ただのサッカー好きが、思ったことをただ書くだけ。 (06年終了)

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2008-05-30 Fri 19:26
バーミンガム×リバプール
<リバプール:4-4-2>
FW:ボロニン-クラウチ
MF:べナユン-プレシス-ルーカス-ペナント
DF:リーセ-ヒーピア-スクルテル-フィナン
GK:レイナ

CL準決勝の間の試合。というわけで、例のごとくリバプールは控えメンバー中心。そういえば前回見たアーセナル戦も今回と同じようなメンバーだった。何だか毎年こんなことをやってる気がするリバプール。ターンオーバー採用で連携が噛み合わず勝ちきれない試合が続いてリーグは絶望。じゃあってわけでリーグは捨ててCLに本気出しましょうっていう。ただし、今年はCLでも準決勝で負けてしまったわけだけど。

とにかく、トーレス、ジェラード、カイト、バベル、Xアロンソ、マスケラーノの組み合わせを見たのは遠い過去のことになってしまいました。ルーニー&テベスと同じぐらいに頑張りまくるFWカイトなんかは休まなきゃやってられないんだろうけど。ルーニー&テベスは試合によってはサボってるけど、カイトは頑張りが評価されてサボれないサイドに配置されてるわけだから。まあ、サイドにいてもサボる人はサボるんだけど。

で、今回のメンバー。あまりにも控え組が多すぎる。だから、攻撃の方向が定まらないっていう可能性は十分に考えられた。その点について、同じようなメンバーで戦ったアーセナル戦ではしっかりと対策を立ててきたと思う。シンプル、単純(同じか)、分かりやすくっていうのがモットー。要するに、とにかくクラウチを目標にやろうって形。クラウチを軸にしてチームとしてクラウチを目指し、クラウチもそれに応えてうまく起点になってた。

今回の試合でも立ち上がりは同じ考え方。とにかくクラウチへの1発のボールが増やす増やす。そうやってクラウチが競ったこぼれ球をボロニンが狙うようなやり方がいくつか続いた。ただし、普段から立ち上がりは蹴りまくるリバプール。しかも、今回はホームのバーミンガムがそれなりに前線から守備をしてきた。立ち上がりの数分だけだけど。そんなこともあってのクラウチの頭狙いだった可能性は十分に考えられる。

なんで、そんなことが言えるかって話。それはバーミガムがいつもの守備のやり方に変更してからは、リバプールのクラウチ狙いが全く見られなくなったから。立ち上がりの数プレーを除いて、少なくとも前半の25分ぐらいまではクラウチは完全に空気。全く名前が出てこない存在だった。ただし、試合全体の流れを見てみると、このクラウチが消えていた時間帯がリバプールの攻撃の質が最も高まった時間帯だったように思う。

とりあえずはバーミンガムの守備のやり方について見てみたい。立ち上がりは上にも書いたように、前線からの意識が見られたバーミンガム。FWが深い位置の相手ボール保持者に対して積極的にプレッシャーをかけて行ってたし、それにつられて中盤の選手も敵陣で守備をするシーンが目立ってた。ただし、この時間帯はリバプールの立ち上がりの蹴りまくりタイムと重なってたから、そういう前線からの守備が効果的に機能するってことはなかったわけだけど。

それに、バーミンガムの方としても、そういう前線からの守備を90分間続けるつもりは毛頭なかったと思う。おそらくホームだってこともあって、立ち上がりからいきなり相手を楽にさせないため、自分たちのペースに少しでも巻き込むための守備。立ち上がりだけは積極的にやる守備なんて、どのチームも採用してるし。そんな気分だったはず。だから、前線からの守備を否されて、ボールが頭の上を越えていったとしてもそれほど痛くはなかったと思う。

というわけで、すぐにバーミンガムは本来の自分たちの守備に移行して行った。そのバーミンガムの本来の守備とはどういうものかって言うと、それは立ち上がりの前線からの守備とは真逆の質のやり方。4‐4‐2の守備ブロックを形成して受ける形の守備。ただし、最終ラインはある程度高い位置に設定してるから、全体がかなりコンパクトになってるのがポイント。ちなみに、最終ラインが高いってことも今回のリバプール相手には相性が良かった部分の1つだと思う。クラウチの頭をゴールから遠ざけておくことができるから。ボロニンもウラに抜けるよりは中盤に降りてきてのプレーの方が目立ったし。

で、このバーミンガムの4‐4‐2ブロックの質はとてつもなく高い。特に4‐4のバイタルつぶしは相当のもの。相手はその4‐4の間になかなか入り込めない。4‐4が近い関係を保ってるから、まず中盤の4が完全にフィルターとして機能する。馬鹿正直な縦パスはことごとくこの中盤の場所で引っかかる。それに運よく間に入り込めたとしても、そこにはスペースが全くない。入った瞬間に四方八方から囲まれてしまう始末。何しろコンパクトな4‐4ブロック。選手間の距離は近くなってるよって話。

この守備にはマンUもアーセナルもかなり悩まされてた。にも関わらず、バーミンガムは降格。おそらくプレミアの多くの相手にはこの守備のやり方は相性が悪いんだろうなって思ったりする。バーミンガムが4‐4の確固たる守備ブロックを作ったとしても、それを利用できなければ意味がない。要するにその4‐4の間が使えなければ困るチームじゃなければ意味がない。もっと言えば、地上から攻めてくるチームに対して有効な戦術だって言える。ポゼッション率は高まっても相手ゴールに仕掛けられない困ったなってのがこの守備の狙い。でも、知っての通りプレミアは百姓一揆主流。地上から攻めてくるチームは少ないから、いくらいい形で4‐4守備ブロックを作ったとしても、それを有効活用できないわけ。

だから、今シーズンのバーミンガムの成績は面白いことになってる。上位の4チームと引き分けが4つ。負けも全て1点差っていう。個人的には上の4チームとの戦いばかりを見てるから、バーミンガムが降格するようなチームだとは全然思えないわけで。だからこそ、やっぱりプレミア的なやり方と相性が悪いんだろうなっていう。上位の4つはよくも悪くもプレミアのサッカー(のやり方)を代表してるわけではないし。

で、前にも書いたことがあるかもしれないけど、おそらくこのバーミンガム悩みはリバプールも抱えてるものだと思う。リバプールだってバランスのいいコンパクトブロックを作って、そこに入ってきた相手を囲い込んだり挟み込んだりってのが守備の狙い。つまり、相手が地上から攻めてきたときに効果を存分に発揮する守備のやり方だって言える。逆に頭の上を越えられるとそんな守備の根拠がなくなってしまう。だから、頭の上を越えるチームが多いプレミアでは苦しむ。玉石混合のCLのグループリーグでも苦しむ。でも、地上から攻めてくる相手が多くなるCLの決勝Tになると力を発揮する。そう考えると納得できる気がする。

話を戻す。コンパクト4‐4に悩まされたアーセナルとかマンUはどういうアプローチに出たか。アーセナルは珍しく蹴ることに決めた。アーセナルにアーセナルらしさを失わせるレベルの4‐4の堅さってことがわかる。とにかく、相手最終ラインのウラへの1発のボールを増やすことによって4‐4の間に隙間を空けようと頑張ったと思う。とりあえずは成功した、この試みもバーミンガムの中盤が下がることであっさりと対応されてしまったわけだけど。結果として引き分け。

対するマンUは逆のアプローチをとった。バーミンガムの4‐2の間を有効に使うことで相手の中盤を前に引っ張り出すっていう。そして、1度4‐4の間をこじ開けてしまえばそこへの出入りを激しくするのがマンUのやり方。アーセナルのやり方よりはバーミンガムの守備ブロックのバランスを崩すことに成功したと思う。ただし、この時期はちょっとマンUの様子がおかしくなりはじめてたころだったから、なんとか1‐0でマンUの勝ちっていう結果に終わったわけだけど。

じゃあ、今回のリバプールはどうしたのかっていう話。まず、最初の時点で目標にしてたクラウチ狙いが現実的ではないのは確か。クラウチに入れる縦パスは4‐4にことごとく引っ掛けられてしまうはず。クラウチに入っても、相手の四方八方からの囲い込みによってすぐにつぶされてしまうはず。頭を狙って蹴ったとしてもゴールから遠い場所ではチャンスに直結させることができない。そもそも競ったボールは相手の4‐4密集地帯に転がるわけだから、バーミンガムのボールになってしまう可能性が高かったわけだし。

というわけで、バーミンガムがバーミンガムらしい守備ブロックに移行した段階で、上にも書いたように立ち上がりの数プレーでクラウチ狙いは諦めることにしたのが今回のリバプール。じゃあ、どうやってバーミンガムの守備ブロックにアプローチして行くか。それが問題になった。で、その中でマンUのやり方ともアーセナルのやり方ともちょっと違ったアプローチに仕方が見られたように思う。それは簡単に言えば左右の幅を活用したアプローチだった。

ボールを持ったら即前線へが合言葉だった立ち上がりのリバプール。前回のアーセナル戦もそんな感じだった。そういう即前線の意識を弱めたのが今回の対バーミンガム用の攻撃のアプローチの始まりだったと思う。DFライン+1つ前のプレシスのパス交換で低い位置での保持時間を伸ばすようになったと思う。そして、そういう低い位置でのパス回しでSBを有効活用しながら左右の幅を利用してたのが特徴的。

そういう低い位置での幅を使ったアプローチで相手の中盤の4が横に間延びしてくれるのがリバプールにとっては理想の展開。ただし、質の高いバーミンガムの守備ブロックはそう簡単にフィルターに隙間を空けることはなかった。要するに、低い位置で左右に回して、ここぞでクラウチへっていうリバプールのアプローチは思惑通りに行かなかったと思う。たまに思惑通りに縦パスを狙うと、ことごとく引っ掛けられる始末だった。

この時点でおそらくリバプールはクラウチ経由の攻撃を捨てたんだと思う。以降、前半の25分ぐらいまでクラウチが消えたってのは上にも書いたとおり。最初みたいに単純クラウチは無理でも、ちょっとずらしてやればクラウチに当てられるだろうっていうリバプールの希望ははかなくも散ってしまったことになる。だから、リバプールは他のやり方を考えなければならなくなった。

で、その次のアプローチも基本的には左右の幅を利用するってものになった印象。低い位置での左右の幅を利用したパス回し→真ん中への縦パスってやり方は失敗。だから、低い位置での左右の幅を利用したパス回し→サイドへっていうやり方に移行していた。目立ったのは右サイドに起点を作るもの。低い位置でパスを回しておいて、左サイドから一発サイドチェンジで逆のペナントへっていう流れが多くなった印象。同サイドを縦に行くよりも相手にとっては厄介な展開だったと思う。

そうやって1発のサイドチェンジによってサイドに起点を作ったリバプール。そのサイドの起点を確固たるものにしようっていう考え方も見られた。つまり、ペナント1人を孤立させずに、ボロニン、ルーカス、フィナンが助けることでしっかりとボールを保持しようっていうもの。そういうサイドに厚みを加えるやり方はプレミアの他のチームではそれなりに見られるけど、リバプールで見るのは珍しいような気がする。

そうやってサイドから相手ブロックへ仕掛けて行く場面が目立ったリバプール、上に書いたように右のペナントを軸にすることが多かったけど、もちろん左サイドも全く使わなかったわけではなかった。とにかく、サイドチェンジを織り交ぜながらサイドに深みを与えるのがリバプールの相手ブロックへのアプローチだったと思う。完全に固められてる真ん中から比べれば、サイドのガードはそれほど厳しくはなかったから、現実的なやり方だったって言える。

そうやってリバプールがサイドで深みを与えてきた時点でバーミンガムのブロックは押し下げられることになった。1発のサイドチェンジでリバプールがSMFの場所に起点を作るっていうやり方もよかった。バーミンガムはそのアプローチの中で狙いどころを定めることができないままに、リバプールの攻撃に深みを与えてしまっていたから。よって、ブロックを下げるっていう選択肢しか残されないことになってたと思う。

この時点でバーミンガムの4‐4‐2の3ラインは消滅。前線に2枚を残して、後ろの4‐4がラストを固めるようなやり方が採られることとなった。リバプールとしてはこの4‐2の間は有効に活用できる場所になったわけで、実際にその4‐2の間、つまり相手の中盤の4の前を使いながら相手ラストブロックに仕掛けて行くようなやり方が見られるようになったと思う。

ここでも使われたのは左右の幅だった。相手のブロック前を通り過ぎるようなサイドチェンジが多くなったと思う。最初は右に起点を作ることが多かったリバプールだから、右→左の展開が目立った。右サイドでは積極的に攻撃に参加してくるルーカスがパス回しに絡み、SBも絡ませながら厚みを加え、そうやって相手の意識を寄せておいて、逆サイドへ振っていう展開。その間で経由点になることが多かったのがボロニンだった。

今回の試合のボロニンはずっと同じような場所でプレーしてた印象。どういう意味か。チーム全体が低めの位置にいるときにはクラウチのそばにいるボロニンだったけど、チーム全体が押し上げられたとしても、その場所に居座ってたイメージ。よって、必然的にチーム全体が押し上げられるとトップ下みたいな場所に浮きあがってくることになった。そして、その場所は相手の4‐4ブロックの外だった。そういう場所でサイドの数的優位に貢献したり、サイドチェンジの経由点になったりっていう役割をこなしてたと思う。

そんな感じで全体として役割が定まり気味だったのが今回のリバプールの特徴でもある。上にも書いたように、低い位置のパス回しには最終ライン+プレシス。ただし、このプレシスが攻撃の流れを止め気味。安易なパスで引っ掛けられることが多かったし、ボールコントロールに手間取ることも多かった。だから、4‐4のブロック作りが念頭にあったバーミンガムの選手も、プレシスに入ったところだけは、ブロックから引っ張り出されて積極的にプレッシャーをかけて行ったと思う。結果としてプレシスはますますボール処理に手間取ることになった。役割分担で低い位置に入ったってことは要するに攻撃のスタートを任されたってことであって、そこが停滞してしまったのはリバプールにとっては痛かったと思う。

だったら、相棒のルーカスが助けに行けばよかったんだけど、今回の試合のルーカスは低い位置での組み立てには全く興味がなかった模様。さっさと前線に飛び出して行ってしまった。これも役割分担。ルーカスの飛び出しはリバプールの攻撃がいい形で回っている時には、いい形で機能してたと思う。高い位置でのパス回しから積極的なシュートまで、目立った存在になってた印象。ただし、時間とともにルーカスは明らかに消えていった。その理由はまた後で。

とにかく、この時間のリバプールの攻撃には工夫が見られた。左右の揺さぶりもそうだし、詰まったら無理をせずに作り直すっていう考え方も見られたと思う。結果として左右だけではなくて上下にも揺さぶるような攻撃のアプローチが可能になってた印象。ただし、その揺さぶりからどうやってゴールに向かうかっていう部分が全く見えてこなかった。この辺にいつものメンバーじゃないっていう弊害を感じさせられた。

相手を押し込んだのはいいけど、そこからラストブロックへの仕掛けはどうするかっていう問題。目標にしやすいクラウチは未だ相手ブロックの中。そもそも、相手がベタ引きになった時点で、これまで以上にクラウチに入れるのは難しくなったって言っていい。そして、そんなベタ引きの相手をこじ開けるほどの連動性がなかったのが今回のメンバーの弱点。可能性があるとすれば、サイドに起点があるのをいいことに、そのままサイドから攻めきってしまおうっていうやり方。

真ん中にクラウチがいるんだから、サイドをえぐってクロスっていう方法は現実的ではある。ベタ引きの相手に対しても横からのボールなら高度な連動性を要せずに付け入るすきはある。でも、このサイドからのクロスがチャンスにつながりえない問題が今回のリバプールにはあった。それは真ん中にはクラウチしかいないってこと。サイドの選手はサイドでプレーし、ボロニンはトップ下的な場所に、ルーカスもトップ下の場所にまでしか出てこなかったのが今回のリバプール。よって押し込んでるのに、ゴール前が薄いっていう謎な展開に。みんな狭い場所に入りたがらなかったってのもあるんだろうけど。いくらクラウチでも1枚じゃ厳しかったっていう話。

確かにリバプールがラストが崩せなかった要因はバーミンガムの守備の方にもあった。バーミンガムのラストブロックはリバプールの左右上下の揺さぶりに対して、予想以上に揺さぶられなかった。押し下げられた時点で最後を固めるって開き直ったような守備。だから、リバプールが頑張っていろいろ工夫してもそれが効果を発揮しない状況だったって言える。

これを見たリバプールが馬鹿馬鹿しいと思ったのか、段々と丁寧な攻撃をやめて言った印象。じっくりと準備して仕掛けても相手ブロックは揺さぶられず、だったらそんな面倒なことはやめようとリバプールの選手が思ったかどうかは分からない。でも、上でも触れた前半の25分ぐらいをさかいにして、明らかにリバプールの攻撃のやり方が雑になっていった。しかも、時間とともにその雑さが増していくっていう最悪の流れだったと思う。

この時間以降のバーミンガムはとっても楽だったと思う。とりあえず守備ブロックを作っておけば、何の心配もなかったから。そして、その守備ブロックを作って待っていれば、相手から勝手に網に引っ掛かってきてくれるような状況。しかも、その守備ブロックを崩してしまおうっていう悪しき陰謀に悩まされることもなく。だからこそ、2点のリードを守れなかったのは痛かったなと思う。普通に考えればリバプール相手に2‐2はいい結果だけど、試合内容を見る限りでは勝ち点2を失ったっていう意識の方が強い。そして、勝ち点2あれば降格を免れてたのもまた事実。たらればを言っても仕方ないけど。

とにかく、リバプールの攻撃の変化の最初の兆候は左右の幅を使うのをやめたっていうこと。左右の揺さぶりにも相手は揺さぶられない。だったら、サイドチェンジなんていらなくね?っていう話になった。それまで通りに起点はサイドに作ることはやめなかったけど、そこから相手ブロック前を横切るサイドチェンジなんていうのは皆無になったと思う。同時に可能性が薄いことが判明したサイドからのクロスも激減した。

じゃあ、どうしたかっていうとサイドから斜めにクラウチを狙う楔を入れる試みが目立つようになったと思う。まだ、この時点では真ん中→真ん中の単純な縦パスじゃ駄目だろっていう意識は残ってたらしい。でも、サイドから斜めに入れるのもまだ駄目だった。何しろ相手の4‐4に何のアプローチもしてないってのは変わってない。斜めに入れようが正面から入れようが。だから、ことごとく引っかかるのは当たり前。この辺の時間からクラウチが目立つようになってきたけど、実際は目立っちゃいけなかった。相手にしっかりと対応されてるわけだから。目立つことは目立っても仕事は全くできなかったと思う。

よって、サイドから斜めのくさびも失敗。じゃあってことで、サイドはサイドで攻めさせてもらいますよっていう流れになっていった。それまではサイドには起点が作られてたわけだけど、それがだんだんと消えて行く。かといって、サイドの重要性がそれほど変化したわけでもなかった。一見すると矛盾する言い方だけど、実際にそうだったんだから仕方ない。どういうことかっていうと、文字どおりに相手ブロックに仕掛けるための起点っていう意識が減っていったってこと。起点ってのは1つの収めどころであり、ボールの落ち着きどころ。上に書いたようにいい時間のリバプールはサイドに起点を作って、攻撃に深みを与えてた。そこでは複数の選手が絡む関係性もできてた。

それがだんだんと起点の役割を失って行く。サイドでボールを受けた選手が、そのまま縦に向かっていくっていうシーンが増えていったと思う。つまり、ボールの落ち着きどころがなくなったわけ。結果として、複数の関係性も築きにくい。基本的に連動性に不安がある選手たちだからなおさら。サイドの場所ではペナント、べナユンが1人でドリブル突破を仕掛けるシーンが増えていったと思う。そこにはSBをはじめとして、誰も他の選手が絡んで行けなかった。

このサイドの使い方の変化とともに、もう1つの変化が生まれる。それはトップへのロングボールの数が再び多くなっていったこと。何をやっても駄目なら信じられるのはやっぱりクラウチの頭しかなかった。蹴るわ蹴るわ。ボールを持ったら即前線へのリバプール方式の復活。でも、それに絡むことができる選手が全然いなかった。せいぜいボロニンぐらい。でも、クラウチが競ったボールをボロニンが拾えない。逆もだけど。この辺にも急造2トップぶりが発揮されてた印象。

これでルーカスが消えてしまった要因が見えてきたと思う。要するにリバプールは縦に急ぎ過ぎなのが原因。サイドでは受けた選手がノンストップで前へ前へと向かっていくし、真ん中では一気に前線までボールが送られる。攻撃の上でボールの経由点、ボールの落ち着きどころが見つからないから、攻撃に厚みを加えることができなかった。逆にルーカスが久々に出てきたところが同点ゴールにつながってるんだから、前半の最初の攻撃をずっと続けてればよかったのにと思ったりもする。

とにかく、リバプールどこかで聞いたことがある流れになっていったと思う。それはまさに暗黒の1月のリバプール。とにかく、トップへトップへの意識が強かったのがそのときの特徴だった。ボールを持ったら即トップ。前線が足りないから、当然のように途中で引っ掛けられる。前線に収まったとしても、縦に急ぎすぎてるから後ろがついてこれない。個人任せのサイドの機能性は期待できなかったから、今回も普通にトップ任せの暗黒期と同じ。でも、ペナントのドリブル突破が1点目につながったわけだけど。

まあ、とにかく攻撃においては暗黒期に逆戻りしたリバプールだったけど、偶然というかなんというか守備の流れもまるで暗黒期のそれだった印象。ただ、その大本の原因はちょっと違ったけど。暗黒期はFWが守備をしなかったことによって問題が起こったけど、今回は全体の1つ1つの場所の守備のルーズさの蓄積が問題を生み出した印象。

アーセナル戦と同じく今回のリバプールも前線から守備をするタイプだった。こうなってくるとトーレスを使うかどうかで守備のやり方が変化するのかなっていう気がする。とにかく、積極的に敵陣内のボール保持者にプレッシャーをかけるやり方が見られた。相手SBに対してリバプールのSMFがどこまでプレッシャーをかけに行くかってのが1つの指標。トーレスがいるときには、ある程度の場所に来るまでは放っておかれるけど、今回はリミッターなくプレッシャーがかけられてたと思う。それに伴って最終ラインもかなり高い位置に設定された。1度守備ブロックをセットするのは同じでも、そのセットされるブロックの積極性に違いがあるかなって思う。

ただ、今回の積極的な守備にはほころびがあった。確かに最前線から忠実にプレッシャーがかかってはいるんだけど、逃げ場が多いっていう大問題。単発守備ではないんだけど、直接的にプレッシャーをかけている周囲の選手がいい形で次を狙えてないというか。チームとして選択肢を切りきれてなかったように思う。結果として背後にスペースを残してくる問題を抱えることになったのが今回のリバプール。バーミンガムがつなぐチームじゃないだけに致命的な欠陥にはならなかったけど、やっぱり問題は残った。ブロックから引っ張り出された選手が引っ張り出されたままになってしまうことで、全体が間延び気味。選手間の距離が広がってしまって、囲い込みとか挟み込みで奪い切るシーンが作れなかったと思う。リバプールにとっては大事件だった。

で、逃げ場の多かったバーミンガムは案外ボールを保持することができた。というか、案外ボールを保持してた。上にも書いたようにつないで崩すチームじゃないし、つないで崩そうとしたらおそらく失敗したはず。リバプールの守備の質だって特別酷いってわけじゃなかったから。でも、相手がまだ本気で守備をしてこない低い位置での保持時間をある程度増やすことには意味があったと思う。それに、保持時間を伸ばしつつある程度の場所まで持ち上がったことにも。

それでも最終的には前線に蹴るバーミンガムだけど、低い位置である程度時間を使うことによって前線に人数を送り込むことができた。単純にロングボールを送り込むにしても前線が2トップだけの状況よりもよっぽど心強い。でも、実際には攻撃の方ではあまり効果を発揮しなかったのも事実。何しろバーミンガムの選手の前線へのボールの精度が悪いのなんのって。全く味方がいない場所にボールが送られることが多々あった。ただし、これはやっぱりリバプールの前線からのプレッシャーが聞いた結果だろうなって思う。逃げ場は与えてしまったリバプールの守備だけど、チャンスに直結するようなボールまでは簡単に出させてくれなかったから。

低い位置でのバーミンガムのボール保持は攻撃面ではあまり意味がなかったとして、じゃあどういう意味があったのか。それは守備面。前線に人数が入ったことで相手にボールが渡った瞬間の守備、要するに切り替えの守備を効果的に行うことができたと思う。それこそ2トップだけじゃ不可能な部分。実際に先制点も切り替えの守備で効果的に奪ってからの流れだったし。1人1人の意識の高さはもちろんだけど、やっぱり前線に人数がいたことの意味は大きかった印象。

このバーミンガムの切り替えの守備の質が高かっただけに、逆にリバプールの切り替えの守備の酷さが目立ってたように思う。ブロックをセットしたときの守備に問題があったのはここまで書いてきたとおりだけど、ただ、それはまだ許容範囲内だった。連動性に不安のあるメンバーなら仕方ないかなっていう面もあったと思う。まあ、アーセナル戦では質の高い守備ができたんだから、今回もやろうと思えばできただろって思うことは思うけど。

それに対して切り替えの守備は、まず何よりも個々の意識が重要になってくる。そして、その切り替えの守備が効かなかったのが今回のリバプールだったってのは書いたとおり。攻撃でボールを奪われた瞬間に全く相手にプレッシャーがかからないシーンがかなり多かったと思う。だから、バーミンガムの選手は落ち着いて奪ったボールをつなぐことができた。それに対してリバプールの選手はおとなしく戻って守備ブロックを形成。よって、両者の攻撃が交互に繰り返されるような展開が生まれたと思う。

力関係から言えばリバプールが圧倒するはずの試合が互角の展開になった理由はここにある。リバプールは切り替えの守備が効かなかったことで、1度の攻撃で満足しなければならない状況に陥った。前半の最初の時間はかなり相手を押し込んだはずなのに、波状攻撃になることは全くなかったと思う。結果として相手が守備のバランスを整える時間帯を与えてしまった。そうなれば当然のように、そのバランスを崩す、つまり押し込むアプローチからやり直さなければならない。切り替えでもう少し頑張ればそんな面倒なことをしなくてもよかったのに。

今回のリバプールは完全に自滅的な流れをひた走った。クラウチ頭→前後左右の揺さぶりアプローチ→サイドからトップへの斜めのくさび狙い→サイドの孤立&クラウチの頭復活→クラウチの頭って感じ。最後のクラウチの頭の後に再びサイドの活性化が図られる。リーセとインスーアが交代した後の時間ぐらいから。そして、そのサイドからの流れで2点を奪って同点に追いついた。雰囲気としては完全に負け試合だったんだけど、自力というかなんというか。

ちなみに、1点を奪われた時点でバーミンガムが引いてしまったのもリバプールにとっては好材料だったと思う。おそらく本気で守りに行ったんだろうけど。陣地を増やすアプローチを捨てたリバプールにしてみれば、バーミンガムが引いてくれたおかげで勝手に陣地が増える嬉しい状況に。陣地が増えれば全体が押し上げられ、強制的に前線に厚みが生まれるって話。バーミンガムとしてみれば、それまでのコンパクト4‐4‐2を維持したかった。いわゆる2‐0が一番危ないってやつか。
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2008-05-28 Wed 20:54
日本×パラグアイ
<日本代表:4-5-1>
FW:巻
MF:遠藤-山瀬-俊輔、鈴木-憲剛
DF:長友-トゥーリオ-寺田-阿部
GK:楢崎

バーレーン戦後に脱オシム宣言をした岡田監督。突っ込みどころ満載のこの宣言なんだろうけど、とりあえずコートジボワール戦では確かに宣言通りにオシム色は消えていた。それがいいことなのか、悪いことなのかは現状では判断できないけど。逆に言えば、それを判断するための材料を与えてくれるはずだったのが今回のパラグアイ戦だったって言える。

と、思ってメンバーを見るとなんだかよく分からないことになってる。岡田監督の進む方向が見えかけた前回の試合から7人を交代。メンバーを固定して岡田色の定着を図らなくてもいいのかよって話。オシムがアジア杯でやったように、オリベイラが昨シーズン初めにやったように。メンバーをこれだけ入れ替えたら、また0からのスタートなわけで。そんなことをしてたら、いつまで経っても岡田色は定着しないだろうと思う。まさか、本番のW杯予選で定着を図るなんていうテストじみたことをやるつもりなんだろうか。

さらに、そのメンバーの内実がびっくりな状況。遠藤と鈴木とW中村の中盤にトップの巻。どこかで聞いたことがある、このメンバー。誰がどう見たってオシムの遺産じゃないかっていう。仲間はずれは山瀬だけ。しかも、よりにもよってアジア杯で徹底的にオシム色を叩き込まれたメンバーたちの組み合わせ。何を考えてるのかよく分からないメンバーだった。

1つ考えられるとしたら、オシム色を完全に消滅させてやろうっていう試み。この組み合わせからオシム色を消すことができれば、オシムが作ったものを気にする必要もないっていうことになるから。ちなみに、このメンバーの中には憲剛&遠藤&山瀬っていう岡田トライアングルも含まれているわけで。鈴木も入れればいつもの岡田監督の中盤だし。この4人の影響で俊輔を岡田色に引っ張り込み、結果としてオシムの遺産をなくしてやろう作戦だった可能性もなくはない。まさか、オシムに戻るためにこのメンバーを採用したわけでもないだろうし。

そんな思惑があったのか、なかったのかは分からないけど、本当にそんな意図があったんだとしたら岡田監督の狙いは大失敗。前半終了時点でオシムの偉大さを実感してたんじゃないかと想像する。なぜなら、前半は完全にオシムに引っ張られてたから。それはある意味では当たり前の話。オシムはアジア杯期間中を使って意地のメンバー固定で型を作り上げた。対する岡田監督は気まぐれもいいところ。試合をやるたびに新しい特徴が表れてきて、確固たるものが全然見えてこない。選手に染み付いてるのは、未だにオシムの型だって言える。

というわけで前半の日本代表の戦い方から見て行くわけだけど、前半は上にも書いたようにオシムに引っ張られた戦い方。でも、それが完全にオシムのサッカーかっていえばそんなわけでもなかった。そこかしこに岡田色が見え隠れ。そして、整理がされていないと、それらは圧倒的に相性が悪い。縦への意識が強い岡田色⇔横の幅を使いたいオシム色、中→外→中の岡田色⇔外→外→中のオシム色…。

正反対のやり方。チーム全体の意思統一のもとで併用が行われるなら、それはそれで面白い。休む時のオシム色と仕掛けるときの岡田色の併用の可能性は今までにも書いてきたとおり。でも、個々でやりたいことが違っていたら、どちらも中途半端に終わるわけで。何しろどちらも連動性重視っていうことでは同じ。ただ、連動性の方向に違いがある。選手が別の方向を目指していたら連動は図れない。よって、どちらのやり方も完成しない。相性の悪い2つのやり方のモザイク模様。それが見られたのが、今回の試合だったと思う。そして、前半はそれが特に顕著に表れた。

前半の攻撃陣を見てみると、純粋オシムの俊輔+純粋岡田の山瀬+両方を経験した鈴木、遠藤、憲剛、巻。どちらに傾くのかはある意味で興味深かったわけだけど、ここでチームがオシムに傾いた。上にも書いたように、オシムの型がチームに染み付いていたことと、俊輔の影響力がすさまじかったことがその要因だと思う。前半の俊輔は完全にチームの中心。岡田ジャパン初招集の選手が最も目立ってる時点でなんだかなって感じ。純粋オシム中村の活躍によって、脱オシム宣言はどこへやら状態に陥った。

ここにおいて困ったのが純粋岡田の山瀬。1トップ下に入った山瀬だから、期待されてたのは前線に飛び出していくFWの動き。にもかかわらず、今回の試合の山瀬はFWの場所で目立つことができなかった。むしろ、遠藤とか俊輔と同じように低い位置に降りてきてボールに触れるシーンが多々。でも、オシム色に慣れていない山瀬はそんなパス回しにうまく絡むことができない。FWの場所にも出ていけないし、中盤のパス回しにも絡んで行けない。まるでカミカゼシステムの稲本みたいに、何をしていいのか分からない状況になってた気がする。

それでもオシム色の核となる中盤はそのまま残っているわけで、なんとかオシム色を体現できそうな雰囲気もなくはなかった。実際にポゼッション率を高めることには成功しているわけだし。ただし、そのポゼッションが圧倒的なポゼッションにつながらなかったのが、今回の日本代表。要するに上にも書いたように、完全なオシムにはなりきれずにいたと思う。

その要因はオシム色を体現する上では中盤の重要度が最も高いわけではないから。じゃあ、誰が重要なんだって言えば、それは両SB。オシムの戦い方における両SBの重要性は去年もここで散々書いてきたとおり。オシムのやり方を復習すると、サイドに起点を作る→そこで数的優位を作り、ランニングを組み合わせながらパス交換→そのサイドが詰まったら逆サイドへ展開→そこで数的優位を作る…。そんな集中→展開→連続の組み立てが見られた。そして、ここにおいて軸になってくるのが両SBの加地と駒野だったと思う。

便宜上SMFに置かれている遠藤&俊輔はWGタイプではない。サイドに張りつくことは少なく、フラフラと動き回ってボールをもらう。だから、サイドに起点を作ることを重視したとしても、そこにはSMFがいないってことも多い。だから、サイド専属としてのSBの重要度が上がることになるのがオシム色。そのSBを軸にして、ボランチなりSMFがサイドのパス回しに絡んでいく。同時にサイドをSBが担当することで、中盤を真ん中に押し込む効果も生まれる。ミランパターン。そうやって中盤に強制的に近さを生み出すってこと。

だから、オシムのやり方では組み立ての上ではSBの存在が絶対的に必要になってくる。でも、岡田監督のやり方ではSBに組み立ての役割は求められてない。上でもちょっと触れたように、真ん中で作ってサイドに展開するのが岡田監督のやり方。よって、SBが目立ってほしいのはラストの場所。中盤を真ん中に寄せてそこで組み立ててる間に蓋のないサイドでSBに最前線まで出てきてもらいたい。中で接近→外へ展開のパターン。オシムと岡田ではSBの役割も全然変わってる。

だからこそ、岡田監督は就任当初から内田を重用した。岡田監督がSBに求める能力は長い距離を一気に最前線まで飛び出していくスピードと運動量。最近の長友重用にも、それが見え隠れしてる印象。組み立てになんて参加しなくていいから、とにかく最前線まで飛び出してくれ。それが今のSBの役割。要するに攻撃ではWGになってもらいたいわけだ。

今回の長友も例外なくそんな動きをしてたと思う。組み立てに参加するよりもとにかく前へ前へ。低い位置のパス回しに長友が参加する機会は皆無だった。エブラとブラウンの関係みたいな。そう、右はブラウン阿部だったわけ。阿部は攻撃を自重。おそらく左の長友とのバランスを考えてのものだったはず。左肩上がりというか、変則3バックというか、そんな形が見られた今回の日本代表だった。

ちなみに、この左右のバランス崩しは失敗だったって言える。低い位置に降りてくることが多かった遠藤と俊輔の両サイド。遠藤が降りてきたときには、代わりに長友が高い位置に入っているから問題なかった。でも、俊輔が降りてきたときに代わりに出て行く選手がいない。そして、それを見た巻が気を使う。俊輔がいなくなった右サイドに流れるシーンが多発。そして、上にも書いたように今回は山瀬がFWの場所で目立てず。文字どおりの0トップはこうやって生まれた。

さて、話を戻して、ここにおいてイレギュラーな状況が生まれてたって言える。中盤はオシムのやり方でやりたい。でも、オシムのやり方を実行する上で重要なSBは組み立てに絡んでこない。組み立てに興味がない長友と攻撃に興味がない阿部。だから、中盤の選手がいつもどおりにサイドに数的優位を作ろうとしても、どうしても1枚足りないっていう現象が生まれてしまったと思う。

結果として何が起こったかというと、パス交換の場所が1つ低い場所になってしまったと思う。パスに絡む人数が少ないから、相手のプレッシャーをダイレクトに受ける場所でのパス回しは危険極まりない。本当はより高い位置でパス交換をするのがいいに決まってる。そういう近い位置のパス交換にサイドチェンジを織り交ぜながら、相手に狙いどころを定めさせない。そうやって徐々に陣地を増やしていくっていうのがオシムのやり方。それに対して、パス交換が低い位置で行われた今回は相手の守備ブロックを押し下げることに失敗したって言える。ポゼッション率が上がったとしても、その実効性がどうだったのかっていう問題がこの辺に見える。

しかも、今回の試合では遠藤がイマイチ。実は遠藤は前回の試合でもイマイチだった。この辺が後半の松井との交代が山瀬じゃなくて遠藤だった要因だった気がする。そんなイマイチの遠藤は、とりあえずポジションにこだわらずパス交換に参加してタッチ数はそれなりに増やしてはいた。でも、オシムの時にはもっと俊輔と対等だっただろうなって思ったりもする。今回はあまりにも俊輔が目立ち過ぎ。

で、その俊輔を助ける役割を担ったのが憲剛。常にボールを受けられる場所に入ってタッチ数を増やした。鈴木はもともと攻撃に目立ちまくるタイプではないから(散らしなんかは結構頑張ってたけど)、結果として前半はW中村目立ちまくり。ポゼッション率が高まったとは言っても、それはチームとしてのポゼッションだったのかなっていうのは強く思うわけで。実質的には中村と中村のポゼッションだった。そんな2人の関係で相手を崩し切るわけもなく。本当は憲剛が俊輔に近づいてプレーしたいところなのに、俊輔が憲剛に近づいて(降りてきて)プレーする時間が長くなったと思う。

どちらにしてもSBが攻撃に絡めない時点でパス交換が低い位置で行われたってのは上にも書いたとおり。遠藤も俊輔も、ときには山瀬まで低い位置に降りてきてのプレーが目立ったと思う。しかも、誰かが降りてきたら誰かが代わりに出て行くっていう形ができてた前回のよさはどこへやら。憲剛、鈴木はあくまでも遠藤とか俊輔の後ろでプレーすることを選び、一向に飛び出していかない。上にも書いたように阿部だって飛び出していかない。唯一、飛びだしていったのは右の長友のみ。そういう役割を与えられてたんだろうけど。よって、敵陣深くに入り込む手段は低い位置で作って置いてからの走れ長友ばかりになってしまった印象。

