから。ゆっくりとパスを回しながら、どうこうっていう意識は薄らいでた気がする。ガンバらしいやり方なんだけど。これが上に書いた渋滞を防いだけど、よかったのか悪かったのかよく分からないっていうアプローチ。

今回の試合のガンバは縦への意識の高さが目立った。ボールを持ったら、まずはFW(とルーカス)を狙うっていう意識が見られた気がする。パスをつなぐ意識よりも、シンプルにゴールに向かう意識が高まってたと思う。これが何を意味するのかは微妙なところ。最近の不調を踏まえた変更か、単にアウェーの戦い方か。

何にしても、この縦への意識の高さは渋滞を防ぐことにつながる。当たり前と言えば当たり前。渋滞が起こるのはポゼッションの中で後ろからの押し上げが促進されるから。すぐに縦に向かう方法では、むしろ後ろからの飛び出しが追い付かずに前線がはがれた状態に陥る。だから、渋滞とは無縁。ついでに相手もまだベタ引き組織を作ってないところ。

これがいいのか悪いのかが分からないのはこういう関係から。前線がはがれてしまっているのは必ずしもいいとは言えないし、ガンバのやり方を考えれば明らかに異質。ただし、ある意味では相手が組織を作るのを待ってしまうガンバの攻撃を考えれば、組織が作られる前に攻めるっていう考え方は悪くないとも言えると思う。とにかく、どちらにしても今回の試合ではトップに向けた意識の高さが目立ったっていう事実があったってこと。

立ち上がりはこのやり方がそれなりに機能した。相手の守備がルーズだったこともあって、前線にボールが収まりやすい状況だったと思う。だから、縦への意識を高めて少ない人数の前線にボールを送っても、その少人数でなんとかできるような雰囲気も見られたと思う。この時間は安田の攻撃参加がほとんど見られなかったのが、時間をかけて攻撃を組み立てていないってことを表してたように思う。

ただし、時間とともに相手の守備が変化してくる。自陣に組織を作っても、そこに入ってきたボールに対してのあいまいな対応が目立った全南。その入ってきたボールに対する対応が時間とともに厳しくなっていく。そもそも、受け手に対する対応自体をはっきりとさせて行った印象。結果として、簡単に前線にボールが収まらなくなったと思う。それに伴ってガンバが低い位置で無為にパス回しをする時間が延びて行った。

これは前線に出しどころがなかったから。それまで優先的に見ていた最前線はもちろん、他の場所でもしっかりと対応されてしまっていたんだと思う。加えて、前半のガンバは動きが少なかった。だから、相手の守備がよくなった影響をそのままダイレクトに受けてしまった。相手が受け手を捕まえるようになったときに、それを外して受けるっていう動きが少なかったわけだから。最終的には最前線への意識が再登場して、単純なロングボールを入れるシーンが増えたと思う。

そういうわけで前半は徐々に全南のペースになって行った。ベタ引き状態になる守備が減った全南は攻撃もそれまでのような大雑把なやり方から変化していく。全員が下がった状態が念頭にあった蹴りだしから、しっかりとつないで崩す意識の高い攻撃の組み立てへ変化していった印象。

このやり方はガンバにとってはラッキーだった。なぜなら、今回の試合のガンバの守備の内容は素晴らしかったから。それは立ち上がりから始まる。立ち上がりのガンバの守備は超積極的。最前線から追いかけまわして、2列目もしっかりと連動する。相手のミスが目立ちまくった。こういう積極的な守備を相手の引いて守る守備と比較すると、どっちがホームだか分からないぐらいだった。

もちろん、この超積極的な守備はペースダウン。それでも最前線からの連動した守備の意識は変わらなかった。立ち上がりのようにリミッターなしで追いかけまわすやり方はやめた2トップも、しっかりと相手の最終ラインにプレッシャーをかけ、ちょっとでももたつけば追いかけに転じるような意識の高さを見せてくれたと思う。そして、本格的な守備のスタートは相手が縦パスを1つ入れたところ。その時点でボールに対する厳しいチェックが行われた。

そういう厳しいチェックの意識が抜群。ガンバの守備意識ってこんな高かったっけってぐらい。入った瞬間に一気に距離を詰めて、相手に余裕を持たせない。そうやって相手の選択肢を削って行く。相手が逃げたところでも、やっぱり忠実な厳しいチェック。そうやって相手を狭いところ狭いところに追い込んでいった。そして、追い込めばガンバの守備のベースが機能。ボールサイドに人数をかけるやり方の中で、相手のボール保持者を取り囲んでいったと思う。1点目のシーンもこういう守備の流れからの、中盤での効果的なカットから。

こういう守備のよさは個々の守備意識の高さに起因する部分が大きい。繰り返しになるけど、1つ1つのチェックの質が抜群に高かった。そして、出足の早さも。前線で効果的に守備ができてるから、後ろが出足を早くするベースがあったのも事実だったけど。その中で効果的なインターセプトがかなり多く見られた気がする。

ただ、前半はそういう守備を機能させることができなかった。なぜなら相手のボールが頭の上を越えて行ってしまうから。せっかく守備をする意識が高かったのに、相手の地上から攻める意図がなければ何の意味もなかった。だからこそ、全南が地上から攻めてくれるようになった前半の途中からの流れはガンバにとってはうれしいことだった。

特に後半は地上から攻める意識を高めた相手を完全に封じたと思う。全南の方も再び蹴るっていう選択をしてもよかった気がするけど、そういう選択肢はなかったらしい。途中からシモンエスが消えたことを考えると、前線の選手をガンバの不安定な(今回の試合では)守備陣が捕まえだしたのかもしれない。結果として、ボールを出せないっていう。

よって後半は守備のよさが目立ったガンバ。そのガンバの後半は攻撃の方にも改善が見られた。この試合の前半に見られた縦への意識と、普段のガンバのパス回しを融合させたようなやり方。パスをつなぎながら縦を攻めるっていう。前半はボールだけがどんどんと縦に進んでいったけど、後半は人も同時に縦に進んでいくようなイメージだったと思う。

