ただのサッカー好きが、思ったことをただ書くだけ。 (06年終了)

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2008-06-28 Sat 21:37
ロシア×スペイン
<ロシア:4-4-2>
FW:アルシャビン-パブリュチェンコ
MF:ジリヤノフ-セムショフ-サエンコ、セマク
DF:ジルコフ-Vベレズツキー-イグナシェビッチ-アニュコフ
GK:アキンフェエフ

<スペイン:4-4-2>
FW:ビジャ-トーレス
MF:シルバ-シャビ-セナ-イニエスタ
DF:カプデビジャ-マルチェナ-プジョール-セルヒオ・ラモス
GK:カシージャス

前回と同じようにロシアの4‐4‐2は便宜上のシステム。じゃあ、実際のところはどうなってたのかって話だけど、そのバランスの崩れ方も前回と同じだった。左に入ったジリヤノフはセマクと横並びになってボランチの一角的に振舞う。前線はアルシャビンが1つ下がって、セムショフとトップ下が2枚みたいな関係を作る。結果として4‐2‐3‐1の2列目の3が右に寄ったような守備ブロックが完成。中盤真ん中は2‐2で固める一方で、左サイドはスカスカって形。

オランダ戦ではこんな守備ブロックがうまく機能した。ロシアのスカスカ左サイドは相手の右SBブラールズの場所。セムショフよりは守備意識が低いトップ下のアルシャビンが対応してたのは、相手のデ・ヨング。逆にエンゲラールにはセムショフが、ファン・ブロンクホルストにはサエンコがしっかりと対応してた。結果としてオランダの右サイドはゲームの流れから排除されることになり、オランダは左サイドから攻めるしかなくなった。そうやって出し手を限定しておきつつ、最終的には相手が縦パスを入れてきたところをつぶすってのがロシアのやり方だったし、それが機能しまくったのも事実だった。

ただし、これが機能するためには前提条件がある。しかも、これがかなり重要な前提条件。それは何かって言うと、スカスカ左サイドに対応する相手の右サイドの選手が攻撃が苦手であるってこと。何しろ、そのサイドでは相手をかなり自由にさせてしまうから。特に完全にフリーになる、相手の右SBの攻撃力は気にしなければならない。その点、オランダは格好の相手だった。右SBのブラールズもボランチのデ・ヨングも守備の人だったから。というか、だからこそわざと左サイドを空けてきたものだとばっかり思っていたわけで。まさか、今回も同じような左右のバランス崩しブロックを作ってくるとは夢にも思わなかった。

確かにスペインの右側の選手が組み立てであまり絡めなかったのは事実。でも、右が絡めないことの意味するところがオランダとは全く違う。オランダは右から攻めたかったけど、無理だった。スペインは別に右から攻めなければならない理由はない。シャビが組み立てで目立たなかったのは、セナが自由になってるもんだから、自分の助けはいらないねってことで前に出ていったからってだけの話。エンゲラールが消えたのとはわけが違う。それに、オランダみたいに縦パスを入れるために低い位置で左右の幅を使って相手のブロックを横に広げる必要もない。そんなことをしなくても、もともと空いている右サイドから入り込めばいいだけの話。ファン・ブロンクホルストが消えたのともわけが違う。

そして、そのスペインの右寄りの選手が誰なんだって話。それは残念ながらブラールズとデ・ヨングじゃなく、セルヒオ・ラモスとセナ。イタリア戦ではカッサーノに完全に押さえつけられて鬱憤が溜まっていたであろうセルヒオ・ラモス。そんな状況でも前回は頑張ってたから、そのご褒美ってわけではないけど、今回は全く誰もいないスペースへと攻撃に出て行くことができた。セナだってシャビと比べたら守備的ってことになるんだろうけど、攻撃における組み立ての能力も高いわけで。スペインは右から強制的に攻めさせられる流れになっても特に困ることはなかった。

じゃあ、なんでロシアは左サイドを空けてきたのかって話になってくる。勝手に想像するならば、相手をおびき寄せる作戦かって話。前回のオランダ戦の先制点のシーンがそれ。相手が右から出てきているところで、その右サイドからカウンターを食らわせるっていう。前回はパブリュチェンコもアルシャビンも左サイドに流れてボールを引き出していたし。今回も同じことをやろうとしたんじゃないかなっていう気がする。でも、結果的には失敗だったとしか言えない流れに陥ったけど。その理由は、また後で。

ブラールズ&デ・ヨングとセルヒオ・ラモス&セナの違い。これが完璧に押さえたオランダ戦との違い1つめ。1つめというからには2つめがある。その2つめの違いは守備の勝負どころがあいまいだったこと。前回の試合では、後半に入って変化が見られたものの、守備の勝負どころは、相手の受け手だった。最終ラインを下げ過ぎずに中盤とコンパクトな関係でバイタルエリアをつぶす。同時に相手の人を捕まえて入りどころに対して0距離で対応できる状況を作る。そんな0距離守備で足止めしておいて囲い込む。このやり方でオランダの前線の選手にボールを入れさせなかった。出し手、つまりブラールズ&デ・ヨングはある程度放っておくぐらいのつもりだったと思う。

それに対して今回の相手はセルヒオ・ラモスとセナ。これは放っておけないだろうって話になってくる。確かに立ち上がりは放っておいたわけだけど、結果としてあまりにも簡単にスペインが攻撃の組み立てをしてきた。ここで意思が揺らぐ。セルヒオ・ラモスとセナにも当たらなければいけないんじゃないかっていう話になってくる。よって、2人に対して引っ張り出される選手が生まれてきたと思う。オランダ戦には見られなかった意思の揺らぎ。これによって受け手を見る目標がはっきりとしなくなった。

加えてスペインの攻撃の組み立て方との相性の問題もあったように思う。前回のイタリア戦でも見られたように、スペインは深い位置から攻撃の組み立てを行ってくる。DFラインがDFラインだけでボールを持ちあがるんじゃなくて、そこに中盤が助けに来ることが多い。そして、これに対しても、ロシアの選手が引っ張りだされることが多くなった。なぜならば、人を目標とするロシアの守備だから、相手が下がっていったら、ある程度まではついて行くことになる。中盤の選手が受動的に前へ前へと出てきてしまう状況が生まれた。

こういう状況はある意味では仕方なかったとも言える。オランダは出し手が後ろの6人で、受け手が前の4人ってことがはっきりしてた。だから、受け手を目標にしたら、そこから動かされることは多くはならない。しかも、ロシア戦のオランダは特に出し手と受け手の関係が固着化したたし。スナイデルとかファン・デル・ファールトがあまり低い位置に降りて行かなかったってのは、そのときにも書いたとおり。それに対して、スペインは中盤の選手が受け手にも出し手にもなる。見るべき相手を定めると、上下に動かされるのは想定できたことだったように思う。

そんなわけで中盤が前線に引っ張り出されることが多くなったロシア。でも、それにDFラインがついて行けない。理由は簡単。スペインの2トップはビジャ&トーレス。あまりラインを上げすぎると、ウラを狙われてしまう。そもそも、どこが目標かって言われればやっぱり受け手が目標のロシア。中盤の選手が相手に引っ張り出されるときも、相手の出し手に対して十分にプレッシャーがかかってないのが事実。なんとなく引っ張り出されてるというか。そんな状況で下手にウラにスペースを与えたら、トーレスとビジャが好き放題に暴れまわる。よって、ロシアは前回のように高いラインを保つことができなかった印象。要所要所で単純にウラに入れてくるボールも効いてたと思う。GLのスペイン戦のトラウマもあったのかもしれない。

よって、ロシアの守備ブロックは間延び状態。相手の出し手に対してなんとなく出て行ってしまう中盤とウラが怖くてついて行けないDFライン。前回のオランダ戦の完全バイタルつぶしはどこへやら。DFラインと中盤の間に広大なスペースができあがる。スペインは縦パスを通し放題。そうやってスペインが前線に起点を作ってきたところに対しても、ロシアがすぐに囲い込みに行けない。振り向かれてシュートを打たれたり、起点を起点として機能させてしまうシーンが多くなったと思う。

そんなわけでスペインはイタリア戦とは全く違った内容を見せてくれたと思う。何よりも敵陣に入るのが恐ろしくスムーズになった印象。そして、そのどちらもロシアの守備の問題点をついたものだった。最も楽なのはガラガラの右サイドを利用するやり方。ビジャとかトーレスが流れて引き出したり、単純にシルバが受けたり。そもそも、セルヒオ・ラモスにボールを渡して、ドリブルで持ちあがらせればあっさり敵陣。イタリア戦ではあんなに苦労したのが嘘ように簡単に敵陣内に入り込んだ。

もう1つはもうちょっとスペインらしい。相手のDFと中盤の間にできたギャップに入り込んだ選手がボールを受けるってもの。ここでイニエスタが目立ちまくった。相手のDFと中盤の間のスペースを横切る動きを繰り返して相手のマークを外し、間間に顔を出しまくり。そうやってうまく中盤で起点になったと思う。同時にイタリア戦ではSMFらしいSMFとして振舞ってたシルバも真ん中に流れてくる動きを増やす。シルバって選手は今大会で初めて見たから、そんな動きもできたんだなって話。これが後の4‐1‐4‐1の布石になったわけだけど。

要するに間があればスペインらしさが発揮されるってことが判明。前回のイタリア戦では間がなかった。スペインの出し手がいくらボールを自由に扱っていてもイタリアの選手は知らん顔。4‐1‐4‐1のバランス維持と最低限の縦パスをいれさせないことを徹底していた。当然のように縦パスを入れるギャップができあがらない。縦パスが入らないから、前線の選手が後ろに向かってくる。でも、相手のブロックは引っ張り出されない。スペインは中盤に受け手がいなくなる。ますます縦パスが入れられない。完全な悪循環に陥ってた。スペースをつぶしてくる、確固たるベタ引きに弱いスペイン。スペインはスペインの守備のやり方に一番弱かったりするかも。そのスペインの守備については後々。

それが今や縦パスを入れ放題のスペイン。ビジャもスペースのある中盤の場所での引き出しの動きを繰り返してた。前回は完全に消えてしまったイニエスタも、相手ブロックの中にギャップがある今回の試合では水を得た魚。そうやって受け手を浮かせていった。受け手が浮けば出し手は優秀。前線に簡単に起点を作れたと思う。しかも、そういう前線の起点に対して間延び状態のロシアの守備がすぐには効いてこない。前線で時間を作れたことでスペインは後ろからの攻撃参加も活発になった。

そんなこんなでロシアの守備ブロックの弱点を突いて攻撃を繰り返したスペイン。でも、試合開始当初の流れは、攻めるロシアと守るスペインっていう情勢だった。ただし、これはスペインが攻めさせていたっていう意味が強かったかなっていうように思う。スペインはおびき寄せておびき寄せてカウンターっていうつもりだったかもしれない。攻めてロシアにカウンターを食らうよりは、攻めさせておいてロシアにカウンターを食らわせた方が安全っていうイメージか。それが途中で相手のカウンターは怖くないぞっていうことに気づいたのかもしれない。その理由は後で書くけど。

とにかく、立ち上がりのスペインは受身の形となった。ただ、守備ブロックの作り方に関して言えば前回のイタリア戦よりは積極的なものだったかなっていう気がする。前回は守備ブロックを作った時点で2トップがハーフェイラインぐらいの位置。その後ろの4‐4はかなり深い位置に設定されてた。それに対して今回の試合では2トップが縦っぽい関係になりつつ、深い位置の相手のボール保持者にプレッシャーを与えて行ってたと思う。そして、その後ろの中盤は1‐3みたいな形にして、3をハーフェイライン上ぐらいにおいていた。

ロシアの最終ラインは相手のトップがいるからスムーズに持ちあがれない。オランダ戦では最終ラインがかなり高い位置まで出ていけてたのと比べると、かなり大きな違いがあったと思う。よって、最終ラインからいきなり前線へっていうボールは入れにくくなった印象。これに関しては相手の中盤の3のフィルターの存在感も大きかったように思う。結果としてロシアは攻撃でも前後に間延び。後ろからの追い抜きがポイントになるロシアの攻撃を考えると痛すぎた。前線との関係性を作るにはかなり長い距離を走らなければならない。いくら走ってもいい関係性が作れない。そんなロシアだった気がする。

ただし、ブロックが1つ前に置かれたからといってスペインの守備の意識自体が大きく変化したかって言われれば、そんなことはなかった。やっぱりベースは後ろで受ける形。だから、前線からの追いかけ回しなんてものは全く見られなかったと思う。ロシアの最終ラインが中盤の助けを借りつつ、SBを使ってスペインのFWを外しつつ、押し上げて行けば、スペインの守備ブロックはそれにつれて下がっていく。最終的にはイタリア戦で見られたような4‐4‐2の守備ブロックで受ける形になって行った。そして、そんなスペインの4‐4‐2守備ブロック形成に困ったのがロシア。どう困ったかって言うとイタリア戦のときのスペインと同じ悩み。どうやって相手のブロックに入り込めばいいのか分からなくなってしまった。

まずはサイド攻撃。ここまで書いてきたとおり、スペインは最初の時点では高めの守備ブロックを採ってきた。そして、FWがロシアの最終ラインにプレッシャーをかけてきた。そんな相手のプレッシャーから逃げるためにロシアのSBは組み立てに参加しなければならなくなったと思う。オランダ戦のように2バックでパスを回すのは無理だったから。よって、ロシアは最初の時点でサイドに枚数をかけておくことが不可能になった。右は1つ前のサエンコに入った時点で、左は中盤で保持してから、SBが1つ遅れて絡んでいくっていう形になったと思う。だから、ボールがサイドに出た瞬間に数的優位を作るような攻撃は不可能になった。

しかも、スペインの方はロシアのサイド攻撃に対してしっかりとした対応をしてきた印象。これはロシアがスターダードにSMF&SBの関係性を作れるロシアの右サイドの局面でよく見られた。そもそもフラットな4‐4を並べている時点で左右の幅をしっかりとケアできてるスペイン。しかも、その4‐4が待ち構えてるってのがポイント。ロシアのSBの上がりが遅れると、サイドでは単純に1×2でスペインの数的優位ができあがる。ただし、当然のようにサイドに数的優位を作ろうと試みるロシア。そのときにはスペインは中盤をスライドさせて対応。ロシアの右サイドの攻撃ならば、シルバ&カプテビジャ&セナがサイドを固めることで、数的不利の状況を作らなかった。

だから、本当はロシアは右で作っておいて左みたいな展開をすればよかったはず。接近→展開→連続ってやつか。でも、逆サイドは慢性的に人数が足りてないのが左右のバランスを崩しているロシア。スペインの中盤がスライドしているところで逆サイドに送ったとしても、そこは1×1の普通の形。スペインにとっては大きな問題につながることはなかったと思う。そして、この部分についてはロシアの攻撃のやり方にも問題があった気がしてならない。

オランダ戦のロシアは右サイドではアニュコフ&サエンコ&セムショフの関係を固定的に作り、左サイドはジルコフを軸として出入りを激しくするっていうやり方を採ってきた。でも、今回はその左サイドの出入りがないない。アルシャビンもパブリュチェンコもなぜか狭い真ん中に居座る時間がかなり長くなってた印象。結果として左サイドはジルコフ1人に任された。なぜなのか。今回も守備のバランス崩しを行ってきたっていうこと以上に、この部分は謎だった。確かにたまに流れるシーンはプジョールなりセナなりにきっちりと対応されてしまっていたのも事実ではあるけど。

相手のサイドの守備のやり方と自分たちのサイド軽視のやり方によって、サイド攻撃の選択肢が消えてしまったロシア。仕方がないので真ん中から攻めざるを得なくなる。でも、どうやってって話。確かにオランダ戦では低い位置でのポゼッションから真ん中に縦パスを送り込むっていうやり方も選択肢の1つとしてはあった。その入りどころでファールをもらってFKの数も増やした。でも、それはやっぱりオランダの守備との相性の問題があったように思う。

そもそもロシアはどうやって真ん中に起点を作ろうとしていたのか。それは引っ張り出して隙間を空けるっていうやり方だった。低い位置でボールを保持している時に、前線の選手が低い位置に降りてくる。人を見るオランダの選手はそれによって、引っ張り出される。結果として空いた相手のDFと中盤の間のスペースに縦パスを送り込む。つまり、人ベースのオランダの守備、もっといえば守備における個が強いオランダと相性のいい縦パスの送り方だったと思う。

それに対して今回のスペインは4‐4でバイタルを潰してきた。だから、ロシアの中盤の選手が降りて行っても知らん顔。FWに受け渡すのがせいぜいだった。そう簡単には縦パスの入りどころが見つからなかった。たまに縦パスを入れると、セナに潰されてしまうし。イタリア戦での苦戦が嘘のような今回のスペインの攻撃。オランダ戦のよさが嘘のような今回のロシアの攻撃。根本的な部分は共通していたといってもいいと思う。

そして、この4‐4がロシアにとってはさらに厄介な意味を持つ。4‐4コンパクトブロックでスペースを完全に押さえたスペイン。後ろからの飛び出し、というかランニングが攻撃のポイントとなるロシアの攻撃。問題はロシアの選手がどこへ走ればいいんだってこと。前線にボールが入れば、それをスイッチとして追い抜くランニングなんかもできる。でも、今回は前線にボールが入らなかった。じゃあ、ボールを引き出すランニングをすればいい。でも、飛びだすスペースは相手に潰されている。これによってロシアのよさは消えてしまった。

それでもまだ、ロシアにはカウンターがあるじゃないか。ここで再び間延びの登場。思い出さなければならないのは、今回のロシアは守備において前後の分断が起こっていたってこと。この守備における間延びがカウンターの流れにも影響を及ぼす。奪って、飛び出すってなったときに前後の関係が作れない。大体において、守備の勝負どころが定まらなかった今回のロシアはカウンターのスイッチが入りにくかった。前回のように守備の勝負どころが定まってればチームとしてのスイッチが入りやすい。奪った勢いのまま前線にも出て行ける。でも、守備がうまくいかない今回のロシアには守備の勢いのまま攻撃っていうやり方は難しかったように思う。

それにカウンターの流れでもFWの引き出しの動きが少なかったように思う。前回の試合では前線で動きまくり、引き出しまくり、目立ちまくったパブリュチェンコはどこへ行ったのか。アルシャビンはどこへ行ったのか。せっかく相手のSBが前線に出てきているのに、そのウラのスペースを有効活用できていなかったようなイメージ。今回はなぜかFWが真ん中にこだわっていたロシアだった。

そんなロシアの様子を見てスペインが攻勢に出てきたんじゃないかと思う。上に書いたように、ロシアのカウンターに怖さを感じなかったってこと。だったら、自分たちが攻めてやろうっていう。あとは立ち上がりだけはリスクを冒さずに守備をベースにした戦い方をしてたっていう可能性もなくはないけど。どちらにしても、いつの間にかスペインが攻勢に出る状況が生まれてた。ロシアの守備ブロックの間にうまく入り込みながら、相手ゴールに迫っていった。でも、何かが足りないスペイン。崩しきるシーンまではつなげられなかった。

その何かってのは何か。たぶん、相手の最後の最後の守備ブロックに決定的な混乱をもたらすっていうことだったと思う。確かにこの時点で中盤は使えるようになってた。だけど、役割分担気味。セナは配給役、シャビは低い位置を助けつつ機を見て上がっていく、イニエスタは間に入って受ける、シルバはサイドを基本としてプレー。そして、この中盤の選手がFWを抜かさない。FWはトーレスとビジャ。もっと言えばビジャは中盤的に振舞って、トーレスが生粋のFWみたいな。こんな感じの役割分担の中で、スペースには入り込めたとしても、人ベースのロシアの守備に最後は阻まれるっていう状況に陥ったと思う。

それでも結構攻めてたのは確か。そのままの流れでもロシアの守備ブロックに綻びを作り出すことは可能だったかもしれない。でも、皮肉にもビジャが負傷したことで、一気に流れがスペインに傾く。正確に言えばビジャの負傷交代によって行われたシステム変更によって試合の流れが決定づけられた。それぐらいに4‐1‐4‐1のインパクトはすさまじかったと思う。

この4‐1‐4‐1は2列目に配置されたイニエスタ&シャビ&セスク&シルバのすさまじい流動性。どの選手もボールを失わない。相手のプレッシャーの中でもタメを作れる。かと思えば、1タッチ2タッチであっさりと局面を変えたり、チャンスにつなげたりすることもできる。2点目のセスクのアシストがまさにそれ。ただ、そんなボール扱いよりも、それ以前のボールの受け方がそれぞれすさまじくうまい。間を見つけるのがすさまじくうまい。イニエスタとシルバは4‐4‐2の時間からそういう動きを繰り返してたし、シャビとセスクだってクラブでのプレーを見ればそんなのは分かり切ったこと。

そして、局面局面を見るとそれぞれが自分でギャップを見つけて好きなようにその場所に出てきまくってるように見える。それぐらい、どの選手も神出鬼没に動き回ってボールを受けてた。でも、全体としてみるとバランスが全く崩れてないから恐ろしい。それぞれが利己的に好き勝手にギャップに顔を出してきてるかのようなのに、それがチームとして最適な飛び出しになってる。バランスが全く崩れない。それぞれが動き回ってる中でも選手間の距離が一定程度に常に維持されてるイメージ。近すぎず遠すぎず。ダイレクトでも回せるし、自分でも仕掛けられるし、みたいな。

そして、この距離感の形成におけるSBの役割は大きい。おそらく中盤の選手がボールを失わないっていう自信があるからだと思うけど、セルヒオ・ラモスもカプテビジャも超積極的に攻撃に飛び出してくる。今回は立ち上がりから積極的だなって思ってたけど、4‐1‐4‐1になってからは、それに輪をかけて。そして、SBが上がってくることでサイドはSBに任せられる。中盤の4は中に押し込まれる。結果として、さらに近い関係性が生まれたと思う。

そして、そんな中を基本としつつ、そこから外に逃げて行く動きが効果的に決まった。先制点をアシストしたイニエスタの動きがそれ。外→中の流れは相手としても警戒する。ゴールに近づいてくるわけだから。逆に中→外の動きは見失ってしまうシーンが多いと思う。この得点シーンでも外に流れたイニエスタへの対応が遅れ、さらにその外側をカプテビジャに回られ、完全にロシアの守備陣の意識がサイドに振られた。結果として真ん中にできたギャップにシャビが入ってきたシーンだったと思う。

こんな感じのスペインの攻撃に対してロシアが致命的な混乱に陥った。何しろ相手の中盤の誰を見ていいのか分からない。この時点である程度、相手を見るっていうやり方は崩壊したといってもいい。何しろ超流動的にやってくるスペインの中盤だから。そして、何よりも得点シーンのシャビみたいにラストブロックに直接仕掛けられる動きが一番嫌だった。4‐4‐2のスペインに足りなかった中盤がFWになる動き。トーレスも外目にポジショニングをすることで中盤の飛び出しを促進してたと思う。何よりも嫌なのが、中盤の誰が飛び出してくるのかが全く分からないっていうこと。シャビもセスクもイニエスタもシルバも誰でもFWになり得たと思う。

そして、スペインの攻撃は次々にロシアの守備ブロックの急所急所を突いてきたと思う。間間をつなぐパス回し。これを言い換えると、ロシアブロックの中でのパス回しって言える。しかも、スペインの選手はことごとく前向きでボールを扱ってくる。引き出すためにギャップに飛び出し、その前のギャップへ別の選手が飛び出し、再び最初にパスを出した選手が追い抜いてギャップへ…みたいな。前へ前へのパス回し。ゴールに向かうパス回し。スペインの攻撃の圧力はすごかったと思う。

この時点でロシアの方は守備の勝負どころが定まらない。相手の超流動に対して誰を捕まえればいいのか分からない。相手がギャップギャップに入ってくるから対応が遅れる。遅れて対応すると背後に新しいギャップを残してきてしまう。さらに上に書いたように、前向きでプレーするスペインの選手たち。後ろ向きで受けてくれたりすれば、ちょっと遅れても対応できるんだろうけど、その望みの打ち砕かれてしまった。

だからこそ、後半のロシアは前線からの守備へと切り替えたんだと思う。要するに受け手を捕まえる守備に限界を感じたってこと。そもそも受け手に対しても完璧に対応できてたのは言えない今回のロシア。それでも個々の対応で何とかなっていた部分は大きかった。それは上に書いたように、スペインが役割分担的だったから。だから、トーレスに対してベレスツキーみたいにつくべき相手を定めればなんとかなった。ボールを奪えなくても最低限仕事をさせないことは可能だった。でも、今や見るべき相手の数が多すぎる。しかも、その選手たちが自由に動き回る。しかも、ギャップを見つけるのが抜群にうまい。こちらを止めるのは無理だっていう判断。

というわけで、後半は前線からの守備を行ったロシア。でも、相手の出し手にはこれまた安定感抜群のセナ。それを助けに来るセスクなりシャビなり。前線からのプレッシャーをいなされて、狙いどおりに出し手を押さえ切れないシーンが多くなった。そして、そうなると背後のスペースが致命的になる。先制点のシーンもセナをつぶしきれずに間に入ったシャビに出されたシーンが最初だったし。ただ、ロシアとしてはああするしかなかった苦渋の選択だった気がする。

でも、ロシアにとってピンチはチャンスである可能性だって十分にあった。前半にロシアがなぜに苦戦してたか。攻撃においては相手の4‐4に入れないのがその原因の1つだったってのは上にも書いたとおり。でも、今のスペインは4‐1‐4‐1。4‐4から4‐1‐4へ。しかも、中盤の4は前に対して守備をする意識を見せた。1の脇のスペースになんとか入り込めばチャンスは生まれるはず。

でも、後半のロシアはそんな部分を生かしきれない。低い位置でのボール回しが停滞して、相手の中盤の4を外せなかった。そうなると4‐4よりも4‐1‐4を崩す方がより難しくなるって話。どちらにしても前半と同じように縦パスを入れられなかった。しかも、間に入り込んだり、SBが上がっていったりした時に、スペインの中盤の4は後ろに向かっての守備をきっちりとやってた。4‐4の守備ブロックを見ても分かるけど、スペインの中盤は前よりも後ろとの関係性を重視してるように思った。

そんなことをしている間にスペインは逃げ切り体制。シャビ→Xアロンソの交代で4‐1‐4‐1を4‐2‐3‐1へと変更。これで1の両脇に入り込むっていうロシアの最後の希望も断ち切られることとなった。しかも、スペインの守備ブロックは4‐2‐3‐1というよりも、4‐4‐1‐1みたいな形。再びスペインのおびき寄せ作戦が開始。そして、今度はおびき寄せ作戦成功。2点目と3点目はロシアが深い位置まで入り込んだ後の流れからだった。ちなみに、今回のスペインの決定力はGLのオランダ並みに高かったように思う。

イタリア戦の終りにスペインの本領発揮を期待するって書いたら、発揮し過ぎるほどに発揮してきた。4‐1‐4‐1ってなんなんだって話。クワトロ・フゴーネスってなんなんだって話。なんで今まで使わなかったんだって話。弱点があるとすれば1ボランチの場所なんだけど、攻守に渡って質の高いプレーを見せてくれてるから、実質的に弱点なし。中盤の4枚の守備の意識も高いし。前回のイタリア戦では中盤の高めが皆無になったスペインだったのに、今回はそれが一気に4枚へと増えた。そして、個人の能力はもとより、その4人の連動性が半端じゃない。ビジャが無理っぽいのでドイツ戦ではスタメンからこの形か。

対するロシア。最大の謎は上にも書いたように、FWが真ん中にこだわってたこと。どちらもボールに触ることさえ満足にできなかった。パブリュチェンコは高さで相手のCBと勝負させようとしたって可能性もないとは言えない。でも、アルシャビンまでそれにつき合わなくても。やっぱりアルシャビンの怖さはボールを持ってこそ発揮されるように思うので。オランダ戦のようにもっと自由度を高めてタッチ数を増やしてもよかったんじゃないかと思う。
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2008-06-25 Wed 21:01
スペイン×イタリア
<スペイン:4-4-2>
FW:ビジャ-トーレス
MF:シルバ-シャビ-セナ-イニエスタ
DF:カプデビジャ-プジョール-マルチェナ-セルヒオ・ラモス
GK:カシージャス

<イタリア:4-3-1-2>
FW:カッサーノ-トニ
MF:ペロッタ、アンブロジーニ-デ・ロッシ-アクイラーニ
DF:グロッソ-キエッリーニ-パヌッチ-ザンブロッタ
GK:ブッフォン

何の因果か、これで4試合目のイタリアの試合。正直に言うと、イタリアのサッカーはそれほど見るべきものもないんだけど。とりあえず、初戦のオランダ戦は守備的なメンバーで戦うものの、消極的な姿勢が災いして、結果として守備も攻撃もできなくなったイタリア。何のためにガットゥーゾとアンブロジーニを高い位置に置いたんだよっていう試合内容だった。詳しくは、これまで何度も書いてきたとおりなので省略。

2戦目のルーマニア戦は一挙に攻撃的なメンバーに転換。攻撃ではサイドを起点にチャンス量産。ただし、守備がかなり危険な状況に陥った。初戦に併用したアンブロジーニとガットゥーゾをどちらも外したこの試合。結果として守備のスタートが切れなくなった。中盤の場所では、みんながなんとなくボールサイドに寄る。そんな中盤の守備を、ルーマニアの局面でのパス回しと、そこからの展開力によって、あっさりと外されてしまったイタリア。DFとMFの関係性も酷いもので、何度も何度もDFが晒されまくった試合だった。PKを含めて守備で耐えきったのは、ブッフォンのおかげ。

そんな1戦目と2戦目を経て、やっとこさ3戦目で攻守のバランスが取れたメンバーを起用。中盤はピルロ&デ・ロッシ&ガットゥーゾ。そして、ここで同時に守備のやり方を思い出したイタリア。4‐3で確固たるラストブロックを作り、相手の攻撃を跳ね返し続けた。1つ前のルーマニア戦では大変なことになってた、DFとMFの関係性が嘘みたいに改善。一体感を持ってバイタルエリアを潰すブロックを作り出せてた印象。

そんな守備をベースに攻撃はトニ任せ。トニに入れとくから、周囲のペロッタ&カッサーノと3人で何とかしてねっていうやり方。ただし、トニが絶不調の今大会。収まらないのなんのって。だから、全体としてよかったかって言われると微妙。それでも、そんなトニがもらったPKをきっちりと生かし、完全に守備だけに専念できる体制を作り出した。守備をベースとするイタリアらしい戦い方を思い出した試合になったと思う。

というわけで、やっと光が見えてきたような気がしたイタリアのGL最終戦。でも、残念ながらスペイン戦ではバランスが回復した、光が見えたメンバーで戦えないことが決定した。ピルロとガットゥーゾが出場停止。攻撃の中心ピルロと守備の中心ガットゥーゾが使えない。せっかく方向性が見えてきたのに、その方向性があやふやになってしまう可能性も少なからず存在する。結局、実際にどうなったのかってのは後のお楽しみ。

さて、ピルロとガットゥーゾが出場停止のイタリアは代わりにアクイラーニとアンブロジーニを起用。ミラン優位からローマ優位の形へ。アクイラーニとデ・ロッシ、ペロッタっていうローマの中盤ができあがった。ただし、残念ながらトッティがいないこのチーム。ローマからトッティを引いたら、かなり痛い。仕方がないので、トッティの後継者になりそこなったカッサーノにトッティの役割を担ってもらうか。ないな。でも、後で書くようにカッサーノが中心にいたのは確かだったと思う。トッティ的な意味ではなかったけど。

さて、そんなイタリアの戦い方はどうだったか。そんなイタリアの戦い方は完全に守備に重点を置いたものだった。メンバー変更の不安はどこへやら、メンバーが代わっても、方向性はブレなかったってことか。やっぱりイタリアと言えば守備だろってことをフランス戦で完全に思い出したんじゃないかって気がする。守ると決めたイタリアは本当に守るぞって話。試合の見所はイタリアの守備ブロックをスペインがどのように崩すかっていう一点に絞られたといってもいい。

そんなイタリアの守備意識は本当に高まってた。それをよく表してたのがトニの守備意識。今までの試合では完全に守備を免除されてたトニ。初戦のオランダ戦なんかは、そのせいで圧倒的にオランダに主導権を握られたと思ってるわけだけど。とにかく、トニは全く守備に関心がなさそうだったし、ブロックにすら参加しないことも多かったと思う。そんな過去3戦のトニに比べると、守備に関しては優等生と言ってもよかった。あくまでも過去3戦と比べるとだけど。

まず、立ち上がりの時間は深い位置の相手の最終ラインに対して積極的にプレッシャーをかけに行く姿勢が見られたと思う。結果としてスペインの最終ラインは低い位置に釘づけにされた。スペインとしては最終ラインがスムーズにボールを持ちあがることができないから、中盤が助けに行くしかなくなる。4‐4が自陣に入った状態で攻撃の組み立てを開始しなければならない状況に陥ったスペイン。相手ゴールまでは、まだまだ距離が遠かった。

そうやってトニが相手の最終ラインに対してプレッシャーをかけているときに相方のカッサーノは何をしてたか。これがなかなか特徴的だったように思う。このときカッサーノは左サイドのケアをしてた。要するにスペインの右SBのセルヒオ・ラモスを見ていた。守備ブロックの左右のバランスを崩すのはブームなのか。とにかく、カッサーノに押さえられたセルヒオ・ラモスは使えないスペイン。結果として、攻撃の組み立ては左寄りで行われることになったと思う。

そんなスペインの立ち上がりの典型的な攻撃。プジョール→カプデビジャ→シャビ→シルバ→オーバーラップのカプデビジャ。相手のトニが最終ラインにプレッシャーをかけてくるとは言っても、ボールを奪おうっていうほど厳しい質のものではなかった。それに後ろもトニの守備についてきてなかった。よって、中盤が助けに来るならば、スペインは何の問題もなく攻撃へと移ることができたと思う。上に書いたように、ただ、相手ゴールまで遠いってだけ。それでもめげずに空いている左サイドを起点にして、なんとか深い位置まで入り込もうっていう意図が見られた立ち上がりの時間帯だった。イニエスタが左に出てくるシーンも見られたし。

ただし、ここで問題なのは本当に左サイドが空いてたのかってこと。カッサーノがセルヒオ・ラモスをしっかりと見ている時点で、相手は右からは作ってこないと踏んだイタリアの中盤。後で書くように、この時点ではイタリアから見て完全に右寄りのポジショニングはしてなかったけど、気持は右サイドにあったって言える。だから、スペインがそのサイドに起点を作ったら、すぐにブロックを寄せる準備はできてた。ただし、その割には相手にそのサイドを侵攻されるシーンが目立ったのも事実。ただし、イタリアにとっては想定の範囲内だったと思う。

今回のイタリアの守備の勝負どころはあくまでもラストの4‐3ベタ引きブロックだった気がする。フランス戦で自信を深めた、まさにその形。だから、中盤の場所で行うのは、一応の守備。一応、ゴールまでの最短距離は切っておこうっていう守備。だから、相手がサイドに起点を作ったときに、そのままサイドを侵攻していくようなやり方を採るならば、イタリアにとっては大成功。ボールサイドにダイヤモンドを寄せることによって、とにかくサイドから中へと入られる部分だけを切れればいいっていう中盤の守備の考え方だったと思う。

要するにイタリアの守備に原則は、下手にボールを奪いに行こうとするなってことだったと思う。中盤の守備での目標は、相手の攻撃を遠回り遠回りをさせること。最短距離だけを抑えつつ、ゆっくりと攻めさせて、自分たちは(わざと)ズルズルとブロックを引いて、勝負の4‐3ブロックを作るっていう考え方。極端なことを言えば、その勝負の4‐3ブロック以外の場所では守備の勝負に行くことは許されなかった。

これには2つの意味があった気がする。1つは積極的な要因。要するにラストの4‐3ブロックに絶対的な自信があったってこと。別に苦手な場所で勝負する必要はない、相手をこちらの土俵に引き入れようっていう考え方。フランス戦を念頭に置いた要因。もう1つは消極的な要因。こちらはルーマニア戦から。下手に中盤で勝負に行って、ギャップを残すのは危険だってこと。そんな危険を冒すぐらいなら、中盤で守備の勝負に出る必要なんかないよってもの。どちらにしても、結果として生まれたのは、超消極的な守備のやり方だった印象。

こんなイタリアの守備のベースは時間とともに守備のやり方が変化しても変わらなかった。その変化ってのがどういうものかっていえば、より受ける意識が強くなったってことだったと思う。前半の10分過ぎになって、トニが相手の深い位置の最終ラインへのプレッシャーをやめた。ただし、今回の試合ではあくまでも守備の優等生のトニ。プレッシャーをやめた後には、しっかりと後ろと一体化して守備ブロックの一員になってた。今までの3戦ではトニと中盤の間に相手のボランチが入り込むってことが多々あったから、それから比べればかなりの改善。

18――9―――    ―――9―――
――20―22――   18―13―20―22
―13―10―――   ―――10―――

そして、立ち上がりは左の図みたいな形だったイタリアの守備ブロックが、受ける意図を強くしてからは、右の図みたいな形へ変化した印象。そういう意味では左右のバランスが回復したかのように見える守備ブロック。確かに見た目的には4‐1‐4‐1の守備ブロックが作られたかのように見えたけど、その内実はやっぱり左右のバランスが崩れてた。カッサーノはあくまでもFWだったし、守備でも特別な役割を与えられてた。

カッサーノの守備での役割はあくまでも、セルヒオ・ラモスを押さえるっていうもの。セルヒオ・ラモスが上がってくれば、それについてしっかりと低い位置まで戻ってくる。でも、セルヒオ・ラモスが上がってこなければ、いくら自分の背後に入られたとしても、下がってきて守備はしない。早い話が、マンツーマンでセルヒオ・ラモスについていたって言える。そして、この2人の関係性がなかなか面白かった。後で書くように、カッサーノは攻撃でも左サイドでのプレー時間が長かった。セルヒオ・ラモスとしては上がりたいところだけど、スペースを残してくるのは危険っていう。この2人の心理的な戦いはすさまじかったんじゃないかと思う。

とにかく、セルヒオ・ラモス×カッサーノの関係性を踏まえた上で、イタリアから見て左サイドに入られたらどうするのか。その場合は原則に立ち戻って、アンブロジーニが対応することになってた印象。あくまでもイタリアの守備は4‐3‐1‐2であり、その左サイドに入ってたのはアンブロジーニ。ただ単に相手が自分たちの左からは攻めてこないだろうっていう予測の下アンブロジーニは中寄りで守備をしてただけの話。ただ、その予測にはカッサーノがセルヒオ・ラモスを押さえてるっていう根拠があったけど。

だから、スペインがイタリアの左サイドに起点を作ったりすると、イタリアの守備の本性が現れた。ビジャが左サイドに流れたときに対応したのはアンブロジーニ。カッサーノはやっぱりセルヒオ・ラモスが上がってこない限りは戻ってきて守備はしない。ラストブロックはやっぱり4‐3で作られる。セルヒオ・ラモスが上がってくれば(ほとんど上がってこなかったけど)、4‐3+1って形になってたはず。そんなイタリアのやり方に対して、スペインが工夫を見てたわけだけど、それは後々の話。

そして、その工夫を見せる前のスペインはかなり辛い状況に陥ったと思う。それは何かっていうと、敵陣内にボールを運べないっていう状況。立ち上がりの時点では左サイド起点の攻撃で難なく敵陣深くまで入り込んでいたスペイン。あとは相手の4‐3ベタ引きブロックをいかに攻略するかがポイントになるかとも思われた。もちろん、そのイタリアの4‐3ベタ引きブロックを攻略するのはそう簡単ではないんだけど。

でも、相手が4‐1‐4‐1に見えるブロックを作ってからは、そんなラストブロック崩しに重点を置けなくなった。その前にどうやって相手を4‐3ブロックに押し込むかってところが大変な作業になった。問題はなぜかっていうこと。これはちょっと難しいけど、ポイントは立ち上がりの敵陣入りはことごとく左サイドから行われてたってことになると思う。その要因の1つは、ここまで書いてきたように右サイドが押さえられてたから仕方なく。ただ、それだけでは不十分。なぜならば、スペインの左もイタリアがしっかりと押さえてれば、深い位置まで入り込むのは難しいわけだから。逆にいえば、立ち上がりのイタリアはスペインの左サイドを押さえ切れてなかったって言える。

立ち上がりのイタリアは区切るとすれば、やっぱり4‐4‐2だった。トニが高い位置から行き、イレギュラーな形とは言っても、相方のカッサーノはトニと同じ高さにいた。そして、中盤の4はあくまでもFWよりも後ろに配置されてた。だから、カッサーノがセルヒオ・ラモスを見ているとは言っても、後ろの中盤は完全に右寄りに配置するわけにはいかなかった。スペインは自分たちの右サイドに来るだろうなとは思いつつも、完全にそちらのサイドに寄るわけにはいかなかたってこと。完全に右に寄ったとしたら、カッサーノのウラにスペースができてしまうわけだから。

というわけで、スペインが左サイドに作った場合は、イタリアはそこに入ってから本格的に守備をすることになった。気持ちはそのサイドにあったとしても、完全にボールサイドに寄せるのは、あくまでもスペインが左に起点を作ってから。よって、対応が1つ遅れることとなる。スペインはその間隙を縫って、深い位置まで入り込んだ印象。ただし、イタリアとしてもこれは失敗ではない。上で触れたように、イタリアは別に中盤で奪うつもりは全くないから、相手が中に入ってこなければ十分に成功だったって言える。

でも、イタリアが受ける意図を強くしたことで、スペインの左サイド狙いは停滞することとなった。その理由は簡単。見た目上とは言っても、カッサーノが中盤に入ったことによって、上の図で示したとおりに、イタリアの中盤のダイヤモンドは完全に右寄りに移動することができた。見た目は4‐1‐4‐1になったことからも分かるとおり、右サイドにも選手が常駐することになった。スペインが立ち上がりに左サイドを侵攻したのは、相手の対応が1つ遅れたから。そういう状況がなくなったこととなる。

さて、困ったスペイン。というか、見てるこっちが困った。スペインが全然縦パスを入れられなくなってしまったことで、試合に動きがなくなってしまったから。というか、なんでこんなにスペインは前線にボールが入れるのが下手なのかっていう話。今大会では初めて見たわけだけど、今回の試合を見る限りでは、はっきり言って3連勝で抜けてきた意味が分からなかったりする。次で本領を発揮してくれるのか。とにかく、今回のスペインは組み立てが恐ろしく下手だった。スペイン=中盤はどうしたのか。

じゃあ、なんでそんなに縦パスが入らなかったのかって問題。これに関しては、受け手がいなかったってことに尽きると思う。まず、そもそもが4‐4‐2の形であるスペインには専属的なトップ下が存在しない。だから、誰かしらがその場所で受け手にならなければいけない。じゃあ、誰が入るのかってのが今回のスペインの大問題だったと思う。

まず、CMFの2枚はずっと低い位置にいる。セナもシャビも相手のブロックの外側でタッチ数を増やし、出し手となろうとする。受け手がいないのに。FWの2枚はトップ下の場所には降りてこない。サイドに流れるか、1発ボールを引き出すウラへの飛び出しか。横か前か。後ろっていう選択肢はなかった。さらに左のシルバはSMF的に振舞う。さらにさらに、頼みの綱のイニエスタが今回の試合ではほとんど目立てなかったってのが一番痛かったように思う。ちなみに、SBはセルヒオ・ラモスが押さえられ、カプデビジャも高い位置では受けるのが難しくなった。しかも、そんなこんなで前線がボールが入らない状況でどんどんと後ろに人数が飽和していったと思う。

というわけで、極端なことを言えば前線でボールを受けてくれる人が全くいなかったスペイン。仕方がないので出し手が無理やりにボールを送り込んでやるしかないかって話。一応、セナもシャビも出し手としては超一流。ただし、受け手の助けがない状況で出し手が無理やりに前線に入れるのも難しい状況だった。これに関しては、イタリアの守備のやり方も関係してくる部分。

ここにおいてイタリアの守備の原則がスペインの攻撃陣に重くのしかかったと思う。イタリアの守備はラストの4‐3が勝負どころ。その4‐3以外では守備の勝負をせずに、相手の攻撃の最短距離だけを切る。この原則により何が生まれるか。まず、スペインの選手が低い位置でボールを持ってるときに、イタリアの守備ブロックにギャップが生まれない。奪う意図がないんだから、4‐1‐4‐1のバランスを維持したまま待ってるだけ。でも、縦パスはケアしてる。例えばセナとかシャビはボールを持つことは認められるけど、縦に入れようとすると、アンブロジーニなりペロッタなりにコースを切られてしまう。

そして、そんな相手の守備ブロックをずらせなかったのが今回のスペイン。これもイタリアの守備のうまさによる部分が大きかった印象。カッサーノ×セルヒオ・ラモスの関係性は未だ有効だってことを思い出さなければならない。この関係によって、スペインは組み立ての最初のところで左右の幅を使うことができなくなってしまった。結果として相手の4‐1‐4‐1は本当に微動だにしない。バランスは崩さず、それぞれが最短距離を切る仕事だけをしっかりとやってくる。これでは受け手の協力なしで、縦に入れるのは相当難しい。

よって、前半の長い時間をスペインは無駄なパス回しで終わらせてしまった。横パス横パスの繰り返しで、しかもその横パスが無意図。相手のブロックを横に間延びさせて縦パスを入れやすくするだとか、相手に狙いどころを定めさせずに徐々に押し上げて行くだとかっていうアプローチには全くつながらなかった。縦パスが入らないから仕方なしの横パスっていうイメージ。スペインがボールを圧倒的に保持してるのに、そのほとんどがスペイン陣内っていうおかしな状況が生まれてたと思う。

ちなみに、イタリアの方も徹底していた。スペインの前線の選手がボールを引き出そうと中盤の背後に入ってきたら(ここまで書いてきたとおり稀だったけど)、迷わずにブロックを押し下げた。つまり、出し手は放っておいた。オランダ戦と比べるとえらい違い。オランダ戦では中盤の背後に入るオランダの受け手と、中盤の前にいるオランダの出し手の間で完全にどうしていいか分からなくなってたから。対する、今回は潔かった。やっぱり4‐3のラストブロックが勝負どころだったんだと思う。そういう守備の勝負どころの意思統一が図れただけでも、かなりの進歩だった印象。

そんなこんなで動きのない状態で続いた前半。それが前半の30分を境に徐々に変化していく。ここで登場するのが上に書いたスペインの工夫。具体的にはイニエスタとシルバのサイドを入れ替えた。相手の中盤が寄ってる左サイドよりも、セルヒオ・ラモスにしか興味がないカッサーノがいる右サイドの方が攻めやすい。ただし、このサイドは同時にセルヒオ・ラモスの助けが期待できない。イニエスタに入っても、孤立してつぶされるシーンが多かった。だったら、個人で勝負できるシルバを置いた方がいいっていう考え方。

そして、この考え方が見事にはまる。イタリアの中盤の守備は最短距離を切るっていうのはここまで書いてきたとおり。だから、セナなりシャビなりから右サイドへ展開する斜めのボールは押さえられてない。シルバは右サイドで待ってただけだけど、そこに出し手からボールが供給されることが多くなった。そして、ボールを受けたシルバは仕掛けに入る。焦ってアンブロジーニが戻ってくるシーンが多くなったと思う。

イタリアとしては、危険が明らかに増えた。というわけで、全体のブロックを押し下げる。4‐1‐4‐1のバランスのいいブロックで相手の攻撃を停滞させる時間は終わり。4‐3でラストを固める本来の守備の勝負へと移行した。その後のスペインは深い位置に入り込むシーンが増えていったと思う。相手を押し込んだことで左右の幅を利用する展開も目立つようになっていった。