とはいっても、いくらなんでも前線に人数が足りなすぎる。前回は左サイドに6人が入るなんていう異常事態が見られたのが嘘のように、今回は長友が1人で左サイドを飛び出していった。長友としては聞いてないよって話だったと思う。何しろ岡田監督のやり方では真ん中で作ってるからSBはラストだけをお願いねってはずだから。前回はサイドから一気に縦を侵攻するやり方が目立ってたけど。とにかく、今回は1人で出て行かなければならない状況。しかも、頑張っても真ん中には人がいなかった。

確かにときには真ん中に起点を作れるんじゃないかっていう雰囲気があったのも事実。何かの拍子に巻だったり、高い位置の山瀬だったりに縦パスが収まるシーンも見られた。でも、過疎化が激しい前線。そこに収めたとしても、その後にどうすることもできなかったと思う。結果として相手につぶされたり、もう少しマシな状況としてはせっかく入った縦パスをボランチまで下げて作り直したりっていう結果に終わってしまったと思う。

この辺に岡田色が浸透してないなっていう状況が見え隠れしてる。東アジア杯を見る限りでは、岡田色ではトップに当てることが目標になってた。そうやってトップに当てておいて、中盤とのパス交換をする形が多い。つまり、中盤2列目のの選手は前との関係を重視することが求められてたってこと。結果として前を向いてのプレーも可能になるし。東アジア杯では、じゃあどうやってトップに当てるのか?っていう大いなる疑問が生まれたのは事実だったけど、ひとたびパス回しが始まれば中盤が前を向いた状態で1タッチ2タッチのいいリズムでのパス回しが目立ったと思う。そもそも、そんな形をやりたいからこそ4‐1‐3‐2システムを採用した可能性だってある。

そんな東アジア杯のメンバーのうち、中核となる山瀬&憲剛&遠藤の岡田トライアングルがしっかりと残ってた今回の試合。それは上にも書いたとおり。でも、俊輔の動きに引っ張られたのか何なのか、みんながみんな後ろとの関係を重視する動きをしてた印象。ボランチに入った憲剛はちょっと違うから。後ろからボールを受けて、それを前にどうやって供給するかがポイントになってた。でも、前にはひとがいなかったんだけど。どちらにしても中盤の2列目には前との関係を作ってもらいたいて言う岡田監督の狙いは全く浸透してないことだけが分かった今回の試合だったと思う。

そんなわけでよく分からない内容が見られた前半の日本だったけど、立ち上がりの時間帯には案外チャンスを作ることができてたと思う。パラグアイの監督の言葉から言えば、前半の25分まで。じゃあ、この前後に何があったのか。前回のように日本が前半早々に疲れたのか。そんなことではなかった。日本がどうこうっていう問題じゃなくて、単純にパラグアイの守備のやり方が変わったってだけだったと思う。

立ち上がりのパラグアイの守備は前線から積極的に行くもの。ある程度、目標を定めながら敵陣深くの相手ボールに対しても積極的にプレッシャーをかけて行ったと思う。その守備の出足がそれなりに早かったし、よって寄せも素早かったから、試合開始直後の日本代表の選手にはちょっとした戸惑いが見られた。パスミスも目立って、組み立ての最初のところで相手に引っ掛けられるシーンもいくつか見られたと思う。

ただし、パラグアイの守備は、確かに1つ1つの寄せの質は高かったけど、それを否してしまえば、次の場所では再び0から寄せを開始するような状況だった。早い話が連動性がない、単発の守備が繰り返されたって言える。そして、そういう実効性の薄いパラグアイの守備の背後には広大なスペースが残されていた。何しろ日本陣内の深くまで追いかけてきているパラグアイの選手たち。それだけ守備ブロックのバランスは崩れていることになるから。そして、もともとからしてカミカゼがベースになっているように技術力に秀でた日本の選手たちは、落ち着いてパス交換を繰り返しながら、そういうギャップに入り込んでいった。

そうやってギャップに入られたパラグアイの選手はどうするか。この時点で前線からボールにプレッシャーをかけて行くっていう守備の根拠がなくなっているわけだから、とにかくゴール前を固めるしかなくなっていた。全体の押し下げてベタ引きブロックを作ることが多くなったと思う。というか、パラグアイはその後のいい時間帯の守備も含めて、1度入り込まれたら諦めてゴール前にブロックを作るような守備のやり方を採ってたと思う。ただし、そういう後の時間帯は相手をベタ引きにさせるのに苦労することになるわけだけど。

とにかく、立ち上がりの時間帯はあっさりと相手ブロックに入り込むことができた日本代表。そして、あっさりと相手を押し込むことができ、あっさりと陣地を増やすことができた。陣地を増やすことができれば、全体が押し上げられるわけだから、強制的に前線に人数が多くなる。よって、この時間は前線の人数の少なさはあまり問題にならなかったと思う。課題の1/3の崩しについても、相手の守備が混乱気味だったからか、短い時間にしては決定的なチャンスをいくつか作ることができたと思う。この時間が今回の試合の日本が最も輝いてた時間だった。

それが上に書いたような前半の25分過ぎから変化する。これも上に書いたように、それはパラグアイの守備に変化によるものだった。この時間より後のパラグアイは前線の選手が無駄に引っ張り出されなくなったと思う。それまでの時間のパラグアイは面白い形。日本にブロックに入られれば全員がベタ引き→日本が作り直しのバックパスをしたところで再び前線から追いかける→でも、それによってギャップができるからブロック内に入られる…っていう繰り返し。そんな無秩序なやり方はやめようと思ったパラグアイ。1度4‐1‐4‐1の組織を作り、ひとまず敵陣内の相手ボールは自由にさせようっていう意思統一を作り出した。

これに困ってしまったのが日本。それまでは相手が勝手にギャップを作り出してくれ、そこを突いて簡単に相手ブロックに仕掛けることができたのに、これからは自分で相手のブロック内に入らなければならなくなった。ここで上の方で書いてきた攻撃の問題が浮き彫りに。まず、組み立てにおいて高い位置でボールを保持できない。よって、相手の4‐1‐4‐1はバランスよく維持されたまま。さらに、低い位置にどんどんと人数が溜まっていった日本。過疎化した前線の選手は相手だって捕まえやすかった。

結果として日本は相手ブロック内に入れなくなってしまったと思う。無理やりに縦パスを送ったとしても、そこではそれまでの比じゃないパラグアイの守備が待ってた。自陣に守備エリアを絞ってるから、ボールが入ってきたときに寄せる距離が短い。よって、それまで以上に素早いチェックが効くことになった。さらに、4‐1‐4‐1で選手間の距離も近くなっていたから、1つのプレッシャーに対して周囲がすぐに協力できる体制が出来上がってた印象。

そんなパラグアイに対して日本代表はどうしたかって言うと、一番簡単な方法に出たと思う。それは1発で相手のウラを狙うボールを蹴りこむってこと。前回のコートジボワール戦で全く見られなかった1発のボールを多用。まあ、普通に組み立てても無理だったろうから仕方がなかったと言えば仕方がなかった。オシム色と岡田色が混ざり合って意味不明な状況に陥って無秩序状態の地上からの組み立てよりも、今まで嫌ってたけど単純さでは一番の攻撃を選んだって言うことか。しかも、巻の頭じゃなくてウラへってあたりに苦しさを感じる。巻の頭に入れてたとしても、近くでそのこぼれ球に反応する選手はいなかっただろうから。どうせウラへのボールもチャンスにはつながらなかったわけだけど。

さて、こんな前半の内容に対して後半の開始とともに早速岡田監督が修正を加えてきた。遠藤に代えて松井の投入。上では遠藤の調子がイマイチだったからじゃないかって書いたけど、勘ぐるならもっと大きな意味があったと思う。それは、本気でオシム色を消しに行ったってこと。オシムジャパンでのプレー経験が長かった遠藤から、オシムジャパンでは1度しか試合に出ていない松井への交代。しかも、松井は前回の試合での岡田色の立役者。後半の交代のコンセプトは基本的にこの流れだったと思う。

そして、ある意味ではその考え方は成功したと思う。後半のやり方はパラグアイの監督が言ったとおりに別チームのそれだった。そして、その別チームってのは前回のチームに近くなってた印象。サイドで超密集地帯を作ってショートショートで打開しようっていう試みが明らかに増えてた印象。後半の立ち上がり早々に、松井&長友&山瀬&鈴木で左サイドを打開していくシーンが見られたし。

前半とは真逆なこのやり方。前半は低い位置からパスを回しながらチーム全体として徐々にビルドアップしようとする狙いが見られた日本代表。結果としてそれは失敗に終わり単純なロングボールが増えたわけだけど。それに対して後半は最短距離で一気に縦を目指す岡田色の復活。1度攻撃を始めたら、そのまま攻めきってやろうっていう攻撃。同じショートパス重視のやり方でもミランからアーセナルへの転換。

これにはやっぱり松井の投入が大きかった。縦を一気に侵攻するためには縦への意識が高い選手がいなければならない。前半はそれが長友だけだった。中盤の選手たちは後ろからの関係を重視して、ズルズルと後ろに下がって行ってしまったし、その中で作り直しのバックパスが多いこと多いこと。岡田監督がやりたいやり方では作り直しなんてのは極力少ない方がいいんじゃないかと思う。このやり方の変更によって、山瀬が前半とは打って変わって目立つ存在になり始めたと思う。代わりにあれだけ前半は目立ちまくってた俊輔が消え気味。純粋岡田が目立ち、純粋オシムが消えた流れ。それが前半と後半の違いを如実に表してた。

ちなみに、この前後半の違いについていろんな人の反応を見てみると面白い。まず、岡田監督は後半の方が前半よりもよかったって評価してる。当たり前と言えば当たり前。コートジボワール戦を見ても、本当にやりたかったのは後半のサッカー。最低限できたっていうのは前回ほどはできなかったっていう意味だと思う。

対してパラグアイの監督は前半の方がよかったっていう評価。これも当たり前。前半は完全にボールを持たれてしまい、サイドチェンジを織り交ぜた日本の組み立てに結構動かされてた。確かに危険なシーンは作らせなかったし、守備を改善して以降はほぼ完璧に押さえられてたわけだけど、やっぱり受動的な守備の辛さはあったんだと思う。それに対して後半は日本がある意味では急いで攻めてきてくれる。そして、勝手に狭い場所に入り込んで勝手にプレーエリアを限定してくれる。守りやすいのなんのって。岡田監督にしてみれば、アーセナル的に狭かろうがなんだろうが崩し始めたサイドを崩し切るのが狙いなんだろうけど、やっぱり相手にとっては守りやすかったってのが本当のところだったってこと。

そして、もう1人のコメント。それは俊輔。俊輔は言った、なんでサイドチェンジをしないんだと。その答えは簡単。岡田監督のサッカーはサイドチェンジをしないから。ここまで書いてきたように、最短距離を目指すのが岡田監督のやり方。作り直しのサイドチェンジで遠回りをするのは馬鹿馬鹿しいと思ってるかどうかは知らないけど。大体、前半を思い出してもサイドチェンジのパスを繰り返してたのは俊輔のみ。それを見て思い出したかのように憲剛、鈴木もいくつかは見せたわけだけど。

俊輔の言いたいことも分かる。後半の立ち上がりは松井が左寄りでのプレーを増やしてたから、超密集地帯も左サイド寄りに作られた。長友の攻撃参加が活発だったこともあったし。右にいる俊輔はおそらく右サイドでどフリーの状況だったんじゃないかと思う。にもかかわらず、サイドチェンジのボールは一切出てこない。なんだか知らないけど左サイドの糞狭い場所でパスを回している味方たち。こっちに出せよって思ったとしてもおかしくない。

そのうち、そんな俊輔の気持ちをみんなが察したっぽい。でも、ちょっと違った形で察した。後半の途中からは超密集地帯が右サイドに作られることが多くなった印象。松井も右寄りでのプレーを増やしていった。でも、その超密集地帯でのプレーに俊輔はいい形では絡めなかったと思う。俊輔としてみれば、そういうことじゃねーよっていう気分だった気がする。

まあ、とにかく超密集パス回しから最短距離を崩しに行くっていう岡田監督の狙いは前半よりは体現されることになった後半。ただし、そこで大きな問題が立ちはだかる。上でも触れたとおり、ひとたび自分たちのブロックに入り込まれたパラグアイは後ろに重心をかけたベタ引きブロックを作り出した。ベタ引きブロックの中はどうなってるかっていうと超密集地帯。日本としては敵の守備の超密集地帯に超密集パス回しで入り込もうっていう試みが行われたことになる。アーセナルも悩みまくってるこの問題を日本が解決できるわけもなく。結局、いい形での崩しは見ることができなかった後半だった。

攻撃についてはこんな感じ。前半よりも後半の内容が悪くなったっていう意見が多いみたいだけど、岡田監督として見れば前半よりは後半の方がよかったと捉えてもおかしくはない。どちらがコートジボワール戦に近かったかって言えば、明らかに後半だった。それでもコートジボワール戦のようないい流れにつながらなかった理由は2つ。1つは運動量が必要な形なのに、後半から始めたこと。2つめはボランチの攻撃参加。憲剛も鈴木も上に書いたように、前の選手との前後関係をあまり崩そうとしなかった。それからサイドに超密集地帯を作ってる中でサイドの助けに出るシーンも少なかったと思う。やっぱり前への推進力が必要なこの形の中ではいかに後ろから飛び出してきた選手が絡めるかってのがポイントになるはず。そう考えると右SB阿部も合ってなかったかなって思ったりする。後半はそれなりに攻撃参加を増やしたけど。

じゃあ守備はどうだったのかっていう点について見てみたい。コートジボワール戦で見られた前線からの戦術的な追いかけ守備は岡田色の1つだって言ってもいいと思うから。で、その前線からの追いかけは今回の試合でもやろうとはしてたと思う。そのために巻を頭に使ったんだと思うし。FWの役割が重要な守備のやり方の中で、そのFWを1枚にするならば、やっぱり適任は巻ってことになると思う。

ただ、前回の試合のような守備の連動性を見ることはできなかった。前回見られた“次”のよさがことごとく消えてしまっていたと思う。前線で追いかける選手は次をあまり意識していなかったし(前回はプレッシャーをかける方向に統一された工夫が見られたのに)、よってブロックに入ってきた相手のパスを引っ掛けるのも難しかった。さらに、1人が当たった時の周囲の反応が遅い遅い。粘り強く相手のボールに守備をしている味方への助けが少なかったように思う。効果的に挟み込んだり、囲い込んだりができずに、結局相手を逃がしてしまうシーンが目立ったと思う。これについては攻撃における選手間の距離の遠さが守備にも影響を及ぼしていたのかなっていう気がした。

さらにパラグアイの攻撃の仕方も日本の守備とは相性が悪いものだったと思う。前回のコートジボワールはショートショートで地上から崩すチームだった。つまり、日本の前線からの守備の網に引っ掛かってくれるタイプ。逆に今回のパラグアイは単純なボールで距離を稼ぐチームだったと思う。しかも、最終ラインは上げずに深めのところから1発のボールを蹴ってくる。よって、SMFがどこまでSBを追いかけるのかみたいな迷いが見られてた気がする。とにかく、自分たちの守備のまずさに加えて、相手の攻撃が守備ブロックの上を越えるってことでどうしようもなかった面も今回はあった。

それを考慮してかパラグアイの守備の改善が見られたのと同じぐらいの時間になって日本の方も守備のやり方を微妙に変えた。追いかけても頭の上を越えられるならば、追いかけない方がいいっていう守備のやり方。無駄にスタミナを浪費しない省エネ守備に転換したと思う。巻が山瀬と横並びになるぐらいの位置にまで下がって、基本的には自陣にブロックを作ることになった。結果として前線から積極的に守備をするっていう岡田色も消えたことになる。ちなみに、後半は攻撃において超密集地帯を作ったことで切り替えでの守備はそれなりに機能するようになった印象。

というわけで、ここ2戦で何がなんだかよく分からなくなってしまった印象の岡田ジャパン。脱オシム宣言をしたのはいいけど、1戦目と2戦目で違った内容のサッカーをしてるんだから。岡田監督が目指してるのは1戦目の前半と2戦目の後半の戦い方なんだろうけど。そのために俊輔の処遇をどうするかがポイントか。岡田監督のサッカーには現状ではあってない。でも、今回の試合の前半を見ても分かるとおり、やっぱり特別な選手。どちらを取るのか岡田監督はかなり迷ってるだろうなって思う。ちなみにボランチは長谷部と今野の方が岡田監督の色を出せる印象。
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2008-05-27 Tue 18:37
アーセナル×レディング
<アーセナル:4-4-2>
FW:アデバヨール-ファン・ペルシー
MF:フレブ-セスク-Gシウバ-ウォルコット
DF:クリシー-ソング-ギャラス-コロ・トゥーレ
GK:レーマン

アーセナルに対する守備をおさらい。別にどれも対アーセナルだけに有効っていうわけではないけど。1つは前線から追いかけまくってアーセナルの攻撃のスタートをさせないっていうもの。ただし、この方法で成功したチームを見たことはない。ミドルスブラは追いかけようとして背後のギャップに入られ、怖くなってベタ引きになったし。2つめは受身の形で入ってきたところをつぶすってもの。アーセナルタイムをスタートさせる縦パスをいい形で前線に収めさせない作戦。バーミンガムパターン。3つめはベタ引きでラストを固めるってもの。多くのチームが使う形。というか、結局はアーセナルのパス回しに対する狙いどころを定められずに強制的にベタ引きにされるっていう部分が多いわけだけど。

今回のレディングは4つめの方法を採ってきた。そもそもレディングの守備は2つめ又は3つ目かなって思ってた試合前。前にマンU戦を見たときがそうだった。FWの守備は免除して、後ろの4‐4ブロックで守る形。4‐4の間のバイタルをしっかりと押さえて、そこに入ってくる縦パスを徹底的に潰すもの。このやり方はアーセナルに対しても有効だろうから、普通にそのやり方を採ってくるだろうって思ってたわけだけど。実際に採用されたのは全く別の形だった。

その守備のやり方は完全マンマーク。オールコートのマンツーマン。マンUみたいにシステム的合致を利用しながら、ある程度見るべき相手をはっきりさせる守備のやり方は普通に見られる形。そういう人ベースの守備は守備のやり方の1つとしてありうるし、完全なるゾーンよりは主流といっても間違いではないかもしれない。でも、今回のレディングはもっと徹底したマンマークだったと思う。

一番顕著だったのが、アデバヨール×ソンコの関係。CBのソンコがアデバヨールを追いかけてハーフェイライン付近まで付いて行くシーンが見られたと思う。アデバヨールがいつもよりゴール前にいる時間が短かったのも、このことが原因だったかもしれない。そして、このアデバヨールの場所に限らず、他の場所でも基本的にはどこまでも追いかけることが念頭に置かれてたのが今回のレディングだった。

相手の2トップに対しては、CBの2枚+1つ前のビケイの3枚で1人余る形に。アデバヨールとかファン・ペルシーの対応に真ん中から引っ張り出されることが多くなるだろうことを予想して、中盤の底にDF登録のビケイを入れたと思われる。逆にトップのキットソンが相手の2枚のCBに対応することで、残りの場所は1×1が明確になった。結果としてシステム的には4‐1‐4‐1みたいな形になってたと思う。

ただし、完全に見るべき相手を定めたマンマークで守るのは相手の組み立てのところまで。相手がある程度深い位置まで入ってきたら、ラストの人数ベース守備ブロックへと移行した。そんな危険な場所で1×1なんて言ってたら、大変なことになるだろうから。それに、カウンター的な流れで見るべき相手を捕まえ切れなくなった場合も自分の見るべき相手を探すよりも、とにかくゴール前に戻って最後を固めるっていうやり方を採っていたように思う。

ただ、この人数ベースの守備ブロックに不安がありあり。全体としてボールにばかり寄せられてしまう傾向が強くて、人数は多いのに他の場所が空いてるシーンが多々。1点目のシーンもそういう場面だったし。攻められる時間が長くなるにつれて徐々に集中力を上げていって最後の最後で跳ね返すシーンも多くなったけど、相手の組み立てを押さえる方に意識が向いている時間のラストブロックは結構危険な状況だった気がする。

オールコートのマンツーマン守備。なるほどなっていう新鮮さがあった。目から鱗というか。立ち上がりはそんな守備のやり方に気付かなかったから、なんだかやけに前線から積極的に守備をしてるなっていう印象を受けた。相手の低い位置の選手にまで積極的にプレッシャーをかけて行くから。後になってみればそれは自分が見るべき相手だったからだったんだけど、この時間は後ろのギャップは大丈夫かっていう部分が気になった。上にも書いたように、アーセナル相手に最前線からの積極的な守備が機能したのを見たことがないから。それにこれも上に書いたようにレディングは受けてバイタルをつぶすチームだと思ってたから。

にも関わらず、なかなかアーセナルがスムーズな攻撃を繰り出せない時間が続いた立ち上がり。後で書くように、今回の試合のアーセナルはスロースタートだったっていう要因が1つ。最初はそっちが気になってた。でも、試合が進むにつれてレディングの守備のやり方に興味が出てくる。そして、そのレディングのオールコートマンツーマンの守備がアーセナルのスムーズさを失わせたもう1つの要因だったように思う。

最終的には崩壊気味だった、この守備のやり方だったけど、案外アーセナルの攻撃に対しては相性がいいのかもしれないって思ったりもする。アーセナルの攻撃のやり方は縦パスを入れて、そのボールに対して複数の選択肢を用意するために周囲が動き、そうやって前の選手が動いた場所にそのまた周囲が動くっていうやり方。ボールが動くたびにそれが繰り返される。結果として文字どおりにボールも人も動くサッカーが可能になる。

ただし、ここにもう1つのポイントがある。それはボールに選択肢を与える選手が相手のギャップに入り込むってこと。そして、そのギャップで前を向くってこと。基本的には攻め始めれば前へ前へと向かっていくアーセナル。その推進力のために、高い位置で選手が前を向くっていうのは重要なポイントとなる。そんな中で近い関係で相手のギャップギャップを少ないタッチで次々にボールが動いて行くことで、相手に狙いどころを定めさせない。そうやってギャップギャップを素早く移動しながら相手ゴールに直線的に向かうのがアーセナルの攻撃。

じゃあ、今回の試合ではどうだったか。まず、狙いたいギャップは用意されまくってた。何しろアーセナルの選手が動けば相手もついてくる。しかも、ある程度までついてくるなんていう甘っちょろいものではない。基本的にはどこまでもついてくる。よって、動いた選手がもともといた場所にはスペースが残されてる。これによってアーセナルにとっては大好物のギャップが生み出されてることになる。

ただ、そのギャップにアーセナルの選手が入ってきたらどうなるか?普段のアーセナルならその場所で浮いた選手を作り出す。こないだの日本代表がやったように。SMFが降りてきて、代わりにSBとかボランチ、FWがそのスペースに入ることでスムーズにボールを引き出すっていう形が1つの例。でも、今回はそうは行かなかった。前の選手が動いてできたギャップに次の選手が入ろうとすると、その選手に対してもレディングの選手はしっかりとついてきた。この時点でギャップはギャップではなくなるっていう話。

結果としてアーセナルの選手は前を向けない。ギャップに入り込んで、一瞬でも浮いた瞬間に前を向くのがアーセナルの攻撃の中ではポイントになるってのは上のも書いたとおり。そして、ひとたび前を向く選手が現れれば、後ろから次から次へと選手が飛び出してきて前への推進力を高める。結果としてゴールに向かって直線的なアーセナルらしい攻撃が生まれるわけ。

逆に言えば、相手が常に近くにいて前を向く時間を与えてもらえなかったのが今回の試合。そうなるとアーセナルらしいゴールに向かったスピード感は失われる。立ち上がりの時間のアーセナルはパス自体はそれなりに回ってた。でも、そのパスの方向が後ろだったり横だったりってことが多いのなんのって。確かにパスは回ってたし、ポゼッション率も高まってた。でも、そのパス回しはアーセナルのパス回しではなかったと思う。ギャップギャップ、もっと言えば相手の急所急所を突きながら縦へと進んでくるアーセナルらしいパス回しではなかったって言える。

よって、アーセナルタイムは発動できず。低い位置で無為なパス回しが続くことになったと思う。そんな状況では相手の守備ブロックを押し込むこともできなかった。普段のアーセナルなら縦パスを入れてパス回しを始めた瞬間に相手には守備の狙いどころがなくなる。でも、今回のアーセナルはまず縦パスを入れたとしてもそこから本来的なパス回しを始めることができなかった。さらに、相手にはいまだ狙いどころが残されてた。極端なことを言えば、アーセナルがいくらパスを回そうがレディングには関係ない。レディングの選手は自分が見るべき相手だけをしっかりと見ていればよかった。だから、狙いどころは常に維持されてたって言える。

結果としていつものように相手をズルズルと押し下げられなかったアーセナル。しかも、攻撃のスムーズさがないアーセナル。組み立ての途中で引っ掛けられるシーンがいつもよりも多くなったと思う。いつものアーセナルならば1度攻め始めれば、一気に縦へと侵攻しちゃうんだけど、それも無理だったから。そして、こんな下地のもとに守備の方にもいつもとはちょっと違った側面が表れたと思う。

いつものアーセナルの守備の一番の勝負どころは攻撃後の切り替えの場所。攻撃に人数をかけてるから、その切り替えでも人数をかけた守備ができる。よって、相手に奪われてからすぐには全体のブロックを押し下げずに、攻撃のままの高さを保ったままに守備を行う。そして、2次3次攻撃へとつなげていく。ここで考えなければならないのは、この守備のベースには攻撃において相手を押し込んでるっていう事実もあるってこと。完全に押し込まれた相手には前線の選択肢が少ない。だから、アーセナルが切り替えで守備を行うと、相手は全く逃げ場がなくなってしまうってこと。

そして、攻撃において相手を押し込めなかったのが今回のアーセナル。さらに言えば、そもそも自分たちの攻撃にいい形で人数をかけることができなかった。何しろいつものアーセナルらしいパスを回せてないんだから。もう1つ直接的な(レディングの守備に関係ない)アーセナル自身の問題もあったわけだけど、それは後の話。とにかく、いつもの守備の勝負どころである攻撃後の切り替えの守備は完全に機能しなくなっていたといってもいい。

じゃあ、組織を作った時の守備はどうなのかって話。こちらもいつものアーセナルのやり方から見てみると、いつものアーセナルは1つ1つの場所で最短距離を切りながら追いこむっていうやり方を採ってる。そして、最終的にはボールサイドに人数をかけて相手を孤立してボールを奪う。ただし、FWから積極的に守備をしないから、あくまでも相手が地上から仕掛けてきてくれればってことになるわけだけど。よって、トップへの意識が強いレディングの攻撃は苦手。ブロックを作った上で、中盤で効果的に守備ができたシーンはほとんどなかったと言ってもいい。それに深い位置まで攻め込めなかったってことは、要するに途中で引っ掛けられるシーンが多かった立ち上がりの時間帯のアーセナル。守備ブロックを作って受けること自体が少なかったって言えると思う。

そんなわけで今回の試合の立ち上がりの時間帯のアーセナルはとにかく深い位置でボールを奪うシーンが多くなった。この時間はレディングの方も守備で後ろに人数が増えるようなアンバランスな状況になってなかったから、それなりに攻撃に人数をかけてきてたし。まあ、そんな中でレディングがチャンスを作ったかと言われれば、全然チャンスはなかったわけだけど。

ちなみに、実はそうやって深い位置で奪うアーセナルの守備は作戦なんじゃないかとも思ったりした。何しろ相手はオールコートマンツーマンの守備。これが厄介だったわけで。じゃあ、そのマークを一番外せるのはどんなときかって言えば、相手が攻撃に出てるとき。つまり、アーセナルは守備からの切り替えにおいてもっとも自由になることができる。だから、あえて深い位置まで攻めさせて、そこから一気にカウンターっていう方法を選んだんじゃないのかなっていう。実際にはたぶん、そんな考え方はなかったであろうことが後々になって分かるわけだけど。

さて、そんなアーセナルもちょっとした工夫はしてた。そもそも相手のオールコートマンツーマンの弱点は何か?それは1×1をはっきりとさせること。これは長所にも短所にもなりうること。長所ってのは見るべき相手がはっきりすること。さらに、それを固定することで相手がどれだけ動こうが浮いた選手を作ることは原理的にあり得ない。ただし、逆に1×1が固定されてるだけに、その1×1の勝負に負けると一気に危険なシーンに陥る。そして、どう考えたって単純な1×1ではアーセナルの選手の方が上。これが弱点になりうる部分。

もちろん、レディングの方もそのためにある程度の対策は採ってきた。どちらもここまで取り上げてきたこと。1つは相手に前を向かせないっていうこと。これならばアーセナル相手の1×1の関係でも守備側が優位に立つことができる。1×1を作ったことで前を向かせなかったし、前を向かせなかったことで1×1を維持したって言える。さらに、もう1つはゴール前は1×1の原則を外して人数ベースで守備ブロックを作ったっていうこと。これについても上に書いたとおり。

アーセナルとしてはこの1×1をどう自分たちに優位に働かせるかっていうのがポイントになった。あとになって分かることだけど、実はアーセナルはいつもどおりに戦ってれば、普通に1×1を自分たちに優位に働かせることができた。というか、いつもどおりに戦ってれば相手のオールコートマンツーマンなんて気にも留めずに攻撃ができた。でも、最初のアーセナルのアプローチはいつもどおりに戦うっていうことではなかったと思う。というか、むしろいつものやり方を捨てる方向に進んでいた気がする。

パスはつなげても横方向、後ろ方向の質が多くなってしまったアーセナル。ここで選択に迫られた。パスをつなぐっていう自分たちのやり方を採るのか?縦に急ぐっていう自分たちのやり方を採るのか?どちらもアーセナルのやり方。いつもは短いパスをつなぎつつ、同時に縦へ縦へと急ぐアーセナル。でも、現状ではその共存は不可能。ここでアーセナルは決断を迫られた。そして、この時点では後者を重視するようなやり方を採ってきたと思う。

つまり、ショートショートをつないで縦に進むんじゃなくて遠めのパスを織り交ぜながら縦に進むやり方を採ってきたってこと。いつものアーセナルよりもパスにおいて遠くを見てるような状況が見られるようになった。低い位置から一気に、またはワンクッションおいて相手のウラを狙うボールを増やしていった印象。そして、そこに1×1の勝負を強調してきた。クリシーの一気に縦に進む運動量だったり、ウォルコットのスピードだったりを有効活用しようとするボールが増えたと思う。短い距離よりも長い距離で勝負させた方が力差は顕著になるはず。そんなやり方が多くなっていったと思う。

ただし、いつものように近い場所をつなぐパス回しよりも確実性は明らかに落ちてしまう。パスの距離が遠くなるのもそうだし、相手と勝負させるからにはギリギリの場所を狙わなければならない。その中で微妙なズレが生じて、ボールがつながらないっていうシーンが多発。結果として攻撃が分断されることが多くなって、うまくリズムを作ることができなくなった。

こんな感じのアーセナルの苦労だけど、最初の方で書いたとおり、その要因はレディングの守備のやり方だけにはない。というか、むしろアーセナル自身の問題の方が大きかったと言ってもいいと思う。なぜなら、アーセナルが本来的なやり方を用いるようになってからは、完全にアーセナルのペースになったから。そこではレディングのオールコートマンツーマンも無効化されたってのは上でも触れたとおり。

そもそも先制点を奪う前後の時間までのアーセナルは明らかに様子がおかしかった。具体的に言えば、とにかく運動量が少なかったと思う。だから、アーセナルらしいボールに対して複数の選択肢を作る動きは皆無。ボール保持者は常に孤立気味。さらに、そうやってボールに対する複数の選択肢を作るための動きから生まれる流動性も皆無。ボールを追いぬくような後ろからの飛び出しも皆無。そもそも攻撃のスタートとなるボールを引き出す動きすらもほとんど見られなかった。

この時間に頑張ってたのはアデバヨールとクリシーのみ。アデバヨールは左右に流れて積極的にボールを引き出す動きを繰り返した。この時点で相手のCBソンコが完全に引っ張り出されてるのに、別の選手がそこを突く動きをせず。さらにボールを引き出したアデバヨールに対するフォローもほとんどなし。クリシーの積極的な飛び出しでなんとか深い場所にボールを入れてるような状況だった。

1つ前のマンU戦でもらしいパス回しができなかったアーセナル。その要因はファン・ペルシーが消えたこととSB&Gシウバが攻撃参加を自重したこと。結果として攻撃に絡んだとは2トップのアデバヨール&フレブと中盤からエブエ&セスクのみ。これじゃあ近さは作れないってのは前のときに書いたとおり。今回はフレブとファン・ペルシーの場所を入れ替えて、その辺に改善を図ってきたのかなって思ったのに、悪い時間帯にはどちらも完全に消えてしまった。これなら前回の方がマシだったんじゃないかっていう話。その上、セスクも攻撃に顔を出さなかったし、ウォルコットも単発突破のみ。今回は最悪だったって言える。

そんな流れが変化したのが前半の25分過ぎから。このぐらいの時間からフレブが突如として目立ち始める。それまでどこにいたのか分からなかったフレブだったけど、真ん中に流れてきたりCMFの場所まで下がったりしながら、徐々にボールタッチの回数を増やしていったと思う。そんな流れの中で生まれたアーセナルの先制点。この得点自体はアーセナルの攻撃の改善を示したものではなかったけど、この得点がスイッチとなって突如としアーセナルの攻撃に変化が生まれた。

それまでの運動量の少なさが嘘のよう。フレブだけではなくて、全体としての動きが活性化した。まず、目に見えて動きが変わったのが右サイドのコロ・トゥーレ。それまでは一切攻撃に参加してこなかったコロ・トゥーレが突如として上下動を繰り返すようになった。さらに、眠っていたセスクも動きだす。これが一番、大きかった。高めの位置に入りながら常にボールを受けられるような場所に位置してタッチ数を増やしてたと思う。もちろん、FWになるセスク本来のよさも見られた。さらに得点を奪ったGシウバが攻撃に積極的に顔を出すようになった印象。

ただし、ファン・ペルシーとウォルコットはそういうアーセナルらしい攻撃にイマイチ乗り切れてないかなっていう印象を受けた。ファン・ペルシーは一時期のエドゥアルド状態。つまり、組み立てのところではあまり目立たないっていうこと。結果としてアデバヨールの組み立てへの負担が久々に大きくなってた。ウォルコットに関してはスタイルの問題かなっていう。他の選手が少ないタッチで次々にパスを回していく中で、1人だけドリブルでの仕掛けがファーストチョイスになってる。もちろん、それが悪いってことではない。この試合に関してはキレキレのウォルコットがアクセントを加えてた面は大きかったし。

それでも、立ち上がりの悪い時間から比べれば格段に素晴らしさを増したアーセナルの攻撃。チーム全体の運動量が増した時点でアーセナルらしさを復活させたと思う。ボールに対して近い場所で複数の選択肢を用意することができるようになり、結果として一気に攻撃のスムーズさが増したアーセナル。パス回しにスピード感が生まれたと思う。それはめでたいこととして、レディングの守備はどう崩したのかっていう話になってくるわけだけど、上にも書いたように本来のアーセナルらしさを取り戻した時点でその問題は自然と解決されていった。

パス回しのスピードが格段に上がったアーセナル。最初の時点では前を向かせてもらえないから、当てて戻してっていうパス交換の繰り返しなんだけど、そういうパス交換をスピーディーに行っている中で、どこかしらに相手の守備がルーズな場所が生まれてきた。その瞬間に前を向くアーセナルの選手。そして、1度前を向いて前に向かったパスができるようになれば、もうアーセナルタイムの始まり。後ろから抜いて行く選手も多いアーセナル。前へ前へっていう推進力を相手は止められない。前を向かせないっていう目標が崩された時点で、レディングのオールコートマンツーマンの守備の機能性は崩壊したといってもいい。

前を向かれた時点で1×1では分が悪いレディングだから、この時点で守備の根拠がなくなったって言える。結局はいつものアーセナルの相手と同じく、ズルズルと引いて行くしかなくなってしまった。それまでは相手CMFに対して敵陣内までプレッシャーをかけて行ってたのに、それがだんだんと弱まっていった。この時点で本来のアーセナルに戻ったと思う。相手の前線の選択肢が少なく、アーセナルの攻撃にかける人数が多いから、攻撃の切り替えからの高い位置での守備も機能するようになった。レディングの方は立ち上がりの時間が嘘のように敵陣内に入る人数が減っていった印象。

ちなみに、ここでレディングの守備の根拠をなくした原因がもう1つ。それはアーセナルのCBの積極的な攻撃参加。このCBの攻撃参加は立ち上がりからずっと見られた形。相手の守備の根拠をなくすヒントとしてずっと提示されてた。アーセナルのCBを見る役割はキットソン。でも、実際にはCBの持ち上がりに対しても無反応だった。マンU戦を見てもFWの守備は免除されてたから、その辺も関係してたかもしれない。

というわけで、自由にボールを持ちあがれたアーセナルのCB。しかも、2人とも攻撃が好きっぽい。的陣に入ってくこともしばしば。ここでレディングには問題が生じる。相手のCBを誰が見るんだ?っていうこと。何しろ後ろは1×1がはっきりとされてて、誰にも余裕がないわけだから。最初は誰も相手CBのドリブルの持ち上がりに対応できなかった。さすがに自陣に入られたろころでヤバいだろっていうことで誰かしらがプレッシャーに行く状態。底の選手が出て行くなんていうイレギュラーな状況も多々見られたと思う。このギャップを立ち上がりのアーセナルは有効活用できなかった。せっかくのチャンスなのに、前線の動きが足りずにギャップがギャップのまま残ることが多くなったと思う。そこのところを利用できるようになったのも、本来のアーセナルになってからだった。

ここで大いなる疑問。なぜアーセナルは最初から本来の戦い方をしなかったのか?その後の時間を考えれば、もっと早く試合を決められたはずなのに。ここで低調な立ち上がりは作戦だったんじゃないかって考えると面白い。何のための作戦か?それは後遺症をなくすため。最初からトップスピードで入るいつもの試合では、必ず後半になると運動量がガクッと落ちるアーセナル。そして、運動量の落ちはアーセナルの攻撃にとっては致命傷。何もできなくなってしまう。これへの対策として後半からシステムを4‐5‐1に変更するなんてやり方も試してみてはいたけど、そううまく行ったっていう印象もなく。というわけで、これまでは現実的な解決策が見つからずにいたってのが本当のところだった。