そのためにベースとなる動きの質が明らかに上がった。前半は全体としての動きの停滞が見られたガンバだったけど、後半は明らかに運動量が増えたと思う。そして、その動きをゴールに向けて行ったのが今回の試合のガンバ。シンプルなパス&ゴーがかなり多くなって、少ないパスで縦を侵攻する意図が見て取れた。無為にパスをつなぐんじゃなくて、しっかりとゴールへの意識を持ったパス回しができてたように感じる。

これには全南の守備がますます変化したことも関係したと思う。ルーズな立ち上がり、しっかりと捕まえ始めた前半の途中から、さらにボールへの意識を高めたのが後半だった。普通に考えればいい内容に向かっているように見える。でも、ボールへの意識を高めるってことは背後にギャップを残してくるっていうリスクを背負う。そして、ギャップを見つけるのが大好きなガンバの選手たち。後ろから飛び出して、ギャップに入り込む動きが多くなっていったと思う。

結果として後半はガンバのペース。それがそのまま結果につながったと言ってもよかったと思う。ガンバにとってはやっと攻撃力を見せつけられたってとこか。この試合の後半みたいに、動きの中でゴールへの(縦への)意識を持ったパス回しでの崩しをベースとすれば、渋滞が起こる危険性は薄くなるように思う。その中で縦への勢いを殺されてしまえば、前半から見られたようなサイド利用、作り直しによる左右上下の揺さぶりを織り交ぜればいいって話。ガンバに光が見えてきたか。

光といえば、今回の試合ではルーカスの存在の大きさが目立った。トップ下の場所で攻撃においては経由点としてうまく機能してたと思う。そういう攻撃面の活躍は織り込み済みだったけど、守備での活躍が今回の試合ではかなり目立った。サイドでの数的優位形成には必ず助けに来たのが印象的。ガンバに入ってどうかってところはあったけど、守備の貢献度も高いルーカスの加入は結果としてかなり大きかったって思う。


【アントラーズ×ナムディン】
アントラーズはいつものメンバー。成熟しまくり。何の不安もなし。不安があるとすれば今後のこと。メンバー固定でどこまで戦っていけるか。ACLで勝ち抜いていくようなら(問題なく勝ち抜いて行けると思ってる)、昨シーズンのレッズが直面した問題に行きつくはず。つまり、シーズン終わりの大失速。しかも、ベタ引き蹴りまくり攻撃前任せのレッズとは違って難しいやり方を採ってるアントラーズ。アーセナルほどとは言わないけど、新戦力を入れてその選手がスムーズにフィットできるかどうかが微妙なところ。とはいえ、これはまだまだ先の話。今はベストメンバーで戦うアントラーズの質の高い試合を見ましょうってとこか。

第1戦目では省エネサッカーを採用したアントラーズ。アウェーだったし、暑かったし、移動もあったし、妥当な選択だって言える。守備は前から頑張らずに自陣で受ける形。これには相手をおびき寄せる意図もあって、攻撃はカウンター的な縦縦のやり方。組み立てには特別に時間をかけず、よってSBもボランチも攻撃に絡ませず、前線の最低限の人数だけに任された。ある意味ではアントラーズらしくないアントラーズのサッカー。別の意味では何でもできるっていうアントラーズらしさが見られたアントラーズのサッカー。そんな内容が見られた前回の試合だった。

それに対して今回はホームの戦い。存分に本来の意味でのアントラーズ的な攻撃が見られたと思う。でも、相手もアウェーの戦い方。相手がでてきてくれたおかげで簡単に攻撃ができた前回の試合とは違って、どうやってアウェーの戦い方をする相手を崩すか。自分たちが自分たちのサッカーをしたとしても、相手がそのサッカーをさせてくれるかどうかは別問題。まあ結局は何の問題もなくアントラーズが引いた相手を崩しまくったわけだけど。それは6-0の結果を見ても分かる通り。

とりあえずはナムディンのサッカーについて見てみたい。予想通りというかなんというか完全なるアウェーの戦い方。最終ラインは完全なる5バック。3バックのWBが押し込まれた5バックではなく、完全なる5バック。追いかける展開になっても5バックは崩さなかったことからも、5バックベースは明らかだったと言ってもいい。中盤の形は微妙だった(後述)だったわけだけど、数字で表せば5-4-1だった。

立ち上がり、というか前半の中盤はダイヤモンドっぽかった。というわけで、5-1-3-1と表せる形だったナムディン。もちろん自分たちから能動的、積極的な守備をするわけはなく。必然的に受ける形となった。それでも、前線フィルターの3で引っ掛けられればいいなの守備が見て取れたと思う。もちろん、それは夢と散ってしまったわけだけど。

とりあえずアントラーズの最終ラインは完全なるフリー。ナムディンはその最終ラインから1つ縦に入ったところで守備をスタートさせようっていうやり方を採ってたと思う。ただ、そのチェックがとにかくルーズ。アントラーズのボランチに入ったときの対応が象徴的。ボランチに入った瞬間に、ナムディンの2列目がちょっとブロックから出てくる。でも、しっかりと距離を詰めない。チェックをしようとするけど、チェックはしない。というわけで、縦パスが入ったとしてもアントラーズのボール保持者に対するプレッシャーは弱い。自由にボールを持てる。ズルズル下がって行くしかなかったナムディンブロックだった。

それでも縦に入ったところで守備をスタートさせるっていう、その意識自体があるってのが貴重だったとも言える。ただし、アントラーズのやり方によって、その意識自体も完全に否されてしまった。5-1-3-1ブロックのナムディン。最初のフィルター3枚のウラは1ボランチがケアする。というわけで、1ボランチ脇にはスペースがありまくり。アントラーズはここを突いてきた。

前回の試合とは違ってアントラーズの両SBは高い位置まで入ってきた。相手が1トップ残しだったから、後ろは2バックでもよかったし。そして、SBの攻撃参加の活性化とともに組み立てで時間をかける意識が復活したアントラーズ。左右の幅を使いながらの効果的な展開を見せたと思う。そして、そのスタートが相手の1ボランチ脇のスペースに対するアプローチだった。