ただし、それでも相手のゴールまではまだまだ遠い。4‐3で守りに入ったイタリアのブロックをどう崩すのかって部分。で、結局のところそのイタリアのラストブロックを崩すことは最後までできなくなったと思う。スペインの攻撃はまるでミランだった。引いた相手に対してFWが消えてしまう。しかも、さらに悪いことにトップ下のセードルフとカカがいないミラン。だから、中盤での圧倒的な保持にもつながらない。相手のブロックを崩し切る前にミドルシュートで攻撃が終わるっていう形の繰り返しだったように思う。

スペインとしては敵陣に入れず、敵陣に入ってもラストを崩せずっていう散々な前半の流れだったと思う。そして、そんな流れを変えるヒントも見いだせてなかった印象。でも、後半になるとそんな流れに変化が生まれた。それはイタリアが守備のやり方を変えてきてくれたから。前半の4‐1‐4‐1が厄介な存在だったのに、後半のイタリアはペロッタを1つ上げた4‐3‐3へと変更。イタリアはトップの3も特別厳しく守備をしてくるわけじゃないから、その後ろの入るのは楽。そして、トップのウラに入ることはイタリアの4‐3に仕掛けられることを意味する。前半に相手の4‐3に仕掛けるのにあれだけ苦労したのが嘘のよう。

それにイタリアは後半になって攻撃の時間を延ばしてきた。前半よりも攻撃の回数が増え、攻撃に関わる人数も増えた。そして、今回のイタリア、というか今大会のイタリアは攻撃後の切り替えのまずさがある。奪われたあとに、なんだこれ?っていうエアポケットが空いてしまうシーンを頻繁に見かける。何が言いたいかっていうと、後半はスペインのカウンターの流れが増えたと思う。前半は無為に横横につないでいたスペインが縦縦で相手ゴールに向かうシーンを増やした印象。

ちなみに、後半のスペインが縦への意識が強まった要因にセスクの投入があった。セスクの前への飛び出しによって、全然足りてなかった前線の枚数が増えることになったと思う。後ろの出し手はセナで十分だと思うから、相手はセスクの方がいいかなっていう気がする。ちなみに、セスク投入後は守備でもセナを底においたダイヤっぽい形になってた。結果としてより前でボールを奪うチャンスが増えたと思う。

対するイタリアの交代はどうだったか。ペロッタ→カモラネージの交代は正解だったように思う。GLの戦いが嘘のようにカモラネージは運動量が増してた。本来の姿に近かったように思う。攻撃でも守備でもいろいろな場所に顔を出す献身的な動きが光ってた。このカモラネージの交代で、完全に3枚になりかけてた中盤の場所に再び厚みが取り戻された印象。

問題はカッサーノとディ・ナターレの交代。まず、この交代でセルヒオ・ラモスへのマークがあいまいになった。意図的にあいまいにしたのかもしれないけど。要するに普通のバランスで守備をしようとしたってこと。確かに4‐3‐3というか、4‐3‐2‐1というか、とにかく見た目のイレギュラーさはなくなってた。でも、結果的にセルヒオ・ラモスの攻撃参加が前半よりも圧倒的に多くなったわけだけど。

それ以上の問題は攻撃。今回のイタリアの攻撃はそのほとんどがカッサーノを経由して行われていた。この傾向はフランス戦の途中から見られたわけだけど。チームとして不調のトニをあきらめた可能性が高い。トニさん、あんた攻撃で特別な存在じゃなくなったんだから、守備に参加しなよってのが今回のトニの守備の頑張り。か、どうかは知らないけど。

とにかく、カッサーノが攻撃の中心になったイタリア。よって、トニが中心にいたころのような1発ロングボールの回数が明らかに減ったと思う。ピルロ不在の影響もあるかもしれないけど、やっぱりトニを見なくなったからってのが本当のところだと思う。ルーマニア戦でトニに1発ボールを供給しまくってたデ・ロッシは今回もいたわけだから。ちなみに、回数が減ったとはいえ1発のパスが皆無だったわけではない。でも、そのターゲットもトニだけじゃなくてカッサーノってことが多かった。どんだけの手のひら返しだっていう。

で、その中心となるカッサーノが今回いたのが左サイド。攻守の両面において左サイドでプレーしてたカッサーノ。チームの中心が左サイドにいるわけだから、イタリアの攻撃は必然的に左サイドに寄ることとなった。結果としてグロッソの役割が変化する。今までのグロッソは前に空いたスペースを駆け上がる役割。でも、今回は組み立てをする役割。内田から加地へみたいな。ビルドアップのパス回しに参加し、カッサーノに縦パスを入れる。で、そのカッサーノと関係性を築くように前線に出て行く。とにかく、前へ前への今までのグロッソとはちょっと異質。

ついでに、中盤の左寄りに位置するアンブロジーニの攻撃面での役割も大きくなった。フランス戦でのガットゥーゾもそうだったけど、2人だと攻撃では消えてしまうけど、1人なら目立つっていう面白い状況。アンブロジーニは、グロッソと入れ替わりで低い位置に降りて行ってボールを受け、グロッソ&カッサーノの関係性を作ったところでボールを供給するみたいな役割を担ったり、自身がそのサイドの関係性に参加したりと、大忙し。

結局、左サイドはカッサーノ&アンブロジーニ&グロッソの関係性がいい形で作られることとなった。本当はトニが絡んでくるシーンもあったけど、ここには相手のプジョールがしっかりと対応していて、有機的な関係性の形成にはならなかったと思う。トニはやっぱりクロスを中で待つっていう方が似合ってたし、効果的だった。そもそもトニをゴールのゴールへの役割を重視するために、組み立てでの役割を免除したんだと思うし。

というわけで、今回のイタリアの攻撃で目立ったのが左からのクロスにペロッタとトニが中で待つってもの。幅を使う右サイドへの展開もあったけど、右はザンブロッタが1枚。どうしても深い位置には入り込めないから、アーリークロスを入れるっていうパターンが増えた印象。とにかく、カッサーノ中心の攻撃で少ない人数でもそれなりに形を作り出したのが今回のイタリアだったと思う。

そのカッサーノを交代させた後のイタリアの攻撃には怖さがなくなってしまった。後半に入ってから、明らかにカッサーノは目立たなくなってたから、それを考えての交代だったと思うけど。そういう意味では妥当だった。とにかく、カッサーノがいなくなったことで、攻撃の中心は再びトニへ。でも、知ってのとおりに収まりが悪いトニ。さらに、真ん中寄りになった攻撃。前半のようにサイドで起点を作っておけば奪われたとしても相手のカウンターはそれほど怖くない。でも、真ん中寄りの後半は奪われると危険。スペインのカウンターが増えた要因はここら辺にもあったと思う。

ただ、スペインのカウンターが増えたとは言っても、怖さがあまりなかったように思う。それはスペインの守備のやり方が本質的にカウンターに向いていないから。スペインの守備は4‐4‐2。なんとなく4‐4‐2の3ライン形成と言うと、最終ラインを高めに置いてコンパクトなブロックを作るっていうイメージがある。攻撃的なスペインだし。でも、今回の試合のスペインを見る限りでは真逆。最終ラインを低めの位置において、そこに中盤の4を引きつける。だから、コンパクトと言えばコンパクト。

結果としてイタリアの出し手は浮きまくり。しかも、イタリアの前線の選手が下がって受けに行った場合も深追いはしない。基準は最終ラインだから、中盤の選手が深追いをするとはがれてしまう。実際にはがれかけてるシーンもいくつか見られたし。とにかく、出し手をフリーにしてるんだから、目標は受け手。ただし、この受け手に対する対応がどうなのかってのは正直なところ分からない。今回のイタリア相手には堅く守れてた。でも、イタリアの受け手の選択肢が少ないことも事実。

相手が選択肢を増やしてきたらどうなるか。たぶん、バイタルを潰して4‐4で跳ね返すような守備のやり方を取るのかなって気がする。間に入ってきたところは前後で挟み込み、前に対しては2ラインを置くことでゴールへの隙間を空けないっていう形の守備か。とりあえず、イタリアに負けず劣らず消極的な守備のやり方を採ってきたってことだけは確か。

よって、相手のボールを奪う場所は必然的に自陣の深い位置になる。組み立てがうまく行ってない前半は、これが苦しさを生んだ。ボールを奪った場所から相手ゴールまでが遠いのなんのって。後半はカウンターの流れだけど、これまた相手ゴールまでが遠い。縦縦に行く間に味方がついてこれない形。カウンターは単発で、FWはがれで行われることとなった。

ただし、スペインにしてみればこれでいいのかもしれないとも思う。低い位置に守備ブロックを置くってことは、相手をそれだけおびき寄せるってこと。深い位置でスペインが奪った瞬間に相手の背後にはスペースが有り余ってる。そして、スペインの2トップはトーレスとビジャ。なるほどなっていう。今回は相手がイタリアだったから、おびき寄せてるはずなのに、相手の後ろにはしっかりと人数が残ってた。攻撃に人数をかけてくるチームならば、トーレス&ビジャの2トップが生きてくる可能性が高いかもしれない。

とりあえず、今回の内容ではスペインの強さが全く見えてこなかった。守備には確かに穴がないとはいえ、消極的なやり方で見るべきものもなかったし、攻撃には全くスムーズさを感じなかった。まさか、こんなサッカーでGLを勝ち上がってきたわけでもないだろうし、本当に謎。1発勝負の決勝T用の戦い方が今回のものだったのか、イタリアが恐ろしく守備的に戦ってきたことで、そのペースに巻き込まれてしまったのか。次の試合での本領発揮を期待したい。
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2008-06-24 Tue 00:15
オランダ×ロシア
<オランダ:4-2-3-1>
FW:ファン・ニステルローイ
MF:スナイデル-ファン・デル・ファールト-カイト、エンゲラール-デ・ヨング
DF:ファン・ブロンクホルスト-マタイセン-オーイエル-ブラールズ
GK:ファン・デル・サール

<ロシア:4-4-2>
FW:アルシャビン-パブリュチェンコ
MF:ジリヤノフ-セムショフ-サエンコ、セマク
DF:ジルコフ-コロディン-イグナシェビッチ-アニュコフ
GK:アキンフェエフ

GLでは完璧に見えたオランダの攻撃をおさらい。攻撃時のオランダは2‐4‐3‐1みたいな形を採ってくる。役割としては後ろから2列目の4が出し手、前から2列目の3が受け手。4枚横並びの出し手の方は幅を使いながらゆったりとポゼッションを行い、相手のブロックを横に動かして隙間を空けながら、縦パスを入れるタイミングを図る。受け手の3は2列目で自由に動きながら、相手の間に入り込む。このとき両サイドが中寄りに入ってくるのが、新生オランダの攻撃のポイント。

そんな出し手と受け手のタイミングがあったところで縦パスが供給される。そこで攻めきれるなら一気にスピードアップ。受け手が中寄りになっているから、SBが上がっていって幅を確保するようにする。イタリア戦ではスナイデル&ファン・ブロンクホルストの関係性がいくつも作られてたと思う。前に入った時にエンゲラールも攻撃に飛び出していくシーンが目立つけど、効果的に機能したシーンは見たことがない。

ただし、いつでも縦パス→即ゴールへっていう形が作れるわけじゃない。このときのオランダの潔さが1つのポイントになる。縦パスを入れてもゴールに向かえないと判断すると、あっさりとバックパスをする。そういう様子見の縦パスが多いと思う。そして、その様子見の縦パスが相手ブロックを低い位置に釘づけにさせる。出し手の4が押し上げられる。横横縦後横横みたいなオランダの組み立てによって、相手ブロックはズルズルと引かされてしまうことが多かった。

ここで忘れてはいけないのは、そんなオランダのポゼッションサッカーが機能したGLでは、相手が引いて受ける形の守備をしてきたってこと。ルーマニア戦は見てないけど。とにかく、イタリア戦とフランス戦ではオランダの出し手の4を浮かせることができてた。そして、この4が浮いた時点でオランダの勝ち。相手の中盤の選手は自分の前のオランダの出し手を見るのか、後ろで動いてる受け手を見るのかはっきりしなくなってしまった。結果としてオランダの出し手はかなり高い位置まで自由に入り込むことができる流れに。結果として受け手との距離が縮まり、縦パスを入れやすい状況につながったと思う。

ただし、同じように引いて受ける形を採ってきたイタリアとフランスの守備は微妙に異なってたのも事実。それがFWの役割。イタリアのトニは全く守備をしなかった。だから、4-1-4-1の前線の4-1の間に相手の出し手が入り込んでしまった。結果として中盤の4が前にも後ろにも気を使わなければならないこととなった。それに対してフランスの守備時の2トップ(アンリとリベリ)はしっかりと守備ブロックに参加したと思う。そして、2人が任されたのはオランダのボランチへの対応だった。

基本は引いて受ける形のフランスだから、相手のボランチに対しても2トップが厳しく守備をするシーンは見られなかったのは確か。事実、オランダの出し手の4の間でのパス交換には普通にボランチが参加してた。ただし、フランスの2トップはそんなボランチからの縦パスを切る役割を担ってた。ボールは入れさせるし、横パスとかバックパスをするのは自由に出させるけど、縦パスだけは入れさせないぞっていう。そして、見事にオランダの2枚のボランチは縦パスを前線に供給することができなくなったと思う。

結果としてフランス戦でのオランダはスムーズに前線にボールを供給できなくなったと思う。結果としてスナイデルとかファン・デル・ファールトがボランチの位置に降りてくる流れに。本当はその2人を前線の起点にしたかったのに、それができなくなってしまった。仕方がないので右サイドにカイトの場所に起点を作ることが多くなったと思う。完璧に組み立てられたイタリア戦ではあまり目立たなかったカイトに。

こんなことからオランダは出し手に来られると案外もろいんじゃないかっていう疑念が沸いたりしたわけ。実際にイタリア戦もフランス戦も相手が前から来たことで、オランダは前半のようなポゼッションサッカーを行うことができなかった。その代わりにカウンターで追加点を重ねたわけだけど。問題はこれが狙いどおりだったのか、そうじゃなかったのかってこと。要するに、ポゼッションができたのにしなかったのか、それともポゼッションができなかったのかってこと。答えは永遠に闇の中。

そもそもオランダは前線から来られるとやばいんじゃないかっていう疑念に対してはもっと分かりやすい予兆があったことはあった。全てはイタリア戦とフランス戦の後半の流れに表れてた。どちらのチームも後がなくなった後半は前半とは打って変わって前線から積極的なプレッシャーをかけてきた。それに対してオランダは前半とは全く違った戦い方を採る。ポゼッションは放棄して前線にとにかく送り込む作戦。これはおびき寄せてウラを取るっていう作戦から来たものだろうって思ってた。もちろん、そんな理由も大きなウェイトを占めていたと思う。でも、実はプレッシャーに弱くて蹴ってしまう側面もあったんじゃないかと思う。結局、真実は闇の中。

ただ、加えて言えば、フランス戦では立ち上がりに厳しく来たフランスがその守備のペースを落とすまでオランダは自分たちの形を作ることができなかった。フランスはその守備を続けてればよかったのにってのは、その試合の記事でも書いたとおり。オランダとしてはフランスが守備のペースを落としてくれて助かったって感じかだったかもしれない。その後すぐに自分たちのポゼッションサッカーに入り、すぐに先制点を奪ったオランダだった。先制点は1発ボールからのつながりのCKから。ただ、この1発ボールがSBのファン・ブロンクホルスト→右SMFカイトを狙うものだったのは象徴的。出し手はボランチではなく、受け手は左サイドではなかった。フランス相手にやりたいことを微妙にやらせてもらえなかったことを表してたかもしれない。

1つめの弱点はこれぐらいにしておいて、次に2つめの弱点について見て行きたい。フランス戦のときの記事でちょっと詳しく書いた守備の問題について。オランダの守備はよくも悪くも個人任せ。前線からの守備はせず、相手がボールを自陣に入れてきたところで守備を開始。その守備の開始が個人任せ。ある程度、見るべき相手をある程度定めておいて、入りどころを狙うっていう考え方がベースにあったように思う。

イタリア戦ではこれが成功。なぜならばイタリアの攻撃は選択肢が少なかったし、イタリアの受け手はあまり動かずにボールを受けようとしていたから。結果として、オランダの守備陣は文字どおりに入りどころを狙って守備をすることができてた。対するフランス戦ではあっさりと自陣に入られるシーンが多くなる。それはフランスのマルダ、リベリ当たりが積極的に動いてボールを引き出してたから。もともと対応すべきだったオランダの選手の責任下を離れた相手が浮いてしまっていた。それでも、そうやって前線にボールを入れたフランスが結局は個々の分断攻撃をしてきたから、オランダはあっさりと守ることができたと思う。要するにイタリア戦もフランス戦も個×個の勝負を作ることができた。

オランダの守備相手にはいかに組織×個の局面を作るかがポイントになると。オランダの守備はあくまでも入りどころ、入ったところに対する守備。入る前で引っ掛けるような守備はあまり行われない。相手より先に触るとすれば、それも個々の出足の速さ。それでも入りどころに対して、忠実に個々が守備をすることで、相手の攻撃の流れを分断する。繰り返しになるけど、フランス戦とイタリア戦ではそんなやり方が機能した。

でも、そんな入りどころの守備が効く前に次に展開したらどうなるのか。相手が寄せきる前に次へと展開する。そして、それを繰り返す。寄せられる前に次、寄せられる前に次。そんな局面を素早く変えるパス回しを繰り返すことで個ベースのオランダの守備には混乱が生まれるんじゃないかって気がした。そこから、フランス戦のときの記事でも書いたようなルーマニアへの期待が生まれたわけ。

ルーマニアの狭い場所でのトライアングル形成と、そういう場所から広い場所への展開力のよさはイタリア戦でかなり目立ってた。そうやって組織としての攻撃ができれば、個人任せのオランダの守備の上を行くんじゃないかっていう期待。ただし、ルーマニアが攻撃の流れになればっていう条件付きだった。何しろルーマニアも引いて受ける守備をするチーム。オランダが圧倒的に主導権を握る展開だって十分に想定される。オランダの守備に問題があっても、オランダが守備をしなければ何の問題もないわけで。本当はどうなったのかは知らない。

さて、ここまでが壮大なる前ふり。イタリアはオランダの攻守の弱点のどちらにもアプローチできなかった。フランスは攻守の弱点の両方を微妙に突こうとしてた。ルーマニアは守備の弱点を突く下地はあった(実際にどうなかったかは分からない)。さて、それに対して今回のロシアはどういうやり方を採ってきたのか。それがここからのテーマになってくる。

まず、守備に関してはロシアも最初のベースにあったのはイタリアとかフランスと大まかに言えば同じやり方。つまり、前線からは行かずに自陣にブロックを作って受ける形。ただし、ヒディンクはヒディンク。フランスとかイタリアと同じ失敗を犯すことはなかったと思う。はっきり言って、その2チームと同じだったのは、自陣にブロックを作るっていう一番大まかな部分だけ。それ以外では全く違った質の守備を行ってきた印象。

まず、ロシアの前半の守備ブロックのバランスが恐ろしく悪かった。最初には4‐1‐3‐2って形で書いたけど、それは予想システムに便宜上当てはめただけ。本当は数字では当てはめられないような形になってたのが本当のところ。無理やりに言うならば、2列目の3が右側に寄った4‐2‐3‐1みたいな形。言葉では言い表わすのが難しいので、下の図に表してみる。

―――19―――
――10―20―9―
――17―11――
18―8―4―22―

パブリュチェンコは基本的には守備が免除。便宜上、その相方として入っているアルシャビンがトップ下の場所でセムショフと並ぶ形。右サイドにはそのままサエンコが入った。これが右寄りの2列目。で、バランスから言えば本来は左サイドに入るべきジリヤノフがセマクと並んでボランチに入るような形を採ってきたと思う。恐ろしくバランスの悪い守備ブロック。でも、ヒディンクはこれを意図して作ってるから憎らしかったりする。

まず、キーとなる相手の出し手への対応。上にも書いたようにロシアは前線から積極的に出し手をつぶしに行くような守備のやり方を採ってこなかった。ただ、ボランチのところに対してはフランス的な最低限の対応だけはしてきた印象。フランスの2トップが担った役割をロシアは2枚のトップ下に任せたと思う。アルシャビンとセムショフがボランチからの縦パスを入れさせないっていう最低限の仕事をしていた。ついでに、相手が飛び出してきた場合はしっかりと捕まえるっていう役割も与えられてたと思う。

ただし、そんなフランスのやり方をそのまま当てはめるようなヒディンクではなかった。フランスが抑えられなかった、相手のSBの場所にもしっかりと対応してきたと思う。攻撃面を考えると、率先して押さえておきたいオランダの左SBのファン・ブロンクホルストに対しては、2列目の右に入ったサエンコが対応。高めの位置でボール自体を入れさせないような対応をしてきた印象。だから、今回の試合ではオランダの低い位置のパス回しに全く幅が出なかった。ファン・ブロンクホルストは消えた存在になっていたと思う。

じゃあ、右サイドはどうしたのかっていう話。でも、それはひとまず棚上げにしといて、次に受け手に対する対応を見てみたい。今回のロシアの守備のポイントは出し手につく人と受け手につく人をしっかりと分けたってこと。結果として、イタリアみたいに中盤が出し手に行くのか受け手に行くのかってことを気にすることがなくなった。出し手に関しては、ここまで書いてきたように変則的な2列目の3枚が対応。それに対して受け手は後ろの4‐2が対応する形になったと思う。

今回のロシアは最終ラインを高い位置に設定してきた。そうやって中盤とDFの関係性を近づけることによって、相手の受け手の3枚が使いたいスペースを完全に潰した。さらに、その受け手に対してはマンマーク気味に対応。入ったところに0距離で当たれるような体制を作り出した。そして、そういう0距離の最初の守備で相手を足止めしておいて、1つ前のラインと協力して囲い込みに入る。このときには出し手に対する守備をしてる選手も戻りながら参加してたと思う。コンパクトブロック形成によってもたらされた選手間の距離の近さも存分に活用してた印象。

というわけで、前線からは行かないといってもロシアの守備はオランダの出し手にも受け手にも完璧に対応することができてたと思う。ただし、ここで棚上げしていた問題に戻って考えなければならない。スカスカの左サイドはどうしたんだってこと。ここの問題を解決しなければ、出し手に対しても受け手に対しても完璧に対応したなんてことは言えないのは当たり前の話なわけだから。

で、実際にロシアがどうしたかって言うと、実は何もしなかった。これが今回のロシアの守備の最大のポイントだったと思う。要するにブラールズは浮かせておいても大丈夫だっていう判断。もっと言えば、ブラールズから攻めさせてやろうっていう判断。そういう意味ではわざとロシアは左サイドを空けていたんじゃないかとさえ思う。なぜかって言うと、相手のボランチの対応にしたって、基本はトップのアルシャビンがつくデ・ヨングの方が、本来的にトップ下に入ってたセムショフがつくエンゲラール寄りも明らかに浮くシーンが目立ったから。

これで完全にオランダの攻撃は右サイド寄りに限定されることとなった。出し手はブラールズとデ・ヨング。受け手はカイト。ファン・ブロンクホルストとエンゲラールが出し手となってスナイデルが受け手となる左サイドと比べると怖さは半減。左サイドのスナイデル中心に作って、右からカイトが斜めにゴール前に入ってくるっていう方がよっぽどレギュラーな形。ブラールズとデ・ヨングは攻撃に出て行くファン・ブロンクホルストとエンゲラールとのバランスを考えて残るってのがレギュラーな形。それに対して、今回のオランダの攻撃はイレギュラーな形を取らざるを得なくなったって言える。ロシアのしたたかなやり方によって。

右のカイト&デ・ヨング&ブラールズの3枚。この3枚で相手のリベリ&マルダ&エブラの攻撃をシャットアウトしたのがフランス戦。そういう意味ではやっぱり攻撃よりは守備でいいところを見せる右サイド。それが今回のロシア戦では攻められるなら攻めてみろよっていう形に晒されてるんだから、皮肉としかいいようがなかった気がする。

ついでに言えば、ロシアとしては後ろの守りやすさも考えてわざと左サイドを空けておいたんじゃないかって気がする。オランダの攻撃が厄介なのは、低い位置の出し手の4枚が左右の幅を最大限に使ってくること。そういう横のアプローチによって、ブロックが左右に動かされ、結果として横に間延びさせられる。そうやって縦パスの隙間をあけられる。狙いどころが定まらずにズルズルと引かされる。それに相手の4枚を完全に機能させてしまうと、そのうちのどこから縦パスが出てくるか分からないってのもかなりやりにくいこと。

対して、今回のロシアの守り方は相手の左を消滅させた。エンゲラールもファン・ブロンクホルストも組み立てでほとんど顔を見せてない。そうやって相手の左サイドを完全に押さえる代償として払ったのが、相手の右サイドを完全に空けてしまうってことだったと思う。ただし、これによってオランダの攻撃は完全に右寄りに限定されることとなった。

結果として、オランダは幅を使った組み立ては不可能。低い位置で持ちすぎると狙われる。だから、オランダは攻め急ぎ見たいな流れになった。縦縦へとさっさと入れてしまう流れ。イタリア戦とフランス戦では全く見られなかった形。さらに、オランダの出し手候補は2枚しかいない。アルシャビンがしっかりとブロックに参加してれば、ブラールズしかいない。前線から守備をしなくても、相手の出し手を限定することに成功したと思う。なんというヒディンク。

加えて、受け手の方も限定された。極端なことを言えばカイトしかいなかったと思う。ファン・ニステルローイっていう選択肢がなかったではないけど、そこはチームとして完全に押さえてる。入りどころで守備をして、すぐに複数で囲い込むアプローチができる体制が整ってた。だったら、当面は1×1で勝負できるカイトを使うっていうことが多くなるのは当たり前だった。

でも、この受け手の方に関してはロシアが考えていた流れかどうかは微妙。普通にスナイデルとかファン・デル・ファールトが右サイドに顔を出してくれば済むだけの話だった。大体において新生オランダのよさは2列目が自由に動いてボールを引き出すことだったはず。そんな動きが最初はほとんど見られなかったと思う。リスクを負わないことを優先して、スナイデルが逆サイドまで出てくるのを自重したのは分からないではない。ただ、ファン・デル・ファールトまで消える必要は全くなかった。前回は積極的に右サイドに流れて起点になってたファン・デル・ファールトだったのに。

というわけで、攻撃の核となるべきスナイデルとファン・デル・ファールトが前半の長い時間で消えていたと思う。フランス戦でも攻撃が右寄りになってたし、2人とも高い位置ではあまり目立てなかったのも事実。でも、その要因は2人が出し手の方を助けに来ることが多かったからだった。むしろ、今回の方が助けが必要な流れだったと思うけど、そちらにも顔を出さず。フランス戦の後遺症かもしれない。あの試合はスナイデルとかファン・デル・ファールトが助けに来すぎて前線に人数が足りなくなってたから。それを考えて、前で受け手として振舞うことに重点を置いた可能性もある。ただ、消えちゃったら意味がない。

というわけで、右寄りから前線に入れたボールをことごとく潰されていったオランダ。もちろん、延々とそんな無駄な攻撃を繰り返していたわけではなかった。ブラールズがなめんなよってことで攻撃参加を繰り返すような形を増やした印象。でも、なぜかその時にカイトが中寄りに入っているシーンが多くなってた。ブラールズのコースを空けたのか。でも、これだと結局はサイドの1×1は変わらないわけで。深い位置に入るシーンは増えたけど、ゴールにつながる匂いはしなかった。

じゃあってことでやっとスナイデルが動きを始めたと思う。右寄りの攻撃に絡むために、右サイドに顔を出すシーンが増えていった。ただ、これはあくまでもカイトとの左右の入れ替えだったように思う。カイトとスナイデルが同サイドに顔を出したりしたら面白かったのに、今回のオランダはどうしても大きくポジションを崩したくなかったらしい。その辺はロシアのカウンターに対する尊敬の意味もあったんじゃないかって気がする。あまり流動的にやりすぎると守備への切り替えで危ないぞっていう。そう考えると立ち上がりから、ファン・デル・ファールトとスナイデルが消えた理由も説明できる。

それでもスナイデルが目立ち始めた後のオランダの攻撃はなんとかリズムを取り戻したように見えた。それはスナイデルが右に出てきたことよりも、上下の動きを活発化させたことに意味があったと思う。スナイデルが下がっていくと、ロシアが見きれてない出し手が1枚増えることになる。降りていったスナイデルを捕まえようとすると、背後にスペースを残してくることになるし、行かなければ自由な組み立てを許すことに。

そんなジレンマの中でロシアの守備陣は前半の長い時間のように、完全に押さえきるのは難しい流れになっていった。ただ、スナイデルが降りて行くと、前線が足りないっていうオランダの問題は解決できず。エンゲラールが代わりに出て行く動きを増やしてはいたけど、今回も機能はしなかった。ロシアのゴールはまだまだ遠い。オランダの攻撃の形が見えそうでやっぱり見えない。そんな流れの中で前半が終了。

さて、後半に行く前にロシアの攻撃についても見ておきたい。ロシアは攻撃のポイントは守備と同じように左右のバランスが崩れていること。立ち上がりは単純に右サイドからの攻撃が目立ってたと思う。何が単純かっていうと、右はSMFとSBが普通にいるってこと。サエンコとアニュコフの関係にセムショフが右に流れて絡みながら、右サイドの深い位置にまで侵攻していった。

そして、この右サイドのやり方がロシアのサイドの考え方を表している。まず、サイドでは複数の関係性を作りましょうってこと。個の力でサイドを崩し切るっていうシーンはほとんど見られなかった。後ろからの回りこみ、中からの流れを利用しながら、常に数的優位を意識したサイドの崩しが見られたと思う。そして、そんなサイドは深い位置までえぐりましょうってのがもう1つだったと思う。深い位置からのクロスでどんだけ決定的なチャンスを作ったかっていう話。CKがかなり多くなった要因もこれ。

そして、最初は右寄りに偏ってたロシアの攻撃も、時間が経つにつれて左右のバランスが回復していった。右は固定的な面子を利用しているのに対して、左サイドは出入りの激しいやり方を採ってきたと思う。左にはSMFが存在してなかったから。基本はジルコフの積極的な攻撃参加。だから、リスクを冒さない最初の時間は右寄りでの組み立てが増えたんだと思う。さらにアルシャビン、パブリチェンコが流れて絡むっていう形を作ってきたと思う。先制点のシーンは左サイドをボランチのセマクが飛び出していったシーン。サイド重視の攻撃の中で、左右のやり方が異なってたのは面白かった。

そんなロシアの攻撃のもう1つのポイントは何といってものカウンター。引いて相手の攻撃を受け、縦パスを引っ掛けた勢いのままに一気に縦に飛び出していくっていう形がかなり多くなったと思う。そして、このカウンターにかける人数がかなり多いのがロシア。選手が後ろから次々と飛び出していく。ボールを抜いく飛び出しがかなり多くなった印象。

昨シーズンのエスパルスがそんな攻撃をしてたなって気がする。低い位置のバイタルつぶしの守備で奪ってから、抜いて抜いての人数をかけたカウンター。あとはローマもそんなイメージかもしれない。ただ、両チームとは異なった点があるのも事実。昨シーズンのエルパルスにもローマにもトップの場所に収める選手がいたってこと。奪って→当てて→後ろから押し上げっていうプロセスが踏まれた。そういう意味ではロシアとはちょっと違うかなって気がする。ロシアは誰かに収めてっていうよりも、前に向かってボールを運んでいる選手をさらに抜いて行くみたいな形だったから。どんだけ走るのかっていう話。

このボールを抜かすっていう動きはカウンターの流れに関わらず、ロシアの攻撃における重要な決め事であるように思った。近づくランニングではなく、遠ざかるランニングでもなく、通り過ぎるランニング。前線にボールがあると、それを抜いて行く選手が多い。だから、高い位置でボールを持ってると、必然的に最前線に出てくる人数がかなり多くなることになる。抜かして抜かしてだから。延長後半の立ち上がりの波状攻撃は、これが延長後半かよっていうレベルに後ろからの飛び出しが豊富だったように思う。

さて、そんなロシアだけど前半は低い位置でのボールの保持時間も延びていたように思う。そして、ここにおいてオランダの守備の弱点が見え隠れしていた。オランダの守備も引いて受ける形。立ち上がりはともかく、基本的には前線からの守備には興味がない。だから、出し手はフリー。必然的に受け手を押さえる必要がある。でも、その受け手への対応が個人任せのオランダ。フランス戦とイタリア戦では大きな問題につながらなかったけど、今回はちょっと危ないシーンが見え隠れしてた。

そもそも、個人任せのオランダの守備ってのはどういうことか。それはある程度、見るべき相手を定めておいて、その選手へボールが入るところ、入ったところを、見るべき選手がしっかりと見るって形。イタリアは前線の受け手が少なく、さらにその動きが少なかったから、そんなオランダの守備が完璧に機能。フランスは受け手は動きながらいい形でボールを引き出したけど、その後の関係性が作れずに、結局はオランダの守備陣と個×個の戦いになってしまってジ・エンド。

オランダの守備相手にはいかに組織×個の局面を作るかがポイントになると。オランダの守備はあくまでも入りどころ、入ったところに対する守備。入る前で引っ掛けるような守備はあまり行われない。相手より先に触るとすれば、それも個々の出足の速さ。それでも入りどころに対して、忠実に個々が守備をすることで、相手の攻撃の流れを分断する。だから、相手が寄せきる前に次々と局面を変えられるようなルーマニアには期待してたわけ。実際にどうなったのかは知らないけど、チャンスはあまり作れなかった模様。

じゃあ、ロシアはってこと。ロシアはカウンター的な速攻が無理ならば、落ち着いて組み立てるっていうやり方を採ったと思う。そして、低い位置での保持時間が延びる結果になった。相手が前線では全く守備をしてこないんだから当たり前。そして、そういう低い位置でのパス回しの間に多くの選手が前線に入って行って、前の厚みを増してたと思う。

出し手は浮いたロシア、さらに受け手の枚数も増やすことができた。そして、前線の選手が降りてきて受けようとする動きを繰り返してたのが効果的だったと思う。そこで受けられるかどうかってことよりも、そうやって降りてくる動きをしたこと自体が効果的だった。なぜならば、オランダは見るべき相手をある程度定めてる。だから、ロシアの選手が降りて行くと、それにつられて引っ張り出されることとなる。結果としてDFと中盤の間にスペースが生まれることが多くなってた印象。

当然のようにそのスペースに縦パスを狙うロシア。そして、その場所でFKをもらうシーンが多発した。これをオランダの守備の方から見ると分かりやすい。DFと中盤の間にはスペースがあったオランダの守備ブロック。さらに、ロシアは前線に人数が多いから、そこに起点を作られるとあっさりと次の場所に展開される可能性がある。ここでパス回しが始まると個ベースのオランダの守備には狙いどころが定められなくなるってのたポイント。

ロシアの前線の選手にボールが入ってしまったら、相手は前を向いて個の突破もできるし、少ないタッチで周囲を使うこともできる。それは許せない。何としても入りどころを潰さなければならない。でも、あくまでも守備は個がベースになるオランダ。前線では制限が効いてない。そういえば今回のオランダは4‐4‐1‐1っぽい形の守備ブロックを作ってた。余計に制限が効かない。だから、入りどころを潰すといっても根拠がない。結果としてギリギリの対応になる。そして、ファールが増える。そんな流れだった印象。

ちなみに、後半から延長にかけてアルシャビンが目立ちまくった要因もここにあったと思う。オランダは組織としての守備が機能してない。相手のキーであるアルシャビンを止めるのにも、個人の力が要求される。疲れていない時間帯は入りどころに対してしっかりと距離を詰めて対応することができた(それでも結構やられてた)。でも、疲れてしまうと入りどころに行けない。しかも、厄介なことにアルシャビンは動きまくりだったし。結果としてアルシャビンが前を向いてプレーできるシーンが増えることになった。そして、今回の試合で前を向いたアルシャビンを止められる選手はいなかった。

さて、話は戻って後半の流れに。後半の開始時にオランダはカイト→ファン・ペルシーの交代。たぶん、スペースのある右サイドで仕掛けたいだけ仕掛けてしまえっていう交代だったんじゃないかと思う。でも、残念ながら時すでに遅し。後半のロシアは変なバランスの4‐2‐3‐1ブロックで受ける形をやめた。たぶん、ダイヤモンドの4‐4‐2になってたんじゃないかっていう気がする。

変わったのは形だけじゃない。前線から積極的に守備をするようになったと思う。それはおそらく前半の後半の流れでオランダが攻撃のヒントを見出してきたから。それはスナイデルを動かすことで攻撃をスムーズに組み立てるってこと。受ける形だと動きを始めた相手にブロックをめちゃくちゃにされる可能性がある。だったら、その1つ前を押さえなければならない。というわけで、前線からの守備を行うことにした。最前線を1トップを2トップに変えたあたりが本気度を表してる。

そして、この前線からの守備が思ったよりも機能してた印象。2トップが追いかけたところに、中盤以降がしっかりとついてくる。中盤の場所で複数枚の関係で相手を囲い込むシーンも見られて、後半はオランダが自陣から抜け出せない時間が長くなったと思う。そう考えると、やっぱりオランダは前線から来られると脆いのかって話。せっかく前半にヒントが見え隠れした攻撃も、いい形で前線にボールが供給できなければ無意味だったと思う。

そもそも攻撃では後ろからの飛び出しをベースとするロシア。よって、攻撃にかける人数は多い。それに高い位置からの守備意識が合わさるとどうなるかっていう話。攻め上がったままの位置で積極的な守備をするアーセナル的なやり方が可能になった。そして、そんな完全ロシアペースの中でロシアに先制点。このシーンも高い位置で相手のボールを引っ掛けたシーンから。上でも何度か取り上げたとおり、切り替えの瞬間に一気にセマクが左サイドを飛び出していった。実はこれが今回のロシアのベストの流れだったんじゃないかと思う。高い位置で奪って、その瞬間に後ろの選手が上がって行く。それを使って一気に縦を侵攻、重要視するサイドを深くえぐって、ノンストップでゴールまでってシーンだった。

オランダはエンゲラール→アフェライ。これでファン・デル・ファールトを低い位置に置いたことで、ロシアの前線からの守備への耐性をつけた。先制点を奪ったロシアも前線からの守備の勢いを弱めたから、この交代の後の数分のオランダの攻撃は今回の試合で初めて攻撃の形を作れてた印象。ロシアがダイヤにしたことで、それでもサイドに対応しようとしてたことで、中盤の密度が下がってた。そんな中盤の場所でスナイデルが受け、ファン・ペルシーが受け。そうやってうまく相手ゴールに向かう攻撃が可能になってた印象。

もちろん、ロシアもそんな打たれっぱなしの状況では放置しない。結局、ロシアはベタ引きの守備ブロックで完全に守りに入った。4‐3でラストを完全に固めて、その1つ前を2枚で見るみたいな形。まあ、完全に守りに入ったとは言ってもカウンターの芽はしっかりと残しておいたけど。要するに攻撃への切り替えでは相変わらず多くの人数が前線に飛び出していくシーンが目立ったってこと。でも、やっぱり得点前の流れから比べると個人が強く出たカウンターが多くなったのは確かだった。

そして、この4‐3ブロックをオランダはどうしても崩せなかったと思う。その理由は攻撃が真ん中へ真ん中へと入っていってしまったから。尋常じゃないレベルに真ん中に偏ってた。どのぐらいかっていうと、ロシアのDFラインの4が余裕でペナルティエリアの幅内に収まるレベル。当然、オランダの攻撃も余裕でその幅の中に収まった。後ろから上がってきた選手もことごとく真ん中へと引きつけられてく流れだったと思う。ファン・ブロンクホルストがFWの場所に入ってきたときは、もうダメだなって思ったりもした。

新生オランダの一番のポイントは両サイドワイドの攻撃を排除したこと。その究極の形が今回の後半の悪い流れのオランダ。全員が真ん中に入って、全く幅を使えない。たまにサイドに起点を作ってもことごとく中に入ってきてしまう。ロシアは超密集4‐3ブロックで待ってるだけでよかった。オランダの選手もそんな超密集地帯の中で待ってる選手が多くなった。しかも、あまりにも人が入りすぎて味方が味方のスペースを消してるレベル。

そんなオランダの前線をやや引いた位置から操ろうとしてたスナイデルがキレた。のかどうかは分からないけど、完全に真ん中に入った前線の選手をシカとするプレーを増やす。そんなとこで待っててもパスを出せねーよっていう。よって、半ばヤケクソ気味のスナイデルのミドルシュートが馬鹿みたいに多くなる流れ。ただし、ヤケクソとは書いたものの、その全てがいわゆる“いいシュート”になるあたりはさすがスナイデルってとこか。

そして、そんなスナイデルの頑張りが報われて後半終了間際に同点に追いついたオランダ。今回のオランダの頼みの綱だったセットプレーからの得点。セットプレー以外ではオランダは全くチャンスを作れてない。あとはスナイデルのミドルもあったけど。逆にロシアはセットプレー以外は完全に押さえてたって言える。ただし、セットプレーであまりにも決定的なチャンスを作らせすぎだったのも事実。オランダの選手の背がもう少し高ければゴールっていうシーンがかなり多かった。

そんなこんなで延長戦へ突入。延長戦について一言で表すことができる。走り勝ったロシアが試合にも勝ったってこと。同点に追いついた後のオランダは落ち着きを取り戻して、サイドの幅を使うことを思い出した。でも、結果として選手間の距離が離れることになったと思う。そして、その距離を埋めるだけの動きができる選手はオランダには残されてなかった。完全に足が止まってた。対するロシアは2点目のシーンを見てもわかるとおり、まだまだ元気。走ることはやっぱり重要ですね、オシムさん。それが今回の試合のまとめ。
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2008-06-23 Mon 00:41
日本×バーレーン
<日本代表:4-4-2>
FW:玉田-佐藤
MF:本田-遠藤-憲剛-俊輔
DF:安田-中澤-トゥーリオ-内田
GK:楢崎

バーレーンはホームの試合では自陣に引きこもって、入ってきたところを狙ってたバーレーン。しかも、その入ってきたところの守備自体も結構ルーズだったバーレーン。日本が蹴りまくり作戦を採ってきたきたことによって、そういう守備の弱点が隠されていたのは事実。そんなホームでのバーレーンの戦い方と比較すると、今回は戦い方にかなりのイメチェンを図ってきたように思う。

バーレーンの基本的なシステムは4‐3‐3。4‐5‐1に見えることが多かったのも確かだけど。とにかく、念頭に置かれていた守備は前線から積極的に行くものだった気がする。1トップというか3トップの頭に入った選手が日本陣内のペナルティーエリア直前のボールに対しても追いかけて行く姿勢が見られたと思う。そんな守備のスタートに2列目以下がしっかりと連動することで、高い位置で奪おうっていう守備をしてきたと思う。

とはいえ、バーレーンはバーレーン。最前線から連動性を高める守備をしてきたとしても、抜け道は多かった気がする。前線の3トップが頑張っても、中盤がついてこないっていうことも多かったし。確かに日本の最終ラインがスムーズにボールを持ちあがるのは難しかったけど、1つ前の遠藤&憲剛の助けを借りることで、さらに両SBを有効活用して幅を使うことで、相手の前線からの守備に対しても、しっかりとつないで行くようなやり方を採ることができた。

そして、相手の最初の守備ブロックを抜け出すとどうなるか。前線からの守備が念頭にあるバーレーンの守備ブロックは超高い。そのウラにはスペースがたくさんある。ウラのスペースは玉田&佐藤の2トップにとっては大好物。そういえば今回もちびっこ2トップの組み合わせだった。でも、その役割はイメチェン岡田ジャパンが採用したちびっこ2トップの役割とは異なっていた気がする。今までは2トップ(特に玉田)には組み立てに参加してくることが求められてたけど、今回は純粋にFW的に動くことが多くなってた。要するに、後ろのトップ下のスペースに出てくるよりは、得点に直結する相手のウラのスペースを狙えってこと。

これがベンチからの指示なのか、自分たちの判断なのかは分からない。でも、この2トップの役割の変化が後々になって悪い影響をもたらしたのは事実。とはいえ、立ち上がりはそんなウラへの抜け出しがチャンスに直結してたのも、また事実。普通に遠藤に蹴らしておけばあっさり先制点を奪えたはずのPKも佐藤のウラへの抜け出しから。相手の最前線の守備を抜け出し、中盤との間にできたエアポケットに入り込んで、直接ウラ抜けスルーパスっていう形で、いくつかのチャンスを作った立ち上がりの流れだった。玉田と佐藤のスピードが生きまくった流れ。

だから、この時間帯は恐ろしく縦へのスピードが速い日本の展開が生まれたと思う。単純にFWに出す、1発ウラ狙いは確かにいつでも繰り出せる形ではない。でも、そんなときにはサイドを使った縦急ぎ攻撃を行った印象。相手のWGのウラにSBを抜け出させて、そこにボールを出して、そのサイドで縦へ縦へと一気に進むっていうやり方も目立ってたと思う。

おそらく、中→中で一気に相手のウラを突くにしろ、中→外でサイドを突き進むにしろ、岡田監督にとっては理想に近いサッカーだったんじゃないかと思う。手数をかけずに一気に縦へと進む形なわけだから。低い位置でのパス交換で相手の前線からの守備をいなしておいて、抜けだしたら中盤を一気に通り過ぎる縦縦サッカーが多く見られた。中盤に技術のある選手を並べておきながら、その中盤が軽視されたのが今回の日本代表。立ち上がりのように、縦縦の攻撃を簡単にできてる時間はよかったけど、最終的には中盤がなくなってしまう弊害ばかりが目立ってたように思う。

バーレーンの方としては前線からの守備に怖さが生まれてくる。前から行ったとしても、そこで奪えずに、それだけじゃなくて、後ろのスペースを使われまくり。せっかく頑張って前から行ってるのに、それがピンチにつながるんじゃ割りに合わない。でも、今回のバーレーンはめげなかった。あくまでも守備は前線からっていう時間帯が途中までは続いていたと思う。ウラを簡単に取られるのは出し手をフリーにしてしまうからなんだっていう方向の修正が見られた印象。中盤の1‐2の前に入った2枚が立ち上がりの時間帯よりも前線への守備意識を高めて、日本の出し手に対してしっかりとプレッシャーをかけに行くシーンが目立ったと思う。結果として日本が1発でウラに通すようなシーンは見られなくなった。

ただし、ここで問題が1つ。バーレーンの中盤の選手が守備意識を高めた結果もたらされたのは、日本の攻撃の最短距離を防ぐっていうことだった。逆に言えば日本がつなごうとすれば、前に引っ張り出されている分だけ、DFとの間にスペースを残してきていることになる。でも、残念ながら今回の日本はそこを使えないシーンが多かった。いつもなら玉田が降りてきたりするトップ下の場所なんだけど、今回の玉田は前へ前へ。憲剛が積極的に出てきたりもしてたけど、そこには相手の中盤の選手が一緒に戻ってくればいいだけの話。

でも、その素晴らしいスペースをスペースのまま残しておくのはもったいないっていう意識が日本の方にも生まれてくる。徐々に俊輔とか本田っていう基本的ポジションがサイドの2人が中に流れてボールを受けるシーンが目立つようになった。ここでやっとバーレーンの守備にバーレーンらしさが取り戻された気がする。要するにバーレーンがベタ引き守備ブロックを作る時間が長くなったってこと。

ただし、やっぱり基本の守備意識が前線にあったのは事実。その後のバーレーンも攻撃後の流れなんかでは前線からの守備が機能したりしてた。ポイントは1トップの場所で守備のスタートを切る選手が自分の前に対する守備ができるかどうかにあったと思う。1トップの選手は自分の背後にボールが入ると、守備に参加せずに前線に残ったままっていう形が多かったから。そうなったら、中盤の高めの2枚が一応は日本の出し手をケアするけど、その背後が危険になればすぐに深い位置の守備ブロックへと移行するっていうやり方が見られた印象。