この抜本的な解決のためのテストが今回の試合だったかもしれない。アーセナルにとっては消化試合といってもこの試合。相手も手ごろ。絶好のテスト日和。要するに最初はゆっくりと入る。守備をベースに戦えば、しっかりと守備もできそうなアーセナルだから、0点に抑えるのはそんなに難しくない。攻撃の方は省エネで、できればアデバヨールが個人の力で行ってくれればラッキーってとこか。

もちろん今回の試合のように運よく先制点が取れないことだってあるはず。そしたら、ある一定の時間から勝負に出ればいい。相手にとっては試合開始直後の元気な時間よりも、疲れている時間にアーセナルのパス回しを防ぐ方がよっぽど嫌に決まってる。省エネで入って試合を決めるところでアーセナルらしさを出す。そんなやり方も面白いと思う。

これまではある意味ではアーセナルは馬鹿正直すぎた。常にパスを回すし、常に最初からトップスピード。そこにメスを入れたのが今回の試合だったと思う。実際に途中からペースを上げた今回の試合では後遺症の影響もさほど出ず。攻撃の中心だったアデバヨールとフレブが抜けてからはちょっと勢いが衰えたけど、それは運動量の問題とは別。そういう意味ではテストは成功だったって言える。本当にテストだったらだけど。

最後にアーセナルのCKのやり方についてちょっとだけ。今回の試合のアーセナルのCKはすべてショート。セスクとファン・ペルシーが近くにいて、1人がボールを動かしてもう1人が止めてから、最初の1人がクロスを上げるっていう形だった。このやり方のメリットの1つは相手のマークが外れるってこと。さらにもう1つは角度をつけることによってゴールに向かう質のボールを蹴れるってこと。いわゆる、触っても触らなくてもっていう質のボールが多くなったと思う。ただ、いつもこのやり方だと慣れられてしまうので時にはファン・ペルシーがクロスを上げずにドリブルで入って行くなんていうバリエーションも織り交ぜてた。このCKはなかなか面白かったと思う。

ところで、アーセナルな方向に向かっている予感の日本代表。今日のパラグアイ戦でその是非が見られるんじゃないかって思ってたりする。でも、残念ながら今日もリアルタイムで見られそうもありませんので、記事の更新は明日か明後日になりそうです。ご了承ください。
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2008-05-25 Sun 18:47
日本×コートジボワール
<日本代表:4-4-2>
FW:玉田-大久保
MF:遠藤-今野-長谷部-松井
DF:長友-トゥーリオ-中澤-駒野
GK:楢崎

オシムからの脱却を図ると宣言した前回のバーレーン戦後の岡田監督。ただし、バーレーン戦のやり方のどこがオシム的だったのかってのはみんなが思ったことだったはず。バーレーン戦の日本はとにかく蹴りまくった。意味が分からないほどに蹴りまくった。そして、いいところなく負けた。オシムのやり方とは対極に位置するようなやり方だろって話。まあ、相手の2トップに対して3バックを採用したのはオシム的だったって無理やり捉えることもできるけど、負け惜しみというか言い訳というか、そうとしか聞こえなかったのも事実。

大体において、岡田監督は普通に自分のやりたいサッカーをやってるだろって思ったりもする。オシムのやり方は外から外への展開で圧倒的にボールを保持するもの。SBを組み立ての軸として、その場所で数的優位を作る。その人数ベースの近さにランニングを組み合わせてサイドでボールを保持。そこで詰まったら逆サイドへ展開して作り直す。それこそ集中→展開→連続。そんなやり方の中で圧倒的なポゼッション率を誇っていたオシム時代の日本。弱点は相手のラストブロックに仕掛けられないこと。ボールを保持しまくっても、そこから入り込むスイッチが見当たらないってのが大きな問題だったと思う。

そんなオシム的な長所も短所も岡田監督になってからは見られなくなった。たまに片鱗が見えることはあるけど、まあ大きな変革が図られてたのは事実だと思う。だからこそ、バーレーン戦後の脱オシム宣言には違和感ありあり。とっくに脱オシムだろっていう突っ込みがいろんなところからわき上がったのかどうかは知らないけど。とりあえず、そんな岡田色についてちょっとおさらいしてみたい。

攻撃における岡田色は下手にボールを保持しないってこと。最初の試合で使った言葉を使うならば、縦型。左右の幅を利用しながら徐々に押し上げていく横型オシムとは全く違った内容。そういう縦型攻撃の中でFWの存在感が高まる。攻撃においてFWを経由させる意図が強くなったように思う。結果として中盤の場所にも変化が生まれる。中盤の中村&山瀬&遠藤のトライアングルはFWと関係性を築きながらボールを回すようになった。結果として前向きのプレーが増えたのも事実だと思う。山瀬の得点量産はその辺に理由があるはず。さらに、FWを中心にするパス回しは真ん中へと凝縮。サイドで数的優位を作ってたオシムとは違って真ん中に人数が厚くなってたと思う。

この変更の中で役割が顕著に変化したのがFWとSB。FWはここまでにも書いてきたように、攻撃の核的な役割へと変化した。オシムのときには左右の幅を使ったボール回しからの仕上げ担当が多かったFW。ある意味では純粋にFW的に振舞ってればよかった。それが岡田監督に代わってからは組み立てへの参加も求められたと思う。中盤といかにいい関係性を築くかがポイントになった。

もう1つのSB。こちらは組み立てにおける役割が軽減。組み立てにおける重要度が高いのは2トップ+遠藤&中村&山瀬っていう真ん中のメンバーたちなんだから当たり前。その代わりにラストの部分の役割が増えたと思う。真ん中で作って、相手を真ん中に寄せておいて、最終的には外っていう。中盤が真ん中に凝縮してる状況の中で、蓋がなくなったSBには最前線まで出てくる動きが求められた。だからこその内田重用だったと思う。

さて、そんな岡田ジャパンの弱点はビルドアップの問題。サイドに徹底的に起点を作っていたオシム時代とは違って、今は真ん中を重視してる。当り前のようにサイドよりは真ん中に重点を置く相手の守備ブロック。それだけ今の方が前にボールを運ぶのが難しい状況になってるって言える。にもかかわらず工夫があまり見られないのが日本代表。低い位置のパス回しで幅を利用することで真ん中を空けるぐらいのことはするわけだけど、相手がSBを抑えてきたりすると一気に停滞感が生まれる。前線にボールが入らずに何もできないっていう状況に陥ると思う。結果として低い位置の保持時間が延びて行ったりする。

攻撃についてはこれぐらいにして(そういえば集中→展開→連続はどこへ行ったんだろうか?)、次に守備について。このチームの守備は気まぐれ。大まかに言えばリミッターなしで前線から追いかけ回すか、1度ブロックを形成して受ける形を形成するか。いい守備が見られた中国戦は前者。前線から追いかけ追いかけ、中盤がそれに連動していった。結果として高い位置でボールを奪えるシーンが多くなった。よって、トップと中盤の連動性で崩し切る攻撃がショートカウンターとしてさらに威力を発揮したと思う。

ただし、他の多くの試合では受ける意図が強くなってた。守備だけを考えれば大きな問題は感じなかったけど、攻撃へのつながり、特に上に書いたようなビルドアップの問題を考えると、ちょっと相性が悪いかなっていう気がしたのも事実。縦に急ぐ、FWの役割が大きくなるサッカーをするならば中国戦のように高い位置で奪ってショートカウンターの方がいいだろうなって気がする。それができるんだからなおさら。その辺に気まぐれ具合を感じずにはいられないこのチーム。

さて、こんな前提が全て崩れ去ったのが前回のバーレーン戦。上でもちょっと書いたように、とにかくこの試合は蹴りまくった。蹴って蹴って蹴りまくった。オシムだとか岡田だとかは関係ない典型的な百姓一揆サッカー。結果至上主義をもとにしてこのやり方を採ったのに、結果も出なかったっていう最悪の状況に。ちなみにバーレーンの方も蹴りまくったから、ボールが行ったり来たりばかりを繰り返した試合になった。というわけで、日本代表にとって、というか岡田監督にとって今回のコートジボワール戦が本当に重要なものになったのは間違いない。

脱オシム宣言をした岡田監督がどんなやり方を採ってくるのか。メンバーは前回から8人入れ替え。松井、長谷部の海外組を使ったのも変革の1つか。まあ、あとの中盤は鈴木じゃなくて今野が使われたわけだけど、これは鈴木の怪我によるものと考えていいと思う。バーレーン戦でスタメン落ちの遠藤が復帰し、逆に中村と山瀬が外れた。確かに変化が見えると言えば見える部分。最終ラインもとGKもメンバーを入れ替えてきたけど、ここは妥当だったかなって思う。

そんな中で一番の大きな変化は2トップの組み合わせ。今回は大久保&玉田っていうシャドー的な2枚を並べてきた。これまでの岡田監督は絶対に軸的な選手を使っている。巻、田代、高原。実はこれはオシムの時からずっと継続されてたこと。オシムは1トップ1シャドーの組み合わせを好んでたから。それを崩した時にもシャドー的選手を2枚使うんじゃなくて、ツインタワー的な組み合わせだった。よって、今回みたいな組み合わせは最近の日本代表では全く見られなかった形だったって言ってもいい。これまで岡田監督がそういうやり方を採りたかったのに、採れなかったとしたら、それは確かにオシムの呪縛かもしれない。

ただし、やっぱり岡田監督も好んで軸的な選手を起用してただろうなって思う。下手をするとオシムの時よりもその意図は強かったとも言えるかもしれない。何しろFWに当てることが1つの目標だった、これまでの岡田ジャパン。トップに当てて、そこに遠藤&中村&山瀬を効果的に絡ませることで、真ん中に起点を作ったってのは上にも書いたとおり。だから、1人は真ん中で軸になれる選手を入れたかったはず。しっかりとトップで収めて、次の展開につなげられる選手が必要なやり方を採っていたわけだから。

だから、このFWの組み合わせは隠れた大変革だったと言っていいと思う。スタメンを見た時点でここは注目しなきゃなって思わされる部分だった。そして、実際にこのFWの組み合わせが変化した結果が試合の中で見えたと思う。オシムと比べて縦に急ぐ岡田色。その色はそのままに、縦への急ぎ方に大きな変化が生まれたと言っていい。そして、岡田監督が目標に定めたのはアーセナルの縦急ぎサッカーだったんじゃないかって気がする。

先制点までの時間帯の日本代表は恐ろしく素晴らしい内容のサッカーが見られた。こんなことができたのかっていうレベル。もちろん、付け焼刃でアーセナルの完全コピーは不可能なわけだけど、そのエッセンスはしっかりと取り入れていたような気がする。本当は実際に岡田監督がアーセナルを目標にしてるのか、どうかは分からないわけだけど、少なくともそんな雰囲気は見え隠れしてた。

それが最初の決定的なチャンスに表れてる。トゥーリオの攻撃参加から左サイドを崩し、最終的にゴール前でフリーの大久保へっていうシーン。このシーンをおさらい。最初は遠藤が降りてきてボールを受けたシーンから。この時点で遠藤と入れ替わりに今野と長友が前線に出て行っている。そして、遠藤とのパス交換からトゥーリオが攻撃参加。遠藤も前線に舞い戻って行く。そして、この左サイドの組み立てにはFWの玉田と大久保も助けに入った。大久保は1度パスをはたいてゴール前へ行ったシーン。

この一連の流れでの左サイドの人数が異常。トゥーリオ、遠藤、今野、長友、玉田、大久保。全部で6人が絡んでる。こんだけ人が揃ってる上にそれぞれの選手がボールに対してしっかりと動いた。ボールを離した選手も次の場所に出ていった。結果として少ないタッチでパスが回る回る。超密集地帯を人数とランニングで崩し切ったシーンだったと思う。ね、アーセナルでしょって話。しかも、エブエの背後でこの崩しをやってやったってのがなんだか面白い。アーセナルの超密集地帯が生まれたのはエブエの存在があったからこそだから。

まあ、このシーンは極端な例。いくらなんでも同サイドに6人なんてシーンはそうそう見られなかった。でも、その根本に流れるものは一致してたと思う。それは以下に書くとおりだった。そして、そういうベースとなった部分について見てみると、やっぱりアーセナル的な攻撃じゃんかっていう気がする。上にも書いたとおり、実際のところはどうなのかはわからないけど。

一.サイドに数的優位を作る
岡田ジャパンでは上にも書いたように中に凝縮気味の中盤。でも、今回の試合では松井も遠藤もサイドでのプレーが目立ってた印象。そこにSBが絡んでいくのはもちろんのこと、長谷部とか今野も1つ下からサイドの助けに行くシーンが目立ってた。FWも真ん中に居座る時間は短く、サイドに顔を出すシーンが目立ってた印象。そのための2トップの組み合わせだったのかと。

一.ボールの近くに複数の選択肢を用意する
サイドで数的優位を作ったところに、ボールへのランニングを組み合わせることで常に基本的なトライアングルを維持してた印象。そして、そういう関係性のために選手が動いて抜けたスペースに別の選手が入って行くっていうような関係性もできてた。当然のようにボールが動けば人も動いて、再び複数の選択肢を用意する。そこで新たな関係性が築かれたと思う。

一.その中で1タッチ2タッチでリズムよくパスを回していく
ランニングと近さがあるだけにパスはリズムよく回って行く。いい時間帯にはダイレクトのパスが次々につながっていった印象。相手の守備陣も狙いどころを定めることができなかった。逆にアーセナルと同じように、密集地帯を崩していくわけだから少ないタッチで回していかないと相手の守備にすぐに窒息させられるっていう見方もできるわけだけど。とにかく、ドリブルでの突破はほとんど見られずダイレクト至上主義が目立ってた印象。

一.1度攻め始めたらノンストップで攻めきる
ここまでの項目では、どちらかというとオシム色が見え隠れしている。サイドで数的優位を作り、ランニングを組み合わせることでボールを回すっていう部分とか。これで詰まったら逆サイドへ展開するなんていう横のアプローチが組み合わされれば完全にオシム色だったと思う。ただし、今回の試合ではそんな横へのアプローチはほとんど見られなかった。1度攻め始めたら、一気に縦を侵攻する。下手にボールを保持しないで少ない手数でスピーディーに相手ゴールに迫って行く。そんなやり方が見られた印象。

ただし、ここで問題がある。アーセナル的なやり方が機能するのは前線にボールが入ったところからってこと。それはアーセナル自身も抱える問題だったりするし。そして、上にも書いたようにビルドアップのところに弱点が見え隠れする日本代表。いくら攻撃のベースの質が高かったとしても、そのスイッチが入らなければ何の意味もないっていう話。だから、どうやって前線にボールを供給するのかっていうのが1つのポイントになったと思う。

この点についてもいい時間帯の日本代表はあっさりと解決してきた。一番多い形は松井と遠藤が交互に降りてきて助けるっていうもの。上に書いた左サイドの超密集地帯完成も遠藤が降りてきたところがスタートだったし、得点シーンの起点も降りてきた松井。もちろん、この2人が降りてきただけでは大きな効果は生まれない。今回の日本代表のよさは人が動いてできたスペースを別の人が埋めるっていう動き。松井、遠藤が降りてきたところで代わりにSBとかボランチが外を回りこんで飛び出していく。得点シーンは松井が下がり、代わりに長谷部が飛び出した行ったところでフリーになったシーンだった。またはFWがサイドに流れてスペースを埋める。縦パスが1つ入れば前線に1人増えるイメージ。そうやってうまく攻撃をスタートさせたと思う。

というわけで攻撃面では大いなる可能性を感じた日本代表。まさかこんなに質の高いサッカーができるとは思わなかった。中盤を重視しつつ、縦を急ぐ。スピーディーな展開で次々にボールを回して相手ゴールに迫る。そんなやり方の中で攻撃がスタートさえしてしまえば、相手は守備の狙いどころを定められなかった。4‐1‐4‐1のバランスのいいブロックを形成しようとしてたコートジボワールも結局は4‐5(2列目の4が押し下げられてしまう形)でラストを固めることが多くなったと思う。

そんな攻撃面のよさに加えて今回の日本代表は守備面のよさも光っていたように思う。そもそも攻撃後の切り替えのところが守備の最初のポイントになってた。奪われた瞬間の個々の切り替えの早さは当たり前として、それに対して高い位置で連動が図れる下地が整ってた。その論理はアーセナルと同じ。攻撃において近い関係性を作ってるから、切り替えの守備でいきなり人数をかけられるってこと。結果として高い位置での効果的なプレッシャーが効きまくってたと思う。

さらに、組織を作った時の守備のよさも目立った。というか、素晴らしすぎた。守備のスタートとなったのは玉田。玉田が相手のCBにプレッシャーをかけつつ、1つ下の相手アンカーを大久保が見る。これによって相手は中→中へのパスをつなげなくなった。仕方がないので相手のCBはSBにボールを預ける。ここに対して日本のSMFが積極的にプレッシャー。しかも、中から向かっていくような形で守備。結果として相手はSB→WGのコースしか残されていなかった。そして、そのWGに対してはSBが完全密着で自由なプレーをさせなかったと思う。

そもそもコートジボワールは日本と同じようにサイドで数的優位を作ってショートパスをつなぎながら攻撃をするチームだと思う。後半に日本の守備の勢いが弱まってからは、そんなシーンが多くなった。ただ、日本の守備が機能してる時間帯にはそれを完全にシャットアウト。SB&WG&OMFのトライアングルを分断して近い関係性を作らせなかった。これに困ったコートジボワールは適当なトップへのボールが増えていく。当然のようにそこは日本のCBとボランチが潰していった。

こんなところからも分かるように今回の日本の守備には“次”のよさが見られたと思う。トップをスタートとする追いかけは、それぞれの場所でしっかりと次の場所を意識したものになってたし、次を狙う選手も前の制限をしっかりと意識してた。さらに、相手を足止めしたところでの囲い込みとか挟み込みも目立ちまくり。高い位置に設定された最終ラインから、それぞれのライン距離の近さを作ったことが功を奏してた印象。コートジボワールは全くスムーズに攻撃ができない状況の陥ったと思う。

そんなこんなで日本代表って強いんじゃね?っていう気持ちを抱かされた得点までの流れ。何しろ攻守にわたって素晴らしい内容が見られたわけだから。ただし、その代償は大きすぎた。アーセナルも悩まされる後半の運動量の落ち。運動量ベースのパス回しであり、パス回しベースの攻撃を繰り出すアーセナルが後半に何もできなくなるっていう試合展開をこれまで何度見てきた事か。今回の日本代表は慣れないことをやっただけに、その後遺症が表れるのも早かった。前半の途中の段階で立ち上がりのいい流れは完全に消え去ってしまったと思う。

この後遺症はある意味では仕方がない部分。攻撃では縦へ縦へと急ぎまくり、さらにその過程でボールに対して何度もアクションを繰り返す。ポジションチェンジも豊富。その攻撃からの切り替えで本気の守備を行うから、さらにスタミナ消費。加えて組織を作ったところの守備でも前線から運動量を求められる。どこかに休みどころを作らないとやってられないと思う。これはいつも言うことだけど、とりあえず休憩のためにオシムを取り入れてみればって思ったりもするけど。

さらに、前半の途中から全くよさが見られなくなった要因がもう1つ。それはコートジボワールが失点によってちょっとは本気になったから。それまではおそらく省エネサッカーをしてたんだと思う。守備では完全に引きこもってたし、攻撃でも疲れることはやらずにとりあえずFWを狙って蹴ることの繰り返しだった。移動ありの中1日の試合ってことを考えれば、普通の考え方。最終的に見てみると、主力抜きで日程不利のコートジボワールが相手でちょうど適度だったかなって思うわけだけど。

ちょい本気のコートジボワールは守備ブロックを1つ上げてきた。それまでは自陣に完全に引きこもる守備のやり方を採ってきたコートジボワール。引きこもるとは言っても最終ラインをある程度の高さに設定して全体としてはコンパクトなブロックを作ってきたけど。それでも日本代表の攻撃の実質的なスタートとなるSB、ボランチ、降りてきた遠藤とか松井は完全に浮かせていた。あくまでも守備のスタートは相手が自陣に入ってきたところって置いてたと思う。ただし、スタートさえ切れれば質が高かった日本の攻撃。結果としてコートジボワールの守備ブロックが最終的には押し込まれてしまったのは上にも書いたとおり。

その守備ブロックを1つ上げてきた失点後のコートジボワール。日本陣内のSBとかボランチのところにも積極的なプレッシャーをかけてくるようになった。もちろん、降りていった松井とか遠藤にも。さらに、そういう2列目のプレッシャーの次を狙うような位置にトップの選手が入る。それまで完全にフリーだった自陣の日本選手は焦りが見られるようになってくる。少なくとも自由に前を向いて攻撃をスタートさせることはできなくなったし、もっと言えば相手のプレッシャーに負けてミスが多発。バックパスをかっさらわれてどれだけ危ないシーンにつながられたかっていう話。

そんな危なっかしさがある自陣のボール保持者たち。不安になった松井と遠藤はそれまでよりも低い位置に戻ってくる回数を増やした。同時に入れ替わりに前線に出て行くプレーが停滞。プレッシャーを食らってる状態で低い位置の選手が飛び出し、さらに相手に奪われたらどうすんだって話。思い切って飛び出して行けない状況が生まれた。ここで思い出さなければならないのは、それまでの時間に攻撃のスタートをスムーズに切らせてたのは上下の入れ替わりだったってこと。上にも書いたけど、松井とか遠藤が降りてきたこと自体が重要だったんじゃなくて、代わりに誰かが出ていったことが重要だった。それがなくなったことでうまく攻撃のスタートが切れなくなってしまったと思う。そもそも出し手の方も簡単には前を向かせてもらえなくなった。

ここにおいてビルドアップの問題が再発。しかも、悪いことに運よく前線にボールを供給できても、その後どうすればいいのかって問題も急浮上。スタートを切れさえすれば質の高い攻撃ができたいい時間帯。そこでポイントとなったのは上に書いたようなアーセナル的攻撃。早い話が、ボールに関係する人数をいかに増やせるかってこと。それが今やみんな低い位置に降りてしまっている。代わりに出てくる選手もいない。前線には2トップのみ。それでどうやってボールに関係する選手の数を増やせばいいのか。ボールを前線に供給できない、供給できたとしてもその後の術がない。結果として相手のポゼッション率が高まって行く結果になったと思う。

ここで謎だったのが、なぜに今回の日本はつなぐ意識がこんなに高かったのかってこと。前回の蹴りまくりの意識を少しでも見せればもっと違った展開が生まれたと思う。スムーズに組み立てができてた立ち上がりの時間はともかく、相手がブロックを1つ上げてきた時点で戦い方を変えるべきだった。攻撃のスタートがスムーズに切れず、選手間の距離も遠い状況の中で、いいイメージでの攻撃はすでに実現が無理な状況だったのに、それでもまだやりたいやり方にこだわりすぎたのがよくなかった。そんなところまでアーセナルと似る必要はない。

例えば相手が1つ前に守備ブロックを押し上げてきた時点で、蹴ってみたらどうだったのかっていう話。相手は守備ブロックを上げてるんだから、ウラには広大なスペースがあった。1つブロックを上げてきた相手もCBはそれなりにフリーにしてくれた。そこにはフィード力に優れるトゥーリオがいる。しかも、トップに入ってたのは玉田と大久保。コートジボワール相手ではこの2人でもスピード勝負は無理だと判断したのか。でも、たとえつながらないとしても蹴って蹴ってプレッシャーをかけるってのは1つの手だったと思う。つなぐ意識が高い上に低い位置に人数が溜まっていった日本代表に対して、コートジボワールはますます守備ブロックを前に押し出すことができた。

さらに失点後のコートジボワールは攻撃も丁寧に行うようになったと思う。それまでは、とりあえずつなごうとはしてたものの、日本の守備に防がれた時点で適当にトップを狙うボールを入れてったってのは上にも書いたとおり。そんなコートジボワールが適当さをなくした。コースを切られてるなら再びやり直すっていう形の攻撃が目立つようになっていった印象。そして、それに日本の後遺症がぴったりと合致した。

後遺症に悩まされる日本代表。時間とともに1つ1つの寄せの遅れが目立つようになっていく。それまではしっかりと距離を詰めて対応してた場所で、微妙に相手との距離が開いて行く。結果として制限しきれない。よって後ろの選手が狙うのが難しくなり、その場所でもしっかりと距離を詰めた対応ができない。1つ1つの場所で後手に回る場面が多くなっていったと思う。

そうなればコートジボワールは回し放題。2年前のW杯でも連動性の高さを感じたコートジボワールのパス回し。今回の試合でも上に書いたようにサイドを起点にして、そこで数的優位を作ってパスを回す意識が見られた。そして、その意識が具現化できるようになったと思う。アフリカのチームだから個人技っていうイメージが先に立つけど、いいリズムでショートパスをつなぎながらの組み立てが目立ったように思う。そこにいい形で個人技がアクセントを加えてた印象。

というわけで得点後は完全にコートジボワールのペースへと傾いた。前線からの守備が機能せずに相手に中盤を持って行かれた日本の守備ブロックはだんだんと下がって行き、ラストで跳ね返す形が多くなったと思う。さらに、攻撃への切り替えでしっかりとボールをつなげずに再び相手ボールにっていうシーンが時間を追うごとに多くなっていく。交代出場の香川と矢野も大きな変化をつけることができなかった。やっぱり立ち上がりの後遺症は大きかったんだろうなっていう。

ところで上の方でアーセナルと似てるって書いたわけだけど、当然のようにアーセナルほどの完成度はない。おそらく、アーセナルのサッカーをコピーできるチームは表れないだろうなって気がするし。特に代表では無理だと思う。とりあえず、パスをつなぎながらも縦を急ぐっていうベースになるやり方は似てたかなっていうレベル。やっぱりボールの動き方、人の動き方のスムーズさはアーセナルにはかなわなかったと思う。

それでもこの試合のいい時間帯のような攻撃のやり方を追求して行くのは面白いと思う。そこで1つの提案としてはボランチに山瀬を使ったらどうかってことを言っときたい。バランスを考えたら長谷部と変えて入れるのが妥当か。やっぱりこのやり方では中盤の場所にFWになれる選手を入れておきたいところ。2トップが組み立てを助けに行った時にゴール前が薄いのは好ましくないから。そういう意味では長谷部よりも山瀬の方がFW的なプレーには長けていると思うし。そういえば、今回の試合では長谷部がFWになるシーンがほとんど見られなかったのは残念。

で、このやり方を追求して行く上では上でも触れたとおりいかに後遺症を押さえるかがポイントになる。そして、そのための休憩時間は絶対に必要。今回の試合だって1点を奪った後にゆっくりと低い位置で保持する時間を作ってもよかったんじゃないかと思う。相手が1つブロックを上げてきたと言っても、それほど厳しいプレッシャーが来たわけではなかったし。休憩時間を作らずに最後まで急ぎまくった結果として、完全に流れが停滞する現象が生まれてしまった印象。
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2008-05-24 Sat 22:10
07-08CL決勝:マンU×チェルシー
<マンU:4-4-2>
FW:テベス-ルーニー
MF:Cロナウド-キャリック-スコールズ-ハーグリーブス
DF:エブラ-ビディッチ-ファーディナンド-ブラウン
GK:ファン・デル・サール

<チェルシー:4-3-3>
FW:マルダ-ドログバ-Jコール
MF:ランパード-バラック、マケレレ
DF:Aコール-テリー-カルバーリョ-エッシェン
GK:チェフ

気まぐれな両チーム。特に守備はそんなイメージ。今回みたいな4‐4‐2(4‐2‐4)システムを採用するマンUは前線の4トップが守備をするのか、しないのか、それが問題。守備意識がめちゃめちゃ高いときには4‐4(6‐2)で圧倒的にラストを固める。そうじゃないときは4人は前に対する守備だけを頑張って、後ろは4‐2に任せる。最悪のときには4トップは前も後も全く守備をしない。ただし、最近は現実主義に傾きつつあるマンU。イレギュラーな4‐2‐4というよりも、普通に4‐4‐2で守ることが多い。今回の試合もわざわざサイドにハーグリーブスを使ってる時点で4‐2だけで守る気はないだろうなってことが予想された。

対するチェルシーも中盤の守備が機能するかどうかが気まぐれ。いいときには自分たちの守備ゾーンに入ってきた相手に対して、中盤で厳しいプレッシャーをかけ、途中で引っ掛けるシーンも多くなる。悪いときには、1つ1つのチェックがルーズになり、連動が図れず単発に終わる。さらに、中途半端な守備で背後にスペースを残してきてDFラインだけが晒されるシーンが多発。中盤で守備が効いてないのに、後ろの人数も足りてないっていう最悪な状況。

じゃあ、攻撃はどうか。マンUの方は攻撃についても守備に負けず劣らず変化に富んでる。ここでも何度も取り上げてきたとおり、4‐3‐3ならば中盤で保持する傾向が強くなり、対する4‐4‐2ならば縦に急ぐ傾向が強くなる。今回は上にも書いたように4‐4‐2だったマンU。これまで通りだとするならば、空いているトップ下の場所に出入りを激しくし、前線の変則4トップがグルグルと回りながら流動性を高めることが予想された。その前線のバランスを見ながらSB、CMFが機を見て攻撃に出てくる。ただし、4トップの一角がギグスではなくてハーグリーブスになったことで、どういう変化が生まれるのかってのが1つのポイントになってた気がする。

対するチェルシーの攻撃はマンUほどいろいろな形を持っているわけではない。システムは基本的に4‐3‐3。そして、攻撃においてボールを大切にするのが最近のチェルシーの特徴。ギャップに入り込むうまさを利用して、ゆっくりと確実にボールつないでいくチェルシー。そんなゆっくりとしたパス回しの中で人もボールも高い位置に入って行く。ビルドアップがスムーズなのが最近のチェルシー。

ただし、そこからラストの1/3をどう崩すかってのがチェルシーの問題。ギャップを使ううまさはあっても、ギャップを作るうまさはないチェルシー。ボールを大切にする意識も相まってブロックの外外でのパス回しが続くことになる。ポゼッション率は上がってもシュートが増えないっていうミラン的な悩みが見られるチェルシー。今回と同じようにドログバがトップに入った時には、目標ができることでブロックに仕掛ける縦パスもそれなりに入る。そういう点についてはアネルカよりはマシと言えばマシ。ただし、アネルカと違って真ん中に居座るドログバ。結果として全体の関係性の固着化を生み出し、相手のブロックに決定的な混乱を与えることができないっていうジレンマを抱える。

というわけで、攻守に渡る両者のやり方の選択によって試合の流れはどのようにでも変わる予感。よって、試合が始まってみないと分からないっていう部分が大きかったって言える。本来的にはじまってみないと分からない部分が大きいサッカーの試合ではあるけど、今回の対戦はそれが顕著だったって言える。実際に今回の試合は前後半で全く違う展開が生まれてるわけで、その辺にも気まぐれな両者の特徴が表れてたと思う。

さて、実際の試合。立ち上がりの時間帯は典型的な決勝戦的な流れ。どちらもボールを持ったら下手につなごうとせずに蹴りまくった。相手が前線からプレッシャーに来たとか、味方がいい感じでウラを狙ってるとか、そんなことは二の次。とにかく、最悪なのは下手につないで途中で引っ掛けられること。試合開始直後だけにちょっとしたミスが出やすいし。そんな流れの中でショートカウンターから失点なんてシーンは悪夢以外の何物でもない。よって、どちらもリスクを冒さない蹴りまくり作戦から入ったと思う。

その蹴りまくりを最初にやめたのはマンUの方だった。前半の5分過ぎになると、そろそろ普通につないでも大丈夫かなって形で大雑把なロングボールの数を減らしていったと思う。ここにはチェルシーの守備の問題もあったと思う。立ち上がりのチェルシーの守備を見て、こりゃ普通につなげるんじゃねっていう気持ちがマンUの選手たちに生まれたはず。結果として、上にも書いたとおり最近はボールが大好きなはずのチェルシーよりも先に地上からの攻撃に移ることになったと思う。そして、その流れのまま前半のペースはマンUが握った。

で、そのチェルシーの守備の問題ってのはなんだったのか?実際のところチェルシーがいつもと違う戦い方をしてたかって言えば、そんなことはなかった。いや、攻撃では違う戦い方をしてたけど(それは後の話)、守備においてはいつもと同じ考え方が見られたし、それを実際に実行することもできてた。リーグでのマンU戦のときとも大きく異なったやり方を採ってたとは言えない。ただし、前回はマンUが守備的に戦ったことで見えてこなかった弱点が、今回の試合では見えてきてしまったっていう気がする。

いつもと同じチェルシーの守備は1度4‐3‐3(4‐1‐4‐1)ブロックを作って受ける形。トップに入った選手(今回の場合はドログバ)は前線に向かって積極的に追いかけをせず、よって守備のスタート役としても機能しない。じゃあ、守備のスタートはどこで切られるかと言えば、それは相手が1つ縦パスを入れたきたところ。CBだけは浮かせておいてやるけど、実質的な攻撃のスタートのところは浮かせないぞって考え方。マンUのSB、CMFにボールが入った時点でチェルシーの2列目が守備を開始する。それはいつも見られる形だって言える。

ここで、上に書いたチェルシーの気まぐれさは、その2列目がどの程度しっかりとプレッシャーをかけていくかってこと。いいときには一気に距離を詰めて前を向かせないような守備をするけど、悪いときにはルーズになってしまうってのは上でも触れたとおり。その2列目のところがルーズになってしまうってのは要するに守備のスタートがうまく切れないってことを意味する。でも、2列目はルーズではあっても守備をしようとする意識は持ってる。よって引っ張り出される。その背後には1ボランチの弱点。そこに入り込まれてDFが晒される。これがチェルシーの悪いときに流れ。

こないだのリーグでのマンU戦の前半にはそんな流れが見られなかった。1つの要因はそもそもチェルシーが守備をする時間がそんなになかったってこと。ずっとチェルシーがボールをポゼッションしてたわけだから。それにマンUの方にボールが渡っても、マンUの攻撃は前線にただ蹴るだけだった。しかも、マンUの攻撃の人数も少ないからチェルシーは何の問題もなく跳ね返すことができた。そうやって再びポゼッションに入って行ったと思う。

ただ、後半になると弱点が露呈。マンUが攻撃に出てきたのと同時にチェルシーの2列目の場所の守備がルーズになった。その中で簡単にブロックに入られるシーンが多発。DFが晒される最高に危険なシーンも多発。エバートン戦でも同じような流れが見られたチェルシーだから、まさか自らそうしてるんじゃないかと思ったぐらい。まあ、自分たちからそうしてるんだとしたらとんだ失敗策だと思うわけだけど。何しろ守備の安定性がなくなると同時に、チェルシーの攻撃のポイントであるはずのポゼッションもできなくなっていたから。

ちょっと話がそれたけど、そんな危ないチェルシーが今回の試合では前半から見られた。前回と違ってマンUが攻撃に出てきたから、早々と目立った可能性が高い。逆にマンUの方がチェルシーの守備の弱点を突くために、相手よりも先に蹴りまくり作戦をやめた可能性もある。どちらにしても、この前半の流れの中にはチェルシーの守備の問題の本質が見え隠れしてたのは確かだったと思う。

チェルシーの守備は上にも書いたように受ける形。自分たちから積極的に守備はしない。さらにトップが守備を免除されてるってのがポイントになってくる。上にも書いたように、チェルシーのトップの選手は前に向かっての追いかけない。よってマンUのCBはある程度フリーでボールを持ち上がれる。今回の限って言えば、ある程度というよりも完全にフリーでボールを扱うことができてた。

そんなCBの選手がボールを預けるのは、普通に行けば1つ前のCMF。そこから実質的な攻撃を始めるため。ただし、そのCMFにボールが入ったところはチェルシーにとっての守備のスタートになるってのは上にも書いたとおり。ただし、やっぱり入りどころを狙ってくってのは難しいのも事実。前で全く制限がかかってないわけだから。やっぱり入ってからの対応、後手の対応とならざるを得ない。

それでもしっかりと厳しく当たることによって、相手CMFに前を向いて仕事をさせないことはできなくはない。そうすれば相手の実質的な攻撃のスタートのところを抑えることができる。でも、この時点では抜け道が残されてる。それはCMFが単純に後ろに逃げてしまうっていうパターン。本当はトップの選手にそのバックパスのコースを切って置いてもらいたいんだけど、今回のドログバは全くそんな動きをせず。2列目の選手がしっかりと対応して相手CMFに前を向かせなかったとしても、バックパスで逃げられてしまっては奪うところまでは行かない。キャリック&スコールズを考えれば、1発のチェックだけで何とかなるはずもないから。

現状を整理。フリーのマンUのCBから1つ前のCMFにボールが入ったところでチェルシーの2列目が守備を開始する。そこでマンUのCMFはシンプルに後ろに戻す。ポイントはこの時点でもマンUのCBはフリーであること。しかも、1度CMFに預けてることでさらに高い位置まで入り込んでいる。前を向いて高い位置でボールをもらうCB。CMFが前を向けなくても、CBが実質的に攻撃のスタートになってやればいいじゃんっていうことになるわけ。

さらにチェルシーの方はマンUCMFに対する対応のために2列目が引っ張り出された状況。背後には1ボランチの弱点をさらけ出してる。その1ボランチのスペースはチェルシーにとって弱点であると同時に、マンUにとっては格好のスペース。相手が1枚しかいない場所であるとともに、トップ下の場所の出入りを激しくするのが4‐4‐2マンUの戦い方なわけだから。マンUが4‐4‐2の良さを発揮する下地が完全に整ったって言える。

ただし、今回のマンUの4‐4‐2はちょっとイメージが異なってたのも事実。それでもテベス&ルーニーは積極的に1ボランチのスペースに降りてきてボールを引き出す。マンUはそこを簡単に使っていった。相手の2列目の背後のスペースを有効活用して、簡単に相手ブロック内に入り込むシーンが増えていったと思う。この辺は前回のチェルシー戦では見られなかった点。やっぱり攻撃的に出ると違うねっていう話。それに間間に入るうまさがあるマンUだからこそ、チェルシーよりも先に地上からの攻撃に移行できたんだと思う。