アントラーズのSBが1ボランチ脇のスペースに入る。そこに入るのはSBだけには限らないけど、とにかく相手の1ボランチのところのサイドに起点を作るってこと。そして、そこに大きなボールを一発で供給する。この大きな展開のよさがかなり目立った試合でもあった。そして、この大きなボールは相手の最初の3のフィルターを無効化させる。実効性はともかくとして、縦に入ってきたら守備を開始してやるぜっていう意識自体はあったナムディンの3枚フィルター。でも、そんな意識とは裏腹にアントラーズのボールはその3枚のフィルターの頭を越していった。

というわけで、守備のスタートが切れなくなったナムディン。ついでに中盤スカスカも目立った。1ボランチの弱点に直接アプローチされてるわけだから、当たり前と言えば当たり前。そういうわけでベタ引きの人数ベースブロックへ。5-4を完全に引かせての守備が見られたと思う。どちらにしても、圧倒的にアントラーズがボールを保持する展開が生まれたってことには変わりはないわけだけど。ゴールを守ることだけを考えるならば、ベタ引き人数ベースブロックのがまだマシか。

こういうナムディンの守備に対してアントラーズが圧倒的に主導権を握ったのは明らか。だから、ほとんどの時間はアントラーズが好きなように攻める展開が生まれたと思う。その中でアントラーズらしさ、アントラーズの良さがが見られた今回の試合だった気がする。引いた相手をどうやって崩すかってことにも、そのアントラーズらしさである程度の回答を見せてくれた印象。

まず、1つは幅の利用。上に書いた攻撃のスタートのところも含めて、両サイドを効果的に活用した攻撃が見られた。さらに、相手のブロックに対して左右にボールを動かしまくるアプローチが見て取れたと思う。組み立ての段階ではピッチ全体に選手をバランスよく配置するアントラーズ。その中では近づきすぎないある程度の距離感を保つ。結果として、ショートパスというよりはやや距離が長めのパスが多くなる。そういうパスで左右のサイドを頻繁に変えまくっていったのが印象的。相手のブロック前を横切りまくるパス回しで、全く狙いどころを定めさせなかった。

アントラーズのよさは組み立ての段階で近くばかりを見ないこと。流動性をベースとして適切な選手が適切な場所に入るようなアントラーズの攻撃だから、近い場所に選択肢がないわけではない。でも、それに固執しない。どちらかと言えば、組み立てでは遠くを常に見てるようなイメージが強い。だから、チャンスがあれば組み立て途中で一発のパスをウラに蹴ったりもする。遠くが見えてることで、組み立てがこじんまりとしない。一発のサイドチェンジの多いこと多いこと。広い場所広い場所を使いながら、さらに相手のブロックを分散させ、狙いどころを定めさせないような攻撃の組み立てが特徴的だと思う。

ただし、ここで1つの疑問が浮かぶ。アントラーズのシステムはブラジル的な4-2-2-2。サイドアタッカー的な選手は使っていない。必然的にSBのサイドでの役割が増大。形的にはお世辞にもサイドが厚いとは言えない布陣。逆に中中へと入り込んでしまう可能性も十分。そういうシステム的なイメージがあるのにも関わらず、左右の幅を有効に活用できるのがアントラーズ。ここに面白さがあると思う。

その答えの1つは単純にSBが高い位置に入ってるってこと。今回は圧倒的に優位に試合を進めた中で、SBが高いポジショニングを維持する時間が長かった。ある意味では4-2-2-2の本場であるブラジル的な解決の仕方だとも言える形。ただし、アントラーズのサイド利用はSBの高いポジショニングだけにその要因があるわけではない。ここで重要なのが流動性抜群の前線の関係性。

システム的には4-2-2-2のアントラーズ。サイドが薄そうに見えるってのは上にも書いた通り。でも、アントラーズはこの形を基本としつつも、この形にはこだわらない。要するに入れ替わり立ち替わりにサイドに選手が流れてくるって形。野沢、本山、マルキーニョス、田代の前線の変則4トップに加えて青木とか小笠原もサイドに顔を出してくる。そうやってサイドの薄さに対処してるのがアントラーズのやり方。結果として真ん中によるように見える基本システムにも関わらず、サイドに起点を作ることが可能になる。左右の幅を使うことも可能になる。

相手にとっては最初からサイドアタッカーを置かれるよりも圧倒的にやりにくい。サイドの出入りが激しいアントラーズ。誰が出てくるか分からないし、誰も出てこないかもしれない。ついでに言えば、いつ出てくるかも分からない。これではどうやって対処しようか困ったもの。サイドアタッカーを置かない形によって逆にサイドでの優位性を保てるのが、このやり方だと思う。そして、そこにアントラーズの成熟が見られるわけで。何しろ前が適切にポジションを入れ替えまくらないと、このやり方はできないから。

このサイドの出入りの激しさがアントラーズの特徴の1つ。加えてトップの場所の出入りの激しさもアントラーズの特徴だって言える。例えば先制点のシーン。ここでは完全に2トップに本山と野沢、トップ下にマルキーニョスと田代っていう位置関係ができあがってた。要するに前線の2列がごっそりと入れ替わった。今まで変則4トップって書いてきたのが象徴的に表れてるシーン。ちなみに、アントラーズはこの前線の4人の関係だけではない。後ろからダイナミックに青木だの小笠原の飛び出しも見られた。

この前線の出入りがアントラーズの停滞感を打ち破る1つの形。マルキーニョス中心の前線が常に動きまわってる献身性が見られるのは事実。ただ、前線の流動性っていう形でそういう個々の動きを有機的に連動させてる。結果として圧倒的にボールを保持する展開、前線に人数が入る展開になっても前が詰まるっていう状況に陥らない。これがアントラーズの強みの1つだって言えると思う。そうやって前線が動いてる間にボールも動かしまくりながら、ここぞのチャンスを狙って行く。

アントラーズの組み立てではある程度長めの距離を取った展開が見られるってのは上にも書いたとおり。それに対して最後の仕上げの場所では近い関係で一気に崩すってやり方が見られる。仕上げにかかったら迷わずに仕上げ切るっていうイメージ。もちろんここでもポジションにこだわらない流動性が1つのポイント。ギャップギャップに入り込んで近い関係でパス交換。加えて、ボールに対する複数の爆発的なランニング。これによって一気にスピードアップ。3点目のシーンも狭い場所を野沢と本山がワンツーで抜け出したシーンからだった。