ただ、バーレーンの1トップの選手の守備に対する意識が低いかって言われるとそうでもない。背後に入られてすぐは守備に関心がないかのように振舞って、前線に残ってたりするんだけど、ベタ引きの流れになると突如として戻りながらの守備をしたりしてた。ベタ引きの相手ブロック前で日本がボールを左右に動かしてたりすると、急に真ん中の遠藤のところを狙って戻ってきて守備をするシーンが見られたと思う。そう考えると基本的な守備意識はそれなりに高いんだろうなって思う。そして、1トップの場所にその選手が入ったことで、バーレーンの前線からの守備もある程度の形になってたんだろうなって気がする。

とりあえず、引いて守らざるを得ない時間が長くなっていったバーレーン。ただし、今回のイメチェンバーレーンは一味違った。引いて守るって言っても、完全なるベタ引きにはならなかった。要するにゴール前にとにかく人数をかけとけっていう形の守備にはならなかったと思う。低い位置にブロックを作るのは確かだけど、最終ラインはある程度の場所にとどめてたし、いい意味で中盤とDFラインの境目がはっきりしてた。今回のバーレーンのベタ引きブロックには組織としての秩序が見られたと言っても過言ではない。

具体的に見てみる。まず、ベースとなるのは中盤とDFラインで作り上げる4‐3の守備ブロック。ここも中盤は絶えず日本の出し手へのプレッシャーをかけて行ってた。そういう意味では文字どおりのベタ引きではなかったとも言える。とにかく、そんなわけで日本が中→中の単純な縦パスを入れるのは難しい流れにつながったと思う。それにたとえ日本が縦パスを入れてきたとしても、今回のバーレーンは一味違ってたし。

自陣で守りつつも受け手へのケアがルーズだった、前回のバーレーンはどこへやら。日本のトップ(的な役割をする)選手に縦パスが入った時のバーレーンの選手の守備意識はかなり高かった。バイタルエリアに入ってきた縦パスには厳しく当たることが明確になってたと思う。そのせいで日本にいい場所でのFKをいくつか与えてたのはご愛敬。そして、そんな1つめの守備の2つめ以降がすぐに連動してたのが今回のバーレーンのバーレーンらしくないところ。中盤の選手は前に対してだけではなく、後ろへの守備もしかりとやってた印象。そうやって挟み込みを作った。

バーレーンというか中東のチームは守備の1つ1つが勝負どころっていうイメージが強い。個々の力量で相手からボールを奪うべきだっていう。でも、今回のバーレーンは日本の縦パスの入りどころに厳しく当たった最初の守備に対して、すぐに周囲が集中してくるようなシーンが多く見られたと思う。中→中への縦パスを入れること自体が困難だった日本だけど、それが通ったとしてもその後のバーレーンの真ん中の場所の守備のよさによってつぶされてしまうシーンが多々見られた。

そんなわけで4‐3で守る真ん中の場所は完全に締めたって言ってもいいバーレーン。でも、そうなると気になるのがサイドのスペース。でも、今回のバーレーンはサイドのスペースのケアもしっかりと行ってきた。その役割を担ったのがWGの2枚。守備時には中盤と同じラインまで戻っての守備が見られたと思う。そうやって日本のSBの上がりをケアしつつ、同時にサイドの深めで起点を作られた時に、SBと協力して挟み込むような役割も担ってたと思う。特に目立ったのが右サイドのWGの選手。守備時にはSBの位置まで戻り、攻撃のときには最前線まで飛び出していく。その運動量は素晴らしかった。パク・チソン並。

そんなバーレーンの守備ブロックに対する日本の守備は、厳しいことを言えば全く頭を使っていなかった。しかも、それがアウェーのオマーン戦の時にも見られた形だったからなおさらたちが悪い。行き当たりばったりの印象が強い、岡田ジャパンの悪いところが見られたように思う。あまり考えずに、攻めていたら結局は悪い流れに陥ってたっていう。オマーン戦の反省が全く持って生かされてなかった。

上に書いたように、前から来てるバーレーンのDFラインの前にスペースを見つけた俊輔と本田。どちらも真ん中寄りに入ってきてのプレーが多くなったってのも上に書いたとおり。確かに相手が前線から来ている時にはこの動きは効果的だった。うまく起点になるシーンも見られた。ただし、相手が低い位置のブロックへ移行しても、この2人の真ん中でのプレー時間はかなり長かった。本田なんかはサイドでのプレーの方がしっくり来るはずなのにも関わらず。

さらに今回の日本のFWはFW的な動きを求められてたってのは上にも書いたとおり。いつもだったらサイドに顔を出すシーンが目立つ玉田も今回は真ん中でのプレー時間が延びた。佐藤も同じく。これで4枚は真ん中に常駐していたことになる。加えて、憲剛の積極的な攻撃参加もことごとく真ん中へ向かって。長谷部のようにサイドを回り込む動きは前半は皆無だった。

完全に真ん中は飽和状態に。そして、結果としてサイドはSBのみが担当する流れに陥った。これも上に書いたことだけど、日本のSBの攻撃参加に対しては相手のWGがきっちりと対応してきてた。相手はSBとWGの2枚に日本のサイドは1枚。恒常的な数的不利が生まれ、サイドで深い位置をえぐるのは難しくなった。SBは縦に行けずに、低い位置でバランスを取る遠藤に戻すシーンが多くなったと思う。ここを狙ってたのが相手の1トップの選手。

遠藤→SB→遠藤→逆SB→遠藤→真ん中への縦パス→つぶされる。相手の守備のよさもあったけど、日本の真ん中は飽和状態で、さらにその選手たちが待っているんだから当たり前。ちょっとした動きがあったのも確かだけど、あくまでもちょっとした動き。大々的に相手ブロックのバランスを崩すのは難しかった。もう本当にオマーン戦と全く同じ流れ。なんて学習能力がないんだっていう感じか。

オマーン戦ではサイドの重要性を再確認することで事態の打開を図った日本代表。今回も前半の途中でそんなことを思い出したのかもしれない。本田がサイドに戻っていくシーンが目立ち始め、さらに今回は常にFWとして振舞っていた玉田がサイドでの数的優位形成を助ける場面も多くなっていった。結果としてサイドを深くえぐってからのチャンスっていう形が目立つようになったと思う。

ただし、そんな感じでチャンスを作り始めた日本に新たな問題が生じた。それはバーレーンの守備のやり方の変更によってもたらされたもの。前線からの積極的な守備を念頭に置いていたバーレーンだけど、その背後を狙われて低い位置での守備ブロックへと移行しなければならなくなったってのが、ここまでの流れ。そんなバーレーンが前半の途中から、中間的な守備のやり方を採ってきた。前線からの積極的な守備とラストの守備の中間。

それは自陣にバランスのいい4‐1‐4‐1を作るっていうもの。チーム全体が低い位置に押し込まれる流れの中ではがれ気味の時間が続いていたトップの選手もブロックに参加して、文字どおりに4‐1‐4‐1ブロックを採用してきたと思う。理由は分からない。前線からの追いかけ回しに疲れたのか、低い位置に押し込まれるぐらいならバランスのいいブロックを作って受けようと思ったのか。とにかく、それまでの前線からの守備は完全になりを潜めた。

日本にとっては最終ラインが持ちあがれるっていう効果をもたらした。でも、それだけ。残念ながらビルドアップの問題が再来。バーレーンの4‐1‐4‐1の2列目の4のフィルターを越えられないってこと。それまではラスト1/3のところをどうするかってのがポイントになってたのに、突如としてスタートの1/3のところに問題が生まれた日本。先に言っちゃうと、この問題は山瀬の投入まで続くこととなった。本当に全く深い位置まで入り込めない流れ。最後の仕上げをどうするかなんて言ってられない流れ。バーレーンにしてみれば、こんなに簡単に押さえられるのかっていう話だったと思う。

じゃあ、日本が中盤の4を越えられなくなった要因は何か。その要因はどう考えたって中盤の軽視にあったとしか思えない。バーレーンがバランスのいい4‐1‐4‐1を形成してきた以上、最初の4のフィルターをどう越えるかがポイントになる。そして、そのときに出し手の方でできる工夫は少ないと思う。低い位置で幅を使っても、横の間延びは期待できないし(4枚が横並びになってるから幅をしっかりとケアできてる)、真ん中は相手の2枚が押さえてる。だから、どうしたって受け手の方の動きが重要になるわけ。

でも、中盤が軽視された今回の日本。もっと言えば、しっかりと中盤で組み立てをしようとする意識が少なかったのが今回の日本代表だった。だから、組み立てのためにボールを引き出す動きが少なかった。上で書いたような、本田とか俊輔の中へと流れる動きも、組み立てのためというよりは、直接的にゴールに向かうため。憲剛の飛び出しもそんな意図。サイドに顔を出すようになって、ちょっとは変化が出てきたように思えたFWも、相手がベタ引きにならずにウラにスペースを残してくれている現状では前への動きの方に重点を置いていた。そんなこんなで、中盤の場所で起点を作りにくい状況が生まれてた印象。

要するに前へ前への意識が高すぎたとも言える。岡田化が間違った方向に出るとこんな形になるんだろうなってのがもろに表れてた。ここまで書いてきた中盤の空洞化がその最たる存在。前線にボールが入りにくい状況だったのにも関わらず、今回は俊輔が降りてきて助けるシーンは少なかった。そんな感じで全体として、降りてきて、要するに出し手の方に近づいてきてボールを受けようっていう動きが少なかったと思う。結果として相手のフィルターを越えられない状況が続くこととなった。

それにうまく相手の4の裏側に入れたとしても、その後の関係性が希薄。これも前へ前への意識と中盤の空洞化に原因がある。中盤はボールをつなぐ場所ではなく、ゴールへの経由点っていう意識が強すぎたように思う。だから、中盤にボールが入った瞬間にみんながゴールに向かっていく。結果としてボールに対する動きのほとんどが、遠ざかるランニングになってしまった。必然的にボールの近くでは動きが生まれない。ボールの近くでの関係性が生まれない。全体としてボールの近くに味方選手が少ないっていうシーンが目立ったと思う。特にみんながゴールに向かってしまったがためにサイドは悲惨な状況に。せっかく攻撃的な2枚を使っても、全く有効活用できなかった。

ここまで書いてきたように、縦急ぎの悪い部分が出ていたのが今回の日本代表。同じ縦急ぎでももっと関係性が生まれる縦急ぎだと思う。コートジボワール戦のように、サイドで超密集地帯を作って、追い抜き追い抜きの繰り返しの中で少ないタッチのパス交換でサイドを侵攻してく形。これまでずっと見られたように、FWに当てておいて中盤が前向きにプレーできる状況でゴールに向かっていく形。そんな形で縦へ向かいつつも、そこで関係性を築くってのが岡田監督のやり方であるような気がする。

でも、今回の日本代表は1人1人がバラバラに縦へ縦への向かっていたイメージ。立ち上がりは、それでチャンスを量産してしまったのが、後々の流れを考えるとよくなかった。チームとしての縦急ぎを目指したい岡田監督のサッカーとはかなり異質のやり方。個人の縦急ぎの組み合わせではチームとしての縦急ぎは達成されないことが今回の試合で分かったと思う。むしろ、相手のフィルターの4を越えられずに無駄に低い位置での保持時間が延びていったぐらいだったし。

そんな悪い流れが断ち切られたのが、上にも書いたように山瀬の投入から。前へ前へと向かって行ってしまうFWを1枚減らして中盤の選手を増やす交代。これによって中盤の密度が増した日本代表。結果として強制的な近さがもたらされる。同時にトップ下を置いたことで、無意味にサイドの選手が中へ中へと流れてきてしまうのも防いだ気がする。そして、この山瀬の投入で思い出したかの様に日本が中盤を制圧していくから面白い。

中盤の枚数が増えたことで強制的に距離の近さが生まれた。結果として、それまで希薄だった中盤の関係性が強制的に作られる。強制的に関係性が作られたことでパスが回るようになってくる。そうなると面白いことに、ボールの近くでの個々の動きも活性化されたと思う。ボールに対する近づくランニングと遠ざかるランニングのバランスが一挙に回復。結果として1つのボールに対する単純な動きの数が増えていった。もともと相手はバーレーン。中盤の場所で人もボールも動かしながら局面局面を変えていけば、実効的な場所でのパス交換が増やせるのは自明だった。

そうやって中盤の場所で優位を作ると、中盤の場所が重要なんだっていうことに気づいてきたと思う。それまでは受け手の方があまり引き出しの動きをしなかったってのは上にも書いたとおり。それが突然、前線の選手が降りてきてボールを受けようっていうような動きが生まれ始める。上→下の動き以外にも、相手の間に入り込む受け手の数が圧倒的に増えた印象。相手の弱点の1のところに入り込もうとする意識が高まったと思う。

そして、そうやって真ん中の場所での引き出しを活性化させていくとサイドの場所が空いてくる。そんな好循環に入っていったと思う。そして、そのサイドの場所でもそれまでの流れが嘘のように、最低1枚がボール保持者の外を回りこむっていう形が明確化した。単純にボランチの場所からトップ下の場所へと出て行く動きを繰り返していた憲剛がサイドの局面に顔を出してきたのが最も象徴的なシーンだったように思う。

そうなると流れは完全に日本へ。それまでは日本がボールは保持しつつも、明らかにバーレーンの思った展開で試合が進んでたから。中盤でのボールと人の動きを増したことによって、相手の守備ブロックを押し下げることに成功した。再びラスト1/3崩しへと日本が入っていくことになる。そして、このラスト1/3崩しは前半のそれとは本質的に異なったものになった。

1つはバーレーンが不本意にブロックを押し下げられたってこと。前半も前からの守備を念頭に置いていたバーレーンにとっては不本意だったことは不本意だっただろうけど、それでもバランスのいい守備ブロックを作ったあたりに、そうなる展開はある程度予測できてたであろうことが出ている。でも、この時間帯のバーレーンの守備ブロックはある意味ではバーレーン的なものになった。バランスも何もなく、とにかく最後に人数をかけるっていう質のものだったように思う。前半のようにサイドはWGに任せて、真ん中は4‐3で固めるっていうような整理された形ではなかったと思う。

対する、日本も前半とは全く違った攻撃のアプローチが可能になったと思う。サイド→遠藤→逆サイド→真ん中→つぶされる、なんていう形にはならなかった。今やトップの場所の出入り、サイドの出入りはかなり激しくなっている日本。それまでのパス回しで作り出した動きをそのままに、前線の動きがある状態での攻撃が可能になった印象。みんなが前に入って止まってる場所止まってる場所をつないでいった前半の流れとは全く違う。ダイナミックな最前線への飛び出しも多かった。中盤での保持を増やした方が中盤を通り過ぎて縦へ進むよりもスピード感が生まれるってのも面白い部分だった。

ただし、やっぱり日本の1/3崩しの弱点は残ったと思う。というか、ラスト1/3崩しにかける時間があまりにも短すぎた。中盤の軽視のせいで、ラスト1/3まで持って行けない時間があまりにも長すぎた。山瀬の投入は普通に後半の開始と同時でよかったんじゃないかと思うぐらい。あれだけの変化が生まれてるわけだから。山瀬を早めに入れておけばFWが足りないことにも気づいたはず。山瀬が入ったことで玉田が思い出したかのように中盤に参加するシーンが増えたから。そうすれば巻の投入ももう1つ早く行けたかなっていう気がしてならない。

そんなわけで明らかに精彩を欠いた日本の攻撃。それに対して守備もよかったとは言えないと思う。大体において、今回の日本のボランチは憲剛&遠藤。本格的に攻撃&攻撃のWボランチを定着させようとしてるのかって話。そういえば、W中村と遠藤が併用された今回はオシム化されなかったなって話。このメンバーでオシムのポゼッション重視、中盤重視のサッカーとは真逆のことをやって失敗したんだから皮肉。少なくとも俊輔は完全に岡田化されたなって思う。低い位置の助けに来なかったのも、その辺を象徴してるのかもしれない。

話がずれたけど、今回の守備は攻撃&攻撃のボランチが失敗方向に出た試合だったような気がしてならない。これまたオマーン戦の再来。前回のタイ戦では問題があまり見られなかったんだけど、今回は再来。その要因は簡単でタイはつないできたこと。タイは奪った後のボールをつないできたから、日本の切り替えの守備が面白いほどに機能した。切り替えじゃなくても、中盤のところでプレッシャーが機能させられた。

今回はみんなが前に入ってきて、それをつぶされる流れだったから、奪われる場所が前の選手の後ろになることが多かったと思う。よって、切り替えの守備は前回ほどは機能しなかった。相手のボールの運び方も、頭の上を越えるロングボールが主体。中盤は後ろとの関係を求められる状況。そして、DFとの関係を求められると、攻撃&攻撃のボランチはもろさを見せる。今回の遠藤&憲剛も同じだった。

そもそもバーレーンは攻撃の方もイメチェンを図ってきた。バーレーンのやり方と言えば、ボールを奪ったらとにかく前線へっていうイメージ。3‐5‐2だった前回は、2トップ+1トップ下を目指して蹴って、そこで収まればWBとボランチが飛び出してくっていう形が見られたと思う。でも、今回のバーレーンは違った。蹴っておいて人数を増やすんじゃなくて、人数を増やしておいて蹴るっていうやり方を採ってきた印象。

守備時には4‐5‐1っぽい形になってたバーレーンだけど、攻撃時には4‐3‐3がはっきりしてた。というか4‐3‐3がはっきりするまでは蹴るのを待ってた。要するに今回のバーレーンはボールをすぐに前線に蹴らなかった。低い位置である程度ボールを持ってから前線へっていうやり方だったと思う。これができたのは日本の守備が受ける形を採ってきたから。バーレーンの低い位置の選手は自由にボールを持てたと思う。

岡田監督の言えば前線からの守備なんだけど今回は受ける形。前回の暑いタイ戦は追いかけたけど、今回は追いかけなかった。理由は簡単で、このチームは相手が蹴りまくるチームの場合は前線からの守備をやめる。前から頑張っても頭を越えられたら体力の無駄だって話。むしろ、後ろに人数をかけて固めておかなければ危ないって話。だから、今回の試合で前線から行かないのは合理的。

まあ、そんなわけで今回のバーレーンは前線が揃った状態で前線に蹴ってきた。だから、前線にターゲットが揃ってる。こぼれたところを拾う体制もできあがってる。対する日本はどうか。相手は3トップをワイドに置いているから、SBが絞って真ん中を固めるってのは無理だった。だから、頼りになるのは中盤。でも、攻撃&攻撃のボランチはうまくDFとの関係性を作り出せない。DFが競った次のボールが相手に渡るシーンが多かったように思う。

DFとボランチの関係性ではカウンターの危険性も見られたと思う。これもオマーン戦と同じ流れ。そもそも攻撃がオマーン戦と同じ形だったわけで、両SBを上げつつ、ボランチも攻撃に出て行ってしまうっていう本当の意味での2バックが今回もできてしまった。本当の意味での2バックができたことによって、数的同数のシーンもできあがってしまったと思う。相手が前が揃うまで攻めなかったから、助けられる部分もかなり大きかったように思う。

ついでに中盤の前に対する守備もよくなかった今回の日本。相手がつないでくるシーンがあまりなかったのに、つながれると深い位置まで入られるシーンが多かったと思う。受ける形の守備ブロックを作ったから、前線でいい形で守備のスタートが切れなかったってのが1つの要因。そして、その守備のスタートが切れないままにズルズルと言ってしまった気がする。それは守備のスターターとなりうる中盤の選手がいなかったから。みんな攻撃の人たちだから仕方ないか。実は守備で一番頑張れる素質があるのは本田だったかもしれない。でも、本田もそれほど目立ったわけではない。中盤で守備に目立てる選手が皆無だった。というわけで、攻撃&攻撃のボランチの組み合わせは危ないんじゃないっていう気がしてならない。

交通事故によって1‐0で勝利を収めた日本代表。今回は予選だから結果が出ればよしとは、どう考えたって言えない。勝ち上がりが決まってるからプレッシャーはない。ホームでの戦い。内容が求められる試合だった。圧倒的な展開で最後の最後を崩せない流れだったら、まだ納得できる。そこはやっぱり日本かっていう一種のあきらめもあるんだけど。でも、圧倒した展開でもなかった。内容が目も当てられない状況。お世辞にも最終予選に期待できるなんて言えない。

余談。やべっちFCのここが巧はシュバインシュタイガーのゴール。サイドでトライアングルを作って作って、ダイレクトダイレクトで縦に抜けたポドルスキーからのクロス。玉田が言うには、今の日本代表がやろうとするサッカーに近いとのこと。これで確認が取れた。やっぱりサイドで密集地帯を作って少ないタッチで縦を侵攻するのがやりたい形だったのかってこと。
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2008-06-20 Fri 18:48
フランス×イタリア
<イタリア:4-3-3>
FW:トニ、ペロッタ-カッサーノ
MF:ピルロ-デ・ロッシ-ガットゥーゾ
DF:グロッソ-キエッリーニ-パヌッチ-ザンブロッタ
GK:ブッフォン

<フランス:4-2-3-1>
FW:アンリ
MF:リベリ-ベンゼマ-ゴブ、マケレレ-トゥララン
DF:エブラ-アビダル-ギャラス-クレルク
GK:クペ

知っての通り、W杯決勝と同じ組み合わせだった今回の試合。ただし、今回は立場が大きく違う両チーム。前回は青いイタリアと白いフランス、今回は青いフランスと白いイタリア。前回は世界一を賭けて戦った両チーム、今回はGL突破を賭けて戦う両チーム。どちらが切羽詰まってるかって言われれば明らかに今回なわけで、そういう意味では面白い試合展開になる可能性は十分にあった。

ただし、試合が面白くなるためには両チームが復活してくれなければならない。今大会では苦しみまくりの両チーム。その要因の1つが世代交代の失敗にあるってのは、色々なところで言われてるとおり。特にフランスは。この世代交代の失敗ってのは、ベテランがいつまでも居座るみたいな意味で言われてると思う。逆に言えば若い選手が主力に入り込めないっていう。でも、それとはちょっと違うニュアンスからも捉えられる。ベテランが抜けたからこその失敗。フランスはジダンが抜け、イタリアはトッティが抜けた。そして、その穴を埋めきれてない。結果として攻撃のやり方を忘れてしまった両チームだったように思う。

フランスは前回のオランダ戦でリベリを王様にしようという試みを見せた。ジダンの代わりとしてリベリを置く。リベリ中心サッカーを展開しようっていう考え方。リベリにはジダンほどの絶対性はないけど、ジダンにはない運動量がある。前回の試合でも、それを生かしていろいろなところに顔を出しながらボールを引き出してたと思う。そして、リベリ経由の攻撃がチャンスにつながったのも事実だった。

ただ、リベリ経由の攻撃からしかチャンスを作れなかったのも、また事実。チームとしての連動性が感じられない、攻撃の連続性が感じられない、そんなフランス。個別の動きでは工夫が見られたのは事実なんだけど、それがチームに還元されてない。結局はリベリになんとかしてもらうしかない。王様リベリの絶対王政。リベリ以外からはチャンスが作れない、誰もリベリを助けに行かない。そんなイメージ。

対して、メンバーを見る限りでは4‐4‐2が予想された今回のフランス。リベリを絶対的なトップ下の位置から、左サイドへと格下げ。要するにリベリを王位から引きづり下ろしたらしい今回のフランス。妥当絶対王政、要するに、フランス革命は成功するのか。フランス革命が成功するならば、人権宣言による自由平等が達成されるはず。要するに、チーム全体の運動量が増し、いろいろな選手が“自由”に動き回って、ボールに対する選択肢が格段に増えるはず。同時に特異点がなくなって、王様リベリを経由しなくても、どこからでも攻められる(“平等”)フランスになるだろうと思う。

ただし、フランス革命が成功するとは限らない。というか、失敗する可能性が高いと思ってた。何しろここ数年のフランスの問題は打倒絶対王政から脱却できなかったこと。W杯ではジダンを王様に置くことで、再び絶対王政を作り上げて、勝ち上がっていったフランス。それを急に自由平等だと言われてもってのがW杯後のフランスだったと思う。

そして、今大会でも1戦目はおそらく自由平等で戦ってたと思うフランス。見ていないから分からないけど、ともかく低調な内容だったらしい。で、それに対してやっぱり絶対王政に戻したのが前回。チームとしての攻撃の連動性には疑問があったとしても、王様リベリが王様の役割をしっかりと果たしてた。そして、王様リベリを左サイドに追いやった後半はチャンスが作れなくなったのが本当のところだった。

というわけで、フランス革命は失敗に終わるだろうと予想された試合前。でも、試合が始まってみると何のことはなかった。フランス革命なんて行われず、ただ、王位の継承が行われただけだったっていう話。そして、リベリから王位を継承したのがベンゼマ。上に書いたような、4‐2‐3‐1システムのトップ下にベンゼマが入っていたと思う。リベリの三日天下の終了。

とはいえ、先代のリベリは未だ顕在。結果として院政が敷かれる。王様ベンゼマを補助する役割として、先代リベリが存在するってこと。ベンゼマが動いてボールを引き出したときに、ベンゼマの近くにリベリが位置してフォローするってのが1つのパターンになってたと思う。あとはベンゼマが抜けたスペースにリベリが入ってくるみたいな。とにかく、先代リベリは王様ベンゼマを意識しながらプレーしてたと思う。

結果として、リベリは中寄りでベンゼマと関係性を作ることが多くなっていた。リベリ自身としても、自分が王様になるよりも、王様をフォローする今回の役割の方が合っていたんじゃないかと思う。それは先々代のジダンに教えてもらったこと。今回の短い出場機会の中でもベンゼマとの関係性をうまく築きあげるシーンが目立ってた。これによって王様ベンゼマの孤立もなくなり、ベンゼマは少なくとも前回のリベリよりは周囲の助けがある中でのプレーができた。院政を敷いたことで王様の孤立感がなくなった今回の立ち上がり。

ただし、そのリベリが早々と負傷退場。皮肉なことだけど、王位継承を行っていたことで、今回のフランスにとってのリベリ退場は思ったよりも痛手とはならなかったと思う。いや、痛手には変わりないんだけど、前回の試合でリベリが退場するよりは、まだ状況はマシだったかなって印象。前回の試合でリベリがいなくなってたらフランスには何も残らなかったといっても言い過ぎではない状況だったから。

それに対して、今回の王様はあくまでもベンゼマ。先代がいなくなったとしても、王様がしっかりしてれば十分に立て直しが図れる。そして、実際に立て直しが図られた。事実、リベリ退場後も攻撃面において大きな問題が起きるっていうことはなかった。というか、むしろ、リベリがいた時間帯よりも攻撃がスムーズに進んだとさえ言える。まあ、これに関しては様子見の時間が終わったことで、フランスの攻撃にかける人数が増えたっていう面も多分にあったと思うから、リベリがいない方がフランスはよかったとは必ずしも言えないわけだけど。

そもそも、立ち上がりの時間帯は王様ベンゼマは先代リベリを気にしながらプレーしてたように思う。リベリがベンゼマを見ながらプレーしてたのは事実だけど、逆にベンゼマもリベリを見ながらプレーしてた。リベリと関係性を作ることを重要視するような動きが目立ったと思う。結果として関係性が生まれてたんだから、成功と言えば成功。

そんな流れの中でリベリの負傷退場。先代の補佐が期待できなくなった王様ベンゼマが孤立してしまう可能性も十分にあった。でも、ここまで書いてきたようにそうはならなかった。その理由はベンゼマ一派がチーム内に存在してたから。先代の影響力が強かった時間には目立たなかったベンゼマ一派が、リベリの退場によって一気に目立った存在になった。ベンゼマ自身も彼らに助けを求めた。結果として王様を抱え込んだ、ベンゼマ一派の力は強くなる。チームとして、そのベンゼマ一派を中心とする攻撃のやり方へと傾いていったと思う。

じゃあ、肝心なベンゼマ一派ってのは誰のことか。それは右サイドの面々だった。ゴブ&トゥララン&クレルク。早い話がリヨンのチームメイトたち。ベンゼマを含めたチームリヨンの4枚が攻撃の中心として動くようになったのが、リベリ退場後のフランスのやり方となった。チームとしてもその右サイドを使うようになったってのは上にも書いた通り。例えばリベリに変わって左サイドに入ったナスリは低い位置に降りてきてのボールタッチを増やした。そうやって1度左に起点を作りつつも、最終的には右へ展開っていうやり方が目立って行った気がする。

そして、このリヨンのチームメイトを中心とした攻撃がうまく機能した印象。前回のオランダ戦を見ても、フランスの攻撃には連動性が少なかったってのは上に書いたとおり。ボールに対する動きが足りずに、結果として攻撃の選択肢を増やせない状況。その連動性の問題が右サイドでは嘘みたいに解消されてた。フランスとしては解決できなかった問題をリヨンに解決してもらおうっていう考え方。それだったら、最初からリヨンの選手を中心にチームを作ればよかったのにって思う。

とにかく、右サイドは本当に活性化した。ゴブとベンゼマがいい関係性を作る。中と外を入れ替わってみたり、サイドで2人の関係性を作ったり。そこに後ろからクレルクがオーバーラップを繰り返す。さらに、機を見てトゥラランが前線の隙間に飛び出してくる。前回の試合の前半は攻撃参加をあまり見せなかったトゥラランだけど、今回は積極的に飛び出していくシーンが目立った。もともと右サイドのゴブ&クレルクにベンゼマとトゥラランが絡む。右サイドではボールに対して常に複数の選択肢を用意できるような体制が作られた印象。

おそらくドメネクも、このリヨンの選手を中心にした攻撃を容認。というか、手ごたえを感じてたんじゃないかと思う。だからこそ、アビダル退場後のブームソン投入時に後退させたのはナスリってことになった。緊急投入のナスリはかわいそうにやっと体が温まったぐらいになって、ベンチに下がらざるを得なくなってしまったわけだけど。とにかく、それだけ右サイドの関係性には重点を置いていたってことが表れてた交代だったように思う。

でも、1人少なくなった影響は大きかった。ナスリを下げたことで左サイドが空いてしまったわけで、そこに誰かを入れなければならない。そして、その役割を任せられたのがベンゼマだった。これでベンゼマの絶対王政は終了。その後もベンゼマが攻撃の中心になってたのは確かだけど、それは左サイド限定のものだった。もちろん、その左サイドからの展開が増えたわけだけど。

とにかく、ベンゼマの自由度は完全に限定されたものになった。それまでは色々なところに顔を出してボールを収めまくってたベンゼマ。受けた後は自分で仕掛けることもできるし、周囲を使うのもうまい。低めで受けてからの展開力も見せつけたと思う。前回のリベリと同様、王様の役割は十分に発揮してたような印象。だからこそ、ベンゼマを左サイドに釘づけにしたことで、攻撃の幅を狭めてしまったような気がする。

そう考えると左サイドにアンリを入れればよかったんじゃないかっていう気がしてならない。たぶん、守備の安定を考えてベンゼマを中盤に降ろしたんだろうけど(ベンゼマは守備も頑張ってた)、せめて後半になったら、それぐらいのリスクを負うべきだったと思う。イタリアは完全に守る気になってたわけだし。ベンゼマをトップに残すことで、ベンゼマの自由度は残す。同時に、左サイドにアンリってのはアンリ自身もしっくりくるはず。自由に動くベンゼマはトップを不在にすることが多くなるはずだから、そうやってできたスペースに左サイドからアンリが入っていく。すごくスムーズに回るはずなんだけど。

なんでこんなことを言うかっていうと、ベンゼマが左サイドに釘づけになってしまった影響はかなり大きかったから。その一番の理由はは右サイドのベンゼマ一派と左サイドのベンゼマ自身が分断されてしまったってこと。右に起点が作られたのは、王様ベンゼマが右に流れることが多かったから。その右サイドではリヨンのメンバーで関係性を作り上げたってのは上に書いたとおり。でも、王様ベンゼマが左サイドに入ったことによって、起点は左に作られることが多くなった。この時点でリヨン中心のいい関係性は使えない。ベンゼマ自身も孤立気味。後半はベンゼマの個の仕掛けが明らかに多くなったように思う。

ここまでフランスの攻撃について書いてきたわけだけど、ここで一気に立ち上がりの流れにまで話を戻してみる。この立ち上がりの入り方は両チームの考え方を象徴しているようで面白かったから。イタリアは守備に重点。どっしりとブロックを形成して受けて立つってイメージ。奪ったボールはさっさと前線に蹴ってしまうことが多かった。対するフランスは攻撃から入った。守備も前線から積極的に行った。両チームの考え方が正反対で、それがぴったりと合致してた立ち上がりの流れだった。とりあえず、その辺の流れについて詳しく見てみたいと思う。

イタリアの基本システムは上に書いたように4‐3‐3。4‐3‐2‐1のクリスマスツリーとも見える形だったけど、攻守の役割を見る限りでは中盤前目の2はFW的な考え方が強かったと思う。要するに1トップ2シャドーの4‐3‐3だったってこと。そんなイタリアの立ち上がりの考え方は、4‐3で守って攻撃は前線の3に任せるっていう至極単純なものだった気がする。

イタリアの守備ブロックは4‐3‐2‐1で作られる。トップのトニはこれまで通りに、あまり守備をしない。2列目の2枚は相手のボランチとSBを押さえる役割を任せられてたと思う。低めのボール保持で相手が真ん中でボールを保持している時には、2人とも中で相手ボランチを見る。どちらかのサイドに展開された時には、2列目の1枚がサイドに流れて対応し、もう1枚は真ん中に残るって形。そこから逆サイドに展開されたら、中盤のサイドの選手が引っ張り出されて見に行く。前の3‐3は互い違いなイメージだったかもしれない。

そんな感じで2列目の2枚はそれなりに守備に貢献するんだけど、それは自分の前に対するものだけだった。あくまでも前線の3枚の役割は攻撃、だから守備をそんなに頑張らなくてもいいよってもの。同じ形のミランが似たような考え方でやってたなって気がする。確かに、立ち上がりは前線からの守備をそれなりに厳しくやったことで、相手の選択肢が制限され、中盤でのボール奪取も目立ってた。でも、守備のペースを落としていく中で、中盤で相手の攻撃を止めるっていうシーンは少なくなったように思う。

それは当たり前。イタリアの前線の守備のペースが落ちるってことは、フランスの方はあまり苦労せずに前線にボールを運べるってことになる。そんな流れの中で、イタリアとしては3‐3の間に入り込まれたりすると、かなり厄介。中盤の3は前に行けない。なぜならば、3が引っ張り出されるとバイタルを空けてしまう結果になるから。だからと言って、完全にフリーにしておくのもどうかっていうジレンマ。初戦のオランダ戦と同じような状況に陥ったといってもいい。

ただし、オランダ戦とは全く違ったことがあった。それはイタリアの方の守備の考え方がはっきりしてたってこと。オランダ戦は中盤の高めにアンブロジーニ&ガットゥーゾを配置する一方でブロックは引くっていう形だったから、どうしたらいいもんだかチームとしての意思統一が図られてなかったと思う。それに対して、今回はしっかりと意思の統一が図られてた。3‐3の間に入られたらもういいと。中盤は捨てて、ラストで跳ね返そうと。

要するにかなりイタリア的な守備ブロックが形成されたと思う。最終ラインの4は真ん中に凝縮させ、中盤の3との関係とともに真ん中を固める。このとき最終ラインはある程度の位置を確保しつつ、4‐3の隙間を完全になくす。だから、ラインコントロールをミスると危ないシーンにつながる。何しろ3‐3の間の相手を完全にフリーにしてるわけだから。その間ではフランスの選手はかなり自由にボールを扱うことができてた。敵陣内であるにも関わらず。前半にアンリが抜け出したシーンは、3‐3の間でフランスの選手がフリーになり、同時にイタリアの選手がラインコントロールを失敗したシーンだった。

それでも4‐3の関係性を重視したってのは前回のルーマニア戦と比べるとかなりの改善。前回は中盤の選手が中途半端にボールに集まり、そこで奪えず、DFラインと中盤の関係が遠くなり、ミドルシュートを打たれまくりっていう展開だったから。4‐3といったら4‐3っていうことをはっきりとさせた今回の試合では、SBの選手ばかりで成り立っている不安定な最終ラインを晒すシーンはほとんど見られなかったと思う。4‐3の間に入ってきた相手(入るのすらもかなり困難だったけど)を挟み込むのも、超素早かった。

とはいえ、結局は重心が後ろに向いてるイタリアのやり方だったから、見た目のペースはフランスに傾いた。イタリアの中盤は3枚しかいないわけで、ついでにその3枚が中盤での守備よりも後ろとの関係を重視してる。だから、まだまだ不満な点が多いフランスの攻撃でも、十分に深い位置まで入り込むことができた。でも、最後の最後のイタリアの4‐3を崩し切ることはできない。個の分断が目立つ今大会のフランスでは守りに入ったイタリアを崩すのは絶望的だったとも言っていい。よって、深い位置に入っては最後の最後で跳ね返されるっていう展開が続くこととなった。

そして、深い位置で奪ったイタリアの目標はトップのトニ。いよいよ前線の2‐1の出番ってわけ。4‐3の守備ブロックで跳ね返し、トニに収めて、すぐ近くにいる2枚がそれをフォローする。それがイタリアの考え方だった。でも、残念ながらトニに全然収まらないイタリア。後で書くようにフランスの守備の質が高かったってのが1つ。もう1つはトニ自身の不調。今回も決定的なチャンスを外しまくったし、起点としての仕事もできてなかった。

だから、知らない間に(たぶん得点の前後?)、イタリアの前線の起点はカッサーのになってたし。カッサーノが前線で左右に動きながらボールを引き出して、それをトニへっていうパターンが目立つようになった。起点としてもゲッターとしても働けてないトニから起点としての役割を免除。あんたはゴール前で待ってればいいからって考え方。でも、結局は今回の試合でも得点を奪うことはできなかったトニだった。

さて、そんなイタリアに対してフランスは立ち上がりから攻撃的な入り。特に上でもちょっと触れたように守備の質の高さが目立ったように思う。前線から積極的に守備をして、相手が前線に蹴らざるを得ない状況を作り出したって言える。そういう前線の選手たちの守備意識の高さがかなり目立った、今回のフランスだったように思う。切り替えの守備の質の高さはもちろん、守備ブロックをセットした時の中盤の個々の守備の質の高さも目立ってた。しかも、前へ前へっていう守備をしてから、後ろとの関係を重視するイタリアの中盤と比べると面白かった。

とにかく、フランスの中盤の選手の出足が抜群に速かった。本当に1つ1つの場所を勝負どころと定めてるような、忠実かつ厳しいチェックが繰り返されたと思う。そして、そんな最初の守備に対する周囲の連動性の高さも目立ってた。11人×11人の戦いの中で、イタリアが地上から攻めてくるときには、ほとんどを中盤以前で引っ掛けてたんじゃないかと思うぐらい。結局は、この中盤の守備意識がリベリの負傷退場を生み、失点&退場の遠因にもなってる。敵陣内でナスリが相手をつぶしたことでイタリアが得たFKからピルロの1発→トニ抜け出しが生まれたわけで。ただし、もちろんこれは結果論。フランスの守備の質が高かったことには変わりない。

そして、そんな中盤の守備のよさは今大会のフランスの攻撃のやり方とも相性がよかったと思う。今大会というか、前回のオランダ戦を見た印象だけど、フランスの攻撃は縦に急ぐ印象が強い。前線でボールを受けた選手が、その場所で保持しようとせず(チームとして)、前へ前へと突進していってしまうシーンが目立った。オランダ相手には中盤で回した方が効果的だったと思うのに。そんな前への意識がフランスの中盤をなくし、フランスらしいパス回しをなくし、圧倒的に主導権を握る流れをなくしている気がする。今回だってイタリアの中盤はスカスカだったのに、フランスが圧倒的にポゼッションする流れにはならなかった。

ただ、中盤の高めでの守備が機能したことで、そんな縦への意識がいい方向に出る可能性はあった。フランスっぽくないけど、高めで奪ってショートカウンターみたいな流れ。実際にそういうシーンも見られた。ただし、相手はイタリア。攻撃を前線の2‐1に任せているイタリアは下手に後ろの選手を前線に上げてはいなかった。だから、フランスが高い位置で奪ってそのまま相手ゴールに向かったとしても、イタリアの選手は十分に足りてるって場面が目立ったと思う。

さて、そんな感じで高めの位置での守備の質の高さが目立ってたフランスだけど、さすがに最前線からの追いかけ回しは辛いだろうってことになった。オランダ戦と同じように立ち上がりは最前線から追いかけ回して、途中で引いてブロックを作るっていうやり方へと変更したと思う。よって、蹴りまくってたイタリアの選手にもやや余裕ができ始める。イタリアの方としてもいつまでも蹴ってたらだめだろうってことで、攻撃の組み立てを考えるぐらいの時間帯になってた。

そんなイタリアはいつものように両SBを高めに上げるアプローチ。そうやって幅を維持しつつ、中盤を中に押し込んで、真ん中の人数を増やそうっていうもの。そんな流れの中で徐々に地上からの攻撃も増やしていった印象。そこで面白かったのが、ガットゥーゾが案外目立ったってこと。他の選手に相手の目が行く中で、スルスルとギャップに出てきてボールに触れるシーンが多かった。初戦では攻撃で目立てなかったガットゥーゾだったはずなのに。

この辺のチームとしてのバランスの回復が見られたと思う。完全守備メンバーと初戦、完全攻撃メンバーの2戦目と比べると、今回がメンバーのバランスが一番よかった。結果として攻守のバランスも回復した。でも、残念ながら次の試合でピルロとガットゥーゾは不在。せっかくいい感じのバランスが見え始めたのに、同じメンバーを使えない苦しみ。なんだかうまく行かない今大会のイタリア。

話は戻って、イタリアが地上から攻めるようになったとは言っても、フランスの前線の守備の勢いが弱まったって言っても、フランスの中盤の守備の質は高いままだった。よって、イタリアの地上からの攻撃はなかなかうまく行かない。というか、スタートの縦パスを引っ掛けられる場面も目立ってたぐらい。そんな中で空からの一発でイタリアがPKを奪取。フランスの方としてみれば、立ち上がりにも1回あったけど、なぜかテュラム不在(たぶんケガだろうけど)の最終ラインの危うさが露呈したシーンだった。

このイタリアの得点で全てが変わった。得点を奪ったイタリアはここぞとばかりに畳みかけに行く。1‐2に配置されていた前線の形を3の横並びみたいな形にして、より高い位置からプレッシャーに行く意識を見えた。もちろん形だけじゃなくて、その3人の守備意識も高まった。今大会初めてじゃないかっていうぐらいのトニの追いかけ回しも見られたし。そうやって前線での守備が機能するならば、中盤の3枚も前に対して守備ができる。立ち上がりの数プレー以来消えていた中盤での激しい守備が戻ったイタリア。入ってきた相手のボールに対して、素早く距離を詰め、素早く囲い込むなんていうシーンが増えたと思う。

当然のように、ここぞとばかりに攻撃にも人数をかけてきたと思う。ちょっと前の時間から高い位置に上げているSBをさらに高めに入れ、さらに後ろの中盤の選手も積極的に前線に飛び出させる。そうやって幅を使いつつ、真ん中に人数をかけつつ、中盤がスカスカ状態に陥っている敵陣内でパス交換を繰り返すイタリア。回して回してピルロからトニっていうパターンが多くなった。

相手のショックに乗じて追加的を取りに行こうっていう露骨なペースアップには、イタリアらしいしたたかさが感じられた。さらに、その後のイタリアの対応がさらにイタリアらしさを見せつけた印象。得点後の数分はペースを上げて、前へ前へと出てきたイタリア。でも、その勝負どころで追加点を奪えない。相手は10人、勢いは自分たちにある。普通に考えれば行け行けで攻めまくる流れ。でも、イタリアはそれをしなかった。相手が立ち直ったことが分かると、さっと引いて守りに入ったと思う。前からの守備はやめたし、攻撃は再び前線の3枚が中心に戻った。

後半になるとそれが顕著になる。意味が分からないほどに消極的なイタリア。これが1‐0(ウノ-ゼロ)の精神かっていう感じ。後ろの4-3は完全に引きこもってラストで跳ね返すことに集中してたし、攻撃では全く攻撃に出ない。自分たちがボールを持っていればそのままボールを持ち続けようとする。相手が前から激しく来れないことを知っていて。それでも焦れて相手が取りにくれば、完全にスペースが空いてる中盤に縦パスを入れてやればいい。そんなイメージのイタリアの後半の流れだった。

ちなみに、相手が1人少なくなった後のイタリアの守備ブロックは4-3-1-2っぽい4-3-3へと変更された。これは相手の4-1-3-1と関係してるのかなって思う。1人少なくても攻撃に出なければならないフランスはマケレレを底に置いてトゥラランは前線に出て行ってた。だから、相手のボランチ対策は1枚でいい。その代わり2トップにすることで、相手の低い位置のボールにプレッシャーを与える意図があったと思う。

さて、退場後のフランスはどうしたか。システムは上で触れたとおりの4-1-3-1。攻撃については上に書いたとおり。王様ベンゼマとベンゼマ一派のリヨン勢が分断されたことで、結局は個の力が重視された攻撃のやり方になった。後半になると、アンリとベンゼマを近づけるみたいなアプローチをしてたけど。イタリアが引いて守ったことで10人でも、個が強い攻撃でも、結構深い位置まで入り込めたけど、それは完全に攻めさせられてる流れだった気がする。

守備では相変わらず中盤の選手の意識の高さ自体は残ってた。ベタベタに引いてしまうんじゃなくて、あくまでも高い位置からプレッシャーをかけて行くっていう考え方が見られたと思う。ただし、ケアすべきスペースが広いからさすがにきつかったのも事実。中盤で守備をする意識自体はあっても、それを外され外されっていう場面が多くなってしまった印象。1人少ないんだから仕方がない。よって、4-4ブロックで守る時間も長くなってしまった印象。

今回のフランスはついてなかった。運がなかった。立ち上がりに流れを掴んでいたのはフランスだっただけになおさら。いや、イタリアの方としても自分たちの思惑通りに進んでいたのかもしれないけど。それでもフランスはリベリが負傷退場、PKを与えたアビダルが退場、さらに2失点目はアンリの足に当たってコースが変わる。踏んだり蹴ったりってのはこのことを言うんだろうなっていう。2点目を奪われたあとのフランスは明らかに意気消沈。もちろん10人で頑張り続けてたわけだから、スタミナ切れも大きかったと思う。でも、やっぱり勢いは半減したと思う。

結果としてしたたかに戦ったイタリアがGLを突破。本当は歴史は繰り返すみたいなオチをちょっと期待してた。フランスは中心選手がいなくなり、1人少なくなった。あまりにも早すぎたけど、要するにジダンの退場と同じなわけだ。ついでにPKで先制点が決まったりする。あのときはジダンがループPKみたいなのを決めんたんだっけか。まあ、そう考えると歴史が繰り返すしたといえなくはない。でも、最終的にはルーマニアが勝って、1勝2分の無敗のイタリアが2大会連続で敗退みたいなシナリオまで考えてたわけだけど。さすがにそれはなかった。

ただし、イタリアは辛いだろうなって思う。1発勝負ならイタリアは強いって言われてるんだけど、今大会のイタリアにはそんな勝負強さも感じられない。大体においてチームが未だ迷走状態。守備はとりあえず4-3の確固たるブロックを作るイタリアイタリアした堅守で行けばいいってことに決まった。じゃあ、攻撃はってのが見えてこないイタリア。トニが大爆発しない限り、辛いだろうなって思う。でも、今までのチャンスの数を見る限り、トニが大爆発したらとんでもないことになる可能性もなくはない。

最後にベンゼマについて。完全にベンゼマのイメージが変わった。実は初めて見たんだけど、もっとFW的な選手、典型的なポストプレイヤーだと思ってたから、中盤でのプレーもそつなくこなすのはかなり意外。そつなくっていうか、普通に高レベルでこなしてたけど。アーセナルに移籍したらすごくフィットしそうだなって気がする。プレーだけじゃなくて、年齢的にも、それにフランス人だし。実現しなくもないかな。にしても、なぜに2戦目ではベンゼマはベンチに使われなかったのか?それが気になって気になって仕方がない。
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2008-06-17 Tue 20:23
オランダ×フランス
<オランダ:4-2-3-1>
FW:ファン・ニステルローイ
MF:スナイデル-ファン・デル・ファールト-カイト、エンゲラール-デ・ヨング
DF:ファン・ブロンクホルスト-マタイセン-オーイエル-ブラールズ
GK:ファン・デル・サール

