ただのサッカー好きが、思ったことをただ書くだけ。 (06年終了)

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2008-07-25 Fri 17:16
U-23:日本×オーストラリア
<日本代表:4-5-1>
FW:森本
MF:李-香川-本田圭、本田拓-細貝
DF:長友-水本-吉田-内田
GK:山本

前回のカメルーン戦で大きなイメチェンを図ってきた日本代表。トゥーロンで何があったのかってレベル。あれだけ攻撃のスタートがうまく行ってなかったチームがが嘘のようにスムーズなビルドアップを見せつけた。その具体的なやり方はEUROでドイツとかオランダが使ってたみたいな6‐4方式。SBとボランチの後ろの6が出し手、前の3‐1が受け手っていう役割分担を明確にする。後ろの6はSBの幅を使いながら相手の守備ブロックに隙間を空けて行く。前の4はMFとFWの隙間に入り込んでボールを受けられる体制を作る。そうやってうまく縦パスを収めたところで、SBとボランチ(特に梶山)が前線に飛び出し。前に厚みを加え関係性を築く。そんなやり方。

ただし、問題点が見られたのも事実。それは実質的には出し手が梶山しかいないこと。本田拓は出し手としてはちょっと見劣る。だから、梶山が消えるとチーム全体が停滞するっていう雰囲気が見られた。オランダがロシアに負けたのが、まさにこの要因。出し手となりたいエンゲラールが消え、守備的なデ・ヨングが出し手にさせられたこと。その弱点をそのまま踏襲したかのような日本代表。だからこそ、遠藤を呼んでの遠藤&梶山のコンビにはかなりの期待感があった。残念無念。

遠藤が呼べなかったのは仕方ない。でも、なぜか今回の試合では梶山を起用しなかった反町監督。ボランチは細貝&本田拓のコンビ。これによって実質的な出し手が0になってしまった日本代表。さらに、両SBは攻撃大好き突撃隊の内田&長友。どちらも低い位置で出し手になるよりは、高い位置で受け手になるような場所にいることが多かった。よって低い位置で幅を使えない。相手ブロックはずらせない。ボランチは守備的な2人。そのボランチは相手の2トップが押さえてる。うまく攻撃のスタートが切れない、以前の悪夢再来ってところか。

その悪夢が再来する可能性は十分にあった。実際に悪いときのこのチームで見られたように、本田圭が低い位置に降りてきてボールを扱うシーンがかなり多くなってたと思う。前回は受け手として、相手のDFとMFの間で素晴らしいプレーを見せてくれた本田圭が再び相手MF前に追いやられた格好になってしまったと思う。これはヤバいんじゃないのかって思った前半の立ち上がり。

でも、実際には思ってたほどの停滞感は感じられなかったと思う。もちろん停滞感がなかったとは言えない。上に書いたように本田圭はたびたび低い位置に降りてくるし、ボランチは全く攻撃の出し手として機能しないし。せっかく李とか森本が間に入って受けようとする動きを繰り返してたのに、縦パスがなかなか入れられないような時間が多くなったのは事実。ただし、このチームの暗黒時代と比べればまだまだマシな方だったって言えるような状況だった。

その理由はSBをうまく活用できたから。高い位置に入った内田と長友。この2人(特に内田)を利用して敵陣に入り込むっていうやり方が多くなった印象。よって今回の日本のビルドアップは前回のカメルーン戦とは全く違ったものになった。サイドに起点を作るようなやり方が多くなったと思う。そして、その内容を見る限りでは前回と比べて特別悪いっていう状況でもなかった気がする。やり方が変わっただけっていうか。個人的には前回のやり方の方が面白かったし、うまく回ってたんじゃないかなっていう気がしないでもないけど。

その中で前回から改善した部分も大きい。6‐4方式の前回の試合ではFW不在になることが多かった。なぜならば、1トップに入った森本が中盤の3枚と同じく相手のDFとMFの間で受け手になろうと降りてくるシーンが多かったから。これがクローゼ、ファン・ニステルローイを擁するドイツ、オランダとの最大の違いだった。この2チームはFWは絶対的な存在としてゴール近くでのプレーが目立ってた。前の4が受け手って書いたけど、実際に低い位置からのボールを受けるのは中盤の3。その中盤の3を経由したボールを受けるのがFWって形だった。そんな前の3‐1の役割があいまいだったのが前回の日本。結果としてゴール前に人が少ないっていう問題が生じてた。

6‐4方式を放棄した今回はそんな問題が起こらなかった。攻撃においてはサイドに起点を作る。サイドではSB+SMF+1ぐらいの関係性。後で詳しく書くけど。とにかく、それ以外の選手はゴール前に入れるっていう状況が作られた。結果としてゴール前に人数が多く入れるシーンも多かったと思う。同点ゴールのシーンがまさにそれ。サイドに起点を作って置いて、そこからのボールに対して李、森本、香川がゴール前で関係性を作ったシーン。ゴール前の過疎化なんてもう言わせない。

そんなサイドの関係性。中心になるのは積極的に攻撃参加を繰り返す内田と長友。そして、このSBとの関係性を作るためにSMFはサイドでのプレーが目立ったと思う。特に起点を作ることが多かった右の本田圭は縦の動きはしても、横の動きはほとんど見られなかった印象。逆に李?香川?は流動的に動いてた左は攻撃の起点としてはあまり使われてなかった。

とにかく、サイドに起点を作り、そこで関係性を築くのが1つの形。アーセナルとか岡田ジャパンにような異常なほどのサイドでの密集は作られなかったけど、サイドのボールに対して、近づくランニングと遠ざかるランニングの組み合わせは最低限行われた。1人が前のスペースへと飛び出し、別の1人はボールを受けに行くみたいな。そういう関係性は築けてたと思う。そのベースになるランニングは質も量もよかったんじゃないかなって気がする。何よりも内田と長友の上下動に拍手なんだけど。

さらに、サイドチェンジが多かったのも1つの特徴だったと思う。得点シーンもサイドチェンジからの流れだけど、多く見られたのはもっと低い位置でのサイドチェンジ。ハーフェイライン付近でサイドを変えるやり方。特に左から右へ。左から右へと大きくサイドを変えて、そのまま内田を縦に向かわせるみたいな形が多かった。逆に右から左の質の場合は一気にゴールに直結するような質が多くなったと思う。ドリブルでも行ける内田には低い位置でボールを持たせて前に向かわせ、縦の動きが素晴らしい長友は長い距離を走って深い位置まで行かせるって形か。

そして、このサイドチェンジの多さはオーストラリアの守備との関係性も大きかったと思う。オーストラリアは典型的な4‐4‐2。3ラインをコンパクトに形成して受ける形。2トップは上にも書いたように日本のボランチを見るような場所にいて、真ん中→真ん中のコースを切る。仕方がないので日本はサイドへ起点を作る。そうしたらオーストラリアの中盤はゆりかごの動き。ボールサイド肩上がりみたいな。日本が左に作ったら、オーストラリアの右SMFが対応に行き、残りの3枚が順次右にずれる。結果として逆サイドにスペースができる。ハーフェイライン付近のサイドチェンジは、この逆サイドのスペースを利用する意図があったと思う。

そんなわけでサイドを起点としながら、なんとか敵陣内に入り込むことができた日本。その中である程度の形を作れたのも事実。でも、全く楽観視できないのもまた事実。なぜならば、今回はオーストラリアに助けられた部分があまりにも大きかったから。日本がSBを利用できたのは、日本が何かを工夫したからじゃない。SBが何の苦労もなく浮くことができてたからだった。オーストラリアの日本のSBに対する対応があまりにも甘かったから。

本当に浮きまくりの日本のSB。本田圭が降りてきて内田と上下を入れ替えたりするとそれは決定的だった。降りていった本田圭にオーストラリアのSMFが引っ張り出される。よってSBが浮く。ただ、それだけの話。もっと言えば、そうやって浮いたSBにボールが入ると、その対応をするために相手のSBが引っ張り出される。よって、サイドのウラにスペースができる。後半の日本はそのスペースを利用するような動きも見せてた印象。

さて、果たして本大会でもこれほど簡単にSBが浮くことができるのか。それが問題。個人的には無理だと思う。今回のオーストラリアみたいにSBがボールを持ってもあまりプレッシャーに行かないっていうチームはないと思う。日本があまり工夫をしてないだけになおさら。そもそも、今回みたいに日本のSBがあんなに高い位置を採れるかってのが甚だ疑問。相手を考えたら厳しいはず。そうなると暗黒日本の再来か。全くボールを前線に送り込めず、焦れて、工夫なく意図の薄いボールを前線に入れて、結果として相手に引っ掛けられる。そんな繰り返しが浮かんでくる。今回も片鱗が見えたのは上にも書いたとおり。

ちなみに、オーストラリアはこのSBへの対応をきっちりとしてきたらかなりいい守備の内容になったんじゃないかって気がする。4‐4‐2の3ラインがバランスよく配置され、ボールの場所によって前後左右にブロックを的確に移動する。日本がSB以外の場所から敵陣内に入るシーンは恐ろしく少なかったと思うし。四戦1失点は伊達じゃない。だからこそ、ただ一点をルーズにしたことがかなり目立つ結果になってしまった印象。

そんなわけでサイド以外からはなかなか敵陣内に入ることができなかった日本。ここまで書いてきたように、結果としてサイドに起点を作れたから内容としては悪くはなかったけど、じゃあそれだけでいいのかっていう問題も感じさせられた。だからこそ、後半にさらに出し手を減らしてきたときはどうしようかと思ったし(4‐1‐4‐1で相手のウィークポイントのサイドを強化してきたのかもしれないけど)、せっかく入った梶山がなぜか受け手に回った時もどうしようかと思った。

そして、何度も書くようにサイドが今回のように好き勝手に使えるとは思えない。そうなったときに日本はどうするべきか。カメルーン戦の6‐4方式を使うってのが1つの案。もう1つは守備からの流れで攻撃をするっていうこと。そして、その守備からの攻撃には可能性を感じさせられた。実はまだ未完成だと思うけど。ベースとなる守備には良さを感じたけど、そのつながりの攻撃がまだまだっていう意味で。いい場所で奪った後の周囲の反応が鈍くて、飛びだしが遅く、効果的にカウンターを仕掛けられない問題。

それでもベースの守備がうまく行ってるのはかなりの収穫だと思う。このチームはもともと守備が堅いって言われてたけど、それにはいくつもの変遷があった。チーム立ち上げ当初は前線からの攻撃的な守備が見られたんだけど、いつの間にか根性ベースのラストブロックでの跳ね返しが多くなってたと思う。それがここにきて再び戦術的に整理されているような印象を受ける。これは本大会に向けてかなりの意味を持ってくるように思う。

日本の守備ブロックは4‐2‐3‐1。実は相手の4‐4‐2に合わせて細貝が1つ前に出て来る4‐1‐4‐1っぽい形になることが多かった。その組織を作るのがスタート。相手のCBにはある程度自由にボールを持たせて置くけど、このときに真ん中→真ん中のコースをしっかりと切ってる。両SMFを絞ることで中盤にフィルターを作っていたと思う。そして、本格的な守備のスタートは相手が1つ前に入れてきたとき。ここで原則になるのがゴールに向かう相手の選択肢を切ること。相手のボランチに対しては縦を切って当たるし、相手のSBに対しては中から当たることで真ん中へのコースを消す。そうやって制限をかけておいて、次の場所をしっかりと狙う。

ここでオーストラリアの攻撃を確認。オーストラリアの攻撃はFW、特にトンプソンに収めるってことが重要な意味合いを持っていた。前線で超自由に動き回るトンプソンがボールを引き出す。日本は途中からここに対して本田拓を当てたわけだけど。とにかく、そんなトンプソンに収まったところで後ろから一気に選手が飛び出してくる。そういう飛び出しを利用して厚みを加え、少ないタッチでパスを回していく。つまり、トップに入れるのが攻撃の絶対的なスタートになってるって言える。

日本の守備はここを切った。真ん中への縦パスを切るのが大原則になっているわけだから、オーストラリアはそう簡単に攻撃のスタートを切ることができない。そして、オーストラリアの攻撃の最初の場所は日本に負けず劣らず工夫があまり見られなかった。みんなが個々で縦を狙い、無理なら横とか後ろに出すみたいな。そんな横パス、バックパスに対して、日本の選手が一気に守備のスイッチを入れて前線に向かって追いかけ回すシーンが目立ったと思う。