遠くを見る組み立てと近い関係で崩す仕上げ。大きな展開で距離を稼ぐ組み立てと、ショートパスで一気に崩す仕上げ。ゆっくりな組み立てとスピーディーな仕上げ。こういうメリハリが攻撃にアクセントとなってる。そして、その中で人が動きまくり。簡単にアントラーズの攻撃を表すならこんな感じか。

さて、アントラーズの守備。基本的にはアントラーズの守備が見られる時間はかなり短かった。ただし、そのベースにあったのは1つ。ボールへの意識の高さと、それに連動する次のよさ。スイッチとしてのボールへの寄せを全ての選手が行うのは、もはやアントラーズの決まりごと。FWでさえも例外ではない。そして、そういう最初のチェックに対して次が必ず連動する。前が制限したとことを次で狙う。相手を足止めしておいて、挟み込む囲い込む。こういう守備のよさは不調気味だった昨シーズン初めから書いてきてるとおり。

今回の試合でも例外なく見られた、こういう質の高い守備。とはいえ、ブロックを作って守備をするシーンは少なかったわけだけど。前線からの献身的な守備とそれに対する連動性で相手の攻撃をことごとく分断した。確かに、そこには相手の攻撃のまずさがあったのも確か。何しろ攻撃を考えずに守備をしたナムディン。攻撃の人数は恐ろしく少ない。基本的に前線に残った1トップと後は2列目をどれだけ絡ませられるかってのがポイントだった。1トップがサイドに流れてトップ下がトップの場所に出るってのが1つのパターンになってたような気もするけど、どっちにしても実効性は恐ろしく少ない攻撃の展開だったって言える。

というわけで、アントラーズの守備が発揮したのされたのは多くの場合で切り替え。2つの得点にもつながってるように、深い位置でのボールへのチェックとそれに対する連動性が素晴らしかった。5点目はまさに理想的な展開から。高い位置で小笠原が足止め、高い位置に入っていた内田が戻ってきて挟み込み奪う。それをそのままゴール前へっていう展開だった。この切り替えの守備によってより長く攻撃を続けることが可能になった。

そして、長く攻撃を続けること=圧倒的なポゼッションがボールを持った休憩を生み出した。攻撃でも動き回り、守備でも動き回るアントラーズのやり方。ポゼッションの時間は何よりも重要。ちなみに、ポゼッション時も献身的に前線で引き出しの動きを繰り返すFWの2枚はきっちりと途中交代で休ませた。したたかな交代だったと思う。

試合の流れに戻って見てみると、前半で1点ビハインドのナムディンは後半に微妙にやり方を変えてきた印象。中盤の4をフラットに並べることで前半の弱点となっていた(前半の最後はシステムどうこうは関係なかったけど)1ボランチ脇のスペースをなくした。1ボランチがいなくなったところには最終ラインが押し上げ。結果として前半よりも高い位置にコンパクトな5-4ブロックが形成された。

アントラーズとしては前半よりはちょっとやりにくくなったかなって形。ナムディンの守備のバランスが回復して、好きなように使えた中盤のスペースが減ってしまったわけだから。前半のような遠めの関係では引っ掛けられる可能性があったように思う。だから、前半よりは組み立てでの選手間の距離が縮まってた。ボールサイドに人数が偏るような展開も多くなった気がする。それでも、逆サイドへの大きな展開は効果的に機能し続けた。

そんなことをしているうちに、バランスの回復した5-4が再びベタ引きへ。いくら形を作っても守備の根拠がないナムディン。アントラーズが狙いどころを定めさせない攻撃をしてたのは確かだけど、1つ1つのチェックがルーズ過ぎた。だから、結局はズルズルと下げられる結果になったと思う。

最終的にはちょっとした攻撃意識を見せて前がかったためにスペースが生まれた後半の終了間際。この時間はアントラーズがおびき寄せた側面もあったかもしれない。ただし、アントラーズとして見るとその中でひやっとさせられるシーンもあったのも確かだったわけだけど。とりあえず、ラストの跳ね返しからダニーロ経由のカウンターってのがアントラーズのやり方となった。

ちなみに、アントラーズの2点目にはナムディンの守備の大問題が表れてた。このシーンは起点となった小笠原が真ん中の場所でドのつくフリー。確かにこのシーンはナムディンは攻撃後ではあった。でも、戻りがあまりにも遅い。前半から攻撃後のナムディンの組織作りの遅さがかなり目立ってた。前線に出ていった選手は歩いて戻ってくる。守備重点だったのにも関わらず。何がしたいんだって話。アントラーズがゆっくりと攻めてなかったら、もっと大変だったと思うわけ。

そんなこんなでアントラーズは6得点快勝。2試合で15得点のすさまじい爆発力。どちらも相手の問題があったのは確かではあるけど。それにしても格下相手に力差どおりの試合をするのが難しいってのは確かなわけで。その力差をそのまま見せつけるアントラーズの強さが際立つ2戦になったと思う。
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2008-04-04 Fri 20:25
ローマ×マンU
<ローマ:4-2-3-1>
FW:ブチニッチ
MF:マンシーニ-アクイラーニ-タッデイ、ピサーロ-デ・ロッシ
DF:トネット-パヌッチ-メクセス-カセッティ
GK:ドーニ

<マンU:4-1-4-1>
FW:Cロナウド
MF:ルーニー-アンデルソン-スコールズ-パク・チソン、キャリック
DF:エブラ-ビディッチ-ファーディナンド-ブラウン
GK:ファン・デル・サール

そっくりな両チームの対戦。もともと両チームが似てるって意識が強かったわけではないけど、少なくとも今回の試合では攻守に渡って本当に似たようなやり方を採ってた気がする。その要因の1つはマンUの選手の配置にある。ローマを参考にしたかどうかは知らないけど、今回のマンUは0トップを採用。細かい部分まで見れば違いがあるのは当たり前だけど、大雑把に見れば考え方はローマの0トップと同じ。要するにCロナウド(=トッティ)の守備負担をできるだけなくして、攻撃に専念させるってこと。その上で、攻撃ではトップという役割は忘れさせる。ルーニーがいるのにCロナウドがトップに入ったってのが意味深。ただし、残念ながらトッティ不在のローマの方は0トップというよりは普通の1トップ的な戦い方をしてたわけだけど。