さて、簡単に自分たちの背後に入られるシーンを作られたチェルシーの2列目は黙って見てられない。さすがに後ろに対する意識が高まって行ったと思う。というか、どうしていいか分からなくなった。自分たちの仕事は前に向かった守備で守備のスタートを切ること。でも、それをやることで後ろが危険な状態になっている。このジレンマ。最終的にはチェルシーの方は開き直った。マンUのCMFなんて余裕で浮かせるし、余裕で前を向かせる状況が増えていく。そんなところはいいから、後ろを固めようと。場合によっては4‐4‐1‐1みたいな形でゴール前に人数をかけて守ろうっていう守備の開き直り守備が見られるようになっていった印象。当然のようにマンUの陣地が増えることとなった。

引っ張り出す→背後を突く→陣地を増やすっていう一連のマンUのアプローチ。どこかで聞いた話。それはまさにリーグでのチェルシー×マンUでチェルシーがやったやり方だった。ビルドアップの中で↓↑の動きのよさが見られたチェルシー。前線の選手が降りてきて相手を引っ張り出し、それによってできたスペースに後ろの選手が飛び出す。そんなやり方で相手ブロックに入って行ったチェルシー。マンUの方は簡単にブロックに入られるわ、守備の狙いどころは定まらないわ。結局は中盤の守備を捨てて開き直りのラストブロックへ。結果としてチェルシーの圧倒的なポゼッションにつながったわけ。今回の試合は真逆の展開が生まれたっていう点において、面白い内容だったと思う。

ただ、そんなマンUの攻撃にもちょっとした違和感があった。上にも書いたとおり、いつもの4‐4‐2とは異なった内容が見られたと思う。というか、4‐2‐4のいつもの戦い方と比べると極めて4‐4‐2的に戦ってたイメージ。両サイドのハーグリーブスとCロナウドはどちらもサイドに張り付き続けてたし、ルーニー&テベスの動きもも常識的なFWって感じだった。トップ下の場所の出入りも2トップが交互に降りてきたり、CMFのキャリックが飛び出して行ったりっていう普通の流れ。イメージとしてはリバプールの平行移動4‐4‐2のイメージ。いつものようなマンUの変則4トップのぐるぐるポジションチェンジはなりを潜めた。右サイドにハーグリーブスを起用したってことを見ても、守備を考えた結果かなって思ったりする。

それでもこの常識的な4‐4‐2で面白い攻撃が見られたのも事実。今回のマンUの攻撃で目立ったのが、左に起点→右に展開→仕上げっていうもの。このサイド利用の攻撃の合間合間に、ルーニー&テベスを利用しながら相手のブロック内に打ち込む縦パスを織り交ぜて行くってやり方が見られた気がする。そういう意味では相手に狙いどころを定めさせない攻撃ができてたのかなっていう気もする。

それでも攻撃の上で最重要ポイントとなったのはサイドだった。そして、そのサイドの使い方が特徴的。上にも書いたように、最初の起点は左サイドの作られることが多かったと思う。このときにCロナウドが低めの位置でボールを受けることが多かったってのが今回の試合では目立った部分。ハーフェイライン付近でのボールタッチが目立ったと思う。そして、その低めの位置でボールを受けたCロナウドをエブラが一気に抜いて行く。相手のJコールを引きずりながら。エブラとCロナウドの上下関係が変わってたシーンも多かった。

この時点でチェルシーの方はボールを持ったCロナウドに対してJコールとエッシェンの挟み込み体制を作ることができない。仕方がないので、ボールを持ったCロナウドの守備はバラックが助けに行くことになる。結果としてバラックが本来見るべきスコールズが浮く。Cロナウドはバラックが自分のところに向かってきた瞬間にスコールズに預ける。そのスコールズが逆サイドへ展開。深い位置のハーグリーブスに斜めのボールを通す。そんな一連の流れが何度も見られた印象。

この一連の流れはバルサみたいだなって思った。一昨シーズン、昨シーズンぐらいのバルサ。ロナウジーニョが低めで受ける→ファン・ブロンクホルストがロナウジーニョを抜いて飛び出していく→ロナウジーニョから逆サイドへのサイドチェンジ。今回のマンUはCロナウドからスコールズを経由してるから完全に同じだとは言えないけど、ふと思い浮かんできたので。

じゃあ、マンUはなぜにこんな攻撃をしたのかってこと。普通に考えればCロナウドが高めでボールに触れ、ハーグリーブスが低い位置でバランスを取るっていう形の方が適当。というか、メンバーを見た時点では変則4‐3‐3なんじゃないかって思ったほどだし。左肩上がりの4‐3‐3。左寄りのCロナウド-テベス-ルーニーの下に右寄りのスコールズ-キャリック-ハーグリーブスっていう。攻守のバランスを考えれば、なくはないかなっていう。実際は普通に4‐4‐2、しかもCロナウドよりもハーグリーブスの方が高めに入る4‐4‐2だったわけだけど。

1つの理由はちびっこ2トップ。相手の真ん中はテリー&カルバーリョ。真ん中から行ったら普通に跳ね返されてしまうし、サイドからクロスを上げても簡単に競り負けるだろうことが予想される。だったら、真ん中に高さが必要だろうって話。よってCロナウドは真ん中に入ってきてもらいたいところ。で、そこには抜群の質を誇るハーグリーブスのクロスが上がってくる形でゴールへの可能性が高まる。ただし、ハーグリーブスはCロナウドとは違って突破力はない。そう考えると単純に右サイドを崩すのは難しい。だから、左に1度作って置いて相手をそのサイドに寄せ(Cロナウドの存在がなおさら)、その後に一発の展開でサイドを変えることでハーグリーブスに広いスペースを与えようとしたと思う。

前半は引っ張り出し→背後を突き→押し下げ→陣地を増やすっていうパターンと左で作って→右へ展開→フィニッシュへっていうパータンで主導権を握ったマンU。得点も右サイドからのクロスに大外のCロナウドっていう思った通りの形だった。だけど、この得点の後から段々と旗色が悪くなっていったマンU。マンUの問題の露呈ととチェルシーの改善によって流れが変わっていったと思う。そして、その流れは試合終了まで続くこととなった。

それについて見る前に、そもそもチェルシーはどんな戦い方をしてたかっていう点について見てみたいと思う。立ち上がりは両者とも蹴りまくってたってのは上にも書いたとおり。その流れから最初に抜け出したのはマンUだってのも、ここまで書いてきたとおり。でも、チェルシーの方は蹴りまくりの流れから抜け出せなかった。悪い時間帯はずっと蹴りまくりの流れだったと思う。その時間帯のチェルシーはなぜだか知らないけど、ドログバ任せの意識がかなり高まってた印象。

よって、一昔前のチェルシーを見てるようだった。ボールを持ったらまずはドログバ。最近のチェルシーの中でもドログバの存在が大きかったのは事実だと思うけど、それでもビルドアップはチーム全体で上手く行ってたってのは上にも書いたとおり。ドログバ依存はあくまでも相手のラストブロックへの仕掛けの部分だったでも、今回は最初っからドログバにボールを預けておいて、あとはなんとかしてねっていう。守備をやらないんだから攻撃は1人で頑張れよって思ったのかどうかは知らない。

とにかく、守備において全体が押し下げられる流れの中では残念ながらドログバは孤立。マンUの方もドログバだけを見ておけばいいんだから、こんなに守りやすいことはない。前回のリーグでの試合では案外ドログバに収まってしまったけど、今回はきっちりと潰してた印象。ドログバ自身も前の試合ほど収まりがよくなかった。よって、ドログバの場所で時間が作れなかったチェルシー。結果押し上げられずに相手にボールが渡る。無限ループ状態へと突入。

まあ、でもチェルシーが蹴りまくったのも分からなくはない。なぜなら今回の試合はマンUの守備の質が前回のリーグでの試合とは全く違っていた。リーグでの試合では中盤の守備を捨て気味だったマンU。それに対して今回は前線から1つ1つ厳しいプレッシャーをかけていったと思う。チェルシーとしてはそのプレッシャーをダイレクトに受ける状況では、さすがに攻撃の流れを作るのは難しい。というか、中盤で下手に奪われたら困るってのもある。

だから、とりあえずドログバって考え方。ボールを大切にするチェルシーだからこそ、ボールをゆったりと扱える場所を増やしたい。逆にボールをゆったり扱えない場所は嫌だ。一発のボールでそんな場所を飛び越える。同時にドログバに収めることで相手の守備の後ろへの意識を高める。そんな狙いがあったと思う。ただし、あまりにもドログバにこだわりすぎたせいでその場所を相手に完全に狙われてしまった。結果、マンUの守備ブロックを押し下げることには失敗したと思う。

それに今回の試合ではギャップを使ううまさもイマイチ発揮できなかったと思う。そもそも、最近のチェルシーにおいてギャップ使いのうまさが光っているのはカルー。OMFが降りていったときにそのスペースにカルーが流れて浮いた存在になり、その外側をAコールが回りこむってのが1つのやり方。そういう意味ではAコールがハーグリーブスをぶつけられたのも痛かった。結果、起点になることが多い左サイドが死んでしまった気がする。

そんなチェルシーの悪い流れが変わったのが前半の30分過ぎ。上にも書いたようにマンUの得点後の時間帯だったと思う。この時間になって、ようやくチェルシーが本来的なやり方に回帰していった。つまり、1発の大雑把なボールで距離を稼ぐんじゃなくて、しっかりとつないで行こうとするやり方。簡単に言うと、DF→FW→MF(低い位置から一発FWへ、そこに中盤が絡む)っていうやり方から、DF→MF→FWっていうやり方に変化した印象。

そして、ここにぴったりとマンUのまずさが重なってきた。得点後のマンUは全体の意思統一が図れない状況に陥ってた印象。とりあえず、前半は1‐0で終わらせようっていう意識がでてきた選手と、それまで通りに積極的に行こうっていう選手の間のギャップ。これがライン間にスペースを与えてしまう原因となっていたと思う。

そもそも前からしっかりと守備をしていた今回のマンUは、守備時にここ最近では珍しく横並びの2トップの関係性。チーム全体が積極的な守備意識を持ってる時間帯は4‐4‐2の3ラインが高めの位置でコンパクトになってたからよかったけど、後ろの方に受ける意識が出てきた時点でトップ下の場所に空いたスペースが気になり始めた。ランパード、バラックがそのスペースを有効活用し始める。そうなると黙っておけないマンUのCMFが引っ張り出される。結果として、今度は4‐4の間にスペースが生まれる。で、そのスペースの場所で前線の3トップが横の動きを活発にした。今回はドログバがあまり蓋として機能せず、というかJコールとかマルダがドログバに遠慮せずにポジションを変えまくりって感じでボールを引き出した。

そんな流れの中で生まれた同点ゴール。またしても、前半の終了間際。マンUとしてはライン間の距離が空いてしまったいたことが諸に出てしまったと思う。中盤がスカスカでクリアボールがあっさりと相手に渡ってしまったところからだった。そして、チェルシーにとってはここで最初にシュートを打ったのがエッシェンだったってのがポイント。前半は1発ボールばかりの攻撃で全く前線に出てこなかったエッシェンがこの試合始めて、飛びだして来たシーン。これが後半の流れにつながっていくこととなった。

その後半のチェルシーは大幅な改革を図ってきた。前半の流れはどうしたんだっていうほどドログバが消える。全ての攻撃はドログバに始まっていた前半のチェルシーからすれば考えられないことだった。その代わりにサイドが活性化。そのサイドももはや死んでしまった左サイドではなく、未だ使わずに未知の魅力満載で残された右サイドを重視した戦い方をしてたと思う。ここでポイントになったのが上に書いたとおりエッシェンだった。エッシェンの攻撃参加はSB的ではない。あっさりとサイドを捨てて来る。これによってマンUの守備陣は混乱しまくりだった。

特に前半にはほとんど見られなかったエッシェンの攻撃参加に戸惑ったのがCロナウド。エッシェンに対応すべきなのはCロナウド。でも、中に入っていったエッシェンはどうすればいいのか。とりあえず、下がっておくかって感じ。さすがのCロナウドも一発勝負の決勝戦では4‐4のブロックにしっかりと参加してた印象。ただし、攻撃を考えると必ずしも歓迎できることだとは言えないけど。

そんなマンUの守備は後半も微妙なギャップを残したまま。ライン間の距離が空いてしまって、そこかしこにスペースが生まれてた。中盤は特にスカスカ。相手がドログバを経由させずにサイドに起点を作るようになったから、さらに問題が大きくなったとも言える。前半はとりあえずドログバを押えとけばなんとかなったけど、後半はそうはいかなくなった。さらに相手がサイドに起点を作ったことによって、ブロックが横に間延び。縦横間延びでスカスカ度合が増した印象。

よって後半は圧倒的なチェルシーのペースへ。ギャップを使うのはうまいチェルシーだから、スカスカのマンUブロックの間間をうまくつなぎながらポゼッションを高めた。加えて今回のチェルシーはシュートの数が圧倒的。なかなか相手ブロックに入り込めずに外外でパス回しのためのパス回しをするチェルシーではなかった。この辺も徹底的にサイドに起点を作ったことが功を奏したって言える。サイドに起点を作って相手の守備ブロックの真ん中を空けたから、ブロック内に入り込みやすかったって言える。実際にはブロック外からの積極性も目立ってたわけだけど。とりあえず、絶対的にボールを保持するような意識は今回の試合では薄まってたと思う。それは前半の蹴りまくりからもわかる部分だったと思う。

さて、守備の内容がまずかったマンUは攻撃の流れも悪くなってしまう。何よりも攻撃の選択肢が少ない。守備によって両サイドが押し込まれてたマンUには前半のようにピッチ全体をバランスよく使った攻撃なんてものは夢のまた夢。前半は活躍しまくりの右サイドも完全に消えてしまった。よって攻撃の選択肢は真ん中の2トップのみ。でも、そこにしか来ないと分かっているならば、相手としても守りやすい。マケレレが目立ちまくった後半だったって言える。

そんな悪い流れのマンUに悪循環が登場。例の悪いときに縦急ぎマンUの雰囲気が見え隠れし始める。相変わらずドログバは守備をしないチェルシーが相手だから、1度落ち着けばいいのに、簡単に前線にボールを蹴ってしまう場面が多くなっていく。この時点で当然のように前線は薄い薄い。後半はCロナウドの個人でのチャレンジが目立ちまくった。仕方なしの個人技だった気がする。とにかく、そんな状況のマンUが人数をかけた効果的な攻撃を行えるはずもなく。ボールはやっぱりチェルシーの側に渡ってしまうことになった。前半とは真逆のマンUの悪循環。

攻守に渡って内容が悪いマンU。とりあえず失点だけは避けようってことでシステムの変更に入る。ハーグリーブスを真ん中に移し、ルーニーを右サイドに。相手の左サイドはこの時点で機能性を失っていた。マルダは左を留守にすることが多かったし、Aコールもケガの影響か全く目立たなくなっていた。よって、わざわざハーグリーブスを当てる必要はないっていう判断か。守備時には中盤の5枚をフラットにして4‐5ブロックを形成するようになったと思う。

これによって当面の守備のバランスは回復。相手がサイドに起点を作ったとしても、真ん中は3枚がしっかりと固める状況を作り出した。だから、それまでのようにチェルシーのバラックとかランパードが危険な場所に簡単に入り込むっていうシーンは減ったと思う。さらに、後ろへの心配が軽減したCロナウドが攻撃への意識を高めることにもつながった。どちらにしても攻撃に人数をかけられず状況ではなかったから、意味がなかったと言えばなかったけど。でも、それによってエッシェンの攻撃参加は停滞したと思う。

そんなこんなで後半はマンUがしのぎ切ったっていうイメージが強かった。そして、延長へ突入。延長戦に関しては書くべきことはあまりないかなっていう。とりあえず、マンUは4‐5‐1で中盤を厚くして戦ってたってことぐらい。それでも後半の最も決定的なシーンでは相手が外に起点→中へっていう流れの中で真ん中でランパードを浮かせてしまったわけだけど。危ない危ない。それに対して、チェルシーの方も4‐4‐1‐1っぽい安定した守備ブロックで受ける形が目立つようになっていった。とはいえ、両者とも疲労困憊。あまり効果的な攻撃を仕掛けられず、でも、1度ボールを持たれると奪いに行けないっていうような流れだったと思う。

というわけで両者決定的なチャンスを作りつつもPK戦へ突入。ちなみに、延長の後半にドログバが退場した。今度はバラックじゃなくてビディッチと喧嘩して。PK戦については、まあ運だから書くこともないかなっていう。ただし、Cロナウドは精神的な部分のもろさをまだ払しょくしきれてない気がした。ける前から外す雰囲気プンプン。4年前のEUROから比べればそういう部分の弱点は克服しつつあるんだろうけど。バルサ戦のPK失敗も含めて、ちょっと気になっている部分。

この試合に関してはチェルシーとマンUの間に差はほとんどなかったって言える。ただし、チェルシーの方が弱点を見せたかなっていう。チェルシーの弱点は攻撃のゴールと守備のスタート。シュートを打ちまくった今回も、得点シーンを含めて完全に崩し切ったシーンはほとんどなかった。シュートはブロックの外からのものが多かったし。守備のスタートについては最初の方で書いたとおり。マンUが攻撃に出てきた時間は本当に目立った部分だった。この2点は今シーズンのチェルシーの問題点であり、来シーズンに向けた課題。

対してマンUの方も弱点が見えた。それは波。攻撃がうまく回っている時には守備もうまく回り、チームとして行け行けになるマンU。でも、ひとたびどちらかが停滞すると、もう片方も引きずられて停滞する。攻撃がうまく回らないと前線の選手が守備をしなくなる。逆に守備にばかり追われて本来の攻撃ができなくなる。そして、そこから抜け出す術がない。これは死角がなさそうに見えるマンUの最大の問題点だったと思う。来シーズン、マンUに対するチームは立ち上がりの時間帯に全精力をかけて流れを引き寄せるのがポイントになるかも。そうすれば自分たちのペースで戦える。ただし、それはあくまでもマンUが課題を克服できなかったら。

ところで、この試合にドログバとカルーが出てたけど、ってことはさっきやってたコートジボワール代表には不在ってことか。まあ、キリンカップなんかよりもCLを優先するに決まってるのは言うまでもないことだけど。ってことは、コートジボワール代表はやっぱり1.5~2軍だったのかな。ビデオに撮っておいたので、明日か明後日には見てコメントしたいと思います。
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2008-05-18 Sun 18:21
エバートン×チェルシー
<エバートン:4-4-2>
FW:ヤクブ-Aジョンソン
MF:マヌエル・フェルナンデス-Pネビル-カーズリー-ピーナール
DF:レスコット-ジャギエルカ-ヨボ-ヒバート
GK:ハワード

<チェルシー:4-3-3>
FW:カルー-アネルカ-Jコール
MF:エッシェン-SWフィリップス、ミケル
DF:Aコール-テリー-カルバーリョ-フェレイラ
GK:チェフ

リバプール戦でのエバートンは精彩を欠いていた。その要因はシステム変更。ケガ人続出のチーム事情を反映していつもの4‐4‐2を採用できず、4‐1‐4‐1での試合に臨んだ。特に大きかったのが2トップ→1トップへの変更。攻撃ではトップを狙うのが目標の1つであるエバートン。その目標が2枚から1枚になってしまったわけで。その影響は多大。さらに、2列目が1トップのヤクブに効果的に絡めず、ヤクブは1人でいつもの2人分の仕事量を要求されてたと思う。結果、トップ不在のイレギュラーな状況が多く見られた。

守備ではトップが追いかけることをスタートとしているエバートン。そのトップが1枚になってしまったことによって、守備のスタートが切れなくなった。それに伴って人をしっかりと押さえる後ろの守備の良さも消え気味だったように思う。エバートンらしくないエバートンが見られたリバプール戦だった。後々のことを考えると、このリバプール戦での敗戦は痛かったし。

そう考えると今回の2トップの採用はリバプール戦から比べれば明らかな好材料。立ち上がりは2トップに戻ったことによって、いつものエバートンらしい内容が見られたように思う。攻撃では単純にトップを狙うボールが増えた。リバプール戦でもそういうボール自体は多かったけど、その実効性が全く異なってた印象。何よりも単純にターゲットが2枚になったこと、結局ヤクブに入れるとしてもすぐ近くに相棒がいたことが大きかったと思う。1トップになったことで、ヤクブが真ん中に重点を置けたのも好材料。

さらにチェルシーとリバプールの守備の違いも影響を及ぼしたような気がする。リバプールの真ん中の場所はCB-CMFの2-2が距離を近づけて一体となって押さえてる。対してチェルシーの真ん中は枚数的にも2-1だし、加えて最終ラインと中盤の関係性がリバプールほどよくない。だから、エバートンの1発のボールが収まりやすかったって言える。

そうやってトップに単純に入れたボールをサイドに展開するのがエバートンのやり方。これはリバプール戦でも見られた形。立ち上がりはしっかりと機能してたチェルシーの中盤での守備。エバートンがパスをつなぎながら組み立てを行おうとすると、ことごとくチェルシーの中盤で引っ掛けられてしまった。だから、その中盤を飛び越すボールを蹴っておいて、その後に展開をするってのは理にかなった考え方。トップに当ててピーナールへ(今回は右サイドに入った)っていうエバートンの攻撃の1つのパターンが目立った印象。2トップにしたことでこの一連の展開がスムーズに運んだと思う。

ただし、2トップにしたことによるエバートンの良さが見られたのは本当に立ち上がりの数プレーのみだった。なぜならば、その後はチェルシーに攻め込まれる時間帯が続くことになったから。それについて、ここから詳しく見ていくことになるけど、簡単にいえば本来やりたい4-4-2を維持できなくなったってこと。チェルシーに押し込まれたエバートンの守備ブロックは4-4-1-1になる。この4-4-1-1がいろいろな弊害を生み出した。マンUほどとは言わないけど、エバートンが安定してるのは4-4-2というよりは4-2-4みたいな形のとき。というか、本来は4-1-3-2で戦ってるわけだし。そういう、攻守に渡って前がかり気味のシステムが維持的なくなった時点で、エバートンは悪循環の波に飲み込まれて行ってしまった。

最終的には押し込まれてしまうことになるエバートンだけど、本当にやりたかった守備のやり方はいつもどおりのものだったと思う。つまり、上でも触れたようなトップが前線から追いかけて後ろが人をしっかりと捕まえるってこと。最前線を2トップの形で維持できてた時間はリバプール戦のように守備のスタートがうまく機能しないなんてこともなく。相手のCBの持ち上がりを防ぎながら後ろとの関係で制限を加えるような守備のスタートが機能してたと思う。

ただし、チェルシーはなんだか知らないけどビルドアップが抜群にうまい。昨日見たマンU戦もそうだったし。チェルシーのビルドアップの特徴はゆっくりと確実にってこと。低い位置のボールに対しても近づくランニングを組み合わせながら、近くに逃げ場を常に置いておく。低い位置のボールに対して近づくランニングをするってのは、つまり上から選手が助けに降りてくるってこと。これじゃあ、前線が薄くなってしまう。それを防ぐために、1人が下がってくれば別の選手が入れ替わりで出て行くっていう動きがチェルシーのビルドアップの特徴の1つ。前の人数を減らさずにボールを徐々に高い位置に持って行く。その中で全体が押し上げていくみたいな。

前が降りてきて代わりに別の選手が出て行く。これはアーセナルのビルドアップでも見られる形。でも両チームではゴールに向かう意識に雲泥の差があるかなって気がする。アーセナルは今までにも書いてきたように、ゴールに向かうためにパスをつないでいく。だから、少ないタッチでスピーディーに次々と局面を変えていく。対して、チェルシーはある意味ではパスをつなぐためのパスが多い。ゆったりとしたリズムで広いとこ広いところをつないでいく。ゴールに向かうために狭い所にでも強引に入り込んでくなんて考え方はチェルシーにはないと思う。

そう考えると、どちらかというとミランに似てるかなっていう。後で書くようにパスがつながりまくっても相手ブロックに仕掛けられないあたりはそっくり。でも、ミランと比べるとそれはそれで違いがある。ミランのパス回しには真ん中を空けるっていう目標があるけど、チェルシーの方にはそんな目標は感じられない。とにかくボールをつなぎまくろいっていうイメージ。去年の日本代表の近いのかも。なんていうことを言ってるときりがないので、比較はこれぐらいに。

前にチェルシーの↓↑の動きってのに触れたことがある。ここまで書いてきたような、1人が降りてきて別の選手が代わりに出て行くっていう。チェルシーのこの↓↑は質が高い。上の選手が降りてきて相手を引っ張り出したスペースを、後ろから出て行く選手が効果的に活用。マンUとかエバートンみたいに人への意識が強いチームに対してはさらに効果的に機能する。引っ張り出しておいて背後に入り込むっていう動きの中で的確に間に入り込んでくる。そこで浮いた選手が簡単にボールを受ける。そうやってスムーズに前線にボールを運ぶことができると思う。

しかも、こういう一連の流れをボールを動かしながら行うのが今のチェルシー。逃げ場を常に維持しながら、相手がプレッシャーに来たところでシンプルに次の場所へと逃げて行く。よってエバートンの方は守備の狙いどころが定まらない。ボールを回されて、狙いに行ったところで簡単に否される。守備が後手後手に回って、むしろ背後にギャップだけを残してきてしまう困った状況。そのうちにズルズルとブロックが押し下げられて行ってしまった。これが4-4-1-1悪循環の始まり。

ところで、前線で頑張ってたはずのエバートンの2トップの守備はどうなったのかって話。上にも書いたように、2トップが2トップのまま維持されていた時間には2人が守備のスタートとして効果的に機能してたと思う。でも、これに対してのチェルシーの対応もしたたかだった。相手のトップの守備が効果的に機能してるとき、つまりCBがボールを持ちあがれないし、前線に出そうとしても狙われてるとき、チェルシーのCBは単純に前線に蹴ってしまった。

今回の試合ではトップがドログバではなくアネルカだったチェルシー。よってロングボールを蹴っても全くチャンスに直結せず。というか、普通に相手ボールになることが多かった。でも、相手ブロックを押し込むことには成功したって言える。ロングボールで相手ブロック全体の後ろへの意識を高めておいて、改めて組み立てなおすっていうアプローチが目立った印象。

こういう部分を見ても。チェルシーの組み立ての中にあるのは自分たちの陣地をいかに増やすかっていう考え方。とにかくボールをつなぎたいチェルシーだから、相手のプレッシャーがない安全地帯を増やすことが何よりも目標になってたと思う。相手が全体として前に守備意識を向けてくれば、迷わずに蹴ることで後ろへの意識を高めるし、中盤のところで守備意識を高めてくれば、DFとの間のギャップに入り込んで、中盤の前への意識を削いでしまう。さらに、常に安全な場所安全な場所へとつないでいくポゼッションで相手に狙いどころを定めさせない。ブロックをズルズルと引かせるとともに、引いてしまったブロックを深い位置に釘づけにする。そんなチェルシーの攻撃だった。

ただ、そういうビルドアップまではスムーズだったチェルシーの攻撃の勢いがラスト1/3のところで一気に陰ってくる。ビルドアップのうまさをベースとしながら、相手を押し込んで自分たちの陣地を増やすことには成功したチェルシー。でも、そこからゴールに向かうにあたってどうすればいいのかってことが全く見えず。昨日のマンU戦の時に書いた懸念がダイレクトに表れてたと思う。

ドログバがいたマンU戦では、そのドログバを目標とすることで思ったよりも相手のラストブロックに仕掛けていく回数が多くなった。ドログバの存在が強引な入り込みにつながったって言える。でも、今回のエバートン戦のトップはアネルカなわけで。アネルカはドログバほど確固たる存在じゃない。結果としてどうしようもないとしか言えない展開が生まれた。

昨日も書いたとおりアネルカはトップの場所を不在にすることが多い。ただ、今回の試合を見て改めて思わされたのは、そのトップを留守にする動機が不純だってこと。全体のバランスを見てとかパス回しを助けるためっていうよりは、ただ単純に狭い場所が嫌いってだけのような気がした。アネルカが相手が作った4-4のブロックから簡単に出てきてしまって、ブロックに仕掛ける上での目標がいなくなってしまった。ただ、そのブロック内で待ってたとしてもアネルカにドログバほどの信頼感があるかどうかは微妙なところだけど。

ボールが大切なチェルシー。ドログバにならばたとえボールを失う可能性があったとしても無理やりに狭い場所にボールを送り込む価値があると考えられる。でも、アネルカはそのブロック内にはいないし、いたとしてもボールを失うリスクの方が高いと判断される。よってチェルシーの攻撃の中ではゴールに向かうことよりもボールを失わないことが優先されてしまっていた。パス回しはすべて相手のブロックの外外をつなぐもの。ボールはよく動いてるし、その中でパス&ゴーを織り交ぜながらリズムを変える場面も見られる。でも、例外なくボールは相手のブロックの外外でつながっていった。

だから、ポゼッション率を高めてもゴールに向かうシーンが恐ろしく少なかったのが今回のチェルシー。しかも、相手のラストブロックへの仕掛けの選択肢も恐ろしく少ない。目立ったのは外外でボールをつないだ上で、結局ラストも外からって形。サイドでWG-SBが関係性を作って深い位置までえぐり、そこからクロスっていうやり方。でも、左のカルーは中に流れ気味で縦をえぐることが少なかったし、右は右でJコールが乗り切れてなかった今回の試合。セットプレーを含めてキックの精度がかなり低かった。よって効果的なクロスを送り込むことは結局できなかったと思う。

それにクロスに対して反応する中の選手が少ない。ボールを支配して前線に人数をかけてるのにも関わらず。ボールは友達のチェルシー。ボールを失いたくないから相手のラストブロックに仕掛けないってのはここまでにも書いたとおり。同時にボールが欲しい選手が次々にボールに近づいてきてしまう。ブロックの外でボールが動いてるわけだから、選手はみんなブロックの外に出てきてしまう。結果として相手のブロックを取り囲むようにチェルシーの選手が配置される状況が目立った。攻撃に人数をかけてるのにゴール前が薄いっていう謎な場面が多々見られた。

そんな中、相手のブロック内で孤軍奮闘してたのがSWフィリップス。アネルカがしばしばトップの場所を留守にすることによってできたスペース(と言っても敵は密集)の中で爆発的なランニングを繰り返してスイッチとして機能したと思う。チェルシーがエバートンのラストブロックに仕掛けたり、強引にエリア内に入り込んだりっていうプレーのほとんどは実質的にSWフィリップスの動きによって引きだされてた。ただし、やっぱり1人だけの動きじゃ辛いわけで。なんとかブロック内に入り込んだとしても、ことごとくエバートンの密集守備ブロックに跳ね返されてしまっていた。

だからこそ、得点シーンには意味があったと思う。このシーンは今回の試合で唯一エッシェンが相手ブロック内に入ってきたところから生み出された。それ以外の時間のエッシェンはとにかく相手のブロックの外でのプレーが目立ったと思う。ブロック外でのタッチ数を増やしながら、よく言えばうまくボールを散らして組み立てを行ってた。ただし、あれだけ押し込んでいたことを考えれば、その仕事はミケルに任せてもよかったんじゃないかって気がする。むしろ、エッシェンがブロック外で目立ちまくってる状況は前線が薄くなることを意味してたわけで。得点につながったことからも分かるとおり、もっと積極的にゴール前に出て行くプレーをすればよかったのにって思う。

こういうところから見ると、チェルシーは自分たちから相手のブロックに入り込むのがとっても下手だってことが分かる。自分たちからアクションを起こして相手のブロックに穴を作るのが下手だってこと。昨日見たマンU戦ではブロック内に入ることが多くなったけど、それだって工夫は皆無。ドログバの個人の力に任せた結果。それに対して、今回みたいな試合が今シーズンどれだけ多いかって話。つまり、ブロックの外でボールをつなぎまくるってこと。そして、全然ゴールに向かって仕掛けられないってこと。

じゃあ、なんでビルドアップがスムーズかっていうと、なぜかチェルシーはなぜか相手のギャップに入り込むのが抜群にうまいから。ギャップを作ることはできないけど、現に存在するギャップに入るのはうまい。ビルドアップがうまいのは、その時点では相手がまだ中途半端に引っ張り出される余地があるから。中途半端に出てきた背後をついていくってのは上にも書いたとおり。でも、ラストブロックを完全に固めに来た相手に対してはそうは行かない。ただ、ボールを回してるだけじゃおびき寄せることはできない。相手はラストで跳ね返すことを心に決めてるわけだから。そのときにチェルシーには工夫がない。そして、ボールばかりが相手のブロックの外で回って行く。

ただし、それでも主導権を握ってたのは圧倒的にチェルシー。チェルシーはラストの崩しが全く機能してなかったけど、それ以上にエバートンは攻撃が全くできなかった。それはチェルシーによって4‐4‐1‐1にされてしまった影響が多大だったから。ビルドアップがうまいチェルシーに対していつものような前線で追いかけ、後ろは人を捕まえる守備ができなかったエバートン。狙いどころが定まらずに全体が押し下げられてしまったのはここまでにも書いてきたとおり。そして、その結果として深い位置に4‐4‐1‐1のブロックを形成してラストで跳ね返すしかなくなってしまった。

この時点で2トップは幻と消えた。それでもボールを得たエバートンはトップのヤクブを目指す。でも、4‐4‐1‐1になっているエバートン。4‐4‐1‐1は知っての通りの先細りシステム。マンU相手のリバプールが陥った悪循環へ。トップを目指しても相手としては押さえるところははっきりしてる。しかも、相手はテリー&カルバーリョ。その前にミケル。そう簡単に切り替えでヤクブに収まるわけもなく。ヤクブへのボールが奪われて再びチェルシーの攻撃が続くっていう形が目立つことになった。

運よくヤクブに収まったとしても、その後はどうするんだって話。上にも書いたように、トップに当てて→サイドへ展開ってのがエバートンの攻撃の1つのやり方。じゃあ、そのサイドの選手はどこにいるかってこと。それは超低い場所。チェルシーのSBの超攻撃参加に対応してたエバートンのSMFはかなり深い位置まで押し込まれてた。だから、切り替えでヤクブに収まったとしてもすぐにそこに絡めるはずもなく。出し所のないヤクブは頑張りむなしく結局はボールを失ってしまうこととなった。

切り替えでヤクブに収まらない。収まってもつぶされてしまうエバートン。そんな状況では後ろが押し上げられるはずもなく。4‐4‐1‐1のままに相手の攻撃を再び受ける状況に。しかも、1度相手にボールを持たれたらなかなか奪い返すことはできない。チェルシーはボールを失うリスクを最小限にして攻めてきてるんだから当たり前。押し込まれる→奪ったら先細りのトップへ→奪われる→押し上げられない→押し込まれる、の完全なる悪循環に陥ってしまったと思う。

これは本来のエバートンとは全く違った戦い方。本来のエバートンは上にも書いたように高い位置から守備を始める。両サイドも自分の前に対して積極的に守備をして行くことが多い。そうやって、守備時から攻撃のポイントとなるトップとサイドの関係を良好なものに保っていると言える。攻撃に人数をかけられるから高い位置での守備も効き、高い位置での守備が効くから攻撃にも人数がかけられる流れ。今回は真逆。攻撃に人数をかけられず高い位置での守備が効かず、高い位置での守備が効かないから攻撃にも人数をかけられない。本当に苦しい状況だったと思う。

この時点で0‐0引き分けの匂いがプンプンのこの試合。エバートンは活路が見出せず。ただ、結果として逆にラストの踏ん張りで失点を防ぐことだけに集中することができた。対するチェルシーは圧倒的なポゼッション。でも、相手のラストブロックには効果的に仕掛けられず。ボールを持ってるだけでチャンスは少ない状況。日本とアジアの格下の試合を見てるようだなと。ただし、チェルシーが先制点を奪ったことによって0‐0の予感は外れたわけだけど。

ここまでは恐ろしいほどにマンU戦とそっくりなチェルシー。ボールは好きなように持てる。ポイントはラストをどうやって崩すか。相手の引いたブロックに対して、そのラストの崩しで苦戦。そんな流れの中で前半の終了間際に先制点(しかも、中盤からの飛び出しで)。さらに似なくてもいいところまで似てくる。それは攻撃に出てきた後半の相手に対して、守備が機能性を失うっていう状況。ちなみに、このエバートン戦は実際にはマンU戦の1つ前の試合。あんまり関係ないことだけど。

後半は攻撃に出てきたエバートン。ピーナール→アンチェベとAジョンソン→グラべセンの同時交代で勝負をかけてきた。システムも本来の4‐1‐3‐2へと変更して。これによって縦関係っぽかった2トップが普通の2トップになり、加えてトップ下に選手を置いたことでヤクブの孤立を解消する狙いがあったと思う。そして、その思惑が功を奏して流れはエバートンに傾いていった。ように見えた。確かに流れはエバートンに傾いていったけど、その要因はエバートンのメンバーとかシステムの変更にはなかったと思う。じゃあ、何かっていえばチェルシーの守備のまずさ。

そもそもマンUとは違って引き分けでもよかったわけでもないエバートン。というか、絶対に勝ちが欲しかった試合。しかもホームでの戦い。マンUのように最初から攻撃を捨てて、守備に重点を置いてくる意図はなかったと言ってもいい。それでも前半は圧倒的にチェルシーがボールを支配。その要因は単純にチェルシーのサッカーの内容がエバートンのサッカーの内容が上回ったからだって言える。

1つはここまで書いてきたような攻撃面での圧倒的なポゼッション。加えて、守備の良さもチェルシーが主導権を握ることができた要因だったと思う。立ち上がりのチェルシーの守備は本当に質が高かった。相変わらず1度ブロックをセットしてからのスタートだったけど、相手が1つ入ってきたところで一気に厳しいプレッシャーをかけていったと思う。それに対する連動性もいいものだった。そうやってエバートンのパス回しはことごとく中盤の場所で引っ掛けていったと思う。だからこそエバートンは蹴る攻撃が増えたってのは上にも書いたとおり。ただし、ここまでは昨日見たマンU戦と同じ流れ。

今のチェルシーの問題はそういういい形の守備を維持できないってこと。今回も前半の途中からだんだんと守備がルーズになって行った。問題は守備のスタートが機能しなくなっていくこと。最初の場所で忠実に守備ができると、モウリーニョが残した遺産のおかげかその後も芋づる式に連動性が高まって行く。でも、スタートのところでしっかりとしたプレッシャーがかからないと、その後もズルズルとルーズな対応が続いて行ってしまう気がする。相手がパス回しを始めてしまったら、もう対応できないよみたいな。しかも、悪いことに中途半端に対応しに行って最終的にはDFが晒されるってシーンが多くなる。これは昨日も書いたとおり。