なかなか縦パスを入れられないオーストラリアの選手。当然のように個々の保持時間が延びる。そんな中で日本の中盤の厳しいチェックに対してボールを失うシーンが目立った。それを防ぐために横とか後ろに逃げれば、上に書いたようにさらに激しいプレッシャーを受ける。無理やり縦パスを出そうとすれば、前線に制限に対してしっかりと連動してる日本の選手に奪われる。結果として日本が中盤で奪うシーンが目立った印象。最短を切りながら徐々に追い込んでいく日本の守備の質の高さが目立った。

さて、そんな日本の守備に対して前半は全く何もできなかったオーストラリア。低い位置での無為な保持時間が延びていた。でも、後半はしっかりと修正を加えてきたと思う。それは縦パスの放棄。前半はあれだけこだわっていた縦パスを放棄した。その代わりに利用したのが横パス。前半は縦に入れる→押し上げて関係を作るっていう流れの中で第一目標は少ない手数でゴールに向かうことだったけど、それが無理なら広い場所広い場所を迂回するっていうやり方も見られたオーストラリア。その広い場所広い場所ってのを前面に押し出してきたのが後半の流れだったと思う。

日本としても最短距離は絶対的に切っていても、迂回するような場所にまでは手が回りきってない。当たり前と言えば当たり前。だから、横横につなぐオーストラリアのパスはそれなりに回っていた。そして、そんな横パスの中から日本が狙う縦パスが出てこない。ある程度になったらゴール前に放り込むシーンが目立った。よって日本は思惑通りに中盤で奪えるシーンが少なくなった印象。だからと言って、危ないシーンが増えたわけでもなかったけど。

結果は2‐1の逆転勝利。得点の時間帯を見ても勝負強さを見せたのは収穫かなって思う。さて、次のアルゼンチン戦でどれだけやれるのか。守備は今回のやり方を継続させ、成熟させていけばいいと思う。ちょっと触れたように、その守備からの切り替えがスムーズになればさらによし。攻撃は考えなければいけないだろうなって思う。今回のやり方ではおそらく失敗する。
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2008-07-16 Wed 15:52
リベルタドーレス杯決勝(第2戦):フルミネンセ×キト
<フルミネンセ:4-2-2-2>
FW:ワシントン-シセロ
MF:コンカ-チアゴ・ネービス、アロウカ-イーゴル
DF:ジュリオール・セーザル-チアゴ・シウバ-ルイス・アウベルト-ガブリエウ
GK:フェルナンド・エンリケ

<キト:4-2-3-1>
FW:ビエレル
MF:ボラーニョス-マンソ-ゲロン、ウルディア-ベラ
DF:アンブロッシ-カンポス-Nアラウーホ-カジェ
GK:セバージョス

あまり見ないような試合になった。最初の最初から延長戦じゃないのかっていうレベルに両チームがスカスカ状態。よって攻撃側は簡単にボールを前に運べた。ドリブルで持ちあがるにしろ、長めのパスにしろ、何のプレッシャーも縦に進むことができる状況。守備側がどうぞどうぞって手まねきしてるんじゃないかっていうぐらいに、障壁が一切なかったと思う。そして、両チームが同じような形。よって最初から攻め合い、カウンターのかけあいっていう特異な試合展開になった。

なんでそんなことが起こったのか。その理由は両チームの守備意識の低さ。正確に言えば攻撃からの切り替えの意識の低さ。相手にボールが渡った瞬間に、そのボールが自分の前にあればどちらのチームの選手も最低限の切り替えの守備は行ってた。でも、自分の後ろにボールがあるとき、要するに自分の場所までボールが来る前に奪われた時は知らんぷり。そして、何よりも悪かったのは、そんな知らん振りの選手がずっと知らんぷりを決め込んだこと。切り替えでボールに対してプレッシャーをかけないだけでなく、素早く戻って組織を作ろうとする意識が皆無。これが特異な状況の発端。

例えばキトの先制点。ボールを奪ったキトの選手が単純に前線に蹴りだしたところがスタートだった。単純に言っちゃえば縦への意識が高かったキトが相手の組織が作られる前に攻めきったことによって生まれたこの得点。でも、実はキトが相手が組織を作る前に攻めきったというよりも、フルミネンセの方に組織を作る意図がなかったって言った方が妥当だったと思う。実際に前線でボールを受けたゲロンは結構手間取ってた。だから、受けた後に一気に攻めきれずに時間がかかってしまった。でも、その間にフルミネンセの中盤の選手が全く画面に戻ってこない。DFだけの対応が続く。そのフルミネンセのDFラインの1つ下で待ってたボラーニョスがゴールを決めたシーンだった。

キトの守備も似たようなもの。立ち上がりのフルミネンセのチャンスはほとんどがキトの選手たちの切り替えの守備の怠慢によってもたらされた。ボールを奪ったフルミネンセの選手は広大なスペースをドリブルで突き進み、ある程度になったらワシントンに縦パスを入れる。その間に後ろが上がってきて厚みを加える。そういうフルミネンセの選手の後ろからの飛び出しに合わせて、やっと前線の選手が戻ってくるような形が目立ったと思う。いくらなんでも遅過ぎやしないかっていう。

そして、これには裏の意味も隠されていた。前線の選手が守備になかなか戻ってこない。つまり、攻め残ってる選手が多い。だから、後ろの選手だけでボールを奪うことができれば、攻撃の人数は多いってことになる。結果としてカウンターに効果的に人数をかけられる。そして、そのカウンターに対して守備側の選手は戻らない。攻め残ってる。そんな繰り返しによって、立ち上がりから攻め合い、カウンターのかけあいっていうような試合展開が生まれたように思う。

さて、そんな流れの中で先制点を奪ったのがキト。上に書いたような立ち上がりの展開を象徴するような流れで前半の5分過ぎにあっさりと先制。ホームで先制点を許したフルミネンセ。しかも、この失点によって2戦合計2‐5の超苦しい立場に追い込まれたことになる。よって、守備なんて気にしてられないよっていう攻撃が展開されることとなった印象。両SBをSMFみたいな役割で超高い位置に押し上げて、攻撃に人数をかけるような体制を作り出した。

キトとしては願ってもない流れ。先制点の流れでも分かるとおり、立場上(アウェーである、合計スコアでリードしてる)守ってカウンターってのが念頭にあったキト。しかも、後で書くように遅攻が全く機能してなかったっていう事情もあった。よって相手が出てきてくれればキトとしては恐ろしくやりやすくなる。守りをベースにしておいて、奪った後にカウンターを仕掛ければいい。前がかりの相手のウラには広大なスペースがあるわけだし。

実際にキトの考え方はこの通りだったと思う。でも、それが機能したかどうかって言われれば別問題。守ってからの攻撃。確かに攻撃の方は強力な両サイドを中心の前の選手たちだけで行ける力は持ってたと思う。何度も書いてるとおり相手が前がかりで後ろが薄くなってたわけだし。でも、その攻撃の前段階の守備がうまく回ってなかった。いくら攻撃が機能する下地があるとはいっても、その前段階の守備ができてなければ攻撃につなげられない。守りに入ってるのに守れてないのが今回のキトの大問題だった気がした。

キトの守備はチームとしてのやり方が全く明確ではなかった印象。前線の2枚が積極的に相手の低い位置のボール保持者に対してプレッシャーをかける。でも、それがスタートではない。前の2人はその2人だけで奪えればラッキーみたいなイメージだったと思う。中盤以降は全くついてきてなかった。というわけで、あっさりとMF-FWの間に入られるシーンが多発。実は前の2人の守備で相手のミスを誘うシーンも多かったことは多かったわけだけど。

とにかく、実質的な守備のスタートは中盤に任されることになったキト。でも、その中盤の場所もはっきりしない。そもそも最初に書いたように組織作りが遅いっていう大問題があったから、念頭にある4-4ブロックも全く作れない状況。サイドの一方が戻ってきてなくて、中盤が3枚なんていうシーンが多発してた。そして、そんなバランスの取れてない中盤の選手たちもなんとなく相手のボールをプレッシャーをかけて行く。なんとなくボールサイドに寄っていく。チームとしてというよりも、個が分断してたイメージの方が強い。フルミネンセとしてはブラジルのチームをなめるなよっていう話。相手の単発プレッシャーをあっさりと外すシーンが多くなった。

結果として最後の砦はDFライン。守りをベースにしてるはずなのにDFが晒されるっていう意味不明な状況。当然のようにあっさりと同点ゴールを奪われることになった。そのシーンはまさにここまで書いてきたとおり。フルミネンセの中盤のボール保持に対して全く守備のスタートが定められず、なんとなく当たったところを外され、DFだけになったところへミドルシュートを食らったシーン。

ちなみにサイドの砦のDFラインもかなり脆かった。フルミネンセのFWへの縦パス、これに対してはしっかりと対応する意識が見られた(ファールなんじゃないかっていうレベルに厳しく)けど、それ以外は超危険。下がって受ける相手には対応できても、DFとDFの間に入られたり、ウラに抜けたりっていう相手に全く対応できてない状況。2失点目もスローインからあっさりとウラに入られたシーンだったし。

それと比べるとフルミネンセの組織を作った時の守備は整理がされていたように思う。まあ、ここまで書いてきたとおり、そもそも組織を作るのが遅いっていう大問題があったのも事実ではあるけど。そんなフルミネンセの守備のベースは受け手への対応。縦パスが入ってきたところで、しっかりとプレッシャーをかけ、前を向かせないってのが1つ1つの守備のベース。そうやって相手を足止めしたところで上下で挟み込むみたいな対応もできてたと思う。

ただし、これが機能したのはキトの攻撃があまりにも単純だったからってのもあると思う。実効性はともかく、守備への意識が高いキトは自分たちがボールを保持していたとしてもあまり攻撃に人数をかけてこなかった。だから、フルミネンセの守備が狙いどころと定める受け手の選択肢が少なかったって言える。そして、その受け手があまり動かない。待っていて、足元でボールを受けようとする。さらに言えばキトの攻め方にかなりの偏りがあったってのもある。ますますフルミネンセとしては狙いやすい状況につながった。

キトはサイドから攻め込もうっていう意図が強かった印象。攻撃の中心はゲロンとボラーニョスのSMFだった。その2人にボールを送っておいて、収まったところでSBとボランチが絡んでサイドに数的優位を作ろうっていう意図が見られたと思う。でも、そのSMFも例外なく待っていて足元で受けようとする。さらに言えばフルミネンセの方も(たぶん1戦目の経験から)相手のサイドを押さえる意識を強く持ってきた。SBが相手SMFに密着して入りどころにすぐに対応する体制を整えてたし、足止めした瞬間に挟み込む意識も高くなってた。よってキトとしては狙い通りにサイドに起点を作れない状況。それでも工夫のない単純なボールを送り続け、そのたびに奪われるっていう繰り返し。遅攻がうまく行かなかったってのはここから来てる。

対するフルミネンセの攻撃はどうだったかって言われると、そちらも特別の質が高かったとは言えない内容だった。キトと同じく待ってる選手待ってる選手の足元足元を狙うような攻撃。どちらのチームも2人目、3人目の動きなんてものはほとんど見られなかった。それでもフルミネンセの方がキトよりも攻撃に人数をかけた分、組織を作った時のキトの守備がフルミネンセのように整理されてなかった分、フルミネンセの方がゴールの近くまで迫るシーンを増やしてた印象。

そんなフルミネンセの攻撃。2トップはゴールまで待ってる存在。ボランチの2枚は低い位置で出し手となる存在。サイドは両SB。そこはほぼ固定的だったように思う。そんなチームの中で唯一自由度が高かったのがチアゴ・ネービスとコンカのOMF2枚。特にチアゴ・ネービスは自由に動き回ってボールタッチを増やしまくってた。チームの中心。ただ、そんな2人の役割も固定気味。1枚がFWになり、1枚がボランチになるみたいな形。2トップ+OMFの1枚が受け手、ボランチの2枚+OMFのもう1枚が出し手。そんな形のフルミネンセの攻撃だった。受け手は完全に待ちの体制になってたのが特徴的だったと思う。