とりあえずは、そのマンUのシステムについて詳しく見てみたい。上には4‐1‐4‐1って書いたわけだけど、これはあくまでも守備の形を見た結果。後で書くように、攻撃では4‐2‐3‐1に近いやり方が見られたと思う。リーグの方の試合を見てみても、本来的には4‐2‐3‐1の方がマンUのやり方だって気がするし。じゃあ、なんで守備では4‐1‐4‐1を採ってきたかっていう部分に疑問が生まれてくるわけで。でも、その理由はいたってシンプルなものだったと思う。

それは相手とのシステム合致を作りましょうって考え方。基本的には人を見る意識が強いマンUの守備のやり方。つくべき相手が完全に定まってるなら、それほどやりやすいことはない。で、相手の4‐2‐3‐1に対して4‐1‐4‐1は完全なる合致関係。Cロナウドが相手CB2枚に対応し、マンUCB2枚で相手1トップのブチニッチにつくと考えると、残りは完全に1×1で合致関係を生み出すことができるこの形。そのために攻撃での4‐2‐3‐1を守備時には4‐1‐4‐1に代えて戦っていたと思う。

そうやってシステム合致を生み出すようなブロックを作ったマンUだけど、基本的な守備のやり方は受身形。トップに入ったCロナウドは守備が完全免除。全く守備をする意識がなかった。上にも書いたように、守備をしなくてもいいようにトップに置いたんだから、それはそれで合理的。わざわざCロナウドをトップに置いといて、そこから追いかけまわすようなやり方を採った方が疑問が大きい。

ついでに、アンデルソンとスコールズの中盤高めの2枚も自分の前に対する守備意識を特別高く持ってたようには見えなかった。相手のWボランチ(特にピサーロ)は味方CBのすぐ前、つまり結構深い場所でボールを触ることが多かったわけだけど、それに対してどこまでもついていくぞっていう徹底ぶりは見られなかったと思う。一応、見てますよっていう雰囲気を出してたってのが妥当な見方。というわけで、ローマの方はCBとボランチ、つまり攻撃のスタートのところはかなりフリーな状態でボールを扱えたって言える。

ちなみにマンUの両SMFのルーニーとパク・チソンもあまり前に対する守備意識があったようには見えなかった。ただ、相手SBは攻撃のスタートのところで機能することがあまりなかったのも事実。どちらも自分が上がって行って、受け手としての役割を担おうっていう意図の方が強かったように思う。だから、必然的にローマの攻撃のスタートは真ん中のところ。特にピサーロが前線へのボールの供給役として機能することが多かった。

とりあえず、マンUの方は相手のボールの出し手のところに対する守備は諦めた模様。諦めたというか、最初からやるつもりがなかったんだろうけど。というわけで、受け手の方をしっかりと見ましょうっていう守備のやり方だったと思う。だからこそのシステム合致だとも言えるわけだし。自陣を守備の勝負どころと置いて、入ってきたところに対応。見るべき選手の目標が定まってるから厳しく対応できるはず。そこで足止めして周囲が囲い込む。これが1つのシナリオとして想定された。

ただ、そんなに甘くはなかった。というか、そもそもこのシナリオ自体が個人的に考えたものだから、あまり参考にならないのは事実なわけだけど。とりあえず、今回の試合のマンUの戦い方を見てみると必ずしも守備の勝負どころを、相手が自陣に入ってきたところととは定めてなかったように思わされるようなやり方が見られたと思う。

なぜならば自慢のシステム合致を完全に利用できる状況にはなってなかったから。ここで忘れてはならないのは、今回の相手はローマだってこと。ローマと言えば前線の流動性。マンUに負けず劣らずの前線の流動性。トッティがいなかった今回はブチニッチが文字どおりの1トップ的に前線にいた。もちろん真ん中に居座らずに、左右に流れたりって動きも見られたけど、トッティと比べればやっぱりトップ的だったのは否めない。とはいっても、それによってチーム全体の動きが停滞することはなかった。ブチニッチ以外の選手たちは、いつものようにポジションにこだわらない動きを見せてくれたと思う。

そういうわけでマンUとしてはシステム合致がそのまま利用できない状況。基本システムでは対応関係になる相手でも、動き回られるとはっきりしなくなる部分が出てくる。結果として入りどころに素早く対応するってのが難しくなる。要するに1つ遅れた対応が多くなる。加えて、そもそものマンUの個々の入りどころに対する意識がそれほど高くなかったような気もした。一応、チェックが目立ってたし。この辺がマンUの守備の勝負どころが自陣に入ってきたところではないなって感じた部分。

というわけで、ローマとしては受け手の方もそれなりに浮いた状態だったって言える。出し手はほぼ完全なるフリー。受け手もそれほど厳しい対応を受けない。というわけで、ローマの方が相手ブロック=敵陣内に入り込んで行くのは、それほど難しくなかったって言える。切り替えのところとかで、とりあえず前線に蹴って距離を稼ぎ後ろが頑張って追いつくっていうようなやり方が見られたのも事実だったけど、基本的にしっかりとボールを保持すれば思いどおりに組み立てをするのは、それほど難しくはなかった。ローマの良さである中長距離のパスの展開とショートパスの組み合わせによるいい形の組み立ても見られたと思う。

というわけで、組み立てはスムーズなローマ。相手ブロック内に特別の苦労なく入り込めたってのも上に書いたとおり。出し手も受け手も浮いた中で簡単に縦パスを通して行った。そうやって前線に起点ができれば、ローマのよさが出てくる。それは後ろからの飛び出し。次々に後ろから選手を前線に送り込んで、前に厚みを加えていく。今回の試合でも相手ブロックに入れ、後ろからの飛び出しを促進させるっていう一連のやり方が見られたと思う。