<フランス:4-2-3-1>
FW:アンリ
MF:マルダ-リベリ-ゴブ、マケレレ-トゥララン
DF:エブラ-ギャラス-テュラム-サニョル
GK:クペ

歴史は繰り返すのか。今は昔、2年前のW杯の初戦で格下と思われるスイスと引き分けたフランス。そのフランスが最終的に準優勝まで駆け上がったのは知っての通り。その背後にあったのは、王様ジダンシステムの採用。初戦のスイス戦では、あくまでも中盤の1人っていうイメージが強かったジダンだったけど、次に見たブラジル戦のときには完全に王様化。いつの間にか、ジダンの両脇にはがんばれるマルダとリベリが並んでた(初戦はビルトールとリベリ)。

王様ジダンはトップ下の場所に居座って、チームの全体がそのジダンを目標にする。ジダンもその期待に応えて、抜群のキープ力、展開力を見せつけ、さらには決定的なパスを送り続ける。危険が大きそうな完全ジダン頼みのそんなやり方がフランスの準優勝を生み出したのは紛れもない事実。決勝でのジダンの退場とフランスの敗戦は象徴的だったように思う。

懐かしい話はそれぐらいにして、今大会でも初戦では格下と思われるルーマニアと引き分けたフランス。実際に試合を見てないから、はっきりしたことは分からないけど、どうも低調な内容だった模様。そんなわけで、今回も2戦目からのやり方の変更に着手したドメネク。やっぱり王様は必要だろうってことで、新王様にリベリを指名。システムを4‐4‐2から4‐5‐1へと変更して、リベリをトップ下に配置する形。もちろん、ジダンとリベリは全然違うけど、それについては後で書くことにする。

とにかく、1戦目の失敗と、2戦目に引き分けたところまではW杯と同じ流れ。最終戦に勝って勝ちあがると完全に歴史は繰り返すってことになるんだけど、さて、どうなるか。ただし、イタリア相手にW杯決勝の歴史が繰り返されちゃうと困った話になるわけだけど。まあ、先の話をしても仕方がないので、今回の試合の内容について見て行きたいと思う。

立ち上がりのフランスは超積極的。最前線からボールを追いかけ回し、後ろもそれに引っ張られた結果、守備の勝負どころがかなり高い位置に設定された。敵陣内のボールに対しても、素早い集中が生まれて、敵陣内での挟み込み、囲い込みによるボール奪取も増えてた印象。困ったオランダは可能性の薄いロングボールを前線に蹴り出すシーンが多くなってしまったと思う。そして、そんなボールは多くの場合でフランスの選手の手に渡った。

このフランスの守備のやり方は、おそらく対オランダを考えたら大正解。今大会のオランダが目指してるサッカーはポゼッション主体。今回の試合でもその後の時間を見る限りでは、イタリア戦と大きく変わらない狙いを持ってたと思う。まあ、ちょっとした変更もあったにはあったけど、それについては後ほど。とりあえずは、オランダの攻撃の根本的なベースの部分について見てみたい。

オランダの攻撃は前後の分断が起こり気味。ただし、必ずしも悪い意味ではないってのもポイント。まず、ボールの出し手として後ろの6枚が存在する。攻撃時には2‐4‐3‐1の形になるオランダの狙いとしては、特に後ろから2列目の4を生かしたいと思ってる。この4で左右の幅を使った横の関係でのパス交換をしつつ、隙間があいたら縦に入れる。

その縦で受けるのが前から2列目の3。うまく相手の間に入り込んで起点になる。そんな2列目に入った時に、SBが飛び出していく。このSBの飛び出しが、SMFが起点となるために中に入って先細り気味になる前線の関係性に幅を与える。さらに、今回はエンゲラールの飛び出しも目立った。そして、そうやってチームとして1つ前に入り込み、最終的にはファン・ニステルローイへっていうイメージ。

そんなオランダは低い位置で余裕を持ってボールを持ちたいと思ってるはず。だから、相手が前から来ないってのはかなり嬉しい展開。イタリア戦では実際にそんな展開になった。消極的なイタリアは完全に自陣に引きこもって、オランダの低い位置のボール保持者に対して何のアプローチもしてこない。結果としてオランダの出し手である後ろから2列目の4が浮きまくり。このときイタリアの2列目の4は、背後で間を狙うオランダの受け手と、フリーでボールを扱っているオランダの出し手の間に挟まれて、自分たちから守備を行えない状況に陥った。結果としてイタリアブロックがズルズルと押し下げられる展開に。オランダにとってはベストの流れになったと思う。

というわけで、イタリアを反面教師とするならば、オランダに対する者はオランダの出し手の場所を自由にしてはいけない。逆に前線から積極的に行くことで、そのオランダの出し手をつぶせるならば、流れを持ってこれるって言ってもいい。前回のイタリアも後半は前から行くように守備を修正して、結果として前半のようにオランダに好き勝手やられる展開からは抜け出した。

でも、時すでに遅し。その時点でオランダはポゼッションなんかどうでもよかった。出てきた相手のウラを虎視眈々と狙うやり方に変更してた。実際にカウンターで追加点を奪ってるわけで。そういう意味ではイタリアが後手後手。そんなイタリアの展開を見ていたはずのフランスなのに、残念なことにフランスも全く同じ流れをたどることになったと思う。

とにかく、立ち上がりのフランスの前線からの積極的な守備が正解だったのは間違いない。少なくとも、この時間帯のオランダは全く攻撃の形を作れてなかった。でも、この時間帯ってのが長くは続かなかったと思う。前半の5分にはすでにフランスは前線からの追いかけ回しをやめた。要するに立ち上がりに積極的に行くことで、自分たちに流れを持ってこよう作戦だったんだと思う。確かに立ち上がりの時間の流れはフランスに行った。でも、前線からの守備をやめた途端に流れはオランダに傾いていった印象。

さて、前半の5分前後の時間になって果たしてフランスはどんな守備のやり方を採ってきたのか。その内容にびっくり。イタリア×オランダを見てないのかっていう内容だったから。要するに今回のフランスも自陣に引きこもる守備のやり方を採ってきたと思う。オランダにとっては願ってもない展開。立ち上がりに前から来られて困ってたのに、相手が勝手にブロックを押し下げてくれた。よって、オランダの出し手は浮きまくり。出し手が浮けばオランダのもの。オランダがどんなやり方を採ってくるかってのは、上にも書いたとおりだった。

まさに上に書いたとおりの流れへ。オランダは後ろから2列目の4で左右の幅を使いながらパスを回す。そんな横への展開の中で要所要所で様子見の縦パスを入れてくる。行ければ行くし、行けなければ戻す。とてもボールを大切にするオランダ。でも、この様子見の縦パスが相手にとっては脅威。たとえ、入った縦パスをすぐに後ろに戻すとしても。忘れたころに入る縦パスが相手の守備の前への意識を削ぐ。

それじゃなくても、背後のスペースを動かれて困っているフランスの中盤の選手たち。完全にオランダの出し手の4の場所にアプローチができない。そんなフランスの中盤をあざ笑うかのように、プレッシャーがかからないオランダの出し手は徐々に押し上げを図っていく。結果としてフランスのブロックが押し下げられる。まさに、イタリアと同じ流れに陥った印象。

ただし、イタリアとフランスの守備ブロックには微妙な違いがあった。そして、結果的にはこの微妙な違いが大きな違いにつながっていたように思う。その違いってのはFWの役割。イタリアの1トップのトニは後ろの4‐1‐4の守備ブロックとははがれた存在だった。だから、オランダの出し手の4はイタリアの4‐1の間に入り込んでボールを回すことができた。イタリアの中盤の4としては、自分たちが行ったら背後にスペースが生まれてしまう。よって、プレッシャーに行けない。だから、オランダの出し手の4の場所は本当の意味で完全に浮きあがっていたといってもよかった。

それに対して、同じく1トップに入っていたフランスのアンリはどうだったか。アンリはしっかりとブロックに参加してたと思う。守備時はリベリと横並びっぽい関係性になることが多くなった。リベリが前に出たっていうよりは、アンリが下がった結果として。そして、そんなアンリに任された役割はリベリとともに相手のボランチを見ること。見るっていうのが本当の意味で見るっていうことに近くて、相手ボランチに対して積極的な守備が見られなかったのは確か。積極的なっていうのは、相手ボランチにボールを入れさせないぜっていうようなやり方。だから、オランダのボランチのタッチ数自体は減らなかった。でも、アンリとリベリは最低限の役割として縦パスを入れさせないっていうことだけはしてたと思う。この小さな役割が実はかなり大きかったと思う。

何が大きいって、フランスの中盤に迷いがなくなったこと。イタリアの中盤は背後をうろちょろする受け手を見るのか、前でフリーになってる出し手を見るのかがはっきりしなかった。結果としてズルズル下がっていったのは、ここまで何度も書いてきてるとおり。対する、今回のフランスは出し手の方は首尾における2トップが見てくれた。だから、中盤は後ろの集中することができる。それでも横→横→縦→後→横→横→縦→後…みたいな展開で徐々に相手を押し込んで行ったオランダの攻撃はさすがっていうところか。

なんか、こんなやり方を見てみるとセードルフが欲しかった理由が分かるような気がする。そもそもセードルフは間に入ってパスを受けるのは大得意。それに、縦パスを受けて→戻してっていう役割も大得意。そこでリズムを作ることもできる。おそらく、スナイデルのバックアッパーに入れたかったんだろうなって思う。でも、残念ながらEUROを辞退して中田のチャリティーマッチに参加してたセードルフだった。

とにかく、オランダとしてはこれによってボランチからの縦パスが機能しなくなった。エンゲラール、デ・ヨングが前を向いてボールを入れようとするとその前にはリベリとかアンリがいる。仕方がないので横パスを再びっていう流れ。ボールを大切にするオランダが縦パスを入れるときは、それなりの成功率が確保されてるとき。オランダの縦パスが収まりまくるのは、そんな考え方を採用してるから。そして、今回の試合ではアンリとリベリの存在によって、オランダのボランチの縦パスを入れる機会はほとんどなくなったと思う。

だから、実は今回のオランダは前回ほどスムーズにボールを前に入れられてない。縦に入れるのも、サイドからっていう方法が多かったと思う。先制のCKにつながったのも、ファン・ブロンクホルストからの1発だったし、ブラールズが攻撃のスタートとして目立ちまくってたのも印象的。そして、ブラールズ→カイトの縦パスが多くなってた。前回は左寄りに起点を作っていたオランダだったのに、今回はカイトの方に作ることが多くなってた印象。その要因もボランチが押さえられた結果によるものだった気がする。

ボランチから前線にいい形でボールが供給されなかったオランダ。仕方がないので、スナイデルとかファン・デル・ファールトが降りてきてボランチを助けることが多くなる。このうち、ファン・デル・ファールトの動き自体はあんまり大きな影響はなかった気がする。前回も降りてくることが多かったし。それに、ファン・デル・ファールトの動きは降りてくるものばかりではない。というか、全体のバランスを見ながらいろいろなところに顔を出しまくって、うまくボールを引き出してたと思う。神出鬼没でピッチ全体をカバーしながらボールタッチを増やしてた。

問題はスナイデル。前回は受けてとして機能しまくったスナイデル。結果として左寄りに起点が作られるシーンが増えたっていえる。スナイデルに入って、その外をファン・ブロンクホルストが飛び出していくってのが1つのパターンになってたし。でも、今回はスナイデルがボランチの助けに降りてきまくり。代わりにエンゲラールを前線に飛び出させる形をとったけど、スナイデルの代わりになれるかっていうと微妙。むしろ、空いたスペースにファン・ニステルローイが降りてくるやり方の方が効果的だった気がする。スナイデルが降りる→スナイデルのところにファン・ニステルローイ→ファン・ニステルローイとのところにファン・デル・ファールトってうポジションチェンジが結構目立ってた。

そんなわけで今回はファン・ニステルローイが組み立てのところでくさびを受けるシーンが多かったと思う。これがいいのか、悪いのか。ファン・ニステルローイが縦パスを受けるシーンが増えたのは、2列目の選手が降りて行ってしまったスペースに降りてきたため。さらには、2列目の経由点がないから直接的にファン・ニステルローイに入ってしまうため。前者はFWの不在を生み出し(ファン・デル・ファールトが代わりに入ることが多かったのは確かだけど)、後者はファン・ニステルローイに入っても多くの人数が絡めない状況を生み出した。

とにかく、ボランチの場所まで降りて行くことが多くなったスナイデル。結果として自然に左右のバランスが崩れる結果を生み出した。要するに前線にいるカイトと降りるスナイデルっていう右肩上がりの関係性が生まれたと思う。だから、必然的に深い位置に入るのは右からっていうパターンが多くなった。エブラのサイドを狙えっていう考え方があったかは微妙。とにかく、そのカイトへの縦パスの出し手はブラールズってことが多かったわけで、結果としてカイトに入っても誰もフォローに行けないシーンが目立ってた気がする。

そんなわけでイタリア戦から比べるとスムーズさを欠いたかのように見えたオランダのやり方だけど、大局的に見ればやっぱり素晴らしい攻撃の内容だったことには変わりがない。ここまで書いてきてなんだけど。何度も書くようだけど、低い位置で左右を使い→受け手が間を狙いつつ、ここぞの場面で縦パスを入れ→行けるなら行き(後ろの飛び出しも絡めて)、だめなら戻して→相手のブロックを徐々に押し下げて行く。このオランダの攻撃の組み立ては洗練されてると思う。これを見てると、似たような組み立てをしてる日本の五輪代表にも希望が持てたりするわけだけど。

問題は相手が前から前から来たときか。要するに今回の試合の立ち上がりみたいに、出し手のところが自由になれなかったとき。でも、そうなったら本来のオランダに戻ればいいだけの話かもしれない。中寄りになってる両SMFをWGに戻して幅を使う。その上でSB→逆サイドのWGみたいな一発の展開を織り交ぜつつ、相手ブロックを上下左右に押し広げて行く。そうやって深い位置に起点を作って、相手を押し込んだら、ポゼッション型に戻るっていう。死角なし。前から前から来るチームとの対戦が見てみたい。でも、残ったチームにそんな積極的な相手がいるかが微妙。少なくともルーマニアは違うだろうし。

さて、試合展開に戻ってみる。立ち上がりは積極的に来たフランスの余韻が未だ残って、フランスペースっぽい雰囲気の前半の9分にオランダが先制点。徐々にオランダペースに傾いてきたところで、すかさず結果を出したような印象。後半の追加点も、相手が前線から来てる流れの中での2点目にフランスの得点後の3点目。相手の心を折る得点も今回のオランダの強さの秘密。イタリア戦なんかはまさにそうだったし。とにかく、9分の先制点によって前半の流れはオランダに決まった。

この失点で再びフランスが前線から積極的に来るかなって思ったけど、前半のうちには守備のやり方に変更は加えられなかった。自陣にブロックを作って受ける形。これに対してオランダが大人の戦い方を見せる。来ないなら来ないでいいよっていう。ボールを持ってる限りは攻撃されないよっていう。低い位置でのパス回しの時間がかなり伸びていった印象。

確かにオランダが低い位置での保持率を上げるのはもともとの話。上にも書いたように、低い位置で持っておいて、ここぞで縦に入れるのがオランダ。でも、得点後のオランダのやり方は、そういう組み立ての一貫っていう性格からはちょっと外れたものだったように思う。縦に入れるための低い位置でのポゼッションというよりは、ポゼッションのためのポゼッションっていう性格が強かったような印象を受けた。

なぜならばボールを保持する場所が1つ下がってたから。2‐4‐3‐1の4の場所での保持から、よりプレッシャーの少ない4‐2‐3‐1の最終ラインの4でのパス回しが増えてた。同時に横にボールを動かしながら、全体を押し上げるっていうアプローチもなくなったと思う。後ろから2列目の4で回している時には、縦パスを織り交ぜつつ全体として前に入っていくっていうやり方が見られるのは上にも書いたとおり。でも、最終ラインの4でのパス回しが多くなった先制点後は、その場での保持が多くなった印象。フランスのブロックは自分たちから取りには行かないけど、ブロックを押し下げられるってこともなくなった。ただし、横には動かされていたフランスのブロック。

ただ、そんな低い位置のパス回しから狙えるときには縦を狙うっていう考え方自体は変わってなかったと思う。いくらなんでもずっと最終ラインで保持してるってのはあり得ない。左右に動かしつつ、隙を見つければ攻撃を開始しスピードアップを図ってたと思う。例えば焦れた相手が前に出てきたときとか。とはいえ、やっぱり前半はボールを持ってれば攻められないっていう考え方を実行してたと思う。ついでに省エネも図った。

ここまではオランダの攻撃×フランスの守備っていう方向性で見てきたので、今度は逆にフランスの攻撃×オランダの守備っていう側面で見て行きたい。立ち上がりから守備を積極的にやってきたフランスは当然のように攻撃でも勢いを見せてきた。守備の勢いそのままに、攻撃でも相手ゴールへ突進していくような形。ただし、この相手ゴールへ突進ってのが後々問題になってきたのも事実だった気がする。

立ち上がりのフランスが起点を作ったのは左サイド。エブラを起用してるんだから、そこを使わない理由はない。ついでにトップ下のリベリも左サイドに寄せて、エブラ&マルダ&リベリの関係で打開しようとする意図が見られた。そういえば、W杯のスイス戦もそんな展開だったなっていう。左サイドのビルトールにリベリ、ジダン、アンリがみんな左に流れて左の飽和状態。そんな状況を整理するために、ジダンを王様にしたはずなんだけど、今回は大丈夫なのか。と思ってたら、今回はアンリが左に流れなかったのであまり問題にはならなかった。

ただし、フランスの左サイドはオランダにとっては右サイド。当たり前。じゃあ、その右サイドには誰がいるのかって言えば、ブラールズとカイト。ロナウジーニョを止めた男ブラールズと守備大好き(本当は大好きかどうかは知らない)カイト。フランスの左の2人、クラブではヨーロッパを制した左SBとヨーロッパで準優勝の左サイドアタッカーをもってしても、左サイドを圧倒的に制圧するのは無理だった。というか、むしろ左サイドの局面でつぶされるシーンが相次いだ立ち上がり。何しろカイトは守備に目立ちまくり。その守備の後、知らない間に最前線にまでいるシーンが目立ったのは、さすがカイトといったところ。

それでも左サイドに起点ができてたこと自体は確か。それはマルダとリベリの動きによる部分が大きかったと思う。どちらもボールを引き出す動きが目立ったと思う。トップ下の場所を基本としつつも、いろんな場所に顔を出すことが求められてただろうリベリはまあ当然としても、マルダの動きがかなりチームを助けてた。マルダが思い切ってかなり低い位置に入ったり、はたまた真ん中へ流れたりっていう動きでかなり浮くことができてたと思う。そして、ここにオランダの守備の問題が見え隠れする。

オランダの守備はフランスに負けず劣らず引いてブロックを作る形。4‐2‐3‐1で前に3のフィルターがある分だけ、相手が縦パスを通すのは難しくなってるかもしれないけど、それでも相手の出し手を浮かせてるのがオランダの守備。その代わり、受け手の方では絶対的に押さえようっていうことはっきりしてる。相手が自陣に入ってきたところで、その入りどころに対する忠実なチェックが行われる。それがオランダの1つ1つのチェックがオランダの守備のベースにあるといってもいい。

ただし、そのベースがよくも悪くも個人任せっていう気がする。見るべき相手をある程度定めつつ、よって個々の責任下にある選手を定めつつ、そこに入ったところは対応する選手がしっかりと見るっていう。このやり方はイタリア戦での前半には功を奏した。それはイタリアの選択肢が少なかったから。さらに今大会では精彩を欠いているイタリアの攻撃陣の動きが少なかったから。よって、オランダの守備は定めた目標にそのまま当たればよかった。全く混乱なく押さえることができたと思う。

ただし、後半は押し込まれる流れ。相手が前に出てきたことによって、引っ張られるオランダの選手が多くなったから。見るべき相手を定めてるから、相手が前に出てくれば、それに合わせて戻らなければならないオランダの選手たち。だから、イタリアが前に出てくる人数を増やすことはダイレクトにオランダのブロックが押し下げられることを意味した。ついでに、イタリアの前線の人数が増えて選択肢が増えたことによって入りどころへのアプローチも遅れ気味だった。

そんなオランダに今回課された課題は動く相手に対してどう対処するか。特に上に書いた、リベリと丸ダは厄介な存在だった。立ち上がりの時間帯は2人を浮かせまくり、簡単に起点を作らせまくりの流れだったと思う。それに対して、まずリベリにはデ・ヨングとのマンツーマン的な関係をはっきりさせた。マルダに関してはしっかりと受け渡しをするようになった。結果としてフランスの左サイドの活性は徐々になくなっていったと思う。そんな中で失点を喫したフランスは、戦い方の変更を余儀なくされた。

具体的には前にかける人数を増やすとともに、左サイドへのこだわりを捨てた。最初は攻撃のエブラと守備のサニョルみたいな関係を作ろうとしていたフランスだけど、失点後の時間帯にはサニョルが攻撃で目立つようになって行ったと思う。さらにトゥララン、マケレレの攻撃参加も活発になっていった。特にマケレレが頻繁にFWの場所まで出てきたのは、かなり意外だった。そして、そんなマケレレの飛び出しが攻撃の1つのヒントとなっていたと思う。

そもそもオランダの守備は入りどころを狙うやり方。しかも、個々をベースとして。逆に言えば入る前を狙うっていうやり方は採られてないと思う。相手の縦パスを途中で引っ掛けるみたいな。相手より前で触るとすれば、それも個人の出足に任された部分。だから、フランスの方としてみれば、前線にボールが入ることは入る。問題は入った後の展開をどうしようかっていうこと。

繰り返しになるけど、入りどころに対してはオランダの選手が忠実に守備をしてくる。だから、そこで足止めをされてしまうわけ。オランダの方としてはそこが守備の勝負どころ。だけど、ここでその入りどころに対する相手のプレッシャーがかかる前に次の展開をしたらどうなるかっていう話。そう考えるとオランダの守備は案外もろいかもしれない。局面を次々に変えられてしまうと、個がベースになってるオランダの守備は狙いどころを定められなくなる気がする。もしかしたら、ルーマニアの局面トライアングルづくりのうまさが生きてくる可能性があると思う。番狂わせもありうるかも。

今回の試合の話に戻って、フランスもそうやってパス回しで相手のチェックを否していければチャンスは大きかったと思う。そして、フランスと言えば中盤のパス回しっていう先入観がある者としては、案外簡単に崩せるんじゃないかっていう気さえした。でも、残念ながら今回のフランスには中盤のよさが欠片も見られなかったと思う。ボールに対する動きが少なかった印象が強い。

そんな中で上に書いたようなマケレレの飛び出しがヒントになった。マケレレの飛び出しは前線に当てておいて前に出てくるって形が多かったと思う。要するに長い距離のパス&ゴー。そうやってマケレレは相手に捕まらずに前線に飛び出してきた。そんな基本のパス&ゴーも今回のフランスではあまり見られなかった。マケレレに攻撃を任せてるようでどうするんだ。アンリの得点はサイドでのシンプルなパス&ゴーで相手を外したところから始まってるわけだから、オランダ相手には効果的だったはずなんだけど。

そうやってボールの近くに関係性を作れなかった要因が上に書いたようなゴールへの突進にあったと思う。今回のフランスはなぜか急いでた。前線にボールが入ったところで、どんどんと前に向かっていった。周囲の選手が関係性を作る間もなく前へ前へ。中盤の場所に居座りたくないかのような急ぎ具合。結果として個々の分断が目立つ結果に陥ったと思う。イタリア×フランスはどちらが攻撃のやり方を取り戻すかがキーになるような気がする。

ちなみに、フランスの個々の動きを切り取ってみると結構面白いものが多い。マルダの引き出し、マケレレの飛び出し、さらには右から斜めに入ってきてFWになるゴブの動き。1つ1つは面白いけど、それが1つ1つで終わってた。今回のフランスの攻撃には連続性がなかったと思う。連続性のない攻撃ならオランダの守備には格好の相手だったって言える。

そんな連続性のない攻撃の中で唯一チャンスを量産したのが王様リベリ。一時は消えてしまったリベリも、プレーエリアをさらに広げて右サイドに顔を出すようになってからは復活。デ・ヨングもここまでついては来られないだろうっていう場所でのタッチ数を増やし始めた。リベリがうまく引き出して、それをそのまま前線へ展開、またはリベリの仕掛け。リベリを経由させたこの攻撃が一番チャンスにつながってた。これだって連続性は薄い。そんな中でもチャンスを作れるのが王様リベリの力。ジダンほどの絶対的な存在ではないけど、ジダンよりは運動量が豊富でいろんなところで起点になれる。

ここからは想像になるけど、まさかフランスはジダン後遺症に陥ってるんじゃないかって気がする。攻撃の連続性のなさはそのためなんじゃないかっていう。ジダン経由の攻撃ではジダンに入れときさえすればなんとかしてくれる。1つのボールに対して複数の選択肢を作る必要もないし、ボールが動くたびにそれを繰り返す必要もない。それが未だ残っている結果として、チームとしての組み立てが下手になってるんじゃないかって話。本当にそうだったらかなり深刻な気がするし、リベリがジダンになれるかがポイントになってくると思う。

さて、そんなわけで前半は落ち着いてボールを保持したオランダと焦りもあってかちぐはぐなフランスっていう構図。どちらのペースかって言えば、明らかにオランダ。しかも、圧倒的にオランダ。でも、そんなオランダが先に動く。エンゲラールに変えてロッベンを投入。この交代は実はかなり考えが張り巡らされてる気がする。フランスがどう出てきても対応できる交代。能動的な交代であり、受動的な交代だった。

もしフランスが前半と同じように出てきた場合、つまり自陣に引いて受ける形で守備をしてきた場合を考える。そのとき前半の流れで問題になったのはボランチのところだった。相手FWにつかれたボランチが縦パスを供給できないっていう。その側面から見れば、エンゲラール→ロッベンの交代は、実質的にエンゲラール→ファン・デル・ファールトの交代だったってことになる。ファン・デル・ファールトを1つ下げることでボランチの出し手としての役割を再構築するってこと。ちなみに、デ・ヨングじゃなくてエンゲラールが交代だったのはリベリ対策のはず。

じゃあ逆にフランスが前半とは違った戦い方をしてきたどうするか。具体的に言えば前線から積極的に来たらどうするかってこと。そしたら、それはスナイデル→ロッベンの交代の意味を持つ。要するにサイドにスピードを配置するってこと。そうやって出てきた相手のウラを有効活用。ポゼッションなんてどうでもいいって考え方。そして、実際はこちらの流れになった。そして、その流れが確定した瞬間(前半のように立ち上がりだけじゃないってことが分かった瞬間)にカイト→ファン・ペルシーの交代でスピードを加える。ファン・バステンにとって、ロッベンとファン・ペルシーのコンビによるゴールは必然だったんじゃないかとさえ思われる絶妙な選手交代だった。

とういわけで、後半は前線から追いかけ回すやり方に変更したフランス。もう後がないから仕方がない。あまりにもイタリアと同じやり方だったのが面白い。そして、攻撃もイタリアと同じ考え方を採ってきた。要するに前線に人数を増やすっていうアプローチ。後半はトゥラランが恒常的に高めの位置でプレーしてたし、マケレレも敵陣内に入っていることが多かった。そうやって前線に人数をかけたことで、相手を押し下げ相手ゴール近くでのプレーが増えたのもイタリアと同じ。

さらに言えば、マルダ→ゴミスとゴブ→アネルカの交代はまるでディ・ナターレ→デル・ピエロとカモラネージ→カッサーノの交代と同じじゃないかっていう。要するに1トップを2トップにして、それでも足りずにFWを増やすっていう。そして、この交代が試合の流れを決定づけた。特にマルダ→ゴミスの交代はかなり問題が大きかったと思う。

前半から中盤での起点の役割を積極的にこなしてきたマルダ。そのマルダを下げてトップのゴミスを入れたことで中盤がなくなってしまったのが、交代後のフランスだった。ゴミスはトップの場所に居座る、ゴブは前半からの流れと同じように右サイドからFWの場所に入ってくる。完全なる真ん中飽和状態。アンリがそれを嫌がってサイドに流れる動きを繰り返したのが象徴的だった。

そして、その前線の選手たちが完全に待ちの姿勢を見せてたのが大問題。なぜならば、それはオランダの入りどころに対する守備の餌食になることを意味してたから。大体、真ん中で待っててもそこに誰がボールを出すんだって話。残念ながらフランスにはピルロがいない。中盤がなくなってもいいボールが供給されたイタリアとはわけが違う。リベリもサイドに追いやられて自由度が減っていたし、対するはロナウジーニョを止めた男ブラールズ。残念ながらイタリアよりも決定的なチャンスは少なかった。

この試合を見るとルーマニアが上がる可能性が少し高まってきたかなって思う。上でも書いたとおり、ルーマニアの攻撃はおそらくオランダの守備の相性がいい。狭い場所でのトライアングル形成と広い場所への展開力を組み合わせたルーマニアの攻撃をもってすれば、オランダの守備陣を混乱に陥れることが可能だと思う。残すはファン・デル・サールの高い壁のに。

ただし、問題はルーマニアが攻める流れになるのかってこと。ルーマニアの守備は昨日書いたとおり引いて受ける形。オランダとにとっては相性が抜群にいい。オランダのポゼッションの時間ばかりが延びて、ルーマニアのチャンスは少ないような気がする。でも、ルーマニアの守備も地上から攻めてくる相手は得意だから、どちらが上回るかってとこか。願わくばメンバーを落としてくるはずのオランダの攻撃がギクシャクしてくれるといいんだけど。

イタリア×フランスはどうなるのか想像ができない。ポイントはやっぱりどちらが攻撃のやり方を思い出すかってことになるだろうなって思う。ただし、イタリアの方には守備の安定感にもやや不安あり。勝負にでるからって行って、ルーマニア戦のような超攻撃的メンバーで戦ってきたら、自滅の危険性もあると思う。守備の面ではやっぱりフランスの安定感のが上かなっていう気がする。フランスは今回と同じ形でどれだけ連動性を高められるかってやり方を採った方がいいと思う。
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2008-06-16 Mon 20:23
イタリア×ルーマニア
<イタリア:4-2-3-1>
FW:トニ
MF:デル・ピエロ-ペロッタ-カモラネージ、デ・ロッシ-ピルロ
DF:グロッソ-キエッリーニ-パヌッチ-ザンブロッタ
GK:ブッフォン

<ルーマニア:4-1-3-2>
FW:ムトゥ-Dニクラエ
MF:キブ-コドレア-ペトレ、ラドイ
DF:ラト-ゴヤン-タマシュ-コントラ
GK:ロボント

オランダ相手の前回の試合で失敗してしまったイタリア。初戦ということもあって、おそらく守備を重視したコンセプト。4‐3‐3のトップ下の2枚にアンブロジーニ&ガットゥーゾを起用してるのを見ても、それは分かる。ただし、このアンブロジーニ&ガットゥーゾが大ブレーキ。2人の個人的な問題というよりはチームの中の当てはめとしての問題の方が大きかったわけだけど。

もともと、どう考えたって2人に求められたのは守備面の仕事。おそらく高めの位置で守備のスタートとして機能してもらいたかったんじゃないかと思う。持ち前のボールへのハードワークをいつもよりも1つ高い位置でやってねっていう考え方。ただし、守備に重点を置いたイタリアは守備への積極性を見せない。チーム全体が後ろに重心を置いた形。アンブロジーニ&ガットゥーゾが守備のスタートになるにしても、相手までの距離が遠すぎる。下手に引っ張り出されて後ろにスペースを残してくるのは嫌だ。というわけで、2人ともブロック内に釘づけ。ズルズルと押し下げられて行く。それだったら、この2人が入らなくてもいいんじゃないの?っていう状況。

そして、知ってのとおり攻撃よりも守備の方が得意な2人。トップ下の2人が守備的。これは攻撃を考えるとかなり痛い。そもそも、守備でズルズルと引かされたイタリアは前線が完全にはがれてた。しかも、その前線の選手たちの関係性も希薄。カモラネージは消え、ディ・ナターレはトニの近くへ行こうと頑張るもののの、有機的に絡むことができず。そんなこんなのうちに、頼みのカモラネージ&ディ・ナターレの両WGも守備に引っ張られて、後ろに押し下げられる展開になった。結果、トニが完全孤立。

そんな感じで前半は最悪の内容だったイタリア。攻守に渡って全く整理ができてない。その上、2失点を食らって結果も最悪。後半はなんとかしなければならない。交代は、中に流れてトニと関係性を作るならディ・ナターレよりもデル・ピエロ、消えてたカモラネージに代えてカッサーノ、サイド攻撃を活性化させようのマテラッツィからグロッソの交代。それぞれ理由は妥当だろうし、この交代によって一気に攻撃に転換したのも事実だった。ただし、本音を言えば交代枠が3人じゃ足りないよっていうイタリアだった気がする。

3人交代後のイタリアはトップ下のガットゥーゾ&アンブロジーニを残した。もっと交代したいところを交代させていったら、残ってしまったのかもしれない。とにかく、これによって攻撃のピースが未だ足りない状態が続いてしまったと思う。イタリアの後半のやり方は、①両SBのグロッソ&ザンブロッタを超高い位置に入れること②それによってデル・ピエロとカッサーノを中に押し込むこと③守備的トップ下はシカとして、ピルロから、その前線の選手たちにボールを供給、ってものだった。ピルロのボールの質に加えて絶対的な人数が前線に入ってたから、圧力自体は高かったと思う。でも、その内実は無得点の結果が物語ってた印象。

そんなわけで1戦目はギクシャク感ありありのままに終わってしまったイタリア。親善試合で試してたら、その後絶対に採用しないだろうなっていうぐらいのやり方だったように思う。というわけで、それを踏まえての今回の試合では大ナタを振ってきた。両SBとデル・ピエロのところは前回の後半の流れを継続。大きく変わったのが、ガットゥーゾ&アンブロジーニ→デ・ロッシ&ペロッタの中盤。ミランからローマへ。完全なる攻撃への大転換。どんだけ選手層が厚いのか。

ただし、やっぱり極端すぎる気がしてならない試合前だった。完全守備から完全攻撃へ。デ・ロッシの守備力に任せるのか。でも、ガットゥーゾとアンブロジーニのどちらかを残してもいいんじゃないかって話。1戦目の失敗を完全に引きずってバランスが戻らない。実際に守備では問題が見え隠れ。それについては後で書くけど。圧倒的に主導権を握った試合だったからいいけど、次のフランス戦ではこれも使えないだろうなって気がする。攻撃型とか守備型じゃなくて、とりあえずは全体のバランスを整えてみたらいかがだろうか。

さて、対するルーマニア。フランスを完封してきた力を見せていただこうじゃないか。そのルーマニアの狙いが見られたのが試合開始直後の最初のルーマニアのチャンスだったと思う。高い位置からは追いかけずに、自陣にブロックを作る。ただし、最終ラインは下げずに自陣ブロックはコンパクトに。立ち上がりの最初のチャンスはその高いラインを生かして、自陣のある程度の場所でボールを奪ったところ。その奪ったボールを速攻で前線へ。ニクラエがうまくサイドに流れて引き出してた。そして、ニクラエに収まった瞬間に後ろが一気に飛び出してくる。そうやって素早く数的優位を作ってのパス交換から、さっさとゴール前へクロスって形だった。

要するに自陣のある程度の場所で奪って→蹴って→後ろが押し上げて→ゴールへっていう狙い。プレミアリーグを見てると、こういうチームが結構目立ったりした。具体的にどのチームだかは忘れたけど、たぶん過去の記事を見ると書いてるはず。トップを狙って単純に蹴り込み、相手を押し込んだところで左右の幅を使った展開っていうやり方。どのチームだったっけか。

とにかく、ルーマニアのやり方のベースは守備。守備のつながりからの攻撃をするチーム。そして、おそらくフランス戦ではその守備が狙ったとおりに機能したんだと思う。いろんなところでルーマニアがフランスを完全に押さえたっていう触れ込みを見るので。じゃあ、今回はどうだったのか。確かにルーマニアの守備の堅さが光った試合ではあった。でも、本当にルーマニアのやりたい守備をやれたのかって言われれば微妙だと思う。フランス戦ではできて(できたらしく)、イタリア戦ではできなかった理由。それは相手が攻撃において中盤を重視してるか否かにあったように思う。

ルーマニアの守備のやり方は実はかなりの自己矛盾をはらんでる。上にも書いたように、ルーマニアは前線では一切守備をしない。ほぼ全員を自陣に引かせてブロックを形成、そのブロックで受ける形を採る。でも、ベタ引きのラスト固めブロックを最初から作るわけではない。上にも書いたように守備の狙いどころはあくまでも自陣の中でもある程度の場所。もっと言えば、中盤で引っ掛けたい気持ちが強かったんじゃないかと思う。

だから、最終ラインは高めを維持する。少なくとも今回の試合の立ち上がりはそうだった。前が後ろに下がり、後ろが前に上がることで、コンパクトなブロックの完成。このコンパクトなブロックをベースにして、相手が自陣に入ってきたところで守備を開始する意図が見られたと思う。コンパクトブロックを形成してるから、それぞれの選手間の距離は近いルーマニア。結果として1人1人のケアすべきエリアは小さい。よって、入りどころに対して厳しくプレッシャーをかけられる。ついでに、そういう最初の守備で相手を足止めにしたところで、近さをベースにした素早い囲い込みも可能になる。そんな狙いがルーマニアの守備には見られた。

でも、ここで大きな問題が現れる。それが上に書いた自己矛盾の意味。相手が自陣に入ってきたところで守備を開始するって書いたけど、本当に相手が自陣に入ってくるのかっていうこと。相手が攻めてくる以上、いつかは相手が自陣に入ってくるのは確か。でも、そのアプローチの仕方がルーマニアの守備の効きやすい形なのかっていうこと。早い話が相手が地上からつないでつないで攻めてきてくれなければルーマニアの守備は機能しない。ルーマニアは前線から守備をしない受身守備だから、地上から攻めてきてくれるかどうかは完全に相手次第。幸運にもフランスは地上から来るチームだったと思う。スタイルを考えても想像がつく。でも、イタリアは必ずしも地上から攻めてくるチームではなかった。

そんなイタリアも最初は地上からつないで組み立てようとする意識を見せてたと思う。相手のプレッシャーがかからない最終ラインを押し上げ、前線の人数を増やした上で、中盤の場所に起点を作ろうとするやり方がいくつか見られた。前回は完全に消えてしまったカモラネージも、立ち上がりからいろいろな所に顔を出してボールを引き出してたと思う。思惑通りにSBを上げつつ、中盤に動きをもたらしながら、しっかりと組み立てて崩していこうとする意図自体はあった気がする。

ただし、ここまで書いてきたとおり、そんなイタリアのやり方はルーマニアの守備の格好の餌食。自陣に入ってきたボールに対しては忠実に1つ1つの守備が機能するルーマニア。前線では消極的な守備のルーマニアでも、相手がひとたび自陣に入ってくれば積極的にプレッシャーをかけて行った。そして、今回のイタリアにはそんなルーマニアの守備の否すほどの攻撃の連動性がなかったように思う。前回の試合でも言えたことだけど、今大会のイタリアはどうも局面局面での関係性が薄い気がする。

よって、中盤を経由させてで地上からつなぐのは相手の守備網にみすみす引っ掛かりに行くようなものだと考えたイタリア。実際に引っ掛かるシーンが多かったし。さすがは現実主義路線を貫くイタリア。あっさりと中盤でのつなぎを放棄したと思う。立ち上がりは地上から、時間とともに空中からっていう普通とは反対の流れをたどった攻撃のシフトチェンジが見られた。普通は最初はリスク回避のために蹴っておいて、段々とつなぎに変えるっていう方がしっくりくるんだけど。とにかく、なかなか面白い流れだった。

というわけで、ロングボールが増えていったイタリア。これは合理的なやり方の転換だったと思う。上にも書いたように、敵陣=イタリア陣内では全く守備をしないルーマニア。よって、最終ラインが高い位置まで押し上げられたってのは上にも書いたとおりだし、同時にボールの出し手を浮かせることもできた。出す方が浮いてるなら、そこから前線に単純に入れるボールの精度もそれなりに高まる。ターゲットのトニもいる。何よりも相手の守備の勝負どころである中盤を飛び越えてやるってのが一番大きかったように思う。

で、ここでポイントとなるのはロングボールの供給役。もちろんファーストチョイスはピルロ。ただし、ルーマニアもピルロを完全に浮かせるほど無防備ではなかった。ピルロに対してはトップ下の選手がしっかりと対応してたと思う。ただし、ちょこちょこと浮かせてしまうシーンも見られたけど。それでも、ピルロに対して気を使っている雰囲気が見て取れたのは確か。

でも、ここでルーマニアにとっては残念なお知らせ。今回のイタリアはピルロとともに中盤の底にデ・ロッシを起用してきた。ローマでは球出し役として活躍しまくりのデ・ロッシ。デ・ロッシが浮くと、ローマはかなりスムーズに攻撃を作ることができるし。ピルロと見劣りがしないって言ったら言い過ぎかもしれないけど、中長距離の距離稼ぎパスを有効活用するのには十分な存在。そして、ルーマニアはそのデ・ロッシを浮かせまくった。デ・ロッシを甘く見たのか、まさかピルロとデ・ロッシを横並びにはしないと思ってつくべき選手を決めていなかったのか。イタリアとしてはデ・ロッシが出し手として十分に機能したことによって、ピルロを前線に絡ませることが可能になってた。

そんなわけでデ・ロッシを活用して、出し手の側面から見れば、ロングボールを使おうと思えば使いたい放題の状況だったイタリア。じゃあ、受け手の方は準備ができてたのかっていう問題がある。何しろ前回はトニが完全孤立状態。たぶん、あの試合で蹴りまくったとしても実質的な効果は期待できなかったと思う。でも、今回のイタリアは受け手の方の準備もしっかりとできてたと思う。そもそも、前回とは違って、チーム全体が前に押し出されてた状況だったわけで、必然的に前線の人数も多かった。それに、その内実も明らかに改善されてたように思う。

今回のイタリアは一番最初に書いたような4‐5‐1の形。でも、実際に上に書いたような4‐5‐1で戦ってた時間は皆無だったって言える。無理やりに当てはめれば、その形になるって程度。しかも、攻撃と守備との間でも形が違うっていう難しい問題。ビデオで見てなかったら理解できなかったかなって思ったりもする(ビデオで見ててもよく分からなかった)。とりあえず、守備は後回しにして今関係ある攻撃の方について見て行きたい。変則システムの活用が受け手の準備に関係してた部分があるから。

攻撃での崩れ方は左サイド。上では左サイドに配置したデル・ピエロは本当は2トップの一角的にトニの近くでプレーしてたと思う。そして、ペロッタが左から真ん中へかけて動く。だから、4‐4‐2の左のペロッタが中に流れることが多かったとも見える。実際にペロッタは真ん中寄りでのプレーが目立ってたし。そして、そんな感じで明らかに過疎化してしまっていた左サイドのスペースをグロッソが埋めるっていう形。グロッソは超高いポジションをキープして、前半の前半はかなり目立った存在になってた印象。

で、この真ん中のトニ&デル・ピエロ&ペロッタと左のグロッソが受け手として機能してた。真ん中のトニは高さを生かしまくり。低い位置からのボールの質の高さもあったけど、入ったボールを的確に味方に落としてた。それをデル・ピエロがしっかりと拾う。やっぱりこの役割ならディ・ナターレよりもデル・ピエロ。ペロッタがもう少し絡めたらっていう流れではあったけど。で、そうやって真ん中に集中させておきつつ、要所要所でグロッソを使う1発のボールを供給。上にも書いたように前半の前半はグロッソが目立ちまくりで、攻撃の起点はことごとく左サイドに作られていった。

ちなみに、この左右のバランス崩し的なやり方(本当は逆のザンブロッタも高い位置で待ってたけど)が、元に戻って出し手=デ・ロッシを浮かせる効果ももたらしてた印象。ルーマニアの2列目真ん中の選手は上にも書いたようにピルロにつく。だったら、デ・ロッシには2列目右の選手がつかなければならない(デ・ロッシが左に入ってたから)。でも、残念ながらその2列目右の選手はグロッソに引っ張られた。だったらFWが見ればいいんだけど、この時点ではそのつもりは毛頭なかった模様。デ・ロッシが完全フリーでルーマニア陣内までドリブルで持ちあがってくるシーンもいくつか見られた。

ルーマニアとしては上で書いたような自分たちの守備の狙いが全く機能しない状況。中盤は越えられてしまったし、そもそも相手の単純距離稼ぎのボールによって高い最終ラインを維持するのも難しくなった。ロングボールの圧力に負けて、ブロックがだんだんと押し下げられて行ってしまったと思う。そして、ここでルーマニアが開き直る。コンパクトな守備ブロック、中盤での引っ掛けの狙いはやめようと。もうラストを徹底的に固めてやろうと。よって、ベタ引きブロック形成へ。これはかなりの開き直りだったと思う。何しろ後で書くように、サイドの局面も捨てたから。本当に最後の最後に勝負をかけた守備。チーム全員が自陣に入る時間も長くなった。

実は前半の10分ぐらいにこの転換が訪れてた。で、それに伴って守備ブロックも変更されたと思う。それまでは4-1-3-2ブロックを作ってたんだけど、この時間からはムトゥを左に入れた4‐1‐4‐1というか4‐3‐3みたいな形に変更されてた。相手のSBの上がりを少しでも押さえようとしたのかもしれない。後はラストベタ引きを完全に遂行するためっていう考え方。4‐5のラストブロックを念頭に置いてたのかもしれない。

あとはイタリアの出し手対策か。これが実際にシステム変更と関係あるかどうかは分からないけど。それでも、デ・ロッシはこのシステム変更の前後では明らかに目立ち具合が変わってた。実際には1トップに残ったニクラエが対応しようとする意図が見られたと思う。だから、システム変更によってというよりは、システム変更とともにその場所を整理してきたっていうことだったのかもしれない。

そして、このルーマニアのシステムとか方針の転換とともにイタリアもやり方の転換を図り始めた。それまでは1発距離稼ぎを中心として戦っていたイタリア。中長距離のパスで距離を稼いでおいて、最終的にはサイドからのクロスっていうやり方が多かったと思う。それがだんだんと1発で距離を稼ぐボールを減らしていく。理由は簡単で、もはや必要ないから。相手が自陣高めで引っ掛けようとしてるなら、それを飛び越すのは意味があるし、結果として相手ブロックを押し下げることにもつながる。でも、今やもう相手はベタ引き。下手に蹴ったら相手の密集ブロックの中でこぼれ球を拾われてしまうのがオチ。そんな確率の低いやり方は使いたくないし、使う必要もない展開だった。

そんなイタリアの攻撃はサイドに起点を作るものへと転換した。それまでに目立った左サイドばかりではなくて、逆の右サイドもバランスよく使うようになったと思う。相手のラドイが負傷退場した後の時間帯(この前後にルーマニアはやり方を変更)になって、突如としてザンブロッタが目立ちまくり。ムトゥが左サイドに張り出してプレッシャーをかけてたのに、それでもザンブロッタが出てくるあたりに今回のイタリアの攻撃性が見て取れたりする。

でも、イタリアのサイド攻撃っていうのはあんまり聞かない気がする。そんなイタリアが徹底的にサイドから攻めまくった今回の試合。前半はそういう意図が顕著だった印象。じゃあ、なんでイタリアがサイドにこだわったかっていう話。これにはイタリア自身の要因とルーマニアとの相性の要因があったと思う。ついでに言えば、積極的な意味も消極的な意味もあったような気がする。