そんな単純なやり方でもゴールに迫れるシーンが多くなるほどにキトの守備にはまずさがあったってこと。フルミネンセの中盤の選手がSBも交えながらボールを動かしていると、あっさりとキトの守備ブロックに隙間ができた。右で作って左みたいな展開は例外なくフリーな選手を作り出した。そんな隙間だらけのキトの守備ブロックだから縦パスを入れるのも簡単。普通は通らないような中距離の、しかも中→中の縦パスが通りまくり。そうやって通ったら、前の3人の関係性で崩しにかかってた印象。崩しにかかるっていってもトップに当てる→落とす→シュートみたいな単純なやり方ばかりだったけど。ちなみに、たまに低い位置から1発でトップに当てる→落とす→シュートみたいな展開も作ってた。この流れでシュートに行けるシーンが多かったのもキトのまずさ。DFと中盤の関係が希薄だから、競り合ったボールが相手に渡ってしまう。

ただし、上にも書いたとおり、やっぱりフルミネンセの攻撃は単純だった。だから、キトが守備に修正を加えてきた後半は攻めの形が一気に作れなくなってしまったと思う。キトの守備の修正が劇的だったとも思えないのに。やっぱり相手の守備のまずさのおかげで攻撃が組み立てられてたんだなっていうのがバレてしまった後半のフルミネンセ。FKで効率的に得点を奪えてよかったねっていう話。

そんなキトの修正。守備から攻撃っていう形を再確認してきた印象。前半も守備から攻撃っていう形でやってはいたんだけど、守備をすべき時に早々と攻撃の方に気持ちが行ってしまう選手が多かった。それがブロックへの戻りが遅いことにつながったんだと思う。だから、その部分にメス。守備が最初で攻撃がそのあとっていうことをはっきりしてきた印象。とにかく、4‐4‐2のバランスのいい守備ブロックを作るっていうことが最初の目標になってた印象。ラスト45分だから選手たちも守備への意識が高まってたかもしれない。

そんなちょっとした修正だけで本当に修正できちゃうから面白い。4‐4‐2をしっかりと作っただけで、他の部分はあまり変化したようには見えなかったのに、相手はブロック内に入り込むことができなくなった。でも、その代償としてキトは攻撃の術を失った。今度はみんな守備に入ってしまう状況の中でカウンターが全く消える。もうカウンターすらもしなくていいっていう指示が出たのか、それとも守備に意識を向けたら攻撃ができなくなってしまったのか。どちらにしても不器用なチームなんだろうなっていう印象を受けた。

そんな不器用なチームがCWCでは器用なマンUと対戦するわけか。今回の試合を見る限りではキトが勝つのはかなり厳しいでしょう。というか、厳しいことを言っちゃうとなんでキトがここまで勝ち上がってきたのか分からない。遅攻はうまくなく、速攻はそのベースとなる守備がうまくない。チーム全体の守備の意識の低さは大問題。マンUで言えば、全員Cロナウドみたいな。攻めたまま戻ってこない。だからと言って、Cロナウドほどの攻撃力もない。しかも、攻撃の中心になってたゲロンは移籍してしまうらしく。12月には悲惨な結果が待ってるかもしれない。

というわけでキトがどれだけイメチェンをして日本に来るかがポイント。イメチェンをしなければあっさりと初戦敗退もありうる。これはJのクラブはチャンスだぞっていう。その前にACLを勝ちあがらなければいけないのか。どちらにしても北中米カリブのパチューカは本気でチャンスかもしれない。前に書いたとおり、パチューカのサッカーの質は本当に高い。去年のように自分たちのよさを全く出せないなんて言うことにならなければ、今のキトには勝てそう。
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2008-07-11 Fri 17:52
ヴェルディ×ジェフ
<ヴェルディ:4-4-2>
FW:平本-フッキ
MF:ディエゴ、大野-菅原-レアンドロ
DF:服部-那須-土屋-富澤
GK:土肥

<ジェフ:4-4-2>
FW:レイナウド-巻
MF:新居-下村-斎藤-工藤
DF:青木良-ボスナー-池田-坂本
GK:立石

開幕から超超低空飛行が続いたジェフ。仕方がないので監督を交代。新監督ミラー。ジェフに来る前はリバプールでヘッドコーチをしていた模様。すごいところから連れてくる力が未だジェフに残されてたんだねってとこか。とりあえず、監督交代後は結果を残しているジェフ。今回の試合の焦点はリバプールから引き抜いてきたジェフのサッカーがリバプール化するのか否かってことになった。個人的に。

結論から言っちゃえば非常にリバプール色が出てたって言える。そもそもシステムがフラット4‐4‐2だし。そう考えるとジェフってすごいチームなのかもしれない。半分は皮肉だけど。ちょっと前までは知っての通りオシムが監督をやってたジェフ。オシムはオールコートのマンマーク。それに対してリバプール的なミラーのやり方は完全なるゾーン。どんだけ真逆のやり方なんだよって話。一貫性ってものがないのかって話。今のジェフの選手が監督になったら、すごく戦術的に幅が出そうだなって思ったりもする。

とにかく、リバプール的な方向に進んでいる様子が見られたジェフ。ただし、今回の試合を見る限りではちょっと方向性を間違ってしまったんじゃないかっていう印象が強かった。確かにリバプールみたいに見えたのはリバプールみたいに見えた。でも、残念ながら1月の暗黒リバプールの雰囲気をかなり醸し出してたと思う。このままじゃ、まずいんじゃないのって内容が見られた今回のジェフだった。

ここでも何度も書いてきたけど、1月の暗黒リバプールについてちょっとおさらい。暗黒リバプールの問題は守備から生まれたもの。4‐4‐2のコンパクトブロックと前線からの守備で高い位置で引っ掛けるってのがリバプールの狙い。でも、その前線からの守備が機能しなくなった。FWが守備のスタート役を放棄したリバプール。でも、チーム全体に前線から守備をする意識は根強い。でもFWが守備をしない。仕方がないので中盤が守備のスタートとなる。中盤は守備のゴール=奪いどころになりたいのに守備のスタートも任される。

当然のようにどちらも中途半端になった。守備のスタートとなるためには中盤の選手がFWの場所まで出て行かなければならない。長い距離のプレッシャーをかけなければならない。相手にとっては大したプレッシャーにはならなかった。むしろ、その選手が中盤から引っ張り出された背後にスペースが生まれる。4‐4のコンパクトさが売りのリバプールの守備ブロックからそれが消滅。4‐4の間に入られても、中盤とDFが協力できない。DFが晒される。そんな危険なシーンが多く見られるようになった。

結果として高い位置でボールを奪うなんてのは夢のまた夢。4‐4の間に入られて、危ないと思った中盤がとにかく低い位置まで戻って。そんなわけでバランスがいいとは言えないベタ引きブロックでラストを固めることが多くなったリバプール。そういう守備でも何とか耐えきれるのがリバプールの強みと言えば強みだったかもしれない。狙いどおりの守備はできなくても、守備の大崩壊まではつながらなかった。

ただ、このことは攻撃へのつながりという意味では最悪。高い位置で奪ってからのショートカウンターが狙いのリバプール。奪ったらトップへ、トップに収めて後ろが飛び出す。これが合言葉。そして、守備が狙いどおりに効いてない状況においても、その合言葉は継続された。中盤以降が深い位置に押し込まれ、ボールを奪う位置も深い位置なのに、奪ったらトップを狙う。いくらなんでも遠すぎる。途中で引っ掛けられることが多い。たとえ入っても後ろが素早くフォローに行くのは難しい。結果、攻撃が全くできなくなる。縦へ縦への無謀な縦パスが続き、ことごとく引っ掛けられる。やろうとしてるのは4‐4‐2のコンパクト3ラインの設定と高い位置でのボールカットが前提にあるやり方なんだから当たり前。

そんな暗黒リバプールは4‐2‐3‐1へのシステム変更で状況を打開。FW=守備をしない人が2人もいたんじゃたまらないので1人に。トップ下にジェラードをハイツすることで縦へ縦への意識のワンクッションを置いた。そして、守備は前線からを捨てる。完全受動体制になり、入り手の方をしっかりとケアする意識を高めた。前から行こうとして中盤が引っ張り出され後ろがスカスカ。どちらにも重点を置けないそんなやり方だったら、最初から後ろに重点を置いた方がいいよねって形。疲れないし。結果として入ってきたところで挟み込み、囲い込むリバプールの守備の良さが見られるようになった。

さて、そろそろ試合の話に戻りたいと思う。最初に書いたように、今回のジェフは暗黒リバプールの雰囲気がぷんぷん。もしかして、本家リバプールの暗黒時代の責任はミラーにあったんじゃないのか。ミラーはシステム変更前のリバプールのやり方を追求したかったんじゃないのか。だから、あっさりとリバプールは手放したんじゃないのか。そしてミラーはジェフでシステム変更前のリバプールのやり方を継続する。たぶん、考え過ぎだと思う。

ジェフのシステムはフラット4‐4‐2。その4‐4‐2をセットしたところから守備がスタート。2トップは前線から相手を追いかけ回しそうな場所にいる。でも、実際は追いかけない。気まぐれ。2人が縦関係になったりもするけど、それも気まぐれ。巻のくせに守備をしないなんて生意気な。とにかく、2トップが有機的に守備をする意識がほとんど見られなかったのが立ち上がりのジェフだった。リバプールと同じくこれが崩壊への序章となる。

4‐4‐2の2トップは前線から追いかけそうな位置にいる。要するに敵陣の深い位置にいる。本当は後ろの4‐4もそれについて行きたいところ。そうやって高い位置から連動性の高い守備をしたいところ。でも、2トップは実際には守備をしない。守備のスタートが切られない。結果として中盤以降が前に出て行けない。4‐4‐2のコンパクト3ライン計画は幻に終わる。4‐2の間にスペースができてしまった印象。せめてコンスタントに2トップが縦になってれば押さえられただろうに。

結果として相手のボランチが4‐2の間で浮きまくり。ジェフの中盤が板挟み。前に対してプレッシャーに行かなければならない。後ろとの関係でバイタルを潰さなければならない。そして、どちらもあいまいになってしまう。まさに暗黒リバプールパターン。中盤の役割が中途半端になったおかげで、ヴェルディは楔のパスを収めまくり。ジェフの中盤はフィルターになれなかったし、縦パスが入っても前後で協力して潰すことができなかった。

加えて、リバプールほどの成熟度がないジェフ。新監督が就任して日が経ってないんだから当たり前と言えば当たり前。結果として2トップの守備意識がどうこうっていう以前の問題として、後ろの4‐4の関係性にまずさがあったと思う。例えば、今回の試合で前線への守備を一番頑張ってた右サイドの工藤。マッチアップする相手の左SB服部に対して積極的にプレッシャーをかけて行った。でも、誰も後ろがついてこない。服部から大野に入る縦パスのところでさえも簡単に通してしまうレベル。せっかく工藤が頑張ってるのに、次の受け手を誰も押さえていない。工藤の頑張りは文字どおり無駄な守備に終わることが多かったと思う。かわいそうに。

そんなわけでヴェルディはとっても簡単に攻撃の組み立てをすることができたと思う。そもそもヴェルディの攻撃のイメージはDF→FW→中盤って形。これはJ2にいた昨シーズンから一貫して変わらない。今年もグランパス戦ではそういうやり方だった。要するにDFから単純に前線に当てる。その3人で攻めきれれば攻めきっちゃう。少々強引でも。最低でも個々の技術を生かして少ない人数でキープして時間を作る。その間に後ろが押し上げる。そうなって初めて中盤で組み立てる。そんな攻撃の形が多く見られるチームだったはず。でも、今回のヴェルディは違ってた。DF→MF→FWっていうように低い位置から徐々に前線に向かっていくっていう形のビルドアップが見られたと思う。そして、その要因はここまで書いてきたジェフの守備のまずさにあった。

2トップが守備をしないジェフ。よってヴェルディのDFは自由にボールを保持できた。さらに、4‐2の間に隙間ができてるジェフの守備ブロック。その間でアンカーの場所に入った菅原が自由にボールを扱いまくり。菅原の自由度は尋常じゃなかった。ジェフはヴェルディの攻撃のスタートを全く押さえられてなかったと思う。さらに、その相手の4‐2の間から1つ前に入れるのも楽。ジェフの4‐4のまずさは上にも書いたとおり。くさびが収まりまくったってのも上にも書いたとおり。