このときにシステム合致を利用してるマンUの選手たちはどうするか?それは簡単。相手の飛び出しに合わせて、しっかりと戻って対応する。悪く捉えればズルズルと押し込まれる。それが一番顕著に表れたのが、パク・チソンとルーニーの両SMFの動き。上にも書いたように出し手というよりは受け手として機能するローマのSBは基本的なポジショニングが高い。つまり、マンUの両サイドは基本的に低い位置に引っ張り込まれてる。そのローマのSB。味方がブロック内に起点を作れば、超積極的に高い位置まで入り込んでくる。それに引っ張られたマンUの両SMFはSBのような場所まで下がってることが多かった。

で、実はここにこそマンUの守備の勝負が築かれたと思う。相手の攻撃の厚みに押し込まれたように見える、ラストブロック。でも、マンUの守備の勝負どころはそのラストブロックだった。これは本当に徹底されてたと思う。相手のSBの攻撃参加に押し込まれて、SBみたいな場所にいるマンU両SMF。その1つ後ろのSBは相手のSMFの真ん中流れに引っ張られ、さらにSMFがサイドをケアしてくれるってのもあって、真ん中へ凝縮。そういうわけで極端なことを言えば、最終ラインが6バックになってるような形もしばしば見られた。そして、その前にはCMFが3枚いるわけで、6‐3の最強ベタ引きブロック。

6‐3もかけられたらローマとしては、どうしようもないと言っていい。真ん中だけを見てみても4‐3がいるわけだから、どんだけ密集地地帯ができてるかって話。しかも、普段は4‐2でも守り切れちゃうレベルのマンUの守備陣たち。ローマが流動性ベースで崩そうとする?そんなの関係ないって話。絶対的な人数に加えて、すさまじい跳ね返し力。ローマにとってマンUのラスト1/3を崩すっていう挑戦はかなり厳しいものになった。

さて、ここまではマンUの守備×ローマの攻撃っていう側面から見てきたこの試合。最初にも書いたように、そっくりさんの両チーム。というわけで、真逆のローマの守備×マンUの攻撃っていう側面から見ても、ほとんど同じような状況が生まれてたと思う。つまり、案外簡単にブロックに入り込むマンUの攻撃。これに対して、守備の勝負どころであるラストベタ引きブロックで守るローマ。それをいかに崩すかがマンUの課題って流れ。

ただし、この流れに行くまでにちょっとした時間が必要だった。なぜならばローマが最初に念頭に置いていた守備はマンUのようなあきらめモードではなかったから。つまり、最初からベタ引きブロックのところに守備の重点を置こうとは思ってなかったってこと。ただし、いつでもベタ引きブロックに移行できる意識は持ってただろうけど。それはいつものローマのやり方。とりあえず、立ち上がりはホームってこともあってちょっとした積極性が見られた。

ただ、同時にいつものローマのやり方と大きな変更が見られたってわけでもない。ローマの守備は自陣に4‐2‐3‐1を築いたところからスタート。マンUと同じように敵陣から頑張る意識はない。それはトップがトッティからブチニッチに変わった今回も同様だった。それでも2列目の3枚のフィルターで引っ掛けられればラッキーだなってのがローマのやり方。得意なのはベタ引きブロックだけど、とりあえず中盤で奪えるなら奪いたい。それがローマの考え方であって、今回の試合でもそういうやり方が見られた。ただ、その2列目の動きがちょっと活発だったかなってイメージ。

立ち上がりのローマの守備は敵陣内にまで追いかけていくようなシーンが見られたと思う。それでも最初はブロックを作ったところからだけど。とにかく機を見て守備を自ら開始しようとする意識は見て取れた。それに守備の勝負どころは、とりあえず相手が自陣に入ってきたところと定めてた印象。入ってきたボールに対してマンUのように一応の対応ではなく、しっかりと距離を詰めた対応をしようっていう意識は見て取れたと思う。

これはマンUにとってはまずい展開。相手が積極的に守備をしてくるってのはマンUが苦手なやり方。ここ最近の縦へ急ぎ過ぎじゃないかっていうような攻撃のやり方も、その発端は相手の守備の積極性から。相手が最終ラインにまでプレッシャーをかけてくる。焦った後ろの選手がとりあえず前線にロングボールを蹴る。前線は準備ができてないから、うまく保持できない。なんとかしたとしても、前線がはがれてる。これだけが要因になってるとは思えないってのは、前のダービー戦の時に書いたとおりだけど、少なくとも相手が積極的に来る試合では例外なく、同じような展開になってるのは事実なわけで。そういう意味で、ローマの守備は機能する可能性があったって言える。

それでも、今回のマンUはしっかりとその部分を克服してきた。正確には克服してきたと思うって言った方がいいかもしれない。なぜなら、ローマの守備はやっぱり後ろに重点が置かれてる。上にも書いたように、前で引っ掛けられればいいなってイメージ。何が何でも前から前からっていう積極性はないし、マンUが安定してボールを保持すれば、すぐに引きこもってしまう。だから、本当に前から前から来たチームに対してはどうなるかってのが1つのポイント。少なくとも、1点を奪われたローマが前がかってからはマンUの方は満足に組み立てができなくなった。これは相手のプレッシャーに負けたのか、自分たちが守備にもっと重点を置いたのか、微妙なところ。ただ、少なくとも前半に相手の前への意識を削いでベタ引きにさせたのは事実なわけで、その辺について見ていきたいと思う。

ポイントになったのは3CMF。最近はしばしば使ってる形のようだけど、実際に見たのは今回が初めて。上にも書いたように攻撃時は4‐2‐3‐1っぽい形になるマンU。スコールズとキャリックが低めに位置し、1つ前にアンデルソンってのが基本的な形だったと思う。もちろん、流れの中での入れ替わりは頻繁だったけど。

この3CMFを利用して縦への意識を弱める。基本的にはリバプールと同じアプローチかもしれないと思った。リバプールもトップへトップへ急ぎまくった悪い流れを、4‐4‐2から4‐2‐3‐1への変更によって断ち切ったと言っていい。トップの前にジェラードを置くことでボールが中盤を通り抜けるのを防ぐやり方。同時にやっと真ん中から外へと目を向けられるようになった。ただし、今回の試合で見られたマンUの3CMFの使い方はこういうリバプール的なものとは全く異質なものだったわけだけど。