そして、後半になってエバートンが攻撃に出てきたところでこの守備の問題が露呈した。完全にマンU戦と同じ流れ。前半はことごとく分断されていたエバートンのパス回しがつながりまくり。しかも、そのパス回しの中で1つ1つの場所がことごとく浮いていた。チェルシーの中盤での守備がルーズになり、実効性のある守備ができなくなったと思う。そんな中で狙いどころが定められなくなったチェルシーのブロックはズルズルと引いてく。一時はアネルカも含めて全員が自陣に戻る形だった。

じゃあ、こういう前後半の守備の違いがなぜ現れるのかって話。要因はいくつか考えられる。1つは攻め疲れのアーセナルパターン。ショートショートのパス回しで疲れてしまい、後半は運動量がガクっと落ちるってこと。ただ、チェルシーの定型的パス回しではアーセナルほどスタミナを消費するとは思えないけど。それに常にハイペースで試合を進めるアーセナルと違って、チェルシーは多くの時間をゆっくりと過ごしてるし。

というわけで他に考えられるのは気まぐれっていう要因か。でも、気まぐれであれだけ守備の質が変わってしまうとマンU以上だぞっていう。マンUの場合は前線の選手の気まぐれで、守備のやり方にいろいろと影響が出るけど、チェルシーの場合はチーム全体にムラがあるわけだから。ということは、これも現実的な考え方ではないか。

最後に現実的なものを1つ。それはチームとして守備を弱めるって考え方。というか、守備の勝負どころを変えるってこと。1点リードした時点で中盤での守備は捨ててラストの場所へと守備を移行しようとしてるのかもしれない。アネルカまでを自陣に戻した今回のやり方を見ると、あながち間違ってないような気がする。それに攻撃でも急に人数をかけないやり方に変更してくるし。前半にあれだけ人数をかけてポゼッション率を上げてきたのが嘘のように、後半は人数をかけずに一気に縦を侵攻してくやり方が目立った。

ただし、この変更がいいのか悪いのかよく分からない。守備は明らかに安定感がなくなっている。中盤での守備を捨ててラストに絶対的なブロックを作るっていうならば、それはそれで分からなくはない。でも、中盤の場所で中途半端な単発守備が繰り返される結果、最終的にはDFラインが晒されるシーンが多くなる。結局は最後の守備は個人の力で達成されることが多いと思う。

守備を消極的にして、攻撃も人数をかけないことで相手が攻撃の勢いを増す手伝いをしてるとしか思えない。しっかりとつなげるようになったエバートンは攻撃に人数をかけるようになった。そもそもエバートンの攻撃には近い関係性でのパス回しのよさもあるから、パスがつながるようになればいいリズムで深い位置まで入り込むことが可能になったと思う。そうやって前線に人数が来れば、高い位置での守備が効果的に効くようになる。しかも、相手は攻撃に人数をかけてこない。よって、前線の選択肢は少ない。だからエバートンは高い位置で本来的な守備ができる時間が長くなった。前半とは真逆の展開。チェルシーが自ら後ろに向かったことで、自らの首を絞めてたようなイメージの後半の流れだったって言える。

さらに分からないのがマケレレの投入。守備固めのためにSWフィリップスに代えてマケレレを入れる交代自体の意味は分かる。要するに守りたいってことだろっていう。そして、この交代によって中盤はミケル&エッシェン&マケレレっていう鉄壁の組み合わせに。ここまではいい。問題はこの交代によって中盤の守備が復活したったこと。チェルシーにとっては問題ではなかったけど。とにかく、前半のいい時間帯のように中盤での積極的なプレスが目立つようになった。これによって何とか糸口を見出しかけていたエバートンの希望は打ち砕かれることとなったと思う。

ということは、中盤での守備のルーズさはベンチからの指示ではないのかって話。後半の流れを見て、こりゃやばいってなったベンチがマケレレを入れるとともに中盤の守備を復活させろと指示したんじゃないかと思う。こうなってくると前後半の守備の質の変化の根拠が全く分からない。もしかしたら、本当に気まぐれなのかもしれない。だとしたら、ここは大きな穴になりうるだろうなっていう。というか、守備が気まぐれだとしても攻撃ではポゼッションを続ければいいのに。それも同時に捨てるから、なんだかよくわからないことになるチェルシーだった。

というわけでチェルシーの弱点が見え隠れする今回の試合だった。ラスト1/3を仕掛けられない攻撃の問題と、よく分からない守備の問題。マンUが付け入るとすればここのところ。昨日も書いたことだけど。ちなみに、明日から1週間は忙しいのでCLはリアルタイムで観戦できそうもありません。また、日本代表のコートジボワール戦もおそらく無理かと。数日後に追って更新することになると思います。
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2008-05-18 Sun 01:06
チェルシー×マンU
<チェルシー:4-3-3>
FW:カルー-ドログバ-Jコール
MF:バラック-エッシェン、ミケル
DF:Aコール-テリー-カルバーリョ-フェレイラ
GK:チェフ

<マンU:4-2-3-1>
FW:ルーニー
MF:ギグス-アンデルソン-ナニ、キャリック-フレッチャー
DF:シルベストル-ビディッチ-ファーディナンド-ブラウン
GK:ファン・デル・サール

CL決勝に前にプレミアの同カードを。プレミアの結果は知っての通り。でも、この試合でチェルシーが頑張ったことがCL決勝につながる可能性は大きい。何しろここでマンUが勝っていたらマンUはCLに照準を当ててたはずだから。いや、チェルシーも諦めてCLに照準を定めたかもしれないけど。ってか、おそらくそうだろうと思う。ただし、この試合はマンUとチェルシーのそれぞれの立場が色濃く出てたから、CL決勝も同じような内容になることは100%あり得ない。マンUなんて、どんだけ選手温存してるかって話だし。

立場が出ていたマンUの戦い方。この試合は引き分けでもOK、さらにアウェーでの試合だったこともあって、極力リスクを負わないやり方を採ってきた。それが一番現れたのが攻撃の流れ。0‐0のスコアで推移してた時間のマンUの攻撃のやり方はとっても極端。人数をかけないこと、手数をかけないことが絶対的なベースに置かれてたと思う。保持型4‐2‐3‐1システムを採用してたのにも関わらず、ボールを保持しようなんていう意識は全くなかった。

チェルシーの守備は1度組織を作ったところから行われる。しかも、その組織は自陣寄りに引きつけられて作られる。トップのドログバが敵陣、2列目がハーフェイライン上ぐらいっていう形で。その上で、相手が縦パスを1つ入れたところから守備の開始。この縦パスってのは相手の前線に入るものに限らない。相手がCMFにボールを入れたところでチェックをして行く。つまり、最終ラインから1つでも上にボールが来れば守備を開始するってこと。相手の実質的な攻撃のスタートの場所からしっかりと押さえて行こうって考え方。

逆にいえばマンUのCBはある程度自由にボールを保持できる状況だった。上に書いたようにチェルシーの守備ブロックは自陣寄り。その上で受ける態勢を整えてる。ドログバも追いかけない。そんな感じである程度の場所までは持ちあがることができたマンUのCB。でも、このCBにしっかりとボールをつなごうっていう意識が皆無。プレッシャーがかかっていないにも関わらず蹴りまくった。

そういえばマンC戦も同じだった。相手は前線から積極的に守備を行わず、とにかく安定したブロック(しかも4‐3‐3というか4‐1‐4‐1ってとこまで同じ)を作って受ける形を整える。だから、マンUのCBは浮いてた。でも、マンUのCBは蹴りまくった。ここで何度も取り上げてるようなマンUの様子がおかしい時期の象徴的な試合だったと思う。つながず、蹴りまくる。前線が足りずに効果的に攻められない。っていう悪循環に陥った試合だった。

でも、今回のチェルシー戦でのマンUには確固たる意志があった。それが上にも書いたようにリスクを負わないって考え方。上に書いたように、チェルシーはマンUが最終ラインから1つでも高い位置にボールを入れた時点で守備を開始してきた。とはいえ、めちゃめちゃ厳しくてどうしようもないってわけではなかったけど。でも、少なくとも相手がそこで守備をしてくるのは確実。そうなれば、引っ掛けられる可能性も少しは存在することとなる。今回はキャリック&スコールズの落ち着いて保持できる2人でもなかったし。

というわけで、引っ掛けられるちょっとの可能性を回避しに行ったのが今回のマンU。相手の2列目の場所でボールを引っ掛けられたら最悪。だったら、そこは飛び越してしまえと。よって蹴りまくり作戦へ。さらに、前線に人数をかけない縛りが発動。別に下手に危険な低い位置での保持時間を延ばす必要はない。とにかく、素早く前線へ蹴りまくる。これがマンUの合言葉だった。

そして、この蹴りまくり作戦のターゲットになるのはナニ。それから左サイドに流れたルーニー。何でルーニーが左に流れるかっていえば、ギグスの攻撃意識が弱かったから。守備の方に重点を置いて前線への飛び出しを自重したのか、守備で深い位置にまで押し込まれてから一気に最前線まで出て行くのが難しいのか、どちらにしてもギグスはあまり前線に出て行かない。よって、ルーニーが空いてる左へ流れていく。攻撃においてはナニ経由の攻撃がかなり多くなったと思う。

とにかく、左に流れたルーニーも含めてロングボールはサイドへ展開。ロングボールを蹴りまくってるのにも関わらず、ゴール前への単純なボールはほぼ皆無。1つはチェルシーのCBとルーニーを競らせても結果が見えてたってこと。もう1つはサイドの深い位置に蹴ることで、相手に単純な跳ね返しを許さず、結果として攻撃への切り替えを遅らせてしまおうっていう考え方があったような気がした。それぐらいに今回のマンUは徹底してリスクを嫌ってた印象。

さて、手数をかけずに人数もかけないマンUの攻撃。前線の少人数に可能性の薄い1発のボールを送り込むのみっていう単純なやり方。効果的な攻撃を繰り出せないのはマンUの方も承知してたはず。ただし、1つだけ誤算があったような気がする。それはアンデルソンが消えてしまったっていう事実。サイドに蹴りだすマンU。右のナニと左に流れるルーニー。この2人の間をつなぐアンデルソンが消えてしまった。よって前線は人数が少ないだけではなくて、とてつもなく距離が離れてしまった。ナニがボールを持っても、誰も近くにいない。ゴール前にも人がいない。仕方なくドリブルを仕掛けるナニ(近くにいてもドリブルで行きそうな気もするけど)。頼れるのは己だけのナニに対してチェルシーの容赦のない守備が決まりまくった。結果としてナニを経由しまくりの攻撃はほとんど全てナニのところで分断された。

じゃあ、なんでアンデルソンが消えたのかって問題。そもそも4‐2‐3‐1と言えば保持型になることが多いマンU。特にアンデルソンがトップ下に入った場合は例外なく保持型になると言ってもいい。アンデルソンがトップ下の場所でうまくボールの経由点になりながら、中盤での保持率を上げていく形。もう1度確認すると、4‐2‐3‐1は保持型。逆にいえば保持型でなければ4‐2‐3‐1は機能しない。どちらかと言えば、というか確実に縦急ぎ型は4‐4‐2(4‐2‐4)の方が相性がいい。

今回の試合のマンUは4‐2‐3‐1なのに縦急ぎ型っていうイレギュラーな状況だったって言える。中盤でのボールポゼッションでその真価を発揮するアンデルソンの頭の上をボールが越えていく。何しろ今回の試合のマンUには中盤なんてものは存在しなかったわけだから。全てが最終ライン→トップ(WG)への1発のボール。で、そういう攻撃はアンデルソンの土俵ではないわけで。消えてしまうのも仕方がない状況だったと思う。なんだか自分の居場所を見つけられない様子が見て取れた。

だから、トップ下がテベスだったらもっと違った形が見られた可能性もある。トップ下の場所に入れてやれば守備も頑張るテベス。前線にボールが入った時にポジションにこだわらずに味方を助けるプレー、またはトップのスペースに出て行くプレーはテベスの方が得意のような。4‐2‐4で縦急ぎにも慣れてるし。CLとの兼ね合いでそれは無理だったのかなって思う反面、テベス自身ははそんなに過密日程でもなかった気がする。後で書くように、アンデルソンは守備の方でもちょっとした穴になってただけに、その部分を強く感じた。要するに守備強化のためにアンデルソン起用でもなかったってこと。

こんな感じで攻撃ではリスクを負わないやり方を採ってきたマンU。立ち上がりこそブラウンの攻撃参加が1つ2つ見られたけど、ハーグリーブスがそのポジションに入ってからはSBの攻撃参加は皆無に。CMFも前線に出て行く意識は見せなかった。あくまでも守備の方が絶対的に重要だっていう考え方。でも、その守備の方のやり方にはあまり工夫は見られなかったと思う。別にそれが悪いとは言わないけど、試合の入りはいつものマンUの普通の守備のやり方が見られたと思う。

要するにシステム合致を作るやり方。4‐2‐3‐1の相手に対しては4‐1‐4‐1みたいな形にして守備を行う4‐5‐1(4‐3‐3)のマンU。相手が4‐3‐3(4‐1‐5‐1)を作る今回は合致関係になる4‐2‐3‐1の守備ブロックができてたと思う。その上で自分の対応する相手にボールが入った時点でしっかりとチェックに行くっていう原則が見られた。そして、立ち上がりはこの原則が基本的に全体に適用。例えば敵陣でボールを持ってる相手SBに対してはマンUのSMFがしっかりとプレッシャーに行ってたし、降りて行くエッシェンとかバラックに対してもマンUのCMFがついて行く対応が見られたと思う。

でも、このやり方のマンUに対してチェルシーが簡単にゴール前のシーンまで行くことが多くなったと思う。その1つの要因がマンUのアンデルソン。アンデルソンが対応する相手であるミケルを浮かせまくり。ボールを持ったミケルがフリーでボールを扱えるシーンが多くなった印象。1×1の原則をピッチ全体で作っている時に、1か所でもそれが崩れるとその影響は多大。しかも、よりにもよって相手の攻撃の起点であるアンカーを浮かせてしまったのがマンUにとっては痛かったところ。

出し手が浮いたチェルシーとしては受け手の方がちょっと工夫して動けば簡単に前線にボールが入れられる状況だった。その工夫。バラックがボールを受けに降りて行く→マンUのフレッチャーが引っ張り出される→空いたスペースにカルーが流れてくる→その外にAコールが飛び出す、ってパターン。浮いてるミケルからカルーに簡単にボールが収まり、そのあとはカルーが仕掛けていくのか、Aコールを使うのか、バラックの舞い戻りを待つのか、ドログバに託すのか。選べる選択肢は多かった。似たような形をもう1つ。Jコールが降りて行ってボールを受ける→シルベストルが引っ張り出される→そのスペースへエッシェン→エッシェンにボールが出る→舞い戻ったJコールとフェレイラの飛び出しで右サイドに厚みを。こんな感じでマンUの選手が引っ張り出されてできたスペースを有効に活用していくチェルシーのやり方が目立ったと思う。

ただし、さすがはマンU。すぐに自分たちの守備がまずいんじゃないかってことに気づいた。前半5分の話。あまりにも早すぎるから、もしかして、最初の守備が勢いに任せていっただけで、その勢いを弱めた時間になって本来やろうとしてたやり方に戻ったって可能性もなくはない。アンデルソンだけは最初っからそれを守ってたから、全体として穴みたいに見えたっていう。真相は分からないけど。とにかく、なんでもかんでも自分の対応する選手について行くっていう守備のやり方はやめた。

この考え方はビディッチの負傷退場によって顕著になる。ビディッチという存在がいなくなったこと自体がそのスイッチになったわけではなくて、ビディッチが出てハーグリーブスが入るまでのその時間がスイッチだった。一時的に10人になったマンUは当然のようにベタ引きになる。4‐4‐1で受ける形。この受ける意識が11人に戻ってからも継続したイメージ。それまでとは違って敵陣まで出て行くシーンはなくなった。あくまでも守備の勝負は自陣に、敵陣の相手ボールは放っておくっていう考え方で守備が整理されたと思う。

とはいえ、ときたま見られる完全に開き直ったマンUの守備のやり方でもなかった。ときたまってのはローマとバルサとのアウェーでの試合。完全に開き直ったマンUは守備は自陣から始めるなんてもんじゃない。もっと背水の陣的。守備の場所はゴール前のみ。自陣でも中盤の場所では一応のチェックだけで実効性の高い守備は行われない。それから比べれば、今回の守備のやり方はバランスが取れてたように思う。敵陣では自由にさせてるとは言っても、自陣ではしっかりとチェックをすることになってた。少なくともラストの跳ね返しだけでなんとかするっていう意識は積極的には持ってなかったと思う。

とはいえ、4‐4で守備ブロックを作るマンU。もっと言えばアンデルソンも戻って4‐5で守備をするマンU。チェルシーがこれを崩すのは至難の業だった。チェルシーとしてみれば、立ち上がりのように中途半端に前から来てくれた方がどれだけ楽だったか。立ち上がりはそれによってできたギャップを突いて、縦縦へと進んでいく攻撃。マンUが守備のやり方を整理してからはポゼッション率は圧倒的に高まったものの、相手ブロックに入り込むことができなくなって行った。

こういう傾向はボールを大切にしたがるチェルシーではよく見られるようになった形。今シーズンはチェルシーの試合をそれなりに多く見てるけど、ここで記事にしてる試合が少ないのはそのため。最初のダービー戦とこないだのマンC戦がその典型。引いてブロックを作る相手に対して、なかなか縦パスを入れようとしないチェルシー。相手も前から来るわけではないから、チェルシーの保持時間は延びる。でも、パスはことごとく安全な場所安全な場所を動いて行く。要するに相手のブロックの外を。そんな時間が長く続いて、別に書くこともないなって試合が多くなったわけ。

今回の試合はそれほど極端ではなかったわけだけど。その理由はマンUが深い位置にブロックを作ったこと。マンCにしろダービーにしろ最初のブロック形成の時点ではそれほどラインを下げない。だから、縦パスを入れようとしないチェルシーは敵陣に入り込めない。相手のブロックを押し下げられない。陣地を増やせない。相手ゴールまでの距離も遠いから、積極的にゴールに向かう仕掛けもできない。そんな悪循環。それに対して、今回の試合ではマンUが深い位置にブロックを作ったことで必然的にチェルシーの陣地は増える。ゴールにも近くなる。だったら、ゴールに向かうかっていう意識も強くなるってもの。

それでもブロックの外外をつなぐパス回しが多かったのは確か。だからこそ。ポゼッション率が恐ろしいほどに高まったわけでもあり。ショートパスを重要視するチェルシーだけど、いい形のサイドチェンジも多かった。いい形でカルーが受けた左を起点に右に上がってきたフェレイラへっていう効果的なサイドチェンジが目立ったと思う。ただし、マンUのラストブロックに対して致命的な混乱を来すまでには至らなかったと思う。引いたマンUを崩すのはそう簡単ではない。

じゃあ、マンUのブロックに仕掛けていく根拠はなんだったのか。大好きなショートパスはそのまま放っておけば相手のブロックの外外をつながって行くだけ。効果的に見える展開も外から外へのボールだし、上にも書いたように相手ブロックにアプローチする効果もほとんどなかった。そんな中でチェルシーの仕掛けの根拠はドログバの存在だったと思う。確固たる存在であるドログバが相手マーカーから離れる。その瞬間にチェルシーは相手ブロックへの仕掛け、つまりドログバへの縦パスを入れた。マンUはドログバに入れさせすぎだろって思ったけど、ドログバが常に受ける動きを繰り返し、チェルシーの選手たちがボールを回しながら入れられるタイミングを今か今かと待ち構えてたんだろうなって思う。

結局はドログバに入れないと攻撃にならないって意味では本質的には何も変わってないチェルシー。でも、今のドログバには仲間がいた。バラックとは喧嘩してたけど。何がいいたいかっていうと、ドログバの近くに選手がいるってこと。悪いときのチェルシーもドログバ経由の攻撃には違いなかったわけだけど、実はそこには大きな違いが。その時には前後の分断が起こってドログバが完全に孤立してたってこと。ドログバに預けるからあとはなんとかしてねっていう攻撃だったわけ。

でも、今は違う。ショートパスをつなぎながらゆっくりとビルドアップするチェルシー。前線の選手が降りていて、代わりに低い位置の選手が上がってくみたいな形で徐々に前線に人数を増やしていく。徐々にボールを前線に運んで行く。そんな状況の中では前後の分断は起こりえない。チーム全体としてボールをつなぎながら押し上げてるわけだから。それがショートパスのつなぎを可能にしてるって言えるし、ショートパス至上主義がボールの近くに選手を配置する意識を生んでるとも言える。

ドログバにボールが入った時にも同様。ドログバに入った瞬間に次々に選手がそこに凝縮してくる。もしくはドログバを抜いて出て行く。ドログバはそういう選手にシンプルにボールをはたく。これがチェルシーのマンUブロック崩しの方法の中で一番多く見られたパターンだった。だから、先制点がそれまでとは全く違うドログバの長時間キープから生まれたのは皮肉な限り。それまでの時間のドログバだったら1タッチですぐに次にはたいてた場面だった。どんな心境の変化があったのか。

もちろん、チェルシーがボールに対して複数を絡ませようとするのはドログバの周囲だけではない。どの場面においても複数の選択肢を作る意識を持ってる。ボールの近くで。ただし、今回の試合ではその関係性が固着化してた印象。それはドログバが入ってからなんだけど、詳しくは後で。とりあえずは、どんな固着化が起こったかってことを見てみたい。以下の図から。

―――⑨―――
⑪―⑬―⑤―⑩
③――⑫――⑳

攻撃時の形。今回の試合では相手が引いたこともあってSBの攻撃参加が活発だったチェルシー。よって、こんな形になる。そして、それぞれの場所でトライアングルが固着化されてた印象。具体的には、△⑪⑬③、△⑩⑤⑳、△⑨⑬⑤、△⑨⑪⑬、△⑨⑩⑤。そして、この三角形の組み合わせは基本的に変わらなかった。頂点が入れ替わるだけ。たとえばドログバを抜いてエッシェン、バラックが出て行くみたいな。

確かにボールに対しては近い場所に複数の選択肢を作ることが多かったチェルシー。基本的なパス&ゴーを組み合わせながらシンプルにパスが回って行くシーンが多発。ワンツーも多かった。これならさぞ相手に狙いどころを定めさせないような攻撃ができるだろうと思いきや、そういういわけにも行かず。ドログバの個の力にやられたと言ってもいい先制点のシーン以外はマンUの守備に致命的な混乱は起きなかった。相手の関係性が固着化されてるから、マンUは見た目以上に簡単に守れたんじゃないかと思う。

そして、上でも触れたようにその原因はドログバにある。ドログバが真ん中から動かないから全体としてのダイナミックな動きがなくなってしまった。WGが中に流れるシーンはほとんどなかったことから見ても有機的なポジションチェンジの少なさがよく分かると思う。ここにアネルカが入るともっと大きく動きが生まれるんだけど。何しろアネルカはアデバヨールもびっくりな程にトップの場所を留守にする。だから、アネルカが流れた場所で新たな関係性が生まれる。同時にトップの場所の出入りが激しくなって、全体としての動きも活性化する。

ただし、だからアネルカをスタメン起用すべきだっていう単純な話ではない。なぜならアネルカが流れる理由は基本的には真ん中が窮屈で嫌だからだと思う。つまり、ブロックの外に出てくるってことになる。結果としてドログバが果たしている、相手のラストブロックへの仕掛けのスイッチっていう役割を担う選手がいなくなる。よってブロック内に入り込めない。外外とつながるパス回しの始まり。

ドログバを使えばラストブロックに仕掛けられるけど動きが足りないから絶対的には崩しきれない。アネルカを使えば動きが多くて相手の守備ブロックに混乱を与えられるけど、そこにどうやってボールを入れていいのかが分からない。ドログバを使えばショートパスだけではなくてロングボールで距離を稼ぐってやり方も選択できるけど、攻撃はドログバを経由させる。逆にアネルカを使うとショートショートに固執してしまう反面、ラストの崩しではいろんな方向性が見られる。難しい問題。

ちなみにバラックを生かすならドログバよりもアネルカかなって思う。喧嘩したとかしないとかは関係なく。今回の得点シーンもそうだったけど、バラックの良さはゴール前に入ってくるプレー。このシーンはドログバがトップの位置から外れ気味だった。要するにドログバが真ん中に居座るとバラックの良さが消えてしまうっていう気がする。いつもはランパードが好きに動いて補助的に動くのがバラックっていう関係性。対して今回はバラックが好きに動いてエッシェンが補助的に動く形だった。攻めきれる時間が長かった立ち上がりの時間帯には1つ遅れてのエッシェンの飛び出しが効果的に機能してたし。だからこそ、ドログバの存在によって中盤のよさが消えてしまった気がする。そんな気がするのもドログバの存在によって相手ブロックに仕掛けられる可能性が生まれてからなんだろうけど。どちらにしてもドログバは出て行くんだろうけど。

さて、前半のロスタイムっていう最高の時間帯に先制点を奪ったチェルシー。逆に最悪の時間帯に失点したロスタイム。これを反映して後半は流れが変化していった印象。でも、マンUの方は未だテベスとかCロナウドを投入してこなかったことからも分かるとおり、後半の立ち上がりの時間はまだ本気じゃなかった。攻撃にかける人数も特別多くなったわけではない。ただし、前半よりも明らかに丁寧な攻撃が目立つようになった。すぐに前線に蹴ってしまうんじゃなくて、前線の人数を増やさないとは言ってもしっかりとつないで行こうとする意識が高まったと思う。アンデルソンも後半は攻撃に絡むシーンが出てきた。いつもほどではないけど。

こんなマンUのちょっとした変化に対してチェルシーの方が予想以上のもろさを見せる。本当はそんな兆候が前半の途中から見られたわけだけど。立ち上がりは質の高い守備をしてたチェルシー。上に書いたような守備のスタート位置に相手が入ってくれば忠実なチェックが繰り返されたし、ブロック内に入ってくる相手のボールに対しては厳しいプレッシャーをかけていった。そして、そういう厳しいプレッシャーがスイッチとなって連動性を高めることにも成功した。絶対に勝たなければならない試合で、1つ1つの場所の意識が高まってたのがよかったと思う。前後の挟み込みなんかも効果的に機能してた。

でも、主導権を完全に握るようになってからは徐々に悪い癖が見え隠れするようになる。チェルシーの守備の悪い癖は1つ1つのチェックがルーズになってしまうこと。結果としてどこが守備の勝負どころかってことが定まらない。結果として守備の連動が図れない。1つ1つがあいまいに、しかも単発になる。簡単に外れてどんどんと深い位置にまで入り込まれてしまう。特に中盤では顕著に現れる、この状況。全体がズルズルと押し下げられて行ってしまう。

前半はそれが目立たなかった。マンUがしっかりとつなごうとしなかったから。そもそもマンUの攻撃の時間が圧倒的に短かったから。それでもマンUが中盤でパスをつなぐとギャップギャップに入り込まれるシーンが多かった。マンUの攻撃にかける人数が少なかったから助けられた部分も大きかったと思う。最終ラインが落ち着いて対応してたから目立たなかったってのも確か。

でも、少なからずマンUが攻撃に傾いてきた後半はこの問題が隠しきれなくなった印象。ルーズな中盤を簡単に抜け出され、最終ラインだけが晒されるシーンが多発。ズルズルと最終ラインが下がって行く。そうやって最終ラインが晒されるのはやっぱり怖いチェルシー。中盤も後ろへの意識が高まって行った。その中で悪いときのチェルシー再発。前線でドログバが孤立。前半のように少ないタッチで次にはたくっていうシーンは見られなくなった印象。

象徴的なのが失点シーン。このシーンは自陣でのFKからのミスをルーニーにかっさらわれたところからだったけど、このFKが何で得られたかって話。チーム全体が押し下げられたチェルシーが奪ったボールを前のドログバに預けたところから。そのボールをドログバが自陣で受けたっていう時点で前半から見ればかなりイレギュラー。さらに、そのドログバになかなかフォローが来なかった。そんな中でもドログバは頑張ってキープ。その流れでもらったFKだった。後半のドログバがイライラしてたのは、そんな孤立具合に原因があった気がする。バラックとの喧嘩以外にも守備に出てこない中盤にキレまくってたのが印象的だった。

そういうわけでする必要のない失点をしてしまったチェルシー。勝たなければならないわけだから、当然のように攻撃に出る。フェレイラ→アネルカの交代。エッシェンを右SBに下げて4‐4‐2に。この交代が実効性を持ってたかっていえば甚だ疑問。確かに攻撃のやり方にはちょっと変化が生まれたけど。それは前線の関係性。4‐4‐2にしたことでJコールが空いている真ん中に流れてくるシーンが多くなったと思う。これがますますその1つ下にいるバラックにとっては蓋として作用したわけだけど。とにかくJコールが中に行ったことで空いたサイドのスペースにはエッシェンが積極的に攻撃参加。そんな関係性が生まれた。ただし、だから何?て話ではあったけど。結局は相手のラストブロックに効果的な仕掛けをすることができなかったから。

基本的にシェフチェンコの投入でも何も変わらず。実は1点を防いだっていう大きな仕事をやってのけたシェフチェンコだけど。でも、攻撃面ではますます守りを固めていくマンUに対して何もできない時間が続いた。マンUの方もいつの間にか前線にギグスとCロナウドを残す4‐4‐2の形でラスト堅めに入ってたわけで。人数的には前半とは変わらないけど、中盤の構成がより守備的になったかなっていう。中盤からギグスが抜けてオシェイが入ったわけだから。そうやって守りに入ったマンUを崩すのはまずもって不可能。だから、PKはラッキーだった。

そんなわけでこの試合を制したのはチェルシー。でも、最初にも書いたようにこの試合がCL決勝に直結するとは思えない。1つの理由はスタメンの差。チェルシーにもランパードがいなかったけど、マンUの方はCロナウド、テベス、スコールズあたりが不在。あとはエブラもか。さらに、不運な交代ばかりだったマンU。ケガでビディッチとルーニーを失った上にアンデルソンと交代したのがオシェイ。あの時点でリードを許してたら、この交代はテベスだっただろうなっていう。最後の最後の追い込みに大きな影響を及ぼした。

じゃあ、CL決勝はどうなるか。これはやってみないと分からない。それを言ったら元も子もないけど。今シーズンに限っては両チームがどういうやり方を採ってくるかが全く分からないから。チェルシーの方は上にも書いたようにトップがドログバかアネルカかで大きく変わる。どちらが怖いかって言われれば普通にドログバ。結局は1人でできてしまう選手に勝るものはない。対するマンUは4‐4‐2か4‐3‐3(4‐5‐1)か。普通に4‐4‐2かなって思うけど。1発勝負の意識が強いならば、前線の組み合わせはルーニー&テベスにパク・チソン-キャリック-スコールズ-Cロナウドかなって思う。攻めまくるならパク・チソンじゃなくてギグスか。

守りはやっぱりドログバをどう抑えるかってことになってくる気がする。相手がドログバを使ってくるならば、今回の試合を見る限りでは動きはそう多くはならないはず。ドログバにボールを入れさせないように注意すれば、おそらくチェルシーは前線が渋滞するはず。チェルシーの方は中盤の守備をどこまできっちりと維持できるかにかかってる。1つ1つのチェックを忠実に行い、それに対する連動性を高める必要がある。ランパード&バラックが組み合わされたらなおさら。今回はエッシェンが入ったことで多少マシになった部分もあったと思うから。そう考えるとマンUは中盤で勝負する4‐5‐1でも面白いかなって気がしなくもない。
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2008-05-12 Mon 22:41
マンU×アーセナル
<マンU:4-1-4-1>
FW:ルーニー
MF:パク・チソン-スコールズ-ハーグリーブス-Cロナウド、キャリック
DF:エブラ-ピケ-ファーディナンド-ブラウン
GK:ファン・デル・サール

<アーセナル:4-4-2>
FW:アデバヨール-フレブ
MF:ファン・ペルシー-Gシウバ-セスク-エブエ
DF:クリシー-ギャラス-ソング-コロ・トゥーレ
GK:レーマン

アーセナルの攻撃を止めるのはどうすればいいか。選択肢は2つ。積極的か消極的か。アーセナル相手じゃなくても守備のやり方は大まかに積極的か消極的かに分けられるって言われればそうなんだけど、アーセナルを相手にするにはその中間のやり方では駄目。最悪なのは中途半端に積極的っていうやり方。もうアーセナルにとっては思うつぼ。

積極的ってのにも2つある。本当の意味で積極的って言うのと、見た目は消極的っていうのと。前者は文字どおり最前線から追いかけまくりってやり方。追いかけて追いかけて相手の攻撃のスタートのところを自由にさせないやり方。ただし、これは難しい。ちょっとでも後ろがついてこないと、アーセナルにとって大好物であるギャップを生み出す。だから、完璧を求められる。もしかしたら現実的ではないかもしれない。ミドルスブラが前線からの守備を放棄せざるを得なかったのはこないだのこと。

見た目は消極的な積極的守備。上に書いたみたいに前線から追いかけ回すことはなく、むしろ受けるっていうやり方。これでもアーセナルの攻撃を止めることができる。そのためにはバーミンガム方式。受けの形でバランスのいいブロックを作り、絶対にバイタルを空けない。そして、アーセナルの攻撃のスタートである縦パスは絶対的につぶす。今までもしつこいほど書いたきたし、あとでも触れるけど、アーセナルの流動性にはボールの存在が必要。だから、そのボールが入ってきたところをつぶせばいいっていう考え方。

こういう受けの形の守備も中途半端にやると最悪な結果を生み出す。アーセナルのボールが入ってきたら守備を開始するなんていう悠長な考え方がそれ。入ったところにチェックをして、次でまたチェック、チェックと忠実にチェックを繰り返す方法は現実的ではない。1つ1つの単発チェックとアーセナルが創出する攻撃の選択肢とどちらが多いかって話。普通ならだんだん限定してくって方法もあるんだろうけど、アーセナルのパスが回り始めたら勝負どころを定められなくなると思った方がいい。だから、受けの形の守備では入ってきたところ、まさにそこが守備の勝負どころってやり方を採らなければならない。

こういう積極的なやり方はどちらにしてもアーセナルの攻撃を途中で分断してやろうっていう意識に基づいてる。これに対して消極的なやり方は途中で分断するなんてとんでもありませんよって考え方。いくらパスを回したって最後はゴールに向かってくるんでしょってやり方。途中途中で狙って下手にギャップを作るぐらいなら、最初っから中盤はあきらめる。そういう開き直りをもとにしてゴール前に人数と根性ベースの絶対的な守備の壁を作る。ここでアーセナルの弱点が露呈。何が何でもショートパスで崩したいアーセナル。でも、最後の最後には隙間がない。だから、アーセナルはいくらいい形でボールを運んできたとしても、ゴールに近づけない。そして、パス回しの代償としてのスタミナ切れがじわじわと迫ってくる。消極的な守備をする相手は、その代償が表れるまで耐えきれるかどうかが勝負になる。

さて、マンU。ここ最近何度も見せてくれているように、マンUが得意なのは後者。ラストの絶対的な強さをベースにしてゴール前にブロックを作るってもの。ローマ、バルサ相手にこの方法で絶対的に安定した守備を見せつけてきたマンU。いくらアーセナルが相手だとしてもこの守備で戦えば怖いものはないはずだった。

ただし、このベタ引きの守備の方法を採用するためには越えなければならない壁があった。1つは攻撃力が圧倒的に落ちるってこと。極端なことをいえば前線に1人を残して全員を守備に回す、しかもかなり深い位置の守備に回すわけだから、攻撃力は超低い。ただし、この壁は乗り越えられるものだった。なぜなら、この試合のマンUは引き分けでも万々歳の状況。それに前半を乗り切れば、アーセナルはスタミナ切れを起こすだろうことも予想された(実際にスタミナが切れた)。そこでアーセナルがうらやましがるほどのベンチの面子を投入して勝負を決めてやればいいわけだし。

というわけで1つ目の壁はあっさりとクリア。でも、2つ目の壁を越えることができなかったんだと思う。それは今回はホームでの試合だったってこと。バルサにもローマにもベタ引き守備を採用したのはあくまでもアウェー。そりゃ、ホームで6バックなんて使ったら許してくれないだろうなって話なわけで。だから、今回のマンUは最初っから開き直ってベタ引きになることはなかった。ルーニーが頭でCロナウドがサイドに出た前線の配置を見ても明らか。ベタ引き守備が念頭にあるならば、そこは逆にしてきたはずだと思う。

そんなマンUはどういう守備のやり方を採ってきたかって言うと、普通のマンU的なやり方だった。つまり、システム合致を利用しながら人をベースとした守備をやるってこと。トップに入ったルーニーが前線から追いかけ回してた立ち上がりの時間帯については、全体として前がかったブロック。ルーニーが追いかけなくなってからは全体を自陣に引きつけて受ける体制を作った上で、入ってきたところ1つ1つにしっかりと対応してくっていうようなイメージの守備が行われた印象。

ここで考えなければならないのは、システム合致を利用して人を見る守備がアーセナル相手にどれほど機能するかってこと。アーセナルと言えば流動性。ポジションは全く関係なく、本当に全く関係なくボールを動かして行くのがアーセナル。そんなアーセナルに対して、システム合致をベースとした守備の意味があるのか。これは大きな懸念材料。

でも、実際にはそれほど心配することではなかった。なぜならば、上に書いたようなアーセナル的な攻撃のスタートがあるから。アーセナルの流動性が生まれる、そして、ポジションの意味がなくなるのはボールに対する動きによって。ボールに対して複数の選択肢を作る、そうやって前の選手がいなくなったスペースに次の選手が入るってのがアーセナルの流動性のベース。そして、ボールが動いたところで選手が動き直す。ボールが動き、人が動き、ボールが動く。今までにも書いてきたとおり。もちろん、そんな動きのベースががあったとしても、その場その場の状況に応じて選手は動くから定型的なポジションチェンジにはなりえないわけだけど。

それでもやっぱりアーセナルの流動性が始まるためにはボールがなければならない。そのボールを前線に引き出すための動きがあるのは確か。前線の選手が引いてきて受けたり、サイドに流れたり。でも、そういう動きは常識に適ったものだって言える。うまく受け渡せばしっかりと対応できるレベル。ボールがないところでの流動性だったらマンUの方が複雑なことをやってると思う。逆にアーセナルはボールに対する流動性が複雑極まりなくて、その全てを押さえるのは実質的に不可能。だからこそ、いかにボールを前線に入れさせないかってのがポイントになるわけで。