そんなジェフの守備のまずさとともにヴェルディの攻撃の良さが見られたのも事実だった。ヴェルディの攻撃の中心はよくも悪くもブラジル人の3人、フッキ&ディエゴ&レアンドロ。今回の試合で判明した、この3人の特徴はボールが大好きってこと。みんなボールを受けようと近づくランニングを増やしてた。フッキは中盤の場所でのプレー時間が長かったし、ディエゴは菅原と横並びになるような場所でのボールタッチが目立った。レアンドロも右サイドに居座らずに動きを増やしていた印象。ちなみに、そんな近づくブラジル人トリオとバランスを取るように平本は徹底して遠ざかるランニングでボールを引き出してた。これが何気にいい効果を生んでたように思う。

結果としてボールの近くに多くの選択肢が生まれることとなる。近い関係性のトライアングルが常にできてるイメージ。ついでに言えば、サイドはSBが専属として担当するから、中盤の密集度がさらに上がっている。SBの攻撃参加によって1つ前に流動性が生み出されるっていう面も多々あると思う。右のレアンドロほどではなかったけど、左の大野も中寄りでプレーする時間が長かったと思う。

そうやって近い関係性を作り上げることでスムーズなパス回しが可能になるヴェルディ。大きな展開が少ないかなっていう部分がなかったとは言えないけど。それでも少ないタッチで次々と局面を変えて行くパス回しは素晴らしかった。そして、そんなパス回しを可能にする条件がもう1つ。それはパスを出した選手が次に出てくっていう原則が徹底してるってこと。強制的に生み出された近さに基本的なパス&ゴーを組み合わせることによって、攻撃の選択肢をさらに増やしていった。もちろん、ブラジル人トリオの個々の突破っていう選択肢もあるわけだし。

この基本的なパス&ゴーの原則。特に縦パスが入った時には徹底していたと思う。その徹底によって何が起こるのかってのがポイント。縦に入れるたびに、同時に前線に選手が出て行く。そんな繰り返し。結果として組み立てを行ったときのヴェルディのゴール前にはかなり多くの人数が陣取ってることになったと思う。前線の選手(特にブラジル人トリオ)の絶対的な収まりがベースにあるかなって思う。縦パスは絶対に収めるし、そこでキープしてタメを作る。結果として後ろからの飛び出しの思い切りがよくなる。ゴール前に人数が増える。

ただし、そうなると不安なのが前線が渋滞しないかってこと。実際に前線が渋滞するレベルの人数が前に入ったのも事実。でも、今回のヴェルディにはそういう前線の渋滞状況は感じられなかった。その要因はトップの場所の出入りが激しいから。前に入ったとしてもボールが低い位置にあれば、ボール好きの選手たちは降りてきてボールを受けようとする。そこに収まったところでパス&ゴーの原則で別の選手が前に出て行く。人数が多くても、そこで待ってるって選手が少なかったと思う。

そもそもパス&ゴーを利用して狭いどころを打開してしまおうっていう試みも多かったし。仕掛けられずに保持時間ばかりが延びるっていう停滞感にはつながらなかった。だから、前線の選手が待っちゃうっていう形にはならなかったんだと思う。どうしても入り込めないならブロックの外からのシュートっていう選択肢もあったし。多くの人数が前線に入って相手をベタベタに押し込んどいて、前線に入らずに1つ下で様子を見ていたフリーのディエゴがミドルを打つっていうパターンが多く見られたと思う。

そんなヴェルディの守備にジェフはなすすべがなかった。何しろどこで守備の勝負をしていいのか分からない。守備のスタートがうまく切れない流れのままにズルズルと最後の場所にまで押し込まれるっていうシーンが多くなったと思う。守備のスタートが切れずに一応の単発守備が増えたジェフ。そんな単発守備ではヴェルディの個は押さえられない。2点目の前のシーンでフッキにどれだけ引っ張られてるんだって話。3人も4人もかけても守れないのに1人で守れるわけがない。簡単に起点を作られてしまう。そして、起点を作ったヴェルディは質の高い守備で次々に局面を変えて行く。ますます狙いどころがなかった。

結果として当初の狙いが機能せずボールが奪う位置が深くなる。これだってヴェルディが最後の最後を個の強引なシュートなりドリブルなりで終わらせてくれたからっていう側面が大きいわけで。どちらにしても中盤で奪うなんていうシーンはほとんど作れなかったジェフ。それでもジェフの狙いは奪って速攻。そのベースは高い位置で奪うことにあるはずなのに、守備が狙いどおりに決まらなくても、そちらの攻撃のやり方は継続されたと思う。暗黒リバプールパターン。

暗黒リバプールと同じくジェフの狙いはトップに当てること。全体がコンパクトな形を維持できてた立ち上がりの時間帯は巻、レアンドロに入れるボールがそれなりに通ってたし、そこに対して新居が絡むなんていうシーンも増やしてた。でも、守備の劣勢がはっきりしてからは徐々にいい形を作れなくなっていく。距離が遠いからトップに入らない、入っても次に絡む選手がいない。守備から攻撃への切り替えがスムーズにできない状況に陥ったジェフ。ヴェルディの攻撃時間が延びることになったと思う。まさに暗黒リバプール。

そんなジェフだけど実は途中で守備を修正してた。具体的に何分ぐらいってのは分からない。なぜかというと、日テレの放送がカットされたから。前半の15分ぐらいにCMに入り、CM明けには驚きの30分。そのCM明けの時点ではすでにジェフの守備が修正されてた。そのCM中に何があったんだっていう話。とにかく、その後はそれまでのようにヴェルディが好きなように攻めまくるっていう流れにはならなかったと思う。

ジェフの修正は2トップをブロックに参加させること。どうせ追いかけないなら、そんなに高い位置にいたって仕方がないでしょってこと。相手のDFへの守備は捨てて、トップはそれまで浮きまくってた相手のボランチを見るようになったと思う。結果としてヴェルディは攻撃のスタートのところを浮かすことができなくなった。同時に当然のように不安の4‐2の距離も縮まる。よって中盤は下手に前に引っ張り出されない。4‐4の関係もよくなる。4‐4‐2の一体感が増したことで、その後のヴェルディはほとんど縦パスを入れられない状況になった。

ちなみにブロックに収まっただけでも、かなりの改善だったFWの2枚だけど、全体の一体感が増すのにつられて能動的に守備の仕事にも参加するようになってた。例えばかわいそうな工藤のところ。それまでは工藤が服部にプレッシャーをかけても、周囲の選手は知らん振り。そこに変化が生まれた。工藤がプレッシャーに行ったところで、FWの1枚がCBへ戻すコースに入る。同時にFWの相方が縦っぽい関係になって相手のボランチへの横パスのコースを消す。そんな連動性が見られるようになったと思う。

でも、これはやっぱり妥協の産物だったんじゃないかなってのも確か。なぜならば巻の交代以後は前線からの守備が復活したから。それは青木孝の投入で質の高いものへとつながった。レイナウドが嘘みたいに守備で目立ってくるから面白い。FWの前線からの追いかけ回しに後ろがしっかりとついてきて、中盤で数的優位を作るシーンを増やしていった。効果的な場所で奪えるシーンも多くなった。もちろん負けてる状況で引いちゃいられないっていう要因があったのも確かだと思う。でも、代表に行ってた巻はまだこのチームのやり方にフィットしてないのかなってう印象。

とにもかくにも知らないうちの守備の修正によってヴェルディの攻撃の流れが停滞したのは確か。そんなヴェルディのチャンスはカウンターからのもとへとシフトしていった。その背後にはジェフの守備が改善したとしても、攻撃のやり方が本質的には変わらなかったっていうことがあったと思う。相変わらず相手にとっては守りやすいトップトップの攻撃。守備の質が改善したことで、トップに収まった時には再び人数をかけられるシーンを作れたけど、そもそもトップに入らなければ意味がない。そして、相手だってジェフがFWに入れてくることは知っていた。それにジェフのパスの精度自体も高くはなかった。

そして、そうやってFWへのパスをカットされるとジェフにとっては最悪の状況に陥る。FWに当てたところに押し上げた後ろが絡みたいジェフ。だから、前にボールを出した時点で押し上げは開始している。カットされた時点では押し上げ途中。そんなバランスが崩れた状態のブロックにカウンターを仕掛けられるっていうシーンが多発。相手が個の技術を持っているだけに厄介で仕方がない。1失点目もそんな流れからだったし。ヴェルディはこのカウンター作戦でチャンスを量産していった。組織で受けるブロックは修正したジェフもこれでは意味がない。

最後にジェフが組み立てを行わなかったからあまり見られなかったヴェルディの守備についても見てみたい。グランパス戦でも見られたけど、基本的にヴェルディの守備の質は高いと思う。ブロックは単純に4‐3‐1‐2。グランパス戦ではトップ下を1つ前に押し上げて4‐3‐3みたいな形を作ってたけど、今回はそういうやり方は採ってこなかったと思う。2トップはジェフと同じく気まぐれ(平本は結構頑張ってたし、フッキも思ったよりも守備をしてたけど)だから、実質的に守備は中盤から始めることとなる。

真ん中へのコースは4‐3で押さえる。もっと言えばトップ下のディエゴも参加して、真ん中→真ん中への単純なパスは通させない。仕方がないから相手はサイドに出すことになる。そうしたら中盤のひし形の4をボールサイドに寄せる。そうやってボールサイドに人数を増やす。同時に相手のSBに対しては2トップの一角がついていたようないなかったような。ここは確定的だったかどうかは微妙。とにかく、サイドの局面でも数的優位を作るのは守備側のヴェルディだった。真ん中を通させず、サイドも押さえる。グランパス戦でも見られた守備が今回も継続してできてた印象。ただ、時たま信じられないほどに戻りが遅かったことがあったんだけど、あれは何なんだろうか。

さて、今回のジェフが本来のジェフなのか。それが問題。とりあえず、監督が交代してからは結果を残してたのは事実。でも、今回の内容ではその片鱗が見えなかったのも確か。巻がフィットすればちょっと違った内容になるのか。今回の巻は守備で目立たず攻撃で目立つっていう巻らしくない状況だったし。まあFW的といえばFW的ではある。巻に限らずあまりの方向転換にまだチームの形が定まってないのかなっていう印象は受けた。

対するヴェルディは攻守の質が高い。グランパス戦もそうだったけど、たまたま質の高い試合ばかりを見てるのか、それとも継続して質が高いのか。ブラジル人をうまく中心にしてたと思う。中盤の降りるフッキとウラを狙い続ける大黒の関係は実はいいものかもしれない。平本もウラを狙い続けてたし、交代の飯尾もウラを狙い続けてた。そして、チャンスを作りまくった。相手がフッキに引っ張られて前への意識を強めたときに大黒が抜け出すチャンスが生まれるかもしれない。
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2008-07-08 Tue 15:19
スペイン×アメリカ
<スペイン:4-1-4-1>
FW:トーレス
MF:シルバ-シャビ-セスク-カソルラ、Xアロンソ
DF:カプテビジャ-マルチェナ-プジョール-セルヒオ・ラモス
GK:カシージャス

<アメリカ:4-4-2>
FW:アドゥ-ジョンソン
MF:ルイス-エドゥ-マイケル・ブラットリー-デンプシー
DF:ピアーズ-ボカネグラ-オニェウ-チェルンドロ
GK:ハワード

アメリカの守備。この試合のアメリカの守備は超がつく積極的な形。守備のスタートは2トップ。1枚が相手の最終ラインにプレッシャーをかけ、もう1枚が相手の中盤の底を押さえる。流れの中で受け渡しながら、うまく与えられた役割をこなしていたように思う。そして、ここで特徴的なのが相手の最終ラインを少しも自由にさせないっていうこと。組織を作ってある程度のところから守備を開始するっていうやり方ではなくて、敵陣ゴール前の相手に対してもプレッシャーをかけて行った。最前線からのリミッターのない守備。

少しも余裕を与えてもらえないスペインの最終ラインはどうなるか。EUROのイタリア戦を思い出せばそれが分かる。ちなみに、このアメリカ戦はEURO前の試合だったけど。とにかく、イタリアはスペインの最終ラインを深い位置に釘づけにするようにトニを当ててきた。トニがこの大会で唯一守備面で貢献した試合。これによってスペインの最終ラインは持ちあがれなくなり、中盤が助けるために低い位置まで降りてくる時間が長くなった。結果として後ろにばかり人数が溜まって前線にボールを送り込めない状況。