まず、積極的な意味の方で。上にも書いたとおり、ルーマニアは自陣のバランスのいいコンパクトブロックを諦めてベタ引きにするって決めた時点で完全に開き直った。真ん中だけを徹底的に押さえてやろうっていう考えが見られて、逆に真ん中以外は半ばどうでもいいやっていうやり方になったと思う。だから、サイドの守備は相当にルーズ。1人または2人の関係で十分に深い位置に入り込めた。そして、残りの選手はゴール前に入れることができたと思う。

この真ん中に人数が、それまでの1発距離稼ぎとは違った部分。1発距離稼ぎのときには、とにかく早めにゴール前に向かうことを念頭に置いてた。ルーマニアの高めのラインに戻りながら守備をさせたいっていう。だから、イタリアの方も人数が十分に足りてないことが多かったと思う。それが相手がベタ引きになった後のサイドからのクロスには真ん中で尋常じゃない人数が待ってるシーンが多かった印象。

そして、このサイドからのクロスはベタ引きの相手に対しては効果的なやり方。ここでも書いてきたことがあるけど、ベタ引きの相手に正面から馬鹿正直に向かっていくのは非効率的。相手は待ち構えてるし、ゴール前に完全なる壁が敷かれてる。そして、相手は跳ね返し続ければいい。横からのボールはそんな相手のベタ引きを無効化できる。今回のイタリアはあまり見せなかったけど、後ろから飛び込んできたりするとかなり効果的。何にしてもサイドからのクロスに対してトニが合わせまくりの流れができたのは事実なわけで。ルーマニアのベタ引きも横からの攻撃に対してはかなりのもろさを見せてた。はっきりいってロボントがいなかったらっていう部分が大きい。

というわけで、積極的な意味の方はこんな感じ。じゃあ、消極的な意味の方はって話。それは真ん中から攻められなかったからサイドに逃げたっていう考え方。何しろルーマニアは全精力をかけて真ん中を固めてるわけで、そんな場所に入ってくのはかなり困難な作業だった。さらに、イタリアの攻撃にも問題があったと思う。今回の試合では真ん中を担当するペロッタが前との関係を重視してた。だから、中盤の組み立てではほとんど絡んでこなかった。結果として真ん中に起点を作るのは難しかったと思う(トニには収まりまくったけど)。

実際にカッサーノが入ってからは真ん中に起点を作るやり方が目立つようになったと思う。もちろん、ルーマニアのブロックが疲れで分散し始めてたってのも要因の1つ。それに後半はルーマニアも攻撃に出てたし。でも、カッサーノはうまく中盤に降りてきてボールを引き出す動きをしてたように思う。そのカッサーノの動きに触発されてか、デル・ピエロも組み立てに参加する機会を増やしてた。だから、後半はクロス以外の流れからのチャンスも増えた。

話は変わって、ベタ引きにされた(ベタ引きになった)ルーマニア。守備面ではギリギリの場所でも強さを見せつけて、相手の攻撃をシャットアウトしていったけど、問題は攻撃面に現れる。最初の方で書いたように、ルーマニアの攻撃の狙いは、トップに預けておいて、そこに後ろの選手が絡むっていうやり方だったと思う。でも、今や中盤以下は自陣ゴール前に釘づけ。トップに入ったとしても、そこにすぐに絡めない。だから、2トップだけで攻める薄い攻撃が増えていった。でも、それが案外チャンスにつながったりする。それを見たルーマニアが徐々に攻撃のやり方を変更していったと思う。

そのルーマニアの変更を見る前にイタリアの守備について見てみたい。残念ながらイタリアは守備面において超攻撃的メンバーへの大転換の弊害が表れてしまった。予想できたと言えば予想できたわけだけど。立ち上がりこそ最前線から追いかけ回す積極的な守備が見られたイタリア。おそらく、前回の試合で必要以上に、よく言えば落ち着いて、悪く言えば消極的に入ってしまった反省から。でも、その前線からの追いかけがなくなると同時に守備の根拠もなくなってしまった今回のイタリアだった。

そもそもイタリアは守備の基本的な形がいまいちよくつかめなかった。見た目的にはデル・ピエロ&トニ、ペロッタ&カモラネージ、デ・ロッシ&ピルロっていう4-2-2-2みたいな形。でも、それにしてはカモラネージがトップ下みたいな場所に入ってることが多い。だったら、カモラネージをトップ下に置いた4-3-1-2かと思えば、それにしてはデ・ロッシ&ピルロが横並びっぽい。それに、ベタ引きになったときにはカモラネージが右サイドに入ってたし。

そして、この混乱を深めたのが後半のイタリアの守備の形。後半は4-3-3っぽかった。デル・ピエロ&トニ&カモラネージの3トップにペロッタ&デ・ロッシ&ピルロの3ボランチみたいな形。3トップはトニの守備は免除され、両サイドが相手のアンカーの受け渡しを行ってたと思う。要するに右にボールがあるときにはデル・ピエロが絞って真ん中を押さえ、左にボールがあるときにはカモラネージが絞って真ん中を押さえるっていう。

その後半のやり方を見ると、前半のカモラネージの中への流れも説明できなくはない。でも、前半は明らかにデル・ピエロは2トップの一角みたいに振舞ってたし。だから、やっぱり後半はシステムを変更したんじゃないかっていう気がする。確かに後半は攻撃面でもピルロが右寄りでプレーすることが多かった(カッサーノが入ってからは左寄りで)。でも、前半からピルロが右サイドの守備に引っ張られることが多かったのも事実であって。どちらにしてもイタリアの守備の形はよく分からなかった。

そして、イタリアはそんな形のあいまい性に加えて、やり方の方でもあいまいな印象を受けた。どこで守備を始めるのか?どこで守備の勝負をするのか?っていう問題。スタートに関しては、立ち上がりはやる気満々だった2トップが知らない間に守備を放棄。よって、ルーマニアの奪いどころを深い位置に押し込んでも、何のプレッシャーもなく持ちあがられてしまう展開になってた。エアポケットができたみたいに、相手ボール保持者に対してプレッシャーをかけられない場面もかなり多く見られた印象。中盤に入っても、いつも守備のスタートを切るガットゥーゾが不在。誰も守備のスイッチを入れることができなかった。

そんなあいまいな状況のままになんとなく守備がスタートされるイタリア。ただ、なんとなくボールサイドに人が集まってしまうっていう状況になる。守備のスタートが切られてないから、全体がなんとなくボールに寄るだけ。人が多くても相手にとっては実質的なプレッシャーがかかってなかったと思う。後で書くようにルーマニアには狭い所のうまさと広い所のうまさがあった(これだけじゃ意味が分からないけど)。ショートショートでつないで相手を集めておいて、広いところへ展開って形が目立ったと思う。そうなったときに狭いところで奪いきれなかったイタリアの守備ブロックは大変なことに。逆サイドがスカスカで相手の前にはどスペースっていう場面が多かった。結果としてルーマニアはきわどいミドルシュートを打ちまくりの流れへ。

ちなみに、このミドルシュートの量産にはイタリアのDFと中盤の関係性のまずさもあったように思う。ライン間の距離がなんだかすごく空いていた。疲れとかそういう要因じゃなくて、根本的な問題として全体が間延びしてた気がする。よってピッチ全体にスペースがありまくりって感じに。最終ラインの構成がSBの選手ばかりになった弊害だったかもしれない。何しろ4人ともSB出身だから。

さて、そんなイタリアの守備のまずさに気づいたルーマニアは無駄に蹴る攻撃を徐々に減らしていく。あんなイタリア相手なら普通につないでも崩せるんじゃね?っていう。そして、そのルーマニアの中盤の崩しにかなりの可能性を感じさせられた今回の試合だった。上にも書いたように、狭い場所と広い場所の使い方が抜群にうまかったと思う。この攻撃を見るとルーマニアは組が組なら攻撃で勝ちあがるチームになってたんじゃないかって気さえした。

まず、狭い場所。このチームはボールに対してシンプルなトライアングルを作るのがとんでもなく素早い。ボールが入るとすぐに、そのボールに対して複数の選択肢が創設されるイメージ。局面の関係性の作り方は明らかにイタリアよりも上だった。そして、そんな近い場所でのパス回しで相手を寄せておいて、そこから一気の展開。これが広い場所の使い方。いわゆる接近→展開か。問題の多いイタリアの守備陣はこの接近→展開に翻弄されまくり。中盤が空いてしまってミドルを食らいまくったのは上にも書いたとおり。

そして、時間とともにそんなパスでの崩しを増やしていったルーマニア。あまりにもスムーズに攻撃を組み立てられるものだから、自信がどんどんとついていったんじゃないかと思う。そして、後半開始とともにその方向性が確定。おそらくハーフタイムに今回のイタリアの守備が相手なら、地上からでも十分に崩せるって言われたんだと思う。そして、この地上からの攻撃はベタ引きの守備の相性がいいかもしれない。奪うのが深い位置になったとしても、そこからつなげばいいから。ベタ引きと地上からの崩しっていう立ち上がりの狙いのは真逆のやり方になったのが面白かった。ただ、後半はちょっとムトゥ頼みになりすぎかなっていう気もしたけど。でも、ムトゥはその期待に十分応えてた。PK失敗を次まで引きずりませんように。

そんなこんなで引き分けの試合終了。展開的に引き分けは妥当だったかなっていう気がする。それにしても、イタリアはまたしても相手GKの大当たりに阻まれる流れ。ついてないとしか言いようがない。で、ルーマニアが意外に面白いサッカーをしてた。というわけで、まことに勝手ながらルーマニアを決勝Tに上げてやってください。できるだけ多く見てみたいので。でも、そうなったらイタリア&フランスのW杯ファイナリストが落ちるわけか。それはそれで残念だけど。
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2008-06-15 Sun 00:42
タイ×日本
<日本代表:4-2-3-1>
FW:玉田
MF:松井-香川-俊輔、遠藤-長谷部
DF:駒野-中澤-トゥーリオ-内田
GK:楢崎

やっぱり同じメンバー。本当は大久保と香川が入れ替わったけど。でも、これも些細なこと。大久保が出場停止っていうことになった時点で残った選手で一番タイプが近いのが香川だろうし。ただ、実際には大久保と香川の違いは結構大きかったけど。それでもチームとしてのコンセプトは変わらなかったと思う。前回の試合で危ない部分を露呈したボランチコンビもそのまま起用したし。

ホームでのオマーン戦は俊輔に引っ張られてオシム化。前回のアウェーでのオマーン戦は俊輔を引っ張って岡田化。岡田監督のやりたいサッカーに一歩近づいたし、連動性も1つ前よりは明らかに高まった。右肩上がりの右サイドに起点を作って、そこで数的優位を作り、最終的にはトップに当てる。トップに当てたところで2列目が前を向いた状態で絡む。そのために俊輔の自由度を高め、動きの質を上下から左右へと変更した。結果として最初のオマーン戦に横横に動いていたボールが縦に動くようになったと思う。

そういうわけで前回のオマーン戦は岡田監督としてはよしの内容。でも、残念ながら岡田監督のやり方には後遺症が残る。何しろ運動量がとっても要求される形だから。実際に完全岡田化のコートジボワール戦では前半の途中でスタミナ切れを起こした日本。気温40℃のオマーンでそれを問う時間維持できるはずもない。岡田化し、連動性が高まったいい形の攻撃はすぐに消え去る。

スタミナ切れの前に得点を奪えず、むしろ失点を喫してしまったのは痛かったとしても、スタミナ切れ自体は予測できてたはず。結果として、焦りが見え隠れした日本代表。今考えてみるとスタミナが完全に切れてしまう前に同点ゴールを奪わなきゃっていう気分だったのかもしれない。両SBと遠藤を残して、残りの全員がゴール前に殺到。敵も味方も入り乱れての超密集地帯。崩しきれるはずもなく、むしろ引っ掛けられてのカウンターを食らいまくり。後半になって、サイド重視を掲げることでなんとか立ち直った日本だった。

というわけで、岡田化日本の課題はどう考えたってスタミナ面。攻守に渡って運動量を要求しまくる岡田監督の形。守備は最前線から追いかけ回せ、攻撃では局面局面で常に複数の選択肢を作れ。元気な時間は機能性が高いやり方だけど、何度も書くようにいくらなんでも休みの時間が短すぎる。こないだの五輪代表がノンストップをキーワードにしてたけど、こっちのA代表の方がよっぽどノンストップ。そして、スタミナ切れはそのまま岡田監督のやりたいサッカーの終焉を迎える。毎回毎回、後半は別のやり方を取り入れることで打開を図る。そして、その後半の修正が抜群に機能したりするから面白い。

だから、頼むから気候を考えたサッカーをしてください。オマーンとのホームとアウェーの戦い方を比べると完全にギクシャク。ホームではオシムが強いやり方。保持率を高めつつ、左右の幅を使って相手のブロックを左右に動かす形。アウェーでは岡田が強いやり方。低い位置ではほとんど保持をせず、縦へ縦へと突き進む。そして、1度攻め始めたサイドを攻めきろうとするのも特徴。相手のブロックへのアプローチはない。待ち構えてればいいだけの相手は疲れない。前回も書いたけど、やってることが完全に逆だろうっていう。

そして、案の定前回の試合ではすぐに疲れてしまったってのはここまで書いてきたとおり。だからこそ、今回はちょっと考えてもらいたかった。そして、ここで最初の話題に戻ってくるわけだ。メンバーが同じ。前回と同じやり方を採るつもりか。疲れるよ。それでもまだ希望はある。ホームでのオマーン戦のように、同じメンバーでもオシム的に戦える下地はなくはないから。そのキーを握るのは遠藤。ホームでのオマーン戦は目立ちまくり、アウェーでのオマーン戦はあまり目立たなかった遠藤。遠藤の目立ち度、その役割が1つの指標になるはずだった。

さて、ここからが本題。実際に今回の日本はどういう戦い方をしたのかっていうこと。遠藤は目立ったのかっていうこと。先に答えを言っちゃうと、遠藤はそれなりに目立ってた。しかも、目立ってたのは低い位置でのボールの散らしのところだったから、場所も正解。でも、それなりにだった。要するにホームでのオマーン戦ほどは目立ってなかった。あのときは全ての攻撃は遠藤にはじまる状態だったから仕方ないかもしれないけど。で、遠藤がそれなりに目立ったってことは、戦い方もそれほど縦急ぎではなかったってこと。それでもホームのオマーン戦ほどは横型でもなかった。ここで思い出すことが1つ。ホームで戦ったタイ戦のときにも、岡田色も見えずオシム色も見えない海のものとも山のものともサッカーをしてた日本だった。

そんな日本の攻撃を見る前に、タイの守備について見ておきたい。日本がホームの1戦目にも前線から積極的にプレッシャーをかけてきたタイ。だから、ホームの今回は引きこもって守るなんていうことは当然考えてない。そして、前回の試合でも見られたように、やろうとしている守備の形自体はいい内容。かなり高い位置に置かれたトップが制限をかけるように意図的なプレッシャーのかけ方をする。それを、これまた高い位置に設定されている中盤が狙う。ブロック全体を高めに設定して、一体となって前からプレッシャーをかけるやり方。この一体っていうキーワードはタイの守備を見る上のポイントで、ボールがサイドに出たときもブロック全体をボールサイドに寄せて、相手のプレーエリアを窮屈にするようなやり方が見られた。

そんなタイの前線からの守備に対して、日本は一定の制限を受けることになる。それは、日本の最終ラインがボールを持ちあがることができなかったってこと。相手によってはハーフェイライン付近まで持ち上がって行く日本の最終ライン。前回の試合でも高い位置で攻撃のスタート役を担ってたし。でも、そんな日本の最終ラインが今回は自陣エリアの直前の場所でのボールの扱いが増えてたと思う。それは、ここまで書いてきたようにタイの守備ブロックがかなり高い位置に設定されてたから。

ここまではタイの守備が成功。でも、ここでタイは大きな過ちを犯したと思う。それは4‐2の間の場所のケア。フラットの4‐4‐2を並べるタイ。どうしてもタイにとってのトップ下の場所が空いてしまう。当然のようにそこを放っておくわけにはいかない。2トップを縦にするか、それとも2トップが完全に真ん中への縦パスをふさぐかしたいところ。でも、今回のタイはそのどちらも実行できなかった。

日本はCB→ボランチへの縦パスを通しまくり。前回は焦りもあってか前へ前へと入って行ってしまって、CBとの距離が空いてしまう場面が見られた日本のボランチだけど、今回はちゃんとその部分を修正してきたと思う。遠藤か長谷部の最低1枚がDFラインの前の場所、つまり相手にとっての4‐2の間にしっかりといた。トップ下の場所を空けてしまったタイは、日本のCB→ボランチのパスを許してしまっただけじゃなくて、そこで受けたボランチまで浮かせてしまった。慌てて中盤が守備に行っても、時すでに遅し。遠藤&長谷部はあっさりと前を向くシーンが多かったと思う。これが遠藤が目立った要因の1つだったと思う。

もう少しタイの守備について見てみたい。今回は2トップが絶対に押さえるべきボランチへのコースを簡単に空けてしまうっていう致命的な問題が見られたタイの守備だけど、前回の試合も含めて全体としての狙いがいいものだってのは上にも書いたとおり。何よりもベタ引きにならないってのが好感だったりする。でも、そんないい質の守備も日本の前には無力としかいいようがない展開。前回の試合もそうだった。ここには埋め切れない個の力の差があったように思う。

たぶん、タイの守備は相手がやや格上ぐらいならいい勝負ができるはず。そして、何よりも相手が個々の分断攻撃をしてればいい勝負ができるはず。バーレーン相手の好勝負はこの辺が出てるんじゃないかって気がする。タイの守備は、前線から切って、切って、追い込んでおいて、最終的には数的優位で奪い去るっていうもの。最初の、切って、切っての場所を相手の組織に否されて行くと痛い気がする。逆に相手の選択肢が少なければ少ないほど、つまり個が分断してればしてるほど、タイの守備の網に引っ掛かっていく。

例えば、今回の試合でタイがペースを取り戻したのは日本が個の分断傾向があったからだと思う。タイの守備が思うように機能する下地ができたって言える。でも、全体として見れば、個の力に差があり、さらに組織で攻めてくる日本には苦しかったと思う。日本のセットプレーの数が異様に多かったのが、それを示している。ファールで止めるしかない場面が増えてしまった印象。

そんなタイの守備に対しての日本の攻撃について本格的に見て行きたいと思う。今回の日本は上にも書いたように、縦へ縦へと急ぐ勢いや弱まっていた。遠藤を経由しつつの低い位置での保持時間も延びていたように思う。その低い位置で左右の幅を使う意識も見られた。たぶん相手の守備のやり方が関係してたはず。前から来る、さらにボールサイドに寄ってくる相手の守備ブロックへのアプローチ。左右にずらすことで狙いどころをなくそうっていう考え方。そういう柔軟性はさすがにあるかってところ。

そういう低い位置の保持から相手ブロックへ仕掛けるところで起点を作るのは徹底的にサイドの場所だった。パターンは同じ。相手の前線からのプレスを否すために最終ラインで幅を使う→ボランチとCBでパス交換→サイドへ起点。これで攻撃をスタートさせた。最初の左右の散らしには、CB→ボランチのコースを空ける意図があったかもしれない。あまりにもボランチの場所に好き勝手に通しまくってたし。で、CB→ボランチのところで相手を真ん中に寄せておきつつ、今度はサイドへ展開ってパターン。ボールへの意識が高いタイの一体守備ブロックを逆手にとったいいアプローチだったと思う。

このサイド起点で特徴的だったのは、今回は攻撃において駒野が目立ちまくりだったってこと。要するに起点を左サイドに作ることが多かった。スタメンを見る限りでは内田のいる右肩上がりだと思った今回の形。前回も失点後の総攻撃までは内田の方が攻撃で目立ってたし。それが真逆の駒野が目立ちまくり。なんでなんだかさっぱり分からなかった。実際には、薄々分かったような気がしなくもないけど。それはまた後の話。

とにかく徹底してサイドに攻撃の起点を作って行った今回の日本。そして、サイドに起点を作ったところで一気にスピードアップ。やりたいことができてた時間、要するに疲れてなった時間帯は、ここで岡田色の登場。SBを軸としながらボールの近くの人数を増やして、ダイレクトダイレクトで同サイドを崩していくやり方がいくつか見られた。これまで以上にボールサイドにかける人数が増えていた気がする。俊輔も何なら左サイドを基本ポジションにしてるぐらいだし。今まではあまり見られなかった、俊輔と松井の同サイド共存もかなり多く見られたと思う。玉田を含めた前線の動きが活発になってた。そして、その動きがボールの近くによるためっていう目標のもとに行われてたのが今回の特徴だったんじゃないかって気がする。

さらに、ここで香川の存在が大きくなった。最近は頑張りまくる玉田も当然のように組み立てに絡んでくる。でも、大久保&玉田のときには絡んでくるのは玉田だけだった。それに対して今回は大久保の代わりに入った香川が積極的に組み立てに参加してきた。ボールの近くでの動きを活発にして、うまくボールを引き出してた印象。よって、前回よりもサイドのボールの近くに絡む人数が増えた日本だったように思う。前回はボールサイドに人数をかけつつ、一方で真ん中のFWの近くにも選手をかけていたから。その分散した人材を今回はボールサイドに集めた印象。いいパス交換が行われた時には本当にスピーディーに敵陣深くまで入り込んでいった。

ただし、この状況だと本当の意味での0トップになってしまう危険性がある。そこで考えた。ボールに近づくランニングをする選手を増やす一方で、最低1枚は相手のウラを狙う動きをしようと。ポジション的には玉田が担うことが多かった、この遠ざかるランニングの役割だけど、玉田が中盤に降りてきている時には別の選手がしっかりとしていたと思う。でも、やっぱり玉田が遠ざかる役割を担うのが一番しっくりくるから、今回の玉田は今までよりは組み立てのところで目立たなかったように思う。

ここでふと思い出した。サイドに起点を作り、ボールサイドに人数をかけつつダイレクトでのパス交換を行う、同時に1枚がウラを狙って行く。どこかで聞いたことがあるなと。そう、初期岡田型。2戦目のボスニア・ヘルツェゴビナ戦の攻撃がまさにそんなやり方だった。そして、その1週間後に行われたのがホームでのタイ戦。でも、そのホームでの対戦ではそんなやり方は見られず。今回急に復活させるなら、なんでホームのタイ戦ではやらなかったんだって話。答えは永遠に闇の中。

とにかく、サイドの局面では初期岡田色が見られたって言える。そして、ここで再びふと考える。初期岡田色では攻撃の起点は左サイドの駒野だったじゃないかと。上に書いたボスニア・ヘルツェゴビナ戦でも左の駒野と右の内田の関係性。このときも確かに左右の役割の違いが見られた。そして、攻撃の起点はやっぱり左の駒野だった。上に書いたような、ボールの近くの人数の多さが作られたのも左の駒野周辺。みんなが左サイドに寄ってたのが、この試合の特徴だった。

じゃあ、内田は何をやってたのか。その内田の役割は右サイドで待っていることだった。左サイドに密集地帯を作ってる日本だから、相手の守備ブロックも当然のように日本の左サイドに寄せられる。必然的に右の内田の前には広大なスペースが生まれる。その広大なスペースを縦へのスピードで走り切ることが内田に任された指名。左サイドで作って置いて、広い右への展開ってのが多く見られた印象。あのときは、左で接近→右への展開って捉えてたっけって懐かしく思えたりもする。

そんなわけで今回の試合で駒野が目立ちまくった要因はこれじゃないかと思ったりする。左で作っておいて、右の内田にスペースを与えて駆け上がらせようっていう。タイがボールサイドに寄ることを考えれば、なおさら効果的。ただし、これが正しいのかどうかわからない。なぜなら、左で作っておいて右へっていう展開はほとんど見られなかったから。左で作り始めて左で攻めきるっていうシーンが多くなった。内田はほとんど目立たなかった。右肩上がりシステムじゃないのかよって改めて思ったりする。

気になるのは最初から左で作って左で攻めきるつもりだったのか、それとも左から右への展開をしようと思ってたけどやめたのか。おそらく後者だったのかなって気がする。じゃなかったら、わざわざ右に内田を置く理由がないから。そして、やめたのはできなかったからじゃくてしなかったからだったからだと思う。要するに左から右への展開が必要なかったってこと。もっと言えば、左から左で十分に攻めきれたってこと。基本的にはノンストップ最短距離が目標の岡田監督の形だから、左で攻めきれるなら左で攻めきるのに越したことはない。

というわけで左サイドに起点を作りながら攻撃をして行く日本。でも、その左サイドの様子が時間とともに変化していった。最初こそみんなを左サイドに寄せて、ダイレクトダイレクトで敵陣内に進攻していく形が目立った日本だけど、徐々にいいリズムでのパス回しが減っていく。立ち上がりはボールに対して複数の選択肢を作っていたのに、段々とそれが個の突破+パスコース1つみたいな感じに減って行ったと思う。

この理由についても前半の時点では図りにくかった。なぜならば、選択肢が減ったとしても敵陣深くまで攻め込むことはできてたから。駒野の縦への突破に、誰かしらのサポートを絡めただけで、簡単に左サイドを突き進むことが可能だった。それだったらボールサイドに人数をかける必要はないでしょって考えてもおかしくない。その代わりにゴール前に人数を増やす方がよっぽど効率的。で、実際にゴール前の人数は増えて行った。ただし、文字どおりにゴール近くで“待っている”選手が多くなったのは気がかりだった。そして、その心配は後半に入って確信に変わる。やっぱり後遺症が表れてたのかっていう。

それでも前半はその後遺症がダイレクトには表れなかった。上にも書いたように、少ない人数でも深い位置まで入っていくことができたから。それでもやっぱりボールに関わる人数はだんだんと減っていったと思う。立ち上がりはパス回しの中でのアクセントとして機能していた個人技が、相手ブロックへの仕掛けの主な手段へと変わっていく。それでも、そういう仕掛けで相手のファールを誘うことができた。強引にサイドをえぐってCKを獲得することができた。だから、前半は後遺症が目立たなかった。

個人の積極性が見られたのはいいけど、それが主になるのは危険。結果として個人技が発揮できないレベルまで、それぞれが疲れた後半は、後遺症に影響をダイレクトに受けることとなった。もう1度書くけど、その雰囲気は前半の早い時間から見られたと思う。やっぱり暑さには暑さの戦い方も考えた方がいいんじゃないかっていう気がした。

そんな日本の後半の流れを見る前に、前半の守備について見てみたいと思う。はっきり言って前半の守備の機能性は高すぎるほどに高かった。もちろん、日本の守備の質自体が高かったっていう要因が1つ。そして、タイの攻撃に問題があったってのがもう1つ。さらに、極めつけとして日本の守備とタイの攻撃の相性が抜群によかったっていう要因があったような気がする。

そのタイの攻撃はショートパスをベースにしたもの。低い位置でもつなぐ。全く蹴ろうとせずに、とにかくつないでつないで行こうとする。体格の問題もあって百姓一揆をベースにするのは難しいんだろうけど、守備のやり方といい、アジアで戦う日本にとっては新鮮な相手なんじゃないかっていう気がしなくもない。そして、日本にとっては戦いやすい相手であることは言うまでもない。ホームとアウェーを通じて、タイ相手にはオマーンとかバーレーンに苦戦したのとは明らかに違う雰囲気だった。タイの実力というよりは、その戦い方に要因がある印象。

知っての通り、日本は前線から積極的に守備をしたいと思ってる。だから、試合開始直後は最前線からかなり激しく追いかけ回す。でも、バーレーンとかオマーンは迷わずに前線に蹴ってしまう。せっかく頑張っても頭の上を越えられてしまう。だったら、疲れるだけ無駄。前線からの追いかけはやめて、自陣にブロックを作って受けようっていう守備のやり方に転換する。それがここ最近の日本の守備。相手の攻撃との相性が悪くて、やりたい守備をやらせてもらえてない。

でも、今回のタイは違った。立ち上がりの最初の最初の日本のチャンスがそれを物語ってる。日本はいつもの通り試合開始直後に前線から追いかけ回す。普通はそのプレッシャーを嫌がった相手は前線に蹴る。でも、タイは蹴らなかった。下手につなごうとした。それを長谷部が奪い取っての決定的なチャンスだった。普通にあれが先制点になっても、何もおかしくなかったと思う。

そのシーンに象徴されるように、今回の日本は久々にやりたい守備を存分に機能させられる状況だったと思う。最前線の玉田がリミッターなく追いかけ回して、2列目がその次を狙う。入りどころで厳しいプレッシャーをかけ、相手を足止めしたところで、周囲が一気に囲い込む。今回の試合の日本は、この囲い込みとか挟み込みのよさが目立ってた。自分たちのやりたい守備ができると、これほど違うのかっていう話。前回の試合ではCBが相手のFWを抑えたときに、そこに協力して挟み込むっていうシーンがほとんど見られなかった。結果として相手のFWに好き放題やられまくり。そんな危険な場所でも、挟み込みとか囲い込みができなかった前回に比べて、今回はピッチ全体のどこであってもそういう数的優位を素早く作り出した。ボールに対する最初の当たりはもちろん、それに対する次の早さも目立った試合だったように思う。

当然のように攻撃の切り替えの場所の質の高さも相当だった。相手に奪われた瞬間に最初のプレッシャーが効く。そして、高い位置であっても素早く味方が助けに行く。そうやって波状攻撃につなげることもできたと思う。前半はほとんどタイ陣内で時間が経過していった。これに関してもタイのこだわりすぎなぐらいのつなぎの意識が助けてくれた部分は大きい。ボールを奪ったときにもタイの選手は蹴らずにつなごうとした。結果として、それじゃなくても質の高い日本の攻撃から守備への切り替えのよさを存分に発揮させる結果に陥ったように思う。

そもそも前半のタイは日本にとってはかなり戦いやすい相手だった。なぜならば、タイはショートパスをベースとして戦おうとしているのにも関わらず、選手間の距離が恐ろしく遠かったから。ボールに対する動きも乏しかった。よって、つなごうとするけどつなげないっていうボール保持者が増えてくる。中東のチームなんかだったら、迷わず蹴っちゃうんだろうけど、蹴るのは嫌いなタイの選手たち。下手に保持時間を延ばしたことで、日本のプレッシャーをもろに食らうシーンが多発した。そして、すぐに囲まれていった。

そんなタイが後半になって反撃に出る。攻撃の際にチーム全体を押し上げてきたと思う。2点ビハインド、ホーム、負けたら終了ってことを考えれば、妥当な判断だった。そして、その策がうまくはまることとなった。全体を押し上げたタイは前半と比べると選手間の距離が圧倒的に改善してた印象。前にみんなが入った結果、強制的に近さが生まれたって言える。ショートパス重視のタイがやっとこさ、そのショートパスのコースを手に入れた。

それでも前半の日本ならば何の問題もなくやり過ごせたはず。タイはパスのコースが生まれたとは言っても、それは所詮強制的な近さによるもの。ボールに対する動きが特別活発になったわけじゃないし、連動性っていう意味ではまだまだ不十分。だから、日本が前半のレベルの守備をしていれば何の問題もなくタイの攻撃を止めることが可能だったはず。大体、前半のあのボールへの集中の速さは並大抵のチームでは否せないレベルだったって言ってもよかったから、タイにちょっと近さが生まれたといっても、それは焼け石に水のはずだった。むしろ、前に出てきたタイのウラのスペースを日本が使う下地ができたはずだった。

でも、実際にはそんな展開にならず。普通にタイにパスを回されてしまうシーンが多くなっていく。残念ながら後半には後遺症がダイレクトに出ていた直接的証拠。前半の超スピード集中はどこへやら、後半は1つ目のチェックでさえも遅れ気味。十分に寄せきれず、相手のボール保持者に余裕を持たせてしまう結果になった。よって、タイが予想以上にボールを保持する流れになった。最初のチェックも効かなくなった日本のブロックはズルズルと引かされる結果に陥ったと思う。ライン間の距離も空いて、間に入られるシーンも目立って行く。

そして、日本の後遺症は攻撃面にも影響を及ぼしていく。前半も途中からはボールに対する関係性が希薄になっていたってのは上にも書いたとおりだけど、後半はそれが顕著になった。個々の保持時間が明らかに伸びて、タイのプレッシャーをもろに食らう形に陥った。そして、助けなく相手に囲まれて奪われるシーンが多くなったと思う。ある意味では前半とは立場が逆転。そういえば、タイは疑惑の転倒を多くしてセットプレーを稼いでいった。やっぱり、前半とは立場が逆転。

そんな中で後遺症が個人個人にも蓄積されていったのがかなり痛い。後半はタイだって疲れてたから、全体が間延びしていってた。だから、サイドからだけじゃなくて真ん中からの攻撃も可能な状況だった。相手の4‐4の間に入るのはかなり楽になってたと思う。でも、残念ながらそれができなかったわけだけど。そして、本当はスペースが増えたことで香川とか松井は生きまくるはずだった。ドリブルは仕掛け放題だった。でも、それも残念ながら実現できず。チームとしての後遺症が深刻でも、個人の強引な仕掛けがあればなんとかなったはずなんだけど、それも望めなかったと思う。ちなみに、どれぐらい個人へのダメージも大きかったかというと、“あの”駒野でさえ後半は目立てなくなったぐらい。

問題はそんな後遺症に対して、今回の試合では修正が見られなかったと思う。このチームは修正によさがあるチーム。前半は悪い流れでも、後遺症が起こったとしても、そこから後半に向けての修正でいい形を作る。前半よりも後半っていうことが多いチームだと思う。でも、残念ながら今回はそんな岡田マジックは炸裂せず。あまりの後遺症の大きさに、後半の途中で気づいたのかもしれない。2人を同時に投入してるあたりに焦りが見え隠れ。

とにかく、後半の日本は後遺症が深刻な状況になっているのにも関わらず、前半と同じように戦おうとしてた。もちろん、岡田監督のやり方だから運動量が求められる。逆に運動量がなければ、岡田監督のやり方はできない。よって、後半はそんなやり方の質を維持できるわけもない。それでも日本は前へ前へと進んでいった。低い位置での保持時間を延ばして、休めばいいのに、前へ前へと進んでいった。そして、前線では個々が孤立。ボールは相手に渡る。縦急ぎでみすみす相手にボールを渡すシーンが多々。そこはなんとかならなかったのか。

結果として3‐0で勝った、今回はこれに尽きると思う。全部、セットプレーからのつながりだとしても。ひそかに3点目はいい得点だったと思うけど。内容を見る限りでは、暑さ対策は万全にしましょう、これに尽きる。もう少し柔軟性があってもいいかなって思う。スタートから超ハイスピードで入るのは分かった。暑さの中でも関係なく、行くのは分かった。でも、試合の締め方というか、リードしてるんだから、もっと楽に戦う方法を採ってもよかった気がしてならない。
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2008-06-13 Fri 01:25
U-23:日本×カメルーン
<日本代表:4-2-3-1>
FW:森本
MF:本田圭-谷口-梅崎、本田拓-梶山
DF:田中-吉田-水本-森重
GK:西川

チーム立ち上げ当初は走りまくってた、この世代の日本代表。選手選考も走れる選手が中心。1つのボールに対する選択肢の多さ、後ろからの飛び出しの豊富さが目立った攻撃。高い位置からチームとしての積極性が見られた守備。どちらも運動量がベースになっているもの。その頃、A代表もオシム監督の就任直後で走るサッカーが大ブーム。そのブームに乗ったこの世代の代表のやり方だった気がする。ちなみに、相手が2トップなら3バック、相手が1トップとか3トップなら4バックっていうやり方も、この世代はきっちりと採り入れてた。

そんな走るチームにだんだんと“うまい”選手が増えていった。菅沼とか増田とか枝村とか谷口、カレン当たりが消えて行った。その代わりに家長がスタメンに定着したのが象徴的。その理由ももしかしたらオシム。07年のオシムの影響。去年のアジア杯で型作りをしたオシム。その中心にいたのは、俊輔と遠藤。全然、走りそうもない選手。走りそうもない選手を走るサッカーに定着させること、それが去年のオシムのテーマだった。そして、同じことを反町監督もやろうとしたんだと思う。うまい選手を走るサッカーに取り入れる。結局、オシムは成功し、反町は失敗した。

というわけで、07年の五輪代表は暗黒の歴史をたどる。うまい選手は増えたけど、それに伴って運動量が減っていった。そこで生まれたのがビルドアップの問題。前線で引き出す動きがないから、前にボールを入れられない。最終ラインから最前線への最長距離の縦パスを工夫なく狙うシーンが多発。当り前のように引っ掛けられまくり。スムーズな攻撃は不可能になった。そして、そんなチームの中で走る選手が変に浮いて行く。例えば、李が最前線で頑張って走り回る。でも、攻守に渡ってそれについて行く選手がいない。FWがはがれる。そういう場面が多く見られるようになったと思う。

そんなチームの中で、水野と本田圭の両サイドの2人が目立つようになった。このチームではスマート派だった2人が泥臭派へ。本田圭は低い位置でのプレー時間を増やし、前線へのボールの供給役。前線への配給の実効性っていう意味では貴重な存在となった。水野も前へボールを運ぶ上で重要な役割を担った。水野の場合は低い位置で受けてからのドリブルでの持ち上がり。でも、両サイドの2人がいくら頑張ってもチーム状態の改善にはつながらなかった。

そんな停滞感ありありのチームに救世主が現れる。その名は柏木。ボランチからFW、真ん中からサイドへとピッチを縦横無尽に動きまくり。動くことを忘れてしまった五輪代表に変化が生まれ始める。というか、反町監督の考えに変化が生まれたって言えるかもしれない。それが見られたのが去年の後半。トップに李とか岡崎が使われるようになったころ。要するに平山があきらめられたころ。FWには動くことが求められるようになった。時期を同じくして、中盤の場所にもいわゆる“うまいけど動けない”選手が消えて行く。

それでもビルドアップの問題は根本的には改善されなかった。あまりにも急激なシフトチェンジがその原因にあった気がする。動ける選手が多くなったとは言っても、そのそれぞれが個別に動いてたイメージ。そして、あまりにも動く選手を入れすぎた結果、その動く選手にボールを供給する選手もいなくなった。これに関しては梶山の離脱の影響も大きかったとは思うけど。今度は出し手がいない問題からビルドアップがスムーズにできない状況が生まれたって言える。

そんな不安な状況で締めくくられた07年。好材料は北京の本選へのチケットを手に入れたことぐらい。攻撃は絶望的なので守備をベースに勝ち上がり。今や守備の方も最後の最後の堅さに頼る状況になってはいたけど。とにかく、結果を残したこと自体はよかった。そして、いよいよ本番の今年。初戦のアンゴラ戦から不安がありあり。何しろこのチームのがんばり屋トリオ、水野&本田圭&柏木が不在。今まではこの3人のがんばりでなんとかなっていた部分が大きかったのに、全員がいなくなった。どうなることやらの試合前だった。

でも、実際には予想外にいい試合展開を見せてくれたと思う。一番はビルドアップの問題の解決。何よりもサイドを有効活用できるようになったのが好材料だった。本田圭&水野のサイドも活用はしてたけど、有効かどうかっていうと甚だ疑問。アンゴラ戦では、チームとして低い位置での真ん中のパス交換からサイドへ展開っていうやり方。そうやってサイドに起点を作ったときに、その場所にすぐに助けが入るのもよかった部分。柏木がいなくても柏木並みに頑張った梅崎がいろいろな場所の助けに顔を出した。後ろからの飛び出しも豊富になって、久々に中盤をいい形で使っている五輪代表を見た気がした試合。ちなみに、そんなサイド起点の攻撃で目立ちまくったのが長友だった。

ざっと振り返ってきた中で分かること。それは反町監督がA代表のやり方に引っ張られてるんじゃないかってこと。A代表のコーチもやってるんだから当たり前。最初の方で書いたとおり、走る選手による走るサッカー→走りそうもない選手による走るサッカーへの転換の試みは、明らかにオシムの影響。このチームではうまく行かなかったこの転換だったけど、なんとか成功させようと引っ張ったのが去年の失敗。柏木の登場によって、やっとA代表とは違う方面を目指し始めた反町07だったと思う。

その大転換は痛みを伴ったってのも上に書いたとおり。急に走れる選手ベースに戻しても、チームにその下地がなかった。選手の頑張りがチームに還元されない最悪の状況に陥ったと思う。そんな中で守備をベースになんとか勝ち上がりだけは決めた07年。その時点では内容は絶望的。でも、08年に入ってのアンゴラ戦ではかすかに光が見えてきたのも事実。理由の1つは時間の解決。大転換がやっとチームに浸透した来たってこと。もう1つは大幅にメンバーを入れ替えたことで、1つ前に追求していたやり方が完全にリセットされたっていう側面もあったと思う。メンバー岡田で戦ったコートジボワール戦でのA代表のように。

ちなみに、この五輪代表にとってはオシムから岡田へのA代表の監督交代もいい影響を及ぼした可能性がある。主力級を次々に引き抜かれてしまうのは痛いけど。とにかく、A代表の監督交代によって、このチームでは明らかに失敗したオシムのやり方への未練がなくなったように思う。そして、反町監督のやり方がA代表のやり方に引っ張られるっていう前提のもと考えると、偶然にも岡田監督のやり方は五輪代表と同じ方向を向いてたのもよかった点。

岡田監督の組み立てにあまり時間をかけずに、低い位置での保持時間を延ばさずに、縦へ縦へってのは五輪代表と同じ。トップに当てる意識の高さもずっと五輪代表は追及してた。それがビルドアップの問題っていうマイナス要素を生み出したのが五輪代表。でも、東アジア杯でのA代表はビルドアップの問題を露呈してたわけで。そう考えると、いいか悪いかは別にしてやり方は同じなんだろうなっていう気がする。そういえば、軸タイプから動けるちびっこへのFWの変更も同じか。

そして、今回の試合においても大雑把に言えば岡田的なサッカーが見られた五輪代表。ポゼッションで休む時間を作らずに、常に縦縦を狙う姿勢が見られた。結果としてスピーディーな展開が生まれた。前線にボールを入れて、そこにすぐに味方が絡むって特徴が見られた。FWに入れる意識も高かったと思う。そういえば、守備も相手の2トップに対して4バック。左右のバランス崩しみたいなものが見られたと言えば見られた。これは後で書く。ただし、大雑把に言えばっていうのも1つのポイント。縦への意識の高さがあったのは事実だけど、細かく見てみるとやっぱり内実は異なってた。それについて見て行きたい。

今回の日本の攻撃のポイントはポイントは2列目+1トップ。特に森本が1トップに入っていた時間はこれが顕著だったわけだけど。この前線の4枚に託された役割は前線の起点になること。当たり前と言えば当たり前の役割ではある。で、その当たり前の役割を果たすために前線の選手は何をすべきか。どうすれば前線でボールを受けることができるか。それは相手のギャップに入り込むこと、相手選手の間に入り込むこと。

そのために今回の日本の前線の選手たちはよく動いた。立ち上がりから本田圭が思い切って右サイドまで飛び出して行ったのが1つの象徴。このチームが本田圭があれだけ左サイドを捨てたのは初めてなんじゃないかっていうぐらい。森本も含めて、前線の4が代わる代わる相手選手の間に顔を出してきた。そして、その場所で浮きあがった。そんな動きに連動性があったのもよかった部分。誰かが動いてできたスペースに別の選手が入るみたいな。たとえば、本田圭が下がった左サイドに森本が流れてトップに谷口が出て行くみたいな。ぐるぐる変則4トップの片鱗か。

これで前線の選手が受ける下地はできた。本当にうまく相手と相手の間に入って浮く動きができてたと思う。日本のビルドアップの問題の1つが解決。受け手は完全に準備ができてた。というわけで、ビルドアップの方に必要なのは出し手の役割っていうことになった。とはいえ、実はこの出し手の問題が日本の課題だったりする。前線の動きは柏木が入った時点、もっと言えば李がスタメンに定着した時点である程度は期待できてたから。ただ、チームとしての連動性、実効性っていう意味では明らかに今回の試合の方が上だったけど。

とにかく、今回の試合で問題になるのは出し手の役割ってことになった。ただし、これについてもあっさりと解決。その要因は梶山の復帰だった。これで中盤に久々に“うまい”選手が加わった。走れる2列目の3人(本田圭の運動量は知っての通り。谷口の飛び出しの良さも知っての通り。梅崎も前回のアンゴラ戦で走れることが判明)、守備面が期待される本田拓、その組み合わせに1人走れる選手が増えたのは大きかったと思う。加えて、最終ラインの吉田も結構攻撃のスタートとしては機能してたし。

今回のカメルーンは守備ブロックを高めに設定してきた。そして、高めの位置から日本のボールに対して積極的にプレスをかけてきた。立ち上がりこそズレが生じて日本のWボランチがガラ空きなんていうイレギュラーな状態も見られたけど、それもすぐに解消。日本のボール保持者は低い位置でもなかなか自由に前を向けない状況だったって言える。

去年の日本だったら明らかに蹴りまくりの流れ。プレッシャーに負けてパスをつなぎながらの組み立ては放棄してたはず。でも、今回は心強い味方梶山がいた。梶山がボールを持つと落ち着きが生まれる。相手のプレッシャーも意に介さずにボールを保持できる。そして、相手のプレッシャーを否して前に向かっていくことができる。そして、1つ目のプレッシャーだけを外してしまえば相手には次々にっていう守備の波は押し寄せてこなかった。要するに単発気味だったってこと。よって、低い位置でのパス回しで梶山を経由させることができれば、出し手を浮かせることができた印象。

これで出し手も受け手も問題がなくなった日本代表。必然的に前線に起点を作るシーンが生まれてくる。最終ラインのパス回し→ボランチ梶山経由→前線で間に入り込む2列目へっていう形が目立つようになった。なんか最近見た形だなっていう。オランダがやってた前線へのボールの供給に似てたと言えば似てたかもしれない。

ただし、前線にボールが渡ったからって言っても安心できるわけではない。なぜならば、単発とはいえども相手の1つ1つのプレッシャーは厳しかった。さすがにスピードがある。入りどころに対してすぐに距離を縮めてきた。だから、前線に入ったからといっても、その後に相手ゴールに向かうためにはもうひと工夫が必要だった。何しろ前線で受ける選手は相手ゴールに背を向けてボールを扱うわけで、相手のプレッシャーが効いてるとそう簡単には前を向けない。結局はバックパスが多くなってしまう。

じゃあ、とりあえず前線に起点を作った日本はどうしたのか。その答えはボールに対する連動性を高めた。相手の間に入り込んだ選手がボールを受けた瞬間に周囲が一斉に反応して、ボールに選択肢を持たせたと思う。前線の選手がボールサイドに寄ってくる、ボランチが飛び出す、SBが攻撃に参加してくる。チーム全体として、ボールの近くに選択肢を増やそうっていう意思が見られたと思う。さらに、前線の選手の個の力(ドリブル力、キープ力)を生かした半ば強引な攻撃も結構アクセントとしては効いてたように思う。

この流れの中で目立ったのは、やっぱり梶山だった。今回の梶山は攻撃ではかなり重要な役割を担ってた印象。低い位置でのボール保持を助け、出し手となりつつ、自分が前線に送り込んだボールと一緒に自身も前線に飛び出していくみたいな。その前線への飛び出しの際に、的確に相手の間に入って行くシーンが目立ったと思う。そうやってうまくボールの逃げ場を確保してた印象。

加えて、左SBの田中もかなり目立った存在だった。田中が積極的に攻撃参加を繰り返すことによって、1つ前の本田圭の自由度が上がった部分が大きい。今回の本田圭は本当にこのチームでは見たことのないような役割を担ってた印象。そもそも前線でプレーする姿を見ること自体が珍しい。今までは低い位置で出し手として(しかも1発ロングボールの出し手として)の役割が大きかったけど、今回は高い位置で受け手として機能した。そのときに梶山と同じように的確に間に入り込むシーンが目立ってた印象。前線の起点としてのタッチ数はかなり多くなった。個人的な評価が高い本田圭だけど、受け手としての動きもできるのかっていう話。そこでタメを作れるのも魅力的だった。