相手がある程度前からの守備の意識を見せてた時間、マンUのCMFは横並びっぽい位置関係を採った。少なくとも役割的には横並びだった。その後の時間では明らかにキャリック&スコールズの前で受け手としての役割を担うことが多かったアンデルソンだったけど、この時間帯は低い位置での組み立てに参加する意識が強かった気がする。つまり、4‐3で組み立てて前線の3にボールを供給するっていう形になってたと思う。

中盤の3枚がみんな低い位置での組み立てに参加したっていうことの意味が強い。ボールを裁くのが得意なアンデルソン&キャリック&スコールズ。この3人が低い位置でパス交換。相手のプレッシャーも何のその。しかも、当り前のことだけど低い位置でボール回しに参加するのは3人だけじゃない。後ろには4バックが控えてるわけで、逃げ場はいっぱい。SBを参加させて幅を利用することも可能だった。相手が前から前から来ようとしても、否すことは十分にできたと言っていい。そういえば、マンUの低い位置でのパス回しは久々に見た気がする。

ただ、普通に考えると問題があるとも言える。何しろ後ろの4‐3は後ろでパス回し。正確にはエブラは攻撃に出て行ってたから、前線が完全に3枚ってことはなかったけど、それでも薄い。いくら後ろでボールを持てたとしても、それがゴールに向かった展開につながらなければ意味がありませんねって話。つながらなくてもいいんだったら、それこそ後ろにいくらでも人数をかけてパス回しのためのパス回しをすればいいだけだから。マンUはそこんところをどうしたかってのが問題。

結論から言っちゃうと、マンUには何の問題もなかった。それは得意の前線の流動性を利用したから。Cロナウドが降りてきまくる。ルーニーとかパク・チソンが真ん中に入って行く。サイドのスペースにエブラが飛び出していく。そんな感じで前線グルグル。前の薄さが逆に動く場所の選択肢を広げることにつながった。

そして、動きまわる選手を捕まえるのは相手にとって難しい。流動性の高いローマの前線の選手をマンUの選手がきっちりと捕まえ切れなかったように、マンUの前線の選手をローマの守備陣は捕まえ切れなかった。前線からの守備は否され相手の出し手は浮く存在になり、相手の流動に対して微妙に対応が遅れた後ろの方では受け手もルーズになる。この時点でマンUの守備とそっくりな展開が生まれたと思う。

ここでローマは諦めた。守備の重点を完全に後ろに置いたと思う。最初の時点では4‐2‐3‐1をきっちりと作ろうとするローマ。でも、相手のペースになったら(相手が安定してボールを保持したら)、すぐにベタ引き4‐4を形成。人につく意識が強かったマンUに対して、バイタルをつぶすことに重点を置いたローマのブロックだったわけだけど、最後のところを止めるっていう意識は同じだったように思う。

後ろに重点を置くことに決めたローマは徹底していた。4‐4を作ったらそれを維持。そのブロックの外でボールを回す相手には基本的に見向きもせず。もっと言えば、下がって4‐4の外で受けようとするマンUの前線の選手もほったらかし。絶対的に4‐4のバランスを維持して、それ以外のところでは何をしてもいいけど、この中には入れさせませんよってやり方だった。

ここでマンUにローマの攻撃と同じ問題が浮かび上がる。つまり、ラスト1/3をどうするかってこと。引く位置でのパス回しは今や自由も自由。好きなようにボールを回しながら、左右の幅を使ったアプローチが見られた。そういう横の展開に縦パスを時折織り交ぜる。4‐4の間に入り込むのは難しかったけど、そこから出てくれば受け手はフリー。そういう縦パスを織り交ぜることで相手ブロックを低い位置に釘づけにできたと思う。

上にも書いたけど、こういう組み立てのところで時間を使うマンUは久しぶりに見た。そうやって時間を使うことで久々に超高い位置でボールを何度も受けるエブラも見ることができた。それに、前線の動きに合わせて後ろからボールが供給されるってのも久々に見た気がする。だから、前線の動きが有機的に連動し、中盤がそこに絡もうっていう形も多かった。得点シーンなんかまさにそういう形だったし。最近は前の準備に関係なく、ボールが大雑把に送られるってことが多かったから。前の関係が出来上がる前にボールが来てしまうってことが多かったと思う。

それでも4‐4の間に入り込むのは難しかった。というか、ほとんど無理だったと言ってもいい。というわけで、マンUにとってもラスト1/3をどうするかってのが問題になったと思う。よって、今回の試合は非常に分かりやすい展開になった。つまり、どちらが相手のラストブロックを崩すかっていうことに焦点が絞られたってこと。結果から言えば、それを崩したのはマンU。はっきり言って、両チームが相手のラストブロックを崩したのはこのシーンだけだったと言ってもいいと思う。この失点によってラストブロックで守ってばかりはいられなくなったローマ。これがマンUの2点目を生んだ。

相手のラストブロックを崩すところの違い。どこにそれがあったか。1つは個の力。得点につながったのは、ルーニーが個の力で相手の4‐4の隙間に入り込んだところ。相手のブロックを1人でこじ開ける個の力でローマよりマンUが上に行った。それが1つ。

そして、もう1つは皮肉にもマンUが0トップを使ったこと。先制点を奪ったCロナウドは後ろからかなり長い距離を走って飛び出してきた。形的には1トップに入ってるのにも関わらず。その前のシーンから見ると、Cロナウドがボールを受けようとして超低い位置に下がってた(結果的にボールは出ない)。そして、Cロナウドが抜けたトップの場所にはルーニーとパク・チソンが2トップみたいに入り込んだ。さらに、ルーニーがいた場所はエブラが利用。加えてアシストのスコールズがパク・チソンがいたスペースに。こういうグルグル流動性が前線で生まれてた。そして、忘れたころにCロナウドが飛び出してくる。もはやゴール前に押し込まれていた選手たちは、完全に捕まえ切れなかった。