今回のアメリカ戦でも基本的には同じことが起こった。しかも、イタリアよりもアメリカの方が前線の守備の本気度が高い。イタリアの守備はあくまでも後ろに重心が置かれてるものだったし、トニの守備だって、あくまでも持ち上がらせない質のもので、前線から奪いに行く質のものではなかった。だから、最終ラインが持ちあがれない問題は結構あっさりと解決した(その次でとっても手こずったわけだけど)。それに対して、今回のアメリカは本気で前線から奪いに来てる。2トップは追いかけ回してたし、後ろもついてきてた。スペインにとっては攻撃のスタートの場所がかなり窮屈になってた気がする。

そんなわけで当然のように前線の選手が降りてきて助けるスペイン。シャビは低い位置でのプレー時間の方が長かったぐらいのレベル。前半は。セスクも降りてきまくり。そして、シャビ&セスクの真ん中の2人が低い位置に降りて行くと、それに引っ張られる形で両サイドのカソルラとシルバも低い位置に降りて行く。みんなが自陣に戻ってしまったスペイン。相手ゴールまでの遠い遠い道のり。かなり絶望的な低い位置の飽和状態だったように思う。

アメリカの方としては、これによって、さらに守備の勢いが増す結果になった。そもそも上にも書いたように、前線から奪いに行く意識が見られたアメリカ。2トップの守備に対して中盤もしっかりとついて行く。中盤の4枚は余裕で敵陣内で守備をするレベル。だから、スペインのSBは相手のSMFに押さえられて自由度が低くなった。最終ラインが深い位置に横並びで釘づけにされたイメージ。シャビとかセスクが降りて行っても、そう簡単に自由にはさせてもらえなかった印象。

要するに、そもそものブロック作りの時点で4‐4‐2の4‐2は敵陣内に入るのがアメリカの守備。それに加えてスペインのSMFが下がっていったことで、それについて両SBも敵陣内に入るレベル。自陣は高いなんてもんじゃないレベルの2バックが完成。立ち上がりの時間帯はアメリカ陣内にアメリカの2バックとスペインのトーレスだけが残るなんてシーンも珍しいものではなかったと思う。

これでスペインは全く敵陣内に入れなくなった。味方が自陣にみんな溜まっちゃってるんだから当たり前。延々と自陣でのパス回しが続く。もっと言えば自陣の深い場所でのパス回しが続く。攻撃のスタートが切れない。そんな流れの中で何とか糸口となる縦パスを狙おうとしても、敵陣内に入っているのはトーレスのみ。いくらなんでも選択肢が少なすぎるって話。敵陣内に入り込む縦パスはあっさりと相手に引っ掛けられてしまった。

これに対するスペインの解決策。普通に考えれば蹴りまくり作戦が有効。相手は尋常じゃないレベルに浅い最終ライン。こちらの1トップはウラのスペースが大好きなトーレス。相手にリミッターなく追いかけ回されてる時点でロングボールの出し手がどうかって話だけど、低い位置で横横にパスを回しているうちに誰かしらが浮いてくる状況は当然のようにできた。そこからトーレスへ蹴っとけばチャンス量産の臭いがプンプン。そして、頭の上を越えられまくる相手はそのうちにブロックを下げるだろう。結果として組み立てをスムーズに行えるようになるはず。

でも、スペインは全くそういう攻撃をしなかった。やっぱりスペインの攻撃は意地でもパスパスパスで崩し切るようなものなんだろうと思う。EURO決勝のドイツ戦でも最初はつないで行こうとしてた。ただし、こちらの試合では途中で柔軟にやり方を変更。トーレストーレス攻撃、カウンターが主体となっていった。ここで思い出さなければならないのは、ドイツとの試合はEUROの決勝戦だったってこと。結果が絶対的に問われる決勝戦。それに対してアメリカ戦は親善試合。しかも、ホーム。蹴りまくり作戦は国民が許してくれないのか。結果よりも内容重視の戦い方だったかもしれない。

というわけで、アメリカの前線からの守備に対しても意地でもつなぐ方を目指したスペイン。これがうまく行ってしまうあたりはさすがスペインというところか。本当に自陣の一番深い位置から丹念にパスをつなぎながら相手ゴールまで向かっていくシーンが多くなっていった。ただし、それをどうやって行うのかが1つのポイントになってくる。そして、そんなパスパスでの崩しを可能にしたのはスペインの中盤の一種のあきらめだったように思う。

つなげどもつなげども相手ゴールは遠い。立ち上がりはまさにそんな状況だった。パスをいくらつないでも敵陣内に入れなかったってのは上にも書いたとおり。そこで焦れて縦パスを送り込もうとしたところを引っ掛けられる。だから、スペインは縦パスをあきらめた。自陣でパスが回るならばそれでもいいんじゃね?っていう話。下手にボールを失っても仕方がないから、とりあえず無謀なことはせずにパスを回そうっていうイメージ。敵陣内に入ろうっていう欲が徐々に減っていった。

もったいないことに自陣でのパス回しのクワトロ・フゴーネスを使ったスペイン。本当はイニエスタがいないからクワトロ・フゴーネスではないけど。それでも底に入ったXアロンソを含めて技術の高さには疑いがない。やろうと思えば相手ゴール前の超密集地帯を崩し切る力のある選手たちの組み合わせなんだから、自陣でパスを回すなんてのは朝飯前。相手がいくら前線からプレッシャーをかけてきてるとは言っても、何の問題もなく落ち着いてパスを回していた印象。

これに困ったのがアメリカ。アメリカの前線からの守備は上にも書いたように高い位置でボールを奪うために行われている。でも、今や相手の中盤の構成力の前にその野望は打ち消されてしまった。確かに相手が自陣に入ってくるのは押さえることができる。相手の縦パスの選択肢はトーレスしかないんだから、そこを押さえればいい。でも、そのトーレスに相手が入れてこなくなった時点でアメリカの守備の狙いどころは定まらなかったって言える。

前線から追いかけて行っても、相手のパス回しによって次々に逃げられてしまう。自陣に入らせないっていう成果だけを考えるとあまりにも無駄な体力を使い過ぎ。結果として後半は明らかに運動量が落ちてしまったと思う。とにかく、あれだけ前線から頑張って守備をしているなら、やっぱり高い位置で奪うっていう成果が欲しい。でも、その頑張りは報われない。スペインの中盤をなめるなよって話。ボールの動きに対して常に適切な場所に入ろうとするアメリカの選手。対するスペインはボールを動かしまくる。そんな繰り返しの中で、当然というかなんというかアメリカの守備ブロックに穴が開いていたと思う。

自陣での少ないタッチでのパス回しで局面を変えまくって相手のブロックを動かしまくるスペイン。そんな流れの中から本格的に敵陣内に入るスイッチは何だったか。それはシャビが空いたところだった。最初に降りてきた時点では前を向かせてもらえないシャビもスペインが自陣で前後左右にボールを動かしてる間に自由にボールを扱えるタイミングが出てくる。シャビ自信がそんな場所に入るのもうまいわけだし。そして、シャビがエアポケットでボールを受けた時点で、シャビが前向きにボールを扱った時点でスペインの攻撃のリズムに変化が生まれた。

最も多かったパターンが右サイドに展開してその右サイドから敵陣内に侵攻するっていうやり方。このパターンに限らず、5分を過ぎたあたりからのスペインは中→外、サイド→逆サイドっていう大きな横への展開を織り交ぜることで敵陣内に入る機会が増えて行ったわけだけど。中でもシャビ→右の展開が多くなったのには理由がある。

1つは当然のようにシャビが攻撃の中心にいたこと。上にも書いたように、シャビが前向きでボールを持ったところが攻撃のスタート。2つめはシャビは中盤の左寄りに入っていたこと。ゾーンで守るアメリカはシャビがボールを持った時点で、そのサイドに寄せられている。逆サイドが空く。本当はしっかりと寄せることで逆サイドへの大きな展開は許さないってのが理想。でも、スペインの低い位置でのパス回しで揺さぶられまくったアメリカのブロックは何となくボールサイドに寄ってるっていうイメージが強い。それに、何度も書くようにそもそもシャビが浮いたところで攻撃をスタートしてたのがスペインだった。

こんな展開の中で右SBのセルヒオ・ラモスから敵陣への侵攻が行われる形が増えて行った。アメリカが狙っているトーレスは攻撃の組み立ての場所での重要度は薄れていった。残念、アメリカ。前線から頑張って守備をしていたのに、ついに相手の自陣への侵入を許すシーンが増えて行ってしまったと思う。結果として深い位置に4‐4ブロックを作ってバイタルをつぶすような守備が多くなった。前線から追いかけ回し、相手の低い位置のパス回しに合わせて左右のブロックを動かし、最終的には自陣のゴール前へ。お疲れ様です。

そんなわけでちらほらとスペインの中盤のパス回しが本来的な場所で見られるようになって行った。幅は両SBに任せて、中盤の選手を真ん中へ押し込む。個々の選手がパスを受けるためにギャップに入り込み、パスを出した選手は次のギャップへ入る。このときの距離感が素晴らしい。ボールも動き人も動く。ただし、ロシア戦で見られたようにスムーズにとはいかなかった。その要因はスペイン自身の問題。パスが微妙にずれるシーンが目立って、せっかくの1タッチ2タッチのリズムが分断されることが多くなったと思う。はまると美しいっていうようなレベルでコンスタントにいいリズムを続けられなかったのが、この試合のスペインの問題だったかもしれない。

そんなわけでいつの間にかスペインに流れが傾いていた。アメリカとしてはやってられないって話。前線からの頑張りが報われないわけだから。だから、アメリカも前半の30分前後を境として守備のやり方に変更を加えてきたと思う。前線から→揺さぶられる→引いて受けるっていう3段階に分けるとすれば、2段階目にメスを入れた。1つ目の前線からの追いかけも時間とともに勢いが弱まっていったってのは確かだけど。

さて、揺さぶられるっていうところにどうやってメスを入れたか。スペインが揺さぶるようになったのは、縦パスをあきらめたから。とりあえず、自陣で回しとく時間を増やしたから。これは上にも書いた通り。対して、アメリカが揺さぶられないようにと修正を行ったのも一種のあきらめ。相手が人数をかけて中盤で回し始めた時点で、もう奪うのは無理だろうっていうあきらめ。それまではボールを奪ってやろうと、相手のパス回しに対してチームとしてボールへのアプローチを行っていた。そして、それに振り回されていた。つまり、アメリカの守備の修正は前線で奪おうっていう意識をなくすこと。

今回の試合では特に安定感がなかったマルチェナを中心にスペインの最終ラインはつなぎの場所が不安定。だから、守備のスタートの時点では引かずに積極的な守備を継続した。でも、その最終ラインにシャビを中心としたスペインの中盤が助けに来たら、その追いかけは終了。勝手にボールを前わしてて下さいなってことで、自分たちは自陣へと引きこもった。ほとんど全員が敵陣内で守備をしてる時間さえあったアメリカが今や自陣で4‐4‐2を作る時間が長くなっていたと思う。

これでスペインの攻撃に勢いがなくなる。自陣でコンパクトブロックを作ったドイツを本質的には崩せなかったスペイン。それと同じ問題。相手が前線から来てくれれば、それを外して外してボールを回す中で、必ず相手のブロックに穴を作り出すことができる。そこから敵陣内に入り込めばいい。でも、相手が最初から穴を作らないっていう守備をしたらどうなるか。スペインは敵陣内に入れない。イタリア戦でもドイツ戦でも見られた問題。

なんとなく縦パスを入れようもんなら、受け手への守備を徹底して目標としているアメリカの守備の餌食。入りどころに対して厳しいプレッシャーをかけられてボールを失ってしまう。少なくとも前を向かずにボールを下げるだけになってしまう。基本的にスペインの中盤のパス回しの良さはみんなが前を向いて前へ前への勢いを保ったままにパスを交換していくこと。誰かに当てて飛び出すっていうよりは、全体で前へ向かっていくってやり方。その良さが消えてしまったと思う。

スペインの攻撃×アメリカの守備っていう側面ではこんな感じの流れで前半が終了。ここでちょっと小休止。アメリカには五輪代表世代の選手が多かった。そして、アメリカは日本の初戦の相手。アメリカの守備と日本の相性はどうなのかって部分を考えてみたいと思う。ただし、このチームと五輪代表が同じようなやり方を採るものと考えてではあるけど。まあ、アメリカの監督はAも五輪も兼任のようなので、異なる質のサッカーをしてる日本とは違ってそれなりに共通点は多いと思う。