話を戻して田中の攻撃参加について。左SBの田中が積極的に攻撃に出ていったことによって、攻撃に幅をもたらした印象。田中をめがけたサイドチェンジもいくつか見られたし。1つ前の本田圭との関係性の良さも目立ってた印象。ちなみに、このときに逆サイドの森重は攻撃を自重気味。森重は本田拓と一緒に、相手を押し込んだところで前の攻撃に顔を出してくるシーンが目立ったように思う。これが左右のバランス崩しって上に書いた部分につながる。

というわけで、ついに独自のビルドアップの方法を手に入れた日本代表。前回の試合でも上に書いたように、低い位置の真ん中でパス交換をしてからサイドっていう方法が見られたことは見られた。ただし、あのときは3バックだったからちょっと違うかなって思う。本番はどちらのシステムを使うか分からないけど、トゥーロンで4‐5‐1に自信を深めたようなので、今回のやり方が採用されると思う。とりあえず、ギリギリになってやっと1つの壁を越えてきたなっていう印象。

最終ライン→梶山→流動ベースで間に入り込んだ前線の選手って形で前にボールを送るってのはよし。前線に起点が作れたところで、後ろからの飛び出しを活用しつつ中盤の連動性を高めて行くっていうのもよし。同じ場所での個人の仕掛けも見られた。ここまではビルドアップの解決と捉えられる。ただし、その先に大きな問題が生まれてたと思う。前線にボールを送ることができるようになったのはいいけど、そこからどうやってゴールに向かうんだっていうもの。

前線の3+1の役割は前線に起点を作ることだった。そして、役割がそれだけになってしまったと思う。ゴールに向かっていく選手が少なすぎた。例えば森本はサイドに流れたり、中盤に降りたりしながらボールを引き出す動きを繰り返した。そこでポストプレーをきっちりこなすシーンも多くて、後ろの選手の飛び出しのスイッチとして十分に機能してたと思う。でも、じゃあゴールに向かうプレーは?って言われると全然思いだせない。決定的なチャンスを外したあの1回ぐらいのような気がする。

森本がいない代わりに誰かがFWになったのかって言われるとこれも微妙。まず、期待されるのはゴール前までの飛び出しが大得意の谷口。確かに、森本不在のときにはトップの場所にも顔を出していた谷口。だけど、この動きも期待されたほどではなく。谷口もボールの引き出し、あとは前線に起点が作られた時の助けに奔走してたと思う。同じことは梅崎とか本田圭にも当てはまることだった。

というわけで本当の意味での0トップ状態が生まれたのが今回の日本代表。やっとビルドアップの問題を解決したと思ったら、そこに人数をかけすぎてFWがいなくなってしまいましたっていう話。笑いごとではない。いい形で相手の4‐4の間に入り込んでも、ゴールに向かう手段がない。結局は4‐4の間でのパス交換が増える。最終手段は個人での仕掛けで相手ゴールに向かう方法。身体能力で勝るカメルーン相手には厳しいに決まってる。ことごとくエリア前の壁に跳ね返されてしまった。

そんなことをしている間に、それまではスムーズにできていたはずのビルドアップにも問題が生じてくる。梅崎、谷口、本田圭の順番に2列目の選手が消えてしまった印象。要するに前線にいい形でボールが送れなくなった。前半の時間が進むにつれて、そんな傾向が明らかになっていったと思う。その要因についてはいくつかあった。ちょっと見てみたいと思う。

1つは梶山が消えてしまったこと。前からこのチームでの梶山には1つの問題があった。それはフラフラと前線へ出て行ってしまうこと。最終ラインでパス回しをしている時に、その1つ前にいるはずの梶山が前線に行ってしまうってことが多かった。結果として中盤に経由点が作れずに、最終ラインから最前線までの最長距離の縦パスを狙ってたのがこのチーム。要するにビルドアップの問題における梶山の責任は大きかったわけ。

今回の試合は立ち上がりから出し手として目立ってたから、そんな心配はひとまず拭われた。でも、やっぱり時間とともに悪い癖が出て行く。最初はボールを前線に出してから自分も前線へっていう動きをしていた梶山が、低い位置で味方がボールを保持している間に前のギャップで待ってるっていう形が増えて行く。梶山がうまく相手の間に入り込んだとしたって、その相手の間にボールを供給するのはあなたなんですよっていう話。よって、だんだんと梶山の存在が中途半端となり、最終的には消えて行く流れが生まれてしまった。

上にも書いたとおり、カメルーンの守備ブロックが高い位置に置かれていた今回。上にも書いたように、低い位置の日本のボール保持者に対してもプレッシャーをかけてくる意図が見え隠れ。梶山がいれば、それを否していい形で前線にボールを供給することができてたけど、梶山がいなくなった瞬間にプレッシャーに負けるシーンが増えていった。もともと相手の前線からのプレッシャーに弱いチームだから、仕方がないと言えば仕方がない。

だから、梶山にはまずは低い位置での仕事を大切にしてもらいたい。そして、もう1つ。本田拓がもう少し球出しをしてくれないかなっていうこと。守備での貢献度はこれまで見てきたとおりだけど、もう少し攻撃のスタートとして機能してくれたらチームとしてかなり楽になるように思う。出し所が1か所よりも2か所の方が攻撃のバリエーションが増えるのは当たり前。相手の守備も分散できる。よって、前線に供給されるボールの質もよくなるはず。今回は完全に梶山に任せっきりだったから。結果として梶山がいた左寄りの攻撃が明らかに増えてしまっていたと思う。

その左寄りの攻撃ってのが日本のビルドアップに問題が生じた理由の2つめ。上に書いたように梶山が左にいたこと、さらに左右のバランス崩しが行われていたことで、攻撃の起点が左寄りになるのはチームとしても覚悟していたと思う。それでも立ち上がりは低い位置で左右の幅を使うやり方が目立ってた。森重もビルドアップの中で目立ってた。それがだんだんと左左へと入り込んでいったと思う。左右の幅を使わずに、左で作って左へみたいな。そうやって自分たちで勝手に幅を限定していってしまうのは、このチームの悪い癖なわけだけど。

理由はちょっと分からない。立ち上がりは相手の守備が左肩上がりっぽかったのが影響してるのかどうか。試合開始直後は中盤の4の左サイドが1つ前のラインに入ったような気がする。結果として森重にボールが入った時に、明らかに日本の左の田中よりは厳しいプレッシャーに晒されたシーンが見られたのも事実。でも、そういうプレッシャーを否すために低い位置で左右に作るんだけどなってのも思うところ。どちらにしても相手の圧力は強かったから、さっさと前線にボールを送ってしまいたいっていう意図があったのかもしれない。低い位置の保持時間を延ばせば延ばすほど、相手は前線のプレッシャーの強度を上げてきたし。でも、サイドを限定して作ったことで、結果として相手としては守りやすい流れが生まれたと思う。

最後の1つは単純に前線の動きが停滞したってこと。これは流が悪くなったことで守備にかかる時間が長くなったのが要因。次の守備を考えて、あまり前線でポジションを変えたくなくなったのか。とにかく、前半のような積極的なポジションチェンジがなりを潜めた。時間が進むにつれて、相手に慣れが生まれたことも重なって、うまく間間に入り込めなくなっていったと思う。

というわけで、前半の日本は時間とともに攻撃のスムーズさを欠いて行く展開になってしまった。ただし、だからと言って流れがカメルーンに傾いたかと言われればそういうわけでもない。というか、今回の試合において流れがカメルーンに傾いたっていう時間は皆無だった言ってもいいと思う。その要因はある意味では当然の2つ。日本の守備のよさとカメルーンの攻撃のまずさ。そして、後者は前者によってもたらされたといってもよかった気がする。

今回の日本の守備は1度自陣に守備ブロックをセットしてから行うものだった。相手がある程度の場所まで持ち上がってきたら、森本と谷口(頻繁に上下を入れ替えてた)が相手の最終ラインに意図的にコースを切るような形でプレッシャーを与える。ただし、その実効性は疑問。それは2人の守備のやり方がまずかったからではなくて、相手の攻撃のやり方との相性の問題だったわけだけど。カメルーンの攻撃については後ほど。そのカメルーンの攻撃のやり方を見て、守備ブロックを下げた可能性もある。実はもっと高い位置からやりたかったんじゃないかと。

とにかく、今回の日本の守備の勝負どころは自陣に置かれた。相手が縦パスを送り込んできたところで、その入りどころに対して個々が厳しいチェックを忠実に行う。そうやって相手のボールの受け手を自由にさせないやり方が見られた。そして、その後のところが今回の日本の守備の真骨頂。厳しい当たりで味方が相手を足止めしたところで、前後の挟み込みをかける。周囲の選手が相手の逃げ場を切る。そういう“次”のよさが見られたのが今回の日本の守備。前の選手の後ろに向かっての守備のよさが見られたと思う。そして、そのベースには局面での最初の守備を厳しく行うっていうことがあった。

たぶん、カメルーンはそんな日本の厳しい守備を嫌ったんじゃないかと思う。そもそも立ち上がりのカメルーンはそれなりに組み立てる意識が見られた。中盤のボールに対して、周囲の動きも活発だったと思う。アフリカのこの世代のチームにしてはだけど。で、そういう動きを活用しながら空いているところ空いているところ、広いところ広いところをつないでいく、いい形でのパス回しも見られた。でも、それは本当に試合の最初の最初だけ。そのうち、それなりに機能してたように見えた中盤での組み立てを放棄したカメルーン。その背後にあったのが、上に書いたように日本の厳しい守備だったような気がする。

そんなカメルーンはどうしたか。中盤省略サッカーをした。やり方はいたってシンプル。4‐4‐2を4‐2-4と分割して、後ろの4‐2が出し手で前の4が受け手。前線の4は2トップ+2WGっていうイメージ。だから、とりあえず幅は確保できてた。ただし、あまりにも単純すぎる。目標となるのはその4人だけ。日本はその4人だけを押さえればいい。しかも、その受け手の4人に工夫があるかと言われれば全く。後ろの出し手にも特に工夫はない。特徴と言えば頭は狙わずに地上から狙ったことぐらいか。

日本としてはとっても守りやすい展開。そもそも相手のボールの入りどころに対する守備の意識が高かったってのは上にも書いたとおり。そして、相手の攻撃の工夫がなく、しかも選択肢が限定されているだけに、その勝負の入りどころは狙いたい放題。入りどころで完全に足止めして挟み込むっていう日本の狙いが苦もなく実行できた。守備能力で勝ち上がってきた日本をなめるなよって話。いくら相手の身体能力が高いって言ったってあまりにもお粗末な攻撃だった。しかも、前線の選手に入ったとしてもそこに対するフォローはほとんどなかったのが今回のカメルーンの攻撃だったと思う。

というわけで、やっぱり後半の日本の課題は攻撃の修正ってことになってきた。守備は放っておいても守りきれるでしょってとこか。で、今回の日本は後半にしっかりと攻撃の修正を行ってきたと思う。本当は修正なんていう大層なことでもないけど。前半にやってた形を思い出した来たっていうのが実際の後半の攻撃の修正だったと思う。

まず、梶山が低い位置へと舞い戻った。後半のカメルーンは前半よりも積極的。高い位置にブロックをセットしただけでは飽き足らず、そのブロックから次々に選手が飛び出してプレッシャーをかけに出てきた。でも、さすがは梶山。後ろの焦りを一発で抑えきる。時には前線へ、時には幅を使う横パスへ。そうやって縦パスを横パスを駆使しつつ、相手の前線からの守備を否していったと思う。横幅も回復。実は今回の試合で初めて梶山の存在意義を強く実感した気がする。

そして、相手の前線からの積極的な守備を否してしまえば主導権はこっちのものだった。相手がブロックから出てきて積極的に守備をしてきたっていうことは、背後にはスペースを残してきてるってこと。相手にとっては一長一短。高い位置で奪えれば一気にチャンスへ。そこを逃げられれば、背後のスペースを使われる。梶山が目立つようになった日本は後者をひた走る。

ここで相手にとっての背後のスペースは何を意味するのかっていう話。それは日本にとっては2列目の場所。そして、2列目の選手たちは前半のいい時間帯の流動性を思い出した。いや、正確には前半よりもダイナミックな流動性が見られたように思う。谷口、梅崎のポジション捨ての思い切りが明らかに良くなった。本田圭はますまず間入りのうまさを見せつけた。スペースはあるし、動きも活発。再び前線に起点を作り放題の展開になったと思う。

ただし、ここで問題が生ずる。それは左SBの田中が突如として消えてしまったこと。前半からの上下動で疲れてしまったのか。だとしたら痛すぎるよ、田中君。こりゃ順当に長友だろうなって話になってしまう。とにかく、田中の攻撃参加がなくなったことによって、前線にボールを運んだとしても幅が使えなくなった。前半から前線に起点を作っておいて、そこからどうやってゴールに向かうかっていう問題があった日本。それなのに後半はサイドから崩すっていう選択肢を削られたわけで、ますます痛い。結局は相手ブロックへの無謀な突進が増えることになったと思う。

というわけで、反町監督が動く。森本に代えて李を投入。これが成功した。組み立てに積極的に参加してきた森本に対して、李は組み立ては半ば無視。森本が中盤的な動きを繰り返したのに対して李はFWとしてふるまい続けた。具体的には相手のウラを狙い続けた。本当に徹底的に。これで相手ゴールに向かう動きがついに生まれた日本。最終ライン→梶山→2列目→ウラ抜け李の一連の流れが生まれた印象。ただし、時間とともに大雑把になっていった日本。最終ライン→ウラ抜け李も増えてくる。ただし、相手が高い位置から来てることを考えればそれはそれで悪くなかったと思うけど。

おそらく李の交代は勝ちに行った交代。ベンチのFWのうちで李は当確のはず。他の選手を入れずにあえて李を入れた意味は明らか。で、他の交代はテストの意味が大きかったのかなって思う。個人的には水野も当確だと思ってるけど。ただし、最近のプレーは全く見ていないので正確なことは分からない。

それにしてもトゥーロンでいったい何があったのか?どんだけサッカーの質が高まってるかって話。ビルドアップの問題はあっさりと解決。攻守にわたる運動量が豊富で、その運動量がうまくチームに還元されてる。いろいろな局面で数的優位を作り出すことに成功した。攻守にわたって。でも、実はこのチームの立ち上げ当初の内容に一番近いんじゃないかって思う。紆余曲折を経て、結局はスタートに戻ったのかな。

さて、五輪に向けて今回の試合から見られた課題。明らかに一番大きいのはフィニッシュにどう持ってくか。最初の2/3の形は今回の試合で見られた。でも、ここまで書いてきたとおり、そこからフィニッシュへの流れが作れなかった。ただし、これについてはあまり悲観してない。前線にボールが入った時の周囲の連動性は素晴らしいものがある。その連動性を生かしたまま、少ないタッチで相手のブロックを崩し切れればいいだけの話。これは連携を高めてけば行けるんじゃないかっていう可能性を感じさせられた。

もう1つは幅を使いたいっていうこと。岡田色を反映したのかどうかは知らないけど(ここまで見てきたとおり、全然岡田色とは違ってたけど)、サイドチェンジもあまり使われなかった。そして、攻撃が中中に寄って行ってしまっていた。そうやって密集地帯に入り込んだことがいい流れをフィニッシュまでつなげられなかった要因の1つ。ただし、この部分についても解決はできると思う。何しろ安田、内田、長友っていうA代表スタメン級の面々が今回は不在。この中の2人を左右に置くってのは冒険かもしれないけど、少なくとも彼らが入ることによってサイドを使い方が活性化するのは間違いない。

最後にオーバーエイジについて。今回のやり方を見る限りではFWは玉田が合いそう。最近の玉田は中盤の降りてきての組み立て参加ができるし、FW的ウラ抜けも得意。森本の役割をこなしつつ、李の役割もこなせる。さらに守備の献身性も高いから1トップには最適。今回の連携のよさを見る限りではあんまり攻撃はいじらない方がいいなっていう気がしなくもないけど。

あと必要なのは組み立てに参加しつつFWにもなれるトップ下。そんなのA代表も求めてる人材じゃんか。柏木で行けるか。谷口がもっと積極的にFWになってくれるだけでもいいけど。守備を考えたら、この2人のどちらかがいいかなっておもうわけだけど。あとは守備能力が高くて球出しができるボランチ。上にも書いたように、梶山1枚よりは2枚の方がバリエーションが増える。ただ、これも高望みかもしれない。A代表を見習って、攻撃的な2枚をボランチに並べるか。ナイジェリア、アメリカ、オランダ相手にそれは危険すぎるかな。
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2008-06-11 Wed 17:41
オランダ×イタリア
<オランダ:4-2-3-1>
FW:ファン・ニステルローイ
MF:スナイデル-ファン・デル・ファールト-カイト、エンゲラール-デ・ヨング
DF:ファン・ブロンクホルスト-マタイセン-ブラールズ-オーイエル
GK:ファン・デル・サール

<イタリア:4-3-3>
FW:ディ・ナターレ-トニ-カモラネージ
MF:アンブロジーニ-ガットゥーゾ、ピルロ
DF:ザンブロッタ-マテラッツィ-バルザリ-パヌッチ
GK:ブッフォン

立ち上がりの試合の入り方が全てを決めてたような試合だった。積極的に行ったオランダがそのまま、前半は圧倒的にペースを握り、逆に消極的に入ったイタリアは押し込まれる展開に。遅ればせながら後半に入ってイタリアが積極性を増してきたけど、時すでに遅し。何しろ前半の2‐0でほぼ試合が決まってしまったような流れになってしまったわけだから。

積極的なオランダの立ち上がりの守備は前線から追いかけまくり。かなり深い位置に相手最終ラインにまで迷わずプレッシャーを掛けまくって、相手のミスを誘い、高い位置で引っ掛けるシーンも作り出した。その積極性がチーム全体の意思で行われてたのもよかった部分。最前線の追いかけに、2列目以降がしっかりと連動していたと思う。SBが敵陣に入って相手SMFに対応するシーンも多くなった。結果的には自陣にブロックを作るような守備に移行したけど、この積極性によってチーム全体の前への勢いが増したのは確かだったと思う。

対するイタリアは消極的。立ち上がりの最初の守備から自陣に引きこもってブロックを作った。トニをハーフェイライン付近にまで戻して、後ろの4‐1‐4は完全に自陣へ。オランダと比べるとあまりにも対照的な立ち上がりのやり方だった。確かに初戦を考えて、まずは守備からっていうイタリアの考え方も分からないではない。オランダが積極的に来たことで、当初の予定以上に引かされてしまったのも事実だったと思う。でも、結果的にはこの立ち上がりの流れが試合の流れを決定したってのは上にも書いたとおり。

そもそも、この引きこもりのイタリアの守備の意図に疑問を感じざるを得なかった。それは今回のメンバー、システムと照らし合わせてみたときに。今回のイタリアのシステムは最初に書いたとおりの4‐3‐3。ここで特徴的なのは、2列目にアンブロジーニ&ガットゥーゾを並べているっていうこと。この組み合わせを見る限りでのイタリアの狙いは明らかに高い位置からの守備を念頭に置いてる気がする。ガットゥーゾ&アンブロジーニの守備的2枚を高めに配置することで、相手の攻撃のスタートのところを抑えさせる狙いが見られる。

でも、そんな形にはならなかったのが今回のイタリア。上でも書いたとおり、立ち上がりから引きこもり。アンブロジーニ&ガットゥーゾが見るべき、オランダのエンゲラール&デ・ヨングのWボランチは完全に浮いていた。本当に完全に浮いていたと思う。そのオランダのボランチにボールが入ったときに、ガットゥーゾとかアンブロジーニがブロックから出てきてプレッシャーをかけようとする試みがたまに見られたのは事実。でも、あまりにも距離が遠すぎる。十分に寄せきる前に逃げられる状況。意味がないので、途中からは絶滅した形だった。

同じようなことがオランダのSB×イタリアのWGの関係性でも生まれてたと思う。要するに2列目の設定位置が低すぎたのが今回のイタリアの守備ブロック。ガットゥーゾとアンブロジーニを並べてる時点で、2列目は高い位置での守備が任されてると思いきや、その設定位置は低い。メンバーとやり方の間に完全なるギャップを感じさせられた。というわけで、オランダの攻撃のスタートは完全に浮きあがることになったと思う。オランダのボランチと両SBは自由にボールを触ることができた。

この時点でイタリアはオランダのボールの出し手への守備が機能しなくなった。そもそも守備をするつもりがなかったのか、やろうと思ったけどできなかったのかは分からない。たぶん、前者。逆にオランダにとってはボールの出し手が完全なるフリー。出す方は好きな時に好きなボールを前線に供給できる下地ができあがった。後は受け手の方の準備が整うのを待つだけ。

その受け手がどうかっていうのを見る前に、オランダの攻撃のやり方について見てみたい。オランダは最初に書いたような4‐2‐3‐1システムを採用。しかも、左サイドにはスナイデルを置いてる形。オランダ的なWGを置く4‐3‐3が完全に薄れてる。そういえば前にオランダの試合を見たときには、4‐3‐3のWGにファン・デル・ファールトを置く形だった。その後の進化形が今回の形か。ここのところの試合では4‐2‐3‐1で戦うことが多かったようなので、少なくとも対イタリア用ではないことは確か。いや、対イタリアのために練習してた可能性もあるけど。たぶん、ない。

その4‐2‐3‐1システムを利用したオランダの攻撃のやり方もオランダのイメージとは異なってた。簡単に言っちゃうと、オランダにしては真ん中寄りになってるなっていう印象が強い。その理由はSMFの動きによる部分が大きい。オランダのサイドアタッカーと言えば、縦縦の印象が強いんだけど、今回の4‐2‐3‐1だとSMFがサイドに張り付いている時間はほとんどなかったと思う。サイドのスペースはSBに任せておいて、SMFは真ん中に流れて行くっていうような形が目立った。そうやって中に近さを作る。ミランとかオシムJの形っぽい。必然的にSBとSMFの関係も常に2枚でサイドを侵攻してくって形ではなかったと思う。

というわけで、オランダのSMFは真ん中に流れてくるから、真ん中には近さが生まれるとともにスペースがなくなることになる。よって、ボランチの2枚の前線への飛び出しが少なかった。その代わりに、2人ともボールの出し手としての役割を全うしてたイメージ。ただし、これについては初戦の戦い方っていう背景があったのかもしれない。後半はエンゲラールの前線への飛び出しが目についたから、前半のように完全に2枚が後ろに張り付いてるってのはイレギュラーな可能性もある。ただ、それでもボランチに求められてる役割の大部分は出し手の方だとは思うけど。

オランダの攻撃の狙いとしては、SBを利用して幅を使いながら相手のブロックに揺さぶりをかけ、隙間を空けたところで、2列目の3枚にボールを預けるって形だと思う。2列目の3枚にはライン間のギャップに入り込むことが求められてる。そういう動きはやっぱりカイトよりもスナイデルの方が得意なので、今回の試合では攻撃の起点が左寄りに作られることが多かった。スナイデルはうまくギャップに入り込んで、ボールを引き出す動きを繰り返してた印象。うまく受けていい感じで起点になれるシーンが目立った。

で、その中寄りの2列目を経由させておいて最終的にはファン・ニステルローイを目指すっていうのがオランダの攻撃の1つのやり方に見えた。攻撃時はSBを上げて2‐4‐3‐1みたいになるオランダ。後ろから2列目の4が出し手、2列目の3が経由点、最後の1がフィニッシャーっていう役割が結構決まってた気がする。1トップなんだから2列目からの飛び出しが重要そうに見えるんだけど、そういう動きはあまり多くなかった印象。そして、SBを使って幅を確保する4→中に流れるSMFを含めた3→1のファン・ニステルローイと明らかに先細り的な攻撃が見られたのが、今回のオランダの特徴。最後まで左右の幅を広く使いながら攻めきる4‐3‐3のオランダらしいオランダとは全く違った攻撃の質が見られた。

さて、イタリアとの関係に戻ってみる。イタリアが引きこもった時点で後ろから2列目の出し手の4は完全に浮くことができたオランダ。攻撃をし放題の展開になるかと思いきや、そんなに甘くはなかった。出し手を完全にフリーにしたイタリアはどうするか?当り前のことだけど、全力で受け手を抑えにかかる。全力をかけるイタリア。しかも、イタリアが引きこもってたわけだから、スペースもあまりない。オランダは出し手が完全にフリーだからと言って、簡単に相手ゴールに迫るシーンを作り出すことはできなかった。

それでも意地になって縦パスを入れようとしなかったのが今回のオランダのよかった部分。立ち上がりこそ、無理やり入れようとして引っ掛けられるシーンが目立ってたけど、時間とともに縦パスを入れられないならとりあえずポゼッションしようっていうやり方を取るようになった。自由にボールを持つことができる、後ろから2列目の4でのパス交換を増やして、前線にギャップができるまでは焦れずにボールを保持するっていうポゼッション型の攻撃が見られるようになった印象。

そして、そんなオランダがジワジワとイタリアの守備ブロックを押し込んでいく流れにつながった。後ろから2列目の4でのパス交換の中で徐々にチーム全体を押し上げて行くような流れ。引きこもり作戦のイタリアはそもそも、相手が自陣に入ってきた時点でプレッシャーをかけるっていうやり方を採ってきたはず。でも、それが失敗。相手の後ろの4の押し上げに対して全くプレッシャーがかけられない状況に陥った。オランダの後ろの4はいつまで経ってもフリー。結果的にイタリアのブロックはズルズルと引かされて行ってしまった。

その理由はイタリアの中盤の4のジレンマ。2列目に本来的に課されていた役割は上にも書いたように、相手が自陣に入ってきたところで守備を開始すること。じゃあ、なんでそれができずにズルズルと下がってしまったのか。ガットゥーゾ&アンブロジーニの組み合わせを考えれば、サボったからっていう理由は当てはまらないだろうことは分かる。だから、そういう守備の役割を全うすると困ったことが起こるっていうのがその原因にあったと思う。というわけで、その原因について考えてみたい。

4‐3‐3、守備時は4‐1‐4‐1と言ってもいいようなイタリアのシステム。守備における、このシステムの弱点はボランチの1の場所のスペース。スイス×チェコの時にも書いたとおり。そして、その1の場所の出入りを激しくすることで相手の1の弱点にアプローチをするのが4‐1‐4‐1崩しのポイントだってのもその時に書いた。そして、システムが固着化したスイスはそれができなかった。対するオランダはどうだったのかっていうのがポイントになる。

その答えはすでに書いたとおり。今回の試合でのオランダの攻撃の特徴はSMFが中に流れてくること。ファン・ニステルローイは前線に張りつき気味だし、ボランチの飛び出しも少なかった今回のオランダは縦の動きで相手の1に仕掛けることはできなかった。でも、2列目の横の動きによって、それを実現してたように思う。スナイデルがフラフラと中に入ってくる、カイトもスナイデルほど目立たなかったけど、真ん中に流れてくることが多かった。ファン・デル・ファールトが引く動きをしてピルロを引っ張り出すやり方が目立ったのも、1への仕掛けってことになると思う。2列目の3が相手の弱点を的確についていたのが今回のオランダの攻撃だったように思う。

さて、このことはイタリアの2列目の4にとっては放っておけないこと。自分たちが後ろとの関係をきっちりとコンパクトに保っておけば、相手のサイドの選手が多少浮き気味になったとしても、なんとか押さえることができる。でも、逆に2列目の4が後ろとの近い関係を保っていられなくなれば、その間にできたスペースで相手の2列目の選手に好きなように動かれ、好きなようにボールを受けられてしまう。そんな危険性があったと思う。

ここで本来のイタリアの2列目の役割を思い出してみる。それは、自陣に入ってきた相手に対してプレッシャーをかけること。そもそも前線では全く制限がかかってないのが今回の引きこもりイタリアの守備。だから、相手が自陣に入ってきたところで守備を始めると言えば、それは0からのスタートを意味する。これは相手が左右にボールを振ってるだけに、結構、難しいこと。だからこそ、ガットゥーゾ&アンブロジーニにその難しいスタートのところを任せたのかもしれない。

とにかく、守備のスタートを切るためにはブロックから飛び出してプレッシャーをかけなければならない。でも、この時点ではそれまでの守備の蓄積がない。というわけで、無根拠なプレッシャーを否される可能性は大。相手は低い位置のパス回しにそれなりの人数をかけてるわけだから、逃げ道も多数ったわけだし。そして、ブロックから飛び出してかけたプレッシャーを否されるってのはどういうことを意味するのかってのがポイント。要するにこれは2列目が前に引っ張り出されたってことなわけだから、背後にスペースが生まれる。そして、その背後の場所は相手の2列目がボールを受けようと待ち構えている。

相手の出し手にプレッシャーをかけようとすれば受け手を浮かせてしまう。だからと言って、受け手の自由を奪おうとすれば、相手の出し手はフリーのまま。イタリアの2列目の4はこのジレンマに陥った。そして、結局は後者を選ぶことになる。というか、選らばざるを得ない状況だった。だから、低い位置でのパス交換を繰り返しながら徐々に押し上げ、陣地を増やすことに成功したと思う。

というわけで、出し手が高い位置にまで入り込むことができたオランダ。これは出し手と受け手の距離が縮まったことを意味する。だから、前線のちょっとしたギャップに受け手が入り込むことができれば、すかさず出し手からボールが供給されるっていう状況が生み出された。前線に入れられなければ、落ち着いて後ろで左右のパス交換で保持をしつつ、狙えると思った瞬間に縦に入れる。そんなオランダの攻撃が機能するようになったと思う。ここぞの縦パスをことごとくチャンスにつなげていった。

ところで、この時点でイタリアはかなり深い位置まで押し込まれたことになる。何しろ守備の勝負どころが定まらないままにズルズルと引かされた状況だから。奪いどころは、個々の能力を生かして、相手の縦パスを先に触るって形ばかり。そして、こんな守備の流れが攻撃にも悪影響を及ぼすことになったと思う。その理由は簡単。まず、そもそも前線にトニしかいない。トニが完全に孤立。そして、チームとしての奪いどころが定まってなかったから、奪った瞬間に一気に全員が前線に出て行くなんて形も作れなかった。カウンターはいつも少ない人数で仕掛けることになったと思う(まあ、カウンターは少ない人数で仕掛けるものなんだけど)。ただ、そもそもイタリアの攻撃は普通に組み立てをしたとしても質の高いものだったとはお世辞にも言えなかったわけだけど。

イタリアの中盤の3枚はアンブロジーニ&ピルロ&ガットゥーゾ。要するにミランのクリスマスツリーの3枚に等しい。ミランの中盤の残りの2枚はカカ&セードルフ。そういえばセードルフは今回の招集を辞退した模様。中田のチャリティーマッチに出てたけど。まあ、そんなことはいいとして、今回のイタリアの中盤はミランの中盤-カカ&セードルフ+0。カカとセードルフの場所にアンブロジーニとガットゥーゾが押し上げられただけの形だった。

アンブロジーニとガットゥーゾには悪いけど、これでは攻撃面に大きな期待はできない。どちらも攻撃をサボっていたわけではないけど、やっぱり有機的に絡むのは難しかったような気がする。そして、4‐3‐3システムを考えたときにトップ下の2枚が消えるってのは、かなり絶望的な状況を意味しているって言える。極端なことを言えば、出し手のピルロと前線の3トップだけで攻撃をなんとかしてねっていう無謀な考え方が、今回のイタリアのやり方だった。失点後はザンブロッタが攻撃参加を繰り返したけど、対応するオランダの選手が守備も頑張るカイトだったからフリーで仕事をするのは難しかったと思う。

そんなイタリアの攻撃には連携なんていうものが微塵も感じられなかった。その原因は単純に距離が遠かったから。トニに入れて、トニが頑張ってキープしても誰も助けに来ないシーンが目立った。本当はトニの近くにはディ・ナターレがいるっていう関係を作ろうとしてたけど、うまく絡めてなかった。とにかく、攻撃に有機的に絡める人数が少なく、結果として選手間の距離が遠くなり、ピッチのいたるところで孤立状態が生み出されたのが今回のイタリアの攻撃。ボールに対する関係性があまりにも少なかった。

というわけでオランダにとっては守りやすい流れ。立ち上がりこそ積極的に前線から追いかけ回したオランダの守備のやり方だったけど、この時点では自陣にブロックを作る形になってた。その上で、ある程度は見るべき相手を定めつつ(4‐2‐3‐1と4‐1‐4‐1なので合致)、相手が自陣に入ってきたところで、その入りどころに対して忠実に守備をするっていうやり方が見られたと思う。イタリアは局面局面で選手が孤立してたから、このオランダの守備の1つ1つのプレッシャーをモロに食らいまくりだった。

ここまで見てきたように、立ち上がりの流れがそのまま試合全体の流れに影響を及ぼした前半。攻守に渡って自分たちのやりたいことを実行できたオランダに対して、攻守に渡ってギクシャク感が残ったイタリア。後半の焦点はイタリアがどのようにして流れを変えてくるのか。その1点につきたと思う。そして、後半開始時点で、先週の交代を行わなかったのがイタリア。同じメンバーでどう変化をつけてくるのか興味深い後半の開始時だった。

で、本当に後半は変化が見られた。具体的に言えばガットゥーゾが目立つようになったと思う。要するに2列目の前への意識が増してた。前半の失点後にも同じように2列目を押し上げたんだけど、そのときは失敗。あっさりと1の場所のファン・デル・ファールトに収められてしまったのが象徴的だった。その原因はやっぱりバラバラな意思に基づいてたから。失点後の焦りがあったからってのもある。というわけで、後半はしっかりと前線にプレッシャーをかけるていうことでチームの狙いを整理してきたと思う。

これが予想以上の効果をもたらす。前半に好きなようにボールを扱っていたオランダの攻撃時の後ろから2列目の4は全く目立てなくなったと思う。前半の流れが嘘のようにボランチは完全に押さえられてしまったし、SB利用の幅を持たせたパス交換も見られなくなった印象。よって、前半のようにオランダが落ち着いてボールを保持する時間は本当に少なくなった印象。

その代わりにイタリアの前線のプレッシャーを嫌っての1発ロングボールの数が増えたオランダ。相手の中盤を飛び越して、間に入り込んでやろうっていう考え方。本当ならその1発のボールに恐れをなして、イタリアの中盤は再び後ろとの関係を重視するはずだった。要するに再び引きこもるはずだった。でも、2点ビハインドで後のないイタリア。相手のロングボールのプレッシャーに負けず、前半に比べるとかなり積極的な守備を続けたと思う。

結果としてオランダは前半のようにいい形で攻められなくなった。そう考えるとイタリアの守備の狙いは最初から後半みたいなものだったのかなと思ったりする。再び、ガットゥーゾ&アンブロジーニをトップ下に置いた意味を考えるとなおさら。だとすれば、やっぱり試合の入り方がよくなかった。オランダの勢いに負けたのが、自分たちがゆったりと入ってしまったのかは分からない。でも、とにかく試合の入りの消極的な姿勢によって前半を捨てたことになったといっても過言ではない。

というわけで守備面は改善したイタリア。じゃあ、攻撃面はどうかってこと。何しろ2点を追いかけてるわけだから、重要なのはいかに得点を取るかってことになるわけで。でも、後半の立ち上がりの攻撃は前半とそれほど質が変わったとは思えなかった。守備の質が変わったことで押し込まれなくなり、結果として前線の孤立状態は解消に向かっていたかなとは思うけど。それでも中寄りでプレーしてたディ・ナターレは相変わらずトニとの関係性を作れないし、局面局面での孤立状態も続いてたように思う。

そこでマテラッツィ→グロッソの交代。これでパヌッチがCBに回り、ザンブロッタが右SB、左SBにグロッソが入る最終ラインの組み合わせ。マテラッツィのアクシデントによる交代だったっぽいけど、この交代がイタリア反撃の第一歩につながった。左右のSBに攻撃的な選手を置くことの意味は大きかった。なぜならば、今回の試合では真ん中からの攻撃ってのは難しかったから。何度も書くように、トップ下に入ったのはガットゥーゾとアンブロジーニだった。

左右のSBに攻撃的な選手を配置したことで、サイドに起点を作って攻めるっていうやり方が取れるようになった。そして、どちらも特別な連携を作らなくても縦へ縦へと進んで行ってくれるタイプの選手。今回のイタリアでもボールを深い位置まで運べる下地は整ったと思う。サイドを起点にしながら攻撃に深みを与えて行くやり方が目立つようになった。

さらに、SBがサイドのスペースを担当してくれることによって1つ前を真ん中に押し込むことができる状況が作りだされた。基本的にはオランダと同じ。だったらっていうわけで、ディ・ナターレ→デル・ピエロとカモラネージ→カッサーノの交代が行われる。さすがのデル・ピエロはディ・ナターレと同じように中寄りに流れる形の中で目立ちまくり。純粋なサイドの選手っぽいカモラネージと変わったカッサーノも中寄りでのプレーを増やしていったと思う。

このイタリアの攻撃のアプローチは面白い限り。前半のイタリアは明らかに攻撃における人数が足りてなかったってのは上にも書いたとおり。だから、グロッソを投入してSBの攻撃参加を1枚増やす。さらに、前半のイタリアは選手間の距離が遠かったってのも上に書いたとおり。だから、サイドをSBにまかせつつ真ん中に人数を増やすことで、強制的に近さを生み出す。戦術も何もあったもんじゃない。とにかく、人数を前線に入れまくって、誰かが何とか得点を取ってくれっていう形だった。

ちなみに、この飽和した前線を操るのがピルロ。前半は前線に選択肢が少なくて実効的なパスを供給できなかったピルロだったけど、後半には生き生きしてた。何しろ前線には受け手がいっぱいいる。空いてる選手を見つけ出して、そこにピンポイントでパスを送り込むのがピルロの得意技。後半はピルロが蹴って、前線に入れ、誰かが決めてくれっていうイタリアの攻撃のやり方だったと思う。

ある意味ではかなり適当なこのイタリアの攻撃だったけど、このやり方でチャンスを量産。あまりにもイタリアの選手が前線に入ってくるから、オランダの選手が捕まえ切れなくなってたと思う。そもそも1×1をベースにするオランダなのに、イタリアの人数ベースの攻撃によってそのベースが崩されることになってしまった後半の流れ。結果、前半とは逆にオランダが守備の根拠を失って、さらに相手の攻撃のプレッシャーに負けてズルズルと下がって行く形が生まれた印象。

それでも0点で抑えたオランダ。相手の人数ベースの攻撃に対抗する、4‐4の人数ベースの守備で最後の最後を守り続けた。そして、なんといってもファン・デル・サールの存在が大きかったと思う。こないだのチェフといい、さすがCLファイナリストは違うなっていう話。3点目だって、ファン・デル・サールのスーパーセーブからの流れだったわけだし。

ちなみに、オランダの2点目と3点目はカウンター。しかも、どちらもイタリアのセットプレー、しかも決定的なセットプレー後のカウンター。2点目なんかは特に素晴らしいカウンターだった。縦に急ぐ中で左右への展開を織り交ぜて、相手を大混乱に陥れたシーン。スナイデルのフィニッシュまで含めて、イタリアとしてはどうしようもない失点だったって言えるかもしれない。

ついでに言えば1点目だってオランダのセットプレーからの流れ。要するにイタリアが普通に守ってるときには失点は喫してないってこと。前半はオランダが圧倒的に主導権を握ってたのにも関わらず。これがカテナチオってやつか。DFラインを完全に抜け出された決定的なピンチもブッフォンがセーブ。試合展開、特に前半の流れからすれば、3‐0も妥当な流れに見えるけど、負けるにしたって、実はイタリアにとっては理不尽な得失点差-3だったかも。得点を奪えなかった攻撃面の問題も含めて。

イタリアは攻守に渡って、次に向けての修正が必要だと思う。しかも根本的な。上にも書いたように守備の方はひそかに完全に崩されたわけではないから、3失点の守備面よりは無得点の攻撃の方に問題を感じる。後半の圧倒的な攻撃だって、形を作ったというよりは力ずく。攻撃もガットゥーゾ&アンブロジーニの場所を変更すればあっさりと解決するかもしれないけど。まあ、イタリアにとってはフランスがルーマニア相手に引き分けてくれたのがラッキーと言えばラッキーだった。これから修正してもまだなんとかなる。
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2008-06-10 Tue 20:54
スイス×チェコ
<スイス:4-2-3-1>
FW:シュトレーラー
MF:バルネッタ-フレイ-べーラミ、インラー-フェルナンデス
DF:マニン-センデロス-ミュラー-リヒトシュタイナー
GK:べナグリオ

<チェコ:4-1-4-1>
FW:コラー
MF:プラシル-ポラク-ヤロリム-シオンコ、ガラセク
DF:ヤンクロフスキ-ロゼナル-ウイファルシ-グリゲラ
GK:チェフ

EUROの開幕戦。W杯以来ずっと注目してきたスイスの登場。前線から追いかけて→高い位置で引っ掛けて→トップに当てて→一気に後ろの選手が飛び出して→少ない手数で相手ゴールまで→攻撃が終わったら守備への切り替えを素早くして→再び守備へ・・・・。そんな攻守の連続性が見られるスイスのやり方。ただし、どちらがスタートになってるかと言えば、やっぱりそれは守備だと思う。06年のW杯での無失点は伊達じゃない。裏面には無失点でも敗退してしまった攻撃力の問題が隠れてるわけだけど。

対するチェコもW杯以来の注目。本当はもっと前からだけど。とにかくW杯初戦のアメリカ戦の内容は素晴らしすぎた。4‐1‐4‐1システムの長所をいかんなく発揮。守備では4‐4の間につなぎのガラセクを置くことで、中盤の4をより高い位置において前線から組織的な守備。攻撃では4‐1‐4‐1における選手間の近さを使いながら、さらにサイドをワイドに使える長所を使いながら、次々と基本的なトライアングルを作って行く。そこをシンプルに1タッチ2タッチでつなぎながら、相手のプレッシャーを否して、局面を変えて行くやり方。シンプルシンプルの組み合わせだけに、余計に素晴らしさを感じさせられた。

そんな両チームの戦い。こちらとして見れば、何でこの2チームが同じグループなんだって話。しかも、よりにもよってポルトガルも同じグループAに。個人的には完全に死のグループになってしまっているわけで。まあ、そんな余談はいいとして、本格的に今回の試合の内容について見ていきたいと思う。そこでポイントになったのは、スイスがホームの開幕戦っていう場面設定だった印象。

スイスのサッカーのベースは上にも書いたように、高い位置で奪ってからのショートカウンター。ファーストシュートがまさにそれを象徴してた。中盤でのかなり厳しいプレッシャーで相手のミスを誘い、それをかっさらって一気に相手ゴールまで。トップのシュトレーラーに入った瞬間に後ろからの一気の飛び出しが見られたし、押し上げ途中でバランスが崩れている相手の不安定な守備ブロックの穴に簡単にフレイが入り込んでフリーでシュートを打つことができた。

つまり、スイスは攻守のつながりの中では守備が先に来る。これも上に書いた通りなわけだけど。例えば、マンUなんかは攻守のつながりの中で攻撃が先に来るチーム。攻撃で押し込んでおいて、その切り替えの場所で質の高い守備をするっていうチーム。シーズン終盤にはちょっと変わってきたけど、基本的には攻撃がうまくいかないと守備もうまく行かないのがマンU。守備が先に来る流れになると悪循環に陥ることも多々。そんなマンUみたいなチームとはスイスは真逆っていうイメージでいいと思う。

何が言いたいかっていうと、スイスは攻撃が先に来るといい流れにつながらない。自分たちが主導権を握って攻撃を仕掛ける流れは苦手。普通に考えれば、主導権を握るってのは歓迎すべき状況のように思えるかもしれないけど、それがスイスには当てはまらない。W杯で無失点でも敗退したスイスの問題は攻撃力。その攻撃力にウエイトが置かれる試合展開になると、スイスは並み以下のチームになると言っても過言ではない。そして、スイスがそういう苦手な土俵で戦わなければならなくなったのが今回の試合だった。上に書いたような、スイスらしいショートカウンターはほとんど見られなかったと思う。

もちろんその要因はチェコのやり方にある。スイスの攻撃面の弱点を考慮してなのか、開幕戦だからあまりリスクを負いたくなかったからなのか、それともアウェーの戦い方に徹したのか、とにかく今回のチェコは消極的な姿勢が見られたように思う。守備では完全な受身、しかも時間が経つにつれてどんどんと受身になって行くやり方。攻撃はコラーを狙えっていうとってもシンプルな考え方。どちらもスイスにとってはかなり相性の悪いものだったって言える。

まず、チェコの守備について。立ち上がりからチェコの守備に受ける意識は見て取れた。相手がボールを保持したら、4‐1‐4‐1のバランスのいいブロックを作る。ただし、この立ち上がりの時点ではまだチェコのブロックはそれなりに高い位置に設定された。中盤の4をハーフェイライン上ぐらいに置く形。トップのコラーは自分から積極的に追いかけることはしないものの相手の押し上げを防ぐ役割。2列目の4が実質的な守備のスタートとして、スイスが1つ上に入れてきたボールにプレッシャーをかける。役割としては受け手に前を向かせないような形。

この時点でスイスの攻撃とチェコの守備の間にはシステム合致状態が生まれてた。意識的なものではないかもしれないし、意識的なものかもしれない。分からない。チェコが意図的にシステム合致を作るようなチームには思えないけど、後で書くように攻撃を見ると4‐2‐3‐1が基本形のように見えた今回のチェコ。まあ、意図的にしろ意図的ではないにしろ、4‐2‐3‐1×4‐1‐4‐1との関係で基本的な1×1が明確になる状況が生まれたのは事実だった。

これがスイスに予想以上の影響を及ぼした。今回の試合、少なくとも前半のスイスは攻撃において前後が分断気味。後ろの6(4‐2)と前の4(3‐1)の間で出し手と受け手っていう関係が固着化してた。その理由はそれこそたぶん開幕戦の性質上、リスクを負うのを避けたかったからっていうこと。だからこそ、後半には変化が生まれたんだと思うし。とにかく、前半はSBとかボランチの前線への積極的な飛び出しは見られなかったと思う。

スイスにとって相手とのシステム合致、局面局面での1×1の関係性を外すことへの近道はポジションチェンジを行うこと。もっと言えば相手が4‐1‐4‐1を形成している以上は、1ボランチのところにアプローチするのが吉。例えばボランチがその場所に飛び出していくみたいな。でも、そういう飛び出しが期待できなかったのが前半のスイス。でも、まだ可能性はある。縦がだめなら横。マンUとは言わないけど、前線の4人がグルグルとポジションチェンジを繰り返すことで、相手の1ボランチの隙間に入り込めばいい。単純にサイドの選手が中に流れてくるだけでも効果は大だったはず。

でも、そんな横のポジションチェンジも見られなかったスイス。よって、4‐1‐4‐1の弱点である1ボランチの場所は常にフレイとガラセクの1×1が維持されることとなった。そこで思ったのが、スイスは平行移動的なチームなんじゃないかってこと。前線からの積極的な守備→高い位置で奪ってからのショートカウンター。どこかで聞いたことがあるこの形。それはちょっと前までのリバプール。そして、ちょっと前までのリバプールも平行移動的に戦ってた。前線の守備も1度守備ブロックを作った上で行うってのも同じ。

守備がベースのチームにあって、次の守備を考えた攻撃をすれば平行移動的になる。その方が自分のポジションに素早く戻れるから。マンUとかアーセナルみたいにぐちゃぐちゃでやってたら不可能。だから、マンUは4‐2でとりあえずはしのごうとするし、アーセナルはその時々のポジションによって守備ブロックの内実が変わったりする。