というわけでマンUの守備がベースとしていた守備のやり方自体に問題があったとは言えない。実際に、しっかりと守備ブロックを形成してるときにはアーセナルに自由に攻撃をさせたのは思えなかったわけで。アーセナルの最終ラインの選手が縦にボールを入れられずに低い位置でボールを保持する時間も延びてた。つまり、マンUの方が要所要所を押さえてたってこと。でも、全体としては前半はアーセナルがアーセナルらしくサッカーを展開してたってイメージの方が強い。これは、守備が機能してる=しっかりとブロックを作ったとき以外の時間が長くなってしまったからだと思う。

その原因を知るためには攻撃からの流れを見る必要がある。今回のマンUは攻撃における様子のおかしさが見られたと思う。それはトップ下が不在であるってこと。今までの4‐5‐1=4‐3‐3ならば固定的にトップ下がいるってことが多かったし、本来の4‐4‐2では空いているトップ下の場所の出入りを激しくすることがマンUの攻撃のポイント。これは今までにも触れてきたとおり。だから、4‐5‐1だろうが4‐4‐2だろうがトップ下の場所には誰かしらの選手がいるってのがマンU本来の形。

それが今回の試合では、トップ下の場所が空いてることが多かった。本来的にトップ下の場所に該当しそうな中盤真ん中の3枚。キャリックは低い位置でボールの配給役となることが多く、スコールズはキャリックを助けに低い位置に降りてくることが多かった。そもそも、今回の試合ではスコールズがあまり目立たなかったのも気になった部分。残ったハーグリーブスはトップ下の場所を留守にすることが多かった。ハーグリーブスが目立ったのはFWの場所への飛び出しとサイドのボール保持者のフォロー。基本的にはこの試合の前に行われたローマ戦と似たような役割を担って大活躍だったわけだから、ハーグリーブスの動き方自体が悪かったってことはないわけだけど。

こんな感じで本来的なトップ下が不在になったマンU。でも、4‐4‐2のときのようにトップ下の場所の出入りを激しくすれば解決する問題だったのも事実。むしろ、相手にとってはそっちの方が嫌だったかもしれない。でも、なぜかそのトップ下の場所に誰も入ってこようとしない。ルーニーは1トップであることを意識したのか何のか、FWの場所にいる時間が長かった。パク・チソンは本来的にそうなんだけど、サイドから斜めにFWの位置まで飛び出していく動きを繰り返す。Cロナウドはサイドでの動きが多い。この辺のそれぞれの動きについてはアーセナルの守備との関係があったかもしれないけど、

というわけでトップ下の場所に空白ができてしまったのが、今回のマンU。でも、ここで押さえるべきことは今回の試合のマンUは4‐5‐1=4‐3‐3だったってこと。4‐3‐3のときのマンUはつなぐ意識が高い。少なくともこれまで見た試合の中では4‐3‐3=保持型、4‐4‐2=縦型っていう印象が強いのはこれまでにも書いてきたとおり。今回の試合も例外ではなかったと思う。そして、このことが大きな問題となって表れることとなった。

つなぐ意識が高いのはいい。キャリックのところまではそのつなぐ意識がスムーズに具現化された。でも、そこからどこへ向かうか?って話。トップ下の場所に経由点がなくなってしまったのが今回のマンUだったわけで。キャリックからのボールを受ける選手がいなかった。いても遠かった。そして、この遠い距離を無理やり通そうとするシーンが目立ったと思う。当然のように途中で引っ掛けられるシーンが多くなる。しかも、つなぐ意識が強い=攻撃に時間をかけてたわけで、当然のように前線に入っている選手の数も多い。前線4トップのみとかだったら、まだマシな状況だったかもしれないけど。

ここで問題なのは、途中で引っ掛けられるシーンが増えたマンUがどういう事態に陥るのかってこと。それは簡単。カウンターを食らうってこと。ボールの失い方が悪かったわけだから、相手にボールが渡った瞬間に切り替えの守備が効かないってことが多くなった。攻撃からの切り替えでの守備意識が高いマンUではあるけど、攻撃の途中で引っ掛けられると、その切り替えの守備も効果的に機能しない。逆に途中でいい形で引っ掛けたアーセナルの攻撃への切り替えが抜群に速くなるっていう状況だったと思う。

いい形でボールを奪ったアーセナルはまずアデバヨールを見る。マンUの切り替えの守備が効果的に効いてないからアーセナルの出し手はフリー。さらに時間をかけた攻撃で全体が前がかってるマンUは守備ブロックの体制を立て直せてない状況。さらに悪いことに、4‐1‐4‐1的なシステムではDF前のフィルターが全くかからない状況だったって言える(4‐1に仕掛けられるから)。

よってアデバヨール(なりフレブなり)に収まりまくりのアーセナル。待ちに待った縦パススイッチがオン。縦に入った瞬間に後ろの選手が一気に飛び出してくる。これこそがアーセナルの真骨頂。パス回しのイメージが強く、よってポゼッション志向っていう印象が強くなるアーセナルだけど、本当に狙ってるのは縦への最短距離。ただ、この最短距離を地上から進もうっていう条件付き。最短距離市場主義だったら、悪いときのチェルシーみたいにドログバ=アデバヨール任せのロングボールを入れとくのが一番早いわけだから。

今回は久々に最短距離を目指すアーセナルが見られたと思う。アデバヨールに入った瞬間にセスクが一気に最前線まで飛び出してくるシーンが多かった。少ない人数で攻めきるっていう場面も目立ったと思う。ちなみに、普通にパス回しの中でも最短距離の意識が見られるのがアーセナル。最近はちょっと趣が異なってきてるけど、一番徹底されてた時はサイドチェンジが本当に少なかった。相手をずらすために横方向に遠回りするなら、狭いところをそのまま崩しきってやるぞっていう。前にミランのパス回しと比較した時にも書いたけど、アーセナルのパス回しはゴールに直結してくものの比重が大きいと思う。逆にゴールに向かうための準備としてのパスの比重が少ない。それがいいのか悪いのかは別にして。

とにかく、マンUの攻撃を途中で引っ掛けて、カウンター的に一気に攻めきれればアーセナルとしては一番よかったんだと思う。ただし、マンUの守備陣も単純なやり方ではゴールに向かわせてくれない。だから、1度ペースダウンして作り直すってことも多くなった。でも、このときには圧倒的にアーセナルが優位な展開だったって言える。上でも触れたようにマンUの守備のベースはシステム合致で人を見るってもの。これを機能させるためには、1度組織を作って受ける体制を整える必要がある。でも、今は相手のカウンターで1度バランスが崩れた状態。アーセナルの方も1度縦パスを入れてスイッチが入ってる。つまり、本来のポジションにはいないってことになる。

ここにおいてマンUの守備の根拠がなくなることになった。自分たちの守備ブロックのバランスが崩れてる。さらに、相手の選手がいるべきところにいない。人を見ることをベースにすると言ったって、誰を見ればいいんだって話。そんなことに迷ってるうちにもアーセナルのパスは次々に回ってく。それに合わせて人も動いてく。マンUは相手選手に対して全くプレッシャーに行けない状況に陥った。相手の中盤でのパス回しに対して、本当にルーズな対応が目立って行く。結果、狙いどころが定まらない。ズルズルと引いて行く。アーセナルが好きにボールを回す時間が長くなっていったと思う。

ズルズル引かされたマンUの守備ブロック。自ら引いたか、相手によって引かされたかっていう大きな違いはあるものの、要するにマンUの一番強い守備がお披露目。ショートショートの選択肢しかないアーセナル。人数をかければなんとかなった。アーセナルはこれを崩し切ることができず、前半を無得点で終わる。嘘。本当はカウンターを含めて崩し切るシーンも多々あったんだけど、アデバヨールが当たってなかった。これはアーセナルにとっては不安材料。なぜならば代償としてのスタミナ切れがすぐそこまで迫ってるから。攻めてるときに獲れないと本当に困ったことになる。だからこそ後半開始直後の先制点はかなりの嬉しかったと思う。だからこそ、その直後の同点ゴールはかなり悲しかったと思う。

どちらにしても前半はアーセナルのペースで試合が進んだことは確か。でも、そのアーセナルの攻撃もマンUと同じく様子のおかしさを感じさせられた。なんだか普通のチームになってるというか。攻撃、というか1つのボールに対して関わる人数が思ったよりも多くなかった。もちろん、ボール保持者を孤立させてしまうようなシーンは少なかったわけだけど、アーセナルってもっとボールに関わる人数が多かった気がするから。メンバーを落としたリバプール戦を除くと、その前の試合はミドルスブラ戦だからその辺の時間的なギャップもあるのかもしれない。

まず、アデバヨール&フレブの2トップと右サイドエブエっていう組み合わせ。これは以前、圧倒的な超密集地帯を作る組み合わせだった。右サイドの特異点となるエブエに対して2トップのアデバヨールとフレブの両方が流れて関係性を作る。そこにSBサーニャが絡んで右サイドに超密集地帯。ゴール前にはセスクと逆サイドのロシツキーが入ってるみたいな。以前のアーセナルで頻繁に見られた形。まさに、誰もがチャンスメイカーになり、誰もがゲッターになれる状況。これが今回は大きく様変わりしてた。

まず、アデバヨールが組み立てに参加する機会が圧倒的に減った。これはエドゥアルドがフィットしてきた頃だから、かなり前から見られた傾向ではあるけど。組み立ての最初の段階を担うため、つまりアーセナルのスイッチである縦パスを受けるためにトップの場所から流れることは多いアデバヨールそうやって引き出しつつ、収まりがめちゃめちゃ安定。やっぱりベントナーとは一味も二味も違うなってとこ。でも、起点になることはあってもパス回しに本格参戦するシーンはほとんどなかった。味方が組み立てを行ってる間にゴール前に入ってるってことが多かったと思う。FW的になった。

よってアデバヨールと関係を作りたかったら自分が近づきましょうってことに。エブエは右サイドの特異点ではなく、真ん中に流れてきてのプレーが多くなった。そして、そんなエブエがいなくなった右サイドのスペースをフレブが埋めるみたいな関係性も目立ってた気がする。やっぱり変化の跡が見て取れた。それでも右サイドを起点にした攻撃が目立ったわけだけど。ただ、これは戦術的な意図か。

問題はそうやって右で作るシーンが増えたことによって、逆の左サイドに入ったファン・ペルシーが完全に消えてしまったってこと。ここまで書いてきた以前の右サイド特異点。そのときには本当に右半分でサッカーをしてた印象があるアーセナル。それでも逆に入ってたロシツキーは消えなかった。上にも書いたとおり、FWとしてゴール前に出てくるシーンが増えてたし、なんなら自分も右半分の攻撃の組み立てに絡むなんてシーンも多かった。左サイドはクリシーに任せておいて。これで1枚減る。

さらに、今回のアーセナルはSBの攻撃参加が活発ではなかった。これに関してはやっぱりマンU相手、しかもアウェー、負けたくないとは言っても点を取られたら厳しい…っていう諸々の事情を考慮してのものだったと思うけど。だから、これは今回の試合限定として捉えた方がいいかもしれない。どちらにしても、これによって今回の試合で攻撃の厚みが失われたことは事実だった。これで2枚減る。合計3枚減り。

次にCMFの関係。フラミニとセスクが組んでいるときにも、後ろでバランスを取るフラミニと前に飛び出していくセスクっていうある程度の役割分担が見られるアーセナルのCMF。でも、今回の試合ではセスクとGシウバの関係性が完全に硬直化してた。つまり、攻撃のセスクと守備のGシウバ。フラミニの場合は気を見て最前線の攻撃にまで絡んで来るシーンがしばしば。セスクとの関係も一応の役割分担だって言える。対してGシウバは攻撃参加皆無。ここにもSBと同じ事情がなかったとは言い切れないわけだけど。とにかく、さらに1枚減った。

これでアーセナルの攻撃はフレブ、エブエ、アデバヨールにセスクの4枚。これでは薄さを感じるのも仕方がない。個々の距離も広がり、近い関係性を作るのも難しい。さらに悪いことに、それぞれの関係性が定型化してた。右サイド担当のエブエ&フレブの関係性と真ん中担当のアデバヨール&セスクの関係みたいに。フレブはギリギリ両方に参加したかなっていう。これでは有機的な関係性の形成は難しい。しかも、それぞれが1×1の関係。複数の選択肢を作るのは実質的に不可能だったって言える。この辺がアーセナルの攻撃におかしさを感じた要因だった。

さて、マンUの攻撃が途中で引っ掛けられたところまで話をさかのぼる。この要因の1つは上にも書いたようにマンUの攻撃のまずさ。でも、加えてアーセナルの守備の良さがあったのも事実だったと思う。そのアーセナルの守備のよさがマンUの攻撃に様子のおかしさを生み出したのも、また事実だったと思う。それでも、基本的にはアーセナルの守備のやり方は今までの試合と大きく変わった部分はなかったから、軽く触れるだけにしとく。

アーセナルの守備はブロックを超高い位置に設定する。最終ラインを高めに設定して、中盤以前を前に押し出すと同時に3ラインの距離を縮める。これがマンUにとっては厄介だった。1つは相手のウラにはスペースがあるってこと。ルーニーはそっちに意識が持って行かれて、後ろのトップ下のスペースを埋めるって方に意識が向かなかったかもしれない。大体において、トップ下のスペースなんてものが本当にあったかっていう話。マンUだけを見ればあった。でも、相手の4‐4のラインはそこを完全につぶしてる。誰がそんなスペースに好き好んで入ってくかって話。

ちなみに、アーセナルの守備のスタートは相手が縦に1つ入ってきたところ。高いラインを敷いてるわりに2トップは前線から頑張って追いかけない。最低限のコースを切るようなポジショニングを採るやり方。相手が蹴ろうとしたら距離を近づける。で、相手が1つ縦に入れてきたところから守備をはじめるアーセナル。中盤の選手が念頭に置いてるのは最短距離を切るって考え方。このとき1つ1つのチェックを忠実に、しかも厳しく行くってのがポイント。そういう最短距離を切るチェックの繰り返しの中で相手を追い込み、途中で引っ掛けるってやり方。

これによってマンUのボールの出し手が好きなタイミングで前線にボールを供給できない状況に陥ったと思う。だから、本当は前線でトップ下の場所に出入りがあったとしても(いつもより少なかったのは確かだけど)、そこで味方が浮いたタイミングどんぴしゃで出せなかった可能性がある。そうやって受け手と出し手のタイミングが合わない間にパスミスが出て相手に引っ掛けられる、出し手が焦れて自分のタイミングで出して引っ掛けられるってことが続いた気がする。この引っ掛けにおいてはアーセナルの中盤の4が面白いようにフィルターとして機能した。

前半の大部分をこの引っ掛かりまくり→カウンター食らいまくり→アーセナルのパス回しに翻弄されまくりで過ごしたマンU。でも、徐々にその流れに変化が生まれてくる。それはつなぐ意識を放棄したことから生まれた。つなげるときはつなぐ、つなげないときはつながないっていう柔軟な対応をするようになったと思う。つまり、受け手と出し手のタイミングが合わない、中盤に経由点がないっていうような場合には強引にパスを通そうとしなくなった。途中で引っ掛けられる恐れのない、つまり相手の頭の上を越えるようなボールを単純に前線に放り込むようになったと思う。

で、うまくタイミングがあった時にはしっかりとつなぐ。アーセナルの守備陣といえども間間に入り込むマンUのパス回しは厄介。マンUがパスをつなぎ始めたら、全体のブロックを押し下げて自陣深め(相対的に)の守備ブロックへと移行した。マンUとしては相手を押し込む時間が延びたわけで、結果として組み立ての途中で悪い形でボールを失うシーンも少なくなった。これによって、バランスの崩れたブロックで受けるっていうシーンも減る。自分たちのベースとするシステム合致の人ベース守備で守る時間が延びて、徐々にアーセナルが好きなようにボールを回す時間は短くなっていった。

後半はそんな流れが顕著になって行く。やっと整理されて互角の勝負に持ち込めるって思った瞬間に先制点を奪われたマンU。おそらく、ここでファーガソンは4‐3‐3を捨てようと決断した。4‐3‐3は持ち直したとは言っても、できれば組み立てる、できなければ蹴るなんて状況は明らかに不本意。中盤のところをなんとか取り戻したいと思ったはず。その後すぐに同点ゴールが生まれたものの、スコールズ→アンデルソン、パク・チソン→テベスの交代を敢行した。

これによってシステムを4‐4‐2に変更。トップ下を空けておいて自らその場所の出入りを激しくするっていう本来のマンUらしい形にした。さらに交代もそのトップ下の場所を有効活用しようっていう意図が見られる。今回の試合では低めの位置でのプレーが目立ったスコールズに代えて、前線に積極的に出て行くアンデルソン。トップ下の場所よりもFWの場所に顔を出していたパク。チソンに代えて、最近はルーニーと縦っぽい関係が板についてきたテベスを投入。そして、一気に畳みかけにかかる。

この時点でアーセナルは打つ手なしだったと思う。チーム全体に前半のパス回しの後遺症が見られ始め、明らかに運動量が落ちた。それじゃなくてもいつもより遠めだった前線の関係がますます遠くなったと思う。さらに、大きかったのが守備。前半のように中盤での1つ1つのチェックが機能しなくなり、ルーズな対応が目立って行く。加えて、4‐4‐2の3ラインの関係も離れていく。そこに相手はテベスとアンデルソンを投入してきたんだから溜まったもんじゃないって話。Cロナウドが蹴ると見せかけてハーグリーブスのFKであっさりと逆転を許し、その後の反撃の元気も残ってなかった。

この試合を見てもシーズン全体を見ても柔軟性が差を分けたなって思う。今回の試合でいえば、マンUは途中でロングボールを織り交ぜることで悪い形でボールを失うことを避けた。アーセナルは理想的に人数をかけられていない状況でもショートショートにこだわった。チーム状況がチームのコンセプトについて行けてなかったイメージ。だから、どうすればよかったかっていう他の選択肢がないのもアーセナルにとっては痛い。ウォルコットのスピードに頼らざるを得ない状況だから。まあ、それがアーセナルらしいといえばアーセナルらしい。

シーズン全体を見れば、アーセナルは連携重視のサッカーの中で固定メンバーで戦わざるを得なかった。固定メンバーじゃないとそれなのにケガ人多数の不運。対するマンUはシーズン途中でシステムのバリエーションを増やし、いろいろな戦い方に対応できるようにした。ファーストチョイスである変則4トップじゃなくても戦える。チームとしての状態が悪くても、個の力で何とか乗り切っちゃうっていうスタイルもいい方向に向いた要因のような気がする。

あとは選手層だろうなって思う。マンUとアーセナルと比べて何が一番違うかって言われれば、選手層だと思うし。今回の試合でもアーセナルの交代出場はウォルコット、ベントナー、ホイトだったのに対して、マンUはテベス、アンデルソン、ギグス。アンデルソンはアーセナルと同じ若手に分類するとしたって、他の2人がベンチから出てくるのかよっていう。アーセナルは今シーズン後の放出の話もちらほら。何よりもフラミニが出るのは痛いだろうなっていう。ここ2試合を見ても、Gシウバは今シーズンのアーセナルのサッカーにフィットしてないだけに、どうなるか。
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2008-05-09 Fri 19:15
ミドルスブラ×マンU
<マンU:4-4-2>
FW:テベス-ルーニー
MF:ギグス-キャリック-スコールズ-Cロナウド
DF:エブラ-オシェイ-ファーディナンド-ブラウン
GK:ファン・デル・サール

いつも見るたび、素晴らしいサッカーを展開してくれるミドルスブラ。上位陣との対戦成績がそれを物語ってる。でも、この試合の前の時点での順位は13位。なぜなんだ。要するに上位陣と互角の勝負をしつつ、下位相手には苦戦してるってことか。それは、ミドルスブラのやり方と大きな関係があるんだと思う。当たり前ながら。

ミドルスブラのやり方は守備がベースになってる。攻撃はそのつながり。相手が攻撃に出てきたところを途中で奪い取ってショートカウンターで攻めきるのが大得意。つまり、相手が攻撃をすればするほどミドルスブラのチャンスは増える。上位陣相手では当然のように守備の時間が長くなるミドルスブラ。逆説的にチャンスも増える。

でも、下位相手ではそうはいかないんだろうなって思う。守備の時間が圧倒的に長くなることなんてないってこと。結果、チャンスは減る。別に速攻だけが攻撃じゃないのも確か。でも、ミドルスブラは遅攻はあまりうまくない。少なくとも遅攻からはうまくチャンスが作れないのは今回の試合でも見られた部分だった。失点は少ないけど、得点も少ないっていうチーム事情がそういう状況をよく表してるような気がする。

そんなミドルスブラの守備は高い位置から積極的に行くもの。2トップが制限なしに深い位置の相手ボール保持者までを追いかけまわす。そうやって最前線から守備を開始させる。この2トップの追いかけ回しに2列目以降が効果的に連動する。何なら中盤の4枚までが敵陣に入り込むぐらいの超積極的な守備。ダウニング、オニールがサイドに逃げてきた相手を狙い、真ん中の場所ではボアテングが絶対的な守備力を見せつけてかっさらう。

そうやって高い位置でボールを奪えるからこそ、ショートカウンターが効果的に決まるわけで。このショートカウンターのためのチーム全体の意思統一も素晴らしい。奪った選手はまずFWを見る。FWもチームがボールを奪った瞬間に自分が目標になることを自覚する。瞬時に相手から離れる動きをして、前線で起点になろうとボールを引き出す。守備のスタートと攻撃のスタート。このチームにおけるFWの役割は大きい。

とりあえず、ミドルスブラのやり方のイメージはこんな感じ。でも、こういうミドルスブラらしいやり方からややズレたやり方が見られたのが今回の試合だった。まず、全てのスタートとなる守備のスタートをどこから始めるかっていう問題。いつもは最前線から見境なく追いかけまわすのがスタート。これは上にも書いたとおり。それが今回の試合ではリミッターなしで最前線から追いかけまわすっていうやり方を放棄してきたと思う。

つまり、ブロックを作って受けるイメージが強くなったってこと。それでも完全に引きこもって受けるってことではない。最終ラインは高めに設定されてるし、それに押しだされて中盤も高い位置に置かれてる。早い話がブロックの設定位置はいつもと大きく変わらなかったと思う。でも、そのブロックを形成した上で自分たちから守備を開始しようっていう積極性が今回のミドルスブラには足りなかった。とにかく、前から前から追いかけまわすはずだったミドルスブラの2トップは3ラインの一角として相手の攻撃を待ち構えるイメージが強くなったと思う。

もちろん、こういうミドルスブラの守備のやり方自体が悪かったとは思わない。上にも書いたように、完全にベタ引きになったわけではないわけで、ブロック内に入ってきた相手ボールに対しては忠実に厳しいチェックをかけていった。少なくとも中盤以前では相手を自由にさせないぞっていう1つ1つのチェックが繰り返されたと思う。そういう守備の中で相手が少しでももたつけば一気に囲い込む準備もできてた。コンパクトブロック形成の中で選手間の距離の近さは確保されてたから。そのベースにあるのは1人1人の守備意識の高さであるわけだけど。

というわけで、トップの追いかけをやめたからと言って守備の質がガクッと落ちたとは言えない。リバプールが追いかけ型から受け型に変更しても、守備の質が落ちなかったのと似たイメージ。というか、ほぼ同じイメージ。ただし、マンUにとってはこのミドルスブラの守備の変更はかなりありがたいものとなった気がする。今回は4‐4‐2のマンU。おそらく、いつものようにミドルスブラが深い位置まで追いかけまわしてきたとしたら、意図の薄い蹴りだしが多くなったに違いない。まだ、4‐4‐2システムでそうやって上から来た相手に対処できた試合を見たことがないし。そして、予想通りというかなんというか、こういうマンUの弱点は後々明らかになって行くこととなるわけだけど、それはまた別の話。

とにかく試合開始当初は相手の最前線の追いかけ回しを食らわなかったマンUの最終ラインはある程度の自由にボールを保持することができた。さらに、1つ前のスコールズ&キャリックのところでもボールを持つことができる。上にも書いたように、中盤のところではしっかりと守備をしてきたミドルスブラだったけど、キャリック&スコールズの2人の組み合わせなら、そういう相手のプレッシャーの中でも安定してボールを持つことができた。最終ライン(実質的にはCB)とCMFのところでボールを落ち着かせることができたってのはマンUにとってはかなり大きかったと思う。

ちなみに前後関係を整理しておくと、このミドルスブラ戦はマンUにとってはCLローマ戦の第1戦目と第2戦目の狭間の試合。どんだけ前の試合を見てるんだってとこだけど。とりあえず、この時期のマンUは計算できる形になってきた4‐3‐3がメインだった。この後のローマ戦、続くリーグのアーセナル戦も4‐3‐3。でも、ここ最近は4‐4‐2を採用してるマンU。バルサ戦の時に使い分けの理由がつかめないって書いたけど、もしかしたら4‐4‐2のリハビリ用だったのが4‐3‐3かって気もする。あくまでもファーストチョイスは4‐4‐2で。どちらもできるってのが強みではあるけど、どちらがマンUオリジナルかっていえば4‐4‐2だと思うし。本当は4‐2‐4だけど。

バルサ戦の時にも書いたとおり、4‐3‐3導入直前のマンUは様子がおかしかった。とにかく縦に急ぎまくり。前線の4人だけの攻撃が多くなった。最初は相手の前線からの守備に負けて蹴ってしまうってことが多かったわけだけど、そのうちに相手が引いて受ける形の守備をしようとしてるのに、急いで前線に蹴ってしまうっていう末期症状が現れる。そんな中でできたのが4‐3‐3だったわけ。この4‐3‐3によって中盤の厚みを増し、縦縦に行かずにしっかりとボールをつなぐ組み立てが回復していった。

全試合を見てるわけじゃないか分からないけど、このミドルスブラ戦の前のアストン・ビラ戦でも4‐4‐2を試してる。つまり、4‐3‐3のボール保持が4‐4‐2でもできるかってのを見たんじゃないかっていう。結果は4‐0で圧勝。でも、やっぱり縦へ急ぐ様子が見られたのも事実だった。だから、次のローマ戦では4‐3‐3を採用。この試合に関しては守備の考えも大きかったと思うけど。そして、今回のミドルスブラ戦。アストン・ビラと同じく格下の相手。試すのには最適。

もちろん、あくまでも想像でしかない。大体においてそもそもシステムがあってないようなマンU。4‐3‐3か4‐4‐2かなんてのはテベスが出てるかアンデルソンが出てるかの違いだって気がしなくもない。登録上、FWとMFが何枚かってこと。テベスだって最近は後ろに向かっての守備のよさを見せてるわけだから、守備においては大きな差はないとも言えるし。でも、やっぱり攻撃に違いが出てくるのか。テベスなら流動4トップだし、アンデルソンならポジション固定的な代わりに中盤に厚みが出るっていう。

あとは、ここに来てスコールズが調子を戻してきたからアンデルソンがいらなくなったってこともあるかもしれない。アンデルソン&キャリック&スコールズでやってた仕事をキャリック&スコールズでこなせるっていう。故障明けは全然フィットしてなかったスコールズだけど、知らない間に本来のスコールズに戻ってた。今回の試合だって、相手がしっかりとプレッシャーをかけてくる中盤の場所でスコールズ&キャリックが安定してボールを保持してたってのは上にも書いたとおり。これは1つ前のローマ戦ではスコールズ&キャリック&アンデルソンが分担して行ってた役割だった。

果てしなく関係ない方向に向かって行ってしまったけど、要するに何がいいたいかっていうと、今回の4‐4‐2のやり方で攻撃に厚みを加えられるかってこと。1つ前のアストン・ビラ戦のようにやっぱり縦を急いでしまうのか、約1カ月後のバルサ戦のように4‐4‐2でも厚みを加えた攻撃ができるのか。それがポイントだった。そして、結論はどちらでもない。最初はいい形で攻撃の形を作れたし、途中からは全く何もできなくなってしまった。もっと言えば、最初は4‐4‐2の良さばかりが見えたけど、途中からは4‐4‐2の弱点ばかりが目立ってしまったって言える。

最初の時間は上にも書いたように、相手の前線のプレッシャーが予想外に弱かったこととCMFの安定性によって低い位置での保持ができた。そうやって時間を作ることによって、前線の受け手の方にいろいろな準備をする時間が生まれた。加えて、相手の前線でのプレッシャーが弱かったことによって最終ラインが高めの位置まで上がってくることができたから、全体を押し出して前線に厚みを加えることにも成功したと思う。急いで縦に蹴ってるときにはありえない状況だったし、その点では改善が見られたって言える。

ここにおいてマンUらしい4‐2‐4が見られた。しかも、生粋の4‐2‐4。やっぱり攻撃だけを考えたら、前線の4枚はギグス&テベス&ルーニー&Cロナウドが一番しっくりくる組み合わせ。もちろん、相手の力量の差ってものを考慮に入れなければならないわけだけど、こないだのバルサ戦よりも洗練された4‐2‐4を見ることができたと思う。いい流れの時間帯には非常にマンU的な攻撃が展開されることとなった。

まず、低い位置のボール保持は右寄りで行われることが多い。最終ラインからはCB2枚と右のブランが参加し、左のエブラは積極的に高い位置に入り込んでいくから。そうやってエブラが高い位置に入り込むことによってギグスの自由度が増してくる。エブラに左サイドを任せておいて、ギグスは真ん中に流れたりしながら自由に相手のギャップギャップに顔を出してくることが多かった。

そういうギグスの真ん中流れをはじめとして、マンUの選手たちはトップ下の場所に空いているスペースへの出入りを激しくする。これはいつも書いてるとおり。今回も例に違わず、ギグス、Cロナウド、テベス、ルーニーがその場所に頻繁に顔を出してきた。誰かがその場所に入ってくれば、他の選手は邪魔をしないようにサイドに流れたり、トップの場所に張ったり。近すぎず遠すぎずの関係性を保ちながら、前線が文字どおりグルグルとポジションを変えていく。

そして、そういう前線の関係性に機を見て後ろの選手が絡んでくる。今回の試合ではキャリックの積極性が目立ってた。こないだのバルサ戦ではキャリックが後ろに残ってスコールズが出て行くっていうシーンが目立ったけど、この試合では真逆。スコールズは1つ下で逃げ場としての役割を担うことが多くなったと思う。一気に畳みかけるようなシーンでは前線に顔を出してくるけど。こういうタイミングを見計らって時間差で出て行くことで、前線の動きの再活性化が図れる気がする。トップ下の場所に出入りの激しさ、というか前線にポジションチェンジの活発性を含めて、マンUの攻撃で前線が渋滞するっていうシーンはほとんど見られない。

こういうマンUの4‐2‐4に対して、ミドルスブラは困ったことになった。高い位置で自分たちから積極的に始める守備は放棄した今回のミドルスブラ。相手が入ってきたところで1つ1つのチェックを繰り返すことで相手の攻撃を分断するっていう意図が強くなったのは上にも書いたとおり。だけど、そういう待ち構えての1つ1つのチェックを次々と外されて行ってしまったっていうのが実際のところだった。

マンUの前線はポジションぐちゃぐちゃだし、それぞれが狙ったように間間に顔を出してくる。だから、完全に捕まえ切るのは難しかった。そうやって最初の守備が遅れてしまい、後手後手に回るミドルスブラに対して、マンUは間間にパスをつなぎながら次々に局面を変えていった。この辺は4人が孤立してた縦急ぎ4‐4‐2では不可能なことだったと思う。近さがないから。

そして、マンUにしては個での突破が明らかに少なかったのがいい流れの時間帯。1タッチ2タッチのシンプルなパス回しで敵陣に進攻してくやり方が目立った。逆に悪い時間には個の孤立、強引な突破が目立って、わざわざ相手に守備の狙いどころを定めさせてやってるようなものだったと思う。ミドルスブラの複数囲い込みのいい形の守備の餌食になるだけの話だった。

ちなみに、今回の試合のマンUのよさは近い関係性でのパス回しだけではなかったと思う。いい流れの時間帯限定ではあるけど、1発のボールのよさも目立った。幅を使ったものでは、中盤で組み立てながら、1つ遅れて入ってきた左のブラウンへの1発の展開が代表的。相手の守備を横に広げることによって、それぞれの関係性を希薄化させるアプローチができてたと思う。それから、トップへの1発のパス。これは悪いときのマンUに見られた意図の薄いものとは全く違う。意図がはっきりしたものだった。それは高い位置に設定された相手ブロックに対する揺さぶり。時折見せる1発のロングボールで相手の高い最終ラインにプレッシャーを与えたと思う。これは同時に、相手が待ち構える中盤を飛び越えるっていう意味もあった気がする。

さて、ギャップギャップに入り込んでくるリズムのいいパス回しに大きな展開を織り交ぜた組み立てをするマンUに対して、守備の狙いどころが定められなくなったミドルスブラ。後手後手の対応になり、間間に入り込まれ、自慢の厳しい守備もひらりひらりと交わされる状況。でも、それでもミドルスブラの守備陣はあわてなかった。なぜなら、ミドルスブラの守備にはまだとっておきがある。それはゴール前ラストを固めるベタ引き人数ベース守備。実はこういうラストの強さがミドルスブラの守備の一番得意なところだったりして。

アーセナル戦でもそうだった。立ち上がりは前から行こうとしてたミドルスブラだったけど、アーセナル得意のパス回しによって簡単にブロック内に入り込まれる状況。だったら、前から前から行って下手に後ろにギャップを残してくるなんてのは馬鹿なんじゃないかと。というわけで、ベタ引き守備へ移行。後は人数をかけ、体を張り、集中力を保ち続けて、跳ね返し続けるってやり方。これでアーセナルを苦しめた。

これがあるから、ミドルスブラの方はいくらマンUに中盤を制圧されてもそれほど焦りはなかったんじゃないかと思う。実際に相手に攻め込まれてる時間帯にも流れの中からは最後の最後の場所はやらせてない。2点目は本当に例外的。終了間際の時間帯のマンUの猛攻も、最後の最後のブロックで何とかしのぎ切ることができてた印象。だから、実際のところは守備に関して切羽詰まった危険な状況に陥るってことはなかったと言ってもいい。

ただし、このベタ引き守備には問題がある。それは攻撃との関連。最初に書いたようにミドルスブラの攻撃は守備からのつながりっていう意味合いが強い。高い位置で奪って、トップに当てて、そのまま攻めきるみたいなやり方がミドルスブラの攻撃のファーストチョイス。でも、正確にいえばどこで奪ったかなんて関係ない。ボールを持ったらとにかくトップへがミドルスブラの合言葉。高い位置でボールを奪えれば即刻チャンスにつながる可能性を秘めてるこの形も、奪うのが深い位置では一気に可能性が薄くなる。前線との距離が遠くなるんだから当たり前。でも、2点ともトップへの1発のボールからだったことを考えれば、やっぱりこれがミドルスブラの形だって言える。

ただ、やっぱりあのやり方で2点も入ったのは奇跡に近い。深い位置で奪ってから1発でトップへってのは効率が悪すぎる。それを考えてか、ミドルスブラの方は徐々に奪ってすぐにトップへっていうような攻撃を減らしていったと思う。確かにトップを見ることは見るけど、無理なら普通にビルドアップしようと。今回の試合ではマンUの切り替え後の守備がいつもほど抜群に効いてなかったのも、ミドルスブラが奪った後につなぐには幸いしたかもしれない。

で、そのマンUの守備だけど、今回の試合ではうまく整理されてたように思う。少なくとも4‐2‐4本来の守備よりは圧倒的に安定感があった。まずは、テベスが基本ポジションをトップ下の場所に置いたこと。マンUの守備が安定するかどうかは、この2トップ縦関係によって決まることが多い。2トップを縦にしてトップ下の場所を埋めるときには、それなりに安定性がもたらされると思う。だったら、いつもそうすればいいんだけど、そこは気まぐれマンU守備。2トップが縦になってみたり、ならなかったり。2トップが縦にならないとトップ下の場所=相手のボランチが完全に浮きあがって、好きなように組み立てを許すっていう最悪のパターンに陥る。今シーズンも何試合か見られた部分。

とにかく、今回の試合ではテベスがトップ下の場所に入って4‐2‐3‐1ブロックができてたマンU。そして、この4‐2‐3‐1ブロックで受ける意図が強くなった。4‐2‐4の前線4トップの前への守備は皆無。SMFの2人に関しては、むしろ後ろに向けた守備意識が高まってた気がする。1つ前のローマ戦でパクとルーニーの両サイドがSBみたいな場所まで守備をしてたわけだけど、それに触発されたのかどうか。どちらにしても、4‐2‐3‐1ブロックの意図は4‐4‐1‐1みたいな方向に向いてたように感じた。よって、ミドルスブラの方もそれなりに落ち着いてボールを保持できる状況だったって言える。

マンUの方は、その上で4‐4の間に入り込ませない守備をしてた印象。いつもとは性格が違って、ゾーン寄りの守備だったと思う。相手がトップを狙ってくるのが分かってるんだから、その場所を抑えにかかるのは合理的と言えば合理的。昨日書いた、インテルに対するローマの守備と大きくは変わらない。4‐4の間に入り込もうとする縦パスをフィルターとなる中盤の4が引っかけたり、間に入ってきたボール保持者を囲い込んだりっていう守備のやり方が目立ったと思う。単純な縦パスに対しては、出足の早さが目立って、相手より先に触ることも多かった。

結果としてミドルスブラはトップに当てることができなくなった。だから、仕方なくサイドへ。マンUの守備がミドルスブラの攻撃をサイドへ追いやったとも捉えられるけど、ミドルスブラとしてはそんなに嫌なイメージはなかったかもしれない。トップに当てる攻撃をしたとしても、相手を押し込んだあとにはサイドに展開して作り直すってやり方も目立つし。このサイドではマンUの守備がそれほど厳しく効かなかったこともあってか、最後のクロスまで持ち込めるシーンが多くなった。ただし、ことごとく跳ね返されてしまったわけだけど。あまりに単純だったから。この辺にミドルスブラの遅攻の苦手さが表れてる。攻撃のバリエーションが少ないっていう。

それでも、このサイドに起点を作る攻撃の意味するところは大きかった。そして、そういうサイドからの攻撃がとりあえずうまく回るようになった時間帯にものの見事に同点ゴール。上にも書いたように、サイドからがどうしたとか、ビルドアップがどうしたとかは関係のない1発蹴りからの流れからだったわけだけど。それでも、この後の時間帯は流れが完全にミドルスブラに傾くことになった印象。だから、試合全体を通して見ると、実はミドルスブラの時間帯の方が長かったかもしれない。