さて、アメリカの守備がスペイン戦のように前線から追いかけ回して来たらどうなるか。カメルーン戦の前までなら絶望的だった。ビルドアップが超下手な日本代表にリミッターなしの超プレッシャーがかけられるなんて悲劇以外の何物でもない。でも、トゥーロンで一皮むけた日本代表はビルドアップの問題を解決。ドイツ、オランダ方式(あとはマンU方式とも言える)のビルドアップを獲得した。要するに出し手と受け手の役割を分担しておいて、受け手が相手の間で受ける。そこに収まった瞬間に出し手だった選手が飛び出して絡んでいくってやり方。

前線から来るアメリカの守備にちょっとでも一体感がなければ機能し放題のこの形。中盤とDFの間のスペースでボールを受けまくることが可能になる。そして、中盤とDFの関係をはがすために有効なのはやっぱりロングボール。ここはスペインじゃないんだから誰も起こらない。最初は李を走りまくらせればいい。そして、相手のDFを下げさせておいて本来の組み立てをすればいい。

そして、もう1つの懸念材料が相手の前線からのプレッシャーに耐えられるかってこと。これは大きな懸念材料。何しろ日本はスペインじゃない。中盤があれだけ落ち着いてボールを回すのは難しいと思う。となると、遠藤の離脱は痛すぎるのかもしれない。なんだか知らないけどフラフラと前線に出て行ってしまうことが多い梶山がどれだけDFライン前でのタッチ数を増やすかがポイントか。本田拓じゃちょっと心もとないし。本当は遠藤&梶山で中盤の底を組ませたら面白いと思ってたんだけど。

さて、そろそろ本題にスペイン×アメリカに戻りたいと思う。前半の最後の方では再び攻撃が停滞気味になったスペイン。考えてみれば実は前半にスペインがいい形を作ってた時間はかなり短かった気がする。そんなスペインが後半の開始時に選手交代。トーレス→グイサ、Xアロンソ→セナ。親善試合だから、どれだけ戦術的なものかはわからない。それでもいい方向に出たのは間違いない。トーレスよりもグイサの方が明らかに1トップにフィットして目立ちまくってたってのが1つ。ただ、それ以上にセナが入ったことが大きな意味を持っていたように思う。

漠然とした印象だけど、Xアロンソよりもセナの方が勇敢だってイメージを受けた。Xアロンソは相手のブロックの外でボールを受けて、相手のブロックの外から攻撃を組み立てることが多い。それに対してセナは相手ブロックに積極的に入っていく。ドイツ戦の得点シーンも起点はブロック内でボールを受けたセナだったし。自陣で引いて穴を作らないようにする相手。その相手ブロックにセナが入り込んでいくと、相手はそれに対応せざるを得ない。どうしてもブロックから引っ張り出される。結果として穴ができる。そこに受け手が入る。Xアロンソがプレーする場所だと相手は勝手に持ってていいよってなることが多いけど、セナの場合は相手を引きつけることが多い気がする。

そんなわけで後半のスペインは前半よりも楽にボールを前線に入れることができるようになった。そして、これがシルバ→デ・ラ・レッドの交代でさらに加速される。この交代によってスペインのシステムは4‐2‐3‐1っぽい形に。何よりも大きかったのがシャビが前線でのプレーに専念できるようになったこと。それまでは低い位置の助けに来るシャビの仕事をセナが引き受けることとなった(デ・ラ・レッドがセナの役割)。セナは低い位置の組み立てを助けつつ前線に飛び出すプレーを増やした。何にしてもシャビのゴールに直結する場所でのプレー時間が長くなった。それが得点にもつながってる。

今回の試合のシャビはとにかく素晴らしかった。EUROでも素晴らしかったけど、それよりも素晴らしかった。ピークを1つ前に持ってきてしまったんじゃないかってレベル。出し手としての役割でチームの中心となり、間間に入り込み受け手になり、常にボールの近くて逃げ場として機能し、機を見てFWになるような飛び出し、そして得点につながった個人技での突破。相手のど真ん中をドリブルで抜け出すっていう素晴らしいプレーを見せてくれた。さすが、後のEUROのMVP。

そんなわけで後半のスペインは前半の終りの流れが嘘のように攻撃をスムーズに進めた。リズムよくパスを回すシーンも増えて行った。出し手の意図と受け手のランニング、動きが合致するようになってた気がする。的確なタイミングでの飛び出しが多くなったと思うし。ただし、このスペインの攻撃の改善を反対の側面から見ることもできる。つまり、アメリカの方に問題が表れたっていうこと。

その問題はスタミナ。ここまでにも書いてきたように、アメリカは前半の守備でかなり消耗していたと思う。だから、後半は完全に運動量が落ちていた。前線からの守備の面影はなくなり、受けるにしても入りどころに素早くプレッシャーをかけられなくなった。アメリカ陣内でボールを受けるスペインの選手がルーズになり、簡単に前を向けるようになり、スペインのみんなが前を向いたパス回しが可能になった。実はこちらの要因の方が大きかったかもしれない。

疲れたアメリカは後半のほとんどを自陣で過ごした。立ち上がりのチャンス以外に攻撃をした事実自体が後半はほとんどなかったように思う。相手に攻められて、なんとか最後で跳ね返して、その跳ね返したボールが相手に渡って、また攻められる。この無限ループ。ここから分かることは、アメリカは深い位置からの組み立てが下手だってこと。これは前半からも見られた事実。高い位置で奪ってショートカウンターの芽がなくなった時点でアメリカの攻撃に怖さはなかった。とりあえず見るだけ見てみたいと思うけど。

4‐4‐2のアメリカ。攻撃時はSBが高めに出て行き、最終ラインは2バック。その代わりCMFの2枚がそのCBの前に常駐状態。スペインは敵陣で守備をする気があまりなかったから中盤の2枚を下に張りつかせる意味はあまりなかった気がするけど。とにかく、結果として攻撃時は2‐4‐2‐2みたいな形になることが多かったように思う。

前線では右サイドのデンプシーが真ん中に流れてくることが多い。入れ替わりにジョンソンが右に流れることシーンも目立ったと思う。逆に左サイドのルイスは左サイドに居座ることが多かった。ただし、上下の動きを増やして1つ下のピアーズと前後の入れ替えをすることも多かったと思う。残ったアドゥは中盤に降りて行く動きが目立ってた。右では左右の動き、左では前後の動きが多くなってた印象。

このうち活性化したのは左サイド。というか、左サイドしか機能してなかったのが今回のアメリカ。右サイドから真ん中に流れてきたデンプシーは消えた。アメリカの出し手は基本的にCBとCMFの2‐2。CBの2枚は距離を空けて幅を作ろうともしてたけど、限界がある。結果としてスタートが真ん中に偏ることとなった。だから、デンプシーにボールを入れるには中→中の縦パスを通さなければならない。相手の4‐1‐4‐1システムではその真ん中のコースには完全にフィルターが掛けられてた。じゃあ、入れ替わりに外に出ていったジョンソンはどうか。これも無理。なぜならばジョンソンは右サイドの超高い位置で待ってたから。中盤には降りてこないで、サイドのウラを狙うイメージ。パスを通すには距離が遠すぎた。

よって右が死亡。左はルイスとピアーズの前後の入れ替えなんかを利用しながらなんとかボールを運べる体制は作り出してた。ただし、深い位置に行くとなると話は違う。この関係性はあくまでも2人だけ。そして、相手の右SBはセルヒオ・ラモス。ロシアの左サイドを無効化したセルヒオ・ラモス。残念ながらアメリカの左サイドの攻撃はあっさりと止められてしまう結果となった。そんなアメリカに唯一残された選択肢は降りてきたアドゥに預けて個人でゴールに向かってもらうこと。いくらなんでも可能性が薄いって話。

全体としてアメリカの攻撃の問題は関係性が作れてないってこと。相手がスペインだから余計に目立ってた。アメリカは選手間の距離がとにかく遠い。その上ボールを引き出す動き出しがほとんどない。だから、個人が孤立する。潰される。パスを出せたとしてもパスの距離が遠い。引っ掛けられる。引っ掛からなくても足元足元だから狙われる。五輪代表もこんな感じなら、日本の守備は全く心配はいらないだろうなって気がする。遅攻をさせればこっちのもの。個分断のアジアのチームと戦うのとあまり変わりはないかもしれない。

そんなわけでアメリカの攻撃の質は高くなかったって言える。結果としてスペインの守備の問題があまり表に表れてこなかった。でも、スペインの守備には確かに問題が存在してたと思う。あいまい性の問題が。まず、はっきりしてたのは自陣で守備をしようってこと。切り替えの流れはともかく、相手がボールを保持したら全員を下げて4‐1‐4ブロックを自陣に作り出した。やっぱりトーレスは何もしない。そこまではよし。でも、4‐1‐4ブロックを作った上でどこから守備をするのかがはっきりしなかったと思う。

基本的には相手が自陣に入ってきたところが守備のスタート。確かに入ってきたところで中盤の選手がチェックに行ってはいた。でも、それが単発。その上、強度がまちまち。チームとしての奪いどころを定められてなかったと思う。アメリカの攻撃がスペインの守備に負けず劣らず個が分断していたからいいものの、普通に4‐1‐4の1の場所に入られるリスクは高かったように思う。

もしかしたら、スペインの守備は過渡期だったのかもしれない。この後のEUROでのベタ引き守備に向けて。EUROでは自陣に相手が入ってきても、それほど気にしたそぶりを見せなかった。勝負はあくまでも最後のところ。そのためになんとしてもバイタルエリアをつぶしにかかってた。アメリカ戦でも守備が一番機能してたのはバイタルエリアだった。相手の攻撃がお粗末だったっていう要因は多分にあるものの、縦パスが入った選手はすぐに囲い込んで潰していった。ただし、そこを押さえるってことが徹底されてなかったのも事実。前から行ってみたり、後ろで守ってみたり。上にも書いたようにあいまいな様子が見て取れた。

そう考えると面白い。攻撃も含めて、これが機能したらEUROのロシア戦みたいな形になるんだろうなっていうやり方が多く見られた。なんでロシア戦ばかり取り上げるかっていうと、スペインが主導権とポゼッションを握って戦ってたのはロシア戦しか見てないから。イタリア戦ではボールを支配してても主導権はイタリア。ドイツ戦は主導権は握っててもポゼッションはドイツだった。そして、アメリカ戦では主導権もポゼッションも握った。やっぱりプチ・ロシア戦だったと思う。相手は全然違うけど。

そして、今回の試合ではシャビが目立ちまくってたけど、たぶんシャビが目立たないレベルに周りのレベルが上がったんだろうなって思う。チーム全体としては攻撃と守備に微妙な、そして的確な修正が行われたんだと思う。そして何よりもチームに柔軟性が生まれたのが大きかった。決勝のドイツ戦のときにも書いた気がするけど。アメリカ戦だって、蹴りまくってればもっと簡単に勝てたはず。でも、それをせずにあくまでもつないだスペイン。国民に怒られないように。そういう意味では大きな大会でも国民に怒られないように戦ってたのが今までのスペインだったのかなって気がする。結果が出なかった要因か。
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2008-07-02 Wed 19:34
ドイツ×スペイン
<ドイツ:4-2-3-1>
FW:クローゼ
MF:ポドルスキー-バラック-シュバインシュタイガー、ヒツルスベルガー-フリンクス
DF:ラーム-メッツェルダー-メルテザッカー-フリードリヒ
GK:レーマン

<スペイン:4-1-4-1>
FW:トーレス
MF:イニエスタ-シャビ-セスク-シルバ、セナ
DF:カプテビジャ-プジョール-マルチェナ-セルヒオ・ラモス
GK:カシージャス

スペインはロシア戦で素晴らしい内容を見せつけた4‐1‐4‐1でスタート。魅惑のクワトロ・フゴーネスのポイントはなんと言っても1人1人の技術。個々のキープ力がとんでもないから簡単には奪われない。だから、後ろからの上がりも促進される。ロシア戦では両SBがどちらも高い位置に入ってくるシーンが多くなった。結果として中盤が中に押し込まれ、選手間の距離の近さが生まれ、チームとしてのキープ力も上がる。要するにパス回しのスムーズさへとつながる。

そんなボールを持った仕事に加えて、この4人が違いを見せつけるのはボールを受ける動き。敵のブロック内にギャップを見つけ出し、そこに入り込む能力が高い4人。相手だってそう簡単には自由にさせないはずなのに、面白いように自由にボールを受けることができる。局面局面を見ると、そんな4人が好き勝手に自分が見つけたギャップに入り込んで行くように見えるスペインの中盤。でも、全体として見ると選手間の距離が一定に保たれてるから素晴らしい。変なバランスの崩れ方がなくて、ボールが入った時に、それぞれがパスでも個の仕掛けでもどちらも選べるような状況になっている。