要するに今回のスイスもリバプール的な意識が強かったんじゃないかと思う。4‐2‐3‐1の秩序を保ったままに攻撃を仕掛けるっていう意識。横のポジションチェンジもしないし、縦のポジションチェンジもない。後ろからの飛び出しが少ないのは、リスクを負わないためっていうことで理解できるけど、そういえば低い位置での保持時間が無為に伸びていく中で、前線の選手が降りて来るシーンもほとんどなかった。前線の選手が降りてくれば、誰かが代わりにそのスペースを埋めなければならない。そこで秩序が崩れるのを嫌った気がする。そして、ある意味では秩序崩れを嫌いすぎてたのが今回のチェコ。

というわけで、完全にポジションが固着化したスイス。相手のシステム合致を外せない。1×1が1×1のまま固定化される。よって、前線に全くボールを入れられない状況に陥った。最終ラインの4枚でパスを回し、たまにボランチに縦パスを入れる。ただ、そのボランチのところには相手がしっかりと対応するから、ボランチが後ろからのボールを前に回せない。仕方がないので、また後ろに戻す。結局は後ろの6人でのパス回しが長く続くことになってしまったと思う。そのパス回しの間に、前線にボールを入れるためのアプローチは皆無だった。

というわけで、少なくとも中→中のパスは不可能。フィルターがしっかりとかかってる4‐1‐4‐1で工夫なく中→中はそうそう通らない。もともと組織的な守備が得意なチェコだけになおさら。だから、なんとか相手ブロックに入り込むとすればサイドに起点を作るやり方。でも、これだってかなり難しい。まず、味方のSMFと相手SBの1×1は確定。この時点でサイドにボールを入れるのはすでに困難。そして、入ったとしても味方SBの攻撃参加は自重気味。よって、スイスのサイドは1枚。で、スイスのSBが攻撃参加を自重したことでチェコのSMFは後ろとの挟み込みに問題なく参加できる状況が生まれる。あっさりとスイスにとっては1×2の数的不利が生み出された。

よって、前線にボールを運ぶ方法は皆無だったって言ってもいいのが前半のスイス。これはスイスにとっては二重に痛い。おそらくスイスの攻撃のベースは、収まる→飛び出す→人数をかけるっていうやり方。ショートカウンターでは完全にこの流れが見られるけど、たぶん遅攻でも同じ考え方を適用できるんじゃないかと思う。ここで卵と鶏の問題が発生。前線への飛び出しが少ない→前線にボールがおさまらない→前線への飛び出しが抑制される→…。もう、悪循環としかいいようがない展開に陥ってた印象。

でも、その悪循環が予想外の要因から解消される。前半の20分過ぎからそれまでは全く敵陣に入れなかったスイスがあっさりとチェコ陣内に入り込むシーンが目立つようになった。そして、その要因はチェコが守備ブロックを押し下げたからだったと思う。理由はよく分からないけど、今回のチェコは時間とともに守備ブロックが後ろへと移動していった。よって、スイスにとっては何の工夫もなく陣地が増えて行くような状況につながったって言える。

立ち上がりのチェコは上にも書いたように、中盤の4がハーフェイライン上にいるぐらい。受ける意識が強い守備組織だとは言っても、結構積極的。でも、前半の10分を過ぎたあたりから中盤の4が自陣内に引くようになったと思う。それまでチェコの2列目の押さえられていた、スイスのボランチが浮くシーンがちらほら。さらに時間が進んで、前半の15分過ぎりなるとコラーがハーフェイライン上まで下がるぐらいの守備ブロックへ。この時点ではまだ4‐1‐4‐1のブロックが形成されたけど、最終的にはコラーを前線に残す4‐1‐4‐‐1に落ち着いたと思う。4‐‐1の場所の関係はコラーが再び前線へ帰ったからじゃなくて、中盤の4がかなり深い位置まで戻ったことによって生まれた。

上でも触れたように、その理由がちょっと分からない。最初のブロックの位置でもスイスには何もさせてなかった。というか、むしろ最初のブロックの方が、よりゴールから遠い位置で相手に何もさせてなかった。でも、それをズルズルと下げていったのが今回のチェコ。何もできてなかったスイスの攻撃にプレッシャーを感じたとは思わないから、やっぱり自分たちの判断のはず。1つ考えられるとすれば、相手をおびき寄せるってことか。チェコの方だってチャンスは作れてなかったから、相手をおびき出してカウンターを仕掛けようと思ったかもしれない。でも、やっぱり違うなって思う。あまりにも中盤が引きすぎて、コラーが孤立していたから、カウンターは難しかったし。

ヒントはチームが一体となって下がったというよりは、DFラインが下がってそれに引っ張られて中盤が下がったような形になったってことか。そう考えるとやっぱりスイスの方がチェコの最終ラインに対して、何かしらのプレッシャーを与えていたってことなのか。チェコの攻撃とスイスの守備の関係を考えたときにスイスの前線からのプレッシャーに対してチェコの最終ラインが持ちあがれない状況に陥ってたから、押し上げのタイミングを失ってしまったのかもしれない。実際にはよく分からないってのが本当のところ。

理由は何にしろ、陣地が増えたスイス。それに伴ってチャンスが増えたかと言えば、そんなことは一切なかった。そもそも4‐1‐4‐1の1の場所にできたスペースすらも有効に活用できずに、敵陣に入れなかったのが前半のスイス。同じチームが相手がベタベタに引いた超密集ラストブロックに入り込めるかって言えば絶望的。陣地は増えたとしても平行移動的な形に変化が生まれなかったから、結局はチャンスにつなげることができなかった印象。パス回しの場所がやや高めに移っただけだった。

というわけで、前半のスイスの攻撃×チェコの守備の勝負はチェコに軍配。今度は逆にチェコの攻撃×スイスの守備っていう部分について見てみたい。上にも書いたように、チェコの攻撃はかなりシンプル。コラーコラーコラー。そして、それはスイスにとってはかなり相性の悪いやり方だったってのも上に書いたとおり。その点について以下では見て行きたいと思う。

本来のチェコの攻撃は最初に書いたように基本的なトライアングル形成をベースにしてショートパスをつなぐもの。とはいっても、チェコのサッカーを見るのはその印象を刷り込まれたW杯以来だから、実は大幅な変革が行われたっていう可能性もなくはない。それでも、やっぱり監督が変わってないわけだから、とりあえずはチェコの本来的なやり方はショートパスのつなぎから崩すものだってことにしとく。でも、今回のチェコはショートパスつなぎのチェコではなかった。ここまでにも書いてきたように、攻撃はコラー狙い。下手につながずに単純にコラーを狙う1発のボールが明らかに増えていたと思う。

なぜそんなやり方を採ったのかって言えば、その答えは明明白白。スイスの守備が嫌だから。スイスの守備の勝負どころは中盤。4‐4‐1‐1的な守備ブロック。前線の1-1の献身的な追いかけで制限をかけ、高めに配置されたコンパクト4-4で引っ掛ける。チームとしての狙いどころが定まっている質の高い守備。そうやって中盤で引っ掛けて、一気に攻撃につなげるのがスイスのやり方ってのはここまで書いたとおり。

そういうスイスのよさを出させないためにズルズルとブロックを下げたと思われるチェコ。とりあえず、あえて相手に攻撃をさせるっていう逆説的なやり方でスイスの苦手な遅攻をさせた。ある意味では冒険的な、そんなやり方を採ったのにも関わらず、自分たちの攻撃で相手の土俵で勝負するとしたら詰めが甘い。もちろん、詰めが甘くなかったのがチェコ。自分たちのパスワークを捨ててでも相手の土俵では勝負しないよっていう攻撃をしてきた印象。

そして、それがコラー1発狙いのロングボールの多用。このロングボールの多用は対スイスのセオリー。日本代表もドイツもオランダもそうやってスイスの質の高い守備ブロックにアプローチをしていった。要するに相手が得意とする中盤の場所は飛び越してしまおう作戦。今回のチェコも相手の前線のプレッシャーが効く前段階の深い位置から、さっさとコラーめがけてロングボールを蹴っていった。下手に持ちあがると、相手に寄せられてロングボールの選択肢も消されてしまうから、妥当な判断だったように思う。

そんなチェコの攻撃も前後が分断気味。後ろの6(4-2)と前の4(3-1)が分断。後ろは出し手、蹴り手って言った方が妥当かもしれない。ここでポイントなのが後ろが4-2だってこと。上にも書いたとおり、守備時に4-1-4-1を採ってるように見えたチェコは攻撃時には4-2-3-1になってた。最初は相手の前線からのプレッシャーに対処するためだろうなって思った。後ろにできるだけ人数を残して、逃げ場を確保する。結果として相手が前線から来ても、パスコースは残る。空いた選手が前線に蹴ればいい。

でも、あとで書くようにスイスは途中で前線からの追いかけ回しをやめたのにも関わらず、チェコは依然後ろの4-2を維持した。そう考えると、たぶんカウンター対策の面の方が大きかったと思う。何かの拍子に相手のカウンターを食らった場合、後ろが4-1よりは4-2の方が安定感が増すに決まってる。スイスの切り替えを考えたときにFWに入れさせたくないってことを考えるとなおさら。中盤1枚残しでトップへのフィルターが1枚で、さらにトップに入った瞬間にスイスの後ろの選手が一気にその1の場所に飛び出してくることを考えると悪夢。スイスの縦の攻撃の質が高いからなおさら。

とにかく、今回の試合でのチェコはスイスの縦のスピードに対してかなり気を使っていたように思う。コラー1発がその1つ。とりあえず、蹴っておけば相手がボールを奪う場所はゴールから遠くなる。そして、後ろに中盤を2枚残す形の攻撃。さらに、切り替えの守備の厳しさがかなり目立ってた印象。上で書いたようにベタ引きがベースだった今回のチェコだけど、攻撃からの切り替えの時だけはブロックをすぐには下げずに高い位置でかなり厳しい守備を行った。そうやって相手の縦への勢いを弱めておいてから、やっとベタ引きブロック形成に入ったと思う。

さて、コラー1発蹴りに戻る。後ろの6枚が蹴り手で、前の4人が受け手。実際にはコラーが競って2列目の3が拾う形。2列目の選手がコラーの近くにいようとする意識が見て取れた。もちろん、かなり深い位置から蹴ってるから可能性は薄い。それでもたまに前線でキープできれば、そこに来たら初めて後ろの4-2が飛び出してくる。そうやって厚みを増してた。でも、繰り返しにはなるけど、1発コラーの可能性は薄かった。今回のチェコはそれでもよかったんだと思う。とにかく、相手がボールを奪う場所が深ければそれでよかったと思う。

そして、その目標は達成。スイスが狙いどおりに中盤で引っ掛けるシーンは皆無。ことごとく中盤の選手の頭を越えられた。スイスがボールを奪うのは自陣深く。ショートカウンターは無理。ロングカウンターも相手が後ろに人数を残してるから無理。よって、苦手な遅攻を仕掛けざるを得ない状況の陥った。スイスの遅攻の質は前半部分でさんざん取り上げてきたとおり。チェコの攻撃の攻撃が功を奏したって言える。

というわけで、スイスは守備のやり方を変更。前線から頑張ったとしてもどうせ頭の上を越えられる。前に追いかけようとした瞬間にロングボールを蹴られる。疲れるだけで、何の得もない。むしろ、引っ張り出されて後ろにスペースが空いた方が怖い。というわけで、前線からの守備の勢いを弱めたと思う。後ろの4-4の関係を重視して(もともと重視してるけど)、超コンパクトなブロックを形成。相手のロングボールのこぼれ球は自分たちが拾える体制を作り出した。プレッシャーの弱まった相手が地上から攻めてきたとしても、バイタルに入れさせない作戦。

というわけで、前線からのプレッシャーが弱まったチェコは攻撃のやり方を変更。なんでもかんでも蹴るのをやめて、しっかりとつないで行くようになる。相手の4-4の前で左右の幅を使った展開を見せるようになった。プレッシャーが弱まってたから、SBを敵陣に入れることで幅を維持してたと思う。ボランチを経由したり、1発だったり、とにかくサイドチェンジを繰り返して、相手の中盤の4を低めの位置に釘づけにするようなつなぎをしてきたと思う。

ロングボールで相手を押し込んでおいて、左右の展開を使ってアプローチをする。これはスイスと大したときのオランダと同じやり方。左右の展開は相手に狙いどころを定めさせないと同時に、相手の中盤の4を横に間延びさせる効果もある。結果としてバイタルへの隙間を空ける狙い。そして、相手の選手間の距離を遠くすることで守備の連動性をはがしてやろうっていう意図もあると思う。実際に今回の試合のスイスは途中から明らかに中盤での守備意識が減退した。チェックも単発で実効性が薄かったし、そもそもあまりにも自由に相手にボールを回させるシーンが目立ってたと思う。飛び越えられまくって、左右に振られまくって守備をする気が失せたってのが本当のところだと思う。

ただし、チェコはそのスイスの守備意識の減退を有効に活用できなかった。相手の守備ブロックの外では左右を使いながら効果的な組み立てをしていたものの、ブロック内に入るアプローチは未だコラー狙いだった。一番多かったのは、左右に振って、ある程度の場所まで入って、クロスってパターン。結局は丁寧さに欠けてたから、結局は跳ね返されまくりのやり方だった。

というわけで、チェコの攻撃×スイスの守備っていう側面ではどちらが勝ってたかは定かではない。純粋に攻撃×守備の側面で見れば、勝ってたのは明らかにスイス。チェコは全くチャンスを作り出すことができなかったから。ただし、上にも書いたようにチェコの攻撃の目的は達成された。スイスは守備だけを見れば何の問題もなかったけど、本来的なスイスの攻撃へのつながりを考えたら完敗。チェコが自分たちのよさを犠牲にしてでも、相手のよさを消しに行った前半の内容だった。

これを踏まえて後半。後半はスイスが攻撃の内容に変化をもたらしてきた。前半の停滞の要因は自分たちの積極性のなさにもあったわけで、その部分を変化させてきた印象。ついでに、フレイ→ハカン・ヤキンの交代もこっそりといい効果をもたらしてた。フレイには悪いけど。前半はフレイがトップ下の場所に居座ってて、それがポジション固着化の要因の1つになってたんだけど、ハカン・ヤキンはサイドに出て行ってボールを受けるような動きも見せたと思う。ハカン・ヤキンとフレイの違いなのか、前半と後半のやり方の違いなのかは微妙。

とにかく、前線の動きが多くなったのは事実。ハカン・ヤキンが動いてスペースを空けたことが1つ。ハカン・ヤキンが動いてボールを受けたことで前線に収まりどころができたのが1つ。とにかく、前線の出入りが激しくなった。トップ下の場所にボランチのフェルナンデス、インラーあたりが飛び出してくるシーンが明らかに増えたし、何よりも効果的だったのはバルネッタが頻繁に左サイドから中に流れてきた動き。これこそ前半に欲しかった動きだったよって話。

そうやってバルネッタが中に入ったことで空いたサイドのスペースにはマニンが積極的に攻撃参加。ところでいつの間にか、マニャンからマニンに表記方法が変わったのか。そんなことはいいとして、右のリヒトシュタイナーも含めてSBの攻撃参加も活発になったスイス。サイドから深い位置まで入り込むっシーンが増え、前線とは全く違う展開で前線でボールを保持できるシーンが目立つようになった印象。

とはいっても、それがチャンスに直結しないのが難しいところ。それじゃなくてもベタ引きでラストを固めてたチェコなのに、スイスが攻撃に積極性を増したことでさらにベタベタに。低い位置の密集度がさらに上がって、ラストを固める形。何度も書いているとおり、スイスは本来ベタ引きの相手に対することは少ない。むしろ、真逆。相手の押し上げ途中に引っ掛けて、スカスカブロックに仕掛けるのがスイス。ベタ引きに対するノウハウを持ち合わせてなかったって言ってもいい気がする。残念ながらシュトレーラーが流れがよくなった後半になっても目立たなかったのが痛かった。

対するチェコも後半はやり方を微妙に変更してきた。それはコラー→スヴェルコシュの交代ではっきりした。基本的な組み立ての場所はこれまで通り。相手の4-4の前で幅を使った攻撃。でも、そこからラストに向けて前半のような適当クロスってのはあり得なくなった。コラーがいなくなった時点で、中でなんとかしてくれが不可能になったから。というわけで、途中まで組み立ててきたノリのままにパスで相手の4-4へと入り込もうとする試みが増えて行ったと思う。やっとチェコらしいトライアングル形成をベースにしたリズムのいいパス回しも散見されるようになった。ちらほらだけど。何しろチームの重心は後ろにあるから、いろんなところで近い関係性を作るのは難しい。

そんなことをしてる間にチェコが先制点。采配ずばりのスヴェルコシュのゴール。CKからの流れだった。で、この後のチェコはますますベタ引きに。何ならスヴェルコシュも守備ブロックに参加しろっていう形。場面によっては前線0枚の4-6-0ブロックが形成されてた。スイスは益々困ったもんだ。ベタ引きを崩す方策が見つからない。そんな中で転がり込んだ千載一遇のチャンスも逃して、ジ・エンドだった。

結局はスイスのよさを消すことに終始したチェコの勝ち。守備はベタ引き、攻撃は蹴りまくりのチェコのやり方によってスイスは自分たちの形を全く見せられず。それでも、チェフの落ち着き払ったセーブのおかげで目立たなかったけど、数回だけあった高い位置から→ショートカウンターの流れではさすがにいい形を作り出してた印象。そう考えるとスイスにとっての自国開催は実は足かせなのかもしれない疑惑が出てくる。相手が積極的に出てくるときこそスイスの真価発揮。相手にアウェーの戦い方をされるとつらい。今回のチェコは極端な例なんだろうけど。
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2008-06-08 Sun 02:46
オマーン×日本
<日本:4-4-2>
FW:玉田-大久保
MF:松井-遠藤-長谷部-俊輔
DF:駒野-トゥーリオ-中澤-内田
GK:楢崎

まさかの同じメンバー。本当のところは内田と長友が違ってたけど。でも、要するに考え方は同じ。縦縦長友が縦縦内田に変化しただけだから。逆サイドには駒野を置いて左右のバランス崩し。起点は前回の左から右へと変わりそうな気はしたけど、本質的には変わらない。ただ、降りてきまくりの俊輔と縦縦内田のバランスはいいかもしれないってのはあった。前回の試合では俊輔が降りてきた代わりに、その前のスペースを埋められる選手がいなかったから。その辺のバランスは変化するかなっていう期待がなかったと言えば嘘になる。でも、それ以上に中盤以前が同じになったことのインパクトの方が強かった試合前。

前回の試合で見られた遠藤&長谷部のWボランチ。これはあくまでも圧倒的に攻撃ができるホームの戦いだからこそだと思ってた。だから、最後に書いたとおり今回は普通に鈴木か今野のどちらかを起用してくるはずだと予想してた。それがまさかの遠藤&長谷部。アウェーだとしても前回ぐらい保持できると思ってたのか、遠藤&長谷部でも守備に不安がないと思ってたのか、それとも守備の不安以上に攻撃における2人の組み合わせに可能性を感じてたのか。いずれにしてもかなりの驚き。そして、後で書くようにこの2人の組み合わせの弊害が見え隠れした今回の試合だったと思う。

とにかく、中盤以前は同じメンバーの今回。それだけ前回の試合がよかったのかと言えば、そんなこともなかった。というか、むしろ悪かった。それは前回の試合のときにも書いたとおりだけど、ちょっとだけおさらい。まず、岡田なのかオシムなのかがはっきりしなかった。オシムをしようとする俊輔とそれに引っ張られた遠藤。岡田をやろうとする長谷部、松井、2トップ、SBとの間にギャップが生じる。それでも見た目はオシム的になるのは俊輔の力、そしてオシムの力。後半は結局オシムの形にして立ち直ったわけだし。

オシム的な日本は低い位置での左右のパス回しが増える。その仲介役は遠藤。右から来たボールを左へ受け流し、左から来たボールを右へ受け流し。縦急ぎ岡田サッカーではあまり見られない引く位置での左右への散らし。そういう左右の幅を使った組み立てから相手のギャップを狙ってく考え方。ギャップができた瞬間に縦パスを入れ、そこに数的優位を作り、一気に攻めきる。岡田&オシムの融合。そんな希望ははかなくも散った。

その理由はボールに対する動きの少なさによる部分が大きかった。絶対的な運動量がめちゃくちゃ少なかったわけではないけど、それが個々のバラバラな動きに完結してしまったイメージ。ボールが前線に入っても、そこに関係性を作れない。ボールに対して素早く複数の関係性を作り出す岡田サッカーなんて夢のまた夢。複数どころか1つも作れないことが多くなり、完全なる後手後手ループに陥っていたオマーンのプレッシャーをダイレクトに食らう始末。縦パスを入れたと思ったら、仕方なく下げるシーンが目立って、全然相手ブロックへと仕掛けていけなかった。

それでも後半はマシな形に。その要因は上にも書いたようにオシムへの移行。まず、左の長友だけではなく、右の駒野も上げる。さらに、前半は中へ流れ気味の松井にサイドでの意識を思い出させる。松井がサイドに行った場合は前半は消え気味の長谷部をサイドに流す。これでシステム的なサイドの数的優位を回復。ちょっと省略したけど、前半の悪い時間にはサイドでむしろ数的不利になってた。とにかく、これでサイドに起点を作ることに成功。詰まったら、高めに入ってきた遠藤を経由して逆サイドへ。集中→展開→連続。全体を前に押し上げたことで強制的に近さを作り、思い出したかのようにボールに対する有機的な動きが生まれていった。ここにおいて、やっと相手ブロックを押し下げることに成功。

軽くおさらいするとこんな感じ。何が言いたいかっていうと、最初に書いたようにギクシャク感があったってこと。キリンカップのコートジボワール戦で見られた岡田監督の色は見られなくなり、だからといて完全オシムでもなく。チームとしての色があいまいになり、結果として前半は無駄にしたといってもいい流れ。わずか数日でどれだけ共通意識を図れるかって言えば、たかが知れてるはずであって、そう考えると今回も色が見えにくいサッカーに落ち着くのかなっていう気がした。

そんな中で1つの方向性を持って行くとすれば、それはオシム型だと思った。理由はいくつかある。1つはチームの中心を俊輔と置いていること。俊輔はオシム型の筆頭であって、その俊輔を中心とおいてる時点で、岡田監督にはある程度はあきらめてもらいましょうってこと。岡田かオシム=俊輔かっていう葛藤が出てしまうぐらいなら、とりあえず俊輔に任せておいた方がスムーズに進むはずってこと。

2つめは気候を考えてのこと。岡田監督のサッカーは疲れる形。コートジボワール戦では前半の途中でスタミナ切れを起こしたレベル。そんなサッカーを40℃の気温のもとで追求したらどうなるかって話。ついでに、相手はブロックを動かされない。狭いところでも無理やり入り込むのが岡田色。逆に相手としたら、待ってればいいだけ。だったら、アジア杯を同じメンバーで戦いきったオシムの形だろうっていう。SBは超運動量を求められるけど、基本はボールを動かしながら徐々に陣地を増やす形。疲れるのはボールの動きに合わせてブロックを動かさなければならない相手の方ってこと。

だからこそ、前回の記事の最後でオシムの中盤の復活を求めたわけ。遠藤-鈴木-憲剛-俊輔の。でも、今回のメンバーは前回のオマーン戦と同じ。最初の話に戻ってきちゃった。とにかく、何かしらの方向性が見えればいいかっていう、ある種のあきらめ。ここ数日で何か劇的な変化が生まれたんじゃないかっていう、ある種の期待。その入り混じり。でも、どうせ俊輔に引っ張られて中途半端なオシムになるんだろうなっていう気がしてたってのが正直なところ。

でも、試合が始まってみてびっくり。全くオシムではなかった。まさかの岡田。俊輔も岡田か。このクソ暑い気候の中で岡田を追求しようとした日本代表に乾杯。でも、予想通りというかなんというか疲れてしまった日本代表。岡田色の追及はまたしてもスタミナ切れの壁を越えられなかった。まあ、普通に考えてこの気温の中じゃ無謀な挑戦だったわけだけど。とにかく、その岡田色的な序盤の形について見ていきたいと思う。

岡田色とは何か。それはひとことでいえば、縦に急ぐサッカー。低い位置での保持時間は短い。1度攻め始めたら基本的には攻めきる。遠回りをしない。だから、バックパスとかサイドチェンジは異様に少ない。さらに、トップに当てる意識が強い。これについては岡田体制結成当初から見られた部分だったわけだけど。とりあえず、今回の試合の序盤の日本の攻撃はこんな感じだった。

低い位置での保持時間が短かった日本。前回は相手ブロックに仕掛けられずに、無為に低い位置で持ちまくってたのに。本当は相手のブロックにギャップを作るためっていう大義名分があったわけだけど。とにかく、今回の試合では低い位置で左右の幅を使ったパス回しなんていうのは皆無。中澤とトゥーリオの間でちょこっとパス交換をして、さっさと前線へっていう形。よくもまあ、ほぼ同じメンバーでこれだけ違った戦い方ができるなっていう。ただし、前回と今回のやり方を逆にした方がいいんじゃないかって思ったのは内緒。

CBからさっさと前線へっていうのは分かった。じゃあ、前線ってどこだっていう部分。それは予想通りというか、なんというか、右サイドに起点を作ることが多かったと思う。やっぱり左の縦縦長友の意思は右の縦縦内田へと受け継がれてた。そして、起点を作った右サイドで数的優位を作り出す。立ち上がりの時間に関しては、このサイドでの数的優位形成は前回よりはスムーズに行われてた印象。前回は左寄りに動いてた玉田は今回は右へ。利き足の関係じゃなくて、ボールに近づく動きをしてることが判明。前回の試合の前半は消えてしまっていた長谷部も今回は立ち上がりから目立ちまくり。右サイドに飛び出してくる動きが目立った印象。

その右サイドに俊輔が絡んだり絡まなかったり。長谷部が助けに来れば俊輔は右からいなくなることが多かった。逆に俊輔が流れたところで長谷部が助けに来たとも捉えられるわけだけど。とにかく、今回の試合での俊輔は明らかに自由度が増してた印象。前回は左サイド張りのプレーが目立ってたから。特に降りてくる動きが多かったわけだけど。それに対して、今回は左にこだわらずに真ん中に入って行くことが多かったかなって思う。その理由は後々分かること。

とにかく、右サイドに起点を作ることが多くなった日本代表。でも、そのままサイドを侵攻していく意図は薄かったように思う。目標はトップに当てること。上にも書いたように、岡田色の中にトップへの意識が強いってのがあるから。中→中でトップを狙っても難しいのは当たり前だから、サイド→中の斜めの関係でトップに当てて行こうっていう意図が見られたと思う。

ここで俊輔の登場。後は松井もだけど。トップに当てたときに、その近くに味方がいないと次の展開につなげられない。前回の試合では俊輔が後ろ向きに、松井がサイド張り気味になったことで、トップ当て後の展開ができない状況に陥ってたし。その問題を解決するために、今回の試合では俊輔の自由度を上げてた気がする。左サイドにこだわらせずに中に流すことで、俊輔とトップの間の距離感を縮めようっていう。後は松井もだけど。

ここにおいて俊輔に大きな変化が生まれたって言える。これまでの2戦での俊輔は明らかに後ろとの関係性重視だった。後ろからボールを受けて、それを次へ展開するっていう。だからこそ、ボランチの位置まで降りて行くシーンが多発。ただし、これは明らかに岡田監督の色とは異なってる。岡田監督の形ではOMFはFWとの関係で前向きにボールを扱ってもらいたいところであって、今回の俊輔の立ち上がりの動きがまさにそれだったように思う。そんなわけで岡田色に染まり始めた俊輔は、パラグアイ戦であれだけこだわっていたサイドチェンジを一発も行わなかった。

同時に岡田監督にとってはいい意味で目立たなくなったのが遠藤。前回の試合では低い位置での保持時間が延びたこと、さらにサイドチェンジが行われまくったことで目立ってた遠藤。すべての攻撃は遠藤から始まると言えるぐらいに目立ってた遠藤が今回の試合では、そういう部分で全く目立たず。基本的に前回の遠藤の役割は岡田監督が嫌いなことだったわけだから仕方ない。逆に前回の試合では消える時間が長かった長谷部が目立つっていういい流れだったって言えると思う。

そういう岡田色を体現できてる時間の日本の攻撃の質はそれなりに高かったと思う。少なくとも前回の試合に比べれば格段に連動性が高まってた。サイドに起点を作った時には、そこに素早く基本的なトライアングルが作られ、それでいてそこから真ん中へとボールを入れたときにも、トップが孤立してないっていう形。1つのボールに対する選択肢が増えたことによって、攻め直さずに前へ前へっていう岡田色も体現でき、前回は苦労したオマーンの守備ブロックを押し下げるっていうことも簡単に実現できた。

ちなみに、そのオマーンの守備の質も前回に比べると格段に高まってたと思う。知らない間に監督が変わったようで、さらに出場停止の選手が戻ってきたことによって大きな変化を見せた。ホームってこともちょっとはあったかもしれない。基本システムは前回と同じく3‐4‐3。ただし、その内実が全く異なってた。前回の試合では3‐4‐3を自陣に引かせて自分たちからは積極的に動きを起こさないくせに、最終ラインはバカ高いっていうよく分からない形。しかも、自陣で守ってるはずなのに、自陣での守備がルーズだし。

それに対して今回は積極的な守備が見られた。日本の1つ1つのボールに対して忠実にプレッシャーに行く意識が浸透してたと思う。例えば日本のボランチ×オマーンのボランチの関係でしっかりとプレッシャーに行ってたことで、2列目に4枚が並ぶような形になってたと思う。簡単に言っちゃえば5‐4‐1ブロックみたいな。しかも、2列目の4がハーフェイライン付近にいる積極的な5‐4‐1。バルサみたいな4‐3‐3の形でアンカーがDFラインに吸収されたイメージが一番近かった気がする。

そんな感じで明らかに質の高まったオマーンの守備。結局は個々の守備意識、つまり1つ1つの守備の質が高まったことが全体としての守備のよさも生んだってことになるわけだけど。でも、そんな感じで質の高まったオマーンの守備も、同じく質の高まった日本の攻撃の前では否されまくり。次々と局面を変えられる展開の中で1つ1つのチェックが効果的に機能しなかったオマーン。全体の質が高まったとは言ってもやっぱり単発的だったから。結果、立ち上がりは日本が攻め込む流れになった。いや、全体的に日本が攻め込んでたのは事実だけど、日本が一番リズムよく攻撃を仕掛けられてたのは立ち上がりの時間だったと思う。

そんな流れの中で日本がいつ先制点を取るかが焦点に。と思いきや、逆にオマーンが先制。交通事故と言えば交通事故だけど。前回は日本が全然流れを作れてなかったのに、簡単に2得点を奪った前半。それに対して今回に日本はいい形で攻撃を仕掛けられてたのに、あっさりと先制点を奪われる。これだからサッカーは面白い。なんて改めて言ってみる。

ただ、交通事故的なこの得点だったけど、その予兆があったことはあった。オマーンの攻撃は基本的に蹴りまくり。ボールを取ったら前線へ。1トップ下に4枚を並べてる積極的な守備ブロックだから、一気にトップに蹴ったとしても、とりあえず孤立させない状況ができてたと言えばできてた。でも、実際にはそれは気休め。ロングボールの質がめちゃめちゃ高かったわけじゃないし、それにそもそも1トップの選手が明らかにロングボールには不向きな身長だった。

にも関わらず、このロングボールが案外機能する。というか、ロングボールに限らず、単純なトップ狙いが予想以上に収まる。実は相手の9番はすごい選手なんじゃないかっていう疑惑も浮上するレベルでことごとくオマーンのボールになっていった。中澤&トゥーリオの頼れるCBコンビも今回ややられっぱなし。前回はことごとく跳ね返してたはずの相手のトップへのボールを全く防ぐことができてなかった印象。トゥーリオのケガの影響があったのか、なかったのか。

ただ、実はここに長谷部&遠藤の弊害があったんじゃないかっていう気がしてならない。CB-ボランチの守備の関係性が全くと言ってもいいほど作れてなかった。その1つの指標が挟み込み。相手のFWにボールが入ったときに、どれだけCBとボランチの縦の関係での挟み込みが見られたかっていう部分。おそらく、ほとんどなかったんじゃないかと思う。CBが相手を足止めしても、そこに味方の助けがなかった。そもそも足止めできてなかったんじゃないかっていう部分もなくはなかったけど。とにかく、守備面における遠藤&長谷部の弊害はこの後の時間でさらに見られることになったと思う。

とにかく、先制点を許した日本。もう攻めるしかない。でも、残念ながら疲れが来た。ほとんど低い位置で保持せずに前へ前へのサッカーをしてたんだから当たり前と言えば当たり前。前線の選手は相当頑張って動きまくってたし。玉田も大久保もボールの引き出しの動きを繰り返してたのが印象的。しかも、ボールが出てこなければ何度も繰り返してた。俊輔もポジションを捨てて動き回ってたし、長谷部も前回とは違って前線へ飛び出しまくり。ご苦労様です。そして、残念ながら相手に先制点を許した時間ぐらいの時点ですでに立ち上がりのよさは半減してしまっていた。

対する、先制点を奪ったオマーン。もう守るしかない。この転換は本当にスパッと行われた。1枚を前線に残して5‐4(もしくは5‐3)を完全に自陣深くに引きこもらせる、完全ベタ引きブロック形成。セットした時点ではそれまでと同じように高めで行きますよっていう雰囲気は見せてるけど、実は気持ちは後ろに。少しでも日本が前にボールを入れて来ようもんならさっさとゴール前に壁を作りにかかったと思う。

というわけで、この後の日本のテーマはいかに相手のベタ引き守備ブロックを崩していくかってことになった。組み立てはもう心配する必要はない。敵陣内のある程度の位置までは、あまり不自由なくボールを運ぶことができる。問題はラストの1/3。永遠のテーマ、ラスト1/3の崩しへと取りかかることになった日本の攻撃だったと思う。

ここで日本が罠にはまる。本当は罠ではないんだけど、個人的に勝手に罠にかかるって呼んでる状況に陥った。それは相手がベタ引きになると、なぜか攻撃が真ん中に凝縮されてくっていう状況。レッズの試合なんかを見ると明らか。サイドからクロスを上げれば相手のベタ引きブロックのベースとなってる人数を無効化できるのに、なぜかみんな真ん中から攻めようとする。言いかえれば相手のブロックの真正面から馬鹿正直に攻めようとする。そして、跳ね返される。中盤であまりに自由になりすぎると、遠回りをしたくなくなるのかもしれない。そして、運が悪いことに今回は岡田色の日本代表。繰り返しになるけど、岡田色ってのはトップへの意識が強いやり方。つまり、真ん中に起点を作ろうっていう意識が強いやり方だった。

とりあえず、相手がベタ引きになった以上は前線に人数をかけられるようになった日本。駒野と内田のバランスも攻守の分業制から、攻攻へと変更。今回の試合はもともと分業があまり行われてなかった気もするけど。立ち上がりも左に起点を作るシーンだって見られたし。話を戻すと、とにかく両SBを上げて最終ラインは2バックにする形だった。そして、この2人に左右の幅を担当させておいて、残りはみんな真ん中へ凝縮。極端なことを言えば、遠藤が低めでボールの供給役になって、残りの5人は全員FWの場所へ入っていった。

よって、相手のエリア付近にはとんでもない超密集地帯ができあがる。相手の真ん中は3‐2ブロック、日本の実質的なFWが5枚。さらに悪いことに、この時点では相当に疲れていた日本。前線で引き出しの動きが生まれない。前線の選手の出入りも生まれない。要するに前線の動きが少なくて、待ってる選手が多くなった。足が止まっている選手が多くなった。

そんな状態で超密集地帯へとボールを送れるわけもなく。仕方がないのでボールの供給役である遠藤はサイドへとボールを散らす。でも、サイドにはSBが1枚。立ち上がりの近さはどこへやら、サイドでは基本的にSBが孤立。5‐4ブロックの相手はサイドに2枚。数的不利の日本はサイドをえぐれない。遠藤→真ん中に入れられないのでサイドへ→サイドをえぐれないので遠藤へ→真ん中に入れられないのでサイドへ→…。最終的にどうするかっていうと、やっぱり岡田色であるトップ狙いを貫いた。無理やりに真ん中を通そうとして引っかかる。そんな流れが圧倒的に増えていったと思う。

ここで毎回のようにカウンターを食らったのが日本だった。まず、真ん中で引っ掛けられてるのが危ない。相手の目標とするトップへは最短距離だし、相手は正面からのボールを引っ掛けてるから、切り替えでいい形で前へ向かえる。しかも、前線で多くの人が待っている日本。その前で引っ掛けられると、切り替えの守備が効果的に決まらない。というか、疲れによって切り替えもかなり鈍い状況になってたし。

加えて後ろがとんでもなく危険な状況。両SBが上がって2バックの日本。この時点ではアジア杯と同じだけど、今回は鈴木がいない。ここが遠藤&長谷部の弊害のもう1つ。攻撃時に2人とも積極的に攻撃に絡んでいったことによって、CB前に人がいなかった。アジア杯時は2+1で守ってた後ろを今回は本当に2で守る状況。確かに相手が1トップだからってのはあるにはある。でも、まずその1トップを今回の日本のCBは完全に押さえ切れてなかった。さらに、1×2とは言っても、その前にフィルターがいるのかどうかってのが大きなポイントになると思う。フィルターとしての鈴木がいれば、相手のトップに入る前段階で引っ掛けることができるわけだから。そして、1トップと見せかけて実は2枚を残してたりするのが今回のオマーンだったと思う。だから、2×2なんていう超危険な状況を作られてしまう。

ちなみに、この前へ前への意識が高まってた時間には本当に前へ前へと急ぎ過ぎ。低い位置にボールがあるときに遠藤も長谷部も両SBもさっさと前へと出て行ってしまった。だから、後ろはCBの2枚のみってことに。前半の終了近くに、そこのつなぎのミスからピンチになりかけたのも必然と言えば必然だった。最初にセットした段階では前からの守備の雰囲気を持ってたオマーンだから、チャンスとなれば前から行ける下地はあったように思う。

というわけで、前半はラスト1/3の糸口が見つからなかった日本。焦りも含めて、真ん中真ん中へと突き進んだことで相手にとってはとっても守りやすい展開に。その上カウンターも食らいまくりの日本代表だった。はたして後半に追いつけるのか。でも、そこは後半になるとしっかりと修正を加えてくる岡田監督。この部分だけは一貫して岡田色が出てる気がする。いつも後半のサッカーを前半からやってればって思わされるし。とにかく、今回の試合でも例外なく後半にはしっかりと対応策を採ってきた印象。

それはサイドを再評価するってこと。真ん中真ん中へと入り込んで失敗したわけだから、当たり前と言えば当たり前。後半はその真ん中を使うために意図的にサイドを使おうっていう形が多く見られたし、何ならそのままサイドから攻めきろう(要するにクロス)も明らかに多くなってたと思う。そのクロスも前半に多かったアーリーから深い位置までえぐっていうやり方が明らかに増えた印象。

まず、前半と比べると明らかに遠藤が目立つ流れとなった。これが何を意味するかって言えば、前回と同じような形が目立つようになったってこと。右から来たボールを左へ、左から来たボールを右へっていう遠藤の役割が多くなる。つまり、サイドチェンジが多くなった。前半は真ん中が無理だから仕方なくサイドへっていう質ではなく、意図的に左右の幅を使おうっていう質のサイドチェンジが目立った。相手のサイドのウラを狙ったり、走らせてそこに合わせてボールを供給したりっていう展開も多かった気がする。前半は足元足元の中→外のパス交換が多かったのに対して。

そして、そうやってサイドに起点を作った時に、そこでSBだけを孤立させないような意識も見て取れた。後半はサイドにボールが出たときに、その外を誰かが回りこむっていうことが約束事みたいになってた気がする。右サイドでは俊輔が内田の外側を回りまくり。俊輔がクロスを上げるなら普通に左でやってもらいたいっていう気持ちが大きかったわけだけど。とにかく、前半とは打って変わってサイドの深い位置で数的優位が作られることが多くなった。

それに後半はシュートに対する積極性も増してたように思う。サイドに作って、真ん中を空けて、その真ん中のスペースへ後ろから選手が飛び出して、そのままミドルシュートへっていうシーンが増えた。前半は日本らしいというかなんというか、相手の超密集ブロックの中でも、それを崩しきろうとする無謀なパス回しが多かったから、それから比べるとかなり良くなった部分だったように思う。

そんな後半の流れだけど、実はそんなにやり方がピックアップされるような展開ではなかったってのが本当のところ。オマーンがこの試合唯一といっていいぐらいの中盤でのつなぎを試みたところを、日本がいい形で引っ掛けて、カウンターにつなげ、玉田がPKを獲得、それを遠藤が遠藤PKであっさりと決めてからは、行ったり来たりの展開が続いたと思う。日本が試合を支配してたのはオマーンが蹴って、日本がつないだから。それまでもそうだったけど。

ただし、日本は圧倒的にやりやすくなったのは事実。相手が前がかりになったことで、5‐4ブロックの4の両サイドは3トップの一角に舞い戻ることが多くなったと思う。よって、5‐2‐3みたいな形になることもしばしば。日本が使いたい中盤の場所に相手は2人のみ。スカスカの中盤でパスをつなぎたい放題の展開に。途中でオマーンが4‐4‐2にシステムを変更したと思う(4バックにしたのは確かだと思うけど、前は適当)もその辺への対応の意図もあったかもしれない。

というわけで、行ったり来たりの展開の中でもイケイケだったのは同点ゴールを奪った日本。でも、そのイケイケも大久保の退場で清算。最近はルーニー並に問題児を脱したかのように見えた大久保だったけど、大久保は大久保だったか。相手も退場したことでみんな疲れてるのに、10×10の試合に。余計にスカスカ、行ったり来たりの流れへ。もう試合の中の秩序はあまりなかった。

日本の方としてみれば、おそらくこの退場で選手交代のカードが切りにくくなったはず。攻撃的な交代をするとすれば、実際に行った松井→山瀬が1つ。中盤では遠藤と俊輔は外せないだろうから、長谷部→憲剛か。でも、遠藤と憲剛が横並びっぽくなって前線の人数が足りなくなる危険がある。FWが1人少ないのに、パサーが増えても仕方ないだろうっていう。あとは矢野の投入だけど、これだってやるとすれば大久保との交代だったと思う。玉田は今回の試合もかなり頑張ってたから、その玉田を外すことで攻撃のリズムが崩れてしまう危険性は大きかったと思う。よって、大久保の退場によって実質的に2枚を残すっていうイレギュラーな状況になってしまった気がする。あれだけの厳しい環境下において。

結果は1‐1の引き分け。予選突破に向けて当面の相手と1勝1分はまあ悪くはない結果。今回の試合を見る限りでは俊輔が岡田寄りになっている雰囲気がありありと出てたから、これでこのチームが進む方向がやっと定まったかなって思う。ただ、それが正解なのかどうか。長期的に見れば面白そうだけど、短期的、要するに次のタイ戦を考えるとどうか。タイも暑い。今回みたいに前半の10分でスタミナ切れはまずいでしょっていう。力差もあるんだから、次の試合は省エネでつないでつないでのサッカーでもいいんじゃないかって気がする。今回だっていつの間にか守備の方は妥協して受ける形になってたし。相手が蹴ってくるからってのもあったんだろうけど。そういう臨機応変さを見せてもいいと思う。
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2008-06-04 Wed 18:57
マンU×ウェストハム
<マンU:4-4-2>
FW:テベス-Cロナウド
MF:パク・チソン-スコールズ-キャリック-ナニ
DF:エブラ-ブラウン-ファーディナンド-ハーグリーブス
GK:ファン・デル・サール

チェルシーに負けた後にマンUの優勝に対して不安が続出。得失点差では圧倒的にマンUが上回ってるのにも関わらず。なぜか?それはマンUの残り2試合の相手にウェストハムが入ってたから。ウェストハムに対しては、最近3戦で3連敗中のマンU。3度あることは4度あるのか。少なくとも苦手意識を持っていることは間違いなわけで。そう考えると、たとえマンUがホームの戦いでも危険じゃないかっていうわけ。

確かに直近のアウェーでのウェストハム戦ではマンUの問題点が見え隠れ。ちょっとおさらいしてみたい。まず、攻撃においてはしっかりと組み立てられない状況に陥った。その理由はウェストハムの守備のやり方にある。今回の試合でも見られたように、ウェストハムの守備は高い位置から積極的に来る。守備ブロックの位置がめちゃめちゃ高い。このプレッシャーにマンUの攻撃のスタートのところが負けた。要するにDFラインとCMF。前線の味方が準備できてるかどうかなんて関係なく、とにかく蹴りまくったのがこの試合のマンU。前線から来られると脆い弱点が明らかになった試合だった印象。

加えて、守備面でも問題が見られたのがこの試合のマンU。前線の4トップが前に対する守備さえもしない最悪の形。テベス&サハっていう、あまり見ない2トップの形だったのも影響したかもしれない。とにかく、後ろの4‐2が本当の意味で4‐2だけで守らなきゃいけない展開になった。もちろん、それは危険な状態なわけで。試合の途中で修正を図ったマンU。システム合致をはっきりとさせて、自分が見るべき相手に対してはしっかりとついて行きましょうっていう約束を決めたと思う。

これによってとりあえず守備の方の問題はなんとかなったって言えるわけだけど、逆に攻撃の方がますます厳しい状況に。上に書いたように、とにかく前線に蹴りまくってたのがこの試合のマンU。前線4トップが守備を免除されているとすれば、とりあえずのターゲットは4枚。でも、守備の役割をはっきりさせた時点で両SMFが守備に追われる状況に。相手もSBを攻撃に出してきたから。よって、適当ロングボールのターゲットはさらに少なく。そんなやり方で効果的な攻撃が仕掛けられるわけがない。

この時点で無限ループ状態に陥ったマンU。前線に蹴る→ターゲットが少ないから相手に渡る→前線の枚数が少ないから効果的な守備が前線で効かない→後ろが押し上げる時間がない→低い位置に引かされたブロックで受ける→奪う→前線に蹴る・・・・。全ては相手の前線からのプレッシャーに負けたところから開始された悪循環だったように思う。そして、上でも書いたとおり結果としてウェストハムに不覚をとった試合になった。

基本的にこの無限ループ状態は様子のおかしいマンUに見られた問題と一致してる。マンUの様子がおかしくなるのは、もう少しあとの話。ただし、その問題の一端はこのウェストハム戦で見られてたんじゃないかって気がした。とはいえ、様子がおかしくなったマンUは相手が前線が来ようが来るまいが、次から次へと前線に放り込んでいってしまうような状況ではあったけど。そのときには無限ループに自ら陥っていったイメージだって言える。

とにかく、その様子のおかしさに対してマンUはどうしたか。ここでも何度も書いてきたとおりに4‐3‐3(4‐5‐1)っていう新システムを導入。そういえば、知らない間に4‐3‐3は絶滅してたなっていう話。一時は4‐3‐3が完全にファーストチョイスになってたはずなんだけど。そのうちに4‐3‐3と4‐4‐2の併用。相手のシステムによって変えてるのかなってのはここでも書いたとおり。守備の安定のためにシステム合致を作ろうっていうもの。ただし、そんなのはあっさりと打ち砕かれたわけだけど。

で、ここでもう1つ提案したいのはリハビリ説。チームとして様子のおかしい状況から抜け出すのが1つ。もう1つはスコールズのリハビリ。ケガから復帰後のスコールズは明らかに精彩を欠いてた。だから、そこにフォローをするためにアンデルソンを使ってたってこと。スコールズ&キャリックの役割をスコールズ&キャリック&アンデルソンで担うことによって、スコールズの負担を減らそうってもの。攻守に渡って。そんなスコールズも試合を重ねるごとに復調。今回の試合でも攻守のスタートとして目立ちまくり。もう中盤は3人もいらなくなった。だったら本来の中盤2枚の4‐2‐4に帰ろう。そんなシーズン後半だったのかもしれない。