とりあえず、まずはサイドに起点を作る攻撃が意味したことについて。上にも書いたように、いつもとは違って中盤のラインの一角となる意図が強かった両SMF。相手がサイドに起点を作ってきたことによって、その守備への負担がより大きくなることになった。いつもより守備が単純に2人増えた分、守備の安定性は増したけど、当然のように前線の枚数も犠牲にすることとなった。

そして、そういう流れの中でのミドルスブラの同点ゴール。このゴールによってミドルスブラ覚醒。一気に前線からの守備の勢いが増すことになったと思う。それまで、受ける意識が強かった守備はどこへやら。最前線から追いかけ回すいつものミドルスブラが帰ってきた。このミドルスブラの守備意識の高揚と、マンUの本当の意味での4‐4‐2が組み合わさることによって、マンUは全く抜け出せない悪循環に陥ったと思う。

まさに悪いときのマンUそのままの流れ。相手の前線からのプレッシャーによって、後ろの選手は蹴りまくりモード。前線の味方が準備できてるかどうかなんて関係ない。とにかく、相手のプレッシャーを逃れたいから前線に蹴りだす。ここで思い出さなければならないのは、両サイドが低い位置に入ってること。いつもみたいに前線が4枚なら、まだ可能性はあっただろうけど、今回は2枚だけ。しかも、小柄な2人。急いで前線に蹴ってるから、後ろが押し上げる時間もない。前線で競り勝ってキープするなんてのは夢のまた夢。結局、相手にボールが渡る。そして、相手の攻撃が再開。そんな流れから抜け出せなくなる。

後半もこの流れが続いたわけだけど、後半はもうちょっと深刻だった。奪った後にすぐに前線に向かって行くのは前半と同じ。でも、後半は後ろの押し上げを早めようとしてた気がする。前の2人のフォローへってことで。一見よさそうではあるけど、これが悪い方向へとつながる。そもそも意図の薄いボールを前線に向けて供給してるわけだから、つながる可能性は薄い。加えて、相手の前線からの守備も相変わらず効いてる。だから、途中で相手に引っ掛けられるシーンが多発。このときに、後ろの選手(特に中盤)が押し上げを開始。それまで保たれてた4‐4の間にギャップができることとなる。

味方がボールを奪ったらすぐに引き出しの動きを開始するミドルスブラFW。4‐4の間に入り込んで受ける場面が多くなったと思う。前半はしっかりと締められてた相手のFWへのコースを後半は空けてしまったのがマンUだった。結果としてミドルスブラは前半以上にチャンスが増大。というか、前半はなんだかんだでマンUの4‐4は崩れてなかったために、結局はサイドからのクロスを跳ね返されるってシーンが多くて、実際にはチャンスが多く生まれてなかった。でも、今はミドルスブラ得意の高い位置で奪ってトップに当てるっていうショートカウンターが機能し放題。チャンスが増えるのは当たり前だった。

というわけでいい部分と悪い部分が見られたマンU。相手が前線から守備に来なかった時間帯は、4トップを中心とした洗練とした攻撃が見られたのに、相手が前線からの守備を開始した途端に一気にそれが消えてしまった。後半は結果として個頼みの攻撃のみ。前半のようなパス回しなんて全く見られず、むしろボールを持った選手が出し所がなくて困るシーンが多発した。2点目は後半では珍しくパスがつながったシーンからだったけど。脆いというかなんというか。相手のやり方の変更で、ここまで極端に変化が生まれてしまうと、ちょっと困るんじゃないかなって思ったりもする。だから、その後のローマ戦とアーセナル戦では4‐3‐3に戻したのか。

対するミドルスブラはなんで最初から前線の守備をしなかったのか。それが自分たちの形であるにも関わらず。最初からいつもどおりに前線からの積極的な守備をやってれば、もしかしたらマンUを破ることだって可能だったかもしれない。途中でギアを入れ替えてからの流れは明らかにミドルスブラだった。1発ボールからの2得点は奇跡だったってのは上にも書いたとおりだけど、それ以外の自分たちの流れで得点を奪えなかったのも奇跡に近い。マンUは冷や汗もののシーン連発。今回の試合に限っては、ミドルスブラが勝ち点を2失ったっていう見方をしても的外れではなかったと思う。やっぱりこのチームは注目に値する。
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2008-05-08 Thu 23:01
ミラン×インテル
<ミラン:4-4-1-1>
FW:インザーギ
MF:カカ、セードルフ-アンブロジーニ-ピルロ-ガットゥーゾ
DF:ファバッリ-カラーゼ-ネスタ-ボネーラ
GK:カラッツ

<インテル:4-3-1-2>
FW:クルス-クレスポ
MF:マニシェ、ビエラ-カンビアッソ-サネッティ
DF:キヴ-マテラッツィ-リヴァス-マイコン
GK:ジュリオ・セザール

この試合で勝てば優勝決定だったインテル。でも、試合内容は勝ってここで決めてやるぞっていうものではなかったと思う。どちらかと言うと、ここは無難に引き分けでっていうイメージ。どちらかと言うとというか、実際に引き分け狙いとしか思えないような試合運びだったと言ってもいい。ここで引き分けて後の2戦で優勝を決めればいいかっていう。そういえば、インテルの試合を見るのは超久々。最後に見たのは2年前の同じカード。ということは、もしかしていつもこういう引き分け狙い(要するにリスクを負わない)試合運びをしてるっていう可能性だってあるわけか。

そんなインテルの守備ブロックは4‐5‐0。数字で表すとおかしなところ満載の形だった。まず、なぜに足して9人しかいないかってこと。それはトップ下に入ったマニシェが計算に入ってないから。そもそもマニシェがトップ下に入るって時点で違和感を覚えた(インテルだとトップ下をやってるのか?)わけだけど、それは守備の形を見てすっきり。マニシェの役割は相手のピルロのマークだった。しかも、完全なるマンマーク。ピルロが動くところではどこまででもついて行くイメージ。よって、守備ブロックの数として入れるにはちょっと異質な存在。あえて言うならば、4‐5‐0+1ってのがインテルの守備だってことになる形だった。

次の問題は、なぜにトップの場所が0かってこと。これについては、見たまんま。要するに2トップが中盤の守備に参加したってこと。トップに入った2人の役割は相手のSBの攻撃参加に対する対応。よって、守備時のインテルの2トップは真ん中に位置せずに、両翼に張り出すような形になってる時間が長かった。この点については、途中で変化があったわけだけど、とりあえず基本はそういう形だったってことで間違いなかった気がする。

2トップが両翼に開き、トップ下がその場所を留守にすることが多くなったインテルの守備ブロック。というわけで、ミランの攻撃のスタートのところは何のプレッシャーも受けない状態。CBは自由に持ちあがれる状態。むしろ、ミランのCBが持ち上がるためにコースがわざわざ空けてあるようだった。この時点でミランはじっくりと組み立てることができる状況だった。低い位置ではプレッシャーがかからないんだから、何にも急ぐ必要はない。SBを上げて幅をもたらし、中盤の流動性を高めながらチーム全体として徐々に押し上げていく、そんなミラン的なやり方には最適な状況だったって言えると思う。

ただし、ここで懸念が出てくる。今年に入ってからのミランは、そういうミラン的な組み立てを放棄してるようだってこと。少なくとも実際に試合を見た、ローマ戦とシエナ戦ではそうだった。その時には横から縦への変化が生まれたって書いたわけだけど。中盤での圧倒的なポゼッションは影を潜め、むしろ中盤は素早く通り過ぎてしまうような真逆の組み立てに。それが悪い方に出ると、前線がはがれ、攻撃に厚みが生まれず、しかも前線が2‐1の先細り状態だから幅も使えないっていう形になってしまっていた。結果としてローマ相手にはいいところがなく敗れ去ることになったわけで。ただし、この縦急ぎのやり方には幸か不幸かパトの起用っていう条件の制約がある。

1トップにインザーギとかジラルディーノが起用されるた場合、どちらの選手もあまりゴール前の場所から動こうとしない。それが蓋なっていたのが以前のミラン。同時に縦にはなかなかボールを入れられない。引き出す動きをあまりしないから。インザーギは引き出す動きしまくりはしまくりだけど、それはあくまでもゴールに向かったものであって、あくまでも最後の最後の仕上げの部分だし。というわけで、ほとんどの時間でトップがいない者として扱われてたのが以前のミラン。当然のように効果的か楔は入らず、横パスが多くなる。これが悪い面から見た幅を使った攻撃。要するに仕掛けのパスを出せないから、横横になってしまうっていう。

そのトップの下にはカカとセードルフっていう絶対的な存在が並ぶ。仕方がないので2人が実質的にFW的な役割。でも、前には蓋がいるからゴールに向かうプレーはできない。よって、2人とも1・5列目の狭いエリア(左右の幅は使えても)で後ろとの関係性を築くしかなかった。そして、この2人が不運にも蓋になってしまう。でも、後ろからは徐々に押し上げてくる。どんどんと中盤に人数が溜まって行く。結果として、強制的に近さが生まれる。これが悪い面から見たミランの中盤の圧倒的なパス回し。

幅を利用しながら徐々に押し上げて、中盤で圧倒的にパスを回すミランの裏の面がこれ。今にして思うと、実はこの裏の面が占める割合は案外大きかったのかもしれない。いくら中盤で圧倒的に保持できたとしても、そこからなかなかゴールに向かっていけないのがミランだった。あれだけ組織的にボールを回しているのに、ゴールへ向かうところになると個の力に頼った強引なやり方が目立ったわけだし。仕方なしのパス回し、パス回しのためのパス回しが大きかったかもしれない。そのパス回しの流れに焦れたところで、カカもしくはセードルフに任せますっていう形だったとも言える。

こんなミランの攻撃がパトの存在によって大きく変化することとなった。パトはインザーギとかジラルディーノと違って動きまくり、引きだしまくり。それまでは前線に入れられなかったのに今となっては前で動き回ってボールを引き出してくれる選手がいる。それが嬉しいと思ったかどうかは知らないけど、どんどんと前線にボールを供給していくやり方が目立つようになった。要するにすぐに前に蹴ってしまうわけだから、SBがそれまでのように高い位置を保つってのも難しくなったし、中盤での近さもなくなる。渋滞状況によって生み出されてたそれまでの選手間の近さから比べると、むしろ間延びとも言える縦急ぎの攻撃は全く違った展開を生み出すこととなった。

同時にカカとセードルフの役割が変化したと思う。これまでは前線の蓋に邪魔されて、自分の後ろとの関係を重視していた2人。前に動き回るパトが入ったことによって、自分の前に広大なスペースが用意されているって状況が生まれることとなった。こちらも、それが嬉しいと思ったかどうかは知らないけど、それまでの鬱憤を晴らすかのように前へ前への飛び出しを増やして行った。むしろ3トップの一角的な役割の方が強かったと思う。チームとしてはこれまで中盤の絶対的な経由点となってた2人が、中盤ではなくFWの場所に出て行ってしまったわけで、じゃあってことで中盤を軽視せざるを得ない状況だったとも言える。

ここまで来ると悪い面ばかりが目立ってくるパト加入後のミランだけど、その中で可能性を感じさせる攻撃が見られたのも事実。それは、カカとかセードルフが中盤を思い出したときに生まれた。つまり、3トップの一角は一角でも、組み立ての中でどちらかが中盤に降りてきてこれまで通りに経由点として機能した時。そこで1度ボールを中盤に居座らせることで、全体の押し上げが活性化される。ようやって前後の関係性が密になると、パトが入った効果が生まれてくる。

パトがFWの場所を留守にすることが多くなることで、最前線の出入りが激しくなる。間延び状況ではカカとセードルフがそれを利用するだけだけど、中盤に1度ボールを滞在させて時間を作るなかで、もっと後ろからのダイナミックな飛び出しも活性化される。こうなってくると、前線が完全固着化された以前のミランとは全く違う。相手としてはラストで前の3人だけを押えとけばいいっていうそれまでのやり方では全く対処できなくなる。ミランの選手の動きがパス回しのためのものじゃなくて、ゴールに向かったものにシフトしていく可能性は十分にあった。

さて、これを踏まえて今回の試合はどうだったかってこと。ここで考えるべきなのはミランのトップの選手がパトではなくインザーギだったってこと。縦急ぎの攻撃がパトの加入の影響なのか、チームとしての方向転換なのかが分かることになった。もちろん、この数カ月の間にチームとして追及してた縦急ぎの攻撃をあきらめた可能性だってなくはないけど(だから、インザーギが重用されてるのかも)。どちらにしても、ミラン的なミランなのかミラン的じゃないミランなのかは注目に値するところ。ミラン的ってのは中盤を圧倒的に支配するって意味で。

で、結論から言えば今回の試合はミラン的だった。立ち上がりこそ、早めに前線に入れる大雑把なプレーが目立って、どういう方向かを見極めるのに苦労したけど、おそらくそれは様子見。ちなみに、この時間帯は全く積極性のないインテルと五分五分の展開になっていたわけだけど。その後、徐々にミラン的な中盤を支配する攻撃のやり方に移行して行くこととなった。そうなると流れは完全にミランのものになったと言ってもいい。

ミラン的なミランのやり方については、上にも書いたとおり。SBを高めの位置に入り込ませることで攻撃の幅を維持しながら徐々に押し上げていく。今回は上にも書いたとおりCBの場所がフリーになってたから、こういうビルドアップは比較的スムーズに行ったと思う。SBは相手のFWがついてるってのも書いたとおりだけど、どちらかと言うと事後的な対応、つまりボールが入ってからの対応が目立ったから完全に押さえられてしまうっていう状況でもなかった。

そうやって押し上げながら、中盤に近さをもたらしていく。後で詳しく書くけど、今回の試合に限っては上に書いたような悪い面はあまり見られなかったと思う。仕方なしのパス回しと言うよりは、しっかりと最終的にはゴールを見据えたパス回しになってた印象。どちらにしても、近さと流動性をベースとしてギャップギャップにパスをつないでいくミランらしさは見られたわけだけど。

でも、ここでちょっと今までのイメージとはちょっと違った部分がちらほら。これがゴールに向かったパス回しが生まれた要因の1つになってたと思う。その1つは今回の試合のミランは4‐4‐1‐1で戦ってたってこと。確かに守備時には4‐4‐1‐1で戦うことだってあるミラン。実際に今回の試合のミランの基本的な守備ブロックは4‐4‐1‐1の形だった。ただし、守備で4‐4‐1‐1を使ったとしても攻撃時にはセードルフを中盤の4から押し出して4‐3‐2‐1っぽい形にするのがこれまでのミランのイメージだった。要するにセードルフは中盤の4の中ではちょっと異質の存在っていう。それが今回は崩れてたような気がした。

つまり、攻撃時もセードルフは中盤の4の一角として振舞ってたってこと。4‐3‐2‐1の時に見られる、カカと横並びになって経由点となるようなシーンはほとんど見られなかった印象。正確には他の選手とあまり変わらなかったってことになるわけだけど。とにかく、前で待っているというよりは、どちらかと言うと後ろでフォローをするような役割を担ったり、前に出て行くにしても後ろをベースとしてそこから飛び出すっていうシーンが多かったように思う。

これによって生まれたのが2列目の出入り。上にも書いたように4‐3‐2‐1のときのミランは最前線から順に蓋になっていってしまう印象が強かった。結果として固着化、渋滞が生まれたわけで。今回の試合でもFWの場所は相変わらずインザーギの聖域だったけど、2列目の場所に変化が生まれてたように思う。それは2列目が固着化しなかったってこと。4‐4‐1‐1を基本にしつつも、見た目は4‐3‐2‐1になってるイメージ。これまでは2列目の2がカカとセードルフで固定されてたけど、今回はカカと誰かって形になった。中盤の4からの飛び出しが活性化したと思う。アンブロジーニ、ガットゥーゾ、セードルフ、ピルロが入れ替わり立ち替わり出てくる状況が生まれた。

結果として2列目の場所でミランの選手が浮いてくるシーンが多くなったと思う。ボールを受けた後に余裕ができて、前を向けるシーンも目立った。結果としてゴールに向かう意識が高揚した。悪い面が出たパス回しの時は、多くの場合相手にラストを固められてる状況。セードルフ、カカは経由点になれたとしても前を向かせてもらえないってことが多かった。結果として後ろのボールを戻すしかなくなり、パス回しが継続することになったと思う。出入りを激しくして、2列目の場所で浮く選手を作ったことで前を向く=ゴールに向かうプレーができたのが今回の試合のミランのよさだったと思う。

ただし、この点についてはインテルの守備のまずさがあったのも事実。というか、実はそちらの要因の方が大きかったかもしれない。今回の試合のインテルはイマイチ守備の根拠があいまいだったように感じた。そもそも、最初に書いたとおりとにかく守備に人数をかけて安全な戦い方をしようとしたインテル。結果として相手の攻撃のスタートのところから押さえられなかったのは上にも書いたとおり。じゃあ、どこで押さえに行くのか、つまり守備の勝負どころをどこに置くのかってのがポイントになったわけだけど、それが定まってなかった気がする。

スタートを自由にさせたインテル。そうやって自由にミランのパス回しを開始させてしまったら、途中で止めに行くのは自殺行為になるかもしれない。何しろ相手はミラン。相手が出てきたギャップギャップをつないで行くのが抜群にうまい。しかも、今回はミラン的なミランだったわけで。ギャップギャップのパス回しに、相手のブロックに揺さぶりをかけるような左右の展開も織り交ぜて狙いどころを定めさせないような組み立てを行った。それを途中で止めに行こうと飛び出していった時点で、ギャップだけを残してしまう懸念は十分にあったと思う。

それを考えてなのかどうなのか、インテルは中盤での守備にあまり強い意識を持ってなかったと思う。一応のチェックが目立ってた。問題はこの一応のチェックの終りが見えなかったってこと。相手のパス回しに対する一応のチェック。当然のように途中で止めることができないから、ブロックがズルズルと下がって行く。そうやってズルズルとラインを下げても相変わらずの一応のチェックの繰り返し。誰も守備のスイッチを入れようとしない。エリア前の場所でどれだけカカが前を向いてボールを持ってたかって話。

これは人数の多さに起因する部分が大きかったかもしれない。味方が一杯いる安心感と言うか。ちょっとぐらいルーズにしても、最後の最後に人数をかけて守ってれば問題ないだろっていうか。確かに、最後の最後の最後を人数ベースで跳ね返し続けるっていうやり方が残されていないわけではなかった。もう、相手の出し手への守備は捨てる。その代わりに、エリア内には入らせない。絶対的な人数ベースブロックで最後の場所に壁を作るっていう。

ただし、ここで思い出すべきなのはミランのトップに入っている人物。それはインザーギ。最後の最後にインテルがいくら人数をかけたとは言っても、インザーギはその上を行く。何度もゴールに向かう引き出しの動きを繰り返して、したたかに相手の死角を狙っていく。確かにインテルの方もインザーギの場所までルーズにしてたわけではない。でも、そのマークを外す動きをインザーギは持ってる。何度も繰り返しているうちに、いくつかは相手のマークをすり抜ける。

そして、インザーギがマークを外したときにインテルの守備は全く根拠がなくなることになる。最後を固めてるはずなのに、相手のFWを見逃してる。そして、そのFWにボールを供給する相手選手も浮かせてる。カカが前を向いてボールを持つシーンが目立ったってのは上にも書いたとおり。この2つが合致した時点で決定的なパスがゴール前に送られることになる。1点目のシーンを含めてミランのチャンスのほとんどがこのパターン。インザーギが相手を外し、そこに相手の守備がルーズなカカ(など)からラストパス。ピルロには密着マークをつけたインテルが、カカを浮かせまくってたのは大いに疑問。

さて、この1点目のシーンにもつながったように今回のミランはサイドからの崩しが多く見られた。これが今までのイメージとは違った部分の2つめ。組み立てではサイドの幅を有効に活用するミランも最終的には真ん中に入ってくるってのが、これまでのイメージだった。組み立てでの左右の幅利用はあくまでも最終的に崩したい真ん中を空けるためっていう。それが今回はサイドで攻めきるってシーンが多かった気がする。サイドに起点→相手のブロック前を通り過ぎるサイドチェンジ→クロスってのが1つのパターンだった。

これは中盤の4の場所でプレーしたセードルフの影響によるものか。いつもと違って中盤の4の一角としてのイメージが強かったってのは上にも書いたセードルフだけど、その4の中での基本ポジションである左サイドでのプレーが多かったように思う。常にベタ張りってわけではないけど、いつもよりはサイドにいる時間が長くなった。そして、その左サイドにピルロが流れてくることも多くなった。これは相手のマニシェのマークを嫌ってっていう側面があったかもしれない。ファバッリの攻撃参加も活発だったし、ピルロとセードルフがいるサイドの攻撃が活性化するのは当たり前であって。ちなみに、逆の右サイドにはカカが流れることが多かったと思う。

このサイドからのクロスの多さは相手のベタ引きブロックを横から攻めてしまおうっていう意図を持ったものだったかもしれない。正面から行けば密集した相手のブロックも、横から見ればただのライン。狙える場所は多い。さらに、横からのクロスに対して相手のDF陣はどうしても人を離してしまう傾向が強まる。インザーギにとっては願ってもないチャンスじゃないかっていう。ゴール前に1枚ってシーンが多かったのに、どれだけ決定的なチャンスを作ったかって話。ちなみにサイドを変えるアプローチはボールサイドに寄ってくる相手に対して広い場所を使うってこと。真ん中でタメといて外って形でのフリーでのクロスもいくつかあった。

こんな流れの中で試合の主導権を握ったミラン。上には4‐4‐1‐1が守備の基本だって書いたけど、終了間際の守りに入った時間を除いて、4‐4‐1‐1で守る時間はほとんどなかった。それは、攻撃後の流れの守備がうまく機能してたってこと。当たり前と言えば当たり前。相手は11人全員が守備ブロックに参加して、自陣に戻ってる。相手の奪われたからと言って、素早くラインを下げて組織を作る必要は全くない。相手の守備から攻撃への切り替えの選択肢はほとんどないわけだから。だから、攻撃の流れのままに高い位置で守備をするってのが合理的だったし、その中で高い位置での効果的なカットも多くなった。2点目につながったのがその形。

ミランの2点目よりは前の話になるけど、こういう状況に対してインテルも変更を加えてきた。さすがに全員を守備に回すのはダメかって思ったのかもしれない。2トップの1人(多くはクルス)は相手のSBへの守備は免除されるようになっていった。とはいっても、マニシェが留守にするトップ下の場所のケアが主な仕事になったから、守備ブロックに参加することにも自陣で守備をすることにも変わりはなかったけど。でも、味方が押し込まれている時には戻らずに前に残るってことになった。奪ったら、そこに当てて全体の押し上げを図ろうっていう。

後半になるとクレスポも相手SBに対する守備を免除されることになった。これによって、やっと4‐3‐(1)‐2っていう普通の形になったとも言える。ただし、クレスポとクルスが前線に残ったインテルには守備の問題が生まれた。上にも書いたとおり、基本的に守備の根拠が薄かったのが今回の試合のインテル。それでも前半を0に抑えてたのは、とにかく人数をかけて自陣で守備をしてたから。そこから2人がいなくなった状況で、その人数の根拠も薄くなってしまった。1点目を許したシーンの時点では2トップは前線にとどまり、人数が少なくなった後ろの選手は誰も相手のボールにアプローチできずっていうシーンだったと思う。

さて、ここで話を変えてインテルの攻撃について。2年ぶりのインテルだけど、いろいろとダイジェストを見る限りではFWの良しあしによってチームの良しあしが決まるっていうある程度のイメージは固まってた。そういう凝り固まったイメージをベースとしてではあるけど、今回の試合でもそのイメージは大きく異なってないなってのは感じさせられた。つまり、インテルの攻撃のステップの中にはFW(またはトップ下)を経由させるっていう意図を持った縦パスが多いってこと。そして、チーム全体として攻撃に出ている時には、そのFWの近くに人数をかけようっていう意識の強さも見られた。

これが機能してるときにはいいと思う。収まりがいいFWを使う傾向にあるインテル。そして、そのFWはイブラヒモビッチを筆頭に何でもできるタイプが多い。よってFWに収まりさえすれば、FWだけでゴールまで行けるシーンも多くなる。それに加えて、FWの近くに位置しようっていう周囲の意識。FWに入りさえすれば、いろいろな展開が一気に開けてくるのがインテルのやり方だと思う。

ただし、今回のミランはそれほど甘くはなかった。そもそもミランの守備には大雑把に言って3種類ある。4‐3‐2‐1型と4‐4‐1‐1型と新種の4‐3‐3型。4‐3‐2‐1型はトップ、トップ下の守備のスタートとして前線から積極的にプレッシャーをかけていくやり方。そうやって前線が限定したころを中盤の3がかっさらってく。前線から切って、切って、追い込み高い位置で奪うのがこの形。4‐4‐1‐1型は逆に受ける意図が強い。重要なのは4‐4で完全にバイタルをつぶすってこと。そうやって最後のところに入り込ませない形。4‐3‐3型は縦急ぎミランに見られた問題が多い形。前線の3枚が守備を免除され、後ろの4‐3で守るべきもの。この形だと中盤の3が引っ張り出されて、バイタルエリアに広大なスペースが空いてしまうシーンが多発した。

今回の試合では上にも書いたとおり4‐4‐1‐1の守備ブロックを形成したミラン。つまり、バイタルエリアをつぶすっていう守備意識が高かったことになる。これはインテルの攻撃のやり方を考えれば効率的。4‐4の間をつぶして、相手のFWにボールを入れさせないってやり方だから。今回の試合では守備時の中盤の4の並びがいつもとは違って、真ん中にガットゥーゾとアンブロジーニ(右にピルロ、左にセードルフ)の形だったのも、相手のFWへのフィルターをかける意識が強かったかもしれないと思う。

FWに入らないインテル。FWに入れようとした縦パスはことごとくミランの中盤のフィルターに引っ掛けられてた。それでもFWと近い距離を保とうとする意識は変わらない。だから、後ろから次から次へと選手が入って行く。でも、ボールはない。ポストプレーをするためにボールを待ってるインテルのFW。そのFWにボールが入ってから動きを開始しようとする周囲の選手。相手の強固な4‐4の間で“待ってる”選手が多くなっていく悪循環が生まれてた印象。

もちろんインテルの方も馬鹿正直に縦パスを狙っていくばかりではなかった。左右の展開を織り交ぜながら、相手のフィルターの間に隙間を作ろうっていうアプローチは忠実に行ってたと思う。ただ、攻撃のチャンス自体が少なかったことで、そういうアプローチを何度も繰り返すことができなかったのが残念なところ。もっと徹底的に左右に振るアプローチをしてたら、インテルのやりたいようになってた可能性もある。もちろん、それでもミランの強固な4‐4がバイタルをつぶし切った可能性だってあるわけだけど。

ちなみに、この前線に人数を多く入れるインテルのやり方について最初は別の意味での作戦だと思ってた。上にも書いたとおり、相手の前線の選択肢が少なければ高い位置から守備をしてくるミラン。逆にインテルの方が前線に人数を増やせば、相手のブロックを押し込むことができる。つまり、4‐4‐1‐1ブロックを作らせるために前線に人数を入れたんじゃないかっていう。

4‐4‐1‐1の方のミランはボールが自陣に入ってくれば忠実なチェックを開始するけど、低い位置の相手に対しては効果的に守備をすることができない。前線は1‐1なわけだから。だから、インテルがそういう状況下でボール保持重視のやり方を採る可能性だってあった。ボールを持ってれば相手に攻められることはない。守備を見ても攻撃をする意識が高いようには見えないインテル。攻撃で無理にボールを失うことはせずに、キープ重視で入るのだって理屈にかなってる。でも、実際には安易に縦パスを狙って引っ掛けられるシーンが多発してたから、これは妄想でしたねって話なわけだけど。

さて、ここを落としても何にも痛くはないインテル。ダービーを落としたってのは、それはそれで痛いのかもしれないけど。でも、優勝に向けて圧倒的優位であることは変わらず。今回の試合を見ても、m着茶強いっていう印象を受けたとは言わないけど、下位相手の2連敗はないだろうなって思う。逆にミランにとってのこの1勝は大きかった。来期のCLに向けては、文字どおりに絶対に負けられない戦いだっただろうし。でも、これで安心できないのも事実。実際、インザーギの大爆発がどこまで続くかっていう不確定要素に左右される部分もかなり大きい気がする。今回の試合でも、ミランのチャンスはインザーギの個人技(要するにマークを外すって技)による部分がほとんどだったし、
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2008-05-05 Mon 02:32
北中米カリブチャンピオンズカップ決勝第2戦:パチューカ×サプリサ
<パチューカ:3-3-3-1>
FW:レイ
MF:アルバレス-カバジェロ-ヒメネス、ロドリゲス-コレア-カブレラ
DF:ピント-マンスール-ロペス
GK:カレロ

<サプリサ:4-5-1>
FW:ゴメス
MF:ヌーネス-アロンソ-ベネット、ロペス-ボルヘス
DF:バランテス-バティージャ-コルテロードゥルモンド
GK:ナバス

パチューカは少ないタッチでショートパスを回しながら攻撃を組み立てるチーム。確か、去年の12月はそうやって言われてたはず。まあ、間違っていないと言えば間違っていなかったのがクラブWCでの内容。ただし、あまりにもパスの確実性にこだわりすぎてる印象が残った。エトワールサヘルの守備に対して、ちょっとでも引っ掛けられる可能性があれば、横パスで逃げることが多かった。パスのためのパス、パス回しのためのパス回しばかりが目立つ臆病サッカーに終始してた印象。結果として、圧倒的にボールを支配しつつも初戦で散っていった。

そんなパチューカの本来の姿が見られたのが今回の試合だった。この数ヶ月間でとんでもなく成熟度が上がったのか、はたまたクラブWCでは緊張して力が出せなかったのか。普通に考えたら後者だと思うけど。何にしてもクラブWCのときとは全く違った内容の試合展開になったと思う。そこでは文字どおりショートパス主体の攻撃が行われてたわけだけど、その質が抜群に高かった。これが本来の姿なら、去年の12月に結構持ち上げられてたのも分かるなっていう。

パチューカのシステムは3‐3‐3‐1。3‐4‐3とも言っていい形。3‐3‐3‐1的な3‐4‐3を採用してる時点でシステム的にショートパスをつなぐアシストが行われてる。なぜならこの形は、選手の距離感がバランスよく保てる(個々の選手のカバーすべきスペースが対等)、トライアングルがピッチ上にたくさん描けるともっぱらの噂。そして、このトライアングルの形成っていうのがパチューカの攻撃の根幹に流れる、もっとも基本的な要素だったように感じた。

1つのボールに対して常に複数の選択肢を用意しようとするパチューカ。そのための近道はボール保持者を1つの頂点とした基本的なトライアングルを常に形成しておくこと。それだけのことで、あっさりとボールに対して2つの選択肢(個の突破を含めれば3つの選択肢)が手に入ることとなる。そして、パチューカの選手は全員がトライアングルを形成するってことを念頭にした動きをしてたと思う。ボールに対する動きの質が、基本的トライアングルを作るようなものだったのが、中継の映像ではっきりととらえられた。

ボールの周囲の選手は複数の選択肢を作るためのトライアングル形成を念頭に置きつつ、ギャップに入り込んだり、ボールを追い抜いたりっていう動きを繰り返す。ボール保持者はボールを離した瞬間に新たなトライアングルの1つの頂点へ。基本的なパス&ゴーが目立ち、結果としてワン・ツーも多くなった。全体としての近づくランニングと遠ざかるランニングのバランスもよかったと思う。

ひとことで表せば、ボールが入ったところに対して適切なポジションを取るってのがパチューカのパス回しの中での動きのポイント。ボールが動いたら、それに対して再び動きが生まれる。そんな動きの繰り返しの中でのパス回し。ボールが動き人が動く。どこかで聞いたことがある一連のフレーズ。それはアーセナルのパス回し。パスが回りだしたら止まらない様子、さらにはパス回しがスタートすると相手に狙いどころを定めさせない1タッチ2タッチでのパスが次々に回って行く様子を見ると、根本的にアーセナルと似ている部分は多かったと思う。後は12月の印象とは違って、チャンスがあれば一気に縦=ゴールに向かって最短距離を進もうとする姿勢もアーセナル的か。

ただし、やっぱりアーセナルはアーセナル。あのチームのやり方を本当の意味でコピーできるチームはそう簡単には現れないだろうなって思う。今回の試合のパチューカも同じだった。根本の部分ではアーセナルと似ていても、些細な違いがある。そして、その些細な違いが大きな違いになってる。今回のパチューカでいえば、それは秩序っていうキーワードで表せるようなものだったように感じる。

そもそも常にトライアングルの形成を念頭に置いてるっていう時点で、意志の統一が図りやすいのがパチューカの攻撃の特徴だと思う。ベースとなるトライアングル形成を念頭に置けば、誰が入っても(っていうのは極端だけど)似たような形は作り出せるはず。それに、そのトライアングル形成も参加メンバーが固定化されてるイメージが強かった。個々の役割分担がある程度できてるというか。ここがアーセナルとの最大の違いって言えると思う。

基本的にサイドに起点を作りパスを回していくパチューカ。3バックなのにも関わらずサイドに数的優位を作れるあたりが3‐3‐3‐1の素晴らしさか。そのサイドのうち、右サイドの方がより深い位置まで入り込むシーンが作られた印象。この部分に個々の役割分担っていうのが表れてる。以下の図を使いつつ、説明してみたい。

<パチューカ:3-3-3-1>
―――レイ――――
アル―カバ―ヒメ―
ロド―コレ―カブ―
ピン―マン―ロぺ―

ポイントとなるのはカバジェロの動き。このカバジェロはこのチームの要の存在。何よりも運動量がすさまじい。攻撃ではボランチからFWの位置までのいろいろな場所に顔を出して、常にボールを受けられるようなギャップに入り込む。ボールを受けにかなり低い位置まで戻ってくることも多かった(その後、前線まで出て行く)。さらに、守備においても中盤での相手ボール保持者に対するチェック、DFライン前に入ってのフィルターとしての役割、サイドの助けと多くの仕事を負担。それでも試合終了間際の時間でもゴール前まで飛び出すシーンが多かったのが特筆事項だった。

そのカバジェロ。攻撃の組み立てにおいては、右サイドの助けに出ることが多かったと思う。これによって右サイドのトライアングル形成のベースは確定。WBカブレラとWGヒメネスにカバジェロを加えた3枚が追い抜く動き(ローマのジュリが言うところの三つ編みの動き)を繰り返しながら、深い位置まで入り込むシーンが目立ったと思う。

じゃあ、左サイドはどうなってるかってこと。トライアングル形成の軸となるのは右サイドと同じくWBとWG、つまりロドリゲスとアルバレス。ただし、ここにカバジェロはあまり絡んでこない。というわけで、残った1枚のピースはコレアとかピントが務めるシーンが多かったように思う。どちらにしても低めの選手が1ピースとなるわけで、結果としてトライアングルの関係性で深い位置まで攻め込むシーンは右サイドほど多くは作れなかった印象。

コレアは典型的なバランサーの選手。影の軸と言ってもいい。カバジェロが高め右寄りでプレーしている以上、コレアは低め左寄りでプレーすることが多くなった。もちろん、バランスを見ながらのプレーだから常にその場所にいすわるわけではないけど。ピントに関しては高い位置に入り込んでのプレーが目立った。相手が1トップ気味のシステムだったことで、最終ラインが1枚余ってたのも関係してたかもしれない。後で書くように、相手の守備が恐ろしく酷かった時間は最終ラインからの攻撃参加なりドリブルでの持ち上がりに対して全くプレッシャーがかかってなかったから、かなり目立つ形だったように思う。

ちなみにパチューカは最終ラインの選手も攻撃に能動的に絡んでくるってのが1つの特徴だと思った。左のピントはここまで書いてきたように、高い位置に入り込んで前線との関係性を作るシーンが目立った。逆サイドのロペスにしてもピントほどの攻撃参加は見られないとはいえ、CB的に真ん中に寄るんじゃなくて、サイドに出ることで前との関係性を作る動きが見られたと思う。加えて、真ん中のマンスールは中長距離のボールの供給役として機能してた印象。

ここまで見てきたように、全体としてある程度の役割分担ができてたパチューカ。最終ラインはボールの供給と前の助け。バランサーとしてのコレア、攻撃の経由点としてのカバジェロ。さらにサイドの軸となるWB&WG。レイに関してもあまり他の選手の領域に入り込まずに、ゲッターとしての役割に重点を置く意図が見られた。だから、基本的に真ん中からは動かないプレースタイルだったと思う。そういえば、パチューカが採用してる3-3-3-1はそれぞれの役割が明確で混乱が起きにくいっていうメリットもある。そういう意味でも、誰が入っても一定の質のサッカーができる形かもしれない。

というわけで、パチューカの攻撃のやり方は秩序が保たれてる。全体としてそれぞれに一定の役割を付与してるわけだし、システム的にも整理されてる。さらに、局面局面を見るとトライアングルの形成ってことで意思が統一されてる。全くアーセナルとは違ってるってのがよく分かると思う。何しろアーセナルはいい意味でも悪い意味も秩序がない。誰でも組み立てに参加するし、誰でもゲッターになる。ポジションだけではなく役割も流動的。混沌としてるって言ってもいい。その中で素晴らしい内容のサッカーを見せてくれてるのは事実だけど、味方にとっても難しい内容であるのがこの形。ある程度メンバー固定で戦わないと、全く別チームになってしまう。エドゥアルド抜け後の不調がそれを物語ってる。

さて、本題に戻る。立ち上がりのパチューカはやりたいサッカーをやりたいようにやってたと思う。完全に相手を翻弄してた。1つのサイドで基本的トライアングルを用いたパス交換をしつつ、相手が寄ってきたら逆サイドへっていう展開が面白いように決まってた。逆サイドには本当に広大なスペースが用意されてるってシーンが目立ったと思う。今や死語になった、接近→展開→連続が文字どおりに機能していたのが、この時間のパチューカ。

12月のときにはあまりにもショートパスにこだわる(今回もゴールキックを全てつないでいたところを見ると、ショートパス重視は変わらなかったけど)姿勢が見られたパチューカだけど、一発のサイドチェンジを効果的に織り交ぜることによって、ショートパスをより活かすことができてた印象。肝心のショートパスも1タッチ2タッチで面白いように回って行った。