そんな4人を中心に中盤を圧倒的に制圧するスペイン。ギャップギャップをつなぐパス回しの中では、上に書いたように受け手が浮いた状態であることが多い。結果として前に向かって次のプレーができる。ボールを出した選手は次のギャップを見つけて入り込む。選手の距離感のバランスがいいアーセナルってとこか。人もボールも動くサッカー。とにかく、結果として前へ前へっていうゴールに向かったパス回しが可能になる。もっと言えば、相手の守備の急所急所を入り込むパス回し。中盤で圧倒的にパスを回しているのに、中盤の場所の滞在時間が短いみたいなイメージ。スピード感ありありのパス回しで一気に相手ゴールまで迫っていく。

相手としては狙いどころが定まらない。少ないタッチで次々に局面を変えられてしまえばどこで当たるべきかが分からない。だから、相手のボール保持者がキープしたところで、ここぞとばかりに守備をしたい。でも、最初の前提条件が現れる。4人とも技術が半端じゃない。奪いに行っても奪えない。むしろ、その選手に当たりに行った選手のウラ側にギャップができてしまう。ギャップ探しが上手なスペインの中盤の選手に入り込まれる。結局、次の局面へとボールを動かされてしまう。ロシアは完全お手上げ状態だった。

さて、そんなスペインの4‐1‐4‐1に対して今回のドイツはどう出てきたか。それは単純な話だった。相手の中盤を自由にさせないようにしようっていう作戦。そのためにスペインのパス回しが始まる前に芽を摘み取ってしまえ作戦。考えてみれば、誰にでも思いつくやり方。ただし、それができるかどうかは別問題。その点において今回のドイツの守備は成功したと思う。スペインの中盤のパス回しはなりを潜めた。スペインはクワトロ・フゴーネスを有効活用できず。その意味での成功。

ドイツの守備のベースは組織を作ってからの守備。立ち上がりこそ、前線から追いかけるシーンが目立ってたけど、時間とともに4‐4‐2ブロックを作るやり方へと移行していた。受けるというと語弊があるかもしれないけど、まあ受ける形って言っても間違いではないような守備。ちなみに、形が4‐4‐2ってのはバラックを1つ押し出したから。そして、トップの2を自陣寄りに引きつけ、最終ラインの4を高い位置に設定することで超コンパクトブロックを作り出したと思う。

そんなブロックを作った上での守備。まず、出し手に対するもの。真ん中は2トップが対応。セナを見る。降りてくるシャビ等を見る。スペインの両SBへはそのままドイツのSMF。真ん中もサイドも縦パスを入れさせないような守備をしてきたと思う。降りて行って受ける選手に関しては、入りどころにしっかりと対応をして前を向かせないようにしてた。だから、スペインの中盤の選手は助けに行ったとしても結局は後ろに戻すしかなくなった。出し手が浮かずにいつまでたっても攻撃のスタートが切れなくなったスペイン。低い位置での保持時間が延び、その中のミスから決定的なチャンスにもつなげられてしまった。

受け手の方への対応はスペースをつぶすことが念頭。4‐4の超コンパクトブロックを作って、スペインの中盤の選手が大好きな間を作らないこと。だからこそ、降りて行くスペインの中盤の選手はある程度まで行けば、FWに受け渡してたんだと思う。どこまででもついて行くと、背後にギャップを作ってしまう。受け渡しがスムーズだったのもブロックがコンパクトだったおかげ。そもそも、ある程度まではついて行ってもギャップができなかったのも、ブロックがコンパクトだったおかげ。上下の幅が限定されたことによって、スペインの選手の縦の動きはダイナミックなものにはつながらなかった。

繰り返す。ドイツの受け手への守備はスペースを潰して相手が入り込むギャップをなくす。それでも動く相手選手は放っておかずにしっかりとマークをする。ある程度まではついて行き、守備のバランスが崩れそうになってきたら、受け渡す。これがドイツの受け手に対する守備。スペースと人の二段構えでボールを入れさせない。逆に出し手に対する守備は上に書いたとおり。出し手は簡単には前を向かせない。自由にボールを扱わせない。最低でも縦のコースは切る。失点シーンはこの出し手への原則に綻びが生まれたシーンだった。

さて、困ったのはスペイン。蘇るのはイタリア戦での悪夢。相手が開き直って完全にベタ引きになったイタリアを相手にしたスペインはボールを前線に送り込めない大問題が発生した。最低限の役割として縦を切りつつ守備のバランスを絶対に崩さないイタリアに対して全く縦パスを入れられなかった。縦パスが入らないので前線の選手が降りてくる。2トップはFW的に振舞って中盤に顔を出してこない。中盤がスカスカ。どん底スペイン。

今回はシステムが4‐1‐4‐1になって中盤が厚くなったことで、そこまでの中盤スカスカ状態にはならなかった。でも、根本的な問題は変わらなかったと思う。スペースを潰すことを目標にした相手の守備に対して仕掛けることができないスペインの弱点は実は残されたままだったと思う。縦パスが入らないので、ある程度自由にされたDFラインでの保持時間が延びる。縦パスが入らないので前線の選手が降りてくる。ただし、上にも書いたようにドイツがしっかりと対応してたから、後ろに戻すことしかできない。だんだんと下の飽和状態の雰囲気が見られていったスペインだった。

魅力的なクワトロ・フゴーネスだってボールが供給されなければ何もできない。ボールをもらう動きをしようにも、相手が中盤のスペースを潰してる。窮屈すぎて動けない。窮屈じゃないのはどこかって言えば、低い位置に降りて行くこと。高い位置でクワトロ・フゴーネスが機能しない、つまり高い位置でボールを保持できなくなったスペイン。当然のようにSBの攻撃参加も停滞。SBが低い位置でのパス回しに参加する時間が長くなった印象。

というわけで、上にも書いたようにスペインの中盤を機能させないっていう意味ではドイツの守備は完璧だったと言ってもいい。シュバインシュタイガーの守備の担当エリアがかなり広かったのがちょっと謎ではあったけど、全体としての守備のバランスが完璧。4‐4‐2のコンパクト3ラインの形成によって、スペインの中盤を自由にさせなかった。ドイツの試合は初めて見たけど、いつもああいう守備のやり方を採ってるのか。少なくとも今回の試合ではスペインの中盤を潰すっていう意味ではお手本の守備になってたように思う。やっぱりパス回しをスタートさせないことがポイント。スペインは攻撃のスピードアップを図ることができなかった。

さて、困ったスペインはどうしたのか。立ち上がりの10~15分ぐらいまでは、自分たちのパス回しをしようと粘ってたように思う。前線の選手が降りてきてリズムを作ろうと試みたり、トーレスをサイドに張りつかせたり。なんとかして相手の守備ブロックにギャップを作ってやろうっていう考え方が見られた。そして、ギャップができるのを待つかのような低い位置でのパス回しの時間がかなり伸びた。でも、実際にはそういう攻撃からチャンスは作れず。縦パスを狙っては引っ掛けられるの繰り返し。仕方がないので、時間とともに中盤至上主義を改め始めた印象。この辺の柔軟性が今回のスペインの強さかもしれない。バルサだったら、それでもパスをつなごうとしてただろうなっていう。

じゃあ、どう変化させたのかっていう話。その変化はとっても分かりやすいものだった。ひとことで言っちゃえば、トーレス、トーレス。中盤なんてどうでもいいから、とにかくトーレスを狙えっていう考え方。低い位置でのパス回しの時間が減り、その代わりに1発の縦パスの数が増えて行ったスペイン。クワトロ・フゴーネスを使った中盤の超パス回しと比べると、恐ろしいほどに単純な攻撃の繰り返しによってペースを自分たちに引き寄せて行くから面白い。

ただし、この考え方はとっても合理的。なぜならば上にも書いたように、ドイツの最終ラインはかなり高い位置を採ってきてたわけだから。そして、スペインの1トップに入ったのはトーレス。そういえばドイツのCBはウラへの対応はどうなんだろうか。W杯前の日本戦で高原にめちゃめちゃにやられてたのは過去の話か。どちらにしても、最初からウラ狙い1発があまり多くなかったのが不思議なぐらいの条件が揃ってた。

そんなわけで単純トーレス狙いの組み立てが多くなったスペイン。中盤の選手たちが組み立てで目立たなくなて行く流れ。トーレスに入った時にそのフォローに行くみたいな仕事が増えて行った。ただ、それでもよかったんだと思う。トーレスにウラを徹底的に狙わせて、相手にウラの意識を持たせるっていう狙いもあったはず。相手のコンパクトブロックが間延びして、中盤が使えるようになれば、俺たちの出番だぜっていう。残念ながら最後まで中盤を圧倒する流れにはならなかったけど。

そんなトーレス狙いの攻撃でスペインが流れを引き寄せたってのは上にも書いたとおり。でも、それは実は嘘。本当は流れを引き寄せたのはカウンターが効果的に決まるようになったから。攻撃の主体はカウンター、相手が守備ブロックを作ってしまったらトーレス狙いっていうのが本当のところだったと思う。どちらにしても中盤重視の4‐1‐4‐1の攻撃は消えてしまったってことになるわけだけど。それでもカウンターは今大会のスペインの1つの特徴って言えるかもしれない。

逆に言えばそれまでの時間帯のスペインはカウンターが効果的に機能してなかった。それは何よりも守備が機能してなかったから。立ち上がりのスペインは守備の様子が明らかにおかしかった。そして、そのスペインの守備の問題を突くようにドイツがいい攻撃を仕掛けてきた。カウンターが機能したスペインってのは要するに守備が機能したスペイン。結果としてドイツの攻撃が機能しなくなる。だから、スペインに流れが行ったように見えたわけ。

じゃあ、まず立ち上がりのスペインの守備の問題から。今回のスペインの守備は4‐1‐4‐1。今までのスペインの守備陣は4‐4‐2。最終ラインを低い位置に設定して中盤の4をその低い位置の最終ラインに引きつける。開き直りバイタルつぶしのベタ引き4‐4‐2。相手の出し手は浮かせておくけど、ゴール前には入らせないぞっていうやり方。4‐1‐4‐1システムに変更したことによって、これがどういう方向に出るかってのがポイント。そして、それが悪い方向に出たのが立ち上がりの流れ。

まず、中盤の役割が明確ではなくなったと思う。ロシア戦でも4‐1‐4‐1に途中で変更が行われたわけだけど、中盤の気持ちは低い位置にあった。セットの時点では4‐4よりも4‐1‐4の中盤の方が高い位置に置かれたし、ロシアの方の攻撃が真ん中に偏ったことで中盤でうまく引っ掛けるシーンも多かった。でも、入り込まれれば中盤はすぐに下に向かっての守備を開始。DFがMFのラインについて行くんじゃなくて、MFがDFラインに合わせて下がるってのがベースの形だった印象。考え方は4‐4守備ブロックと同じだったとも言える。ただし、リードしてた流れってのも大きな意味を持ってたと思うけど。

それに対して今回は中盤が前に行こうか後ろに行こうか迷ってたイメージ。それが一番明らかだったのが相手のフリンクスに対する対応。ドイツの攻撃の組み立ての中で大きな役割を担うのがフリンクス。立ち上がりは、そのフリンクスが浮いていて、うまくボールの散らしを行っていた。スペインとしては確かに好ましくないことではあるけど、これまでの守備の原則を考えれば、別に致命的なことでもない。出し手は浮かせても最後はやらせないってのが、これまでのスペインだったから。

でも、今回のスペインはなぜかフリンクスにプレッシャーをかけようとしてた。しかも、それがイレギュラーな状況。フリンクスを自由にさせたくないなら、トーレスをぶつけるのが合理的だと思う。でも、今回の試合でフリンクスの相手になったのはセスク。さらに、今回のスペインの守備のベースはやっぱり低い位置にあっただろうってのが、さらに悪かった点。1度セットした後で、セスクが引っ張り出されるみたいなシーンが多くなる。遅れているので当然のように効果的な守備につながらない。せめてトーレスが前線で限定させてくれてれば、もっと素早く当たれたんだろうけど。