この考え方はあながち間違ってない気がする。なぜならば上にも書いたように、前線から積極的に来るのがウェストハム。今回の試合でもアウェーだからと言って遠慮はしなかった。立ち上がりは中盤の4がマンU陣内に入るレベルの超高いブロックで積極的にプレッシャーをかけてきた。前回のように適当ロングボール攻撃からの悪循環に陥らないためには、スコールズ&キャリック&アンデルソン併用の4‐3‐3の方が適当のように思える。大体、ルーニー不在でCロナウドを2トップの一角に使ってる苦しい前線。4‐3‐3の方がよっぽど安定した戦いができるんじゃないかって話。

でも、やっぱり4‐4‐2だった。そういえば1つ前のバルサ戦も4‐4‐2だった。バルサは前線から守備をしてくるのにも関わらず。システム合致を使うならば、4‐3‐3の方が整理しやすいにも関わらず。そう考えるとマンUのベースにあるのはやっぱり4‐4‐2なんだろうと思う。そして、4‐3‐3は中盤を安定させるため。今ならスコールズとキャリックの2枚でも中盤を安定させられるっていう判断のもと4‐4‐2が再び表舞台に帰ってきた気がする。

というわけで、そんな判断が正解だったのが今回の試合だったと思う。上でも触れたとおりウェストハムは予想通りに高い位置からプレッシャーをかけてきた。そんな中でも意図のないボールをただ蹴りまくる流れにはならず。スコールズ&キャリックの2枚を中心にして低い位置でのボール保持に落ち着きをもたらした。前回はフレッチャー&ハーグリーブスの2枚だったから、ボールをつなぐ安定感という意味では大きな差があったのも事実だけど。そして、前線の4枚は変則4トップの良さを存分に発揮してた印象。4‐4‐2というか4‐2‐4のマンUの真骨頂が表れた試合になった印象。出し手としてのキャリック&スコールズと受け手としての変則4トップの関係性がかなりいい感じで回ってた。

とはいえ、相手のプレッシャーに対して全くロングボールを利用しなかったと言えば嘘になる。というか、立ち上がりはロングボールをかなり多用してた。ただ、それにしっかりと意図があったっていうこと。前回の試合のように困ったからとりあえず前線へなんていう質のものではなかった。そういう部分がはっきりとしてくれば、むしろロングボールは有効な手段。相手の超高い守備ブロックのプレッシャーの中を、つないでつないで前線に行くっていうアプローチは無駄なエネルギーを消費する。低い位置から相手の1/3を崩すような意識を持ってかなければならない。それは言い過ぎか。どちらにしても、相手の超高い位置からのプレッシャーの中でもパス回しでビルドアップをして行こうなんてチームはアーセナルぐらいのものじゃないかって話。

とにかく、立ち上がりのマンUはロングボールを多用。前線の選手もしっかりと準備ができてる状況で。そんな中で立ち上がり早々に先制点が生まれる。このシーンはゴールキックからだったけど、まさに狙いどおりの形だった。蹴って、相手DFを押し下げて、中盤との関係をはがして、DFだけに仕掛ける。得点したCロナウドは相手のDFに直接的にドリブルで仕掛けていける状況だった。そして、相手のDFは仕方なくズルズルと下がっていった。で、あっさりとエリア内に侵入していったシーン。

マンUにとってはラッキーな得点だった印象。なぜならば、本当はロングボール攻勢は次への布石っていう面が大きかったはずだから。上にも書いたように、ロングボールを蹴りこんでいくうちに相手のDFラインは下がっていくことになる。で、結果として中盤との関係が離れて行く。4‐4の間に隙間が空く。そして、今回のマンUは4‐2‐4。4‐2‐4のマンUの特徴は何だったか。それはトップ下の場所で出入りを激しくするっていうもの。そのトップ下の場所と相手の4‐4の間は合致関係。4‐4の間に隙間があけば、マンUは自分たちの使いたい場所を好きなように使えることになる。最初のロングボールの狙いはこれだったと思う。

まあ、あれだけ早い時間に得点を取れたのはラッキーだったとしても、マンUは粛々と自分たちの任務をこなしていった。つまり上で書いたように4‐4の間に入り込むっていうアプローチ。今回の試合のマンUは立ち上がりから前線変則4トップの動きが活発だった。いつもは立ち上がりは様子見で平行移動的に戦うんだけど、今回の試合では立ち上がりの最初に相手ブロックに入り込んだのが、この変則4トップ利用。基本はトップの場所にいるCロナウドが右サイドから相手の4‐4の間を横切ってボールを受けたシーン。この時点では相手の4‐4の密着度が高くてつぶされてしまったわけだけど、自分たちの4‐2‐4の良さと相手の4‐4の間の合致を使ってやろうっていう意図は見えてたと思う。

ロングボール多用で相手の4‐4の間に隙間を作り出したマンUは容赦なくその場所を使い始める。テベス、Cロナウド、パク・チソン(、ナニ)が入れ替わり立ち替わりトップ下の場所に降りてきた。そして、1人がトップ下の場所に入る動きをしたのを皮切りに、全体の動きも生まれる前線。テベスとかCロナウドが降りてくれば、パク・チソン、ナニがトップの場所に入って行く。パク・チソン、ナニが真ん中に流れて行けばサイドにテベスとかCロナウドが出て行く。そんな関係性。

ただし、今回のメンバーだと前線の4トップが4トップ的に機能できないっていう部分もある。テベスとCロナウドは基本的に好きなように動く。特に今回のCロナウドの自由度はかなり高かった。その2人の動きを見ながらバランスを取るようにパク・チソンが動く。パク・チソンのイメージとしてはトップが空いたときに出て行くっていう動きが一番目立つ気がする。トップ下の場所の出入りっていう意味ではギグスの方が目立つかなっていう。ただし、今回の試合のパク・チソンは相手の4‐4の間でボールを受けるシーンも増やしてた。スタメン出場が続いていた時期だから変則4トップに慣れてきたかもしれない。

問題はナニ。前線の中でナニだけが流動性の波に乗り切れてなかったと思う。基本的にポジション固定的で右サイドに居座ることが多いし、周囲が作ったスペースに入り込むシーンも少なかった。トップ下の場所にもほとんど出入りしてなかったと思う。そんなこんなで、チームとしての前半の最高の流れに乗り切れず。どこかでイライラが蓄積した結果としての頭突きだったかもしれない。そして、そういう状況が今回の試合だけではなくてシーズン通して見られたのがナニ。サイドの選手の中ではちょっと変則4トップに合ってないかなっていうイメージ。来シーズンからもマンUが同じような変則4トップの形を採るならば、頑張らないとまずいよってところか。

話を試合の流れに戻すと、ここまでのマンUの流れは蹴って→相手の4‐4を空け→その間に変則4トップが入り込むってもの。で、ここまでの流れの特徴としては攻撃の大部分が前線の4トップに任されてたっていうことが挙げられる。4‐2‐4マンUの特徴である縦急ぎ気味の流れが生まれる。ロングボールにしても、前線が相手の4‐4の間に入り込むことを利用して地上から攻める形にしても、最初は前線の4人だけでの攻撃が求められる。そして、4人がいい形でボールをキープして、相手を押し込んだところで後ろが飛び出してくるイメージ。エブラ、ハーグリーブスは1つ遅れて前線に出てくる動きが目立ったし、スコールズ&キャリックも一気に飛び出してくるというよりは徐々に押し上げてくるイメージの動きが目立った。

もちろん4人に任せといて、行けそうならば、後ろから助けが参上するなんていう攻撃がいつも成功するわけではない。攻撃の最初において前線の4人に任される役割が大きいわけだから、相手としても狙いどころが定めやすい。当然のように前線4人に任せたところでつぶされるシーンも多くなる。ここで生まれるのが守備の問題。前線に4人が入り込んでいる。相手は奪ってすぐに攻めるタイプだから、その4人は守備に帰ってこれない。マンUの守備ブロックが4‐2になってしまうシーンが多く見られた。スコールズがサイドに引っ張り出されるシーンも散見されたと思う。守備ブロックのバランスとしては問題がないとは言えないけど、そんな4‐2ブロックが見られると4‐2‐4マンUの復活を意識したりする。

まあ、それはいいとして、だからと言って最初から攻撃に人数をかけるわけに行かなかったってのも事実。なぜならば相手の守備は相変わらず高い位置から来てるから。スコールズ&キャリックの活躍もあって前回のように焦って蹴りまくる流れにはならなかったけど、やっぱり相手の高い位置のプレッシャーは怖い。逃げ場は用意しときたい。だから、低い位置に人数をある程度は確保しておきたい。とりあえず、前線の4人に任せる部分が大きくなった要因はこういう部分にあった印象。

ただし、その点についてのアプローチも着々と進んでいたのが今回のマンU。その前にちょっとウエストハムについて触れとく。上にも書いたとおり、超高い位置に守備ブロックを設定して積極的に守備をしてきたウェストハム。そんなウェストハムの狙いは何かって言えば、高い位置で奪ってからのショートカウンターだったと思う。立ち上がりの攻撃の中でそんな意図が見られた。中盤で引っ掛けて→トップに当てて→一気に後ろが飛び出してくる、っていう攻撃のやり方。そして、このやり方を機能させるためには中盤が前向きで守備をする必要がある。奪った勢いのままに後ろからの飛び出しができればベストだから。

ここで思い出さなければならないのは、マンUが4‐4の間に入り込んでいること。4‐4の間に入り込まれたウェストハムの中盤は前に向かって守備をしてない。だから、その間で相手の攻撃をつぶしたとしても、奪った勢いのままに前線に飛び出してくってのが不可能な状況。だんだんとFWが孤立していく流れに陥った。そして、FWが孤立するってことはマンUの屈強CBの餌食になることを意味した。今回はビディッチじゃなくてブラウンがファーディナンドの相棒になったけど、何の問題もなかったと思う。

さらに、4‐4の間に入られまくりのウェストハムの選手には怖さが生まれる。立ち上がりの失点がDF晒され状況から生まれたのも、その恐怖を強めたかもしれない。とにかく、4‐4の隙間を空けたくない気分が強まる。本当はDFを高くしたいんだけど、そうしたらロングボールが来る。仕方がないので中盤を下げる。徐々にウェストハムのブロックが押し下げられて行った。

ここにおいてマンUにとっての相手のプレッシャーの怖さが弱まることになった。そして、徐々に前線の4トップだけに攻撃を任せる状況をやめて行く。まず、とりあえずはエブラを上げるアプローチ。それまでも攻撃に積極的に飛び出していくシーンが見られたエブラだけど、前半の10分過ぎぐらいからは恒常的に高い位置に居座るようになった。最終ラインが左肩上がりのマンUらしい形。低い位置のパス回しはCBとハーグリーブスに任せて、エブラは高い位置へ。左サイドではエブラが高い位置に上がっていったことでパク・チソンがその場所を留守にするシーンが目立って行った。もちろん、エブラとの関係で左サイドを崩しにかかるシーンも見られたけど。それはパク・チソンに限らず、テベスとかCロナウドに言えたこと。

とにかく前線の枚数が増えたマンU。この時点では1枚だったけど、パク・チソンの自由度を上げたっていうことの意味合いは、ただの+1以上の効果をもたらすことになる。なぜならば自由度が上がったパク・チソンがどこへ行くかって言えば、相手の4‐4の間だったから。もしくは自由度が上がったパク・チソンがFWになる代わりに、Cロナウドとかテベスが4‐4の間に入り込む時間を長くすることにつながった。

加えて、相手の守備ブロックが全体として下がり気味になったことでスコールズ&キャリックのところが浮いてくるようになった。少なくともそれまでの時間と比べれば、明らかに前を向いてのボール保持が自由になったと思う。そして、その場所が浮いてくればボールはいろんな場所に出てくることになる。それまではトップ下の場所に起点を作ることが多かったマンUの攻撃に左右のサイドっていう選択肢が生まれることになった。幅を持たせた攻撃が可能になり、相手としては狙いが定めにくい状況に陥ったって言える。

この時点でウェストハムは諦めた。もう前線から守備をするのは無理だと。下手に前線から行ってギャップを残してくるくらいなら、自陣にバランスのいいブロックを作ろうと。前半の20分の時点でFWがハーフェイラインの高さまで押し下げられた。上にも書いたように、立ち上がりは中盤が敵陣内にいたわけだから、その差は歴然。とにかく、後ろのギャップの場所に相手の危険人物が自由に出入りするのが許せなかったってことか。そのギャップをつぶすことに全精力を注ぐ選択だったと思う。

この時点でマンUは圧倒的なポゼッションに入ることになる。今回はあまり前線に飛び出さず、後ろでボールの出し手としての役割を全うしてたスコールズ&キャリックが敵陣の深い場所にまで入ってボールをさばくようになった。両SBも高い位置に入り込む。そうやって両SBが高い位置に入ることによって攻撃における幅を確保してくれたから、前線の変則4トップの自由度はさらに増す。左右の出入り、トップとかトップ下の場所の出入りを激しくしながらボールを引き出す。そういう間間に入り込む動きによって相手は捕まえ切れない。出し手は浮いてるマンU。受け手も捕まえられてないマンU。さらにSBを利用して幅も使うマンU。ウェストハムは全く狙いどころが定まらなくなった。結果として2‐4‐4状態のマンUがパスを回しまくりの展開。そして、相手がブロックを自陣に作るようになってから最初のマンUのポゼッションが中断なくゴールまでつながることになった。

この失点でウェストハムに守備の根拠がなくなった気がする。前線の高い位置からの守備は相手に混乱を与えられず、ロングボール1発で失点。その後、4‐4の間に入り込まれて困った展開になったから、自陣で受ける形へ。その変更をした矢先に失点。そして、その失点までの流れで手も足も出ず。これで後ろで守ってちゃダメじゃないかって思ったFWは守備において立ち上がりのポジションまで舞い戻って行く。だけど、中盤以降がそれについてこない。結果として4‐2の間に隙間があいた。

そして、その4‐2の間にまで降りてきてボールを受けたCロナウド。中盤の選手にしてみれば、Cロナウドを放っておくわけにはいかない。結果として中盤の4が引っ張り出されることになる。そして、またしても4‐4の間に隙間が空く。4‐4の間でテベスが受ける。テベスの前には相手DFのみ。強烈なミドルシュートが決まったシーンだった。2点目の直後ってあたりがウェストハムの混乱を如実に表してたと思う。

この失点後、ウェストハムの守備はまたまた変更を余儀なくされた。今度は根本的な変更。4‐4‐2ブロックを4‐1‐4‐1へと変えたと思う。で、基本的には自陣の4‐1‐4で受ける形。浮かせて自由にボールを配給させてしまっていたスコールズ&キャリックに対応しつつ、背後のスペースは1が押さえる。面白いアプローチだったと思う。とにかく、ポイントは4‐1‐4の間の1。今回の試合でウェストハムは4‐4の間がトラウマになったんじゃないかって思うぐらい。それぐらいにマンUの変則4トップは容赦なくその間のスペースを使っていったと思う。

で、この4‐1‐4‐1へのシステム変更はどうなったのか。残念ながら分からない。なぜなら、その直後にナニが退場したマンUは戦い方を変更してしまったから。ただし、個人的には4‐1‐4‐1の守備ブロックはそれまでに比べれば、安定感のある守備を可能にしたんじゃないかなっていう気がするわけだけど。真実は誰にも分からない。

さて、ここら辺でちょっと視点を変えてみる。ここまではマンUの攻撃×ウェストハムの守備っていう側面から見てきたけど、逆はどうかっていう点について。最初にも書いたとおり、前回のウェストハム戦でのマンUの問題は攻撃面にあったわけじゃないから。守備における本当の意味での4‐2ブロックによって相手に主導権を握られた部分も大きかった。そして、上でも書いたように今回も攻撃からの切り替えの流れの中では4‐2ブロックで守るシーンも見られたマンUだった。

ただし、総じて見ると今回のマンUは質の高い守備が見られたと思う。そもそも今回のメンバーは1つ前のバルサ戦と同じ。1つ前のバルサ戦ではどうだったかっていうと、最前線からボールに対して忠実に厳しいプレッシャーがかかる質の高い守備が見られたマンU。その余韻を残したかのような今回の試合の守備の内容だったように思う。

まず、トップの2人が積極的にプレッシャーをかける。テベスは普段はルーニーと縦関係になって、後ろに対する守備に自身の献身性を振り向けて行くんだけど、1つ前のバルサ戦と今回の試合ではCロナウドと横並びになって前に対する守備を行ってた。で、このときCロナウドもしっかりと前線に対する守備を行う。しかも、敵陣のかなり深い位置にいるボール保持者にまで。その相手ボール保持者が単純なロングボールを蹴れないぐらいのレベルにまで寄せて行くぐらいに積極的だった。

こういうトップの守備をスタートとして2列目以降も連動を図る。ウェストハムに負けず劣らずにかなり超高い守備ブロックが見られたのが今回のマンU。ロングボールを蹴れない相手が下手につなごうものなら、マンUの中盤の選手の強烈なプレッシャーが待っていた。敵陣内にも関わらず前を向かせないぐらいの強度。特にスコールズはこの部分でかなり目立ってたと思う。というわけで、ウェストハムの選択肢は1つしかなかった。GKに戻して、そこから前線へっていう。ただし、ウェストハムのGKはキックの精度に問題があった気がするけど。

というわけで基本的には完璧に見えたマンUの守備。でも、こっそりと問題が見られたりした。それが見られたのが、何かの拍子にウェストハムがマンUの4‐2の間に入り込んだとき。このときマンUの2トップは守備に戻ってこない。いつもは後ろに対して頑張るテベスも、今回は別の仕事をしてるから知らん振り。前にだけ守備をするのはマンUの前線の特徴でもあるわけだけど。4‐4‐2の前で相手がボールを持ってるときには、前線から積極的に行くマンUも、4‐2の間に入られた瞬間に、その積極性がなりをひそめる。というか、守備のスタートが決まりにくくなる。

だから、ウェストハムはこの4‐2の間で案外余裕を持ってボールを回すことができた。SBを上げて幅を使いながらのパス回し。マンUの中盤はそれまでの積極性が嘘のように、相手のボールに対して寄せられなくなる。ウェストハムの得点シーンの前の流れがまさにそういう状況。かなりの長い時間、ウェストハムはボールを回せてたし、そのボール回しに対してマンUの中盤プレッシャーに行くことができてなかったと思う。でも、プレッシャーをかける意思自体はある。そこにギャップが生まれてたわけで、ウェストハムとしては突くべき場所が見つかった感じか。

というわけでナニの退場はウェストハムにとって良かったのか悪かったのか。なぜならば、ナニの退場によってマンUが腹を決めたから。もう前からの守備はいいと。2点のリードがあるんだから、引いて完全なるブロックを作ろうと。前半はナニの場所にCロナウドを入れて応急処置。そのCロナウドもかなり低い位置まで戻っての守備を見せた。そして、後半はテベスを右に出してCロナウドを1トップ。完全に守ってカウンター戦法。Cロナウドに預けて、あとは頼むよっていう。パク・チソン&テベスの運動量があれば守備では低い位置まで戻り、攻撃では最前線まで出ていくことも期待できるから。パク・チソンは交代したけど。

本気で守ると決めたマンU。本気で守ると決めたマンUはバルサ相手に完封をするレベル。ウェストハムには荷が重かった。しかも、マンUのカウンターはキレキレ。攻撃後の守備の場所で前後の分断が起こり気味のウェストハムにとっては危険が多かった。DFが晒されまくったから。実際にそういうシーンから失点までしてるわけで。その4点目で試合が決まってしまった。

というわけでナニの退場はウェストハムにとっては不幸だったように思う。カウンターで相手の4‐2(DF-CMF)だけの守備ブロックに仕掛けるか、4‐2(こっちはMF-FW)の間に入り込んで幅を使いながら攻撃をするか。少なくとも守る気になったマンUの4‐4に対して攻めるよりは、よっぽど可能性が高かったはず。実際にチャンスにつながってるのは4‐2(MF-FW)の間に入って幅を使ってからのクロスだったりしたし。

もちろん、ナニの退場はマンUにとっても不幸。この試合のマンUの攻撃の質は恐ろしいほどに高かった。自分たちのペースへの持って行き方もスムーズかつ緻密。あのまま11人で戦ってたら、なんかすごいことになってたような予感もある。もしかしたら、今シーズンで一番いい試合をしてたんじゃないかと思うぐらいだったし。それは攻守に渡って。それがナニの退場によって4‐4‐1へ。単純な守ってカウンターの流れになってしまったのは、見ている方としても残念だった部分。
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2008-06-03 Tue 16:05
日本×オマーン
<日本:4-4-2>
FW:玉田-大久保
MF:松井-遠藤-長谷部-俊輔
DF:長友-トゥーリオ-中澤-駒野
GK:楢崎

岡田監督にとって、勝つためのサッカーとやりたいサッカーは別なのかもしれない。もしくは、未だ自分のやりたいサッカーに自信が持てないのかもしれない。タイ戦、バーレーン戦、そして今回のオマーン戦とW杯予選になった瞬間に直前まで試していたサッカーをあっさりと捨ててしまっている気がする。タイ戦では普通に戦って普通に勝ったイメージ。岡田色が見えず、だからと言ってオシム色でもない(そのときは海のものとも山のものともサッカーだって書いた)、あえて表現するなら個の足し算サッカー。まあ、個のプラスアルファが求められない相手だったから、それはそれで危なげなかったけど。で、バーレーン戦。ご存じのとおりの蹴りまくりサッカー。聞いてないよって話。

そして、今回。遠藤がボランチ。ボランチ遠藤のオプションなんて初めて見た。今まで遠藤を主力級で使ってきた岡田監督の初めての試み。このタイミングでかよって話。ただし、鈴木も今野も使わない攻撃的なボランチの組み合わせはありだと思った。相手はベタ引きが予想されるオマーンなわけで、しかも日本がホーム。守備にはあまり気を使わなくてもいいことは十分に予測されたわけで。でも、だったら普通に憲剛を使えばいいだけの話ではある。ここに岡田監督のちょっとした抵抗が見られた気がする。何に対する抵抗かって言えば、パラグアイ戦の前半の内容に対する抵抗。つまり、オシム色への抵抗。

そもそもパラグアイ戦の時にも書いたように、俊輔は岡田色に合ってない。少なくとも現状では。サイドチェンジをもっと増やすべきだっていうコメントは岡田監督の考えとのズレを感じたし。コートジボワール戦でも見られたとおり、たぶん岡田監督は攻め始めたらノンストップで同サイドの縦を侵攻したいと思ってるはずだから。ただ、だからと言って俊輔自身の動きが悪かったわけではないのも、また事実。というか、チームの中では中心的に振舞ってた。だから、岡田監督にも今回の試合で俊輔を外すだけの勇気はなかったんだと思う。

仕方がないので憲剛を外した。前回のパラグアイ戦で俊輔とともに横型サッカーをしてたのは憲剛だったから。それに、どちらもボールを保持して落ち着かせるようなタイプ。1タッチ2タッチでスピーディーに回したい岡田色とはリズムが異なる。だから、2人は入れられない。憲剛だけか、俊輔だけか。W中村併用はおそらく岡田色を停滞させると判断したはず。で、今回は俊輔が選ばれたと。ちなみに遠藤はその辺の柔軟性があると思う。キープしてボールを落ち着かせることもできるし、少ないタッチで局面を変えることもできる。結果としてボランチは憲剛ではなくて遠藤になった気がする。

ついでに俊輔と遠藤を横並びにしたくなかったっていう意図もあった模様。2人を横並びにするとその関係でのパス回しが増えて、縦にパスが出ないと。だから、縦関係にしたと。そして、縦に行ける松井を入れたかったと。ただし、遠藤と俊輔は相思相愛のようで、今回の試合では俊輔がボランチの位置に降りてきまくり。指示が出たのか何なのか、途中からはパタリと消えてしまったけど、少なくとも前半は横並びになる時間が多くなったと思う。ボランチの位置で遠藤と俊輔が横並びになるぐらいなら、いつもの高い場所で横並びになった方がマシなんじゃないかなって思ったりもした。

何にしてもパラグアイ戦の前半の流れを払拭するために工夫を見せてきた岡田監督。横幅を使って徐々にビルドアップするようなオシム的な攻撃を捨てたい。自分が目指す縦へ一気に侵攻する攻撃をやりたい。そんな意図が見え隠れ。でも、実際には横型になってしまうから面白い。俊輔の存在は偉大だってことか。そして、その背後にいるオシムの存在も偉大だってことか。結果として長谷部は完全に消えてしまった。長友は長友らしい縦への動きよりも組み立てで目立った。それでもメンツ的には岡田色が強いわけで(長友、長谷部、松井、ちびっこ2トップ、上がらない駒野)、よって断片的に岡田色が見え隠れ。

そんなこんなで今まで見たこともないようなサッカーが再び展開されることになった気がする。というか、もしかしたら攻撃については岡田監督が折れたんじゃないかっていう気さえする。要するに俊輔を使うなら自分のやり方は強制できないと諦めたってこと。俊輔を中心に自分たちのやりたいサッカーをやればいいよ、その代わりメンバーはオシムのときと同じってわけにはいかないよ。そんな感じか。だから、今回の試合では後半の修正も見られなかった。メンバー交代の制限がきついこともあったんだろうけど。というか、むしろオシムが強まったのは後半の方だった気さえする。

まず、試合開始数分で判明したのが遠藤の役割。今回の試合の遠藤の役割はとっても分かりやすかった。それはDFライン前でのボールの散らし役。それを端的に言っちゃえば、右から来たボールを左に受け流す、左から受けたボールを右に受け流すってこと。今回の試合の遠藤は基本的にはこれだけしかやってない。そして、これだけのことが大きな効果をもたらすことになったと思う。遠藤のこの受け流しが目立たなくなった前半の30分以降は明らかにチームとしての攻撃も停滞してたと思うし。

この時点で思ったのは今回は珍しく幅を使うんだなってこと。攻め始めたサイドでそのまま縦を侵攻するのが岡田監督がやりたいサッカーだってのは上にも書いたとおり。そこにはサイドチェンジも作り直しも見られない。同サイドの最短距離を崩したいのに、サイドを変えるだの後ろに戻すだのってのは遠回り以外の何物でもないから。なのに今回は作り直しまくり。右に展開して縦に行けなかったら遠藤経由で左にみたいな(逆もだけど)。

まあ普通と言えば普通。縦へ縦へと攻め急ぐ流れの中で早々に疲れてしまったコートジボワール戦の内容を考えれば、よっぽど大人のサッカー。ここぞのチャンスがあるまではゆったりと低い位置でボールを保持する。もちろん、そこで左右に散らすことで自分たちから相手の守備ブロックにギャップを作り出すアプローチもしながら。そんな中で相手ブロックに入り込む隙が見つかったら、一気にスピードアップを図る。岡田的な縦急ぎ最短距離侵攻サッカーで一気に攻めきる。そんなやり方ができるんじゃないかと想像された。そして、それこそが素晴らしい岡田&オシムの融合なんじゃないかと。

縦へ縦へと最短距離を急ぐコートジボワール戦で見られた岡田色と左右の展開を織り交ぜながら回り道をして回り道をして徐々にビルドアップをして行くオシム色。両極端のこの形だけど、実は同じ問題を内包してる。それは緩急のところ。岡田色は急すぎる。縦へ縦へと急ぐ中で休憩時間がなくて疲れてしまう。対するオシム色は緩すぎる。ポゼッション率を高めて陣地を増やすのはいいけど、そこからスピードアップが図れずに相手ゴールに向かっていけない問題が見られた。

で、遠藤を中心とした低い位置でのパス回しを見た時点で、この岡田色とオシム色を融合したサッカーが見られるんじゃないかっていう期待感が高まりまくり。上でも触れたとおり、低い位置のオシム的左右展開でポゼッション率を高めながら相手ブロックに穴を作り、探っていく。穴ができた瞬間に岡田的縦急ぎサッカー。ボールを入れたところにすぐに関係性を作って複数の選択肢を創出。ボールが動くたびにそれを繰り返して連続的に相手ゴールに向かっていく。そんなサッカーが見られれば、両者の弱点も克服されるだろうななんて考えたりもしたわけ。

でも、結局そんなやり方が体現されることはなかった。いや、本当は1つだけあった。それは先制点のCKにつながったプレー。このシーンは低い位置でのパス回しから左サイドに超密集地帯を作って縦を侵攻していったシーン。遠藤→長友→玉田→松井→長友。連続的に複数のパスコースを作る岡田色の真髄。ボールには触れてないけど、長谷部も左寄りのポジショニングで選択肢創出に貢献。このときに俊輔は遠藤と横並び関係の位置にいたんだけど、同じ真ん中に流れるでもトップの場所に出ていたら理想的だっただろうなって思ったりもした。

でも、連続的に複数のパスコースを作る岡田色はこの場面でしか見られなかったと思う。その理由は何だったのか?それは簡単な話だった。要するに個々の運動量が足りなかったと思う。それぞれの運動量がチームに還元されなかったって言った方がいいか。とにかく、ボールに対して複数の選択肢を作るなんてのは夢のまた夢。複数どころか1つのパスコースも満足に作れない状況が生まれてた印象。とにかく、選手間の距離が遠い遠い。ボールに対する動きが少ない少ない。結果として1人1人の保持時間が明らかに伸びた。酷い時間帯には岡田監督になってからは一番長かったんじゃないかってぐらいに。

そもそも、オマーンの守備ブロックは穴だらけだった。オマーンの守備は3‐4‐3を自陣で作るもの。トップは前に対する守備をあまりせず、あくまでも守備の勝負どころは自陣みたいな割り切った形。日本陣内の日本のボール保持者は完全に自由にボールを扱えた。今回の試合では攻撃の中心になってた遠藤でさえも。その割にはオマーンの最終ラインが高い位置に設定されてたから、日本は効果的にロングボールを織り交ぜていったと思う。

そんなオマーンは自陣で守備をしようと思ってたはずなのに、自陣にボールが入ってきても一向に守備が始まらない。特に本来のポジションから動いて受ける選手は浮きまくり。中盤に降りてくる玉田は完全に浮いた状態だった。で、日本の選手にボールが入った時点で遅ればせながらプレッシャーをかけるような動きを始めるオマーンの選手。文字どおりに後手に回ってるわけで。いつもの通りに、というか狙いどおりに、1タッチ2タッチで日本が回すならばもっと圧倒的に攻め込む流れになったはず。遅れて出てきた相手の背後にはギャップが残されてたわけで、ギャップギャップをつなぎながらの縦急ぎサッカーにはもってこい。

にもかかわらず、上にも書いたように1人1人の保持時間が延びることになった今回の日本。後手に回ったはずの相手選手が寄せきれるぐらいに保持時間が長かった。もっと言えば、その最初のチェックに対して周囲が連動して囲い込みに行けるぐらい保持時間が長かった。それでも個の力で上回る日本選手がボールを失うことは少なかったけど、この時点で完全にスピーディーな展開は不可能に。というか、前にボールを出すのも不可能に。結果的に後ろに戻すパスが多くなった。

だから、穴だらけの相手守備ブロックを圧倒的に押し込む流れにはならず。相手守備陣がゴール前に引かされるなんていうシーンは前半は皆無。それは日本の攻撃がことごとく途中で分断されてたから。連続性が重要な岡田サッカーなのに。上に書いたような流れで後ろに戻して作り直せれば、まだいい方だったって言える。

なぜならば、途中で引っ掛けられて相手ボールになることもかなり多かったから。守備の根拠がない相手なのにもかかわらず。その理由は簡単で、いくら守備の根拠がないオマーンでも日本の攻撃の選択肢が圧倒的に少なければ狙いどころを定めることができる。狙いどころが定められれば身体的に上回るオマーンの選手。先にボールを触るのは簡単だった。というか、自陣に引いたオマーンの守備ブロックの密度は高いわけで。そこを1人とか2人で崩しきろうとした日本が無謀。オマーンにしてみれば勝手に引っ掛かってきてくれるっていう側面の方が大きかったかもしれない。

要するに今回の日本代表が抱えていた問題は根本的なものだった。ボールに対する動きが少ない。だから人と人の距離が遠い。結果としてパスがスムーズに回らない。狭い場所を突き進むために少ないタッチで次々に局面を変えていかなければならない岡田色には致命的な欠陥。でも、同時にそれはオシム色にも悪い影響を及ぼすことになる。なぜならばオシムのやり方でも人の近さは要求されるから。サイドで数的優位を作って、詰まったらサイドを変えるってのがオシムのやり方。そもそも、オシムは走れって言ってたわけで。というわけで、オシム&岡田の融合どころか、その両方が不可能な状況に陥ってたって言える。

それでも前半の途中までは前線にボールを入れることができたのも事実だった。その中でもいくつかのやり方の変更が見られたわけだけど。まず、立ち上がりは単純なロングボールを増やした。それは上にも書いたように、相手が根拠のない高い最終ラインを設定してたから。出し手の方は浮きまくり、受け手の方にも前線にスペースがあった。もちろん、立ち上がりのリスク回避の意味もあったはず。相手のFWも立ち上がりは前線からくる意識を見せてたから、それを否す意味もあったと思う。陣地を増やすために相手の後ろへの意識を高めさせるっていう。

その狙いはずばり。立ち上がりのロングボールのいくつか(その1つが開始早々の決定的なシーンにもつながってる)によって相手のFWは日本陣内にまでプレッシャーに来なくなった。そこからは上に書いたような遠藤中心の低い位置のパス回し。左右の幅を有効活用しながら、相手のブロックに隙間を空けていったと思う。その狙いは初期岡田色だった。つまり、トップを目指そうってやり方。低い位置の左右のパス回しも相手ブロックを横に間延びさせて縦パスを入れやすくするため。サイドから斜めにトップに入れるボールも目立った。

ただし、このやり方は失敗する。ちびっこ2トップでは前線でキープするのは難しかった。何よりも2人に入った時点で絡める中盤の選手がいない。初期の岡田監督が持ち行ってたのは4‐1‐3‐2。FWと関係を作れる2列目が3枚存在した。だから、トップに当てておいて中盤は前を向いた状態で次を受けるっていう形も可能に。それに対して、今回はフラット4‐4‐2。長谷部が前への意識を持ってたのは確かだけど、トップとの関係を築くほど近くまでは行けず。俊輔は前回と同じく後ろとの関係重視。さらに、この時間の松井はサイドに張ってる時間が長かった。よって2トップ孤立。トップに収めても次の展開が期待できない。よって、このやり方は捨てることにした。

次に現れたのがサイドに起点を作ろうっていうやり方。左肩上がりの日本代表だから、その起点も当然のように左に作られることが多かった。ただし、やり始めの時間帯には未だ遠藤が顕在。左右の展開を織り交ぜておいてから左サイドに起点を作るっていうやり方が目立ってた。結果として起点となる長友は完全に浮いた状態でボールを受けることが多かったと思う。よって、多くの人数をかけなくても縦に入り込むことがなんとかできた。玉田が降りてきたり、松井と縦の関係性を作ったり。ただし、本来やりたいであろう超密集地帯作りはできなかったから、決定的なチャンスまでつなげることができなかった印象。

そんなこんなのうちにCKから得点。結果としてこの1点目と次の2点目が大きかった。低い位置の保持時間は長くても相手ブロックには全く仕掛けられてなかった日本。相手のブロックを完全に押し込むシーンが皆無だったのは上にも書いたとおり。ポゼッションは日本でもペースが日本かって言われれば疑問。そんな流れの中でセットプレーから先制点。相手の切り替え守備のまずさをついて(今回のオマーンは攻撃にそれなりの人数をかけてきたけど、それが相手に渡った後の切り替えが恐ろしく緩慢だった)1発パスから追加点。トゥーリオの絶妙な攻撃参加と俊輔の視野の広さが光ったシーンだったと思う。

ただし、この1点目と2点目の間の時間帯ぐらいから日本は本当に何もできなくなっていった。相手ブロックの仕掛けで唯一の機能性を見せていた左サイド、というか長友が完全に消えて行く流れ。ここにおいて日本のビルドアップの問題が再発。ラスト1/3にばかり気を取られてるけど、実は最初の1/3が問題なのが岡田監督に代わってからの日本代表。アジア杯の時にも指摘したはず。攻撃のスタートをいかに切るかっていう大問題がのしかかって行くことになった印象。

その原因は何か。1つはオマーンの前線の守備の質が変化したこと。まず、前線の守備の意識が高まったと思う。日本のCBとか遠藤の場所にもプレッシャーが効くようになって行った。至って気まぐれなこのプレッシャーだったけど、日本としてはそれまでのように完全に自由にっていうわけには行かなくなったのも事実だったと思う。それ以上に痛かったのが相手の前線3枚の並び方。それまでは1‐2的な意図が強かったのにも関わらず、この時間ぐらいからフラットな3みたいな形になってた。加えて前への守備意識。日本のSBのところが浮かなくなっていった。

ただ、これ自体は大きな問題ではなかったように思う。なぜならば、相手の前線の守備は気まぐれだったから。それに相手の前線の3枚が横並びになったとは言っても、フィルターとなるためにその3枚が一体となってボールサイドに寄るようなやり方を採ってきてたから、それまでのように左右の展開を織り交ぜることで逆サイドを空けることは可能だった印象。ただし、その低い位置での左右の展開がこの時間には消えていた。理由は分からない。それでも確かに右に展開→中に戻す→左へ展開→縦へっていう流れの最初のステップが消え気味だったのは事実。予想以上に長友が浮いてたから、1度揺さぶる必要はないって判断したのかもしれない。相手の気まぐれプレッシャーの影響が予想以上に大きかったのかもしれない。本当のところは分からない。どちらにしても相手の最前線のフィルターを揺さぶれなかったのは事実だった。

そして、この時間にもう1つの変化が生まれる。それは俊輔と松井の動き。それまでの時間は長谷部が前線に出て行ったことで空いていた遠藤の横の場所でプレーすることが多かった俊輔。そこでパスの出し手として機能してたと思う。でも、このあたりの時間帯になって急に低い位置に顔を見せなくなっていった。その代わりに前線で受け手となるシーンが目立ったと思う。基本の右サイドにこだわらず。相手の最前線が守備において前への意識を高めたってのは上にも書いたとおり。結果としてライン間の距離が空いてたはず。2点目も明らかにDFと中盤の間にスペースができてたし。俊輔はその間にギャップを見つけたんだと思う。そういう間の場所で引き出す動きを繰り返した。DFと中盤の間で受けてミドルっていうシーンも見られたと思う。ただし、俊輔が受けてもフォローが少なかったのは、繰り返しになるけど今回の日本の致命的な問題だったわけだけど。

この俊輔の動きはよかったと思う。少なくとも今回の試合で遠藤と横並びになる必要性は感じなかったから。後ろは助けはいらなかった。ただし、同じように動きを始めた松井はどうか。俊輔に引っ張られたのかどうかは分からないけど、それまでの時間は左サイドに張りつく時間の長かった松井が流動的にポジションを変え始めた。実はこれが攻撃の停滞の要因の1つになっていたんじゃないかと思ったりもする。

基本的にはポジションを動かすことで相手の守備陣を混乱させるのはいい試み。でも、今回の松井に関しては左サイドに張りつくことの意味の方が大きかった。なぜならば相手のシステムは3‐4‐3。純粋なサイドの選手はWB1枚。松井がサイドに張りつくことで、このWBは松井に引っ張られることになる。よって、1つ下の長友が浮くことになる。この長友を利用して攻撃の組み立てをしてたってのは上にも書いたとおり。つまり、松井がサイドに張っていたことで4‐4‐2×3‐4‐3のシステム的なメリットを十分に生かすことができてたって言える。

でも、松井は動き始めた。代わりに長谷部でも飛び出してくれば別だったんだろうけど、今回の試合の前半は長谷部が消え気味。よって、左サイドの高めの位置が留守になる。WBは長友に対応できる。加えて相手のWG的な選手も長友に対応するようになっていた。2×1の数的優位が一転して、1×2の数的不利に。そりゃ、長友も目立たなくなるわっていう話。

というわけでビルドアップの方法を失った日本代表。長友が抑えられたことに加えて、SMFが中寄りに入ってきたことで、攻撃において一気に幅が使えなくなった。それまでは遠藤経由であれだけボールが左右に動いてたのに。この後の日本の攻撃は簡単に表すことができる。とりあえず、真ん中→真ん中のパス。相手の守備が後手だから収まることは収まる。でも、距離が遠くて次の展開がないから、結局囲まれる。個の力に優れてるから何とかキープしてバックパスに逃げる。ずっとそんなことを繰り返してた前半の残りの時間。バランスが崩されないオマーンは攻撃に移った時に、それなりに人数をかけることができる。前半の終りに盛り返されたのは明らか。東アジア杯の北朝鮮戦みたいな流れか。

さて、こんなことを踏まえての後半。後半になって明らかに変化したのはボランチの動き。基本的には自陣でボールを裁いていた遠藤が敵陣に入ってくるようになった。長谷部が前線に出て行く中で自分は後ろでバランスを取らなければならないっていう躊躇が前半にはあったんじゃないかと思う。必要以上に後ろに居座ってたと思うから。後半はそのあたりに指示が出たのかもしれない。そして、長谷部が目立つようになった。これが大きかった印象。

前半は確かに前線に飛び出していった長谷部。攻撃時は4‐1‐3‐2って言ってもいい形だった。でも、前線に飛び出していった長谷部が攻撃に絡めなかったのが前半の流れ。トップ下の場所が空いていたから、そこに入っていったんだろうけど、前半の日本の流れではそんな場所にいても意味がなかった。攻撃の起点はサイドだったし、そもそも深い位置までボールを運べなかったから。そんな長谷部が後半はサイドに顔を出すシーンを増やしたと思う。

これによって前半の途中から生まれたサイドの数的不利が解消されることになった。松井がいなくなれば、長谷部がサイドに出ることによって、長友をサイドで孤立させないようにしたと思う。松井自身も前半のようにふらふらと中に流れて行かずに長友との関係を意識したようなポジショニングが目立つようになってた印象。松井と長友が前後を入れ替えるような時間も多々あった。

結果として再び左サイドが攻撃の起点となった日本代表。岡田色を出すならば、ここまで書いてきたとおり、左サイドに人数をかけて縦を侵攻してくやり方が正解。でも、後半の流れはそうはならなかった。後半は岡田色ではなくてオシム色が出たってのは最初の方でも書いたとおり。岡田色を体現するには、ボールに対する動きを圧倒的に増やさなければならないわけで、それは今回の日本には望めない部分だった。だから、同サイドを崩し切るのは難しかったんだと思う。そうやって同サイド崩しが詰まったら逆サイドへ。オシム色というか、至って普通の選択だったとも言えると思う。

ところでオシム色にもボールに対する動きは必要だってのは上にも書いたとおり。それはどうしたのか。簡単に言えば、遠藤がそれを解消したって言える。遠藤のポジションはアンカー。そのアンカーが敵陣内まで押し上げてくる。よって、前線も強制的に前に押し出される。結果として前線に強制的な近さが生まれた。そうやって近さが生まれれば、ボールに対する動きも回復するわけで。結果として基本的なトライアングル形成ぐらいはできるようになってたと思う。前半と比べると高い位置での選手間の距離が縮まったのは確かだったと思う。

それからもう1つの後半の変化としては駒野の積極的な攻撃参加が挙げられる。左肩上がりの攻撃の中で前半は明らかに攻撃参加を自重してた駒野だけど、後半は前線に飛び出してくる駒野本来の良さが見られた。この駒野の攻撃参加によって後半はオシムが可能になったって言える。本来の岡田監督のやり方では同サイドの最短距離を崩したいっていう積極的な側面に加えて、逆サイドは攻撃の自重してるから使えないっていう消極的側面もあるはずだから。

とにかく、後半は前半と比べると明らかにスムーズな展開が生まれた。サイドに起点を作る→そこで数的優位を作ってパス交換→詰まったら遠藤を経由して逆サイドへ。接近→展開→連続。ここにおいてやっと力どおりにオマーンの守備ブロックを押し込むことに成功した。サイドでのリズムのいいパス交換と左右の幅を効果的に使った組み立てによって、相手に狙いどころを定めさせなかった。というか、そもそもオマーンの守備に狙いどころがあったのかどうかも疑問なわけだけど。とにかく、ズルズルと押し下げられるオマーンの守備ブロック。俊輔の3点目みたいにベタ引きブロックの前にはスペースが空くシーンが目立ったと思う。

そんなスムーズな攻撃の組み立ては時間とともにいい流れを生んでいく。思い出したかのようにボールに対するランニングが増えて、近い場所での関係性が生まれた印象。大久保と香川の交代もよかった。病み上がりの影響か、大久保は全体として運動量が少なかったと思う。玉田がいろんなところに顔を出してボールタッチを増やしてたのに比べると、明らかに大久保は目立ってなかった。そんな大久保に代わって中盤の選手を入れることで、ますます近い関係性の改善が図られた印象。ただし、玉田1トップだと本当の意味での0トップが生まれてしまう。よって巻を入れたんだと思う。

そんなわけで試合終了に向けて運動量が増えていった日本代表。まさか疲れないように省エネで入ったんじゃあるまいか。無駄にスタミナを使わないように低い位置での保持時間を延ばしてる間にチーム全体がまったりした流れになったというか。結果として動きが停滞して、スピードアップを図れなくなったっていう。東アジア杯の北朝鮮戦はそんな流れだったし。ただ、このことが次のアウェーでのオマーン戦に向けてはヒントになるかもしれない。気候面を考えたら岡田監督がやりたいであろうコートジボワール戦のようなサッカーは不可能。だったら、今回の試合のようにゆっくりと保持する時間が長くなるはず。ただ、だからと言って今回ようにボールに対するフォローが少ないのはどうかと思うけど。

ちなみに今回の試合の守備面。カウンターを許さなかったっていう点はかなり評価できる気がする。切り替えの守備の良さは明らかだった。ボールが相手に渡った瞬間に複数枚が一気にプレッシャーをかけに行くシーンが目立ってた印象。ただし、時間としては短かったものの、ブロックを作って守備をする時間の守備は微妙だった。まず、FWがスタートとして機能できてなかった印象。でも、中盤はやる気満々で前線に引っ張り出される。でも、連動が図れずに単発。結果として中盤とDFの間が気になる流れ。前回と同じく奪いに行こうとして逃げられるシーンも多かった。前半の終りの盛り返される流れの中では予想以上につながれた印象。でも、相手は最終的にトップへの選択肢しかないわけで。そこのところを中澤&トゥーリオが完全に跳ね返してたから何の問題も起きなかったわけだけど。

さて、次のアウェーでのオマーン戦はどうするのか。アウェーってことを考えると鈴木か今野のどちらかは使ってくるはず。ただし、長友の怪我がどうかってこと。阿部が離脱したことを考えると今野がSBに回る可能性もあるかもしれない。どちらにしても鈴木よりは今野をベンチに置いておいた方が安全か。じゃあ、鈴木の相棒は誰か。俊輔がやりたいサッカーをやるなら憲剛。岡田監督がやりたいサッカーをやるなら長谷部。もっと極端に言えば、前にも書いたように山瀬っていう選択肢もあると思う。ただし、アウェーの本番でいきなり試すのはどうかって話だけど。中盤高めは俊輔と誰か。これも俊輔を生かすなら遠藤、岡田監督がやりたいサッカーをやるなら松井ってことになるか。総合して考えると、アウェーでしかも気候を考えたときに岡田監督のやりたい超運動量を要求するサッカーが現実的かどうかって部分になってくる。ここは普通にポゼッション率を上げて行くことを念頭に置いたらどうか。オシムの中盤、遠藤-鈴木-憲剛-俊輔の組み合わせが現実的な気がする。完全に中心になってる俊輔を外すのは無理でしょう。FWは頑張る玉田ともう1人を誰にするか。

対するオマーンはどうやって戦ってくるか全く分からない。実は今回と対して変わらないんじゃないかなんていう雰囲気も醸し出してる。そもそも、今回の試合の狙いが分からなかったわけで。普通にベタ引きにすれば3点も取られることはなかっただろうに、下手にラインを上げるから。なのに前線から行くわけでもないし。むしろ、次にベタ引きで来たら、それはそれで日本にとっては厄介だったりするかもしれない。
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