パチューカの攻撃の質の高さが要因としてあったのは当たり前だけど、上にも書いたようにこの要因は相手の守備のあまりの酷さにあったように思う。立ち上がりのサプリサは全く守備をしなかった。文字どおりに全く守備をしなかったと思う。まず、守備のスタートが定まらない。敵陣の相手は完全にフリー。この時点ではまだいい。ショートパス重視の相手を自陣で待ち構えてるんだなって可能性もあった。でも、相手が自陣に入ってきても一向に守備が始まらない。上に書いたピントの例でいえば、ピントがドリブルで敵陣のある程度の場所までフリーで持ちあがれるシーンが散見された。

そうやって守備のスタートが切れないわけだから、守備の狙いどころが定まらない。よって、ボールに対するチェックがすさまじくルーズ。本当に見てるだけっていう選手の集まりだったと思う。このことがそもそも守備のスタートが定まらない状況を生み出してるわけだけど。そんな状態のサプリサがパチューカの1タッチ2タッチに対して何か対応できるはずもなく。これも見てるだけ。なんとなくボールサイドに行ってみたら、逆サイドの展開されるだけ。ちょっとでも動いた相手には誰もついて行かず。よってゴール近く(バイタルエリア)でも相手選手が浮いてる状況。この時間のサプリサには守備の根拠というものが一切なかった。

こういう状況のサプリサだから当たり前のように前半3分にあっさりと失点。この失点で、とりあえず守備という言葉を思い出したサプリサ。とりあえずの守備が行われるようになったと思う。それは相手が縦に1つ入れたところで守備を開始するってもの。1つ縦に入ってきたところでしっかりとチェックをして、その後の展開をスムーズに行かせないってもの。受身の守備ではあるけど、パチューカの地上からの守備意識が高いことを考えれば相性は良さそうだった。待ってれば必ず入ってくるに違いないわけだから。

ただ、この守備もいまいち機能しない。確かに真ん中→真ん中みたいに単純なパスが入ってきたときにはしっかりと対応するようになった。でも、相手が低い位置で左右の展開を織り交ぜてから、縦にボールを供給したりすると、一瞬にして守備の根拠がなくなる。相手が1つ縦に入ってきたらスタートって言うせっかくの守備の根拠を失って、結局はルーズな守備に逆戻り。相手のパス回しをスタートさせたら、この状況のサプリサでは押さえる手段はなかった。

というわけで、この時点ではパチューカの圧勝まであると思わされる試合展開。でも、その流れが徐々に変わっていく。それはサプリサのFWが徐々に守備意識を持ち始めたことによるものだった。これが後ろの守備意識も引っ張り出し、いつの間にかサプリサの守備の質が最初の状況を考えたらあり得ないほどに高まったと思う。この時点でパチューカは思ったような攻撃が繰り出せない状況に陥ったと思う。むしろ、守備の時間の方が長くなったかもしれない。ただし、後で書くようにサプリサの攻撃の質が高くなかったから、サプリサのペースかって言われれば微妙だけど。

とにかく、そのサプリサの守備の改善。長らくどこにいるんだから分からなかったパチューカのFW(守備時にはトップ下を押し出してたから、2トップぽい形)。そのパチューカの2トップがだんだんと相手最終ラインに対してプレッシャーをかけるようになっていった。それまでは自由にボールを扱えてたパチューカの最終ラインだけど、相手のプレッシャーによってそれまでのように何でもやりたい放題の状況ではいられなくなった。その中で低い位置で左右に揺さぶるような展開が明らかに少なくなっていったと思う。

これによって相手の縦に1つ入ったらスタートするっていう守備の根拠が確固たるものとして確立されることとなった。揺さぶられて、ギャップを作られて、隙間から縦に入られてたのがそれまで。実質的にはスカスカだったと言ってもいい攻撃のスタートが網として機能するようになったと思う。むしろ、FWの協力によって相手の選択肢が限定されたことで、考えられないほどの機能性が高まった。それまではどこからどう出てくるのか分からない状況で闇雲に狙ってたわけだから。

そういう前の協力に、基本的な守備意識の高まりも加えて、中盤でのボールへのアプローチに厳しさが増した。立ち上がりの見てるだけの守備からは考えられないほど、しっかりと距離を詰めた厳しいチェックが多くなったと思う。結果としてそれまではスタートとしても機能しなかった縦へ1つ入ってきたところの守備が、今やゴール=守備の狙いどころとして機能するようになって行った。

これはパチューカとしては勘弁してもらいたい状況だったと思う。ボールに対してトライアングルを作るってのがパチューカの攻撃の基本方針だってのは上にも書いたとおり。そして、これはあくまでもボールに対してだってこと。ボールがなければ動きが生まれない。そして、ボールがなく動きが生まれなければ得意のパス回しが始まらない。だから、スタートのところを押さえられて、前線にうまくボールが供給できなくなると停滞感が生まれる。だからと言って一発で蹴るっていう選択肢はない。相手の守備は前へ前へと意識を高めて、最終ラインも高い位置に上がってきてるのに。こんな一連の流れもどこかで聞いたことがある話。

とにかく一気に攻撃に停滞感が生まれたパチューカ。対するサプリサは中盤でボールを引っ掛けまくりの展開。トップが相手の最終ラインに対して積極的にプレッシャーをかけ相手の選択肢を限定し、1つ縦に入ってきたところを中盤が狙う。そこで中盤の選手は忠実に厳しいチェックを繰り返し、相手を足止めしておいて、パチューカ得意のトライアングルが形成されるよりも素早く数的優位を作って囲い込む。今や守備の質が最高潮に達したサプリサ。最初からなんでできなかったのか。ちなみに、後半の立ち上がりもまたしても守備のルーズさが目立ってた。

とにかく守備の質が高まったことで、攻撃の方に比重を置くことができたサプリサ。でも、上にも書いたように攻撃の質が高くなかったことによって完全にサプリサに流れが傾くことはなかったと思う。サプリサの守備×パチューカの攻撃の視点では明らかにサプリサが上回ったはずなのに。ある意味では守り合いの試合展開になったとも言えるかもしれない。

そのサプリサの攻撃。守備が悪かった時間帯はトップ任せの一発のボールが多かった。ここに含まれてたベース、つまりトップに向けての意識と、一発のボールに見られる大雑把なやり方はサプリサの攻撃の特徴と言えるかもしれない。守備の質が高まり、高い位置でボールを奪えるようになったサプリサは攻撃にかけられる人数も増えた。それとともに地上パスを主体とした攻撃の組み立てへと移行していった印象。ただし、トップへの意識は変わらず。パス回しの中で必ずトップ(またはトップ下)を経由させようとする。相手としては真ん中で待ってればいい状況だった。さらに悪いことに、パスが常に足元足元を回って行った。だから、パスで崩しきるってのは難しかったと思う。ここで登場する大雑把な攻撃。相手のブロックを崩し切らずに、ミドル・ロングシュートで攻撃を終えるシーンが多くなった。シュートの質自体は高かったけど、やっぱり崩し切る形よりも確率が低いのは否めない。

というわけで、パチューカの方は非常に守りやすい展開に。12月の印象ではボールへの意識が高く、最前線から追いかけていくイメージがあったパチューカの守備だけど、今回は微妙に趣が違ってた。少なくとも最前線から追いかけまわすような積極的な守備は見られなかったと思う。どちらかというと、ブロックを作って受ける形。ただし、そのブロック内に入ってきたボールに対しての意識は高かったと思う。

3‐4‐3のブロックを作って待ち構えるパチューカの守備。そのブロックに対して、上にも書いたように馬鹿正直とも言えるようなサプリサのパスが入ってくる。つまり、止まった選手(または下がりながら受ける選手)の足元に入るボール。さらにトップを経由する攻撃。ボールへの意識が高いパチューカ守備陣は1つ1つの場所に対して忠実にチェックを繰り返す。しっかりと距離を詰めて、相手に前を向かせないような守備が見られたと思う。

しかも、自分たちから積極的に制限をかけていく守備はしなくても相手の攻撃の選択肢は勝手に制限がされてた。つまり、トップを経由させるってこと。その場所に対しては入りどころを狙った、より厳しい対応が目立った。相手のトップのゴメスの足元への収まりが安定しなかったこともあって、相手の攻撃はその場所で分断されることが多かったと思う。少なくとも組み立ての場所に限れば、ゴメスに仕事を全くさせなかったと言ってもいい。

ここまでの内容からいえば順当ってことになるんだろうけどパチューカが優勝。今年の12月にはリベンジにやってくる。この試合での内容が出せれば、去年みたいなことはないと思うけど。去年の内容が本当に緊張によって自分たちのパフォーマンスを見せられなかったんだとしたら、2回目の今年は一味違うかも。メンバーはほとんど変わっていないようだし。精神面からも成熟面からも今年は期待したい。ところで、全然話は違うけどサプリサのGKナバスの反応は素晴らしかった。至近距離止めまくり、ギリギリのシュートもはじきまくり。若いようだし、もしかして有名選手になるかもしれない。
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2008-05-02 Fri 19:02
マンU×バルサ
<マンU:4-4-2>
FW:テベス-Cロナウド
MF:パク・チソン-スコールズ-キャリック-ナニ
DF:エブラ-ブラウン-ファーディナンド-ハーグリーブス
GK:ファン・デル・サール

<バルサ:4-3-3>
FW:イニエスタ-エトー-メッシ
MF:シャビ-デコ、ヤヤ・トゥーレ
DF:アビダル-ミリート-プジョール-ザンブロッタ
GK:Vバルデス

マンUのシステムは4‐4‐2。前回から変化したのはルーニーとナニのところだけ。これもルーニーのケガのため。おそらく、ルーニーが無事ならば前回と同じメンバーになったはず。前回の4‐4‐2はアウェー用だと思ってた。理由はそのときに書いたとおり、絶対的に守備を安定させる4‐4(6‐2)ベタ引きブロックと前線に攻撃を任せる縦へのスピードがある2トップ(やり方的に4‐4‐2の方が縦急ぎになるマンUだから)の組み合わせのため。こんな想像も、今回の試合でマンUが同じシステムを使ってきた時点であっさりと外れってことに。マンUの主要システムは4‐4‐2なのか、4‐3‐3なのか。その使い分けは何基準なのか。謎。

ただし、同じ4‐4‐2とはいっても、その目指すものは明らかに前回とは異なってた。ホームで前回の試合のような6‐2超ベタ引きブロックを作るなんてことは許されないだろうから、当たり前と言えば当たり前。ローマ戦のときもアウェーでは6‐3ブロック、ホームでは普通のブロックで戦ってたし。とはいっても、今回のマンUのやり方の転換はすさまじかった。前回とは真逆と言っても過言ではない。ほぼ同じメンバーで全く反対のやり方をあっさりと採ってきたマンU。どんだけ戦術的柔軟性を備えてるんだって話。

そのマンUの前回とは真逆の意識は立ち上がりから早速見られる。立ち上がりの数分は全く持ってボールが落ち着かない状況が生まれたと思う。その1つの理由はいつものこと。前線から追いかけるバルサ。追いかけられるともろいマンU。最初のプレーからパスミス。早速のピンチもパスミスから。結果としてバルサが最初に攻め込む流れ。最初に攻めたとすれば、切り替え抜群のバルサの守備が高めで機能する。よってマンUは守備から攻撃への切り替えがうまく行かない。ボールが落ち着かない。これは前回の試合でも見られた状況。

でも、これだけの理由では全体としてボールが落ち着かない状況は生まれない。この時点ではボールが落ち着いてないのはマンUだけ。バルサはいつものように普通にパスを回してればいいだけの話。まさにそれが前回の試合だったわけだし。でも、今回はバルサの方もボールを落ち着かせることができなった。その要因こそがマンUの守備の180°大転換にあったと思う。

前回の試合でのマンUは中盤での1つ1つのチェックがとにかくルーズ。飛び込んだら外されるっていう意識があっただろうし、何よりもその場所が守備の勝負どころではなかったってのが大きい。中盤ではいくらでも自由にやらせてあげるよ、でも最後はやらせないよっていう開き直り守備を採用した前回のマンUだった。よって、個々の選手が重要視するのは自分の前にあるボールへの守備じゃない。どれだけ後ろと一体感を保って、ラストブロックを形成するかってことが重要になる。だから、自分の前に対して本気で守備をするなんて選手は皆無だったって言ってもいい。最後の最後の場所はのぞいて。

対して、今回のマンUは1つ1つのチェックの意識がとんでもなく高まってた。自分の前のボールに対して超積極的に守備に行く。それは前回の試合では完全に守備を放棄した中盤でも例外ではなかった。1つ1つを本当に厳しく行くと、飛び込んで外されるなんて心配もなくなる。なぜなら相手にはこれっぽっちも仕事をさせないんだから。ボール保持者に一気にプレッシャーをかけ、一気に距離を詰めることでスペースを与えないような守備を行った。そういう守備を1人1人が忠実に繰り返すことによって、前回よりも明らかに前の段階で守備が効くようになってたと思う。

これに驚いたバルサ。バルサの個々の技術力、周囲との連動性を発揮すれば抜け出せそうだったマンUの1つ1つのプレッシャーをまともに食らうことになってしまった。前回のルーズなマンUの守備から考えたら、あり得ないほどの大転換。そんなの聞いてないよって話だったかもしれない。結果としてバルサはパスが思うようにつながらず、攻撃が分断しまくり。双方が双方の守備に負けて攻撃のリズムを作れないっていう立ち上がりの流れになったと思う。

それでもバルサはバルサ。すぐにとマンUの守備に適応して行った。最初はびっくりしてパスがつながらなかったけど、冷静になってみれば普通ににパスをつなげるってことに気づいた。ただし、さすがにパス回しの質は前回とは異なってたと思う。マンUが全く違う守備のやり方を採ってるんだから、それに合わせてバルサも攻撃のやり方を変えたってところか。

前回のバルサはとってもゆったりとパスを回した。相手がプレッシャーをかけてこなかったから、ある程度は余裕を持ってボールを扱えるってのもあった。同時にベタ引きの相手をブロックからおびき出すっていう意味もあったと思う。パス回しの中でタメを作り、相手を引っ張り出すっていうステップが入ってたと思う。そうやってこじ開けた次のギャップの選手が入り込み、そこをつないで行くっていうようなパス回し。急がないことで逆に相手の狙いどころを外していくようなパス回し。これは前回、アーセナルのダイレクトダイレクトのパス回しによる狙いどころ外しと比較したとおり。

でも、今回のバルサにはそんな余裕はなかった。1人が保持時間を伸ばしたら、マンUの1つ1つの忠実な守備の餌食になってしまう。相手の守備にギャップをこじ開けるためのタメが自分の選択肢を0にすることにつながってしまったら、元も子もない。よって、1人1人の保持時間は前回と比べると明らかに短くなった。メッシのドリブルは除いて。少ないタッチで次々に局面を変えていくようなパス回しにシフトしたと思う。ただし、それが悪い影響をもたらすことになるわけではないけど、それは後々の話。

パス回しの質は異なったとしても攻撃面を見る限り、バルサはバルサだった。ショートショートでつないでいくこと、そのパス回しに織り交ぜられる個人技。攻撃の意識にも変化なし。アウェーだからと言って大きな変化が見られないのはバルサらしい。ただし、守備面を見てみるとアウェーの戦い方をしようとしてるのかなって思った。マンUみたいにあきらめ超ベタ引きブロック形成なるなんていう極端な形ではないけど、今回のバルサの守備には微妙な変化が見られたのは事実。

守備面で言えば、上にも書いたように攻撃後の切り替えは前回と変わらずに質の高いものだった。ただし、ブロックをセットした後の守備のところでちょっと違いが見られた気がする。それは守備のスタートのところ。前回はトップのエトーが制限なく深い位置の相手最終ラインのボールにもプレッシャーをかけていった。それに後ろが連動して、ブロックから出てきて前へ前への守備が行われていたと思う。それに対して、今回の試合では受ける意識が強くなっていた気がする。エトーはあまり前を追いかけまわさず、エトーが追いかけたとしても後ろが前回のように前へ前へと出てくることは少なかった。守備の積極性を弱めて、ブロックのバランスを重視する。バルサなりのささやかなアウェーの意識か。

ただし、このバルサのささやかなアウェーの意識が大きな意味を持つこととなった。前回は高い位置までボールを持ちあがれなかったマンUの最終ライン。というか、余裕を持ってボールを持つことさえも満足にできなかった。それが、バルサの前線の守備意識が弱まった今回。最終ラインが高めの位置までボールを回しながら出てこれるようになったし、何よりもボール保持自体に余裕が生まることとなった。

これはマンUが低い位置のパス回しに人数をかける必要がなくなったことを意味する。厳しいプレッシャーがかけられれば、逃げ道は多く用意しておかなければ不安。でも、今回の試合では逃げ道は少なくてもよくなった。低い位置のパス回しはCB2枚とGKファン・デル・サールが行う。相手が機を見て前の守備意識を高めてきたときには、キャリックも参加することがあったけど。どちらにしても2つのトライアングルだけで十分な人数だったと言ってもいい。ちなみに、今回の試合でキャリックは攻撃にほとんど参加せず。後で書くようにSBが高い位置まで上がったウラのケアとここに書いた低い位置のパス回しの逃げ道として機能してた。

2枚のCBとGKで低い位置のパス回しを担当する。これはどこかで見た形。それは前のリバプール戦。あの試合は相手のトップが守備を免除されてるトーレスだったこともあって、キャリックが低い位置でのパス回しに参加することもあまり多くなかったわけだけど。その微妙な違いはいいとして、この試合での大きなポイントは何だったか。それはマンUの両SBが高い位置に積極的に入って行くっていうこと。結果としてリバプールの4‐2‐3‐1を4‐4‐1‐1にさせてしまったってのは、その時にも書いたとおり。つまり、簡単に言えば低い位置の2+1のパス回しによってサイドの攻撃が活発化したってこと。

ここで思い出すのは前回のバルサ戦の記事の最後のところ。そこではサイドの攻防が1つのポイントになるって書いたはず。バルサのサイドの守備は特殊。相手がサイドに数的優位を作った時には、OMFが開いて対応。WGは戻ってこない。だから、マンUがサイドに重点を置いてくると相手はとてつもなく広い横幅を3人でケアするイレギュラーな状況が生まれるってこと。マンUがこの状況を作り出せるかどうか、それが今回の試合のポイントだったわけ。

そして、ここまで書いてきたとおりマンUはSBを高い位置に上げてきた。まさにの展開。特に左サイドのエブラは超積極的に攻撃参加。4‐4‐2の形でエブラがこれだけ積極的に攻撃に絡むのは、久々に見た気がする。後ろのケアは上にも書いたようにキャリック。ハーグリーブスも上がったときにはスコールズが残ってバランスを取る形に。とにかく、SBを積極的に攻撃に上げたことによって試合前に考えてたポイントをマンUが有効活用する下地はできた。

そして、思惑通りの展開が生まれる。攻撃参加をしたエブラが浮きまくり。バルサの方は誰がエブラを見るのかはっきりさせられなかった。デコが戻るにしたって、後ろから追いかける形になってしまうわけだから効果的ではない。だから、エブラは高い位置までフリーでボールを持ちあがるシーンが多発。それはまずいってことで誰かがエブラに対応すれば、別の場所が空いてくる。それじゃなくても3枚で中盤の横幅を稼ぐイレギュラーな状況のバルサ。加えて後手後手の対応になってしまったわけで、結果としてマンUが楽に深い位置まで入り込むシーンが多くなる。困ったバルサはメッシ、イニエスタが深い位置まで戻ってくる、今度こそ(バルサにとっては)イレギュラーな状況が見られ始める。こうなると、完全にマンUペースだって言ってもいい流れになったと思う。

加えて、ここまで書いてきたとおり構造上薄くなってるバルサの中盤に対してマンUが別の角度からのアプローチをかけ始める。それは前線の流動性を高めるってやり方。早い話がマンUの変則4トップ。空いているトップ下の場所の出入りを加えながら、4人の関係性をグルグルと入れ替えてく。同じサイドに複数の選手をかぶせてみたり、トップの場所の選手をいなくさせてみたり。ギャップギャップを見つけては好きなように動き回るマンUの前線。中盤の人数が足りてない、しかもサイドのケアまでをしなければならないバルサの守備陣は間間に入り込まれて、それを捕まえ切れない状況。

そして、その変則4トップにエブラの攻撃参加、スコールズの攻撃参加が有機的に絡んで来たのが今回のマンUだった。エブラにサイドを任せて中に入ってくるパク・チソン、トップの場所を空けておいて最前線まで飛び出してくるスコールズみたいな形。得点シーンにもつながったように、今回の試合ではスコールズの攻撃参加が活発だったのも特徴的。前の動きを尊重しつつ、機を見た攻撃参加を繰り返した。低い位置のパス回しに人数をかけなくていいっていう効果がここにも出ていたと思う。

久々にマンUの変則4トップが効果的に機能してるのを見た気がする。4‐3‐3を最近は多く使ってたのもあるけど、4‐4‐2でもそれほど効果的に機能してたとは言えない。前回のバルサ戦がその最たる状況なわけで。じゃあ、どういうときに変則4トップが機能して、どういうときに機能しないのか。そのポイントは守備にあると思う。そして、守備の安定性が増せば増すほど変則4トップは機能しなくなるっていう状況だって言える。

変則4トップは4トップというからにはFWが4人みたいな形が作られる。その4人が連動して動きまわるのがマンUの変則4トップである以上、4人は近い関係性を保たなければならない。ついでに、4人をFWと捉える以上、守備の負担も大きくはさせたくない。つまり、守備になった時に4‐4‐2の守備ブロックでは理想的ではない。サイドに開いた2枚とトップに残った2枚の間に距離が開きすぎてしまうし、サイドの選手は守備の負担が大きくなってしまう。4トップである以上、重点に置くのは攻撃。だから、6バックなんて論外。

つまり、4トップが機能してるときのマンUのシステムは文字どおりに4‐2‐4。そして、そのときにはラストの守備ブロックが4‐2のみで作られることとなった。嘘みたいな話だけど、このことについてはこれまでにも何度も書いてきたとおり。じゃあ、その4‐2‐4っていう変な守備のやり方でどうやってリーグ最少失点を維持してきたのかって話になってくる。

1つは単純。CBがとーっても強いってこと。後は4‐2のときには1つ前のハーグリーブスがかなり頑張ってたし。要するにラストの4‐2ブロックの個々の力で防いでたってこと。後は前線の4人の間接的な貢献。前にルーニー、テベス、ギグス、Cロナウドが残ってたりしたら、相手だって怖くて攻撃に人数をかけられなくなってしまう。マンUが4‐2でも守りきれるレベルぐらいしか、相手は攻撃に人数をかけられないっていう状況。そういう意味では全員で守ってたとも言えなくはない。

ただ、こういうこと以上に大きいのが前線の4人の守備の頑張りだった。後ろは4‐2だけに任せる前線の変則4トップも自分の前に対しては頑張って守備をするってのが、4‐2‐4が機能してるときのマンUの守備だった。後ろの人数がきつい状況でも、前が制限をかけてくれるから、うまく要所要所で狙えるってのがマンUの4‐2‐4が機能してるときの守備だった。後ろには全然戻らないくせに、解説者に「前線の選手の守備の頑張りが固い守備を支えてる」って言わしめるレベルに。

でも、残念ながらこの前線の選手たちは気まぐれだった。がんばって前から追いかけて見たり、追いかけなかったり。それが時間とともに追いかけないことがスターンダードとなって行く。同時に攻撃がうまく回らなくなった(それが気まぐれな前線の守備意識を削いだのかもしれない)マンUは結果的に4‐4‐2から4‐3‐3への移行というか、さらに言えばチーム全体としての意識の変革につながっていったと思う。話がずれるけど、それについて触れておきたい。

様子がおかしくなったマンUの状況はここでも何度か書いてきたことがある。要するに縦に急ぎまくるってのがその状況。最初は相手の前線からのプレッシャーに負けた影響かと思ったけど、どうもそうではなく。とにかく前線の4トップに攻撃を任せてしまえのやり方が目立っていた。この攻撃の様子のおかしさが、攻守に渡っていろいろと影響をもたらすことになった。

まず、攻撃への影響。縦に急ぐマンUは上にも書いたように、前線の4トップに攻撃を任せきりになった。ボールを持ったらすぐに前に蹴ってしまう状況ではSBもCMFもなかなか前線に追いつけなかったと思う。上で4‐4‐2でのエブラの攻撃参加を見たのは久々だったってのは、そういうことがあったから。そして、攻撃を任された前線がいくら個の能力が高い前線の4枚でも、その4枚だけじゃいくらなんでも攻めるのは難しい。前がはがれたマンUは有機的な連動性を図るのが難しくなったと思う。そもそも、一発のパスが多くなったことで前線に効果的にボールがつながらないシーンが多発した。

そして、これがマンUの守備に大きな影響をもたらすことになった。アーセナルなんかもそうだけど、マンUは攻撃の切り替えでの守備を1つのポイントになってる。切り替えで厳しい守備を行って、自分たちのボール保持を続けるやり方。ただし、これは前線に人数が入ってるからこそできる形。前線に厚みがなければ、切り替えでボールを奪うほどの効果的な守備をするのは難しいわけだから。その攻撃=切り替えでの守備の厚みが失われたのが縦急ぎのマンUだった。

これはかなり痛い。上では4‐2で守備をしてきたって書いたマンUだけど、攻撃の時間が長いこと、さらにその攻撃からの切り替えで守備ができることで、実質的に4‐2で守備をしなければならないことはそれほど多くなかったってのが本当のところ。それに対して、縦急ぎのマンUは攻撃の時間が短い。保持せずに蹴るから。そして、ここまで書いてきたとおり切り替えの守備も効かない。必然的に4‐2‐4で守る時間が長くなった。

そして、この前線の4トップが自分の前に対する守備をあまりしなくなった。これは上にも書いたとおり。攻撃でいい形を作れなかったから、守備もあんまり頑張りたくなくなったのか。とにかく、本当に本当の意味の4‐2で守ることが多くなったのが悪い時期のマンU。さすがにこの状況はまずいでしょっていう空気が漂い始める。

それに対して、4‐4‐2でしっかりと4‐4‐2の守備ブロックを作ろうっていう意識が生まれてきたと思う。守備ブロックは4‐4もしくは4‐4で作ることでしっかりと作ることで、少なくとも守備ブロックは安定させようっていう意図を見せ始めた。この辺からパク・チソンが頻繁に起用されるようになる。でも、ここで問題が起こった。忘れてはいけないのはマンUが縦を急いでるってこと。で、守備の人数を増やしたことによって攻撃の人数が減ってるってこと。だから、攻撃が全くと言ってもいいほどいい形で回らなくなってしまった。

ここで登場したのが4‐3‐3(4‐5‐1)。守備面でいえば、4‐3の安定したブロックができることで(極端なときには4‐5)問題をクリア。攻撃でも中盤の枚数を増やすことによって、なんでもかんでも前線に蹴ってしまうやり方にメスを入れていく。中盤の真ん中にアンデルソン&キャリック&スコールズっていうつなげる選手たちを置いたのにも意味があったはず。これが思惑通りに機能して、調子を取り戻していったマンUだった。

そうやって、4‐3‐3を使うようになった後のマンUは4‐4‐2を利用する時にも4‐2‐4ではなく、本来的な意味での4‐4‐2を使うことが多くなったと思う。それは前回のバルサ戦が示す通り。最近、なぜか現実主義的になったマンU。ルーニーをサイドに置いてCロナウドをトップに置くってのもその1つ。守備の安定をまず第一に考える現実主義マンUにおいて、4‐2‐4なんてのはもはやあり得ない形なのかもしれない。見ていない格下相手の試合とかでは、まだ使ってるのかもしれないけど。

さて、この話の脱線は次のテーマに向けての前振り。何がいいたいかって言うと、今回のマンUは久々に4‐2‐4を採用してきたんじゃないかってこと。しかも、様子がおかしくなる前の機能性が高い4‐2‐4。攻撃においてはすでに触れたとおり。エブラ、スコールズが積極的に攻撃に絡んできたことからも少なくとも縦急ぎの前線4トップ任せではないってことは明らか。そして、守備面もいいときの4‐2‐4に戻ってきた印象。というか、それにプラスアルファした形で行われてた。攻守にわたって、まるで去年末のマンUの試合を見ているかのようだった。

さて、1つ1つの守備の意識が高まってたってのは一番最初に書いたとおり。そして、これがピッチ全体で例外なく行われたのが今回のマンUの守備だった。要するに前線の選手たちもしっかりと守備を行ったってこと。これによって4トップの前への守備意識が復活。Cロナウドもトップに置かれた時では今まで見たことのないレベルで相手最終ラインを追いかけまわした。それをスタートとして、SMFの2枚もブロックから出てきて前に対する守備を積極的に行ってた印象。

このトップの前への意識によってヤヤ・トゥーレが浮くシーンがいくつか見られたのは事実。前回のようにCロナウドが守備を免除され、テベスがヤヤ・トゥーレにつくって言う絶対的な関係性が作られなかったから。というか守備組織を作った時の配置も、攻撃からの流れで流動的になってるのが今回のマンUだった。その中でCロナウドが前に追いかけ、それに引っ張られてテベスも前を追いかけてヤヤ・トゥーレが浮くってシーンができてしまった。ただし、完全に浮かせてしまったのは立ち上がりだけで、その後は2トップが前に引っ張り出されてもCMFがうまく見てた印象。FWが戻るんじゃなくて、CMFが出て行くっていうあたりに守備の積極性が見られる。

そして、この4トップの前に対する守備意識がバルサの攻撃を停滞させる要因となった。バルサの組み立て方の基本は前回と同じ。OMFが降りてきて、相手のCMFを引っ張り出し、バイタルをこじ開けようとするもの。でも、ここで思い出さなければならないことがある。相手のCMFをバルサの降りて行ったOMFが引っ張り出したとき、攻撃のスタートになるのは最終ラインの選手だってこと。なぜならOMFには相手がついてきて、浮いてる状況ではないから。

そして、このために重要なのは最終ラインが高い位置までボールを持ちあがれるってこと。つまり、CBが前線へのボールの供給役となるためには、前線との距離が近くなければならないってこと。前回の試合ではこれが実現した。なぜなら、マンUはCロナウドの守備が免除してたから。全くプレッシャーなくバルサのCBはボールを持ちあがれた。そのときにCロナウドはもう少し守備をすればって思ったのはその時に書いたとおり。

そのCロナウドが今回は期待以上の守備。前から追いかけることでバルサのCBを深い位置に釘づけにした。つまり、バルサのCBは攻撃のスタートとしては機能できない状況が生まれたって言える。同時にOMFが降りてきてしまうバルサ。前後の距離が遠くて前線に効果的にボールが供給できないっていう悪いときのバルサパターンに陥った。

それでも打開点がなかったわけではない。全体のブロックを前に向けているマンUの最終ラインのウラにはスペースがあった。前回の試合では考えられないほどに。バルサは仕方がないので、そのウラを単純に狙うボールを多くして行ったと思う。そして、そこに抜け出すのがエトーとメッシ。この2人を前に走らせたら後ろは追いつけるはずもなく。完全に前線がはがれた状況。しかも、ウラへのボールは微妙にズレ、うまくマンUの最終ラインに対応されてしまっているのが今回のバルサだった。

同じようなことは守備後の流れでも言える。相手の守備が前から来るっていう意識があるバルサ。この意識が失点につながるザンブロッタの不用意なパスにもあらわれてた。そして、この意識のもと、最初の方で書いたようなスピーディーバルサが登場。チーム全体の押し上げを待つよりも、シンプルに縦にボールを送り込もうとする。そして、そうやって前線にボールを供給してしまうとエトーとメッシのスピードには後ろは追いつけない。メッシの50m独走ドリブル突破も個人としては素晴らしいけど、チームとしては残念な形。全体として攻撃に厚みが感じられなかったのが今回のバルサの攻撃だった。マンUが前から来てる時間は特に。SBの攻撃参加も少なかったように思う。

そういうわけでマンUのペースになりそうだった試合展開。少なくとも得点後しばらくはマンUの変則4トップが機能して、攻守にわたってバルサの上に行ってたと言ってもいい内容。ただし、その変則4トップを機能させていた前線の守備意識が突如として消え去る。Cロナウドは前への守備をやめ、それに伴って他の3人も前への守備ができなくなっていく。ときたま、テベスが頑張ったりするんだけど。どちらにしても、守備のスタートが効果的に決まらなくなったから全体として前での守備ができなくなるのは仕方ない。この辺の気まぐれ性もマンUらしいと言えばマンUらしい。

ただし、変則4トップ、つまり4‐2‐4にプラスアルファーがあったのが今回のマンU。最近見られた守備意識はしっかりと根付いてた。4‐2‐4のときのマンUは前線の守備をやめても4‐2‐4のままだったってのは上にも書いた通り。でも、今回は4‐2‐4の前線の守備が機能しなくなった途端にしっかりと4‐4‐2への移行が図られた印象。ただし、変則4トップを捨てたことで攻撃はそれまでのようにスムーズにとは行かなくなったわけだけど。

バルサとしてはやっと自分たちのペースで組み立てができる状況になった。最終ラインも攻撃時には高い位置まで押し上げられるようになった印象。ただ、OMFを下げることで相手のバイタルをこじ開ける作戦はうまく決まらず。マンUは下がった相手OMFをCMFからSMFに受け渡したり、CMFが引っ張り出された後の場所にSMFを下げたりしてしっかりと対応。それに最終ラインを前回のようにベタ引きにしなかったことで、バイタルエリアが変に空いてしまう状況にもならなかった。この辺はちゃんと対応してきた部分。

それでもバルサの攻撃がそれまでよりはうまく回り始めたのに変わりはない。最終ラインを押し上げたことで、全体が前に押し出される。結果として前線での近さが生まれた。それまでは前線のメッシとエトーがはがれて、孤立気味だったことを考えれば大きな進歩。ここでテーマとなったのは、やっと近い関係ができた前線にどうやってボールを供給するかってことになったと思う。バイタルこじあけ作戦が前回のようには決まらなかったし、前線の守備がなくなったとは言っても、前回のようにベタ引きになって中盤を自由にさせてくれるわけではなかった。

そこでバルサが行ったアプローチが横への展開とイニエスタ経由の攻撃だった。横への展開ってのは簡単な話。左右の幅を利用した大きな展開を織り交ぜることで、相手の守備ブロックを横に間延びさせるってこと。そうやって選手と選手の間に隙間を空けておいて、その間を通して前線にボールを供給するって考え方。イニエスタ経由の攻撃は1戦目から合計しても初めて見られた形だったって言えるかも。1戦目ではイニエスタは消え気味だった。攻撃のほぼ全てがメッシを経由して行われたから。そのイニエスタが前半の途中から急に目立ち始める存在に。マンUとしても思ってもみないことだったかも。どちらにしてもイニエスタを捕まえ切れずに、前線の経由点とされてしまうシーンが目立って行った。

この両方のアプローチによってデコが目立ってくる。ここで重要なのはデコがFWの近くで目立ってきたってこと。横の揺さぶりで隙間を空けるにしても、イニエスタを経由させるにしても、デコは低い位置まで戻ってボールを受けに行く必要がない。だから、前で受け手として、ある意味では待ってればよかった。前半の途中から、デコがマンUのブロックの中でプレーする機会が増え、その中でエトー、メッシと関係性を築くシーンも増えていった印象。

さて、こういう形でバルサが盛り返す流れの中で後半がスタート。この後半の開始とともに、マンUの4トップの前への守備意識が復活。気まぐれとしかいいようがない。前半のいい時間帯のように、前線から追いかけまくり。途中で引っ掛けるシーンも多くなった。そして、守備で4トップが復活すれば攻撃の4トップも復活。再び前線の流動的な関係が見られるようになり、長らく守備だけに専念してたエブラも攻撃に参加するシーンを再び増やすことになった。

というわけで、マンUのペースで始まった後半。このままじゃいけないと思ったバルサはイニエスタに代えてアンリを投入。さらに、エトーに代えてボ-ジャンを投入。この交代でシステムが微妙に変更された模様。メッシが真ん中でプレーする機会が多くなってた。ただ、この交代とシステム変更が裏目に出た気がしなくもない。というか、裏目に出たと思う。

まず、前半の経由点だったイニエスタがいなくなった。前半のいい時間のパターン(悪い時間はメッシとエトーの孤立)は、大まかに言えばイニエスタ経由かメッシ経由か。イニエスタをうまく使えるときには中盤でうまくパスが回ることが多く、メッシを経由させるときにはよくも悪くもメッシの個人技頼みって形だったように思う。そして、イニエスタがいなくなった今となってはメッシの個人技頼みの攻撃が圧倒的に増えていく。

そして、システム変更によってメッシは真ん中へ。四方八方から囲まれる場所で個人での突破を期待されたことになる。いくらメッシでも難しいわけで。その中で抜け出すシーンをいくつか作ったのはメッシの素晴らしさ。ブロックの外で受けたメッシが自分で無理やり仕掛けていくってシーンが多いこと多いこと。それでもメッシを攻撃の目標とするバルサ。攻撃が真ん中に偏り、幅を使えない状況が生まれたと思う。

これに対してマンUはシステムを変更。スコールズ→フレッチャー、ナニ→ギグスっていう見た目的には同じポジションの交代によってシステムをいじくった。その前の時点でパク・チソンを真ん中に移動させCロナウドをサイドに出した時点で、真ん中を守備の重点に置いてる様子は見られたわけだけど。とにかく、選手交代によって4‐3‐3にしたマンU。中盤の真ん中をフレッチャー&キャリック&ギグスが固める形。後はコンスタントに守備に参加するパク・チソンとたまに戻って来る(さすがに最後の方は戻ってくるシーンが増えた)Cロナウドがサイド担当。どちらにしても真ん中だけを見たときに4‐2→4‐3とすることで真ん中のメッシを経由させるバルサの攻撃をことごとく跳ね返していった。

というわけでマンUが勝ちあがり。1戦目と2戦目で全くやり方を変えての勝ち上がり。1戦目のベタ引きと2戦目の積極性。でも、今回の試合の後半の守備なんかを見るとやっぱり守ると決めて守れる強さが勝ち上がりを決めたような気がする。決勝はこないだのリーグ戦で守ると決めて守り切れなかったチェルシーが相手。ベタ引きか積極策か。最初の注目はそこになるかもしれない。
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