そんなシーンが多発したのが今回のスペインの中盤。降りて行くシュバインシュタイガーとかポドルスキーに対して選手が引っ張り出される。明らかにスペインらしくない。ロシア戦のスペインは降りて行く選手を完全に放っておいたはず。そうすることで絶対にバイタルは空けないぞっていう守備をしてた。それと比べると引っ張り出されるズルズルと引っ張り出されることが多くなったスペインの選手たち。しかも、上に書いたようにブロックの作り方は低い位置に置かれてるからたちが悪い。前線から行くならもっと高めにブロックを置かないとっていう。中盤だけが高め、最終ラインは低めみたいな前後の分断が生まれてたと思う。

この時点でかなりオランダ戦のイタリアみたいな流れになっていく。チームとしては受けることがベースになってる。でも、出し手も放っておけないなっていう気分。だったらFWが守備に参加すればいいのに、トーレス=トニは守備に無関心。中盤が出し手の対応に引っ張り出される。とはいえ、距離が長いから本当に出し手を押さえられるかって言われれば甚だ疑問。というわけで、背後にギャップだけを残してきてしまう結果に陥る。もともと低い位置に置かれてるDFラインとの間には広大なスペースができあがった。

そして、面白いことにドイツの攻撃はオランダのそれとそっくり。イタリア×オランダの完成。4‐2‐3‐1のオランダ=ドイツ。トップには絶対的なFW、ファン・ニステルローイ=クローゼ。中盤の3枚は間に入り込んで、縦パスを受ける役割。ただし、攻撃は左寄りに作られる。なぜならば、攻撃得意のファン・ブロンクホルスト=ラームが左にいるから。左で崩して右のカイト=シュバインシュタイガーがFWに入ってくる。ハイライトを見ても、ポドルスキー→シュバインシュタイガーだらけのドイツ。さて、そんな前線にボールを送り込むのがボランチの仕事。ここは微妙に違ってた。オランダはエンゲラールが組み立てから飛び出しを担当。それに対してドイツはフリンクスが組み立て、ヒツルスベルガーが飛び出しみたいな攻撃の役割分担ができてたと思う。

相手がイタリア状態だった立ち上がりはドイツの攻撃が機能しまくり。イタリア相手にオランダの攻撃が機能したのと理由は全く一緒。ドイツは低い位置でボールを回しつつ、シュバインシュタイガーとかポドルスキーが降りたりしながら、相手の中盤を引っ張り出す。そうやってDFとMFの間に隙間を作ったところで2列目の3枚に縦パスを入れる。ここの受け手の中心がバラック。左右(左が多いけど)に流れ、セナのマークを振り切って、ボールを受ける。その瞬間に左ならラーム&ポドルスキーが関係性を築けるポジションに入る。サイドでの基本的なトライアングル形成が多いドイツだった。ちなみに、そうやってバラックが流れたときにトップ下の場所に入るのが飛び出し担当のヒツルスベルガーだったと思う。

そんなオランダ攻撃が機能しまくりのドイツ。面白いように縦パスがおさまり、すぐにトライアングル形成を行ってショートパスを交換しながらフィルターのなくなった相手のDFに仕掛けて行く。スペインのDFがDFだけになるシーンは今回の試合で初めて見た気がする。とにかく、ドイツらしくない(って言ったら失礼か)美しいパス回しの連続で攻めきるシーンを増やしていったと思う。立ち上がりは深い位置まで簡単に入り込むドイツがペースを握ったのも当然の話。そして、ドイツが深い位置まで入り込めばスペインの攻撃は深いところからスタート。ドイツが難攻不落の4‐4‐2ブロックを作る時間は十分にあった。

スペインはこんな危険な状況を放っておけない。なんとしても修正を図らなければならない。さて、そのためにどう出るかがポイント。まず考えられるのはいつものスペインに戻ること。低い位置に相手には勝手にボールを回させ、降りて行く中盤の選手も放っておく。中盤をDFラインに近づけて、完全に受ける形に入る。オランダに似たやり方を採ってくるドイツに対しては中盤の3に2列目の場所でボールを収めさせないことが重要。そのために、スペインがいつものベタ引きブロックを使うのは間違ったことではなかったと思う。

でも、今回のスペインはそういうやり方を採らなかった。むしろ逆。前から行きたがってる中盤にDFラインがついて行くような守備へと修正を行っていったと思う。今まで個々の気分で行っていた相手の出し手へのプレッシャーをチームとして機能させるようになった。例えばフリンクスへの対応。それまではフリンクスに入った後の対応だったのを、最初からしっかりとセスクをぶつけるようにしたと思う。つまり、そもそもボールを入れさせないってもの。結果としてドイツはフリンクス経由の攻撃ができなくなった。最終ラインから直接前線に入れる形が増えたと思う。

そして、出し手に対応する中盤に後ろを引きつける。前が引っ張られたことで後ろのギャップができないようにするためには、DFが前線についてくればいい。それを実践。ドイツの受け手がDFラインと中盤の間で浮くっていうシーンが明らかに減っていった印象。縦パスを入れたとしても、スペインの守備陣がその入りどころにしっかりと対応できる場面が増えて行った。入れては潰されるの逆スペインパターンがドイツに見られるようになっていったとも言える。とにかく、美しい中盤でのパス回しは全く機能しなくなったと思う。

ただ、スペインが守備のやり方を変えたといっても、前線から追いかけ回すようになったってのとは違ったのも事実。トーレスは相変わらず守備をしてなかったし、出し手を見るようになったとは言っても、相手のSBは基本的に浮いていた。中盤の設定位置もハーフェイラインぐらい。だから、出し手への対応と言っても本当はフリンクスへの対応だったと思う。だから、実質的には受け手への対応を修正したってのが本当のところ。今までのように中盤をDFに近づけることで受け手を潰すんじゃなくて、DFを中盤に近づけることで受け手をつぶしにかかった。

とにかく、そんな修正によって相手の攻撃を途中で分断することに成功したスペイン。これがスペインのカウンターの布石になる。立ち上がりのように攻めきられる流れじゃカウンターなって言ってられないわけだけど、守備の修正によって途中で引っ掛けられるシーンが増えれば、その切り替えからカウンターを繰り出すことが可能になる。というわけで、どちらにしてもトーレスのスピードを最大限に活用した今回のスペインの攻撃のやり方だったように思う。シルバ、イニエスタの両サイドもカウンターの流れの中で目立っていたと思う。

得点もそんなトーレスのスピード。ただし、このシーンはカウンターの流れではなかった。というか、普通に相手が難攻不落の4‐4‐2ブロックを作って構えていたシーン。スペインは低い位置でボールを保持して、なんとかギャップを見つけようとしてた。そして、上でもちょっと触れたようにここでドイツの守備に綻びが生まれる。それまで前を向いてプレーできてなかったセナがMFとFWの間で完全に浮いた。ついに前を向いてボールを持てたセナはDFとMFと狭い狭い場所にうまく入り込んだシャビへ。そのシャビからウラに抜けるトーレスへ。FWとMFの間→MFとDFの間→DFとGKの間。間間間をシンプルに縦へとつないだ結果のゴールだった。

先制点を奪ったスペインは後半に入ってやり方を変更。いつものやり方へと戻してきたと思う。DFを中盤に近づけていた前半のやり方から、中盤をDFへと近づけるいつものやり方へ。前半の途中から消えてしまったフリンクスが自由にボールを扱った後半だったと思う。ただ、そうやって出し手が浮いたとしても攻撃がスムーズに行くとは限らない。引いたときのスペインの守備の安定性をなめるなよっていう。結局、前半のようなスムーズなパス回しが復活することはなかったと思う。

それでも、強引な縦パスをスペインの守備ブロックの中に通してくるドイツ。4‐4‐2への変更で前のターゲットを増やし、バラックを1つ下げることでバラックとマッチアップするセナを引っ張り出して、無理やりにトップに縦パスを通していくシーンが目立ったと思う。それでチャンスを作る。力づくというかなんというか。それでも、なんとなく前半の美しいパス回しよりはこっちの方がドイツっぽいなって感じた後半のドイツの攻撃だった。

でも、スペインがこれにしっかりと対応してくる。セスクに代えてXアロンソ。4‐1‐4‐1から4‐4‐1‐1へと変更して、強引な縦パスを押さえにかかる。4‐1‐4‐1ブロックに最後に残された1ボランチの場所をなくし、本気の4‐4ベタ引き守備へと移行した。結果としてドイツが入り込む余地はなくなったと思う。スペインがベタ引きだからボールは持てる。でも、縦パスが入らない。どんどんと前線に人数が溜まって行く悪い流れ。だったら蹴ればよかったのに、なぜか蹴らないドイツ。高さでは圧倒的に勝ってたはずなのに。前半の美しい攻撃が念頭にあり、なんとしてもそれを作ろうとしてたのか。

守るスペインと攻めるドイツ。流れは明らかにスペイン。ドイツは巷で言うところのボールを持たされてる状態に陥った。実は主導権を握ってたのはスペイン。カウンターからチャンスを量産したのもスペイン。このスペインのカウンターの質の高さが目立ってたと思う。まず、奪った後のボールを中盤で1つキープできる。タメられる。そこに一気に後ろが飛び出してくる。そんな飛び出しを利用してトライアングルを作り、ショートショートで敵陣へ進攻。戻りながらの守備をせざるを得ない相手は全くパスを分断できない。そういうパス回しでスペインが片方のサイドに意識を集中させておいて、中または逆サイドでフィニッシュって形からのチャンスが多くなったと思う。前半からそうだったけど、カウンターの流れの中でもスペインはスペインらしいショートパスを忘れなかった。

これで優勝はスペイン。決勝Tに入ってからの3試合を見たけど、スペインのいろいろな姿を見ることができたと思う。イタリア戦ではその脆さが見られた。引いたイタリア相手に攻め手が全く見つからない形。それがロシア戦では一転。特に後半からの4‐1‐4‐1の質の高さは尋常じゃなかった。ロシア戦の記事参照。そして、今回のドイツ戦。イタリア戦の流れに陥りそうだったところで柔軟性を見せつけた。カウンター主体のやり方へ。

そう考えるとイタリア戦がやっぱり一番苦しかったんだろうなって思う。攻撃がうまくいかないスペイン。だったら、引いておびき寄せてカウンターを仕掛けるってやり方が考えられる。でも、イタリアは意地でも出てこない。攻撃に人数をかけてこない。何としてもスペインが攻めなければならない流れ。あの試合は特殊。イタリアは負けない戦い方だったけど勝てる戦い方でもなかったから。その辺がイタリアらしかったわけだけど。

とにかく、攻撃ではいろんな面を見せてくれたスペイン。でも、守備は首尾一貫してたと思う(シャレではなく)。今回のドイツ戦ではちょっとした変更が見られたけど、基本は相手の受け手を見るやり方。4‐4バイタルつぶしの超消極的な守備。だからこそ、組み立てが大変だった部分もある。攻撃のスタートが深い位置になってしまったから。でも、この4‐4バイタルつぶしの守備の安定がスペインをここまで押し上げた要因になったのも事実だと思う。実は今回のスペインは守備のチームだった。

ドイツの方も守備の良さが目立ったと思う。上にも書いたようにスペインの中盤をつぶす上でのお手本のような守備。そのたった1つ(セナがあそこで浮いたシーンは他になかった)の綻びをついたスペインが素晴らしかったってこと。大体、あれだってトーレスの能力が尋常じゃなかっただけで、綻びが綻びにならない可能性だって十分にあるわけで。というわけで、やっぱり守備は大事だなっていう。ドイツの攻撃は上でも触れたようにオランダと似てた。でも、守備の質が全く違った。それが勝ちあがれたかどうかの違いか。まあ、ドイツもスコアだけを見てみると守備が堅い雰囲気はないけど。

そうやって守備を考えてみると前線から追いかけ回す守備が機能したチームはなかったなって思う。実際に見た試合からだけど。期待されたスイスは前線からの守備をチェコのロングボール攻勢にいなされてしまった。オランダ、イタリア、ルーマニア、フランスの死のグループの面々は引いて受けるチームたち。ロシアもオランダ戦は引いて受け手を見る形、スペイン戦の前線からの守備は機能しなかった。スペインとドイツもここまで書いてきたように受ける形。ただ、スペインはゴール近くにブロックを作り、ドイツは高めにブロックを作ったって違いはあるけど。CLのマンUとチェルシーも受ける守備をしてたし、前線からの守備が得意なリバプールもシーズン途中に引く形へ。そういうトレンドか。
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