これは本来的にはローマがやりかたかった形だと思う。つまり、0トップ。でも、不幸にもトッティ不在の今回のローマ。上に書いたように流動性が見られなかったわけではない。でも、マンUの得点シーンみたいな本当のグルグル流動性にまではつながらなかった。それが、マンUのラストブロックを致命的に破綻されなかった要因の1つになったのは間違いない。それが皮肉だなって思った部分。

さて、ここでもう1度マンUの3CMFについて見てみたい。最初の時間には横並びになって相手のプレッシャーをかわそうと頑張った3人。でも、ここまで書いてきたとおり時間とともに相手のブロックは下がって行く。攻撃のスタートのところに何人も人数をかける意味がなくなって行く。だから、アンデルソンが本来のトップ下の位置に入って行くシーンが増えていった。そして、それとともにアンデルソンが消えていったのが気になった部分。

トップ下の場所のアンデルソンは非常に微妙な存在。明らかに中盤の選手だからトップと入れ替わり立ち替わりって形が増えない。だからと言って、中盤的に振舞うのもどうかってとこ。わざわざトップ下の所に選手を置かなくても、前の選手が勝手にそこに流れてくるから。だから、アンデルソンがどういう役割を担うべきなのか分からなくなってしまっていた気がする。むしろ、前の選手が動くスペースをなくしてしまったとも言えるかもしれない。それだったらいつもの変則4トップのがいいねって話。

だから、マンUの4‐3‐3は実は4‐3‐3になって初めて機能する形であるように思う。DFはいいとして、中盤は中盤的にFW(3トップ)はFW的にまずは位置する。つまり、立ち上がりのようにCMF3枚は横並びみたいな形の方がうまく機能するような気がした。CMFの役割は基本的には組み立て。前線の選手の動きを邪魔しないように、引く目の位置でプレーした方がいいってこと。

ただ、だからと言って常に4‐3‐3が分離してたらそれはそれで縦へ急ぐのと変わりがない。そういうわけで有機的な連動性をもたらす必要がある。1つは前が詰まった時のスイッチの入れなおしって役割。後ろからの飛び出しで前線に再び動きをもたらすってこと。後は、前線に1つ収まった時に飛び出すってのも1つかもしれない。それに降りてきまくる前線の選手たち。それと入れ替わりに前に出てくような上下のポジションチェンジも有効であるような気がした。とにかく最初の時点から前に人数を増やすのは前線グルグルのマンUには合ってないってのが正直なところ。前回は縦に急ぎすぎて前線がはがれてるって言ったわけだから、ちょっと矛盾するかもしれないけど。

マンUの4‐3‐3については今後も見る機会があると思うからそのときに改めて触れるとして、ここからはマンUがリードした後の展開について見ていきたい。上でもちょっと触れたように、ホームのローマは確実にペースを上げた。守備では前から来るようになった。そのプレッシャーに負けたのか、それとも自ら引いたのかマンUの攻撃が停滞しまくったのは明らかだったと思う。意図してかどうかはわからないけど、マンUの悪いときの適当蹴りまくりが目立っていった。後ろの押し上げができずに悪循環にはまって行ったと思う。

特に後半の立ち上がりは完全にローマペース。ローマの左サイドからの攻撃が目立ちまくり。トネットの超攻撃参加(前半も結構多かったけど)パク・チソンが守備に戻りきれないシーンが目立ったと思う。これはある意味では仕方がない。前半のパク・チソンは働きまくり。これはルーニーにも言えることだったけど。守備ではSBの位置まで戻る。攻撃では最前線まで出て行く。このすさまじい上下動。疲れちゃうのは仕方ない。

というわけでマンUはハーグリーブスを投入。アンデルソンに代えて。加えてシステムを4‐4‐2にした。ルーニー&Cロナウドの2トップ、中盤はパク・チソン-キャリック-スコールズ-ハーグリーブス。後半立ち上がりにやられまくった右サイドにはハーグリーブスを配置して、しっかりと抑えにかかった。ちなみに守備時にはルーニーが4‐4の1つ前に入った4‐4‐1‐1みたいな形になってたわけだけど。この時点で人寄りからバイタルつぶしのローマみたいな守備に移行した。

これに対してしっかりとローマも対策。シシーニョを投入してお疲れモードのパク・チソンを追いかけていった。つまり、今度は右サイドに起点を作ろうってやり方。でも、これは失敗。Cロナウドが左サイドに流れるプレーを意図的に増やすことによってシシーニョウラを突いていった。結果としてシシーニョは思惑通りに攻撃に専念できなかった。あまり効果的に機能できなかったと言っていい。

そのうちにローマ全体がお疲れモード。前半はずっとベタ引き守備、後半はとにかく攻めまくり。文字どおりに足が止まった。攻撃では効果的にコースが作れず、守備でも前から相手のボールに行けなくなった。前がかったところを相手のカウンターで危険なシーンにつなげられることも多々。見方によっては2点でよく抑えられたって展開だった。

対するマンUは危なげなく逃げ切り。アウェーでの2点差勝利は大きい。普通に考えればマンUが圧倒的に有利な展開になったと思う。ローマが逆転するためには、後先考えずにとにかく前から前から守備をすること。今までにも書いてきたし、今回もここまで書いてきたとおりマンUは前から積極的に来られると脆い。そうやって前がかったところを逆にやられるっていう去年の再来的な展開もありうるかもしれないけど、マンUがドタバタする可能性の方が高い気がする。ビディッチが厳しいとなるとなおさら。何しろダービー相手に苦しんだのも相手が前から来たことが要因の1つなわけだから。ローマが頑張れば行けるはず。

それにしても、前が守備をしない弱点を今回のマンUは完全に克服した。前が守備をしないことが、後ろから飛び出しまくるローマに対しては致命的な欠陥になると思ってたのに。フリーで飛び出されまくるってことになるわけだから。今回はとにかくベタ引きで守って飛び出してきた相手を捕まえることに専念したのが1つ。そして、重要な場所にルーニーとパク・チソンっていう運動量抜群、守備の献身性抜群の2人を置いたってことが何よりも大きかった。この2人なら戻ってきて守備をしてくれた。このことがCロナウドを頭に置いた本当の意味だったかもしれない。つまり、相手の後ろからの飛び出しへの対応っていう。
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